気ままな生活

            ♪音楽と書物に囲まれて暮らす日々の覚え書♪  

Category [ ・ ノンフィクション・歴史・小説,etc. ] 記事一覧

『みんなの怪盗ルパン』 ~ 真山仁「ルパンの正義」とドレフュス事件

ポプラ社から出ているアルセーヌ・ルパンへのオマージュ短編集『みんなの怪盗ルパン』が思いのほか面白かった。私が読んだことのない5人の作家による競作で、私が面白かったのは次の3編。藤野恵美『ありし日の少年ルパン』は、ルブラン原作『怪盗紳士』に収録されている「王妃の首飾り」を題材にしたもの。アントワネットの首飾りを盗んだ少年ラウール(ルパンの本名)、原作にないスリの少女と奇術師も登場して、原作を知ってい...

モーリス・ルブラン『アルセーヌ・ルパン全集』

今年の夏、読書に励んだのはなぜか『アルセーヌ・ルパン全集』。暑い夏の最中に音楽を聴く気にならないので、いつも夏は私の読書シーズン。子供の頃(たぶん小学校低学年の頃)の愛読書がポプラ社版『怪盗ルパン全集』。子供向けに南洋一郎がリライトしているので、頁数が少なくなってストーリーの骨格がよくわかるし、泥棒のルパンも紳士的でカッコよくて、ほぼ全集を揃えて繰り返し読んでいた。何度か引っ越しした途中で全集は処...

恩田陸 『チョコレートコスモス』

普段は小説は読まないのだけど、『ガラスの仮面』みたいなストーリーに魅かれて読んだのが恩田陸『チョコレートコスモス』。『蜜蜂と遠雷』と同じく、この人の文体はマンガ(やアニメ)を読んでいるみたいな感じ。短いセンテンスで小気味良いリズム感のある文章とスピーディな展開で、スイスイ読めてしまう。演技シーンも盛りだくさんで面白く、500頁くらいの本でも一気に数時間で読み終えてしまった。『ガラスの仮面』よりもさら...

松井今朝子『料理通異聞』、『今ごはん、昔ごはん』

「江戸の料理屋「八百善」の跡取り善四郎が、寺町の小さな店を将軍御成りにまで大きくしていく一代記。」と紹介されていたので面白そうだった松井今朝子『料理通異聞』。伝記的な語り口を期待していたので、読んでみたら普通の小説スタイルで、好みとはちょっと違っていた。今まで読んだ料理(人)小説で面白かったのは、辻静雄をモデルにした海老沢泰久の『美味礼賛』。ストーリーはしっかり覚えてしまったのに、何度も読んでもや...

スティーブン・キング『デッドゾーン』(小説と映画)

ドナルド・トランプが米国大統領になりそうな勢いなので、思い出したのがスティーブン・キングの『デッドゾーン』。キングの小説で読んだのは、『シャイニング』、『ペットセメタリー』、『ファイタスターター』、『デッドゾーン』。観たDVD映画は『ペットセメタリー』、『デッドゾーン』、『ショーシャンクの空に』。どれも面白い。『ペット・セマタリー』(原題は、わざとスペルミスして「セマタリー」にしている)は、ホラー...

映画『ヒトラー 最期の12日間』/原作:ユンゲ『私はヒトラーの秘書だった』、フェスト『ヒトラー 最期の12日間』

戦後60周年の2005年に公開されて話題になっていたけれど、その時は興味がなくて見なかった映画『ヒトラー 最期の12日間』。映画の原題は、『Der Untergang』。(ドイツ語で、「失脚」「没落」「滅亡」など意味する)原作は、ヒトラーの秘書トラウデル・ユンゲの手記『私はヒトラーの秘書だった』と、歴史研究者で評論家・作家のヨアヒム・フェストのノンフィクション『ヒトラー 最期の12日間』。最初に読んだのはユンゲの『私はヒ...

ティムール・ヴェルメシュ 『帰ってきたヒトラー』

最近、ニュルンベルク裁判の本をいくつか読んでいるので、裁判の被告たちの話ばかりではなく、総統のヒトラーに関する本も読書対象に入ってきた。中学生時代、角川文庫から出ていた『わが闘争』を読んだ記憶はあるけれど、内容は全然覚えていない。再読しようにも、ずっと昔に引越しで本も処分してしまったので、今は手元にない。そういえば、長らく(現在の著作権保有者である)ドイツ・バイエルン州が再販を禁じていたこの本も、...

