2019.09.15 09:00| ♪ ハンネス・ミンナール
メンデルスゾーンの曲は、声楽関係を除いて、ジャンルを問わず好きな曲が多い。ピアノ独奏曲以外で一番好きなのは、ピアノ三重奏曲。
ピアノトリオのCDは何枚か買ったけど、私が好きなピアニストのエンリコ・パーチェがピアノパートを弾いているカヴァコス盤は、ピアノがやや後方から聴こえる上に、モヤがかかったような不鮮明な音質で全然楽しめない。

若手ピアニストのなかで一番好きなハンネス・ミンナールがピアノを担当しているファン・ベーレ・トリオ(Van Baerle Trio)の録音は、残響の少ないデッドなせいか、音質がクリアで音の分離が良く、全てのパートの細部まで明瞭に聴こえる。
ファン・ベーレ・トリオは、ヴァイオリンがデュメイ門下のマリア・ミルシテイン、チェロがギデオン・デン・ヘルデールというアムステルダム音楽院出身の若手トリオ。若い3人の屈託のない笑顔のジャケット写真が明るくて気持ち良い。

Mendelssohn:Mendelssohn: Piano Trios
(2015/1/13)
Van Baerle Trio

試聴ファイル

<収録曲>メンデルスゾーン:
ピアノ三重奏曲第1番ニ短調 op.49 (1840)
ピアノ三重奏曲第2番ハ短調 op.66 (1846)
ピアノ三重奏曲第1番ニ短調 op.49(初版、1839)※世界初録音

この録音プロジェクトは、Het Kersjes Fondsが助成している。ファン・ベーレ・トリオは、2012年に財団から5万ユーロの助成金を支給されているので、それを使ったのだと思う。

ブックレットに記載されている録音場所は、2012年5月5~7日がイタリアのFazioli Concert Hall、7月4~5日はオランダ・レンスウーデのオランダ改革派教会。
録音日数と録音音質から判断して、明らかに残響が少ない第1番&第2番はFazioli Concert Hall、残響がかなり多い初稿の第1番はオランダ改革派教会で録音している。
使用ピアノは、Fazioli Concert HallIでは当然ながらFazioli 使用。オランダ改革派教会でもFazioliを使ったのかどうかは不明。

Fazioli Concert Hallで録音した第1番と第2番はデッドな響きなので、どの楽器の音もクリアで細部まで明瞭に聴こえる。明瞭で線がしっかりしているので、私の好きなタイプの音。
演奏もきりっと引き締まり、若々しく力強い情熱と、尖りすぎないしなやかさとが上手く融合して、情感豊かで瑞々しくてとても爽やか。
ミンナールのピアノの美点は、色彩感が美しい澄んだ響きと声部の分離が明瞭で立体感があるところ。ペダルを控え目に浅く入れているようなので、残響の少なさも相まって、一音一音克明に聴こえるし、ヴァイオリンとチェロの音をかき消すことなく、バランスも良いと思う。

Piano Trio No. 1 in D Minor, Op. 49, MWV 29: I. Molto Allegro agitato



↓のライブ音源は、初稿版録音の音質に近くて、3つの楽器の音が全体的にまとまって聴こえるし、残響も多少長い。
Van Baerle Trio - Mendelssohn Piano Trio no. 2 in C minor Op. 66



<第1番(初稿版)>
1840年に初演された初稿の楽譜が一度出版された後、メンデルスゾーンがいろいろ手を加えて、翌年に再出版。現在演奏されているのは第2稿の方。
メンデルスゾーン以外の作品で、初稿と改訂版の両方を録音したCDといえば、私が聴いたことがあるのは、カヴァコスのシベリウスのヴァイオリン協奏曲(BIS盤)と、Altenberg Trio Wienのブラームスのピアノ三重奏曲第1番(Challenge Classics盤)。
どちらも改訂版では、初稿の冗長なところをカットして大幅改稿していて、すっきりとまとまって均整がとれたように感じる。ブラームスは改訂というより、改作に近いくらい変えている。

メンデルスゾーンの《ピアノ三重奏曲第1番》では、初稿の第1楽章の旋律が行きつ戻りつ錯綜するというか、音楽の流れがあちこち紆余曲折してまとまりが悪く、なにせ演奏時間が14分以上と長いので、冗長に感じる。
録音時間を比べると、第2稿では第1楽章が大幅に改訂・短縮されていて、冒頭を少し聴いても、かなり違うのがよくわかる。
第2楽章以降は大幅な改変はないけど、全体的に細かいところでいろいろ違う。各パートの旋律がすっきりと整理されて、初稿ではややもつれ気味に聴こえる絡みの部分が解消され、音楽の流れも滑らかになっている。
(第2稿)9:47/6:31/3:39/8:51
(初稿) 14:31/6:39/3:39/8:05

