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アラウ ~ ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第8番”悲愴”
ベートーヴェンの悲愴ソナタは、ピアノのレッスンで弾くときの定番の一つ。
中学生の頃にレッスンでしっかり練習した曲なので、それからン十年の長いブランクがあっても、少し練習したらスラスラと弾ける。やっぱり子供の頃に覚えたことは忘れないものです。

悲愴ソナタは昔からアラウの録音で聴くことが多い。ベートーヴェンのソナタは、他の曲でもアラウの演奏で聴くのが好きなので、なぜかと考えてみたら、自分で弾くときにイメージするベートーヴェンのソナタの演奏にとても近いから、というのに気がついた。
フレージングやリズム、ディナーミクに歌いまわし、全体的な音楽の流れが、ほとんど違和感なくしっくりと入ってくる。
他のピアニストの演奏だと、聴くのは好きでもああいう風に弾きたいなあと思うことがないのに(思っても多分弾けないけど)、アラウのべートーヴェンはそういうことを考えずとも自然と記憶に残っていて、無意識に似たような弾き方をしているような...。

アラウの悲愴ソナタは新旧2つの録音が残っていて、これを両方聴くと65年の旧盤と87年の新盤では解釈がちょっと違う。
旧盤は、テンポの速さ、打鍵の正確さ、音の切れの良さ、音量のコントロール、etc.といったテクニカルな面は安定しているので、安心して聴ける。
低音は太めの芯のある音質なので重みと安定感があって、テンポも速いので、力強く推進力もある。
全体的にタッチは丁寧で、左手伴奏側の持続音の響かせ方も上手く、ほど良い音量で旋律としての流れがよくわかる。フレーズ内での強弱・音量変化を丁寧に処理しているので、わりと細かに表情が変化する。
ゼルキン、グルダ、ポリーニ、ギレリスの録音もついでに聴いていたので、アラウは思ったより重厚・大柄なスタイルではなくて、ややスローテンポでは低音は重みがあるけれど、タッチは丁寧で起伏のつけ方も細やか。特に弱音の使い方や響きの繊細さはとても印象的。

新盤は、音の美しさが素晴らしく、晩年のアラウ特有の透明感のある響きとしっとりした叙情感がとても魅力的。テンポがスローなので、旋律もよく歌わせている。
83歳で録音したのでテクニカルにはいろいろ気になることは当然多くなり、急速・緩徐部分とも打鍵のコントロールが緩くて安定性に欠けるし、タッチの切れの良さや力感が不足気味。
そういうところが気にならなければ、美音と深みのある叙情性がとても美しく深みもあってどこか魅かれるものがある。(逆に気になってしまうと、聴き通すのにかなり苦労する)


第1楽章 Grave-Allegro di molto e con brio
旧盤の序章は、テンポもかなり遅く和音の響きも厚みがあって、重厚。沈み込むような弱音が入っていて、内省的でやや鬱々とした感じがする。
主題部に入ると、正確なリズムでテンポも速く、太めの音質としっかりとした打鍵で低音部に重みがあり、安定感も充分。それでいて軽快で推進力もあり、骨太で引き締まった感じ。
第2主題に入って、和音やオクターブ移動の伴奏をする左手低音部の持続音がオスティナートでよく響き、1拍目の旋律がつながって聴こえる。これがとてもリズミカルで気持ちよい。時々内声部の旋律なども聴こえてきて、各旋律がくっきり明瞭。

この第2主題は、直前の部分とは雰囲気を変えて、少しテンポを落として叙情感を強めて弾くことできるけれど(バックハウスやケンプ、ギレリスはそうしていた)、アラウはテンポは変わらず。弱音に落として軽やかに弾いていて、あまりしっとりと叙情感のあるタッチにはしていない。
低音部で右手側が弾く細かなパッセージがいくつかあって、この響きはとっても渋いバスでかなり好き。
リピートは、冒頭序章に戻ることはせず、楽譜どおりMolto Allegroの第1主題へ。

新盤だと、打鍵が浅い感じでシャープさや力強さが薄い。全体的に演奏が緩い感じがして、推進力やリズム感が不足ぎみ。急速楽章はまず技巧的な安定感が欲しいので、第1楽章は旧盤の方が良いと思う。

第2楽章 Adagio cantabile
優美なカンタービレでロマンティックに歌う楽章というイメージがあるのに、アラウの旧盤はちょっと違った雰囲気。(バックハウスはそれほどロマンティックではないけれど、やっぱり明るめの色調で晴れやか。)
音量をかなり抑えた弱音を多用して、やや暗めの音色で穏やかで内省的な感じが漂っている。

カンタービレといっても、外へ向かって大らかに歌うというより、心のなかで静かに歌が流れているような感覚。フレーズ末尾でさらに弱音にしてテンポも落とすので、物思いに沈んでいるような雰囲気もする。
主題が再び現れる終盤では、やや優美さや明るさが強くなってきて、最後はとても安らかに。
初めて聴いた時はかなり暗い感じがしたけれど、繰り返し聴いていると、この穏やかさもわりと良いかなと思い直したところ。

(追記)なぜ第2楽章がこんなに内省的な雰囲気がするのか不思議だったけれど、アラウが悲愴ソナタの第2楽章は”祈りにも似た緩徐楽章”と言っているインタビュー記事を見つけて、やっと理解できた。このカンタービレ楽章は単なる甘美なロマンティシズムを歌っているわけではないと、アラウは解釈したのでしょう。本当にアラウの解釈どおり、弱音の響きは甘美というよりは、心のなかへ沈潜していくかのように聴こえる。


反対に、新盤は透明感のある明るめの美音によるカンタービレが美しくて叙情的。
明るさの中にも、そこはかとなく哀しげなものを感じさせる響きがする。これは晩年のアラウの特徴の一つ。
緩徐楽章なので、多少テクニックが心もとなくてもそれほど気にはならない。
優美な叙情感があるので、どちらかといえば、好きなのは新盤の演奏の方かな。


第3楽章 Rondo:Allegro
アラウは、この第3楽章は何を表しているのか迷っていたが、それは”不安”だとわかった時に弾き方が決まった、とインタビューで語っていた。

旧盤は、Allegoの速いテンポで、丁寧な打鍵ながら音の切れも良い。
フォルテとスフォルツァンドも、騒々しくなく、ほどよい鋭さと強さ。強拍部分にアクセントをつけた音が入ったりして、弱音・緩徐部分とのコントラストが強く出ている。
かなり細かい起伏をつけているので微妙な明暗がつき、新盤と比べると、”不安感”というのか、胸騒ぎのような落ち着かなさや、感情の揺れ動きが強く出ている。

この楽章も左手バスの1拍目がよく響いて、旋律の上行・下行していく動きがよくわかる。
音価についてはかなりこだわっているのか、主題旋律のなかにスラー終端部でスタッカートのついた音符があって、これが長めでちょっとテヌート気味に聴こえる。ほかにも似たようなタッチで弾いているところがいくつかあるので、これがちょっと粘り気のあるタッチに聴こえる。
打鍵が丁寧で表情の変化も細かいので、太めの音質とも相まって、ちょっとコクのある第3楽章。

新盤はテンポが遅めで、起伏が緩やか。透明感のある弱音が美しく響き、不安感ではなくて哀感が流れているような感覚。しっとりとした叙情感がとても綺麗。
スローテンポなので、旋律がとても良く歌っている。これも晩年のアラウの特徴。

演奏自体は、全楽章通しで聴くなら、技巧的に安定し、細部まで丁寧な表現で楽章ごとの曲想の違いが明確に出ている旧盤の方が好み。
特に第1楽章の力強く重みのあるタッチで推進力があるところと、低音の渋い響きが、少し若い時の(といっても62歳だけど)のアラウらしくて素敵。
でも、新盤の優美な第2楽章と透き通った哀感と叙情感が美しい第3楽章も不思議な魅力があって、テクニカルにはいろいろ気になるところは多いけれど、なぜか心魅かれてしまう。

                             

旧録音の全集から、<悲愴>、<熱情>、<月光>の3曲を収録した分売盤。これは最近リリースされたので、入手可能。
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ<悲愴>、<熱情>、<月光>ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ<悲愴>、<熱情>、<月光>
(2010/02/24)
クラウディオ・アラウ

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新盤のBOX全集(廃盤)。再録できなかった月光ソナタとハンマークラヴィーアは旧録音の音源。アンダンテ・フィヴォリと自作主題による変奏曲も収録。ボーナスCDは1952年のディアベリ変奏曲。(ディアベリは1985年に再録している)
Beethoven: Piano SonatasBeethoven: Piano Sonatas
(2006/06/27)
Claudio Arrau

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tag : ベートーヴェン アラウ

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グレゴリー・ソコロフ ~ ベートーヴェン/ディアベリ変奏曲
長大で退屈とよく言われるベートーヴェンのディアベリ変奏曲。
この曲を最初から終わりまで飽きずに聴かせることができるかどうかは、ピアニストの腕にかかっているのは確か。何の変哲もない弾き方をすると、かなり退屈するには違いない。
幸いにして、いろいろ聴いた録音に良いものが多かったのでディアベリは大好きな曲。ゴルトベルクよりも気に入っているくらい。

