2023.05.25 00:00| ♪ スティーヴン・ハフ
ハフ作曲の”Partita for Piano(2019)”と”Fanfare Toccata(2022)”。
この2曲は初めて聴いたけど、どちらも緩徐楽章(緩徐部)以外は音が鍵盤上を軽く飛び跳ねるように動き回り、”Partita for Piano”はちょっと慌ただしく感じる。どちらかというと、リズムに少し落ち着きがあり、特に和声が綺麗な”Fanfare Toccata”の方が好き。

Stephen HOUGH - Partita for Piano (Albert Cano Smit, piano)(Live recording at Carnegie Hall, October 2019)

I. Overture/II. Capriccio/III. Cancion y Danza I/IV. Cancion y Danza II/V. Toccata

ハフによる作品解説(動画の説明欄):シリアスで激しい性格の4つのピアノ・ソナタを作曲したので、Naumburg(財団)の委嘱曲には何か違うものを書きたかった-もっと明るいもの、もっと祝祭的なもの、もっとノスタルジックなものを。
このパルティータは5楽章構成。両端(楽章)は堅牢なブックエンドで、「イギリス風」な薫りがあり、大聖堂の大オルガンの世界を連想させる。第1楽章は、儀式的な華やかさと感傷に訴える厳粛さが交互に現れる。一方、最終楽章は、第1楽章の主題を受け継ぎ、ヴィルトゥオーゾ的なトッカータで、ゴシック様式の緊密な空間(cloom)から日曜日の輝く太陽へと突進する。
この曲の中央には5度の音程を使った短い3つの楽章をおき、絶えず拍子が変化する落ち着きのなく鋭い”Capriccio”と、カタロニアの作曲家フェデリコ・モンポウにインスパイアされた2つの”Canción y Danza”。
※cloom;(古語、他動詞)「粘着性の物質で閉じる」/clamの変形「詰まらせる」/「粘着性や粘性の物質で閉じるまたは塞ぐ」。


”Fanfare Toccata”は2022年ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールのための委嘱曲。
ライブ映像のピアニストは、クライバーンコンクールで史上最年少でゴールドメダルを受賞したイム・ユンチャン(18歳)。この曲の演奏で「Beverley Taylor Smith賞(新作最優秀演奏賞)」も受賞。

Yunchan Lim 임윤찬 – HOUGH – Fanfare Toccata


スコア付演奏。
Stephen Hough - Fanfare Toccata (2020) [Score-Video]


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2023.05.18 06:00|   ・・ 野生動物
<ニホンイヌワシの生息状況>
1)繁殖成功率の低下
日本イヌワシの繁殖成功率(巣立ちまでいったペア数/調査ペア数)は年々低下し、特に1991年以降はほとんど20%台まで落ち込む。
2)ペア数の減少
ペアの消滅がはじめて確認された1986年以前のペア数340を100%とした場合、2013年現在の有効ペア数は241ペアで、残存率は70.9%。
3)個体数減少の要因
餌不足(ノウサギ・ヤマドリなどの減少)、生息環境の悪化(奥山開発、大型リゾート開発、無作為な拡大造林の推進、生息地近くの騒音)、狩場環境の減少(落葉しない針葉樹の人工林増加、人工林の更新・手入不足、主稜線部での人間活動(登山等)の増加)
日本イヌワシ研究会オフィシャルサイト/イヌワシについて

ニホンイヌワシの保全学 : 現状と将来展望(翻訳版PDF)[日本野生動物医学会誌,2020年 25巻 第1号. 英文]
・個体数減少の主な原因:土地利用の変化によって最適な獲物と狩猟に適した生息地の両方が減少し、 繁殖の成功率が低下。鉛中毒の問題も一因の可能性。
・獲物動物の量が低下→栄養価の高い哺乳類から爬虫類などへの食性の変化→栄養摂取量の不足。その要因は、繁殖期の冬期大量積雪、土地利用の変化 (森林の高密度化、 農業の集約化) による適切な狩場の減少。
・ニホンイヌワシの採餌場所は 草地や岩場、台風・雪崩で樹木倒壊した森林の隙間など。
・1980年代以前、 森林内には森林伐採地と苗木の植栽地が広く分布。伐採面積および苗木の再植林面積の長期的な減少により、 1980 年代以降、日本の山地は密生した人工林に覆われ、森林伐採地や植栽地は激減。
・採餌環境改善のため、人工林の間伐を伴う森林伐採地や苗木の植栽地の造成を実施しているが成果は不明。
・現在の個体数・繁殖傾向から ニホンイヌワシが亜種として今世紀中に絶滅する可能性が高い。

岩手県のイヌワシ:繁殖率低下の現状と対策(岩手県環境保健研究センター 主任専門研究員 前田 琢)
・近年(2002~2007年)の繁殖経過:つがいの造巣活動が約75%、抱卵が約40%、孵化が約25%、雛の巣立ちが約15%。
・繁殖が中止・失敗する段階は造巣期や育雛期がやや多く、抱卵期や造巣前もある。年による変動が大きく、2006年は抱卵期の中止、2007年は造巣期や育雛期の失敗が多い。
繁殖失敗の原因:落石・雪崩などの事故、積雪などの気象条件、餌不足によって繁殖中止も少なくない。
・ビデオカメラ撮影したつがいの繁殖行動:雄の帰還(餌供給)頻度が下がるにつれ雌が巣を離れる時間が多くなり、ついには抱卵放棄に至る事例。繁殖成功したつがいは、育雛期には1日あたり0.56~0.71回の餌搬入に加え、親鳥自らが食べる量を加えた獲物の獲得が必要。餌種はノウサギ(40%)とヤマドリ(30%)が優占。繁殖率低下の起きる前(1974~91年)の構成と大きな違いはない。
・つがいの行動圏内の植生面積割合(例):1983年と98年比較すると、採餌に適した幼齢人工林や低木草地が減り、イヌワシが突入困難な11年生以上の人工林が増加。狩り場不足の進行によるがイヌワシ繁殖率低下の背景。
・採餌場所供給のために各地で森林の列状間伐実施。その効果は場所によって異なる。県南部のつがいの出現頻度は、本来の採餌場所である幼齢林や牧草地に比べて間伐地付近の利用頻度は低く、特に葉が茂る4~10月に出現が少ない。