ジョセフ・E・パーシコ 『ニュルンベルク軍事裁判』

夏から集中的に読んでいるのは、日本とドイツの第二次大戦前後の歴史。今までほとんど読むことがなかったテーマに興味を引かれたきっかけは、今年から読み始めた吉村昭作品のなかの一冊『プリズンの満月』を読んでから、戦犯裁判関係の本を読み始めたこと。さらに、戦後70周年にちなんだ市立図書館のブックフェアで、参考図書になっていた東京裁判や昭和史関係の本をパラパラと読んでいたら、いたく興味をそそられてしまった。高校...

太宰治に関する評伝

津村節子が吉村昭の闘病生活を書いた『紅梅』を読んでいて思いだしたのが、津島美知子の『回想の太宰治』。作家のなかでも太宰には、私には理解できない類のエピソードが尽きない。太宰に対して肯定的・否定的な両方の立場から書かれた評伝や分析を読むと、彼の生き方に共感できない部分は多い。といっても、私は太宰信奉者では全くないけれど、太宰の作品を読むと、彼の天才を感じさせられるものは多い。それに、昔ほどには嫌悪感...

吉村昭 『羆嵐』

日本獣害史上最大の惨事と言われるのが、北海道苫前の三毛別六線沢村で羆により村民殺傷された「三毛別羆事件」。この事件を小説にしたのが、吉村昭の『羆嵐』。羆嵐 (新潮文庫)                      (1982/11/2)吉村 昭 「三毛別羆事件」では、大正期に役所の勧告に従って、北海道の山間部にある六線沢村に入植した人々が羆に襲われ、10人が死傷(死亡者は7人)した。三毛別羆事件(Wikipedia)本土の...

津村節子 『紅梅』

作家の津村節子が、夫である吉村昭の闘病生活を綴った小説『紅梅』。夫妻の名前は「育子」と「夫」になっているけれど、小説というよりはほとんどノンフィクションの闘病記。(でもフィクションの部分も混じっているのかも)舌癌の放射線治療、膵臓癌の摘出手術とインシュリン療法、抗がん剤治療に免疫療法、在宅治療など、闘病の様子を中心に、夫が病気のことを隠しながら続けていた著述・講演・取材活動、デビュー前後からの育子...

吉村昭 『破獄』

暑い最中に音楽を聴こうという気があまり起こらず、今はもっぱら読書。夏のブックフェア「新潮文庫の100冊」のパンフレットを見ていて、興味を魅かれたのが吉村昭の『破獄』。さらに、『戦艦武蔵』、『零式戦闘機』、『海の祭礼』、『冬の鷹』、『アメリカ彦蔵』、『大黒屋光太夫』、『高熱隧道』、『プリズンの満月』、『仮釈放』、『落日の宴』、『羆嵐』にエッセイなど、10冊以上立て続けに読んでいる。吉村昭の小説は数ヶ月前...

野瀬泰申 『納豆に砂糖を入れますか? ニッポン食文化の境界線』

『天ぷらにソースをかけますか? ニッポン食文化の境界線』の続篇は、『納豆に砂糖を入れますか?』納豆に砂糖を入れますか?: ニッポン食文化の境界線 (2013/9/28)野瀬 泰申第1章 納豆に砂糖 設問 ①納豆は好きですか?子供の頃は嫌いだったけど、なぜか今は好き。納豆は、そのまま食べる以外に、豆腐、お好み焼き、卵焼きとかに入れるとか、いろいろ使える。今のところ一番よく使うのは、水切り豆腐に納豆を混ぜて1日以上ねか...

野瀬泰申 『天ぷらにソースをかけますか? ニッポン食文化の境界線』

『天ぷらにソースをかけますか? ニッポン食文化の境界線』は、日経新聞電子版に連載された<食べ物新日本奇行>のテーマから抜粋・編集した15章と、「東海道食文化の境界リポート」を収録。<食べ物新日本奇行>の目的は、「いまだ国民に広く自覚されていない食の方言を解明し、伊能忠敬もなしえなかった全く新しい地図を作ること」。各章の最後には、日経電子版オンライン記事上で収集された読者の回答を分析した食文化地図(傾...