今まで聴いた録音のなかでは、アンデルジェフスキのディアベリが一番刺激的。これ以上に素晴らしいと思える演奏はないだろうなあと思っていたら、今度はソコロフのディアベリを見つけてしまった。
ソコロフのディアベリは、緻密で繊細で甘美な叙情感と、力強くゆるぎない堅固な構造感とが共存し、アンデルジェフスキ以上に個性的。
ベートーヴェンにしては、ルバートが多用され、色彩感も豊かで叙情感も強く、ロマン派の音楽を聴いているような気がするところはあるけれど、隅ずみまで緻密に設計されているせいか、べたべた感情移入したような情緒性はない。
ソコロフらしく、惹きつけられてしまう音の吸引力はいつものことながら、細部まで練られた音の色彩感、響きの重ね方も多彩。
ダイナミックレンジの広さを生かして、重戦車のように力強く迫力のあるフォルテから、甘美なピアニッシモまで、強弱のコントラストもかなり大胆。音量の幅広さと音の美しさは格別。
変奏別・変奏中のテンポ設定もコントラストを明確にし、特に緩徐系の変奏はかなりゆったりとしたテンポで弱音の美しさと表現の繊細さが引き立っている。
地鳴りのような力強い響きのフォルテの推進力と急迫感も素晴らしく、この演奏を聴いて退屈することの方が難しい。

ライブ録音とはいえ、ほとんどミスタッチがなく、臨場感があるせいか音に生気が漲り、60分という長さでも途切れることない集中力を感じさせる。
ライブでこれだけ完成度が高ければ、スタジオ録音する必要もないのでしょう。
アンデルジェフスキが一つの物語のようなドラマティックな演奏だとすれば、ソコロフは時間がゆっくり流れる一つの宇宙のように悠然とした感じがする。

かなり表現が濃厚で個性的な演奏ではあるので、好みは分かれるタイプ。ゼルキンのような質実剛健な演奏を好む人にはちょっと合わないかも。私はゼルキンとカッチェンのディアベリも好きなので、そのときの気分に合うタイプの演奏を選んで、聴くようにしている。
アンデルジェフスキのディアベリが好きな人なら、ソコロフのディアベリもわりと面白く聴けそうな気はする。ちょっと試聴しただけでも、どれくらい個性的かがすぐにわかります。

Grigory Sokolov (Box Set)Grigory Sokolov (Box Set)
(2003/11/18)
Grigory Sokolov (Piano)

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ディアベリ変奏曲は1985年サンクト・ペテルブルクでのライブ録音。ディアベリだけの分売盤も出ているが、入手しにくいしCD1枚にしてはちょっと高めの価格。BOXセットの録音はどれもハズレがないので、コストパフォーマンスは良い。


ディアベッリのワルツの主題による33の変奏曲 / 33 Veränderungen über einen Walzer von A.Diabelli Op.120

<メモ>
ディアベリを聴くときは、必ず変奏ごとのメモを残しておく習慣。聴き直すと印象が変わることがあったり、聴き比べるときに役に立つので。

主題:冒頭3音からして独特な弱音。トロロ~ンという弱音は甘美でちょっと妖艶かも。
その後に続くリズミカルで歯切れの良いの和音とのコントラストが鮮やか。この主題の弾き方は、ブラインドで聴いたとしても、誰が弾いているか間違いようがない。

第1変奏:かなりゆったりしたテンポをとり、弾力のある力強いフォルテで始まり、力をすっかり抜いた弱音のフレーズが挟まれて、緩急の落差の大きいこと。

第2変奏:ひそひそ内緒話をするような囁くような弱音なのに、リズミカルに弾いているのが面白い。

第3変奏:ゆったりしたテンポで、子守歌のように柔らかで温もりのある弱音の響きが綺麗。いろんな種類の弱音を使っていて(この変奏に限らず)、色彩感やニュアンスが微妙に変化していく。

第4変奏:夢見るように明るく歌うような旋律が綺麗。

第5変奏:やや遅めのテンポで、冒頭の左手の連打音を柔らかい弱音で弾いている。(ここを強く鋭くタッチで弾いているピアニストは結構多かったような)。その後では、和音をフォルテでタッチも鋭く弾いているので、かなり強いコントラストがついている。

第6変奏:表情豊かなトリルがとても面白いし、トリル以外の旋律もおしゃべりしているみたいに聴こえる。こんなシンプルな音型だけの変奏なのに、とっても饒舌。

第7変奏:高速で軽快。8度で移動していく左手がとてもリズミカル。右手の三連符はきらきらと煌くよう。

第8変奏:ゆったりしたテンポで弾く左手のアルペジオも、右手の和音もとてもやわらかい響きのレガート。まるで夢のなかにいるように、ふわふわ~とした感じ。

第9変奏:おどけたような雰囲気を出すリズムの取り方がとても上手いし、弱音で弾いた時はちょっとおっかなびびっくりといった感じ。

第10変奏:速いテンポでとても軽快で、持続音が良く響いている。クレッシェンドの勢いと音量が強く迫力あり。

第11変奏:テンポを落として、柔らかい弱音の三連符はうとうと眠たげな雰囲気。

第12変奏:速いテンポの重音移動はとても柔らかなレガートで軽やか。

第13変奏:フォルテの打鍵が力強く(地鳴りがしそう)、符点のリズムも突き刺すようにシャープ。間に挟まれる弱音がささやくように微かな響きで、これだけ落差が大きいと、この単調な(と思える)変奏でも面白く聴けてしまう。

第14変奏:かなりテンポを落として、弱音で弾く和音はとても柔らかくて軽やか。ちょっと疲れてまどろむような物憂げな雰囲気。

第15変奏:和音のスタッカートがやや柔らかいが、弾むように軽やか。

第16・17変奏:速いテンポで、左右の符点のリズムが鋭く、鍵盤上をリズムカルに歯切れ良く上行下降していて、とても躍動的。トリルがどことなくおしゃべりしているようなのが面白い。
アタッカでつながる第17変奏は、少し行進曲風。左手がよく響いて、鼓動のようにリズムを刻んでいる。

第18変奏:一転して、ゆったりとしたテンポに変わり、とても柔らかでレガートな響きの弱音が心地よい。問いかけるようなちょっと不思議そうな雰囲気が良く出ている。

第19変奏:前半のスフォルツァンドの入った弾けるようなリズムが鋭く、カスケードのように折り重なっていくところが鮮やか。

第20変奏:フーガになっているけれど、”エニグマ”とでも名前をつけたくなるような、どうもよくわからないところがあるミステリアスな旋律。

第21変奏:冒頭のアレグロと、その後のメノ・アレグロとで、スピードと音量で大きく差をつけている。

第22変奏:おどけた雰囲気の変奏。単純な音型を何度もリピートするとても単調な構成なので、音の長さ、大きさ、響きの重なり方に打鍵するタッチとかに、かなり工夫して変化をもたせて、色彩感のある面白い変奏に聴こえる。

第23変奏:速いテンポで、歯切れ良いタッチがリズミカル。特にフォルテの和音のアクセントがよく効いている。

第24変奏:ややスローなテンポで、温もりのある柔らかい響きに包まれるようなフーガ(フゲッタ)。教会の中で弾いているような響きの重なりが美しく、夢見るように優しいけれど微かな哀感が流れているような気もする。

第25変奏:速いテンポで、左手と右手がそれぞれ違うリズムを正確にインテンポで刻んでいるのがとても軽快。まるで汽車がレールの上を一定のテンポで走っているようなイメージ。

第26変奏:ゆったりとしたテンポで、柔らかい響きでアルペジオを重ねていくところが夢幻的。

第27変奏:休む間もなく両手とも高速で動き回って目まぐるしい。特に、左手がスタッカートで杭のように打ち込まむリズムが鋭く、ところどころ持続音が強く響いている。

第28変奏:ずっと速いテンポのフォルテで、終始両手の重音移動が力強く規則正しいリズムを刻む変奏。最後だけ弱音に。

第29変奏:ゆったりとしたテンポで、柔らかい響きの弱音が弾く旋律は美しく、淡々とした中に抑制された悲愴感が漂う変奏。
(この変奏の冒頭の旋律は、映画「敬愛なるベートーヴェン」の中で流れていた。)

第30変奏:前変奏の雰囲気をひきづるように、ほぼアタッカでつながっている。中間部でやや明るさを感じさせるような旋律が挟まれているが、終盤は再び哀しげな元の雰囲気にもどって終える。

第31変奏:涙が小雨のようにしとしと流れているような哀感と、ときに聴こえてくる甘美な響きが美しい変奏。ソコロフのピアノは、深く沈み込んでいくような思索的な雰囲気があるのが独特。

第32変奏:ややゆったりとしたテンポで、徐々に霧が晴れたように明るく軽快さを増してゆくフーガ。
わりと速いテンポで弾くピアニストもいるけれど、同音連打のリズムをフォルテで明確に刻み、着実に一歩一歩踏みしめていくようなやや重めのタッチ。展開部のフーガはとても柔らかで軽やかになり、最後はテンポも上がって勢い良くクレッシェンド。