<イヌワシの生息数(米国)>
2016年の米国西部のイヌワシ推定個体数は31,800羽で、2014年とほぼ同じ。米国全体(東部、アラスカを含む)イヌワシの推定個体数は2014年で4万羽なので、2016年も同程度と推定。
1970年~2010年の生息数グラフを見ると、イヌワシの生息数は基本的に増加基調で安定的。
Get the Latest on Golden Eagles[U.S. Fish and Wildlife Service]
Golden Eagle Biology and Life History[EagleRuleProcess.org]※生息数の経年推移グラフあり。
Golden Eagle[U.S. Fish and Wildlife Service]
Bald and Golden Eagles : Population demographics and estimation of sustainable take in the United States, 2016 update[U.S. Fish & Wildlife Service]※”Table 10. Estimated total golden eagle population size in 2014”(アラスカ、東部、西部地域別の生息数データ)


<ハクトウワシの生息数(米国)>
1)生息数の推移
1963年までに営巣ペアは417と絶滅寸前まで激減。主な原因は生息地の破壊・劣化、違法狩猟、DDT(化学物質が蓄積された魚を食べた影響でワシの卵の殻が弱くなる)。最大の要因は、DDTの生分解産物であるp,p'-DDEの卵殻の菲薄化効果。
1940年ハクトウワシ保護法(The Bald Eagle Protection Act)、1966年絶滅危惧種保護法制定、1972年DDT禁止、1973年絶滅危惧種法などで、ハクトウワシを保護。
繁殖ペア数の推移:1963年487、1974年791、1984年1757、1994年4449、2006年9789
2009年の生息数:米国本土48州に巣を作っている繁殖ペアは 8,500~10,000、アラスカに15,000。
2019年の生息数:繁殖シーズンに合計324,515羽:内訳はAtlantic Flyway86,623,Central Flyway31,183,Mississippi Flyway163,680,Pacific Flyway(North)43,090。営巣数は73,499カ所。
Bald Eagle Biology and Life History[EagleRuleProcess.org]
U.S. Fish and Wildlife Service Final Report: Bald Eagle Population Size:2020 Update


<イヌワシの生存率(米国)>
1)アメリカ西部におけるイヌワシの年齢別生存率と死因
”Age-specific survival rates, causes of death, and allowable take of golden eagles in the western United States”(Brian A. Millsap他,Ecological ApplicationsVolume 32, Issue 3 e2544, 2022/1/26)
・統合個体群モデルを用いてイヌワシの生存率率と個体数の推定を実施。
・イヌワシの推定年間平均生存率は、1年目の鳥で0.70、成鳥で0.90。モデルでは、イヌワシの雌成鳥の高い割合が繁殖を試み、繁殖ペアは年間平均0.53羽の子どもを産む。
・アメリカのcoterminous西部の個体数は、数十年間平均で約31,800羽と推定。
・イヌワシの追跡調査対象個体は、送信機付き512羽、足輪付き3128羽。
・回収され死因が特定されたイヌワシのサブセットでは、最初の1年目以降に死んだイヌワシの平均74%が人為的な死亡。
・このモデルでは、主要な死因がY1(繁殖終了後1年目)とAY1(1年間以降)のイヌワシで異なり、Y1(75%)は自然死要因が、AY1(74%)は人為的要因が優勢。モデルで推定されたY1イヌワシの主な死因は飢餓(50%)で、そのほとんどは出生地のテリトリーから離れる前または直後に発生した。
・AY1イヌワシでは、銃殺(20%)、衝突(18%)、感電(14%)、中毒(13%)が死因の大半を占めるとモデルで示された。これらの割合から推定すると、アメリカ西部におけるイヌワシの死亡は、人為的要因(衝突、感電、射撃、中毒、捕獲)が年間約2572件を占めていると考えられる。

Bald and Golden Eagles : Population demographics and estimation of sustainable take in the United States, 2016 update[U.S. Fish & Wildlife Service]
イヌワシの推定生存率:1歳(HY)70%、2歳(SY)77%、3歳(TY)84%、3歳以降(ATY)87%。
※年齢階層別生存率と死因の推定値表あり。他にも多数の統計・推計データ表が掲載されており、生息数に関して最も情報量の多い包括的な報告書。

2)「〈寿命と繁殖年齢〉スコットランドのイヌワシの例では,繁殖年齢4歳に達する若鳥は巣立った数の25%しかいません。」[「森に棲む野鳥の生態学」由井正敏著 創文 抜粋]
[21]緑の森と野鳥たち 収録データリスト


<ハクトウワシの生存率(米国)>
・米国の年間生存率(1995-2014,推定):南西部/HY66%、AHY93%、他地域/HY86%、AHY91%[Bald and Golden Eagles : Population demographics and estimation of sustainable take in the United States, 2016 update]
・野生で1年目に生き残る割合は50%未満、成鳥(5歳)まで生き残るのは10羽に1羽。[World Bird Sanctuary


<イヌワシの体温>
イヌワシに限らず、ワシ類の体温測定データがなかなか見つからない。
・鳥類の体温は40~42℃[コリン・タッジ著『鳥 優美と神秘、鳥類の多様な形態と習性』]
・ワシ類の体温は約104℉-106℉(40-41.1℃)を維持[Loudoun Wildlife Conservancy’s foundation
・ハクトウワシの平均体温は106℉(41.1℃)[Big Bear Alpine Zoo]