米国オバマケアの実情(医療保険制度改革)

米国の医療制度がとんでもないのは有名だけれど、賛否両論が激しく対立した末に導入されたオバマケアの実情のレポート記事を読むと、どうやらそのとんでもなさに拍車がかかっている。最初は、国による皆保険制度を目指していたと思っていたけれど、結局、民間保険への強制加入を義務づける制度に変わってしまったらしい。アメリカで自己破産した人の6割以上は、医療費が支払えなかったことが原因で、そのうちの8割の人は民間の健康...

熊谷徹 『顔のない男 - 東ドイツ最強スパイの栄光と挫折』

学生時代に凝っていた小説のジャンルの一つが、スパイ小説。グレアム・グリーンとジョン・ル・カレのスパイ小説が好きだったし、ハヤカワ文庫にある他の作家のスパイ小説も結構読み漁っていた。グレアム・グリーンもジョン・ル・カレも、さらには、ジェイムズ・ボンドシリーズの作者イアン・フレミング、それに文学作家のサマーセット・モームも、英国の情報機関に所属していた経歴の持ち主。グレアム・グリーンのスパイ小説といえ...

平野 洋 『伝説となった国・東ドイツ』

ドイツ留学経験者の著者が、ライプチヒと東ベルリンで取材・インタビューを行い、再統一から2001年までの東ドイツ社会と国民生活の劇的な変貌を追ったノンフィクション。伝説となった国・東ドイツ(2002/08)平野 洋商品詳細を見る<読書メモ>冒頭は、土地返還訴訟問題で始まる。東ドイツ政府によって没収された土地家屋の所有権に関する問題で、統一後、土地の帰属をめぐって各地で訴訟が起こっている。1949年のDDR建国に対して...

今年は”トーベ・ヤンソン・イヤー”

図書館で新刊書を見ていたら、面白そうだったのが『ムーミンの生みの親、トーベ・ヤンソン』。トーベ・ヤンソンといえば、「ムーミン」の原作者。子供のときにTVアニメが放映されていたので、よく見ていた。”ねえ、ムーミン!こっち向いて!恥ずかしがら~な~いで~、どきどきしな~い~で~......(だったかな?)”というフレーズで始まる主題歌とメロディーが今でもすぐに浮かんでくる。一番好きだったキャラクターは、スナフキ...

佐藤優 『紳士協定-私のイギリス物語』

本屋さんで平積みになっていたのでたまたま見かけたのが、佐藤優の新潮文庫新刊『紳士協定―私のイギリス物語』。少し読んでみると、これがとっても面白くて早速購入。紳士協定: 私のイギリス物語 (新潮文庫)(2014/10/28)佐藤 優商品詳細を見る紳士協定―私のイギリス物語(2012/03)佐藤 優商品詳細を見る単行本の表紙の写真にある犬は、グレン少年の愛犬で友達でもある”ジェシー”をイメージしたもの。文庫本の表紙は、ロンドンの建物...

海老沢泰久『美味礼讃』

『美味礼讃』といえば、 ブリア=サヴァランの著作が有名。原題は、『Physiologie du gout ou Meditations de gastronomie transcendante』(味覚の生理学、或いは超越的美食学の瞑想)。ブリア=サヴァラン(ジャン=アンテルム)[菓子職人・美食家列伝]どこで見つけたのか覚えていないけれど、同名のタイトルで出ているのは、辻静雄の半生を描いた海老沢泰久の伝記的小説『美味礼讃』。フランス料理とか美食に特段興味はなくても...

安部司 『「安心な食品」の見分け方 どっちがいいか、徹底ガイド』

『食品の裏側』を書いた安部氏の著作のなかで、最も情報量が多いのが『「安心な食品」の見分け方 どっちがいいか、徹底ガイド』。ガイドブックという名のとおり、食品カテゴリー別に、無添加(または添加物が少量の)製品と多数の添加物が使われている70種類の食品に関して、成分表示と価格を並べて比較し、添加物がどういう目的で使われているのか解説している。「安心な食品」の見分け方 どっちがいいか、徹底ガイド(2009/12/01)...