第33変奏:柔らかく温もりのある弱音が優しく響き、子供が遊び疲れて眠りに誘われるような雰囲気がする変奏。聴いている方もぐったり。もう眠くなってしまいました。ソコロフの弱音の響きの美しさと緻密で繊細な表現は素晴らしくて、疲れたけれどとても満足。

tag : ソコロフ ベートーヴェン

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アラウ ~ ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ全集
私が初めて買ったベートーヴェンのピアノ・ソナタの録音は、記憶をたどるとバックハウスとアラウだった。
標題付きの有名なソナタ(悲愴、月光、熱情、告別、ワルトシュタイン)のどれかを収録した分売盤だったはず。
当時学生だった私には、晩年のバックハウスのステレオ録音はあまりピンと来るものがなく、魅かれるものがあったのは60歳前後のアラウの旧録音のピアノ・ソナタ。
ちょうどアラウの新録音の新譜が次々に出ていたのでそれも買い足して、最後は新録音の全集盤で買い直した。でも、この新盤は、初めて聴いたアラウの演奏とは違っていてかなり違和感を感じてしまった。
それ以来、ポリーニ、ケンプ、バックハウス、グルダ、ゼルキン、ルプー、ブレンデル、etc...といろいろ集めたけれど、結局たどり着いたのは、アラウの旧録音の全集。

全集盤で主に聴くのはアラウ、ケンプ、ブレンデル。
曲によって他のピアニストの好きな録音も聴くというパターン。第31番ならアンデルジェフスキ、第32番ならカッチェンと最近みつけたアスポース、それに、ソロコフ(第4,9,10,15,28番)。時々、昔(1990年頃以前)のポリーニの録音も聴きたくなる。明るく躍動感のあるベートーヴェンなら、ポミエ。
世評高い録音をいろいろ聴くのではなくて、好きなピアニストの録音だけに限って聴く方なので、これだけあれば今はもう充分。

アラウのベートーヴェンのCDがどれくらい出ているのか、最近HMVやamazonでチェックしてみると、ほとんどのCDが廃盤になっていて、え~、どうして?と、ちょっと驚いてしまった。
ベートーヴェンに限らず、ショパンを除いて、アラウのCDは廃盤がかなり多い。
アラウのベートーヴェン録音ですぐに入手できそうなのは、最近次々にでているライブ録音を除けば、旧録音の抜粋盤の3大ソナタ集(悲愴、月光、熱情)、ピアノ協奏曲第4番&第5番(新・旧録音)、第1番(旧録音)&三重協奏曲のカップリング盤くらい。旧録音の後期ソナタ集は在庫があれば手に入るかも。
ピアノ・ソナタ全集は新旧両方とも廃盤なので、在庫限りか中古品となってかなりの高値。(もともとアラウの全集は廉価盤は出ていないので、1万円くらいで買った記憶がある。)

一昔前の世代のピアニストだと、バックハウスとケンプの全集はすぐに手に入るけれど、アラウと同じ年のゼルキンの全集は廃盤で分売盤も手に入りにくい。
アラウやゼルキンを聴く人が少なくなって、CDが売れなくなったからかな?
アラウの録音は、ベートーヴェン以外でも晩年のものが多いので、予備知識なしに初めて聴く人は、テクニカルなところでひっかかる部分があるようにも思うし。
色彩感のある美音と細部の表現にこだわった微視的なスタイルや、スピーディでダイナミズムのある演奏が現代風に思えるけれど、アラウはその逆のタイプ。
旧録音の演奏を聴くと、全体の音楽の流れと構成がしっかりした大柄なスタイルに思えるし、低音の響きが厚めで重たく響き、テンポは全体的に遅め(特に新録音)で、表現に大仰さはなく、一見地味めな印象。じっくり聴き込むと良さがだんだんわかってくる...というタイプだと思うので、こういうスタイルは時流にはあまり合わないのかもしれない。
そういえば、グールドの演奏は知的な議論の対象になるけれど、アラウの演奏はただ味わうもの...とどこかで書いていた。これは、本当にその通り。

                              

アラウのベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集で人気があって聴かれているのは、白いBOXに入っている新録音。
新録音は、晩年のアラウのゆったりとしたテンポで、残響が長く、透明感のある深く伸びやかな響きで、じっくりと歌う叙情感が強い。
ただし、1984年~90年の録音のため、1903年生まれで80歳代のアラウなので、高齢ゆえの技巧的な問題がかなり目立つ。
打鍵のコントロールが安定していないときがあり、タッチの切れ、音量のコントロール、音の粒のばらつきや拍子のズレ、テンポの伸縮など、パッセージによって気になるところは結構ある。録音年が90年に近くなるほど技巧的な衰えが進んでいるので、急速楽章ではかなりそれが目立ってくる。
それでも、この新盤が好きというアラウのファンは多いし、その理由は聴けば良くわかる。
以前は全盛期に録音した旧盤の方がアラウらしい演奏だと思っていたけれど、聴き直しているとこの新盤の演奏の不思議な魅力にはまってしまって、抜けられなくなりそう。

音質も録音年・スタジオによってばらつきがあるけれど、大半はスイスのラ・ショード・フォンのスタジオ録音。ここでの録音の音の美しさは天国的と言いたくなるほど。
透き通った水晶のような透明感がある柔らかく伸びやかな響きで、特に高音の弱音の美しさは格別。感情の移り変わりを反映するかのように、アラウの脱力したような柔らかいタッチに合わせて音色が微妙に変化し、本当にこの繊細な音の美しさは魔力的。

技巧面だけ取り上げていえば、いろいろ気になるところはかなりあるけれど、それに慣れてしまうと全然気にならなくなって、美しい音と、ゆったりしたテンポで歌う(語る)ようなフレージングの不思議な魅力に引き込まれてしまう。
表現の奥行きと深みが旧録音よりも増し、しっとりとした叙情感が加わって、さらに達観したというかピュアというか、なんと形容してよいのか言葉にしがたい雰囲気が漂っている。
アラウの弾くべートーヴェンを聴いているというより、ベートーヴェンを通してアラウのピアノを聴いているような...。
今までは第30~32番の後期ソナタとワルトシュタインをよく聴いていたけれど、テンペストを聴き直すとこれがまた素晴らしくて。
旧録音と両方を比較しながら聴いていると、旧録音の方が技巧的には安定しているけれど、音響面と演奏が醸し出すものが違っていることもあって、それぞれの味わいがある。どちらが良いともいえなくなってきたので、他の曲ももう一度聴き直してみないと。

新盤のBOX全集(廃盤)。再録できなかった月光ソナタとハンマークラヴィーアは旧録音の音源。アンダンテ・フィヴォリと自作主題による変奏曲も収録。ボーナスCDは1953年のディアベリ変奏曲。(ディアベリは1985年に再録している)
Beethoven: Piano SonatasBeethoven: Piano Sonatas
(2006/06/27)
Claudio Arrau

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アラウの録音を最初に聴くなら、今なら3大ソナタの分売盤が出ている旧録音の方。
技巧面の衰えがさほど気にならないのであれば、新録音も良いと思うけれど、分売盤がないので全集を買わないといけない。
旧録音は1962~66年に録音したので、技術的に安定し、表現や音楽の流れが自然。そこは安心して聴ける。
残響が短めで音はすっきり、芯のしっかりした太目の音がよく響く。録音が60年代前半で音質がちょっとレトロで、音響的には(好みにもよるけれど)新録音の方が魅力的。
アラウは重量奏法をとっているせいか、低音は重く深く響くので、重厚な安定感がある。ライブ映像を見ると、フラットな指の形に加えて、指が鍵盤に貼り付いているので、硬質の歯切れ良いタッチではない。音の切れにちょっと粘り気があるような気がいつもするのは、この奏法のせいなんだろう。
フォルテやスフォルツァンドはバンバンと強打していないけれど、音の重みと伸びやかさはさすが。
全体的に、新録音よりもテンポは速く、音の切れも良くて躍動感もあるし、男性的というか力強いタッチで結構勢いがあり、弱音は明るく暖かみがあって、包み込むように優しい感じ。
旧録音の演奏には、技術と表現が一体化した安定感があり、ポジティブな確信に満ちた力強く穏やかで調和的な世界を感じるので、アラウのベートーヴェンを聴くと心穏やかになって安心感に浸れる。

旧録音のピアノ・ソナタ全集とピアノ協奏曲全集(1964年ハイティンク指揮コンセルトヘボウ管)、ディアベリ変奏曲(1985年)、変奏曲数曲などを収録したBOX全集(1998年リリース、廃盤)。
同じく廃盤になっているけれど、ピアノ・ソナタだけを収録したBOXセット(2002年リリースのイタリア盤)もある。
Complete Piano Sonatas & ConcertosComplete Piano Sonatas & Concertos
(1999/11/09)
Claudio Arrau

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米国amazonではダウンロード販売もしている。

旧録音の演奏は、Youtubeで登録されている音源がかなりあって、「TheLeonardoSaez さんのチャンネル」の動画タブから、検索BOXに ARRAU と入力すれば、アラウの音源リストが表示されます。

                              

