ガヴリリュク ~ バッハ=ブゾーニ/トッカータとフーガ ニ短調
2011-06-08(Wed)
バッハのオルガン曲で最も有名な(と思う)《トッカータとフーガ ニ短調 BWV565》。
冒頭のドラマティックでかなりオドロオドロしい旋律は、まるで悲劇の幕開けを告げるような趣き。
この冒頭の旋律からして好きではないので、オルガンの演奏でも、編曲版でもまともに聴いたことはない。
これだけ有名な曲なので、編曲したくなる作曲家やピアニストは数多く、
<バッハの音楽の曲目データベース>の編曲版リストを見ると、全部で25種類。
ブゾーニ、レーガー、シロティといった名だたるバッハ編曲者もやっぱり編曲している。
たまたまYoutubeで見ていたガヴリリュクのブゾーニ編曲版のライブ映像。
オルガンと違ってピアノの音だとオドロオドロしさが薄くなって、さらに生気と迫力漲るガヴリリュクの演奏が素晴らしく、全然イメージが違う曲に聴こえる。
冒頭のトッカータの力強いピアノの響きがドラマティックなのも良いけれど、それよりもその後に続くフーガの美しいこと。
ブゾーニらしくピアニスティックで華麗な編曲ではあるけれど、ガヴリリュクらしいピアニッシモの響きの瑞々しい美しさが静寂で厳粛な雰囲気によく映えている。
力強く深い響きのフォルテは大聖堂のように聳え立つような荘重堅牢な重厚感も充分。
ガヴリリュクの良いところは、技巧的な曲を切れの良く安定したメカニックで弾いても、外面的な煌びやかさが前面に出ずに、音楽そのものを聴かせるところ。
ALEXANDER GAVRYLYUK BACH-BUSONI TOCCATA / FUGUE D MINOR
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コメント
ガヴリリュクくんの演奏聴かせていただきました。
すごくいいですね。
彼は音が本当に綺麗なピアニストですよね。
以前行ったコンサートで超絶技巧の曲だけでなく古典も良かったことが印象に残ってます。
11日にこちらであるコンサートにも行く予定で、楽しみにしています。
マダムコミキ様、こんばんは。
ガヴリリュクは、ロマン派的なシャコンヌもとても良かったですが、トッカータの方が古典的な雰囲気が強くて、こっちの方がさらに好きかもしれません。
それに、演奏が良いのはもちろん、このところブゾーニをよく聴いているので、昔と違ってかなり編曲版と波長が合うようになりました。
ガヴリリュクはCDで聴いたハイドンもプロコフィエフも良かったし、古典・ロマン派・現代曲まで何でもきちんと弾ける才能豊かな人なんですね~。
私は行けませんでしたが、大阪のリサイタルを聴いた方々には大好評だったので、東京でも期待して大丈夫でしょう。
そういえば、来月にまた新譜が出るそうです。
過去のCDと曲目が重なっているので、買うかどうかわかりませんが、同じ曲だと違いがよくわかるというところはありますね。
こんにちは。
今、米国にいるのですが、帰途、成田に降ります。それが11日の午後。という訳で新宿まで寄り道をする予定です。ガヴリリュクを聴きに。
いにしえの技巧派の奏者のような華麗な響きに期待し、楽しみにしています。
それでも時差ぼけの最中の筈なので、起きていられるか、とても心配なのですが。
清新な躍動感・・・穂高連峰をながめながら、上高地を散策している気分でした。とっても美しい!!
高村光太郎と智恵子もこんな瑞々しい情熱をたぎらせて、上高地を歩いていたのかな?
音楽わからん私でもわかりました。
ken様、こんにちは。
ガヴリリュクのコンサートとご出張のスケジュールとが上手く合って、良いタイミングでしたね!
クラシックの実演を聴かれたことは、あまりなかったように記憶してますが、大阪のリサイタルを聴いた方は、ガヴリリュクは実演の方がCDやDVDよりもずっと良いとおっしゃてました。
録音を聴いても、彼は音に深みがありますし、弱音も綺麗です。
プログラムは、わりと技巧的な曲も多いですが、月光の第1楽章とか、ショパンのノクターンは眠気を誘うような気がしますので、気をつけられた方が良いかもしれませんね。
私はコンサートホールで聴くと、なぜか眠くなるという体質なので、こういうゆっくりと静かな曲はとても危険です。
ゆりさん、こんにちは。
この曲と演奏、お気に入られたようで良かったです!