安部司『食品の裏側2 実態編:やっぱり大好き食品添加物』

著者の安部氏が初めて書いたのが、60万部を超えるベストセラー『食品の裏側―みんな大好きな食品添加物』。今まで読んだ食関係の本では、最も役に立った本の一つ。効用としては、それまであまり気にしなかった食品添加物だったのに、『食品の裏側』を読んでからというもの、成分表示を必ずチェックする習慣がついたこと。おかげで食品添加物が多数使われている加工食品を買うことが激減し、自分で作ることが多くなり、料理やお菓子...

「ユダの福音書」(佐藤優『インテリジェンス人間論』より)

佐藤優『インテリジェンス人間論』の「ユダの福音書」の章は、キリスト教とは全く無縁の私でも、とても興味を惹かれる内容だった。新約聖書がまとめられた経緯、そこでの「ユダの福音書」の位置づけ、「ユダの福音書」の要点、神学と一般信者との「ユダ」観の乖離、寛容・多元主義としてのキリスト教など、「ユダの福音書」を廻る話がいろんな角度から書かれている。(以下は、要点のメモ)...

佐藤優『インテリジェンス人間論』

最近、佐藤優の『獄中記』を読んで、彼の読書論やバックボーンとなっている思想信条にかなり興味を持ったので、多数の著作のなかから数冊を選んで読書中。有名な『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』と『自壊する帝国』は、すでに単行本発刊時に購入してすぐ読み終えた。両方とも自身の体験を綴った刺激的で面白い本だったけれど、その後に読んだ本が全然なかった。久しぶりに読んだのは『獄中記』(岩波書店)。獄中の環...

帚木蓬生『閉鎖病棟』

『安楽病棟』の次に読んだのが、『閉鎖病棟』。あらすじ紹介を読んだときは、病院内での殺人事件を軸にしたミステリーかと思っていたら、読んでみると全然違っていた。『安楽病棟』と同じく、殺人事件が小説の軸ではなく、殺人事件に関わった人たちの生き方を淡々とした筆致で、共感を込めて描いたノンフィクションノヴェルのような話だった。実際の殺人事件を題材にしたわけではないので、あくまでフィクションなのだけれど、登場...

帚木蓬生『安楽病棟』

古典となった文学作品や昔読んでいた作品を除いて、小説を読むことはほとんどなくなっているけれど、現役の精神科医で作家でもある帚木蓬生(ははきぎ・ほうせい)氏の小説を珍しくも読んでいる。医学をテーマにしたものでは『安楽病棟』、『閉鎖病棟』。『臓器農場』という医学サスペンスもあるので、これも読もうかと。著者は元々は東大仏文科出身。医学以外のテーマの小説も多く、日本からヒトラーへ防具が送られていた事実を素...

井上ひさし 『新釈 遠野物語』 『吉里吉里人』  

井上ひさしの作品は、題名だけは知っているものが多いけれど、今まで読んだことがない。たまたま読んだ、短い評伝『接続詞「ところが」による菊池寛小伝』(『ちくま日本文学全集21 菊池寛』所収)がとっても面白い。他の作品も読んでみようと、本のタイトルを見てすぐに興味をひかれたのが『新釈 遠野物語』。『遠野物語』というと、学生時代に読んだ柳田国男の『遠野物語』や、日本民俗学が専門だった指導教官を久しぶりに思い...

太宰治の作品について

学生時代にかなりの作品を読んだ日本人作家といえば、大江健三郎、村上春樹、それに、太宰治。中島敦、野上弥生子の小説や坂口安吾の評論も読んだけれど、読んだ作品は少ない。大江・村上・太宰のうち、今でも、時々読み返している作家といえば、太宰だけ。同時代の作家坂口安吾が書いた太宰論『キリストと不良少年』が、今も昔も私の太宰のイメージとぴったり。そのためか、私は太宰信奉者にも熱烈なファンにもなれず、「太宰を最...

菊池寛の評伝

菊池寛の伝記・評伝を探してみると、菊池自らの筆による『半自叙伝』の他に、作家・家族・秘書など立場の異なる人たちによって書かれた評伝がいくつも出ている。構成や文章のスタイル、交友関係・経験談の有無や立場・視点の違いなど、それぞれ特徴があるので、読み比べていくと、同じ事実を元に書いている部分でも、解釈の違いがわかって面白い。小島政二郎『眼中の人』主に文藝春秋時代以前の菊池寛との交流を回想したもの。通俗...

