’作曲家’ワイセンベルクとジャズ
2012.09.04 18:00| ・・ 米国(リーバーマン,ローレム,バーバー,ブロッホ,クラム, 他)|
ジャズの影響を感じるクラシックの曲というと、思い浮かぶのはラヴェルのピアノ協奏曲やリゲティの練習曲集など。
ほとんどジャズ(?)と思える曲なら、カプースチン。グルダもいくつかジャズをテーマにした作品を書いている。
現代音楽(20世紀の音楽)を探せば、他にもいろいろ見つかるのかもしれない。
ジャズとクラシック(の現代音楽)が融合したような曲といえば、珍しくもピアニストのワイセンベルクの作品。
ワイセンベルクは、”即物的”な演奏すると言われたりするけれど、とても色彩感豊かな音色と硬質で透明感のある音で、感傷性に溺れることないクールな演奏をする。
彼はジャズに興味があったせいか、小澤征爾とガーシュウィンの《ラプソディ・イン・ブルー》、《ピアノ協奏曲》に、珍しくも《アイ・ガット・リズム変奏曲》まで録音している。
ワイセンベルクは、ルーマニア人作曲家ヴラディゲロフの元で幼少期から作曲も学んでいた人なので、ジャズの素材を使った作品をいくつか書いている。
カプースチンとは違った作風で、幾分リゲティの練習曲風を連想させるところがあったり、調性感があいまいな現代音楽風だったりする。
ワイセンベルクのピアノ演奏と同じく、彼の作曲も音色と色彩感が美しくウェットな感傷性のない”硬派”なものを感じる。
ワイセンベルクが作曲した《Sonata In a State of Jazz》は、アムランの録音が有名。
タンゴ、チャールストン、ブルース、サンバが現代音楽と融合したような、独特な面白さがある。
1. Evocation d'un tango
2. Réminiscences de charleston
3. Reflets d'un blues
4. Provocation de samba
ジャズをテーマにしたクラシック作曲家の作品集。アムランらしく、精密な技巧でシャープで切れ良く、拍子もきちっと崩すことなくカチッとした構成感がある。ジャズのようにはスウィングしない、生真面目なクラシックな演奏スタイル。
アルバムの収録曲自体は、ワイセンベルクが編曲した6曲も含めて、クラシックよりははるかにジャズの世界に近い。
なかでも、ワイセンベルクの《Sonate en état de jazz》は、現代音楽風で調性感が少し崩れて、他の曲とは違った作風なので、(私の好みから言えば)一番面白い。
Hamelin plays Weissenberg - Sonata in a state of jazz
(1st mvt)"Evocation d'un tango"
(2nd mvt)"Rminiscence d´un Charleston"
(3rd mvt) "Reflets d´un Blues
(4th mvt) "Provocation de samba"

ワイセンベルクが作曲した作品を録音したとても珍しいアルバムが『The Piano Music of Alexis Weissenberg』(Nimbus)。
演奏しているピアニストはサイモン・マリガン(Simon Mulligan)。
ブレンデル、ローゼン、ペライア、それにワイセンベルクのもとで学んだ人で、その経歴にしては珍しく、(プレヴィンのように)クラシックとジャズの両方の分野で活動をしている。
クラシックではソロと室内楽、ジャズピアニストとしては自身のカルテットでの演奏と作曲をしている。
マリガンのウェブサイトのディスコグラフィを見ると、ジャズとクラシックの両方の分野にまたがっている。
そのなかにネッド・ローレムの《ピアノ協奏曲第2番》(NAXOS盤)の録音があり、ローレムのピアノ作品が好きなのでこのCDは持っていた。(マリガンの名前はすっかり忘れていたけど)
アルバムの収録曲は、ワイセンベルクの作品が2曲-《Sonate en tat de Jazz》とスクリャービン風エチュード《Le regret》。
それに、ワイセンベルクが書いたコメディ'La Fugue'に出てくる歌曲を素材にして、マリガンが即興した《Improvisations on songs from 'La Fugue'》。
《Sonate en tat de Jazz》とは全く違って、《Improvisations on songs from 'La Fugue'》はモダン・ジャズだと言われても、それほど違和感がない。
