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スーク&パネンカ ~ ベートーヴェン/ヴァイオリンソナタ第4番
ベートーヴェンのヴァイオリンソナタの第6番をカヴァコス&パーチェの演奏で聴いてから、スーク&パネンカとグリュミオー&アラウのCDで、このところベートーヴェンばかり聴いている。

ずっと昔アルゲリッチとクレーメルの録音を聴いたせいで変なイメージがついてしまってあまり聴かなかったのに、別の録音で聴くと素敵な曲が山ほどあるのに気がついてから、少しずつCDを集めている。
このヴァイオリンソナタは音が綺麗なピアニストで聴きたいので、パールマン&アシュケーナージの4・6・8番のカップリング盤と、シェリング&ヘブラーの全集録音のVol.2(6~10番)のCDを新たにオーダー。海外発送なのであと1週間くらいで届くはず。

ヴァイオリンソナタで聴く回数が多い順に並べると、4,6>9,7,8>5,10。1,2,3番はまず聴かない。
あまり人気がある方ではない(と思う)第4番と第6番が一番好きなので、10回のうちの半分くらいはこの2曲を聴いている気がする。ちょっと苦手だった9番と7番も聴き直してみるとどちらもかなり好きになったのは、やっぱり年をとると音楽の好みもだんだん変わっていくせいだろうか...。

ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集
(2005/04/27)
ヨゼフ・スーク、ヤン・パネンカ

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この全集はDENON盤なのでブックレットが日本語だけでよいせいか、作品解説がやたらに詳しいのが良いところ。
輸入盤だと2~3ヶ国語対応が多いので、頁数の制約のために解説が貧弱になりがち。アメリカのマイナーレーベルで英文だけにして解説を充実させているのがあったけど。
CDごとのカバーが真っ白な不織布なので、ディスクナンバーがわからないのはちょっと不親切。(自分でカバーにディスクナンバーのシールを貼らないといけない)


スーク&パネンカの全集のなかでは、この第4番の演奏が、テンポ、強弱、ヴァイオリンとピアノのバランスとも、一番しっくりとくる。
第1楽章だけなら、ちょっと緩々としたグリュミオー&アラウの演奏も同じくらい好きで、ピアノ伴奏を弾きたくて早速楽譜を探した。
第4・5・9番の3曲は、Louis Winkler (1820–1886)という人がピアノ独奏用に編曲している楽譜がある。
第9番だけは、ゴドフスキーのピアノ編曲版の楽譜まである。ただし、教育用なのでかなり易しい編曲になっている。Winklerの9番の編曲は速いテンポで弾くのはちょっと大変そう。

第4番の第1楽章は、同じ短調の第7番や第9番に比べれば、旋律も構成もシンプルなので、ピアノソロで弾いても、ヴァイオリンのパートの音が足されて和音が増えてはいるけれど、見た目にはそう難しくない。それにリピートなしで6ページ分と短い。
試しに弾いてみると、右手側はヴァイオリンとピアノの旋律の2つを合体させているので、親指を押さえたまま他の指で旋律を弾くところがいくつかあって、重音の移動も回りにくい指使いで、弾きにくい感じはする。

ピアノ独奏版の録音を探してみたけれど録音がすぐには見つからず。
あまり編曲の妙が味わえない気がしないでもないピアノ独奏でわざわざ聴かずとも、幾多の名盤がある原曲を聴けば良いので、たぶん誰も録音していないんでしょう。

 ヴァイオリンソナタ第4番の楽譜ダウンロード(IMSLP)

 ヴァイオリンソナタ第4番[ピアノ独奏用編曲版]の楽譜ダウンロード(IMSLP)


ヴァイオリンソナタ第4番イ短調 Op.23(1801年)

曲想が優しげな長調の曲だと、やや控えめで起伏が緩いような気がするパネンカのピアノも、テンポの速い短調の曲になると比較的フォルテも強く、ピアノがわりと前に出てきている。
スークの方が表現が力強く明快で、音に躍動感と推進力があって生き生きとした表情。
パネンカの方も表現の強さを合わせてはいるのでピアノが控えめで弱いという感じではないけれど、どこかしら抑えたようなところ(解説では”ポーカーフェイス”と評していたが)を感じるので、この微妙な温度差がちょっと面白い。

パネンカが弾いているピアノは、たぶんペトロフ。《大公》のCDジャケットに写っているピアノの写真にもペトロフのロゴが大書きされている。
この曲の録音でアシュケーナージが弾いているピアノはたぶんスタインウェイだろうから、音がきらきらと輝いているが、パネンカのピアノの音はややマイルド。ピアニストのタッチや表現の差が大きいのだろうけれど、ピアノ自体の違いもかなり影響して、音の印象としていくぶん控えめに聴こえるのかもしれない。


第1楽章 Presto
冒頭からフォルテのアクセントが聴いた主題で始まるけれど、すぐに柔らかいけれど哀しげな旋律をヴァイオリンとピアノが対話するように弾きながら、徐々に力強さと翳りを増して、もとの主題へとリピート。
フォルテとピアノが目まぐるしく入れ代わり、ピアノとヴァイオリンも力強く訴えかけたり、囁いたりと起伏の大きな楽章。
力強い悲愴感と柔らかで甘美な憂いとが入り混じって、第1~第3番とは全く違ったベートーヴェンらしい雰囲気が濃厚。
特に、30小節目以降のヴァイオリンとピアノが単音で弾く旋律がとても印象的。ピアノソロで弾くと高音の響きがとても綺麗なので、すっかりこの旋律が頭の中に刷り込まれてしまった。

第2楽章 Andante Scherzoso, Piu Allegretto
第1楽章とは曲想が大きく変わり、女の子がすまして大人びたダンスをしているようなとても可愛らしい曲。
ヴァイオリンとピアノが、2音のシンコペーションのリズムを掛け合っていき、中間部ではカノンのように、旋律をカスケードして弾いていくところが楽しげ。
ピアノは高音部で弾くところが多くて、パネンカの甘くて可愛らしい高音の響きがとても綺麗で、柔らかで優雅なタッチの弾きぶりがこの曲にぴったり。パネンカの高音の甘い響きは、フィルクスニーのピアノと似ている気がする。

第3楽章 Allegro Molto
この楽章もイ短調で、雰囲気的にも第1楽章に回帰したような急迫感。
ところどころ緊張を緩めて一息入れたような静かな旋律に変わり、緩急のコントラストが明快。走ったり立ち止まったりと忙しい。
中間部はコロッと180度変わって、三連符のアルペジオがとても優雅で穏やか。
最後は主題に戻ってそのまま力強く終るかとおもったら、三連符をピアニッシモでつないで静かに終る。ここを聴いていたらピアノ・ソナタの<テンペスト>の第3楽章の終り方が似ているのを思い出した。

tag : ベートーヴェン スーク パネンカ

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ホームベーカリーで”酒かす食パン”
お正月に甘酒を作るために買ってきた酒かすが、かなり残っている。
500gパックなので、薄めの甘酒を100ccが50回くらいは作れる。
家庭用の冷蔵庫なら、長期保存は冷凍にせよと注意書きに書いてあったので、1/3づつに分割して2つは冷凍。
1つめの酒かすの塊をまだ使っているところ。

かす汁は好きではないので、この酒かすの使い途を考えていたら、ホームベーカリーで酒かす食パンが焼けるそう。
レシピはCookpadの<HBおまかせ★酒粕食パン>

最強力粉は使わないし、今ちょうど国産小麦を使っているので、レシピの分量をあれこれと変更。

 国産小麦  280g
 砂糖    15g
 塩      4g
 バター    5g
 酒かす   20g
 ドライイースト 3g
 今は冬なのでお水ではなく、お湯(30℃くらい)190cc

バターはかなり控えめ。(フランスパン風の食パンを焼くときの分量と同じ)
酒かすは、あらかじめ100℃近くに熱したお湯数十cc(分量内)で完全に溶かす。残りのお湯と合わせて、30℃くらいに温度が下がるまで冷やす。
あとは、普通にホームベーカリーへイースト以外の材料を投入。
バターは捏ね開始後10分くらいで投入している。(量が少ないので、最初から入れておいてもあまり変わらない気はする)
ホームベーカリーはPanasonic製なので、イーストは最初の捏ね工程が終ったら投入。

焼き上がった後の高さは、酒かす入りなのでもっと膨らむかと期待していたけれど、いつもの国産小麦パンと同じくらい。
国産小麦なのでもともとあまり膨らまないし、バターを最小限にしか入れていないので、そんなに膨らまなかったらしい。

翌日食べてみると、クラスト(パンの耳になる部分)は、かなりパリパリとした焼き上がり。
パンナイフでスライスしているときは、硬くて水分が少ない感じがしたけれど、食べてみるとクラム(中身)はしっとりで、少しもちもち。ほんのかすかに酒かすの甘い香りと味がして、これは意外に美味しい。
酒かすが余っている間は、パンを焼くのに重宝しそう。

tag : ホームベーカリー

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ブラウティハム&クーレン ~ メンデルスゾーン/ヴァイオリン, ピアノと弦楽のための協奏曲、セレナードとアレグロ・ジョコーソ
メンデルスゾーンは、ロマン派の作曲家のなかではピアノの入った管弦楽曲をたくさん書いた人で、独奏ピアノが入ったピアノ協奏曲が4曲(一般的に演奏・録音されるのは第1番と第2番)、2台のピアノの協奏曲が2曲。
協奏曲形式ではないがピアノ&管弦楽のための作品が《華麗なカプリッチョ》、《セレナードとアレグロ・ジョコーソ》、《華麗なロンド》。さらにヴァイオリン&ピアノの協奏曲が1曲。
ロマン派でピアノ&管弦楽曲が多く書いたといえば、すぐ思い浮かぶのが、サン=サーンス。ピアノ協奏曲を5曲と管弦楽曲を数曲。(他にもいるかもしれないけど、すぐに思いつかない。)
現代なら、プロコフィエフとマルティヌーがピアノ協奏曲を5曲づつ。多作家マルティヌーはこの他にもピアノの入ったコンチェルトをかなり残しているので、マルティヌーが最多かも。

メンデルスゾーンのピアノ協奏曲第1番は演奏機会が多い。他の作品は協奏曲全集録音とかでしか、あまりお目にかかれない。
そのなかでは、《ヴァイオリン, ピアノと弦楽のための協奏曲》が、一番好みに合っていて、ヴァイオリンとピアノとのデュオが聴いていて楽しい。

録音はそれほど意外といろいろあるけれど、有名な演奏家だとアルゲリッチとクレーメルの録音くらい。多分、この曲で一番売れているディスクでしょう。木曽のあばら屋さんの”音楽と本の感想小屋”でレビューされてます。

私はアルゲリッチとは全く相性が悪いので、ここは音が綺麗で透明な叙情感のあるロナルド・ブラウティハムのピアノで。
ヴァイオリンはイザベル・ファン・クーレン、管弦楽はアムステルダム・シンフォニエッタと、指揮者のマルキス以外は全てオランダ勢。
クーレンはオランダの有名なヴァイオリニストらしいが、全然聴いたことがない。クーレンとブラウティハムは長年デュオをしているし、録音もたくさんあるので、そういう点では安心して聴ける。

Mendelssohn: Concerto in D minor for Violin, Piano & Strings; Capriccio brilliant Op. 22; Rondo brilliant Op. 29Mendelssohn: Concerto in D minor for Violin, Piano & Strings; Capriccio brilliant Op. 22; Rondo brilliant Op. 29
(1996/03/26)
Ronald Brautigam (Piano), Isabelle van Keulen (Violin), Lev Markiz (Conductor), Nieuw Sinfonietta Amsterdam