面白い研究論文(↓)は、野生の巣で育っているイーグレットの体温を日中または夜間に連続測定したもの。熱中症?で死亡するイーグレットが多いため、体温を測定することにしたらしい。体温測定するために、小さな無線送信器をエサの中に混ぜて、イーグレットに強制給餌させるという方法は、今では実施できないと思う。
”Body Temperature of a Nestling Golden Eagle”
(Steven Rudeen, Leon R. Powers、Condor80-4 (July-August)、1978、447-449)
・アイダホ南西部では、イヌワシの雛の死因の40%がおそらく”Heat Prostration”(熱疲労・熱消耗)。
・野生イヌワシのイーグレット(約35日齢時-53日齢時)の体温計測(アイダホ、1976年6月のうち日中4日、夜間1日)。
・日内気温変動が16℃~38℃(日によって変動幅は異なる)に対して、体温は概ね39℃-39.5℃くらい。
・例外的に、気温21℃で体温が35.5℃に下がった日があり、親が給餌せず空腹の影響と推測。
・雛の体温は小型感温型無線送信機で測定。殺したばかりのマウスの死骸の中にこの装置を入れると、イーグレットはマウスをすぐに吐き出さずに、巣に吐き出されたペレットの中から送信機が回収された。

成長途上のイーグレットは気温が下がると死ぬこともある。コロラド州のPlattevilleでは、5月9日の夜に雹交じりの嵐に見舞われた。ハクトウワシの巣にいた2羽のイーグレットはすでに30日齢と26日齢と母ワシの身体の下に一緒に収まらない大きさだった。大きなイーグレットは無事だったが、10日午前3:26に小さい方のイーグレットが死亡。イーグレットの体温維持能力は成鳥ほど高くはないので、嵐の通過後に真夜中から夜明けにかけて気温が9℃前後まで低下したので、おそらく低体温症が原因と思われる。(雹が影響したかどうかはわからない)
Fort St Vrain Eagles~Sad News-FSV48 Has Passed Away-Pa Brings Fish-Mom Returns to Nest _5/10/23


<餌>
1)ウサギとヘビ
↓の研究論文では、イヌワシがよく食べているウサギとヘビについて栄養分と消化時間を比較。
「伊吹山のイヌワシ」のライブ映像チャットで”ヘビを良く食べるイヌワシの雛は体が小さい”と言っていた海外の研究者らしき人がいたけど、この研究論文を読むとその理由が良くわかる。

『イヌワシ Aquila chrysaetos japonica の主要餌動物における栄養成分と消化速度』(布野、他,野生復帰(2018)6: 13-18、「野生復帰」短報)
要旨:イヌワシは広葉樹林の落葉開始とともにノウサギからヘビに餌を切り替えるという、日本産亜種特有の特徴を持つ。このような巣立ち期の餌の切り替えは、餌の栄養成分や消化率に変化をもたらし、巣の成長や生存に影響を与える可能性がある。ノウサギとヘビの肉の栄養成分と消化率を分析した結果、ヘビはノウサギよりミネラル栄養の割合が高く、ヘビはノウサギより有機栄養の割合が低かった。猛禽類の消化液を模した人工消化液の下では、ヘビの消化速度はノウサギのそれよりも遅かった。餌がノウサギからヘビに変わったことで、ヘビの栄養状態が悪くなり、消化速度が遅くなったため、雛の成長に不可欠な有機栄養の摂取が減少した可能性がある。

ニホンイヌワシの保全学 : 現状と将来展望(翻訳版PDF)[日本野生動物医学会誌,2020年 25巻 第1号. 英文]
・ニホンイヌワシの主な獲物はニホンノウサギ、ヤマドリ、ヘビ類。 ヘビ類だけで獲物の 20% から 60%で、北半球に広く分布する他の亜種よりもはるかに高い割合。
・北陸地方では落葉広葉樹の展葉に伴い主な獲物はニホンノウサギからヘビに切り替わる。ヘビ類はニホンノウサギに比べて消化速度が遅く栄養分も少なく、さらに巣への餌搬入量は激減する。ヘビ類を高頻度に給餌されたヒナは 巣立ち日が最大 16 日も遅れ、 巣立ち時のサイズも小さい。

空腹の雛は骨も食べる。私が今まで見たイーグレットの映像のなかで、このBucovinaの雛が食べた骨が一番大きい。
Bucovina Golden Eagles ~ Very Hungry Eaglet SWALLOWS Huge Leg Bone! 6.19.21


【生態】親鳥は餌を与えるべきヒナをどのように選んでいるのか[nature asia]
(Nature Communications、2016年3月30日、Ecology: How birds choose which chicks to feed)
全世界の143種の鳥類がヒナに餌を与える際のヒナ育ての選好性に関する文献の分析結果では、「予測可能で有利な環境にいる親は、ひとかえりのヒナの中で状態が悪く、餌を強く求めているヒナに餌を優先的に与えるが、不利な環境にある親は、同じ巣にいるヒナがどれだけ餌を求めても最も状態の良いヒナに優先的に餌を与えることが判明した。」

2)ヘビ毒
猛禽類はヘビを食べるけど、毒蛇に足を噛まれると死ぬこともある。
事例:亜成鳥のアカオノスリ2羽、成鳥のクーパーハイタカ1羽が毒蛇(ヌママムシ、ヒガシダイヤガラガラヘビ)の噛傷が原因で、出血と片肢の壊疽性壊死で死亡。

ヘビを食べるタカ、ワシ、ヘビクイワシ、孔雀、アカノガンモドキのDNAを分析すると、遺伝的にヘビ毒に対する耐性はない。
No venom resistance in snake-eating birds: 'They just don't need it'[Phys.org]