初稿の第1番はオランダ改革派教会で録音しているので残響がかなり多く、3つの楽器が溶け合っているように一体となって聴こえる。流麗で華やかに聴こえる一方で、やや混濁感があって、各パートが弾く旋律がクリアに聴き分けられないこともある。

タグ:メンデルスゾーン ファン・ベーレ・トリオ ミンナール

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久しぶりに買ったCDは、ずっとウィッシュリストに入れたままだったフランク・ペーター・ツィンマーマンの国内盤で、ブラームスの《ヴァイオリンとチェロのための協奏曲》と《ホルン三重奏曲》のカップリング。
タワーレコードから貯まっているポイントが8月末まで期限切れになるというメールが来たので、とうとう買ってしまった。
2曲ともNMLで聴けるけど、どちらもCDで聴きたいなあと思う演奏だったので、良いタイミングだった。

ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための協奏曲 ホルン三重奏曲ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための協奏曲 ホルン三重奏曲
(2016/6/22)
フランク・ペーター・ツィンマーマン、ハインリッヒ・シフ、マリー=ルイーゼ・ノイネッカー、ヴォルフガング・サヴァリッシュ、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

試聴ファイル


共演者は、チェロがハインリッヒ・シフ、ホルンはマリー=ルイーゼ・ノイネッカー(女性のホルン奏者って珍しい?)、指揮とピアノはヴォルフガング・サヴァリッシュというドイツ人演奏者と、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団という組み合わせ。
堅実で落ち着いた安定感があって、安心して聴けるし、いつもながらツィンマーマンがヴァイオリンは美音で切れ味のよく引き締まっている。チェロが情感豊潤過ぎなくて渋いのが好みに合う。
《二重協奏曲》は《ヴァイオリン協奏曲》よりも好きなので、3枚ほど異聴盤を買ったけど、やはりこのツィンマーマンたちの録音が一番私にはしっくりくる。

Concerto for Violin & Cello in A Minor, Op. 102: I. Allegro




今までまともに聴いたことがなかった《ホルン三重奏曲》は、同じ管楽器の《クラリネット五重奏曲》や《クラリネットソナタ》よりも好きな曲。
もともと管楽器の音色自体はあまり好きではないので、クラリネットよりも低音で動きが少ないホルンは音色と旋律が目立ちすぎないし、クラリネットみたいな寂寥感は少なく、空間に広がるような響きに明るさと快活さもあって、私には聴きやすい。
曲自体はいかにもブラームスらしい和声や旋律で、ブラームスの新しい曲が聴けたのが良かった。

swallisch.zimmerman,Neunecker/brahms-Horn trio-Scherzo:Allegro


タグ:ブラームス ツィンマーマン

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2019.09.04 13:02| ・ 音楽(Books&Movies)
NHKアニメの『キャプテンフューチャー』がNHKで放映された時、小説とはイメージがいろいろ違っていてほとんど見なかったけど、テーマ曲は音楽は好きだったので、シングルアルバム(たぶんレコード?)を買ってよく聴いていた。
オープニングもエンディングも、まともな日本語で意味がはっきりわかる歌詞だったし、印象に残りやすいメロディで、数十年後の今でもすぐ歌えるくらい。

主題歌《夢の舟乗り》を歌っていたのは、私の記憶ではヒデ夕樹。後でタケカワ・ユキヒデバージョンに差し替えられたけど、聴いた記憶がない。
↓のサイトによると、もともと最初に録音されたはタケカワ版で、なぜかヒデ版を再録音。結局、放映時に(タケカワ⇒)ヒデ⇒タケカワと2回も差し替えたことになり、その事情は書かれていない。

■アニメの“音”を求めて 早川優 第2回「音源復刻への長い道程」[WEBアニメスタイル]
冒頭のナレーションでは、番組放映当初は“銀河系最大の科学者にして冒険家”だったのが、後に”宇宙一の科学者”にグレード・アップしたという。原作小説では”太陽系最大”程度だった。”銀河系最大の科学者”だけでも?と思ったけど、”宇宙一の科学者”は誇張しすぎ。
ストーリー自体も、原作小説では、太陽系外の星間航行を初めて行ったのがキャプテン・フューチャーで、デネブへ行くのも前人未踏な危険な旅だったのに、アニメでは銀河系内だけでなく、マゼラン大星雲まで太陽系人たちが遠征してたりして、舞台設定がとんでもなく拡大している。