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第1楽章 Allegro
冒頭のトゥッティは短調の流麗な叙情感と疾走感がモーツァルト風。それでも、ピアノパートを聴いていると初期~中期くらいのベートーヴェンのような力強さも感じられてきて、私はベートーヴェン的なところの方がずっと気に入った。
ピアノが入ってくると、ピアノ協奏曲のようにメンデルスゾーンらしいピアニスティックなパッセージが続く。
ピアノ協奏曲の方がピアノはずっと華やかだけれど、ヴァイオリンとの掛け合いがあるところがこの曲の面白いところ。室内楽的な親密感と協奏曲的なソリストの華やかさの両方が味わえる。
ピアノとヴァイオリンが協奏しているときは、オケはとても静か。第1楽章はヴァイオリンが主旋律を弾いていることが多くて、そこにピアノが伴奏的に協奏していくので、ヴァイオリンの方が目立っているかも。
このクーレンのヴァイオリンは、ブラウティハムのピアノと同じように、硬質で冷んやりとした切れ味鋭い叙情感があって、ロマンティックにメロメロしなしなしないタッチが結構好き。

第2楽章 Adagio
ここもモーツァルトにベートーヴェンのフレイバーがかかったような緩徐楽章。
この優雅な雰囲気はモーツァルトを聴いている気分になるけれど、ピアノパートの旋律や伴奏はベートーヴェンを聴いているような気分になるという、ちょっと妙な気分。
この楽章は、オケがお休みしている(またはピアニシモで演奏しているか)ことが多くて、ほとんどヴァイオリンソナタの世界。

第3楽章 Allegro molto
冒頭からピアニスティックな旋律で始まって、突然メンデルスゾーンの世界に戻った気がする。
ここはヴァイオリンとピアノともテンポが速く、細かく音が詰まったパッセージが続く。特にピアノはクルクルと指が良く回らないと弾けないので、この楽章は結構ピアノが目立っている。
ヴァイオリンとピアノとも、シャープなタッチで切れは良いけれど、コロコロと音が滑らかに転がって、フォルテもやたら強打することがなく、丁々発止の白熱感は薄いけれど、メンデルスゾーンらしい優美さを失わずに品が良い。これを聴いていると2人の他の録音も聴いてみたい気に。

それにしても、トゥッティの時はそうでもないけれど、協奏曲といってもヴァイオリンとピアノに比べて、オケがあまり印象に残らなかった。録音のバランスのせいか、ヴァイオリンとピアノに耳が集中しすぎたせい?
半分くらいはヴァイオリンとピアノによる協奏曲的なヴァイオリンソナタを聴いている感じがするので、まるで管弦楽伴奏付きァイオリンソナタの趣き。
ピアノ協奏曲とはタイプの違ったコンチェルトで、あまり演奏されない曲とはいえ、これはピアノ協奏曲と同じくらいに気に入りました。

                          

カップリングの《華麗なカプリッチョ ロ短調 Op.22》《華麗なロンド 変ホ長調 Op. 29》はピアノ協奏曲第1番に良く似た技巧的なパッセージが、タイトルどおりに華麗。
ピアノ協奏曲を聴いたことがあれば、この2曲とも似たようなところがあるし、曲としてはコンチェルトの方がはるかに印象的。こっちを繰り返し聴こうという気にはならないので、やっぱりコンチェルトだけ聴いておけば十分かなと。

《セレナードとアレグロ・ジョコーソ Op.43》は、ピアノ独奏曲でメンデルスゾーンが良く使うパターンの前半・後半の2部構成。有名な曲では《ロンド・カプリチオーソ》がこの形式。
メンデルスゾーンのピアノ独奏曲の中でも、2部構成の作品はかなり良い曲が多いと個人的には思うので、わりと期待して聴いてみると、やっぱりとても素敵な曲。少なくとも上のカプリッチョやロンドよりはずっと印象的。
やや憂いを秘めたとても美しいセレナードと、明るく華やかなアレグロ・ジョコーソのコントラストが鮮やか。アレグロ・ジョコーソでは、ピアノ協奏曲や《スコットランド・ソナタ》に出てきたようなパッセージの断片がちょこちょこと顔を出したりするところもあって、両方とも好きな曲なので、セレナードよりも聴いていて楽しい。

tag : メンデルスゾーン ブラウティハム

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新譜情報:ヨーヨー・マ/パールマン/アックス ~ メンデルスゾーン/ピアノ三重奏曲第1番・第2番 
ずいぶん久しぶりに、パールマンの新譜が2月早々にリリース予定。(何年ぶり?)
曲目はメンデルスゾーンのピアノ三重奏曲第1番と第2番。
奏者はとても豪華で、パールマンにヨーヨー・マ、それにピアノがエマニュエル・アックス。
ヨーヨー・マも最近クラシックの新譜を出していなかったそうなので(たぶんアックスも)、CDが出るのを待っていた人は早速予約しているかも。
この顔ぶれだとよく室内楽や協奏曲で一緒に演奏しているので呼吸はぴったりのはずで、どんなメンデルスゾーンになっているのか楽しみです。

ジャケット写真をみると、パールマンもアックスもすっかりお年を召して、おぐしも真っ白。
年齢を合計すると、第2番を録音した時のイストミン/スターン/ローズの年齢を足した数と良い勝負ではないかと。

メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲第1番&第2番メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲第1番&第2番
(2010/02/03)
ヨーヨー・マ、イツァーク・パールマン、エマニュエル・アックス

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tag : パールマン アックス メンデルスゾーン

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カヴァコス&パーチェ ~ ベートーヴェン/ヴァイオリンソナタ第6番
ベートーヴェンのヴァイオリンソナタのなかでも、穏やかでちょっと地味な感じがしないでもない第6番。
第1楽章~第2楽章を続けて聴いているとつい眠くなってしまうので、もっぱら第3楽章ばかり聴いている。
この第3楽章は8分くらいの曲に主題と6つの変奏が詰め込まれているので、旋律自体が好きな上に変奏曲の面白さが味わえて、第4番第1楽章とならんで一番好きな楽章。

ベートーヴェンのヴァイオリンソナタ全集はそれほど集めていないので、聴いているのはスーク&パネンカ、シュナイダーハン&ケンプとグリュミオー&アラウ(全集は未完。6番は未録音)、クレーメル&アルゲリッチに、比較的新しい録音なら西崎&ヤンドー。パールマン&アシュケナージ、ムター&オーキスは5番と9番のカップリングだけ。
スーク&パネンカの全集は、音がとても綺麗で品も良いので一番よく聴いている。
この第6番ではパネンカのピノがちょっと穏やかなので、もう少しタッチや強弱の変化を大きくして欲しい気も少しするけど...。
F.P.ツィンマーマンとカヴァコスの全集録音が出ないかなと(一体いつになることか...)思っていたところに、最近、カヴァコスがこの第6番を弾いているTVE(スペインの国営放送局)の放送用演奏映像がYoutubeに登録されたのを運良く発見。ピアニストは数年前からカヴァコスの伴奏者をしているパーチェ。

第6番のソナタを久しぶりに聴いてみると、第1楽章はフォルテがしっかりしたタッチで柔らかなピアニシモとのコントラストが良く効いていて結構起伏が大きいので、眠気を誘われずに澄んだけれど、やっぱり第2楽章は眠くなる...。
変奏曲の第3楽章になると、今まで聴いた演奏とは違うところもいろいろあって、変奏ごとの表情の変化も面白く、これは何度も聴いてしまった。

音源はTV局の放送用音源なので、ライブ録音のような雑音が無く、音が綺麗に録れているし、ピアノを弾く指や手の動きもよく見える。もともと指回りはとても良いので指の動きを見ていると、手首の位置をやや低めにしてわりとフラットな手の形で、打鍵するのに余計な動きが少なくとても滑らかな弾き方。
そのわりにタッチはやや硬質でピアノでもフォルテでも響きがしっかりして、演奏にも安定感があり、ヴァイオリンの動きにも良く合わせている。なるほど、こういう風に弾いているのね~と、見ていても聴いていても楽しめる。

 ヴァイオリンソナタ第6番第3楽章の演奏映像[Violin:カヴァコス、Piano:パーチェ]


第3楽章は、変奏ごとの性格付けが奏者によって細かいところでいろいろ違って、その違いを聴くのも面白い。
カヴァコスとパーチェの弾き方は表情の変化が明快で、生身の人間の表情がコロコロ変わるようなイメージが浮かんできそう。
ヴァイオリンの強弱の振幅と同じくらいにピアノが合わせて引っ込みすぎでもなくでしゃばりもせず、ピアノとヴァイオリンがほぼ対等に聴こえてきて、とても良いバランス。

ピアノは音の流れは滑らかだけれど、タッチはしっかり。特に低音が弾力のある響きで安定感があるし、スタッカートもふわっと軽いのではなく、拍子を刻むように結構強めで、全体的に音の切れ味とリズム感がとっても良い。

持っているCDとNAXOSのオンラインで第3楽章だけをいろんな録音で聴くと、ピアニストによってタッチの重さやスタッカートの長さと強さとか、細かいところで微妙にいろいろ違うので、弾き方が少し変わっても表情が結構違う印象になる。

主題はちょっとモーツァルト風(?)の明るく軽やかなメロディ。心が弾むようなリズムとピアノの低音部の柔らかい響きが心地よい。この主題は最後の変奏でかなり華やかに変わる。

第1変奏は、主題の躍動感を受け継いで、ピアノがスタッカートで刻む四分音符がとても歯切れ良くて、リズミカル。(他の録音を聴いていると、ここは三連符の初めの一音のように軽やかに弾くかのどちらか)
続く三連符の残り2音は軽やかで可愛らしく、気持ちが浮き立つように軽やか。

第2変奏になるとレガートで穏やかな曲想に変わり、ヴァイオリンの滑らかな旋律がとても優雅。ピアノもヴァイオリンとユニゾンで弾く旋律が優しげ。

第3変奏はヴァイオリンとピアノの右手で弾く旋律が対話しながら、ピアノは左手で三連符の伴奏。
3つの旋律・伴奏がからみあっていくところが面白い。左手のピアノ伴奏はスラーがついていないので、ノンレガート気味の硬めのタッチ。鍵盤上を速いテンポで繰り返し上下していくので、推進力のある変奏。

第4変奏は、ベートーヴェンの生真面目なユーモアを表現したような、とっても面白い弾き方。
ヴァイオリンとピアノの両方が急にフォルテで和音をバン!バン!と弾くところは、かなり肩に力が入ったフォルテ。
このフォルテはヴァイオリンが前半はスタッカートの四分音符、後半は普通の四分音符。ピアノの方は前半は全音符、後半はスタッカートの四分音符。この違いを明確に弾き分けて、前半は力強いがまだしも整ったフォルテ。
後半のフォルテでは、ヴァイオリンがさらに強く力を込めて(見ていてもわかるくらいに身体が振動している)、それに呼応するように、ピアノも弾力のあるスタッカート気味のフォルテで机を叩くように、バン!
その後すぐに何事もなかったかのように、弱音で穏やかな表情に戻るところの間合いの取り方が上手くて、なぜか可笑しい。ピアノを弾いている姿を見ていると余計にそう思える。

第5変奏は、打って変わって短調の流麗で美しい変奏。今まで短調が出てきていなかったので、特に綺麗に感じる曲。
最後の方で、主題でちらっと出てきた符点のリズムが、ここでも現れる。
TempoⅠに入ると、この符点のリズムが全編にヴァイオリンとピアノの両方に現れてくるのが面白い。特にピアノの方のリズムが良く効いている。
終わりはこのリズムがピアノでデクレッシェンドでオスティナートされて、第6変奏へ。この繋げ方がとても自然な感じ。

最後の第6変奏は、主題が6/8拍子で変奏されて、ヴァイオリンとピアノとも力強くて快活。
途中で、フィナーレに向かう準備のようにの緩やかな旋律を挟んでいる。
最後は上行する左手伴奏のスケールにのって、ヴァイオリンとピアノの右手が下降する旋律を交互に弾いて、力強い和音でエンディング。

この第3楽章は、変奏ごとの曲想、リズム、ピアノの伴奏の付け方などの違いが明確なので、個々の変奏も面白いけれど、次々と変奏が展開していく流れが滑らかで、10曲のヴァイオリンソナタの中でも、とてもわかりやすくて、聴いていて楽しい。


 ヴァイオリンソナタ第6番の楽譜ダウンロード[IMSLP]