「清新な躍動感」、「瑞々しい情熱」、ほんとにその通りです。
音楽がわからんどころか、感受性や直観が鋭いです。
信州の自然の風景と詩人の情熱に喩えられるところは、ゆりさんらしいですね~。視点がとても新鮮です。
私はクラシックを聴いていると、現実世界とは違う閉じられた感覚世界に浸っている感じがします。
喩えるときは、現実では見たことも行ったこともないような、絵とか記録映画のような仮想的なイメージが浮かんでくるのです。
高村光太郎と智恵子は、たしかNHKのドラマで伝記ものを放送していたのを見たことがあります。
それに触発されて自伝と「智恵子抄」も読みました。
詩集を調べてみると、次のフレーズがしっかり記憶に残ってました。
ドラマでも流れていた気がします。
智恵子は見えないものを見、
聞えないものを聞く。
智恵子は行けないところへ行き、
出来ないことを為(す)る。
たぶん、小林薫が光太郎役だったドラマです。
ムジカさん、お褒めの言葉ありがとうございます。ムジカさんに言われると何かほんとうのようにうれしくなります。
津村節子(作家吉村昭夫人)という作家をご存じでしょうか?
その彼女が、光太郎側からでなく智恵子の一生にスポットを当てて描いた傑作「智恵子飛ぶ」を想い出したのです。
秘められた才能を咲かすことなく愛と悲しみの中で・・・・
その智恵子が光太郎と共に1カ月を上高地で過ごしたのです。当時「山上の恋」と新聞にも出たらしいです。二人が出会ってまだ初めの頃だったと思います。
そう、光太郎との運命の出逢いをした頃、まさに「瑞々しい情熱」の時代だったと思います。
講談社文庫から文庫版でも出ています。
また、お暇な時に読んでみてください。長編ですが読みやすいです。
蒸し暑いですね!
これから、例の卓球に行きます。
ゆりさん、今日も蒸し暑いですね~。
卓球といえば、子供の頃、家のダイニングテーブル(卓球台くらいに大きかったです)で卓球(もどき)をして、家族でよく遊んでたのを思い出しました。
津村節子さん、知ってます...と思って確認したら、津島佑子さんと勘違いしてました。
津島佑子さんは太宰治(本名が津村姓)の娘さんですね。太宰は良く読んでいたので、”津村”という名前に反応しやすいのです。
節子さんの方は、太宰治賞を受賞したので、太宰にゆかりのある人には違いないですが。
「智恵子飛ぶ」は読んだことがなかったと思います。学者や芸術家の伝記を読むのが好きなので、また読んでみます。教えてくださってありがとうございます。
智恵子と同じように、才能がありながら悲愴な運命を辿った芸術家というと、すぐに思い浮かぶのは、チェリストのジャクリーヌ・デュプレ、彫刻家のカミーユ・クローデルです。
両者とも映画・伝記が出ていたので、両方見(読み)ました。
デュプレのプライベートな話については、あまり公けにされていませんでしたが、映画を見るとかなり辛い話でした。
2人と智恵子が決定的に違うのは、光太郎のように生涯寄り添ってくれた人がいなかったことです。
そういう意味に限って言えば、確かに不幸な運命ではありましたが、智恵子は幸せでもあったかもしれません。
yoshimiさん、こんにちは。
この曲をピアノの演奏で聴くの、実は初めてです。
オルガンでも嫌いじゃないんですけど、ピアノもいいですねえ。
冒頭のガツンとした音もいいですが、フーガがとても美しくて驚きました。
こんなに綺麗な曲だったんですねえ!
ガヴリリュクにもとてもよく似合ってますね、この曲。
東京でのリサイタルは11日でしたか。
みなさんの感想も楽しみですね。
アリアさん、こんにちは。
ガヴリリュクのピアノ、やっぱり良いですね。
この曲はシャコンヌよりもかなりカチっと弾いている(ように思える)ので、厳粛・荘重で気品のある美しさを感じます。
ほんとにフーガは綺麗!オルガンのイメージがあるので、随分雰囲気が違います。
今、突然思い出したのですが、まだ小さな子供の頃見たロボットアニメで、『ダンガードA(エース)』という番組があったのですが、悪役の親玉ドップラー総統がオルガンでこの曲を弾いていたんですよね~。
ずいぶん昔のアニメなので、アリアさんはたぶんご存知ないでしょう。
すっかり忘れてたのに、もしかしたら、その演奏が頭に刷り込まれて、潜在意識のなかに変なイメージが残っていたのかも....と、思えてきました。
ガヴリリュクをリサイタルで聴いた(聴く予定)の方、私が知っている方ではアリアさんも含めて3人いらっしゃいます。
やっぱり彼は実演で聴きたくなるピアニストなのでしょう。
毎年来日しているらしいから、来年も大阪で弾いてくれれば良いんですけど。