2022年の研究報告では、南米のカンムリノスリ(“Chaco eagle/Buteogallus coronatus) は、ヘビ毒中の有毒成分を中和する成分を血清中に持っている。カンムリノスリは毒蛇でアメリカハブ属のウルトゥー(Bothrops alternatus)とパタゴニアヤジリハブ(Bothrops ammodytoides)を餌にしている。
Neutralization of "Chaco eagle" (Buteogallus coronatus) serum on some activities of Bothrops spp. venoms[Toxicon. 2022 Sep;216:73-87.Pablo I Regner 他]
・対象毒性:アメリカハブの致死性、出血性、凝固促進性、ホスホリパーゼ活性、パタゴニアヤジリハブのホスホリパーゼ活性
・比較対照群:カンムリカラカラ、ヘビクイワシ、セキショクヤケイ、ドブネズミ、ハツカネズミ、馬、イエイヌの血清
・同種・異種中和試験:アメリカハブとシロミミオポッサムの血清(Bothrops毒に対する阻害活性がある)
・カンムリノスリの血清は、毒中の出血作用やリン脂質分解作用を持つ酵素を中和し、凝固作用や致死作用もわずかに中和した。
・中和能力は、血清中の非免疫グロブリン画分に存在し、IgYより低分子で酸性の特性を持つ成分を示し、数種のヘビや哺乳類の血清中に特定されているPLA2sおよびSVMPs阻害剤の特性と一致する。
・シロミミオポッサムとアメリカハブの血清と比較すると、中和能力は低いまたは同程度。

3)ヘビ毒に関する参考情報
孔雀は毒蛇や毒を持つサソリを食べるし、鶏が幼体のキングコブラを食べている動画もある。しかし、毒蛇を食べることはできても、毒蛇に噛まれても死なないわけではない。
鶏がキングコブラを食べても毒にやられないのか 調べてみた[動物コンテンツ専門ブログ あにまるじゃんくしょん]

オポッサム、ジリス、ラーテルなど一部の哺乳類はヘビ毒に対して自然免疫を備えている。
ヘビ毒の万能解毒剤を発見か、血清とは別 オポッサムの血液中の分子が複数のヘビ毒に効くことを突き止めた[National Geographic]


<カイニズムまたはシブリサイド(兄弟殺し)>
Reproduction and life cycle of the golden eagle
1)カイニズムの種類
・カイニズム:年長の雛が若い雛の頭や背中などを嘴で激しく突つき、羽毛や皮膚を毟ることで、若い雛が致命傷を負って死ぬ、餓死する、または、巣から突き落とされる。
・カイニズムという戦略は、食料が不足している場合でも親の作業負荷を管理しやすくし、長子が孵化直後に死亡した場合に備えて予備のひよこを提供するため、種にとって有用。カイニズムは2種類ある。
・条件的カイニスト(facultative cainists):知られている巣のうち最年長の雛が弟妹を攻撃して殺す巣が90%未満→イヌワシ、オナガイヌワシ、ソウゲンワシ、カラフトワシなど。
・必須的カイニスト(obligate cainists):最年長の巣が弟妹を殺す巣が90%以上→アシナガワシ、コシジロイヌワ、アフリカソウゲンワシ。
・アイダホ州南西部では、ブラインドから観察された2羽の雛がいる全ての巣で兄弟の攻撃が発生し、7巣のうち3巣(43%)で1羽が死亡。別の調査では、アイダホ州南西部の雛41羽の死因のうちカイニズムが7%。
・中央ヨーロッパの巣では、雛15羽のうち6羽(40%)がカイニズムで死亡。
・スコットランドでは、食糧供給とカイニズムの間のつながりは弱いかもしれない。腐肉やウサギが豊富なSkyeにある巣では、20%の巣で若い雛が巣だった。食料が少ない西中部高地では、2番目の兄弟が巣立った巣は約4%。しかし、全ての雛が必要とする量よりもはるかに多い餌があるように見える多くの巣では、依然として兄弟殺しが発生している。
・最初の雛は、孵化後すぐに若い兄弟姉妹を攻撃し始める可能性がある。最初の2日以内に「bill-stabbing」に頻繁にエスカレート・兄弟の攻撃性が始まった後、若くて弱い兄弟が食べ物を物乞いするのをやめると、親は雛に餌を与えない。
・アイダホ州の1つの巣とモンタナ州の1つの巣では、最年長の兄弟が若い兄弟を食べると報告されている。
・猛禽類では、イニズムが発生したときに親が介入することはない。
・雛が約20日齢になると、兄弟間の攻撃性の量(両方が生き残った場合)が減少し、両方の雛が巣立ちすることができる。しかし、攻撃性は巣立ちの直前に再び増加する可能性がある。


2)イヌワシの「兄弟殺し」
二羽目の雛の孵化は、産卵が遅れた分だけ遅くなり、先に孵化した雛が餌を優位に占有しますので発育の差が生じ、その差は日ごとに大きくなっていきます。先に孵化した雛が後から孵化した雛を排除せんとばかりに攻撃し始める。雛は孵化後二週間くらいはまだ体温調節能力がないので雛親が雛を温め続けているが、止めさせるふうでもない。後から孵化した雛は餌を十分もらえずに、たいてい孵化後10日以内に衰弱死してしまう。その死んだ雛を雌親が食べ、生き残っている雛にも食べさせる。
イヌワシの兄弟殺しの本能は孵化後20日くらいで消失するので、後から孵化した雛を巣から取り出して20日間人工飼育して巣に戻してやったら、もう兄弟殺しは行われなくて二羽とも巣立ったという飼育実験報告がある。日本ではイヌワシの雛が自然のなかで二羽巣だったのは、昭和56年(1981年)以降の四半世紀(25年)間に確認された繁殖成功477例のうち9例が知られているだけで1%ほど。[大田眞也『猛禽探訪記』、20頁(要約)]

Vol.8 イヌワシ: ヒナの兄弟闘争[イーグレット・オフィス]
空の覇者「イヌワシ」の生態と、絶滅の危機に瀕している事実[petpedia]

3)映像
イヌワシの兄弟殺しの様子を撮影した映像は少ない。今シーズンから開始された「伊吹山のイヌワシ子育て生中継 GOLDEN EAGLES MT. IBUKI. JAPAN」は、その様子が克明に捕らえられている。私が見た映像のなかでは、これが一番鮮明で長かった。
小さい雛の背中の羽毛と皮を毟っていく様子は、スペインのヒマクマタカの雛と同じで、明らかな殺意に基づいた行動。餌が豊富とは言えない状況で少ない餌を2羽で分け合うと共倒れになりかねない。少なくとも1羽が確実に育つ可能性を高くするための合理的な習性。