聴いていて楽しい曲というのは、自分で弾くには難しすぎる曲を除けば、弾いていても楽しいと思えることが多い。早速楽譜をIMSLPからダウンロードして弾いてみると、このピアノパートはわりと弾くやすい。
伴奏部分だけを弾いていても、変奏ごとに音の配列やリズムがかなり違うし、主旋律を弾いているところも多くて、独奏曲ではなくても弾くのは結構楽しい。それに、耳で聴くだけでなくて実際に弾いてみると、曲の流れや構成が目と指を通しても理解できるせいか、細部も気をつけて聴くようになって、面白さも倍増するという効果も。

tag : カヴァコス パーチェ ベートーヴェン

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ホームベーカリーで焼く天然酵母パンのレシピブック
最近は手軽なドライイーストばかり使っていたので、冷蔵庫の奥に保管していたホシノ天然酵母を使わないと...と思って見てみると、11月末で賞味期限切れ。3月末まで使えると記憶違い。
あと5回焼ける分だけ残っていたので、多少発酵力が弱くなっているとは思ったけれど、捨てるのももったいないし...。
久しぶりに天然酵母パンをホームベーカリーで焼いてみると、やっぱり天然酵母パンは美味しい。この味を思い出すと、当分天然酵母パンばかり焼きたくなってしまう。

ホシノ天然酵母をホームベーカリーで使うときは、生種おこしに丸1日、捏ね・発酵・焼成の合計時間が7時間と長いので、使うのは気温が高くなる夏場を避けて、秋~春の間。室温の低い冬でも(キッチンは8度くらいにまで下がる)、ちゃんと膨らむので冬でも問題なく使える。

ホームベーカリーのレシピブックは今のところ6冊(くらい)持っている。その中で、”天然酵母パン”専門のレシピブックは3冊。
3冊もあれば、普通に思いつく程度の材料を使ったオーソドックスなパンは大体カバーできるので、これで十分。結局使うレシピは限られているので、どちらかというと眺めて楽しんでいる。

今出回っているホームベーカリーが対応しているのは、だいたいホシノ天然酵母なので(メーカーの機種によっては別の酵母のこともある)、持っているレシピブックも全てホシノ天然酵母用のものが中心。(手作り酵母は機械まかせにできなくていろいろ面倒なので、興味の対象外)
いまどきのホームベーカリーは、ホシノ天然酵母の生種づくり機能もあるので発酵も自動。捏ねるのも焼くのも機械にお任せ。下手に自力ですると失敗する確率が高いし、そもそもそういう手間隙かかることはしたくないので。

ホシノ天然酵母を使って、Panasonicのホームベーカリーについている付属レシピ通りに焼くと、乳製品(バター、牛乳)、卵を使っていなくても、わりと高さがでて、焼きあがった生地は翌日でもしっとり。
小麦の味がよく出てくるので、これはかなり美味しい。
目の詰まったもっちりどっしりしたパンが好みなので、天然酵母を使うときは、乳製品・卵なし、ドライイーストの場合はバター5g(~10g)使用。


ホシノ天然酵母の焼きたてパンLESSON―からだがよろこぶたのしさとおいしさ

ホシノ天然酵母にもいろいろ種類があって、このレシピブックには数種類の酵母の解説と対応レシピが載っている。
プロのパン屋さんが書いているだけあって、いろいろ解説部分が細かくしっかりしている。
デザインやレイアウトは古めかしいカタログ風で見難いところはあるけれど、材料が揃えやすいレシピが多く、ヘルシー系もいろいろ。読み物としても知識が増えて勉強になるので、これが一番活用度が高かった。

一番のお薦めは、『ゴパン』。
炊いた玄米ご飯を強力粉に混ぜるという、もちもちした米粉パンのようなパン。普通の白米のご飯や雑穀ご飯でもOK。
乳製品は不使用で、砂糖と塩だけ加えれば、ちゃんと焼ける。
水分量はかなり微妙。ご飯の炊き具合によってご飯の水分量が違うので、ご飯によってはお餅みたいにかなりネバ~とした生地になる。
そうなると高さが出ずに、扁平頭のような焼き上がりになる。それでもちゃんと焼けてはいるし、味は美味しい。
相変わらず高価な製パン用米粉を使わなくても、冷凍しておいたあまりご飯を解凍して使えば良いので、これはとても手軽で簡単。天然酵母-食パンコースで普通に焼ける。

ドライイーストで焼きたければ、<マジ超もっちもち☆HB☆ご飯deパン>というクックパッドのレシピがあるので、バター・砂糖の量を好みで調整して、ドライイースト-食パンコースで普通に焼けばOK。

ホシノ天然酵母の焼きたてパンLESSON―からだがよろこぶたのしさとおいしさ (白夜ムック―白夜書房のレシピBOOK (No.170))ホシノ天然酵母の焼きたてパンLESSON―からだがよろこぶたのしさとおいしさ (白夜ムック―白夜書房のレシピBOOK (No.170))
(2005/01)
深本 恭正深本 和美

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ホームベーカリーだからカンタン! 黄金の配合率でつくるはじめての天然酵母パン
デザインが綺麗だったのと(写真やダークな色調がわりと気に入っている)、ドライイースト版の本がわりと気に入っていたので買ったレシピブック。
材料と配合自体はヘルシー系が多い。
乳製品(バター・牛乳)と卵はあまり使わない。一部のレシピではオリーブオイルやラードを使っている。
一般的な上白糖は使わず、黒砂糖やきび砂糖、メープルシロップ、はちみつ、みりんなどで代用。
いろんなフルーツや野菜を使ったパンのレシピも多い。普段使うレシピは限定されていて、どちらかというと見て楽しんでいる。
水分がちょっと少なめなので、ボリュームがあまり出ずにしっとり感も若干少ないかも。(何度か焼いてみて、自分の好みに合うように調節しましょう)
いつもバターは少量か不使用、卵・牛乳・スキムミルク不使用のパンを作っているので、いろいろ試して見るのには楽しそうなレシピが多い。


ホームベーカリーだからカンタン! 黄金の配合率でつくるはじめての天然酵母パンホームベーカリーだからカンタン! 黄金の配合率でつくるはじめての天然酵母パン
(2007/07/21)
濱田 美里

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上田まり子のMKホームベーカリーレシピ
扱っている天然酵母は、ホシノ天然酵母、白神こだま酵母、ベターホーム天然酵母、生イースト、パネトーネマザー。
各酵母ごとに数種類の違ったレシピが載っている。
乳製品、砂糖、卵などをたっぷり使ったレシピが多くて、1つくらいは作ってみたけれど、それから全然使っていない。

上田まり子のMKホームベーカリーレシピ上田まり子のMKホームベーカリーレシピ
(2004/12)
上田 まり子

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上田まり子さんのレシピブックでは、『卵・乳製品ゼロのホームベーカリーレシピ―あじわい食パン・ふんわりおやつパン・もちもち米粉パン』がドライイースト専用だけど、配合がかなりヘルシー系になっているので、そちらをよく使っている。
サイズも小ぶりでデザイン・写真もシンプルで可愛い。
同じ材料を使って、ホームベーカリーに全てお任せのレシピと、生地コースを使って自分で成形するレシピの両方が見開きで載っているので、成型パンのようにアレンジするのが好きな人ならとても重宝すると思う。

卵・乳製品ゼロのホームベーカリーレシピ―あじわい食パン・ふんわりおやつパン・もちもち米粉パン卵・乳製品ゼロのホームベーカリーレシピ―あじわい食パン・ふんわりおやつパン・もちもち米粉パン
(2007/04)
上田 まり子

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ホシノ天然酵母のホームベーカリー・パンレシピ―じっくり発酵、小麦の旨味を引き出しておいしく焼く
これは持っていないけれど、レビューも良いし、装丁も綺麗で見るのも楽しそう。
『上田まり子のMKホームベーカリーレシピ』よりも、こってり系ではないのかもしれないけれど、材料と配合を確認していないので、そこは良くわからない。

ホシノ天然酵母のホームベーカリー・パンレシピ―じっくり発酵、小麦の旨味を引き出しておいしく焼く (MARBLE BOOKS―daily made)ホシノ天然酵母のホームベーカリー・パンレシピ―じっくり発酵、小麦の旨味を引き出しておいしく焼く (MARBLE BOOKS―daily made)
(2007/08)
上田 まり子

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tag : ホームベーカリー

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スーク ~ ヴィターリ/シャコンヌ
Youtubeでたまたま見つけたスークのヴィターリ《シャコンヌ》。
いわずと知れた有名な曲なので、他のヴァイオリニストの名曲集にも入っていたはずだけど(探したら『前橋汀子ベスト・コレクション』と『川畠成道/トロイメライ』に収録されていた)、バロックなのでたぶん聞き流していたせいか、ほとんど記憶に残っていない。

バッハ以外のバロックはめったに聴かないけれど、スークの珍しい録音だし...と思って聴いてみたら、ヴァイオリンが朗々と響いて、なんて綺麗でドラマティックな曲なんでしょう。スークの膨らみのある伸びやかで澄んだヴァイオリンの音色が良く映えてます。

伴奏はピアノではなくオルガン。
オルガンのふわふわとした曖昧な音色だとヴァイオリンの音がとてもくっきりと聴こえるし、オルガンの響きは敬虔、厳粛な雰囲気が漂っている。
オルガンの独奏曲は好きではないけれど、こういう響きのオルガン伴奏は印象が大分違って、音の感触がとても心地良い。

ヴィターリ《シャコンヌ》(Violin:Suk, Organ:Bárta)
このスークの録音はたぶんLotosレーベルの盤が音源で1990年代のもの。
探してみたらCDは廃盤になっていたし、ダウンロード販売もなし。


ピアノ伴奏とオーケストラ伴奏の録音もYoutubeにあり。
この伴奏のピアノは控えめで響きに膨らみがないし、逆にもっと音量が大きいとうるさい感じになりそう。
オーケストラだと色彩感が増しドラマティックになると思ったけれど、この編曲版だと伴奏がそれほど目立たないわりに(最後の方だけ派手になるが)、いろんな楽器の音がヴァイオリンの音に混ざってくる。
やはりこの曲はヴァイオリンが引き立つオルガン伴奏で聴くのが良いのではないかと。

ピアノ伴奏版(Violin:Oistrakh)

オーケストラ伴奏版(Violin:Sarah Chang)

tag : スーク ヴィターリ オイストラフ

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フィルクスニー ~ ドヴォルザーク/ピアノ協奏曲
昨年は、いままであまり聴かなかった地域の作曲家の作品いろいろ聴いていて、東欧圏ではバルトークとチェコの作曲家とかなり相性が良い。
特にチェコの作曲家は、スークの録音を集めたり、マルティヌーのメモリアルイヤーだったりしたので、昔から聴いていたヤナーチェクも合わせて、新しい曲もかなり聴いたし、他にも、スーク、スメタナ、フィビヒ、ノヴァークなど聴きたい作品が結構あるので、今年もチェコの音楽を聴くことが多くなりそう。

ピアノ協奏曲のなかでは、好みにあったのはマルティヌーとドヴォルザーク。
マルティヌーは他の曲もそれほど聴かれている方ではないし、ドヴォルザークの方はヴァイオリン協奏曲やチェロ協奏曲に比べて、ピアノ協奏曲はさほど有名ではなく、名だたるロマン派のピアノ協奏曲の名曲の影に隠れてしまっている。
ドヴォルザークやチェコの作曲家の作品は、初めて聴くならチェコのピアニストで聴くのが良さそうに思えるので、ヤナーチェクのピアノ曲でよく聴いていたフィルクスニーの演奏で。
リヒテル&クライバーの録音は有名らしいけれど、リヒテル自身が”慎重になりすぎた窮屈な演奏”と自己批評していた。評判はわりと良いので悪くないんでしょうが、フィルクスニーのピアノを先に聴いていたので、それと比べると、少し無愛想でメカニカルなタッチに感じるところが結構あって、硬いというか、潤いがない気がする。”窮屈な”(原文はどういう言葉かわからない)と言われればそういう感じ。

1912年生まれのフィルスクニーが5歳の時、その演奏を初めて聴いたヤナーチェクは「百年にひとり現れるかどうかわからない才能だ」と言ったという。
フィルスクニーの師はヤナーチェクのほかに、ピアノのクルツ、シュナーベルに、作曲のスーク。プラハで10歳の時にピアニストとしてデビューし、20歳にならないうちに東欧を中心に有名になったが、1941年に米国に亡命。チェコの作曲家(ドヴォルザーク、スメタナ、ヤナーチェク、マルティヌーなど)の作品を得意としていた。