ピアニストの青柳いづみこさんは、アラウのベートーヴェンが好きだそうで、新録音ではなく、旧録音の3大ピアノ・ソナタ集を推奨盤にあげている。(出典は『究極のCD200 クラシックの自由時間改訂新版』)
そのときのコメントが「重厚な音、深々とした広がりのある表現。スタイルに忠実なのに説教調にならず、かなりたっぷり歌っているのに形がくずれない。特に《月光》の第1楽章など、がんこすぎず、気むずかしすぎず、おセンチすぎないときの、人間的であったかいベートーヴェンおじさんがすぐそばにいるようだ。」
ほんとうにその通り。おしつけるところがなくて、口数は少ないけれど、とても頼りがいがある”ベートーヴェンおじさん”。
ケンプのベートーヴェンは、ときどきテンペラメントが噴き出たような激しさを感じる時があって、いつも心穏やかに聴けるというわけではないし、ブレンデルはコントロールされたような冷静さを感じて心情的にシンクロしにくいけれど、アラウにはそういう近寄りがたさは全然なくて、安心してよりかかれる調和のとれた安定感がある。

旧録音の全集から、<悲愴>、<熱情>、<月光>の3曲を収録した分売盤。これは最近リリースされたので、入手可能。
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ<悲愴>、<熱情>、<月光>ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ<悲愴>、<熱情>、<月光>
(2010/02/24)
クラウディオ・アラウ

試聴する


2013年はアラウの生誕100年にあたる。その前後に廃盤CDが廉価盤で再リリースされるのではないかと、ひそかに期待しているところ。
ベートーヴェンとショパンの録音はほとんど持っているけれど、ブラームスとリストのピアノ・ソロの録音が一部抜けてたりしているので、廃盤を早く復活させてほしいものです。

tag : アラウ ベートーヴェン

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バルトーク/シク地方の3つのハンガリー民謡,ルーマニア民族舞曲,ルーマニアのクリスマスの子供の歌
ピアノで弾くバルトークといえば、一番知られているのはたぶんピアノ協奏曲。
数十年前にポリーニが録音した演奏が、打楽器奏法の最たるもののように凄かったせいではないかと思っている。
バルトークと同郷人のピアニストのシフは、「バルトークはいつも荒々しく、ばんばん弾かれます。ですから彼の音楽の音色の美しさが失われてしまうのです。」と言っていた。

バルトークのピアノ作品は、打楽器的奏法を駆使するものばかりではなく、和声の響きや旋律が美しく、あまり聴きなれない東欧風のエキゾチックな雰囲気する曲もたくさん。
一つ一つは演奏時間の短い小品が多いけれど、大半は組曲になっているので、全部聴くとなるとこれが結構な時間がかかる。
バルトークのピアノソロの作品を聴くと、ドビュッシーに影響されたような和声の美しい響きや、東欧の民謡独特のリズムや旋律がとても新鮮。

バルトークのピアノ独奏曲といえば、《ミクロコスモス》や《アレグロ・バルバロ》は、聴いたことがなくても、タイトルが印象的なので良く知られているかも。
一般にはあまり聴かていない(と思う)《戸外にて》は響きが幻想的。かなり現代的な印象主義の曲のようでかなり変わった雰囲気なのが面白い。

民謡素材を元にした組曲群がかなり多く(多すぎてどれがどの曲なのかだんだん混乱する)、その中でも哀感のある旋律と現代風でエキゾチックな雰囲気が混合したような和声がとても美しい曲集だと思えるのが、《シク地方の3つのハンガリー民謡》《ルーマニア民俗舞曲》《ルーマニアのクリスマスの子供の歌》

                             

《シク地方の3つのハンガリー民謡》はアンデルジェフスキがカーネギーホールのリサイタルでアンコールに弾いていた。
初めて聴いた時はなんて綺麗な曲なのだろうと思って、こういう曲をバルトークが書いていたなんて、ととても驚いた覚えがある。[ピティナの作品解説]

そのなかでとりわけ美しいのが第1曲:ルバート





《ルーマニア民俗舞曲》の第1曲~第4曲は、それほど舞曲風のリズムが強くなく、ゆったりとした哀感のある旋律と和声が綺麗な曲。最後の第5曲と第6曲は急速なテンポでとても躍動的な舞曲。[ピティナの作品解説]

これはバルトーク自身のピアノによる第1曲Jocul cu bata



《ルーマニアのクリスマスの子供の歌》も、ルーマニアの民謡がベースなので《ルーマニア民俗舞曲》ととてもよく似たタッチ。よく聴くクリスマスがらみのポピュラーな曲とはかなり違っている。


                             

バルトークのピアノ独奏曲の録音は、コチシュ、シャンドールなどハンガリー人のピアニストのものが昔から有名。私がよく聴くのはヤンドーの録音かな。

Bartók: Piano Music, Vol. 2Bartók: Piano Music, Vol. 2
(2002/02/19)
Jenö Jandó

試聴する(米国amazon)
(ルーマニア民俗舞曲:track22-27)
(ルーマニアのクリスマスの子供の歌:track31-32)


アンデルジェフスキのカーネギーライブ。アンコールでバルトークの《シク地方の3つのハンガリー民謡》を弾いていた。
ピョートル・アンデルシェフスキ・ライヴ・アット・カーネギー・ホールピョートル・アンデルシェフスキ・ライヴ・アット・カーネギー・ホール
(2009/05/27)
ピョートル・アンデルジェフスキー

試聴する(シク地方の3つのハンガリー民謡:DISC2の最終トラック)



◇バルトークのピアノ独奏曲に関する記事
《シク地方の3つのハンガリー民謡》
《ミクロコスモス》
《ピアノ・ソナタ》
《9つのピアノ小品》

tag : バルトーク ヤンドー アンデルジェフスキ

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フェルナー ~ ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第30番、第31番、第32番(ライブ録音)
ティル・フェルナーの2010年6月10日ウィグモアホール・リサイタルのライブ録音が、ウェブラジオで放送されていた。
このリサイタルは、フェルナーが世界5都市(NY、ロンドン、ウィーン、パリ、日本)で行っているベートーヴェン・ピアノソナタ全曲演奏会の一環。今回はベートーヴェンの最後のソナタ3曲。
6月7日のウィーン・コンツェルトハウスの同じプログラムのリサイタルも数日前にライブ録音が放送されていたけれど、そっちは聞き逃してしまった。

ベートーヴェンのピアノ・ソナタのなかでは、第31番と第32番が一番好きなことと、フェルナーのバッハの平均律集録音が素晴らしく良かったこととで、フェルナーの弾くベートーヴェンのピアノ・ソナタにはとても興味があって、実演を聴きたいのに、日本公演は東京(トッパンホール)しかない。一応大都市とはいえ大阪はやっぱりローカル都市だとこういう時に実感していまう。
フェルナーのチクルスは、ウェブラジオでも良く放送されているので、初期・中期のピアノ・ソナタはいくつか聴いている。この最後の3つのソナタでは、どんな演奏をするのでしょう?

ウェブ経由なので音質はあまり良くないけれど、柔らかい音の響きがいろいろ変化していくのは感じられるので、実際にホールで聴けば、フェルナーの音はかなり綺麗に聴こえるに違いない。

第30番は苦手な曲ではないけれど、他の2曲ほどにいろいろ聴いてはいないので、詳しくはなんとも言えず。
速いテンポの第2楽章や、曲想の異なる変奏が多いので、他の2曲よりは強弱のコントラストがやや強めで、起伏が大きく、曲想の変化や躍動感などは、良く出ていた感じ。聴衆の拍手もわりと熱が入っていた。この曲もそのうち集中的にいろいろ聴かないといけない。

                              

第31番の第1楽章は、丸く柔らかさのある低音と澄み切った高音が絡み合って、響きの印象がとてもよい。フェルナーの音質はやや軽めで明るさと柔らかさがあって、とても心地良い響き。
テンポもやや速めで軽やか。ふわ~と夢見るような明るさと上品さで、とても綺麗で開放的な雰囲気。

第2楽章は、あまりフォルテを強打しないので強弱のコントラストは緩やか。軽やかなタッチだけれど、表現は微妙な明暗が交錯するような繊細さ。

第3楽章は、それほど遅いテンポはとっていないし、弱音もそれほど弱さを強調していないので、内省的に深刻そうな表情ではなし。柔らかい弱音の低音の和音にのせて、それほど大きく起伏をつけずに静かに流れるような叙情感。
続くフーガがとても素晴らしくて、バッハの平均律の演奏を思い出してしまう。弱音の柔らかい響きのなかでも、声部ごとに響きの違いをしっかり出しているので、声部の弾きわけが明瞭で、複数の声部がとても自然に分れて聴こえてくる。
2度目のアリオーソは、最初よりもやや旋律の起伏やテンポの揺れが大きくなり、ややウェットな感情的な強さは感じさせる。2つのアリオーソには、あまり感情移入の強い表現は避けてやや抑えたタッチで、静かだけれどなぜか芯の強い感情が流れているよう。

2度目のフーガもテンポはそれほど落とさず、柔らかい響きで始まる。
テンポが徐々に上がって、最後のフィナーレ部分はかなり速い。それでもバタバタとスピード感と強いフォルテで押していくタッチ(こういう弾き方になる演奏が結構多い)ではなく、この速いテンポの中でも、左手のアルペジと右手の旋律も起伏を細かくつけた表現がとても繊細で、引き締まったほどよい高揚感がとても爽やか。