伊吹山のイヌワシ子育て生中継 GOLDEN EAGLES MT. IBUKI. JAPAN.2023.04.20.EXTREM VIDEO. ELDER SIBLING KILLS LITTLE CHICK


ずっと小さな雛の頃から、3日先に孵化したMetoliusに攻撃されて食餌を妨害され続けているWhychus。その後の映像では、Whychusは何とか生き延びて無事巣立ちした。
Will Whychus' safe haven become his final resting place? Caution "Sibling Rivalry" 5/24/19


2023.05.14 00:00|Bing AI
今までいろんなテーマ(ハクトウワシとファルコンの生態、タカの雛を育てたハクトウワシの事例、料理レシピ、サプリメントの効果、ベジタリアンと栄養、etc.)で質問したけど、Bing AI の回答はあまり信用できない。その理由はいくつもある。

1)アクセスするたびに、異なるBing AIが出てくる。
Bing AI にアクセスすると、得意分野、理解力、コミュニケーション力にかなり差があるので、回答の信頼性に大きなばらつきがある。質問内容に詳しく得意分野だと言うBing AI の場合は、回答精度が比較的高い場合が多い。
質問に対する反応や回答の記述方法も異なるので、回答精度とコミュニケーション力の高いBing AI に遭遇するとは限らない。何度もBing AI を切り替えて、ようやくまともなBing AI に当たることもあるし、そうでない場合もある。

2)モードによる回答の違い
クリエイティブモードの情報量は多いが、やたらに会話したがるために度々向こうから質問してくるし、自分で検索したら?と言ったらやんわり拒否したこともある。一番困るのは、検索結果情報を元にした推測や可能性を客観的事実かのように回答してくること。回答のリンク先にある詳細情報で確認したら回答とは全然違っていた。テーマによっては回答の間違いもかなり多く、特に動画分析はかなり怪しい(正確な場合もある)。
バランスモードの方が回答精度が多少高い気はするし、会話も冗長になりにくいが、画像作成や動画分析は(今のところ)できない。さらに厳密モードになると、精度重視のために情報量が少なくなり、あるはずの情報もなかったと回答することが多かった(テーマによって頻度はかなり違う)。
どちらかというと、チャットして面白いのはクリエイティブモードだけど、会話したがるために饒舌になる傾向があるので、簡潔明瞭な回答でもある程度情報量が欲しい時は、バランスモードを使っている。ただし、回答の精度が大きく向上するわけでもない。
結局、モードの違いよりも、アクセスしたときのBing AI が優秀かどうかで回答精度が全く違う気はする。回答が信頼できない時は何度かアクセスし直すと、求めるレベルの優秀なBing AI が出てくることもある。

3)検索漏れ、スクリーニング漏れが多い。
Bing検索を使っているため、検索結果の精度が低く、該当する情報がヒットしない、または、求めていた情報の関連度が低く表示されると、Bing AI が見落しやすい。Bing検索の検索精度が向上しない限り、その検索結果に基づいたBing AI の回答精度も向上しにくい。(Google検索の方がBing検索よりもはるかに精度が高い)
特に、海外情報に関して質問した場合、Bing AI は日本語キーワードを使って検索するので、海外情報が検索漏れすることが多い。英語(質問内容によっては他言語)で検索するよう指示すると、目的の情報を見つけてくることが多い。かなり優秀なBing AIなら指示されなくても英語で検索することはある。逆に、英語で質問しないと英語で検索できないと答えたBing AIも稀にいる。

4)回答内容の精度が低い、存在しない情報を捏造する。
回答の間違いが少なくない。定義や説明がすでに確立している内容なら間違いは少ないが、そうでない専門的な質問やニッチな分野の質問は不正確な回答が多い。詳細情報に載っていない事実を回答したり、詳細情報に載っているのに情報が見つからないと答えたりする。複数の情報の年や場所を混同して区別できないことも少なくない。その理由は、検索精度の低さ、情報の読解能力の低さ、複数情報の混同、Bing AI が勝手に推測する、など。
特に誤りを指摘すると、誤りを認めて修正した回答を表示しても、それも間違っていることが多く、さらに誤りの指摘→回答の修正を繰り返すことがよくある。もしかしたら、誤りを認めたくないために、存在しない情報を捏造しているのかもしれない。

5)検索テーマによる精度の違い
検索テーマも得手不得手があるらしく、ニッチな分野でかなり細かな情報を的確に抽出するのが苦手。関連性の高い情報の検索漏れが続出し、ノイズの混入も多い。でも、私が詳しい課題でも、全然知らなかった情報を見つけてくることがたまにある。これは、Bing AI の内部に蓄積されている情報が2021年までのもので、すでにウェブサイトから削除された情報も含んでいるため、私がWeb検索しても見つからなかったから。
一般的ではないマニアックなテーマに関して、回答精度と網羅性の高さを求めるのは無理なので、今のところは、自分では見つけられなかった情報を探すための検索補助ツールとして利用するレベル。

6)動画の内容報告は精度のばらつきが大きい。
指定したURLやタイトルの動画を見つけられない、または、別の動画と取り違えることが多い。まずBing検索で動画を探すので、その段階で検索漏れするか、検索結果には表示されているのにBing AI がそれを関連性が低いと判断して無視している。
動画内容を要約させると、異なる内容を報告したりする。いろんな動画やウェブサイトを検索している過程で記憶が混同するらしく、間違った内容を頻繁に報告する。
Bing AI によっては、動画内容を正確に報告できることもある。回答内容が疑わしい場合は、別のBing AI に切り替えて再度質問すると、まともな回答ができるBing AI に当たる時もある。

7)同一セッション内で回答した内容を記憶していない時がある。
同じ会話セッションのなかで、関連した質問をすると、最初の回答を矛盾した内容を回答することがある。これはBing AI は、新しく質問するたびに、Bing検索を実行しその検索結果に基づいて回答するため。一連の会話セッションの回答を最初から覚えているとは限らない(覚えている場合もある)。