 フィルクスニー&セル指揮クリーブランド管(NAXOS Classical Archives)
ドヴォルザークのピアノ協奏曲は、フィルクスニーが1954年にセル指揮クリーブランド管の伴奏で録音しているが、NAXOS Classical Archivesの音源はCD化されていなくて、NMLで聴くかダウンロード販売。(PB音源らしく、探せばフリーのストリーミングサイトが見つかりますが)
フィルクスニーはこの曲を得意にしていて、生涯に5度くらいは録音しているが、オケ・パートの強靭さではこのセルとの共演盤が一番らしい。
たしかにセルらしく、速めのテンポでキビキビとしてシャープで淀みなく流れていて、リズム感もよく盛り上がりも力強く、メリハリがよくきいている。
フィルクスニーのタッチもオケに呼応するように、ややテヌート気味で力強いフォルテがよく効いていて、後年の録音に比べてかなりダイナミックな感じ。
全体的に緊迫感のある引き締まった雰囲気で、叙情感も強く出ているけれど、叙情表現にちょっと粘り気があるところが時々あって、後年のしなやかに流れるような表現とは少し違う感じはする。
音がやや古めかしいのが難点ではあるけれど年代のわりにはクリアで響きにも厚みがあって、これでも充分聴ける。

デイヴィッド・デュバルの『ピアニストとのひととき』という本のなかで、フィルスクニーがセルとのエピソードについて話している。
ヒトラーが政権を掌握した後、シュナーベルはドイツを離れてイタリアで教えていたらしく、フィルクスニーはそのシュナーベルに師事することにした。そこでジョージ・セルと会ったというが、ほとんど話すこともなく別れた後で、セルから電話があって、ヴォルザークのピアノ協奏曲のソリストを依頼された。驚いたフィルクスニーは、自分の演奏を一度も聴いたことのないのにと、セルに理由を尋ねると、シュナーベルからフィルスクニーのことは聞いているので、その話だけで充分、と何とも割り切った回答。
セルは演奏家の才能を見抜く能力は高かったらしいから、シュナーベルの話なら間違いはないと思ったようだ。
フィルクスニーは優れたピアニストだったが人柄も温厚だったせいか、セルとは相性が良かったらしく、友人にもなった。セルから演奏解釈について、彼の考えを押し付けられるようなことは一度もなかったという。

Dvorák Concertos (Complete)ドヴォルザーク:ピアノ協奏曲 ト短調/リスト:ピアノ協奏曲第2番/ウェーバー:コンツェルトシュテュック ヘ短調(1952, 1954)

Rudolf Firkusny,George Szell ,Cleveland Orchestra

試聴する(NAXOSサイト)
このアルバムはLPのみでCDでは出回っていないらしく、ストリーミングまたはダウンロード販売専用です。

 フィルクスニー&ジュスキント指揮セントルイス響(Brilliant Classics)
ワルター・ジュスキント指揮セントルイス交響楽団と1975年に録音した盤は、60歳くらいのフィルクスニーのしっかりしたテクニックで聴ける。
やっぱり音質がずっと良いので、フィルクスニーのピアノの音が瑞々しくて綺麗。(リマスタリングのせいか、少し響きが人工的な感じがしないでもないけれど)
セルとの録音と比べて、力感が緩くしなやかなタッチ。オケも勇壮ではあるけれど、セルほど強靭でシャープではないので(シンフォニックな響きでちょっと大味)、やっぱりセルとフィルクスニーの演奏を聴いてしまうと物足りなく思える。

Dvorák Concertos (Complete)Dvorák Concertos (Complete)
(2002/06/25)
Zara Nelsova, Rudolf Firkusny, Ruggiero Ricci, Walter Süsskind, Orchestra: Saint Louis Symphony Orchestra

試聴する(米国amazon)[DISC1]


 フィルクスニー&ノイマン指揮チェコフィル(BMG)
フィルスクニーがこの曲を最後にスタジオ録音したのは、1990年のノイマン/チェコフィル盤。
このCDはヤナーチェクのピアノ&管弦楽曲とドヴォルザークのピアノ五重奏曲2曲も収録されていて、カップリングが充実している。
フィルクスニーはチェコ民主化後、母国で公開演奏や録音をするようになり、フィルクスニーが80歳前後にスークやノイマンとかと共演したCDやDVDなど、数種類の録音がリリースされている。

このピアノ協奏曲は高齢の時に録音したものなので、それほど力感が強くないし速いテンポになると指回りがもたっとしているところもあるけれど、それほど気になるほどでもなく、音楽の流れが滑らかでしっとりとした叙情が流れるドヴォルザーク。この曲ってこんなに綺麗な曲だった?と思い直してしまった。
フィルクスニー独特のちょっと甘くて可愛らしいリリカルな音色は、高齢になっても全く変わっていない。ピアノに品があって、特に高音の美しさは格別。
チェコフィルの響きもとても美しく、流麗で叙情感の強い伴奏がフィルクスニーのピアノの響きととてもよく似合っている。
この協奏曲はピアノがオケに埋もれがちと言われてオケの方が目立つけれど、この録音ではオケがフィルスクニーのピアノに寄り添うように合わせている感じで(それにピアノが良く聴こえるように録音しているし)、ピアノとオケのバランスがちょうど良い。3種類聴いたなかでは、一番音が綺麗で自然な感じの録音なので、これをよく聴いている。

Piano Concerto/Quintets for Piano/ConcertinoPiano Concerto/Quintets for Piano/Concertino
(2002/05/30)
Rudolf Firkusny (piano), Orchestre philharmonique tchèque , Vaclav Neumann (direction) ,et al.

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ノイマンの指揮ではないけれど、ビエロフラーヴェク指揮チェコフィルと1992年にライブ録音したDVDのプロモーション映像もあり。
Piano & Cello Concerto [DVD] [Import]Piano & Cello Concerto [DVD] [Import]
(2007/01/30)
Gustav Rivinius(cello), Rudolf Firkušný(piano), Václav Neumann (director), Jiří Bělohlávek (director), Czech Philharmonic Orchestra

試聴する(YoutubeのSP映像)



フィルスクニーのピアノでドヴォルザークのピアノ協奏曲を聴くなら、好みとしては、音はあまり良くないけれどセル&クリーブランドの伴奏で力強くて切れの良いテクニックが爽快な40歳頃の録音か、ノイマン&チェコフィルの伴奏でしっとりと細やかな叙情感が綺麗な晩年の録音かのどちらか。
この2種類の録音は、オケとピアノとも方向性が正反対の如く違っているけれど、それぞれの持ち味の違いが面白く、どちらの方が良いとも言い難い。


 ピアノ協奏曲 ト短調 Op.33 [Wikiの楽曲解説]

第1楽章 Allegro agitato
冒頭からドラマティックで憂愁漂うとても美しい旋律が流れるトゥッティ。
3度重音で徐々に駆け上がってくるピアノがユニゾンのアルペジオで下降する序奏は何かの予感に満ちたようで、その後にスラスラと水が流れるような流麗なアルペジオにのせて弾く主題の旋律がとてもメロディアスで美しい。
主題はすっきりとしたシンプルな旋律だけれど、とても印象的。それが次々と変奏されていて、これが叙情的な美しい旋律だったり、力強くドラマティックだったりと、ヴァリエーション豊かで、副主題や第2主題も挿入されていて、17分あまりのちょっと長めの演奏時間でも全然飽きずに聴ける。
この楽章はスケールとアルペジオを主体で、楽譜を見た目にはそれほど技巧的で凝ったようには見えないが、アルペジオの開きも大きいし、重音・和音進行や細かいパッセージのスケールが詰め込まれているので、これを速いテンポで弾くととてもピアニスティックで華麗な曲に聴こえる。
やや合奏協奏曲的で、ピアノが前面に出るというよりもオケと協奏しているようなところがあるが、盛り上がるところは和音主体で力強くて、意外にかなりドラマティックな第1楽章。
フィルクスニーは特に高音の響きが綺麗で、可憐で上品でとてもリリカルな響きが素晴らしく美しい。フォルテでもパワフルで派手に弾いてはいないので、白熱感はさほど強くないが、浮ついたところのない落ち着きがあって安心して聴ける。特に、この楽章は高音域で引く部分がとても多いので、フィルクスニーの美しい響きと相まって、旋律や和声の美しさが引き立っている。

第2楽章 Andante sostenuto
冒頭の深い響きのホルンから、ピアノ、弦楽と順に引き継がれていく旋律が、パストラルのようにのどか。
ピアノはアルペジオ主体の伴奏にのせて弾く高音のパッセージがとても美しい。
両端楽章の印象が強いので、この緩徐楽章の旋律自体はそれほど印象的ではないけれど、この楽章で一番良いのは、フィルクスニーの綺麗な高音の響きがしっかり聴けるところ。

第3楽章 Finale: Allegro con fuoco
冒頭のピアノで弾く主題が、舞曲風でちょっと調子ハズレのような響きで面白い。この冒頭の主題が途中で何度か、緩徐楽章のようにゆったりと叙情たっぷりな旋律に変奏されている。
40小節目からピアノソロが弾く主題は、とても装飾音と付点のついたとてもリズミカルな旋律。いかにもドヴォルザークらしい雰囲気がする。この旋律は躍動感があってとても華やか。
オケの伴奏が力強さをやや押さえ気味で、主題を弾くピアノがわりと目立っているし、緩徐部分はピアノが叙情的な旋律をしっとりと歌っているので、ピアノ協奏曲的な雰囲気になっている気がする。

ピアノ・ソロがあまり目立ったないとはいえ、ピアノ独奏付き交響曲とでも思えば、さほど独奏部分が目立たなくても気にならない。
緩徐楽章はあまり印象が残らなかったけれど(ピアノの音はとっても綺麗だった)、両端楽章は旋律の美しさと変奏の面白さで聴きごたえは充分。
特に第1楽章はロマンティックな華やかさがあって、力強さもありドラマティックな展開でとても魅力的。ロマン派のピアノ協奏曲らしくて、もっと聴かれても良い曲だと思う。



ピアノ協奏曲の楽譜(2台のピアノ用)[IMSLP]
この曲の楽譜を探すとIMSLPにはスコアが登録されていなくて、2台のピアノ用の楽譜が登録されている。
この楽譜が少し変わっていて、普通は第1ピアノ(ピアノ・ソロ)と第2ピアノ(オケパート)の2段構成なのに、これは3段構成で上段2段がピアノ・ソロパート。
このソロパートは、上がドヴォルザークの原曲版、下がチェコのピアニスト・クルツの編曲版。(スコアもピアノパートが2種類記載されている版があるらしい。)
クルツが有名なのは、ピアニストとしてではなく、この編曲者としてというほどに、スタンダード化しているという。[クルツのプロフィール(Wikipedia)]
クルツ版は、重音の音の数を増やして和音にしたり、3度の開きの音で移動するところをアルペジオにしたり、跳躍の幅を広げたりと、響きが華やかになるが、ややテクニック的に難しくなり、パワーもいるところがある。

Wikipediaでは、クルツの弟子であるフィルクスニーは原典版とクルツ版を元にした独自の版を弾いていると書いている。
たしかに、楽譜を見ながらフィルクスニーの演奏を聴くと、原典版とクルツ版で違うところは、より響きが華やかでダイナミックに聴こえるクルツ版の方を主に弾いているのはわかる。
たまに原典版を弾いているようなところもあるので、2つの版を組み合わせているのかもしれない。少なくともクルツ版主体に弾いているのは確か。原典版で弾いている演奏よりも、いくぶん華やかでドラマティックに聴こえるとは思う。

tag : フィルスクニー ドヴォルザーク

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年忌法要
今日は親族の七回忌と二十七回忌の法要を一度にしたので、昨日からあれこれ準備で忙しい。
複数の法要を1回にまとめても準備することが増えるわけではないので、別々に分けてするよりは準備は楽。
いつもはお寺様の本堂の方でするけれどちょうど本堂が改築中なので、昨年と今年は自宅で法要をすることに。