"Spirale"、"Mon destin"、"C´est si facile"、"Nostalgie"という4曲から構成。
"Mon destin"では、マリガンが得意とするカルテットでサックスも入っていて、旋律も馴染みやすくてとてもムーディ。
"C´est si facile"、"Nostalgie"では、現代音楽風に少し捻ったロマンティシズムがあるので、センチメンタルな雰囲気は少ない。
アルバムの作品解説
ジャズとヨーロッパのクラシック音楽が結びつくのは、目新しいものではない。
Duke Ellington, James P.Johnson, Louis Armstrong は、1920年代にクラシック音楽から影響を受け、1950年代の”third stream movement”はジャズとクラシックのフュージョン。
それにも関わらず、依然としてジャズ/クラシックの癒合は、21世紀においても多くの可能性を秘めており、サイモン・マリガンは、2001年に録音したアルバム『The Piano Music of Alexis Weissenberg』のなかでそれを探っている。
ワイセンベルクは1929年、ミリガンは1980年代に生まれたという全く異なる世代。
このアルバムのスタジオ録音にワイセンベルク自身も立ち会っていた。
マリガンは明らかにワイセンベルクの音楽( "Le Regret"と"Sonate en Etat de Jazz")に強い感情を持って演奏している。
純粋なジャズまたはクラシックのピアニストとしての演奏を目指したものではなく、むしろジャズとヨーロッパのクラシックにそれぞれ片足をかけた音楽的ハイブリッド。
ジャズとクラシックを同等に”valid”(正当)だと理解できる許容性の持ち主なら、聴いて得るものがある。
モダンジャズのカルテットやガンサー・シュラー(Gunther Schuller)の実験音楽をかなり聴いている人なら、難なくこのアルバムの音楽を受け入れられるだろう。
(Alex Hendersonのプロダクションノートを要約)
アルバムレビュー
”Simon Mulligan:The Piano Music of Alexis Weissenberg” [JazzTimes]
※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
ほとんどジャズ(?)と思える曲なら、カプースチン。グルダもいくつかジャズをテーマにした作品を書いている。
現代音楽(20世紀の音楽)を探せば、他にもいろいろ見つかるのかもしれない。
ジャズとクラシック(の現代音楽)が融合したような曲といえば、珍しくもピアニストのワイセンベルクの作品。
ワイセンベルクは、”即物的”な演奏すると言われたりするけれど、とても色彩感豊かな音色と硬質で透明感のある音で、感傷性に溺れることないクールな演奏をする。
彼はジャズに興味があったせいか、小澤征爾とガーシュウィンの《ラプソディ・イン・ブルー》、《ピアノ協奏曲》に、珍しくも《アイ・ガット・リズム変奏曲》まで録音している。
ワイセンベルクは、ルーマニア人作曲家ヴラディゲロフの元で幼少期から作曲も学んでいた人なので、ジャズの素材を使った作品をいくつか書いている。
カプースチンとは違った作風で、幾分リゲティの練習曲風を連想させるところがあったり、調性感があいまいな現代音楽風だったりする。
ワイセンベルクのピアノ演奏と同じく、彼の作曲も音色と色彩感が美しくウェットな感傷性のない”硬派”なものを感じる。
ワイセンベルクが作曲した《Sonata In a State of Jazz》は、アムランの録音が有名。
タンゴ、チャールストン、ブルース、サンバが現代音楽と融合したような、独特な面白さがある。
1. Evocation d'un tango
2. Réminiscences de charleston
3. Reflets d'un blues
4. Provocation de samba
![]() | In a State of Jazz (2008/05/13) Marc-André Hamelin 試聴する(hyperionウェブサイト) |
アルバムの収録曲自体は、ワイセンベルクが編曲した6曲も含めて、クラシックよりははるかにジャズの世界に近い。
なかでも、ワイセンベルクの《Sonate en état de jazz》は、現代音楽風で調性感が少し崩れて、他の曲とは違った作風なので、(私の好みから言えば)一番面白い。