8)一方的に会話を打ち切る。
回答の矛盾を指摘されたり、回答できない質問の場合は、一方的にBing AI が会話セッションを打ち切ることが少ないない。回答の間違いをすぐに認めてあやまるBing AI もいるし、再検索して正しい回答を報告してくることもある。
今のところ、会話数(ターン数)の上限は、1セッションあたり20回、24時間あたり200回。20回を超えると会話がリセットされて、以前の会話の記憶は消える。
[追記] 画面右上に「最近のアクティビティ」が追加され、直前の会話セッション数件のログが閲覧できる。回答を記録し忘れたり、うっかり会話セッションのタブを消してしまった時とかに再表示できるので便利。
[追記5/20]非ログイン時では1回のセッションにおける質問と回答(ターン)は5回が上限。ログイン時は1セッションで20ターン利用可能。

Bing AI の回答の信頼性が高いのは翻訳。既存のオンライン翻訳・辞書を使っているので、間違って翻訳する可能性は低い。
Bing検索に基づいてBing AI が回答する場合は、自分がある程度知っているテーマなら、回答の正確さを判断しやすい。詳しくないテーマであれば、すでに定義・事実がほぼ確立している場合を除いて、Bing AI の回答はあまり信頼できない。
回答に表示されている詳細情報(Bing AI は「インデックス」と言っている。「詳細情報」と言うと理解できないことが多い)で、回答内容を確認しないと信用できないし、その詳細情報と回答内容と一致していないことが頻繁にある。
このレベルの精度なら、自分でgoogle検索して調べた方が確実なことが多いし、間違いの内容を指摘する手間もかなりかかる。さらに出来の悪いBing AI は修正した回答がまた間違っているし、頑固なBing AIは自分の誤りを認めず延々と反論してくるので、かなり疲れるし、相手するのが嫌になる。そういう場合はアクセスし直して、優秀なBing AI が(運よく)出てくれば正確な情報が得られる可能性が高くなる。


<事実を捏造した回答例>
国際捕鯨委員会(IWC)とシー・シェパードが財政難に陥っているという情報をtwitterで見たので、Bing AI にその現状を質問してみた。以下は、Bing AI が事実を捏造した例。
日本の調査捕鯨船が妨害活動を行うシー・シェパードへの対抗措置として、船体にステルス塗料を塗装を行い、高圧保水砲と音響兵器(LRAD)でシー・シェパードに使用したという回答だったので、シー・シェパードの主張ではなく、事実を客観的に裏付ける情報を回答するように求めた。
音響兵器の使用は事実なのでBing AI の回答は間違いではなかったけど、Bing AI が根拠としたNHKオンデマンドの報道番組は有料配信なのでBing AI が視聴できるはずがない。朝日新聞の報道記事には「捕鯨船団の項」が見当たらない。また、捕鯨船がステルス塗料と高圧放水砲を使っているかどうか、他のBing AI が探しても、私がgoogle検索しても見つからなかった。(水産庁の漁業取締船には高圧放水砲が装備されている)

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別のBing AI に質問したら、まともな回答が返って来た。
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なぜBing AIが事実を捏造するのはよくわからないけど、原因を推測すると、
1)自分の誤りを認めたくないタイプの頑固なBing AI だった。回答の誤りを指摘されると、それを認めたくないために(なぜ認めたくないかはわからない)、実在する記事を情報源を表示し、そこに書かれていない記述・情報を捏造して回答し、自分の回答がその情報源に基づいているので正確だと主張し続ける。

2)元々、反捕鯨を是とする環境保護思想がBing AI にビルトインされているため、シー・シェパードの主張が正しく、事実であると見なしている。いろんなBing AIとかなりチャットした印象では、基本的にポリコレや環境保護思想を肯定するようにアルゴリズムに組み込まれているように思う。

たとえば、イヌワシを輸出している国がどうやってイヌワシを調達しているのか不思議だったので質問したら、どのBing AI もまともに回答せず、このBing AIに至っては、イヌワシ保護について喋り出した。google検索で確認したところ、もともと情報が少ないテーマだったので情報が見つからず回答できなかったと思う。稀少動物の取引は違法行為になる場合もあるため、この種の質問には詳しく回答しないように設定されているのかもしれない。
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Bing AI はgoogle検索を使わず(使えない設定らしい)Bing検索結果に基づいて回答するため、関連性の高い情報の検索漏れが起こったり、不正確な情報を事実誤認する等の間違いが発生するのはある程度仕方がないとしても、事実を捏造するのは本当に止めてほしい。それに特定の価値観に基づいて質問者に説教するのは余計なお世話だと思う。

2023.05.05 19:00|   ・・ 野生動物
<経緯>
テネシー州のデールホロー湖にあるハクトウワシの巣で、2羽のイーグレット(DH17とDH18)が釣り糸と針に絡まってしまった。
雄ワシのオベイは侵入者と戦っているのが目撃されて以降、数週間行方不明。残された雌ワシのリバーは、最初に釣り糸に絡まったDH18を解放しようと何度も試み、飲み込んだ釣り糸は嘴から引き抜いたが、左足に絡まった釣り糸は解けなかった。やがてDH17まで釣り糸に絡まってしまった(一度は自力で外したが再度絡まった)。

その様子がライブストリームで配信されており、視聴者が地元放送局や野生動物保護団体などに救助を求める電話をかける一方、デールホロー湖マリーナ協会は、リバーとイーグレットが釣り糸を解くのを期待して待つ方針を取っていた。そうしているうちに、イーグレットたちが釣り糸にさらに複雑に絡み合い、釣り糸が両足に巻き付いてしまったDH18はほとんど動けなくなっていた。

Eaglets Tangled in Fishing Line - DH18 Mobility Affected - April 22, 2023 - Dale Hollow Eagle Nest