昨日は
 -部屋の中の整理だなや机を別の部屋に移動(2階へ移動させたので結構な力仕事だった。腕が筋肉痛になりそう...)
 -仏壇をお掃除
 -法要用のお花を飾る(田舎の叔母が盛大な花束とお供物を送ってきてくれた)
 -お布施などを包む(お布施と御膳料、御車代)
 -お坊様への粗供養を百貨店で買う。お返し用はインターネットで直接配達
 -お坊様のお茶菓子とお茶を買う(いつもは緑茶を飲まないので、緑茶も買った)

今日は朝からおはぎを3種類計10個(粒餡、きなこ、黒胡麻)作ってお供え。いつもお供えは自分で作って、後でお下がりをいただいている。やっぱり手作りは美味しい。

年忌法要というと、一回忌、三回忌、七回忌、十三回忌、十七回忌、二十三回忌、二十七回忌、三十三回忌(それにできれば五十回忌)をするものだと思っていたけれど、今日お坊様とお話ししていると必ずしもそういうものではなくて、十三回忌以降は省略して、20年後の三十三回忌で年忌止めするというお家も結構あるらしい。(はしょったからといって、祟るとか、仏様が化けてでるなんてことはありません)

この年忌法要というのは、元々は初七日~百ヶ日の8つの忌日に、一回忌、三回忌、七回忌、十三回忌、三十三回忌の5つの年忌を合わせて13回の法要だったのが、十七回忌、二十三回忌、二十七回忌の3つが追加されて今に至っているとのこと。(宗派や地域によって多少は違うかも。ちなみに家の宗旨は曹洞宗)
後でWikipediaの年忌の説明を読むと、このへんの経緯がちゃんと書いてあった。

そうはいっても、今までは全て省略せずにしてきたので、十三回忌から急に三十三回忌まで飛ぶのはどうも居心地悪い。
それだけの長い時間が経っていると法要するのをうっかり忘れてしまいそう。一度二十三回忌を忘れたことがあるので、今は3人分の年忌法要の年を全部計算して(とても便利な計算サイトがいくつもある)、スケジュール表化して毎年チェックしている。
もしこれからどれかを省略するとしたら、二十三回忌か二十七回忌のどちらかだろうか。

盆とお彼岸はお寺の合同法要に参列しているけれど、やはりたまにきちんと個々の法要をすると、仏壇に向かっていても気分的にちょっと違う。
こういう法要は亡くなった人のためにというよりは、普段は忘れがちな過去の記憶を呼び起こすためにするもので、特に時間が経てば経つほどにそういう意味合いが強くなる。そのせいか、慣習としてしている部分は確かにあるけれど、しないで済まそうという気にはあまりならない。マメにしていると、数年に1回は誰かの法要をしているので、もう完全に定例行事化している気がする。
スメラ/室内楽曲集より 《Quasi improvisata Ⅰ》 《Valss》 《Nukker toreadoor》
エストニアの作曲家レポ・スメラの珍しい室内楽曲集。
ピアノ協奏曲がファンタスティックでとても美しく、シサスクと同じくらいに気に入ったので、ピアノ独奏曲を探してみると、ピアノの入った室内楽曲がいくつかあった。
全体的にミニマル的な技法が良く使われているわりに、旋律に叙情感があり、ドラスティックに曲想を変化させていくので、それほど単調さは感じない。
少なくとも、フィリップ・グラスの曲よりは、起伏に富んでいて、あまり飽きない(と思う)。

《Quasi improvisata Ⅰ》
ピアノとヴァイオリンのデュオ。少しスペイン風のような気もする強い哀感のあるとても美しい旋律。これもミニマル的に同じパターンの音型をいくつか順番にオスティナートして、徐々に盛り上がっていく。
シサスクの《ヘール・ホップ彗星》の旋律に良く似ているし、線が細くてさらさらと流れるような旋律と叙情感が、加古隆の曲に雰囲気的に少し似たところがある。

《Valss》(1984)
これもピアノとヴァイオリンによるワルツで、ちょっと憂いのある曲。
初めは同じパターンの旋律を繰り返していて、短調で調性的に安定していたが、徐々に調性が乱れていって、ピアノの伴奏もあれこれと錯綜し、ヴァイオリンもそれに引きずられて、全体的に不協和的な響きが強くなっていき、収拾がつかなくなったように、突然静止。
再びワルツを再開しようとしても、もう元の調子には戻れず、悲しそうにヴァイオリンとピアノがそれぞれモノローグして、ピアノがワルツの伴奏をちょっとだけ弾いて、プッツンと終ってしまう。

《Nukker toreadoor》(1984)
曲名は、”The Sad Toreador”(悲しき闘牛士)という意味。
ビゼーの《カルメン》の有名な旋律をピアノ独奏曲にパラフレーズした一種のパロディ。
あの勇猛果敢な曲が、さらりとした哀感に満ちたとても美しい曲に変身している。やや不協和的な和声を使っているので、面白い響きがする。
パロディ的な曲を良く書いていたシュニトケほどには、不協和音による旋律と和声の歪みが強くない。こういう曲でも、スメラの旋律と和声は、透明感と叙情に満ちてとても綺麗な響き。


Lepo Sumera: Chamber MusicLepo Sumera: Chamber Music
(2002/07/29)
Boris Bjorn Bagger,Peep Lassmann ,Janika Lentsius, Heiki Matlik ,Niina Murdvee ,Jaan Oun,Kadri-Ann Sumera ,Tallinn Saxophone Quartet ,Henri-David Varema ,Toomas Vavilov, Meelis Vind

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tag : スメラ

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新譜情報:ブラームス=ラツィック編曲/ピアノ協奏曲第3番(ヴァイオリン協奏曲のピアノ編曲版)
HMVとTOWERRECORDの新譜NEWSで面白いディスクが2点。

一つは、リヒテルがバッハ平均律曲集を弾いた”幻のインスブルックライブ”。
一度中国盤でリリースされていたが、リヒテルの正規の許諾をとっていなかったらしく、すぐに回収されてしまったので、幸運にも発売直後に入手した人以外には”幻”のディスク。
今度は、正規ライセンス盤で再リリース。
今市場に出回っているリヒテルの平均律集は、浴場のような残響過多気味でちょっと聴きづらい気はするが、こっちのライブはそういう残響がないらしい。
少しだけ興味はあるけれど、平均律曲集、リヒテルの両方ともいろいろ録音を集める対象にはしていないので、(試聴してみたら気が変わるかもしれないけど)たぶんこれはパス。

  平均律クラヴィーア曲集全曲 リヒテル(1973年インスブルック・ライヴ)(4CD) 平均律クラヴィーア曲集全曲 リヒテル(1973年インスブルック・ライヴ)
2010年02月20日発売予定
スヴャトスラ・リヒテル

商品詳細を見る



もう一つはブラームスのピアノ協奏曲”第3番”
”ブラームスの辞書”のアルトのパパさんは、早速入手されて記事にされてます。
ブラームスのピアノコンチェルトは2つしかなかったはず...とTOWERの紹介文を読んでみると、ピアニストで作曲もするデヤン・ラツィック(Dejan Lazic)がヴァイオリン協奏曲をピアノ協奏曲に編曲したもの。
ベートーヴェンもヴァイオリン協奏曲をピアノ協奏曲に自ら編曲して、《ピアノ協奏曲ニ長調》を残した。
ブラームスの方は作曲者の編曲ではないけれど、ピアノ四重奏曲はシェーンベルクが管弦楽曲版に編曲しているし、ブラームスの編曲にこだわらなくても良い気もする。

これはライブで世界初録音。編曲者のラツィック自身がピアノを弾いている。
レーベルのChannel Classicsのホームページには、このピアノ協奏曲第3番の解説・プロモーション用映像・試聴ファイルがあって、ブラームス風の和声の響きがとっても良い感じ。
元々、曲自体が好きなのでかなり興味はあるし、少しだけでも聴いてしまうと多分買うことになりそうな...。

Brahms (Lazic): Piano Concerto No.3 Op.77, Rhapsodies Op.79, Scherzo Op.4 / Dejan Lazic, Robert Spano, Atlanta SO [SACD Hybrid] Brahms (Lazic): Piano Concerto No.3 Op.77, Rhapsodies Op.79, Scherzo Op.4 / Dejan Lazic, Robert Spano, Atlanta SO [SACD Hybrid]
2010/01/14
Dejan Lazic (Piano), Robert Spano (Conductor), Atlanta Symphony Orchestra

試聴する(www.channelclassics.com)
HMV、日本と米国のamazonでは、今のところ検索にヒットしないので、まだ取り扱っていないらしい。
日本のタワーレコードと英国amazonでは購入可能。

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tag : リヒテル バッハ ラツィック ブラームス

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サフリ・デュオ ~ ヘルヴェグ《アメリカン・ファンタジー~レナード・バーンスタインへのトリビュート》
ルトスワフスキの《パガニーニの主題による変奏曲》の録音を探していてたまたま見つけたのが、このサフリ・デュオのアルバム。
打楽器とピアノをそれぞれ2台づ使っているというとても珍しい編成。
パーカッションはサフリ・デュオ。打楽器奏者としてはかなり有名な2人組らしい。

Safri Duo Performs Lutoslawski, Bartók, HelwegSafri Duo Performs Lutoslawski, Bartók, Helweg
(1995/11/14)
Safri Duo,Slovak Piano Duo

試聴する(米国amazon)

曲目は、ルトスフワスキの《パガニーニの主題による変奏曲》、バルトークの《2台のピアノと打楽器のためのソナタ》とキム・ヘルヴェグの《アメリカン・ファンタジー~レナード・バーンスタインへのトリビュート》

バルトークの曲は言うまでもないくらいに有名。
ルトスワフスキはピアノ協奏曲や交響曲・歌曲の方が良く知られているけれど、このパガニーニヴァリエーションは2台のピアノ用レパートリーの定番。
最後のヘルヴェグは全然知らない作曲家。ヘルヴェグはペンデレツキ、ケージに加え、ジャズにも影響されたといわれている。そのラインだと好みとは違うタイプの可能性が高いので、この盤でしか聴くこともないかも。

《アメリカン・ファンタジー~レナード・バーンスタインへのトリビュート》は、タイトルで察しがつく通り、バーンスタインの作品のモチーフがいくつも引用されているという。でも、バーンスタインの曲はほとんど聴いたことがないので、どの旋律がどの曲のものかは?。


第1楽章 Allegro molto
ピアノパートはリーバーマンのピアノコンチェルトによく似たアメリカの現代音楽風。
パーカションが入っているので、スピード感とリズム感に加えて音に色彩感もある。
ルトスフワスキのパガニーニバリエーションよりもパーカッションは控えめで、ピアノパートが前面に出て華やか。

第2楽章 Adagio
最初はややクラム風のファンタジックな感じ。内部奏法や外部奏法は使っていないので、普通のピアノの綺麗な響き。
途中からはわりと叙情的な旋律に変わって、ポップス風というかなんというか...。

第3楽章 Scherzo
パーカッションがメインで、リズミカルでポップな感じ。ここもリーバーマン風のピアノが登場する。

第4楽章 Finale
冒頭がちょっと変わっていて、パーカッションの代わりに手をカスタネットのように使っている。ピアノが入ってくると、手と交代してパーカションに。
最初はやや騒然とした感じの力強い旋律で、そのうちフィナーレらしい華やかさも出てくる。
終盤は、私でも聴いたことがあるくらいに有名なバーンスタインの曲(どの曲かは?)の旋律が登場。

この曲は、楽章ごとに楽器がかわり、色とりどりの曲想と響きの変化があるし、私の好きなリーバーマン風のところもあって、バーンスタインの作品をあまり知らなくても曲自体は面白かった。

《パガニーニの主題による変奏曲》の記事

tag : バーンスタイン

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スターン&ローズ&イストミン ~ メンデルスゾーン/ピアノ三重奏曲第1番
1月中旬に届くはずだったスターン&ローズ&イストミンのメンデルスゾーン/ピアノ三重奏曲のCDが、年末にamazonから早速届いた。
試聴してとても良い感じだったし、どのCDレビューでも評価が良い(特に米国amazonのレビューが抜群)。どんな演奏だろうと期待して聴いてみると、他の録音とは趣きの違うところがいろいろあり、独特の味があってそこが面白いので、何回か繰り返し聴いている。お正月早々良い音楽を聴くことができて全く幸先が良いこと。