Hamelin plays Weissenberg - Sonata in a state of jazz
(1st mvt)"Evocation d'un tango"
(2nd mvt)"Rminiscence d´un Charleston"
(3rd mvt) "Reflets d´un Blues
(4th mvt) "Provocation de samba"



ワイセンベルクが作曲した作品を録音したとても珍しいアルバムが『The Piano Music of Alexis Weissenberg』(Nimbus)。
演奏しているピアニストはサイモン・マリガン(Simon Mulligan)。
ブレンデル、ローゼン、ペライア、それにワイセンベルクのもとで学んだ人で、その経歴にしては珍しく、(プレヴィンのように)クラシックとジャズの両方の分野で活動をしている。
クラシックではソロと室内楽、ジャズピアニストとしては自身のカルテットでの演奏と作曲をしている。
マリガンのウェブサイトのディスコグラフィを見ると、ジャズとクラシックの両方の分野にまたがっている。
そのなかにネッド・ローレムの《ピアノ協奏曲第2番》(NAXOS盤)の録音があり、ローレムのピアノ作品が好きなのでこのCDは持っていた。(マリガンの名前はすっかり忘れていたけど)
アルバムの収録曲は、ワイセンベルクの作品が2曲-《Sonate en tat de Jazz》とスクリャービン風エチュード《Le regret》。
それに、ワイセンベルクが書いたコメディ'La Fugue'に出てくる歌曲を素材にして、マリガンが即興した《Improvisations on songs from 'La Fugue'》。
《Sonate en tat de Jazz》とは全く違って、《Improvisations on songs from 'La Fugue'》はモダン・ジャズだと言われても、それほど違和感がない。
"Spirale"、"Mon destin"、"C´est si facile"、"Nostalgie"という4曲から構成。
"Mon destin"では、マリガンが得意とするカルテットでサックスも入っていて、旋律も馴染みやすくてとてもムーディ。
"C´est si facile"、"Nostalgie"では、現代音楽風に少し捻ったロマンティシズムがあるので、センチメンタルな雰囲気は少ない。
![]() | Piano Music (2001/10/02) Weissenberg、Mulligan 他 試聴する |

ジャズとヨーロッパのクラシック音楽が結びつくのは、目新しいものではない。
Duke Ellington, James P.Johnson, Louis Armstrong は、1920年代にクラシック音楽から影響を受け、1950年代の”third stream movement”はジャズとクラシックのフュージョン。
それにも関わらず、依然としてジャズ/クラシックの癒合は、21世紀においても多くの可能性を秘めており、サイモン・マリガンは、2001年に録音したアルバム『The Piano Music of Alexis Weissenberg』のなかでそれを探っている。
ワイセンベルクは1929年、ミリガンは1980年代に生まれたという全く異なる世代。
このアルバムのスタジオ録音にワイセンベルク自身も立ち会っていた。
マリガンは明らかにワイセンベルクの音楽( "Le Regret"と"Sonate en Etat de Jazz")に強い感情を持って演奏している。
純粋なジャズまたはクラシックのピアニストとしての演奏を目指したものではなく、むしろジャズとヨーロッパのクラシックにそれぞれ片足をかけた音楽的ハイブリッド。
ジャズとクラシックを同等に”valid”(正当)だと理解できる許容性の持ち主なら、聴いて得るものがある。
モダンジャズのカルテットやガンサー・シュラー(Gunther Schuller)の実験音楽をかなり聴いている人なら、難なくこのアルバムの音楽を受け入れられるだろう。
(Alex Hendersonのプロダクションノートを要約)

”Simon Mulligan:The Piano Music of Alexis Weissenberg” [JazzTimes]
※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。