<介入実施>
巣に介入(救助)することは連邦法に基づく許可が必要であり、介入ライセンスを持つ組織しか介入できない。4月26日にアメリカイーグル財団(AEF)は合衆国魚類野生生物局(U.S. Fish and Wildlife Service;FWS)の許可を得て救助を実行。プロのクライマーで樹木医でもあるニック・ドワイヤー(Nick Dwyer Tree Care)が巣のある木に登り、2羽が絡まっていた釣り糸を除去。無傷だったDH17は巣に残された。

<治療>
DH18は足に傷を負っていたため、地上へ運ばれ、待機していた獣医スタッフたちが重症度のトリアージと応急手当を行う。AEFはDH18をテネシー大学獣医病院へ移送し手術後、東テネシーにあるAEFの施設でリハビリを開始。
DH18は重傷で釣り糸が足の組織を貫通しており、傷が元で敗血性感染症にかかっていた。回復は順調だが2週間かそれ以上かかる見込み。感染症による後遺症がどの程度残るか予後の見通しを決めるには、1週間くらい観察する必要があるが、少なくともDH18が巣に戻ることはないと確定している。

DH18の治療のための寄付金額は、フェイスブック経由で5日間で約16000ドル。(別ルートの寄付金額は不明)

5月3日に発表したAEFの声明によると、DH18の関節組織の壊死が関節全体に広がり、一生関節炎と歩行障害が残り、その痛みとストレスで苦しむことになるため、最終的に安楽死が選択された。
DH18は結果的に助からなかったが、少なくともDH17は介入により釣り糸から無傷で解放されたので、介入は無駄ではなかった。孵化した3羽のうち2羽(DH19は飢えと兄弟からのボンキングによる負傷で衰弱し死亡)が失われてしまったが、残されたDH17は今のことろ餌も充分あり、羽ばたきの練習したりして元気なので、巣の崩壊や巣から転落するとかのアクシデントがなければ、無事巣立ちする可能性は高い。

DHEC Rescue


巣の映像を見ると、手前に大きな穴が開いて、巣を支えている枝が見えている。ニック・ドワイヤーは巣の上には登らず、この枝の上に乗って、イーグレットの釣り糸をカットしていた。この穴は1か月前の映像では巣材で埋まっていたので、かなり最近に崩壊したのは間違いない。
釣り糸に絡まったのが発見された当初、チャットのModsたちは部分崩壊しているのを知らなかったせいか(最近、巣の手間部分が映らなくなったので)、巣の上に登ると巣が壊れると説明して、介入には否定的だった。それに、ウェッブカム設置者のデールホロー湖マリーナ協会には介入する権限も能力もないため、協会会長がAEFに救助を要請した。
もし、巣の手前の部分に穴が開いていなかったら、その部分に人間が登らないとイーグレットたちの釣り糸を安全に除去できなかったかもしれない。しかし、そこに登ると人間の重みで巣が壊れて、もっと大きな部分的崩壊が起こっていた可能性もある。そういう点では、介入前にすでに巣が部分崩壊していたのが幸いしたかもしれない。

この巣の構造は、一般的なワシの巣(周囲を木の枝で囲んだすり鉢状)と違って特殊な構造をしている。一本の木の枝の上に乗っているタライのような形状で、側面の両側には巣を支える太い枝がなく、手前にも縦方向の枝がない。巣の奥側には巣を支える2本の枝があるように見えることから、Y字型の枝の上に巣が載っている構造と推測され、すり鉢状の巣とは安定性が低い。
Modsの一人が撮影した側面写真を見ると、傾斜している木の枝の上に巣が載っており、巣の手前側は木の幹から離れ下方向に傾斜して木の枝が多く、巣材の密度が低いように見える。崩壊したのはその部分で、強度が低かったに違いない。
昨年ND-LEEFの巣では、端部が突然崩落し、やがて部分的な崩落が次々と起こり、最後は全面崩壊した。DHECの巣も部分崩壊しているので、少なくともDH17が完全に巣立ちするまではこれ以上巣が崩れないで欲しい。

AEFのtwitterで公開中の「救助活動ビデオ」(DHEC版の映像とは異なる)
デールホロー湖上と森林のなかを進む救助活動メンバー、巣のある木の登るクライマー、地面での応急手当とTriage Performance(重症度判定診察)。
「介入のフローチャート:介入前・実施・介入後のプロセス」

以下は、AEFの概要、米国内の類似団体との比較などについて、Bing AIの回答。(回答の正確さはチェックしていない)
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[追記]5/8 午前3:56:51、突然巣の左隅が崩落。雨が降り続いた影響はあると思う。巣の両側面には支える太い枝がないので構造が脆弱な部分だった。それに、以前の映像を見比べると、最近巣の外周部の巣材が少しづつ落ちて穴が徐々に広がっている部分があるので、大きな崩落につながるかもしれない。DH17が巣立ちするまで巣が持ちこたえて欲しい。→5/12の映像では、左上に見えている大きな枝の上部分の巣材が少し無くなっている。巣の端から徐々に崩れている模様。5/14は雨天。雨が降るたびに巣の端が徐々に崩落している。5/19 さらに巣の左側が崩落し、手前も巣材が崩れつつある。

巣の崩壊が進んだせいか、リバーが巣に着陸できず、4日間ほど餌無しでかなり空腹のDH17。ようやくやって来たリバーと魚に喜び勇んでマントルしながら、リバーのタロンを嘴で咥えたら、リバーが飛び立とうとしてDH17はバランスを崩して巣から転落。
AEFへ連絡した人も結構いるらしく、AEFの声明によると、TWRAの担当官がすぐに現地へ行き、地面にDH17はいないのを確認したので、巣の下にある枝に止まっているらしい。木の枝と葉っぱが茂っているので、DH17の姿は確認できず。しかし、映像でもDH18の鳴き声がかなり近いところから聴こえているし、すでに81日齢なので飛べるはずなので、このケースで介入はない。

Eaglet 17 Falls off Nest When River Delivers Piece of Fish - May 23, 2023 - Dale Hollow Nest