Mendelssohn;Piano Trios 1&2Mendelssohn;Piano Trios 1&2
(2008/07/01)
Leonard Rose (Cello), Eugene Istomin (Piano), Isaac Stern (Violin)

試聴する(米国amazon)
私が買ったのは普通の輸入盤。Blu-spec CDの国内盤もリリースされているので、音はそっちの方が良いかも。

第1番は1966年、第2番は1979年の録音。
第1番は録音年のわりにちょっと音が古めかしく、残響が短め。第2番になると急に音が良くなって聴こえる。響きに膨らみがあって、特にヴァイオリンの音が良くなっている。
もっぱらイストミンのピアノに集中していたけれど、2曲とも3つの楽器の音のバランスが良いので、やや聴こえにくいチェロの音までよく聴こえる。

イストミンといえば、シューベルトのピアノ・ソナタ第17番の録音を村上春樹の『意味がなければスイングはない』で取り上げていたので知ったくらいで、たしかルドルフ・ゼルキンに師事していたような記憶も...。でも全く聴いたことがない。
今どきのピアニストは指が良く回るので、このピアノ三重奏曲を速めのテンポでメンデルスゾーンらしいピアニスティックなところを切れ味良く弾く録音が結構多い。
イストミンはあまりテクニックの切れの良さを感じさせるような弾き方ではないし、タッチが硬質でちょっとコツコツした感じ。ピアニスティックなパッセージでも弦を押しのけて前面に出ることはないので、少し控えめなところがあるけれど、強弱のバランスが良いのでフォルテでも騒々しくない力強さで安心して聴ける。
それに表情の変化の幅が広いというか、穏やかなら穏やかなリに、激しくなると急転直下のように、クルクルと明快に表情が変わっていくので、聴いていてとても楽しいピアノ。

第1楽章は、わりと品良く穏やかで、終盤になるとさすがにフォルテの音が太くてずっしり。無言歌風の第2楽章は、それほどロマンティックにはならず少しあっさりめ。
第3楽章のスケルツォがとっても良いですね~。この楽章はピアニストが快速で華やかに弾きたくなるらしく(そういうテンポと音の並びなので無理ないけど)、快速で弾くピアニストの指回りの良さが結構目立つ。
ピアニスティックなスケルツォはかなり好きなのでそれはそれで良いけれど、イストミンはちょっと違っている。
さほど遅くはないテンポだけれど、バリバリと颯爽と弾くというよりも、柔らかいタッチで旋律の流れと表情が慌てず騒がず、とてもチャーミング。ラストの弦のピチカートとピアノの和音はポロ~ン、ポロ~ンととろけるような甘さで、とても可愛らしい終わり方。男性3人のトリオでこんなに可愛らしく弾けるなんて...と思ってしまった。
ラストの第4楽章になると、前の3つの楽章が比較的穏やかだったピアノもかなり力強いタッチ。
アクセントやスフォルツァンドが良くきいていて、山あり谷ありのアップダウンが激しく、さすがにこのフィナーレは、テンポも速くタッチも鋭く盛り上がっている。かなり勢いがついていて、ラストスパートのように急迫感も十分。

ピアノが目立って華やか...というわけではないけれど、とても味のあるピアノなので、この第1番のピアノ・トリオを初めて聴くのであれば、ファーストチョイスにも良いように思えたくらい。個人的な好みとしては、ピアニスティックなところを聴きたい時は同じSONY盤のカヴァコス/デメンガ/パーチェの録音が良いので、この2種類があれば十分満足。

tag : メンデルスゾーン

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フライシャー ~ ヒンデミット/左手のためのピアノ協奏曲
レオン・フライシャーが今ちょうど来日していて、サントリーホールで1/10-1/16までワークショップを開催しているのをたまたま朝日新聞のネット記事で発見。<朝日新聞のネット記事> <サントリーホールのニュースリリース>
  
それにちなんでというわけでもないけれど、今日はフライシャーの最新録音でとても珍しいヒンデミットの《左手のためのピアノ協奏曲》。
フライシャーのディスクは1960年前後のセル&クリーブランド管との録音と、それ以降左手だけで演奏活動していた時期、両手のピアニストとしてカムバックして以降の録音といろいろ出ている。
なかでも珍しい曲が、昨年リリースしたヒンデミットの左手のためのピアノ協奏曲《管弦楽つきピアノ音楽 Op.29》。
フライシャーが今まで録音した左手だけで弾くピアノ協奏曲には、ラヴェルの左手のためのピアノ協奏曲、ブリテンの《ディヴァージョンズ》、プロコフィエフのピアノ協奏曲第4番があるので、これで主要な左手のためのピアノ協奏曲をほとんど録音したことになる。

ヒンデミットの《管弦楽つきピアノ音楽 Op.29》は、戦争で右手を失ったピアニストのパウル・ヴィトゲンシュタインによる委嘱曲。
 ヴィトゲンシュタインの委嘱曲のリスト

ヴィトゲンシュタインは、この曲が気に入らなかったのかどうかはわらかないが、初演もしなかったらしく、楽譜も公開されていなかったので、聴く機会が全くなかった。
ようやく楽譜を入手したフライシャーが2004年に初演。世界初録音も昨年リリースされた。(伴奏はエッシェンバッハ指揮のカーティス響)
2004年の初演の時には右手も故障から回復していた頃なので、左手だけのピアノ曲は今でも彼の重要なレパートリーになっている。

Hindemith: Klaviermusik mit Orchester; Dvorák: Symphony No. 9 Hindemith: Klaviermusik mit Orchester; Dvorák: Symphony No. 9 "From the New World"
(2009/04/28)
Leon Fleisher (Piano) ,Christoph Eschenbach (Conductor), Symphony Orchestra of the Curtis Institute of Music

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《管弦楽つきピアノ音楽 Klaviermusik mit Orchester/左手のためのピアノ協奏曲 Op.29》

第1楽章 Einleitung: Massige schnelle Halbe -
ヒンデミットらしくとても管楽が賑やかな曲で、どこか調子はずれのおとぼけたような雰囲気。
和声も旋律もピアノとオケの掛け合いも全てがなぜか可笑しい。
ちょうど《室内音楽》を作曲し始めた時期の少し前に書いた曲なので、この曲も《室内音楽》のように都会の喧騒のようなちょっと落ち着きのなさを感じるものがある。

第2楽章 Sehr lebhafte Halbe -
第1楽章からアタッカで演奏される。さっきのちょっと抜けたような雰囲気がすっかり消えているので、楽章の切れ目はわかりやすい。
テンポが速くリズミカルになって、喧騒がさらに増して慌しい。リズムは面白いけれど騒然とした雰囲気がちょっといかめしい感じ。

第3楽章 Trio: Basso ostinato - Langsame Viertel, nur sehr wenig Ausdruck -
ここは曲想が明確に変わり、ピアノと管楽が弾く憂鬱げでネットリとまとわりつくような旋律が妖艶。
オケは控えめでほんのわずかな奏者しか演奏していない。管楽器が独奏で静かにホロホロと鳴り、弦もポロンポロンと遠くで微かに鳴っているので、ピアノの弾く旋律がかなり目立っている。
他の楽章がいずれも騒々しいせいか、この楽章の異様な静けさとヒンデミット独特の叙情感がとても美しい。

第4楽章 Finale: Bewegte Halbe -
ここもリズムが変則的で、単純な音型とリズムをベースに展開していくような曲。
どの楽章も、左手だけで弾くピアノの旋律は単線的で音の厚みがないけれど、オケに埋もれることなく、くっきりと明瞭に浮かぶようになっている。
どちらかというと、旋律や和声の響きの美しさを追うよりも、オケとピアノの線的な旋律の絡み方を注意して聴くと、これはこれでヒンデミットらしい職人芸のような入り組んだところが面白く思える。


ヴィトゲンシュタインは、数ある委嘱曲のうち、ブリテンの《ディヴァージョンズ》が一番良いと思っていたらしい。ラヴェルのピアノ協奏曲は難しすぎて(?)気に入らなかったようだし、詩的でピアニスティックな《ディヴァージョンズ》を好んだのなら、初演もしなかったヒンデミットのこのピアノ協奏曲は、あまりお気に召さなかったのかも。

ラヴェルやブリテンの曲に比べると、ピアノの旋律がかなりシンプルで響きの厚みも少なく、両手で弾いているかのような錯覚を与えるピアニスティックなところはなく、かといって第3楽章以外は旋律が綺麗というわけでもない。
対位法によるオケとピアノの線的な旋律の動きを追っていくといろいろ面白いけれど、初めて聴くならあまりとっつきのよろしい曲ではないので、ヒンデミットのピアノ協奏曲なら、やはり一番有名な《主題と変奏<四気質>》の方が和声も叙情感もそこそこ美しく聴きやすいのでおすすめ。

 フライシャー『TWO HANDS ~ ピアノ作品集』の記事

 《主題の変奏<四気質>》の記事

tag : フライシャー ヒンデミット

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油で揚げないポテトチップス
ポテトチップスというと、普通は油で揚げているので、1袋分のポテトチップスを平らげると、カロリーたっぷり。
大量の油を使って揚げるとトランスファット脂肪酸もバカにならない。

そこで油で揚げないポテトチップスを考案したのが、大分県の「ユニバースフーズ」という会社。
ジャガイモを油で揚げず、遠赤外線で加熱してポテトチップスにするという技術で、2009年度九州地方発明表彰の九州経済産業局長賞をもらったそう。
国内特許も取得しているし、海外にも販路を拡げるというから、太りすぎに悩むけれどポテトチップスがやめられない人には売れるかも。
出典:http://www.yomiuri.co.jp/gourmet/news/business/20100108-OYT8T00848.htm

この油で揚げないポテトチップスというのは、すでに商品化されていて「焼きじゃが」という製品名で売られている。
(ポテトチップ売り場なんかに行かないので見たことがない)
油で揚げないポテトチップスなんていうのは、家の電子レンジを使えばすぐ出来るので、そんなに珍しいものかと思ったけれど、商品として売れるレベルのものを作るとなると、やっぱりいろいろ難しいんだろう。

家庭で簡単にできる油で揚げない手作りポテトチップスのレシピは、cookpadにたくさん登録されている。
その中で数年前に見つけたのが<♪☆レンジで簡単ポテトチップス☆♪>
これがたぶんcookpadで最初に登録されたノンオイルの電子レンジ・ポテトチップスのレシピ。登録日を見るとわかるように、このあとで類似レシピがゾロゾロ登録されている。

このレシピを見つけてから、市販のポテトチップスを買ったことがない。全て電子レンジで手作り。
塩、パルメザンチーズ、パジル、カレー粉、etc.を振りかけておけば、いろんな味のポテトチップスの出来上がり。
カロリーを気にせずにポテトチップスが心置きなく食べれるので、これはとても優れもののレシピ。

このアイデアに目をつけた料理グッズといえば、電子レンジ用のポテトチップス調理器。
amazonで良く売れているらしいのは、次の商品。オーブンシートも必要なくなるし、大量に作りたい人には便利そう。

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ランチャン

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パーキン ~ バーバー/ピアノ作品全集
最近、ローレム、リーバーマンのピアノコンチェルトやソロを聴いてから、どうもアメリカの現代音楽とは相性が悪くはなさそうなので、少し範囲を広げて聴くようにしている。
コープランドやアイブズはちょっと相性が悪く(殺伐とした乾いた都会的な雰囲気やジャジーなところが合わないようで)、クラムは曲によりけり。

その中では、《弦楽のためのアダージョ》で有名なバーバーのピアノ協奏曲が、好みにわりと合っていた。
バーバーは、実はピアノの名手だったというので、それならピアノ作品もあるに違いないと思って探すと、ピアノ協奏曲以外に、ピアノ・ソナタ、組曲形式の作品や小曲がいくつか。作品数自体は多くはないが、印象的な曲が多い。