全体的に、大仰な感情的な表現を抑制して、ゆるやかな起伏の中に繊細さを感じさせる表現がフェルナーらしく、響きの美しさと微妙な陰影のある叙情感がとても印象的で、品の良さを感じさせるところが素敵。

今まで聴いた第31番の録音のなかで、印象に残っているのはアンデルジェフスキのライブ録音。これは、一度聴くと忘れられないくらいドラマティック。
フェルナーの第31番は、そういうドラマティックさはないけれど、フェルナーらしい響きと微妙な陰影のある繊細さな表現が美しい演奏で、こういう演奏も全然悪くはなくて繰り返し聞いても良いなあ..と思わせてくれるくらいに良かった。
聴衆の反応もかなり好意的で拍手にも熱が入っていて、ブラヴォーの歓声が飛び交ってました。

                              

最後の第32番のピアノ・ソナタの演奏を聴くと、フェルナーらしい弾き方ではあるけれど、物足りなく思えてしまったというのが感想。

第1楽章は、フェルナーらしく、あまり大きく起伏や緩急の変化をつけていないし、フォルテもそんなに強い打鍵していないので、持ち前の響きの柔らかさもあって、陰影や急迫感が希薄。この曲にしては、ちょっと密やかな雰囲気で淡々と進みすぎる感じがする。

第2楽章の主題は、テンポはそれほど速くはないけれど、わりとさらりとしたタッチで響きも明るい感じ。強い内省的な雰囲気ではなく、静かにさらさらとした叙情感が流れていくよう。

第1変奏や第2変奏もテンポやリズムは変わっていくけれど、響きの柔らかさと深く感情移入するような表現をとらないようにしているせいで、雰囲気的には似かよってくる。

第3変奏は、フォルテもあまり強くはなく起伏は緩め。特に印象的なのは、かなり変わったリズム感。
符点のシャープなリズムがなぜか3連符的に緩やかで、フレーズによっては、符点ではなくほぼ均等な長さに聴こえる。
ここまで符点のリズムを緩くした弾き方を聴いたことがないので(”リズムが鈍い”と思う演奏はよくあるけれど)、わざとそういうリズムをとっているのはなぜなんだろうと、とっても気になってしまった。(もしかして、最近はこういう解釈が増えているのだろうか?)

(追記)ブレンデル(フェルナーのお師匠さん)の1995年日本公演のライブ映像の見ていたら、フェルナーと同じような弾き方をしていた。使用楽譜か演奏解釈かの理由で、こういう弾き方を意図的にしているのでしょう。

第4変奏以降は、弱音の響きとヴァリエーションが多彩で、ペダルで重なる響きの柔らかさもとても綺麗に聴こえる。
終盤にかけて、左手のアルペジオの起伏をかなりつけて波のうねりのような響きを出しているけれど、テンポがそれほど速まることなく、ゆったりと進んでいくので、高揚感があまり強く出てこない。

色彩感はあるけれど、もともと響きがまろやかで時々フェルトをかけたような感触なので、第2楽章のような弱音の多い変奏が続くと、強弱のコントラストが強くないために、音が均質な印象になる。
それでも、フーガだとポリフォニックな旋律の交錯するところを響きの違いを出すことで、弱音でも面白く聴かせることができるけれど、こういう左手伴奏・右手旋律でさらに音の厚みが薄いホモフォニックな曲では、平板に聴こえがち。

ホールで聴けば音の色彩感がずっと明瞭になるのだろうけれど、緩急・強弱のコントラストが弱いので、淡々と平板に進んでいく印象はあまり変わらないと思う。
この曲の演奏に対する聴衆の反応はあまり良くはなかったような...。少なくとも第31番よりは悪かった。拍手はあったけれど(ちょっと熱が入っていない感じ)、ブラボーの歓声はなく、ホールのざわつきが聴き取れる。

やっぱりこの最後のソナタは難しい。第31番の演奏の方はとても良かったので、リサイタルで実際に聴いてみたいもの。スタジオ録音が出たら必ずCDを買うでしょう。

tag : ベートーヴェン フェルナー

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『究極のCD200 クラシックの自由時間』(改訂新版)
吉松隆が構成・編者をつとめた『クラシックの自由時間』の改訂新版は、お薦めCDカタログ本にしては、結構面白かった。
推奨盤カタログみたいな本は、定番ものが多く載っているので、CDを収集し始めた頃はともかく今はあまり読むこともなくなってしまった。
それでも、たまに面白い曲を発見することがあるので、執筆者・選者が信頼できそうな時は、一応チェックする習慣。
この前読んだ岡田暁生氏の『CD&DVD51で語る西洋音楽史』は文章が面白いし、取り上げているCDも興味を引かれるものが多くて、とても参考になった本。特に大澤壽人のピアノ協奏曲第3番<神風>は思わぬ掘り出し物だった。

 岡田暁生著『CD&DVD51で語る西洋音楽史』の記事


『究極のCD200 クラシックの自由時間』は、授業の時間割のように7つの章(時限)に分けられていて、一応、ポピュラー度(らしき基準)に応じて分類されている。各章最後には、「休憩時間」としてコラムがいくつか載っている。
執筆者は全部で15人。解説文が面白いのは、吉松隆、青柳いずみこ、片山杜秀の3氏。やっぱり本をたくさん書いているだけあって、文章もうまいし、私の興味をそそるポイントをついている。
吉松隆はいつもながらちょっと砕けた表現でノリの良い文章が面白くて、彼の紹介文を読むと、どうも好きになれないチャイコフスキーの《悲愴》さえ聴きたくなってきてしまう。片山氏はやや固めの文章で知的興味をそそる視点で書いてある(でも担当している曲は少ない)。
青柳さんはピアニストだけあって、ピアノ演奏や楽譜上のポイントが書いてあったり、選択した録音のコメントが面白い。ただし、掲載されているCDはオーソドックスなものとは思えないものもあるし、好みが違うような気はする。それでも結構興味を引かれる録音がありました。

紹介されているCDは、執筆者の嗜好が反映されてはいるが、交響曲や合唱曲・歌曲はオーソドックスなものが多いような気はする。(あまり得意はジャンルではないので、本当にそうかどうかと言われると良くはわからないけれど、私でも知っている名盤が結構多い)
カラヤン指揮の録音をよく見かけるのは、吉松隆(と他の執筆者)が取り上げていることが多いせいだと思う。
名盤以外のもので個人的嗜好で推奨すると自覚している場合は、参考に名盤の演奏者だけでも書いている執筆者が数人。紙面が限られているので、こういうのは親切。
左側下部にも、他の推奨盤や参考図書などが時々掲載されている。

クラシックの全ジャンルから年代を問わず、200曲選ぶので、どうしてこの曲が入っていないの?なんてことは多い。1頁につき1曲なので、これは仕方がない。ジャケット写真付きの推薦盤は概ね2つ(曲によっては2つしかないのはちょっとキビシイ)で、推薦盤には演奏内容のコメントもちゃんと書いているし、関連情報までついている曲もあるから、情報量は結構多い方だと思う。
交響曲・管弦楽曲が多く、協奏曲も超有名曲はほとんどカバー(でも、ブラームスのピアノ協奏曲は2曲とも入っていなかったりする)。
器楽曲、室内楽曲、歌曲はそれに比べて手薄。器楽曲でもピアノ作品は比較的多め。歌劇と合唱についてはよくわかりません。合唱曲は、名曲中の名曲の類はほとんど入っているようには思うけど。

究極のCD200クラシックの自由時間 改訂新版究極のCD200クラシックの自由時間 改訂新版
(2010/03/17)
吉松隆 構成・編:

商品詳細を見る


私はピアノ関係のCDを買うことがほとんどなので、ここからはピアノ曲について。
執筆者はピアノ協奏曲と独奏曲は青柳さん。アンサンブルは吉松隆や片山氏など別の執筆者。
青柳さんは、かなり個人的な好みが強い推奨盤が多い気がする。曲とピアニストに詳しくなければ、ちょっと変化球気味かも。
オーソドックスな録音よりも、個性的なものや、表現が対照的な録音などを選択しているので、ピアニストによって、演奏が大きく変わることが明確にわかるようにという意図らしい。(スタンダードな録音をコメントでちょっと書いておいてくれれば親切だとは思うけど)
それに、個性的とはいえ、かなり古い(1930年~50年くらい)録音もちらほら。
紙面の制約に加えて、執筆者の得意な曲に選曲の偏りがあるように思えるところはある。
ドビュッシーの《12の練習曲》や、シューマンが《謝肉祭》と《クライスレリアーナ》と2曲あるのに、シューベルトのピアノ・ソナタが1曲もない(最後の第21番ソナタくらいは入れておいて欲しいなあと)、ゴルトベルク変奏曲がない、とか、選曲がちょっとどうかなと思うところがなきにしもあらず。(自分が良く知っている曲が入っていないという、単なる好みの問題もあるけれど)

チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番
1)ギレリス(79年)、2)ボゴレリチ(85年)
この曲はリヒテル&カラヤンの録音が一番有名だと思ったけれど、推奨盤はギレリス&メータ。ギレリスは協奏曲全集を録音しているはず。
2番目はボゴレリチ。ピアノ曲ではやたらにボゴレリチの盤が目に付く。青柳さん、よほどボゴレリチがお好きらしい。実際に個性的で良い演奏なんでしょうが、それにしても多い。
個人的な好みとしては、最近リリースされたスティーブン・ハフの全集も鮮やかな技巧とスピード感で痛快。さっぱりしたロマンティシズムが爽やか。
(この曲の解説文はちょっと堅苦しい。あまりお得意な曲ではないのかも)


ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第2番
1)アシュケナージ(ハイティング&コンセルトヘボウ)(84年)、2)ラフマニノフ自作自演盤(29年)
私の中ではリヒテルが定番中の定番。アシュケナージは特にCDを集めたことはないのでこの録音は聴いたことがない。
新しい録音ならツィメルマンが結構人気はある(オケの伴奏がかすんでいるけれど)。
貴重な自作自演盤はリファレンスのために聴くには良いけれど音は悪い。似たような演奏スタイル(速いテンポでロマンティズシムは抑制気味)なら、コチシュの録音がある。
個人的には切れ味鋭い技巧とロマンティックな叙情感の両方を味わえるスティーブン・ハフの録音がベスト。海外では評価が高いのに、日本ではあまり知られていないのが残念。

ショパン/ピアノ協奏曲第1番
1)アルゲリッチ(ショパンコンクール・ライブ)、2)キーシン(12歳の時の録音)
これもちょっと変化球気味。青柳さんは、アルゲリッチ(とボゴレリチ)が好きなのかしら?と思ったほどに、他の曲でも登場する。
この録音は有名だけど、ツィメルマンの旧録音(指揮はジュリーニ)が流麗で変なクセもなくて、昔はこればかり聴いていた。
キーシンも、コレクターやキーシンファン向けのような気がする。
変わったところが良いなら、ツィメルマンの弾き振り盤はかなり特異。後学のために聴く価値は充分あると思うけれど、好みは激しく分かれる。(弱音の響きが繊細さを通り越して、私には病的な響きに聴こえるときがあって、ちょっとゾクっとする録音)

モーツァルト/ピアノ協奏曲第20番・第24番はハスキル、モーツァルト/ピアノ協奏曲第23番・第26番はグルダ(アーノンクールの指揮)。
そもそも競合盤が多いので、ハスキル以外なら誰が一番良いかと言われても、選ぶのに苦労しそう。
グルダのこの録音は聴いていて楽しい。第23番なら一番よく聴いたのはポリーニ&ベームの録音で、ポリーニの硬質でクリアな響きで透明感のある叙情が美しく、特に気品の薫る第2楽章が素敵。この演奏のDVDも出てます。

ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第5番
1)フィッシャー(51年)、2)グールド(66年)
フィッシャーは聴いたことがないけれど、録音が古すぎる気がするし、定番となるとやっぱりバックハウスになってしまう。
グールド盤は「グールド的緊張感に満ちたいい演奏」というコメント。間違ってもベートーヴェンをグールドで聴く気には全くならないけれど、変わっていて面白いのかも。多分私の好みには合わないでしょう。


グリーグ&シューマン/ピアノ協奏曲
1)リパッティ(48年)、2)ツィンマーマン(カラヤン指揮の盤)
リパッティは有名だけど音質が悪そう。ツィメルマンは定番で、カラヤンと演奏することは”大きなズボンを履いていたようだった”と言ったと伝えられている録音。
その意は、絶えず引っ張り上げておかないとズボンがずり落ちてしまう=カラヤンの音楽と合わせるのに初めから終わりまでとても苦労した。
写真でソリストよりも指揮者が前面に出ているかのはどーしてかというと、その方がセールス面で売れやすいだろうとカラヤンが思ったから(とどこかで読んだことがある)。

グリーグのコンチェルトだけならリヒテルがとても良いと思うけれど、シューマンのコンチェルトになるといろいろCDは集めたけれど、誰のが定番になるのかちょっとわからない。
昔はルプーの録音をよく聴いていた。最近ブログを通じて知った方に聴かせていただいたカッチェンとベーム&NYフィルの1962年のライブ録音(これはかなり稀少な録音なので、その方にはとっても感謝してしまった)が素晴らしくて、今はこれを一番良く聴いている。

ショパン/24の前奏曲
1)ポゴレリチ、2)コルトー(33,34年盤)

シューマン/謝肉祭
1)ラローチャ、2)内田光子

バッハ/平均律クラヴィーア曲集第1・2巻
1)フィッシャー(33-36年)、2)グールド  (なぜか<皇帝>と同じピアニストの顔ぶれ)
コメントが面白くて、「グールドがああいう風にだけは弾きたくないと言ったという」フィッシャーが1番目に上げられている。(録音が古すぎて音も悪そうだけど)
グールドと違ったタイプなら、シフが順当なのかな? リヒテルはとても人気があるので良いと思うけど。リヒテルが、グールドのリピート省略奏法に批判的だったのは有名。(でも、リヒテルとグールドはとても馬が合っていたので、険悪な仲では全くない)
最近聴いた新しい録音のなかでは、フェルナー(ブレンデルのお弟子さん)は、微温的だけれど柔らかで多彩な響きと自然な音楽の流れがとても綺麗な録音。今はフェルナーで聴くことが多い。

次のグールド盤のコメントは、「表情のない機械的なバッハを弾く生徒に、誰の聴いた?というと、必ずグールドという答えが返ってくる」。これは実際ありがちなこと。昔レッスンを受けていたときに先生は、(変なクセがつくといけないから)グールドをお手本にしてはいけない、と言っていた。グールドのバッハは好きではなかったし、ああいう天才的な個性で成り立っている音楽は、普通の人間がお手本にできるようなものでもないので、そういうことはしなかったけれど。

ベートーヴェン/3大ピアノ・ソナタ集(悲愴、月光、熱情)
1)アラウ(63年)、2)バックハウス(58,59年)
バックハウスは定番だし、アラウは技術的に安定した旧録音の方を上げているのが良いところ。
バックハウスはライブ録音のリリースや再発売がいろいろ出ていて(3大ソナタ集というわけではなく)、ライブ盤(の音質の良い盤)はバックハウスのピアノの音が綺麗なのと音楽の流れが滑らかなので、晩年のステレオ録音よりも聴いていて楽しい。
アラウのベートーヴェンは晩年の新録音が有名。ただし、ほとんど80歳代の録音なので、技術的問題がかなりあって、それが気になりだすと聴きづらい曲が結構出てくる。そのせいでこの頃は旧録音の抜粋盤の方を聴くようになってしまった。
ベートーヴェンのピアノ・ソナタの録音は激戦区なので、このほかにもケンプ、ギレリス、ゼルキン、ブレンデル、ポリーニ、(それにポミエも好き)etc.、古くはシュナーベル、ナットなど膨大にあるので、選ぶには困らないが、凝りだすと異聴盤のCDが溜まる一方なのが頭の痛いところ。

ショパン/24の練習曲
1)ポリーニ(72年)、2)コルトー(33,34,39年)
コルトーはポエジーに溢れているらしいけれど録音が古いし、メカニックがかなり不安。ヴィルトオーゾを聴き慣れた耳には、旧世代のピアニストのテクニックはかなり聴き劣りしそう。でも、ちょっと聴いてみたい気はする。

リスト/ピアノ・ソナタロ短調
1)アルゲリッチ(71年)、2)ポリーニ(89年)
ロ短調ソナタなら、ツィメルマンが今のところ私のベスト。評価が高い録音なので良いと思うけど。
ポリーニのリストは聴いていなかったかも。89年だと奏法が変わっていく直前くらいだと思うので、私が好きだった頃のポリーニのピアノが聴ける気がする。
あとは、知的なブレンデルや、超絶技巧とロマンティシズムの濃いベルマンとか、リストが得意なピアニストあたりが、それぞれアプローチが違っていて面白そう。
(追記)最近聴いたアラウの70年録音のロ短調ソナタは濃いロマンティシズムと深い情感がある。アラウはやや暗めの音色で、この曲のもつ叙情性や思索性、明暗など相反する要素が良く感じとれて、煌びやかな音色で技巧的に華やかなツィメルマンよりも、音楽的にずっと深みがある(と私には思える)。それにブレンデルのロ短調ソナタ(81年録音)も秀逸。音に透明感があって美しく、落ち着いたテンポで旋律がくっきり浮かびあがって構成感のある知的な演奏。結局、アラウとブレンデルが今は私のベスト盤。

ドビュッシー/映像、前奏曲集
1)ミケランジェリ(71年)、2)ギーゼキング(53年)

ラヴェル/夜のガスパール
1)ポゴレリチ(82年)、2)フランソワ(61年)
この曲は好きなピアニストでしか聴いていないので、ロジェとロルティのラヴェルのピアノ作品全集のみ。ミケランジェリもよくライブで弾いていた曲。

プロコフィエフ/ピアノ・ソナタ第7番
1)グールド(67年)、2)ポリーニ(71年)
現代もののグールドの演奏(ヒンデミット、ベルク、シェーンベルクなど)はどれも好きだけれど、プロコフィエフは未聴でわからない。調べてみたら凄く良さそうなので、とても興味を引かれてしまった。これは聴いてみなければ...。
ポリーニは定番中の定番(私には弾丸の連射のように聞こえる)。グレムザーはメカニックの切れが凄く良い。個人的な好みとしては、DVDのソコロフのパリ・ライブが表情豊かで美しく迫力があってベスト。