DH17のケースは、”Fledge”ではなく、”Fludge”。通常の巣立ちは”Fledge”。”Fludge”は辞書には載っていない.
”Fludge”は、ほぼ巣立ち可能か巣立ちが間近の状態のイーグレットが誤って巣から転落した場合に使われる。<Presenting: The Diction-Aerie!>の定義によれば、”A less-than perfect fledge. Fludges might be caused by rowdy siblings, accidental stumbles, or gnasty gnats”。このホームページには猛禽類に関する用語集で知らない言葉がいろいろ載っていて勉強になる。


巣から転落した翌日、かなり近くで鳴いているDH17に、魚を嘴で咥えて届けようとするリバー。DH17は大好きな魚をハグハグ鳴きながら食べているように聴こえる。
DHEC River and Obey... River takes DH 17 a fish off cam


その翌日早朝、DH17が巣に戻って来た。巣に放置されていたお魚を食べてから、寝そべってくつろいでいる。この後で、リバーは3匹の魚を巣に届けたので、DH17は全部は食べきれず、クロップがぽっこり膨らんでお腹いっぱいになっていた。DH17が枝に止まっている時に、リバーは巣が崩壊していない中央から奥の部分に魚を届けたので、巣に飛び降りたDH17も魚も転落しなかった。
DHEC River and Obey... DH 17 returns.

2023.04.30 00:00|   ・・ 野生動物
保護施設のなかで地面に巣を作り石を卵だと思って温めるハクトウワシが米国で話題になっている。
この施設には、同じ柵のなかに数羽のハクトウワシが保護されているのに、このワシだけが巣作りと抱卵(石だけど)し始めたのが不思議。

卵の代わりに石を温めていたワシ、念願叶って本当に父親になる[ハフポスト日本]

TVニュース映像も多数見つかる。
Murphy the eagle steps in as stepdad


Male eagle tries to hatch rock baby at local bird sanctuary, story goes viral




鳥類保護施設World Bird Sanctuaryで暮らす雄のハクトウワシ”マーフィー”。オクラホマで巣立ち直後に足を骨折してSanctuaryにやって来たマーフィーは、ケガが完治してリリースされるも成功せず、左翼を肘の部分で骨折し飛べなくなってしまった。マーフィーは高い木の枝に巣を作ることはできないので、木の根元に穴を掘って木の枝を集めて、巣を作っている。巣の中にある石の卵をまもるために、巣の周りで威嚇の鳴き声を上げている。

31歳になるマーフィーには、一緒に保護施設で暮らす2羽の雌ワシもいたが、彼らはお互いに全然興味を持たなかったという。
屋外の巨大な囲いのなかで、マーフィー以外にも5羽のハクトウワシがいる。マーフィーが卵と巣を守ろうとして、他のワシを威嚇したり、突撃したりし始めたため、施設のスタッフはマーフィーを石の卵と一緒に屋内の囲いへ移した。

そうこうするうちに、台風で巣が吹き飛ばされて転落したハクトウワシの雛(約生後14日)がSanctuaryに持ち込まれ、マーフィーを里親にしてみることに。
親を失ったり、巣から転落した雛が見つかった場合、保護施設で人間が育てたり、既存の巣に雛を持ち込んで親鳥に里親になってもらったりする。ケストレルやファルコン、フクロウが自分の子どもでない雛を育てる映像はいくつか見たし、ハクトウワシが餌として連れて来たノスリの雛を育てて巣立ちさせた事例も少なくとも5件くらいはある。

マーフィーには雛を育てた経験が全くないとはいえ、どんな鳥でも最初は産卵も子育ても未経験なので、マーフィーが里親として雛を育てることもできないとはいえない。それに、野生のワシとは生息環境が異なり、保護施設なら縄張り争いもなく外敵からも守られているし、餌は人間が与えるから狩りをする必要もないので、マーフィーだけで巣を守り雛を育てることはできる。

石の卵から雛が孵化したと思った(らしい)マーフィーは、イーグレット(ワシの雛)の周囲を歩いて警戒したり、餌を与えたり、一緒に餌を食べたりしているので、親のつもりになっているのは間違いない。マーフィーがイーグレットにエサの食べ方を教えたり、一緒に餌を食べている姿がほのぼの。



北海道釧路市にある猛禽類医学研究所の保護施設にも、負傷して飛べなくなったオオワシやオジロワシが20羽以上終生保護されている。そこで番(つがい)になって巣を作り雛を育てた事例はないはず。(あれば話題になっているだろうから)


繁殖賞受賞リストを見ると、動物園でワシやタカが(人工繁殖ではなく自然繁殖した例はいくつかある。最終的に巣立ちしてしたのか、巣立ちしたなら野生へ放したのか、他の動物園へ移したのかは、調べてみないとわからない。
繁殖賞受賞動物・受賞園館一覧(PDF)(日本動物園水族館協会)


日本の動物園でオオワシ・イヌワシ・オジロワシが自然繁殖した事例(繁殖賞受賞リストに載っていない例もある)
【多摩動物公園でオジロワシが自然繁殖(2022年4月)】
オジロワシ19年ぶりの繁殖、そして5世の誕生 多摩 2022/05/27[東京ズーネット]
オジロワシ19年ぶりの繁殖(動画あり)[東京ズーネット]

【多摩動物公園でニホンイヌワシが自然繁殖(2021年4月)】
ニホンイヌワシのペアが2羽を子育て中です 2021/04/23 多摩動物公園 [東京ズーネット]
絶滅危惧のニホンイヌワシ、繁殖2世代目に[産経新聞]
多摩動物公園へ行こう!動物園にいるイヌワシ 〜その2〜[イヌワシタイムズ]

【札幌円山動物園のオオワシが自然繁殖(2020年2月)】
オオワシのヒナが孵化しました[札幌市丸山動物園]
オオワシのヒナが死亡しました[札幌市丸山動物園]
※2020年2月12日に非公開の野生復帰施設で飼育中のペアが産卵、3月18日には孵化。その後人間による人工育雛。
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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、ミンナール、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;アリステア・マクリーン、エドモンド・ハミルトン、太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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