創元SF文庫の『キャプテン・フューチャー全集』を読んだ勢いで、日本語版サントラCD(それに加えてアニメのフランス版DVD)も買ってしまった。
当時は気が付かなかったけど、作曲者は『ルパン三世』(第2シリーズ)の音楽を担当した大野雄二。リズム感や楽器の使い方に旋律の動きなど、『ルパン三世』の音楽と似ている。
2枚組のCDには、番組で使われた主題歌・エンディング・挿入歌とそのインストウルメンタルバージョン、BGMなど、いろいろ入って曲数も多い。
「異次元のエデン」(LP収録)と「大宇宙、危機切迫!」(新規収録)はほぼ同じ曲だけど、演奏は「大宇宙、危機切迫!」の方が若干テンポが速く、リズ感も音の切れも良い。
TVバージョンを複数収録しているので、フルバージョンが収録されているし、短縮版を複数聴くよりも、曲想の違う曲をもっと聴きたかった。

歌以外では、《銀河漂流記》の前半はちょっと西部劇風の凄くコッコいい曲だし、後半は叙情美しいエレジー風の音楽。
《宇宙哀歌 (スペース・エレジー)》も哀感を帯びたサックスが叙情豊かで、同じくサックスが演奏する《遠い宇宙の果てまで...》は旅立ちの音楽みたい明るく爽やか。
《夢の船乗り》のインストウルメンタルとか、ジャジーな曲もたくさん入っていて、アニメのサントラというよりも、ジャズのフージョン聴いている気がする。ブックレットの解説によると、「ディスコジャズ」だそう。
全体的にスローテンポでサックスがしっとり歌う音楽の方が叙情豊かで心地よい。

とても残念だったのは、『太陽系7つの秘宝』で(偽物の)キャプテン・フューチャーの宇宙葬シーンで流れていた曲が未収録だったこと。オープニング曲をインストウルメンタルにした曲で、ゆったりとしたテンポの主旋律をチェロが弾いていて、哀感溢れてとても好きだったのに。

コロムビア・サウンド・アーカイブス キャプテンフューチャー オリジナル・サウント・トラック-完全盤-コロムビア・サウンド・アーカイブス キャプテンフューチャー オリジナル・サウント・トラック-完全盤-

大野雄二&ギャラクシー, タケカワユキヒデ, ヒデ夕樹, ピーカブー, 神代 ユースコーラス,
(2001/10/20)

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主題歌《夢の船乗り》を歌っているのはヒデ夕樹。ハミルトン原作を実写化したSFドラマ『スターウルフ』の主題歌《青春の旅立ち》も歌っていた。(このドラマも放映時に見ていたけど、この曲もとてもダンディで好きだった)
後に主題歌を歌っていたタケカワヒデユキよりも発音が明瞭でメリハリも抑揚のつけ方も良く、どこか哀愁漂う声なので、彼の歌声はとっても魅力的。

Yuji Ohno & Galaxy - 夢の舟乗り



エンディングテーマはなぜかフォークソング風の《ポプラ通りの家》。
アニメ本編とは全然関連性がない歌詞だけど(もともとNHKが提示したコンセプトがそうだったので)、セピア色の静止画と少女と子犬が草原のなかを走る動画が曲のイメージに良く似合っていて素敵なエンディング。美しく味わいのある日本語の歌詞とノスタルジックな雰囲気が好きで、この曲も一度聴いたら忘れられない。

キャプテン・フューチャー ポプラ通りの家



《おいらは淋しいスペースマン》も哀愁溢れて好きな曲。作詞は、原作小説翻訳者の野田昌宏とクレジットされているけれど、小説のなかで<コメット>を操縦中のキャプテン・フューチャーやオットーが歌っていた歌の歌詞(の日本語訳)がそのまま使われている。

Captain Future - I'm a lonely spaceman



Ohno Yuji - Captain Future Soundtrack (Capitaine Flam) - (Suite)

2曲目の《銀河漂流記》は、アニメの冒頭で出てくる”前回のあらすじ”シーンで使われていた。冒頭はウェスタン風でカッコいいし、後半の哀感溢れる旋律も美しい。


<ドイツ版サントラ>
もともと原作小説が多数の国で翻訳されていたので、ハミルトンとキャプテン・フューチャーの知名度が高かったこともあってか、日本のアニメ版も欧米で放映されて、特にドイツ(とフランス)で大人気だったという。