ベートーヴェン/ヴァイオリンソナタ第5番&第9番
1)パールマン&アシュケナージ(73,75年),2)クレーメル&アルゲリッチ(87年)
アシュケナージのピアノがとても良くて、アルゲリッチと聴き比べれば、そのピアニズムの違いが良くわかる。クレーメル&アルゲリッチ盤は特に有名。従来にない斬新さというか何というか、極めて個性的で面白いといえるとは思えるけれど(私にはせかせかとやたら速くて騒々しく聴こえる曲が結構ある)、アルゲリッチのピアノにはちょっとついていけないので、リファレンスするときに聴くくらい。

ベートーヴェン/チェロ・ソナタ集第3番
1)ロストロポーヴィチ&リヒテル(61-63年)
チェロ・ソナタは初めて聴いた時に、ピアノパートが充実していてとても面白いと思った曲。
室内楽曲は、まず好きなピアニストで選ぶので、古い録音ならフルニエ&ケンプのライブが良いけれど、特に気に入っているのは、ウィスペルウェイ&ラツィックの録音。ウィスペルウェイのチェロの音が澄んでいて軽やかで素晴らしく綺麗だし、ラツィックのきらきらと輝く表情豊かなピアノがとても楽しい。

スカルラッティ/ソナタ集
1)ボゴレリチ(91年)、2)ホロヴィッツ(62,64,68年)
スカルラッティは、ミケランジェリのレパートリーの一つ。ライブ録音に良く入っている。

モーツァルト/ピアノ・ソナタ集
1)ギーゼキング(53年)、2)ヘブラー(86,87年)

シューマン/クライスレリアーナ
1)アファナシエフ(92年)、2)内田光子(94年)
ルプーやキーシンとかいくつかCDは持っていても、シューマンはピアノ協奏曲以外はほとんど聴かないので、この曲もよくわからない。この2人のイメージからすると、神経質そうで肩が懲りそうな感じがする...。

ブラームス/後期ピアノ曲集
1)グールド(60年)、2)ルプー(70、76年)
グールド盤は人気があるし、私が好きなルプーは昔から定番だった。
違った味わいなら、後期の曲集に限って言えば、晩年のケンプ、情感豊かな(ちょっと情緒的かも)グリモーも良いと思うし、変わったタイプなら、アファナシエフあたり。
全集なら、個人的な好みとしてカッチェンがベストで、次がレーゼル。表現が重たくて強弱やルバートのつけ方が好きではないけれど、オピッツの全集も評価が高いらしい。

ドビュッシー/12の練習曲
1)ポリーニ(92年)、2)クロスリー(92年)
この曲自体全然知らないし、ポリーニのドビュッシーはリスナーレビューであまり評判が良くなかった記憶があるけれど...。練習曲とはいえ、ドビュッシーとポリーニという組み合わせは異質に思える。

ベートーヴェン/後期ピアノ・ソナタ曲集
1)ポリーニ(75-77年)、2)ウゴルスキ(第32番のみ)(92年)
ポリーニの超有名盤。叙情感は薄いけれど、構造が堅牢で造形力の強くて、ポリーニの録音のなかではわりと好きな方。
レアものなら、独特のピアニズムのウゴルスキは良い選択だろうけれど、好みが分かれるし、たぶん入手困難。ウゴルスキならブラームスの録音の方がおすすめ。
私は全く好きではないグルダの新録音は人気があって、後期ピアノ・ソナタとしては聴きやすい。分売盤はなかったと思うけれど、全集盤でもピアノ協奏曲全集込みで、価格がめっぽう安かったはず。(これはマーケティングが上手い。ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集では一番売れているんじゃないだろうか)

ラヴェル/ピアノ協奏曲集
1)ロジェ(82年、デュトワ指揮)、2)パイク(81年)
ロジェは旧録の方。新録のOehms盤があり、音はそちらの方が綺麗だし、叙情性が強くなっている。
パイク盤は全然知らない。レーベルがオルフェオなのでライブ録音でしょう。
両手の協奏曲ならミケランジェリ盤が名盤。(アルゲリッチも良いらしいけど、聴いたことがない)
左手の協奏曲ならフランソワが名盤と言われている。崩す弾き方をするピアニストは好きではないので、聴くのはカッチェン、フライシャー、ロジェ。

バルトーク/2台のピアノと打楽器のためのソナタ
1)アルゲリッチほか(93年)
イメージ的にアルゲリッチにぴったりの曲。ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番やプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番も同様。パワフルでネジが吹き飛ぶような錯綜した曲を弾かせたら、アルゲリッチほど上手い人はいないのではないかと。

ペルト/タブラ・ラサほか
1)クレーメル、キース・ジャレット、他(93年)
このECM盤はペルト作品の初録音で有名で、緊迫感に張り詰めた演奏が素晴らしい。選曲も良いので、ペルトの器楽曲の録音なら一番お薦め。
私はこれを聴いたがために、ペルトのCDコレクターになってしまったので、忘れがたいCD。

ナイマン/ザ・ピアノ・コンチェルト
1)ストット、他(93年)
映画「ピアノ・レッスン」の曲をピアノ協奏曲に編曲したもの。現代音楽にしては美しく聴きやすいタイプの曲。ピアノ協奏曲はNAXOS盤もあり、映画のサントラも別に出ている。

他にピアノが入った曲は、フランク《ヴァイオリンソナタ》、シューベルト《ピアノ五重奏曲”鱒”》、ケージ《プリペアドピアノのためのソナタとインターリュード》。

tag : 伝記・評論

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ソコロフ ~ ショパン/ピアノ協奏曲第1番
ショパンのエチュードの次は、ピアノ協奏曲第1番。めったにショパンを聴かないのに立て続けにショパンを聴いているのは、ショパンイヤーだからではなくて、最近収集しているソコロフの録音を聴くことが多くなってしまったので。

ライブ録音中心のソコロフの数少ないスタジオ録音の一つが、ショパンのピアノ協奏曲第1番。ソコロフ27歳の時の録音で、ロヴィツキ指揮ミュンヘン・フィルの伴奏。
ソコロフのピアノ・ソナタ第2番とエチュード集(Op.25)がとても良かったし、HMVのリスナーレビューを読むととても興味を惹かれたので、この録音も聴きたくなってしまった。
ずっと廃盤だった録音、それもソコロフ若かりし頃のものなので、たぶん聴いた人はかなり少ないに違いない。

この曲は、スタンダードな演奏としてはツィメルマン&ジュリーニ、ルービンシュタイン&スクロヴァチェフスキーくらいしか聴いていない。他はツィメルマンの弾き振り盤と、アラウが2種類(インバルとクレンペラー。クランペラーとのライブが面白い)、ムストネン、ラツィック(ライブ)と、ちょっと変わったタイプがいくつか。好きなピアニストの録音が少ないので、ハフあたりが録音してくれたら良いんだけれど。
この曲を華麗で感傷的に弾かれるのは暑苦しい感じがしてあまり好きではないので、ショパンらしさの薄い録音の方が聴きやすい。好みにぴったりのベストな録音には遭遇していないので、ソコロフのショパンならどうでしょう。

ショパン:ピアノ協奏曲第1番,リスト:ピアノ協奏曲第1番ショパン:ピアノ協奏曲第1番
(2006/12/20)
ソコロフ(ピアノ), チェルカスキー(ピアノ), ロヴィツキ指揮ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団, ワルベルク指揮バンベルク交響楽団

試聴する(amazon)

ピアノの音がやや後方から聴こえ、特に高音の弱音が小さすぎて、スタジオ録音にしてはちょっと篭もった感じがする音質なのが残念。高音が繊細なAKGのヘッドフォンだと、さすがに高音がかなりクリアで随分綺麗な音に聴こえる。

ソコロフに関する評論を読むと、若い頃は「まれに見るほど清らかで美しい演奏」で定評があったらしく、この録音を聴くと本当にその通り。
後年の演奏ほどのスケール感やダイナミズムは強くない。今のソコロフの演奏とはちょっとイメージが違うので、それを期待して聴くと物足りなく感じる人もいるかもしれない。
といっても、27歳の時に録音したこのショパンのコンチェルトでも、ソコロフらしいタッチ~明晰ながらよく歌うピアノ、緩徐部分の叙情感の深さ、クリアで粒立ちのよいシャープな打鍵、色彩感豊かな音と高音の美しい響き、弱音の繊細なニュアンス、旋律が浮き上がるようなフレージング、一音一音の粒が明瞭に響くトリル、etc.といった今の演奏スタイルの原型と個性的な解釈はちゃんと聴き取れる。

試聴ファイルだと、ピアノパートが聴けるのが第3楽章の初めの方だけだったので、なんて可憐なショパンでしょう、なんて思っていたら、第1楽章と第2楽章は全然違った雰囲気。演奏時間は第1楽章21分半、第2楽章が約12分で、感覚的にかなり遅めのテンポに感じる。