菊池寛作品集

菊池寛の文章は簡潔明瞭、端的に言葉を書き連ねて描写していくので、美麗で凝った文章を書く芥川龍之介とは正反対。句点が非常に多いため文節が短く、無駄ないというか直截的にどんどん描写していくので、いくぶんジャーナリスティックな感じもするし、文章を味わうというところはない。まさに書かれている内容そのものを読むというタイプ。でも、文章は歯切れ良いテンポでリズム感と勢いがあり、語り口にもリアリティがあり、何よ...

菊池寛『半自叙伝・無名作家の日記 他四篇』(岩波文庫)

菊池寛といえば、代表作『父帰る』や『恩讐の彼方に』は、題名くらいは知っていたけれど、読んだことはない。それに、『文藝春秋』を創刊、「文藝春秋社」を設立、さらには直木賞と芥川章を創設した人だとは知らなかった。小島政二郎の自伝的作品『眼中の人』に登場する菊池寛の人物像に興味を魅かれたことと、芥川の葬儀で菊池が読んだ弔辞がとても印象的だったので、彼の作品や評伝をいろいろ読んでみた。菊池寛は、芥川龍之介の...

小島政二郎 『眼中の人』

ここ10年くらいはノンフィクションや評論を読むことが多く、小説の類は昔読んだもの以外はほとんど読まなくなってしまった。それが、なぜか最近になって、芥川龍之介、菊池寛、太宰治の作品と評伝を集中的に読んでいる。太宰は学生時代に随分読んだ作家。今読み返してみると、初めて読む作家のように、昔とは違ったものが感じられて、とても新鮮。今回は評伝をいくつも読んだので、昔よりも太宰のメンタリティや行動をポジティブに...

サキ短編集

短編集作家のなかで好きなのは、サキとモーム。有名なO・ヘンリーとはどうも肌合いが合わず、サキやモームの方にリアリティと核心的なものを感じる。小学生の頃から、角川文庫から出ていた世界の「ポケット・ジョーク」シリーズやアンブローズ・ビアスの『悪魔の辞典』は好きだったせいか、シニカルなタッチのサキやモームとも相性が良い。ノンフィクションや評論・伝記・歴史書ばかり読むようになって以来、小説はほとんど読まな...

吉村昭 『深海の使者』 と 「Uボート234号」の物語

吉村昭の『白い航跡』がとても面白かったので、ほかの作品も読んでみようと作品リストをチェックしていると、幕末・明治期や太平洋戦争を題材にしたノンフィクション小説がかなり多い。その中で、特に興味をそそられたのが、太平洋戦争時の日本の潜水艦を題材にした『深海の使者』。深海の使者 (文春文庫)(2011/03/10)吉村 昭商品詳細を見る日本の海洋戦記だと吉田満『戦艦大和ノ最期』が真っ先に思い浮かぶ。吉村昭は、大和ではな...

吉村昭 『白い航跡』

最近話題になっている食事療法「糖質制限食」が、既存の栄養学的常識を否定するところに興味を惹かれて、文献をいろいろ調べていると、明治期の日本海軍が、当時陸海軍(や日本全国)で蔓延していた原因不明の病「脚気」の原因が白米食だ...という仮説を大規模な試験航海で実証したという話につきあたった。その顛末を小説化したのが吉村昭の『白い航跡』。新装版 白い航跡(上) (講談社文庫)(2009/12/15)吉村 昭商品詳細を見る新装...

フランク・リースナー 『私は東ドイツに生まれた - 壁の向こうの日常生活』

旧東ドイツに関する本は、東西ドイツ統一前後とその後の情勢に関するものが多く、旧東ドイツという国の社会システムに関するものは、意外に少ない。探してみると、政治・経済体制に関する学術書や、東ドイツに在住・留学・訪問経験のある日本人によるルポルタージュが数冊。興味を引かれたものを順番に読んでいるけれど、ルポは読みやすくて、知らない情報も多く、インフォマティブ。数冊読んでいると、それぞれのアプローチもスタ...