ドイツではアニメのDVD以外に、ドイツ人が作曲したオリジナルサントラやオーディオブックまで発売されている。
ドイツ版アニメ(1話4回分を3回に編集・短縮している)を見ていると、大野雄二の曲ではなくて、このサントラの音楽が使われている。日本版とはかなり違った作風で、ビートのよく聴いたリズミカルな音楽。CD買おうとは思わないけど、好きな曲がいくつか。

”Main Theme”の宇宙に広がるような女声のスキャットが綺麗。
コメットが宇宙を掛けるような”Hurra, wir fliegen”は明るくポップで楽しい。ここでも女声スキャットが入っている。
”Ein trauriger Fall”がメロウで美しい。
一曲だけ作風が全然違うのは、ジョオン・ランドールのテーマ曲”Joan”。音と旋律が素朴でほのぼの~。音色に木質感があるので、フルートでもピッコロでもなく、オカリナみたいな音がする(シンセの合成音?)。

Captain FutureCaptain Future

Christian Bruhn,
(1994/8/1)

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Christian Bruhn ‎– Captain Future [Space Funk] (1986) [Germany] (Full Album)



ドイツで製作されたCGを使ったコンセプトアート。ドイツ版の音楽が映像と良く似合っている。

Captain Future HD Trailer 720p Concept-Art


タグ:ハミルトン

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amazonで検索していたら、偶然にもエドモンド・ハミルトンの『キャプテン・フューチャー』シリーズが創元SF文庫から全集として復刻されているのを見つけた。SFに限らず小説類をほとんど読まなくなってから、新刊情報をチェックしていなかったので、出版されているのを全然知らなかった...。

伝説の奇想SF作家エドモンド・ハミルトンの傑作スペース・オペラ 〈キャプテン・フューチャー〉全20作+短編集1冊が創元SF文庫から刊行[東京創元社]

『キャプテン・フューチャー』は、小学生~高校生だった私の愛読書。
初めて読んだのが、題名に惹かれて(と思う)買った『輝く星々のかなたへ』。これがあまりに面白くて、当時ハヤカワSF文庫から出版されていた小説と、SFマガジン臨時増刊号(1983年7月)の『キャプテン・フューチャーハンドブック』を購入して、数十年後の今まで大事に保管していた。
随分長い間読んでいなかったので、本棚から全部引っ張り出してみると、なにせ古い本なので、カバーも本文も黄ばみとシミで経年劣化が激しく、インクも薄れていて読みづらい。ハヤカワSF文庫版はすでに絶版なので、買い直すこともできない。

創元SF文庫の『キャプテン・フューチャー全集』は、エドモンド・ハミルトン生誕100年記念出版として刊行されていた。
今は出版社の在庫切れ(=絶版状態?)だけど、中古本は多数出回っている。翻訳者の野田昌宏氏が書いた別巻(初出は『キャプテン・フューチャーハンドブック』)を除いて、第1巻~第11巻を全て購入。15年くらい前に出版された本なので状態はかなり良い。

ハヤカワSF文庫版のカバー&挿絵は水野良太郎で、アメリカンコミックみたいに線が太くて粗い。
創元SF文庫の鶴田謙二の画風は、全体的にアニメ風で緻密な描画とカラフルな色彩が綺麗で今風。グラッグがヒューマノイド型ロボットに近くて良いけど、キャプテンと(特に)ジョオンは日本人風なので、原作とは全然イメージが違う。
子供の頃に馴染んだせいか、ハヤカワ文庫の画風も捨てがたく、結局、カラー表紙と冒頭カラー挿絵と数枚の白黒挿絵だけ切り取ってから廃棄した。

キャプテン・フューチャーシリーズは、1940~50年代にかけて書かれたSF小説(スペースオペラ)なので、天文学や科学・技術的知識・アイデアがかなり時代遅れになっているところが多々あるけれど(データ保存がマイクロフィルム、月面基地の警戒システムに監視カメラが設置されていない、とか)、読み直してみると、子供時代にも増して面白くて一気に全巻読んでしまった。
何十回も読んだシリーズなのに、数十年後の今となっては、細部をかなり忘れていた話も多い。例外的にストーリーの全部をほとんど覚えていた話が『宇宙囚人船の反乱』と『魔法の月の決闘』。この2話は今読み返してみても一番好きな話。

宇宙囚人船の反乱/異次元侵攻軍迫る!<キャプテン・フューチャー全集7> (創元SF文庫)宇宙囚人船の反乱/異次元侵攻軍迫る!<キャプテン・フューチャー全集7> (創元SF文庫)
(2005/5/10)
エドモンド・ハミルトン (著), 鶴田 謙二 (イラスト), 野田 昌宏 (翻訳)