バーバーの出版されたピアノ独奏曲のうち、最初の作品は《Three Sketches》 (1923-24年) 。アメリカ人ピアニストでカーティス音楽院で同窓だったJeanne Behrendに献呈されている。
有名なのは、唯一のピアノ・ソナタ。それに《Excursions》と《Souvenirs》。《Souvenirs》はバレエ用に管弦楽版とピアノ連弾版にも編曲されていて、連弾のコンサートでは良く演奏されている。

バーバーのピアノ作品は、数が少ないのアルバム1枚で収まってしまうせいか、意外と録音がいろいろある。
ホロヴィッツはピアノ・ソナタを初演していたので有名だが、ホロヴィッツは全く聴かないピアニストなので、ここはCHANDOS盤のエリック・パーキンが録音した全集にした。パーキンは、音が綺麗で、演奏も洗練されたスマートな感じがするので。

Barber: Complete Works for Solo PianoBarber: Complete Works for Solo Piano
(1994/07/26)
Eric Parkin (Piano)

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Excursions(遠足)Op. 20(1942-1944年)
出版楽譜のなかで、バーバーは"この曲集は、ローカルなアメリカ的語法の中に小規模な古典的様式を流し込んだスタイル。フォークソングや伝統楽器の痕跡がすぐに聴き取れる。”という趣旨の解説を書いている。
この曲はBehrendの強い勧めで書かれた小品。Behrendが第2曲のみ初演、ホロヴィッツが残りの3曲を初演。結局、1948年にBehrendが全4曲の完全版を初演した。

Ⅰ Un poco allegro
ブギウギ(boogie-woogie)スタイル。”ブギ”はもともとは20世紀初めに始まったピアノの演奏スタイルで、スウィングやシャッフルのリズムを繰り返すもの。(woogieの意味は?)
旋律自体は、メカニカルなモチーフがいろいろ組み合わさって展開していく。
どこかブリテンのピアノ曲のような雰囲気がする現代的な和声と透明感のある曲で、左手の伴奏がミニマル的に同音型を反復しているせいか、少し不可思議な雰囲気が漂う。

Ⅱ In slow blues tempo
和声的でメロディアスな旋律が美しく、洗練されたブルースのようなリズムが物憂げ。
なぜかドビュッシーの《月の光》を思い出してしまったのは、ところどころ和声や旋律の断片が似ているような気がしたせい。

Ⅲ Allegretto
解説によるとラテンアメリカのポピュラー音楽を変奏したという。
たしかにこの旋律はどこかで聴いたことがある。調べてみると、古いカウボーイ・ソングの”Streets of Laredo”という曲だった。でも、原曲の歌よりも、このバーバーの曲の方がずっと美しい。
この開放的で明るくて、とても懐かしい雰囲気がするメロディは、この曲集中一番美しくて印象的。ピアノの音に透明感と煌くような輝きがあって響きがとても綺麗。

Ⅳ Allegro molto
これもとても明るく陽気な舞曲風。
アメリカ人が聴くと、”barn-dances”(農業地帯の収穫祭りとかフェスティバルとかで踊るダンスらしい)や、地元民が弾くローカル色豊かなヴァイオリンの演奏(よく映画でみかける)を思い出させるらしい。


ノクターン (ジョン・フィールドを讃えて) Op. 33 (1959年)
フィールドのノクターンを聴いたことがある人なら、サブタイトルの”ジョン・フィールドを讃えて”という言葉がぴったりだとわかる曲。初演はジョン・ブラウニング。
フィールドのノクターンは左手の単音のシンプルなアルペジオの伴奏の上に、右手の綺麗で、これまたシンプルな旋律のノクターン。
ショパンのノクターンを聴きなれていると、フィールドはかなり単調で平板に聴こえる。弾いていても、面白いとは思った記憶が全くない。
このバーバーのノクターンは、ネオ・クラシカルなモダンで美しい和声で、右手の旋律部分は装飾的に凝ったパッセージなので、フィールドのノクターンよりははるかに夢想的でピアニスティック。
この幻想的な雰囲気は、グラナドスの《星々の歌》のピアノ独奏にちょっと似ている気がする。


ピアノ・ソナタ Op. 26(1948年)[<ハインの好きなクラシック>のとても詳しい解説]
アメリカ作曲家連盟の創立25周年を記念した委嘱作品。初演はホロヴィッツ。
不協和音や調性が拡大されたり、12音技法が応用されるなど、現代的な作曲技法が使われているわりには、コープランドやアイブズのピアノ・ソナタと比べると、旋律と和声がとても美しく、聴きやすい。

第1楽章 Allegro energico (速く、力強く) - Un poco meno mosso - Tempo 1
冒頭の符点のリズムの主題が少し厳しい感じがするけれど、旋律や和声はやや不協和的ではあっても響きは綺麗。
中間部では、《Excursions》の第1曲のようなミニマル的でメカニカルな旋律も聴こえてくる。
旋律自体に歌謡性はあまりなくて、幻想的な響きの和声がいろいろ組み合わされたやや印象主義的な感じがする曲。

第2楽章 Allegro vivace e leggiero(速く、軽く)
高音域主体の軽やかなスケルツォ。これもメカニカルなパッセージがモザイクのように組み合わされて流暢に流れるとりとめのないところがある。
左手の伴奏がワルツのようになるところが少しあって、ここは雰囲気が一瞬変わってどこかカントリー風。

第3楽章 Adagio mesto(遅く、悲しげに)
緩徐楽章なのでやや暗く憂いに満ちた穏やかな曲で、ここも和声の響きが幻想的。

第4楽章 Allegro con spirito(速く、活気をもって)
現代的な和声とリズムの4声(実は3声だけのパートが多い)のとっても難解なフーガ。
冒頭はブリテンのピアノ曲のようなシンプルでモダンな感じがしたが、徐々に壮麗な雰囲気に変わっていく。
旋律自体はそれほどロマンティックなものではないわりには、叙情感も強くてとても美しいフーガ。一転して、ラストはかなり力強く厳粛な感じの旋律で終っている。

Ballade Op. 46(1977年)
長らくピアノ曲の作曲から離れていたので、完成させるまでにかなり苦労したらしい。
この頃、NYの住まいをCapricornから広いアパートメントへと引越ししたせいか、落ち着かず沈滞していた精神状態を反映していると言われるバラード。
たしかに、バラードにしては、華やかでもロマンティックでもなくて、冒頭はかなり暗い雰囲気。中間部になると、技巧的なパッセージが現れるが、相変わらず厳しいトーン。最後は冒頭主題が再び現れ、ミステリアスなピアニッシモで終っている。


Souvenirs(思い出) Op. 28 (ピアノ編)
原曲は4手用のピアノ曲。さらに、ピアノ独奏版とバレエ用の管弦楽版に編曲。(2台のピアノ用編曲版があるが、これはバーバーの作品ではない)
連弾曲としては結局人気がある曲らしく、良くコンサートで演奏されているようだ。

戦前の米国のダンスホールで流れていたような音楽(映画のなかで聴いたことがある)が、不協和音が混ざって聴こえてくる。
子供時代に母親と旅したニューヨークの思い出にまつわる曲といわれているが、シニカルさが隠されているという批評家もいる。3曲目以降のサブタイトルは、曲想とオーバーラップさせると、ちょっと意味ありげな感じ。

Ⅰ ワルツ(ホテルのロビーにて)
    サティ風の軽やかで美しいワルツ。
Ⅱ ショッティッシェ[Schottische](3階の廊下)
    19世紀中頃にヨーロッパで流行した舞曲。
    どこかで聴いたことがあるようなワルツ。
Ⅲ パ・ドゥ・ドゥ(ダンス・ホールの片隅)
    パ・ドゥ・ドゥとはバレエの”2人の踊り”。
    これはスローテンポで憂いを帯びた和声がとても美しい曲。
Ⅳ ツー・ステップ(パームコートでのティータイム)
    Two-Stepとは、アメリカ発祥の社交ダンス。
    軽快でとても楽しげで、明るい陽射しが差し込んでいるような雰囲気。
Ⅴ ためらい~タンゴ(ベッドルームで)
    不協和音でちょっと歪んだようなタンゴで始まる。
    続いては、わりと響きがまともになった美しいタンゴ。
    少しだけ華やかに盛り上がり響きが不協和的に。
Ⅵ ギャロップ(翌日の昼下がり、浜辺にて)
    左手の和音による規則的な伴奏に乗って、右手の旋律は
    明るく楽しげな雰囲気。中間部は気だるい感じもするが、最後は元に戻って快活に。

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メンデルスゾーン/幻想曲 嬰へ短調 <スコットランド・ソナタ>
12月からちょっとメンデルスゾーンに凝っているので、ピアノ独奏曲の全集でまとめて聴いている。
昨年はメンデルスゾーンの生誕200年だったのが記憶からすっかり消えていたので、カヴァコスがメンデルスゾーンのアルバムをリリースしたのも、メンデルスゾーンイヤーだったからだと後になって気がついたくらい。そのアルバムで久しぶりにピアノトリオを聴いてから、急にメンデルスゾーンづいてしまった。

メンデルスゾーンで有名なのは《無言歌》。こればかりが有名なような気もするけれど、ピアノ・ソナタもちゃんと書いていて、第1番~第3番の3曲、番号がないものが3曲。
ピアノ・ソナタで演奏されるのは1827年作の第3番が一番多いらしい。この曲は穏やかで優雅な曲想で、大きな浮き沈みもなくて、どちらかというとあまり印象には残らない。
ピアノ・ソナタではないけれど、<スコットランド・ソナタ>というサブタイトルがついた《幻想曲嬰へ短調》の方は3楽章構成のソナタ。
メロディアスな旋律とファンタジックな響きが美しく、第3楽章は技巧華やかでとてもピアニスティック。陰影に富んだロマンティックな曲で、メンデルスゾーンの作品で最も好きな曲の一つ。

この曲は、メンデルスゾーンの作品集によく収録されている。
メンデルスゾーンのピアノ作品の全集版は思ったよりもいろいろリリースされていて、マーティン・ジョーンズ、ダナ・プロトポペスク、マリー=カテトーヌ・ギロ、ベンジャミン・フリスなどが録音。
<スコットランド・ソナタ>を聴いてみると、全集録音のなかでは、NAXOS盤のフリスが録音の音も良いし、表現も丁寧。あまりベタベタとロマンティックすぎない叙情感が好きだけれど、第3楽章がちょっとだけテンポが遅い。その分旋律は綺麗に聴こえるが疾走感に欠けるところがあるので、好みとしてはPrestoらしい速いテンポで切れ味良く颯爽と弾いて欲しい気がする。

Youtubeにもライブ映像がいくつか登録されている。その中では、(ちょっと若いころらしき)ペライアとパーチェの演奏がテクニック・テンポ・表現ともバランスが良い感じ。両方とも好きなピアニストなのでどちらも良く聴いている。
ペライアのライブは多少のミスタッチはあるけれど、テンポ設定がぴったりで、響きも綺麗だし叙情性も強くてかなり良い。それにTVのライブ録画なので音がとても綺麗。
特に第3楽章のテンポがほどよい速さで、旋律が厚い響きに埋もれずに綺麗に聴こえてくるところが、他の録音と比べて良いと思えたところ。岸壁に打ち寄せる激しい波を感じさせるように力の入った演奏で、この楽章にはこういう弾き方が良く似合う。

 《幻想曲/スコットランド・ソナタ》のライブ映像(ピアノ:ペライア)
※第3楽章はリピートを省略して、すぐに2番カッコへと進んでいる(または映像が編集されている)ので、演奏時間は全部で11分弱。(全曲リピートありで普通13分~15分くらいかかる。)

パーチェの方はライブ録音の音質がもう一つ良くないけれど(聴くには全然困らない程度)、いつもながらミスタッチもほとんどなく、第3楽章はいつもながらすこぶる速いテンポで、シャープな打鍵が冴えて疾走感が抜群。緩急のコントラストも強く一気にたたみかけるようなダイナミズムが爽快。
 《幻想曲/スコットランド・ソナタ》のライブ録音(第3楽章)(ピアノ:パーチェ)



 幻想曲~スコットランド・ソナタ 嬰ヘ短調 Op.28 / Fantasie (Sonate écossaise) Fis-Moll Op.28 (1833年)
 [ピティナの作品解説]  [楽譜ダウンロード(IMSLP)]