カート・ヴォネガット 『スローターハウス5』,『追憶のハルマゲドン』

ドレスデンの歴史を調べていて、カート・ヴォネガットの小説『スローターハウス5』のことを思い出した。この小説は、若い米軍兵士だったヴォネガットが第ニ次大戦末期のヨーロッパでドイツ軍の捕虜となり、ドレスデン爆撃に遭遇した体験を元に書かれた半自伝的小説。ドレスデンは、ドイツ軍の敗色濃厚となった1945年2月、2日間にわたる連合軍(英米軍)の絨毯爆撃により、街のほとんどが破壊された。(ドレスデン爆撃から約3ヶ月...

舩津 邦比古 『ドレスデンの落日と復活 ~ 精神科医が見た東ドイツ終焉前夜』

ドレスデンといえば、交響曲やオーケストラに詳しい人なら「シュターツカペレ・ドレスデン」の名前が最初に浮かんで来るのでは。オーケストラに疎い私は、ピアニストのレーゼルがドレスデンで生まれ育って、今は母校ドレスデン音楽大学(正式には、ドイツ・ザクセン州立ドレスデン音楽大学”カール・マリア・フォン・ウェーバー”という長い名前)で教えていることを知って、ドレスデンは旧東ドイツの都市だったのだとようやく気がつ...

伸井太一 『ニセドイツ2≒東ドイツ製生活用品』

<ニセドイツ>シリーズの第2弾は『ニセドイツ2≒東ドイツ製生活用品』。『工業品』ならトラバント、カール・ツァイスなど名前だけでも知っていたものはいくつかあったけれど、『生活用品』の方は聞いたこともないグッズがほとんど。 『共産趣味インターナショナル(Cominterest) ニセドイツ2≒東ドイツ製生活用品』(社会評論社ウェブサイトの書籍紹介)ニセドイツ〈2〉≒東ドイツ製生活用品 (共産趣味インターナショナル VOL 3...

伸井太一 『ニセドイツ1≒東ドイツ製工業品』

1990年のドイツ統一と共に消滅した国「東ドイツ」に興味があって、いろいろ資料を探していて見つけた本が《ニセドイツ》シリーズ。戦後~共産主義体制時代に旧東ドイツで作られた工業製品・構造物・生活用品などの「モノ」を通して、日本人にはあまり知られることのなかった旧東独の社会・経済体制の仕組みや市民生活をリアルなイメージでもって知ることができるユニークなスタイルの本。この《ニセドイツ》シリーズは全3巻。<共...

ロバート・L.シュック『新薬誕生―100万分の1に挑む科学者たち』

ロバート・L・シュックの『新薬誕生―100万分の1に挑む科学者たち』は、100万分の1の成功確率とも言われる創薬プロセス~研究・開発・新薬承認から製造・販売まで、プロジェクトX風に描いたノンフィクション。本書で紹介されているのは、世界的に有名な7つの画期的新薬。内容は、医薬品が対象とする疾患、従来の治療法・治療薬に関する解説、新薬の科学的説明、研究~開発(臨床試験)~新薬承認までのプロセス、開発企業内での新...

宮澤賢治 『春と修羅』

随分暖かくなって春らしくなってきたので、ふと思い出したのが宮沢賢治の詩集『春と修羅』。この詩集は、今まで読んでいたどの詩集とも違った感覚の世界。Kenさんのブログ<Kanazawa Jazz days>で以前に紹介されていた序文の冒頭の一文がとても印象的だった。人間と物質と色彩のイメージが入り混じった独特の比喩で、幻想的でありつつリアリティを感じさせる不思議な世界。  わたくしといふ現象は  仮定された有機交流電燈の...

アンブローズ・ビアス 『悪魔の辞典』

確か中学時代にたまたま本屋さんで見つけたアンブローズ・ビアスの『悪魔の辞典』。タイトルが面白そうだったので少し読んでみると、これが常識とは全く違っていて結構面白い。品行方正で世の中の常識が大事だと思う真面目な人にとっては、"悪魔の"辞典なのかもしれないけど。ビアスによる言葉の"定義"は、建前と常識の砂糖衣にくるまれているエッセンスの毒性を、シニカルな言い回しで突いてくる。軽妙なウィットを通り過ぎて、皮...