全集中、諸般の事情で実際にはハミルトンが書いていない話があり、その中で好きなのはカーティスが記憶喪失になって、偽のフューチャーメンが企画・監督する惑星創造プロジェクトのアシスタントになる『フューチャーメン暗殺計画』。一方、『異次元侵攻軍迫る!』と『小惑星要塞を粉砕せよ!』は、設定とストーリー展開のテンポが悪くてあまり面白いとは思えなかった。


全集最後の第11巻は短編集。前半の短編集は1983年に出版された『キャプテン・フューチャーハンドブック』で翻訳されていたので、全て読んでいた。
原作は1950年代に<スタートリング>誌に掲載されていた短編で、1万字という制約があったので、以前のようなスペースオペラ風の話は書けなかったらしい。
キャプテンフューチャーの科学的探究心や過信が招く危険性を描いた話が多いのが、1940年代に書いた小説とは違うところ。
ハミルトンは勧善懲悪のスペースオペラ小説だけを書いていたわけではなくて、長編の『時果つるところ』や『虚空の遺産』などでは、地球人やその先祖となった種族が滅亡していく虚無感や、最果てに存在する孤独感などが描かれているし、キャプテン・フューチャーの短編集にもそれと同じようなものが流れている。
ハミルトンの別作品と同じモチーフ・テーマを使っている短編が2つ。「<物質生成の場>の秘密」は、宇宙を自ら創造できる誘惑に憑りつかれる「フェッセンデンの宇宙」、「太陽の子供たち」は星の子供たちと交流する人間を描いた「太陽の炎」と相通じるものがある。

後半の「フューチャーメンとその仲間たち 知られざるエピソード」は初出翻訳の短編集。
フューチャーメンや愛機コメット、月の”ホーム”(月面研究所)だけでなく、エズラ・ガーニーやジョオン・ランドールの詳しいプロフィールも入っている。
どの話も面白く、特に好きなのは、「キャプテン・フューチャーの少年時代」、「キャプテン・フューチャーのもっとも不思議な冒険」、グラッグとオットーと「生きている脳」のそれぞれの誕生話、「グラッグのペット、月犬」。少年時代のカーティスの話はもっと読んでみたいくらい。

鉄の神経お許しを 他全短編キャプテン・フューチャー全集11 (創元SF文庫) 鉄の神経お許しを 他全短編キャプテン・フューチャー全集11 (創元SF文庫)
(2007/1/30)
エドモンド・ハミルトン (著), 鶴田 謙二 (イラスト), 野田 昌宏 (翻訳)



本編だけでなく、各巻末尾の解説が多彩で詳しい。当時のSF小説・雑誌・ヒーロー像の動向、アニメの制作経緯(番組放映リストあり)、海外のアニメDVD版の違い、ハミルトンの著作紹介などがコンパクトにまとめられて、歴史的にも興味をそそる話がいろいろ載っている。

長編・短編はもう2回読んだのに、また読み返している。おかげで今年の夏は暑さも忘れるくらいに楽しく過ごせたので、この全集を買って本当に良かった。
全集があまりに面白くて懐かしかったので、さらに1978年~79年にかけてNHKで放映されていたアニメ版『キャプテン・フューチャー』のフランス版DVDと、国内盤サントラCDもつい買ってしまった。

<関連サイト>
Captain Future
<AN INSIDE LOOK AT CAPTAIN FUTURE by Edmond Hamilton>


タグ:ハミルトン

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ホルストの《惑星》で最初に作曲されたのは、オーケストラ版ではなくて2台のピアノ版。
2台のピアノ版の録音はいくつかあり、Richard Markham & David Nettleがベストだと思う。
切れの良いタッチとリズムで躍動感とスピード感があり、ピアノの音の色彩感も響きも豊かで、煌きがあって華やか。
オケの方が色彩感も音量も豊かで迫力や威圧感はあるけど、ピアノ版は曲の骨格が浮き上がってどの旋律も明瞭に聴こえる。特に"Jupiter" はピアノ2台だけでもカラフルな色彩感がキラキラ輝き、躍動感溢れて素晴らしい。

原盤のSAGA盤は廃盤で、Netmarkから再発売されている。銀河に瞬く星々のジャケットが綺麗。
amazonのMP3ダウンロードリンクは間違い。私は以前にitunestoreでダウンロードした。

PlanetsPlanets
(2011/10/11)
Richard Markham & David Nettle

試聴ファイル(allmusic.com)


Holst - The Planets, "Mars" for Two Pianos
(Performed by Richard Markham and David Nettle.)


Holst - The Planets, "Jupiter" for Two Pianos


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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、ミンナール、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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