メンデルスゾーンがスコットランドへ旅立つ前の1828年に作曲開始、帰国後の1830年にヴァイマールのゲーテの前でこの幻想曲を演奏。その後1833年に改訂版を完成させて出版した。
3楽章構成で、メンデルスゾーンの曲によくみられるように、この曲もアタッカで連続して演奏される。
メンデルスゾーンにしては陰翳が濃くて、長調の曲よりも濃厚なロマンティシズムが素敵な曲。


第1楽章 Con moto agitato: Andant
冒頭のやや悲愴感のある哀しげな旋律が、いかにもメンデルスゾーンらしくとてもロマンティック。
どんよりと灰色の雲が垂れ込めたような冬のスコットランドの陰鬱でさびしげな雰囲気が漂っているような。
ゆったりと主題を弾いた後は、長調に転調してやや明るめの第2主題に変わる。分散和音の数小節を挟んで、感情が高ぶるように徐々に動きが激しくなって、主題に回帰する。
時折カスケードのように流れ落ちる分散和音がとてもファンタスティック。

第2楽章 Allegro con moto
これはとても楽しげなイ長調のスケルツォ風。さっきの重苦しげな暗い雰囲気がすっかり消えている。
第1楽章と第3楽章との間の緩衝帯のように、2分くらいのとても短い曲。スコットランドの爽やかな夏といった感じ。

第3楽章 Presto
これは概ねソナタ形式らしい。たぶんこの第3楽章が最も有名(だと思う)。
冒頭から高速で弾く6連符が右手か左手(か両方)に、ほとんど間断なく現れている。
まるで寒さの厳しいスコットランド北方の冷たく吹きすさぶ風や岸壁に打ち寄せる波のうねりのようなイメージ。(調べてみるとスコットランドは日本の関東くらいの気候らしい)
曲自体はprestoで一気に駆け抜けるようにとても情熱的で、第3楽章は一度聴いただけですぐに気に入った楽章。
強弱の起伏とテンポの緩急/静動の落差がかなりあるので、旋律と構成はわりとシンプルだけれど、単調なことは全くなくて、とてもドラマティック。

Prestoといっても、ピアニストによって結構テンポの差がある。
やや遅めのテンポで旋律部分をたっぷり歌わせて弾く人もいるけれど、一度速いテンポの演奏を聴くと、そっちに慣れてしまう。やはりPrestoとあるので、疾走感を期待してしまう。
Prestoらしく速いテンポで弾いているピアニストは多いが、ギロはタッチが軽すぎて迫力不足。ジョーンズは指は良く回っているけれど、表現が直線的で叙情感がもう一つ。
パーチェはスピード感とダイナミズムは抜群に良いが、速すぎてやや旋律が埋もれがちな気がする。これは、聴き慣れるとそれほど気にもならないし、こういう荒々しい雰囲気の弾き方が結構気に入っている。
ペライアは、パーチェよりもややタッチが柔いせいか少し流麗に聴こえるけれど、細かいパッセージはわりとしっかり響くし、右手の旋律部分は他の音に埋もれることなくくっきり歌わせている。ペライアにしては力強さと推進力もあってかなり情熱的な演奏。
ゴルトベルクやパルティータの柔らかなレガートの演奏ばかり聴いていたので、<スコットランド・ソナタ>を弾くペライアはちょっと雰囲気が違って新鮮。

tag : メンデルスゾーン ペライア パーチェ

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ルトスワフスキ/パガニーニの主題による変奏曲
新年早々は何を聴こうかと思ったけれど、たまたま見つけたヴィトルド・ルトスワフスキの2台のピアノのための《パガニーニの主題による変奏曲》(1941年)が素晴らしかったので、最初はこの曲で。

《パガニーニの主題による変奏曲》といえば、有名なのは、ラフマニノフのピアノ&管弦楽曲版やブラームスのピアノ独奏曲。
ラフマニノフの方は、タイトルが”変奏曲”ではなくて”狂詩曲”になっているけれど、曲は主題と24の変奏で構成されている。
タイトルに”パガニーニ”とあるだけあって、両方とも難曲。
ブラームスの方はピアノソロなので、録音しているピアニストは結構多いけれど、テクニックの良し悪しがはっきりとわかってしまうし、下手に弾くと指を痛めると言われたりする。

ルトスワフスキの作品はツィメルマンがピアノ協奏曲を弾いているのは有名だし、歌曲集や交響曲も聴いてはきたけれど、どうも相性が悪い。
でも、この《パガニーニの主題による変奏曲》は、初期のわかりやすい作風らしく、不協和音が入り混じった変奏がとっても面白くて、続けて何度でも聴けるくらいに好みにぴったり。偶然とはいえ、この曲を見つけたのはとっても運が良い。

ルトスワフスキは、1941年に2台のピアノ版を作曲、1978年にピアノ&管弦楽用の編曲版を書いている。
2台のピアノ版の方は、ピアノデュオのレパートリーとしてとても人気があり、ルトスワフスキの曲のなかでも最も演奏機会が多い曲の一つだそう。
解説をいろいろ調べてみると、パガニーニのカプリースの原曲をピアノ2台用に編曲したような曲で、12の変奏とコーダで構成。1941年の作品なので、ルトスワフスキの初期の特徴である新古典的様式で書かれている、という曲。

聴いていて面白いのは、2台のピアノ版の方。
5分くらいの小品だけれど、もっと長い曲を聴いたような気がするほど、速いテンポで変奏が次から次へと繰り出されて目まぐるしく展開し、内容がぎゅっと凝縮された密度の濃い曲。
2台のピアノが、テクニックとスピードを競いながら、攻撃的になったり、ぴったり寄り添うようになったりと、複雑なリズムのなかで掛け合っていくところがとってもスリリング。
2台のピアノ曲のレパートリーとして、ピアニストに人気があるのも納得。これは演奏効果が抜群でとても弾き映えがする。

2台のピアノ版の録音を探すと何種類かあるし、Youtubeにもライブ映像がいくつか登録されている。
スタジオ録音は女性デュオが3種類。力技がいるせいか高速のフォルテではついバンバンと強打しがち。
ペキネル姉妹の演奏は他の録音やライブとは違っていて、打鍵が軽やかでスラスラと滑らかなフレージングで華やかだけれど、不協和音がやたら綺麗に聴こえてくるし、すっかり毒気が抜けて、リストか何かロマンティックなロマン派の曲を聴いているような気がする。
ペキネル姉妹は、随分昔、日本のお酒会社のCMにラベック姉妹が登場した同じ頃に、見聞きしたデュオ。おぼろげな記憶では、ピアノの腕はペキネル姉妹の方が上だとかいう評判だった。


 ルトスワフスキ/パガニーニの主題による変奏曲(2台のピアノ版)[Piano:パーチェ&ローマ](Youtubeのライブ映像へのリンク)

このライブ映像は、オランダのテレビ局VPRO TVの番組”Vrije Geluiden (Free Sounds)”で演奏されたもの。
ピアニストは、イタリア人のエンリコ・パーチェとイゴール・ローマ。
パーチェは1989年、ローマは1996年のリストコンクール(オランダ)の優勝者。その縁かどうかは知らないが、5年くらい前のライブでバルトークの《2台のピアノと管弦楽のための協奏曲》を2人がソリストで弾いていた。
この演奏は、聴いた録音の中では飛びぬけて素晴らしい出来。
さすがにフォルテの打鍵は力強く、速いテンポでも音が明瞭でナイフのように切れ味鋭く、1つ1つの音に張りがあって音が煌いている。表現も一本調子になることなく、山あり谷ありとアップダウンが激しく多彩。
突き刺すように強烈なアクセントとシャープなリズム感が冴え、ハーモニーがぴったり揃っているので、不協和音も威嚇的な強い響きでも響きが綺麗だし、パガニーニっぽいデモーニッシュで幻惑的な雰囲気もたっぷり。
変奏のうち緩徐的なものがいくつかあり、音がとても艶かしく響いて小悪魔が誘惑しているような雰囲気。終盤近くの変奏ではジャズのようなちょっと崩れたリズムが入っていたりと、曲自体もとっても面白い。

TV番組の公開演奏なので、指の動きをTVカメラがしっかり撮影している。
2台のピアノで弾くときは、連弾と違って距離が離れているので、ピアノ越しにアイコンタクトしながら呼吸を合わせている。
音を聴いているだけでも技巧的に難しい曲なのはわかるが、映像でみると本当に厄介ですね~。
楽譜をみた人によると、見た目はわりと整然として弾きやすそうに見えるらしいが、実際に弾くとなるとかなり複雑で見た目ほどにそうスラスラと弾けるものではないらしい。
パーチェとロ-マは、いつもながら指回りがすこぶる良く、高速の和音を飛び跳ねながら弾いているがミスタッチもほとんどないようで、高速で両手を交差させて弾くところが多いがこれも滑らか。
2人ともリストが得意なだけあって、まだ余裕のある弾きぶり(に見える)。これだけのスピード感と起伏の激しい演奏でも、2人のピアノがぴったり揃っているところが凄い。
これを聴いてしまうと、他のはかなり物足りなくなってしまう。この曲は耳で聴くだけよりも、映像で見た方がインパクトが強くて、結構感動ものでした。


 ルトスワフスキ/パガニーニの主題による変奏曲(ピアノと管弦楽用編曲版)[Piano:グレムザー]

ピアノ&管弦楽曲版の方は、ラフマニノフの曲があまりに有名なせいか、録音がほとんどなくて、ピアニストがグレムザーのNAXOS盤くらい。探せば他にもあるかもしれないが、それでもあまり多くはないと思う。
この曲の初演では、ポーランド出身のフェリシア・ブルメンタールがピアノを弾いていたという。

テンポは2台のピアノ版に比べてかなり遅くて、オケとピアノの掛け合いもそれほどテンションが高くない。
不協和音の鋭い響きもあまり目立たず、テンポが遅いので演奏時間が10分と原曲の倍くらいになって、攻撃的なところが薄め。2台のピアノ版を聴いてしまうといろいろと物足りない。
終盤になると、結構盛り上がってオケも壮大に鳴っているので、2台のピアノ版を脇に置いて聴けば、これはこれで面白い曲かなあと思い直しはした。
ピアノ&オケ版だと、やっぱりラフマニノフの《パガニーニの主題による狂詩曲》の方が曲想の変化もドラマティックで華やかな。テクニカルな難易度がそう変わらないのであれば、同じ弾くならラフマニノフを弾くんじゃないかと思う。

Lutoslawski: Symphony No. 3; Paganini Variations; Paroles Tissées; Les Espaces du SommeilLutoslawski: Symphony No. 3; Paganini Variations; Paroles Tissées; Les Espaces du Sommeil
(1997/04/22)
Antoni Wit, Bernd Glemser, Witold Lutoslawski, Adam Kruszewski, Piotr Kusiewicz, Polish National Radio Symphony Orchestra

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 ルトスワフスキ/パガニーニの主題による変奏曲(2台のピアノと打楽器用編曲版)[Percussion:Safri Duo,Piano:Slovak Piano Duo]

これは2台のピアノに打楽器を加えた珍しい編成の編曲。
打楽器は、タンバリン、ティンパニー、トライアングル、マリンバ、ドラムなど、いろいろ使っているので音色がとてもカラフル。打楽器のリズミカルな響きと色彩感がとっても面白い。
ピアノパート自体がかなり込み入っているので、そこに打楽器の音が重なると、ピアノと絡み合ってしまうので、ピアノが弾いている旋律や和声がわかりにくいし、ピアノパートの凄さが薄れているような...。ピアノをしっかり聴きたいなら、オリジナルの2台のピアノ版のパーチェ&ローマの演奏を聴く方が良いでしょう。
パーカッションはサフリ・デュオ。かなり有名な2人組らしく、クラシックオンリーではなく、クロスオーバー的なアルバムがいくつか出ている。

Safri Duo Performs Lutoslawski, Bartók, HelwegSafri Duo Performs Lutoslawski, Bartók, Helweg
(1995/11/14)
Safri Duo,Slovak Piano Duo

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tag : ルトスワフスキ パガニーニの主題による変奏曲 パーチェ ローマ グレムザー

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プロフィール

yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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