安部 司 『食品の裏側 - みんな大好きな食品添加物』

食品添加物に関する安全性を問題にした本は、山ほど出ているけれど、今まで一番役立った本は 『食品の裏側 - みんな大好きな食品添加物』。数年前、初版発行時、本屋さんの店頭で見つけて購入した本。食品添加物の毒性を警告する巷の本とは違って、食品業界の添加物にまつわる実話が面白くてリアリティがあり、小難しい内容ではないので、添加物の摂取を減らさないといけないと実感。著者は、食品添加物メーカーの営業最前線にい...

和田慎二『あさぎ色の伝説』

新撰組漫画の傑作といえば、少女漫画の世界なら、木原敏江『天まであがれ』と和田慎二『あさぎ色の伝説』。10代の頃に両方とも読んだけれど、『あさぎ色の伝説』の方がストーリーにオリジナリティがあり、人物の絵柄も設定もしっかりしていて、私の新撰組イメージの原形。大学時代に司馬遼太郎の『燃えよ剣』を読んだとき、なんだか漫画とは全然違う...と強い違和感を感じてしまったくらいに、すっかり記憶に刷り込まれている。あ...

オリヴァー・サックス著『妻を帽子とまちがえた男』 ~ 「ただよう船乗り」

オリヴァー・サックスの著書に度々登場する症例が、"記憶喪失"と"サヴァン(天才児)"。"記憶喪失"の場合は、脳卒中など脳障害によって引き起こされるため、サヴァンの事例よりも多い。記憶喪失といっても、TVドラマでよくある自分の名前や素性など現在と過去の特定の記憶だけを失うという症状ではない。数秒・数分前に起きた出来事をすぐに忘れて記憶が残らないという、現在進行形の記憶喪失の症例。『妻を帽子とまちがえた男』で...

オリヴァー・サックス著 『火星の人類学者-脳神経科医と7人の奇妙な患者』

オリヴァー・サックスの著書『音楽嗜好症』を読んでから、人間の脳のメカニズムの不思議さに興味を引かれて、サックスのほかの著作も数冊読んでみた。大学時代に話題になっていた『妻を帽子とまちがえた男』、映画の原作にもなった『レナードの朝』(英題は"AWAKENINGS(めざめ)")、症例解説というよりルポルタージュ的な物語ような『火星の人類学者』。いずれも米国で大変評判になった本ばかり。日本では映画『レナードの朝』が...

野々村馨 『食う寝る坐る 永平寺修行記』

子供の頃、大晦日に必ず見ていたTV番組は、NHKの「行く年くる年」。除夜の鐘の鳴るお寺(たぶん永平寺)が映っていた記憶がある。この番組はもう長い間みていないし、そもそもTVというものを見なくなって随分経つので、今でも永平寺が登場しているのかは全然わからない。家が代々曹洞宗の檀家なので、永平寺にはなぜか親近感が湧く。別に信心深くはないにしても、昔からお墓を持っているので墓参りは毎年数回、年忌法要は数年に1回...

ヘンリー・クーパーjr.著 『アポロ13号 奇跡の生還』

立花隆の『ぼくはこんな本を読んできた』は、彼の読書に対する考え方や読書術がいろいろ書かれていて、これは読書論のなかではかなり面白く読めた本。この本に限らず、彼の政治・時事もののルポルタージュはどれを読んでも面白い。昔は頻繁に本を出していたけれど、最近は病気療養のためか、評論や新著をあまり見かけないのが残念。ぼくはこんな本を読んできた―立花式読書論、読書術、書斎論 (文春文庫)(1999/03)立花 隆商品詳細を...

太宰治の生誕100周年 [2009年6月19日]

今年の6月19日は太宰治の生誕100周年。あちこちでイベントやら特集記事が組まれていた。大学時代に一時凝ったことがあって、新潮文庫で全集を揃えたけれど、それ以来、ほとんど読んでいない。一種の熱病みたいなもので、若かりし頃はあのナイーブさにはまった(らしい)が、その時期を過ぎて醒めた目でみると、太宰治の作品はなかなか屈折したものが多い。「斜陽」、「魚服記」、「右大臣実朝」は、作品としても完成度が高くて、太...

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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、ミンナール、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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