第1楽章 Allegro Maestoso
冒頭のトゥッティは、少し遅めのテンポで、華やかさをやや抑えたようなトーン。
ピアノが和音で入ってきてから、細かいパッセージで徐々に下行しながら、フレーズの最後をややテヌート気味長めの弱音で終るところは、ソコロフ独特の響き。
弱音で弾く短調と長調の2つの主題は、時々消えてしまいそうなくらいに響き、表現の繊細さとニュアンスの多彩さがとても印象的。

弱音から抜け出ると、切れの良い打鍵とシャープでクリアな響きで、力強く引き締まったタッチで、若々しく颯爽とした感じに変わる。メカニカルな感じはせず、旋律もよく歌って爽やか。
ペダルを入れても響きを厚く重ねる弾き方はしていないので、透明感のあるすっきりした響き。時々弱音のフレーズにペダルを掛けたときは、柔らかくエコーする響きがハープのように綺麗。
音の詰まった細かいパッセージは、高音はキラキラと輝くような音色で、粒立ちも良くて滑らか。
弱音とそれ以外の部分とのコントラストがとても強く、弱音で呟くように歌わせるフレージングは、内省的・瞑想的にも聴こえる。

全体的にテンポの伸縮が大きく、特に弱音部分はテンポが落ちて細部まで緻密に表現していく。フェルマータはたっぷり長く、リタルダンドはかなりスロー。
それが一番強く出ているのが、主題の再現部。短調の主題から長調の主題へと移行する直前に、フェルマータとリタルダンドが続いて指示されている部分は、特にテンポが遅くなる。というか、なかなか次の音が聴こえず、かすかな弱音の響きと相まって、静止しているかのような間合い。
終盤の左手トリルが延々と続く部分では、トリルが明瞭でまるで呟くように響く。これはソコロフらしい弾き方で、このトリルはどの曲で聴いてもとても好きな響き。

第2楽章 Romanza Larghetto
緩徐楽章は、終始穏やかで、ゆっくりと時間が流れていくようにかなりスロー。柔らかい弱音で弾く旋律はとても安らかな雰囲気。
この楽章はとりわけ音が美しく、弱音には煌きと暖かさがあり、第1楽章とは違ってとても明るい色調。
ゆったりとしたテンポの弱音が、静かに語りかけるようなフレージングで鳴り続けて、甘美で幸福な夢や回想に浸って別世界にいるよう。うっとりするくらいに美しい。

第3楽章 Rondo Vivace
終楽章はさすがに普通の速めのテンポで、弱音部分もそれほど多くはないので、第1楽章と第2楽章の内省的・瞑想的・夢想的な雰囲気はすっかり消えている。
澄み切ったピアノの美音で弾く舞曲風の旋律は、ちょっと清楚で可憐な感じ。透明感もあって瑞々しい。
この楽章は明瞭で明るい音色で、弱音が沈みこむようなことも少ないけれど、舞曲風のリズミカルさはそれほど強くないので、飛び跳ねるような躍動感は薄め。
クリアな響きでテンポの揺れも少なく、かっちり刻んでいくようなリズム感と一音一音粒立ちのよいパッセージが歯切れ良く流れて、心のなかの霧が消えたように明晰。清々しく爽やかな叙情感がとても心地よい。

全体的に、熱気とかパッショネイトな躍動感といったものはあまり感じないけれど、静動・緩急・強弱のコントラストが大きく、メリハリのある引き締まった演奏で、旋律もよく歌わせている(というか語らせるというか)ので、こういう演奏解釈が好みに合えば、聴きごたえは充分。
第2楽章の美しさも魅力的だけれど、第1楽章が特に素晴らしく、繊細なニュアンスで内省的な雰囲気の独特の弱音の美しさや、やや水気のある透明感とクールな叙情感が爽やか。

ドラマティックな迫力のあるエチュードの録音もとても面白かったけれど、このコンチェルトの演奏はそれとは方向性が違っていて、これも個性的なショパン。とても気に入ってしまったので、この曲で一番よく聴く録音になるのは確実。
ソコロフの若い頃の録音は珍しいし、後年との共通点や違いを聴くというのも楽しいものなので、ソコロフのピアノが好きな人にはとてもおすすめです。

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ショパン/エチュード ~ ソコロフ、ロルティ、ペライア
ショパンは好きな作曲家ではないけれど、好きなピアニストの録音収集を兼ねて、全曲2~3種類のCDは持っている。
エチュードは言わずと知れたポリーニの名盤とペライアの2001年録音。最近買ったのはソコロフとロルティ。他にもいくつか試聴したけれど、凄く興味を弾かれる録音がなかったので、今のところはこれだけあれば充分かと。

20年くらい前に初めて買ったエチュードの録音がポリーニ。ポリーニは昔好きだったのでCDはほとんど集めたけれど、このエチュードは一度聴いただけ。メカニックは凄いのだろうけれど、曲自体があまり面白いと思えなかったので。
最近ソロコフのOp.25の録音を聴いて、これがとても良かったので、他の演奏はどうだったかなあとポリーニとペライアの録音をひっぱりだして聴いてみた。
やっぱりポリーニは、堅牢な構造感と力強い打鍵で、音圧・音量・スピードも迫力充分なので、カタルシス感があって爽快。強弱のコントラストが強くて明快なのはよいけれど、表現が直線的なので詩情が希薄。さらりとした叙情感と言えないこともないが、曲自体が面白く聴けるかいうと、度々聴くにはちょっと...。どういう演奏が良いと思うのかは好みによるので、これは昔と変わっていなかった。


ソコロフ~ショパン/エチュードOp.25

ソコロフらしく旋律をよく歌わせているので、エチュードとは思えないほど表情の起伏が大きく、パワフルでダイナミックな迫力と、細部まで濃くドラマティックな表現は聴きごたえ充分。これは繰り返し聴いても飽きなくて、ぴったり好みに合いました。Op.25しか録音していないのが残念。
打鍵は明瞭で音の粒と旋律がクリアに聴こえ、色彩感も豊かで特に高音のシャープな響きはきらきらと煌きがあってとても綺麗。
ダイナミックレンジが広く、力強いフォルテや低音と繊細な弱音の表現が豊かで、曲別や曲中の表情の変化も大きく多彩。リズムもシャープで軽快。どの曲も表情・色彩感も豊かなので詩情何度聴いても面白い。
あまり好きではなかった第1番は起伏が大きくて退屈しないし、ラストの響きがハープのように綺麗。第3番はシャープなリズムと躍動感で活気に溢れ、第4番も軽いスタッカートが軽快。第5番はよく歌う叙情的な中間部がとても美しく、第6番は3度のスケールが軽やかで、クリアな響きはきらきらと煌くよう。曲集の折り返しになる第7番は澄んだ音色で突き刺すような深い叙情感が美しく、第9番は軽快なタッチでとても可愛らしく楽しそう。

最後の3曲になるとスピード感・力感・量感が圧倒的。この怒涛のような勢いはショパンではなくラフマニノフかのような迫力。
第10番はスピード感とパワフルさで迫力充分。中間部の柔らかく甘い弾き方と前後の激しさとのコントラストが鮮やか。
第11番は、木枯らしというより、ブリザードで雪の結晶が激しく舞っているような激しさ。右手が6連符で半音階的下降していくフレーズは、硬質の明瞭な音でキラキラと輝いているよう。
さらにラストの第12番は激しくうねる荒海のように力強く、そのなかでみせる表情の変化がドラマティック(特に1:30あたりから弾く弱音の旋律の情感豊かなこと)。エンディングは長い航海を終えて無事港に帰りついた船のイメージが浮かんでくる。この最後の3曲を聴けばカタルシスを充分味わえる。

練習曲風なところは全くなく、メカニックの凄さを聴くというより(これも凄いのだろうけれど)、表現の幅がとても広いので、音楽として聴いていて楽しいと思えるところがベスト。
さらに楽譜を見ながら聴けばいろいろ発見がありそうで、これはもう少し暇なときに試してみることに。


ソコロフはスタジオ録音はほとんどしない人なので、これも1985年、35歳の時のライブ録音。ライブ特有のキズは聴き取れるけれど、そういうのは(よほどひどくない限り)あまり気にしない方なので、これだけ集中力と気力のこもった密度の濃い演奏を聴ければ充分満足。
全曲通しで聴けば、曲想にあわせた表現の幅広さとドラマティックな組み立ての演奏の面白さが味わえる。ということで、Op.25のエチュードはほとんどソコロフの録音で聴くことに。

ソコロフのショパンのエチュードは、BOXセットと分売盤(3種類)が出ているので、価格とカップリング曲で選択できる。
とてもコストパフォーマンスが良いのはBOXセット、ショパンだけで良いならプレリュード&ピアノ・ソナタ第2番をカップリングした分売盤。

Chopin: Préludes; Sonate No. 2; ÉtudesChopin: Préludes; Sonate No. 2; Études
(2008/01/29)
Grigory Sokolov

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Grigory Sokolov:Beethoven,Schubert,Prokofiev,Rachmaninov,Scriabin (Box Set)
Grigory sokolov:Beethoven,Schubert,Prokofiev,
Rachmaninov,Scriabin (Box Set)

(2003/11/18)
Grigory Sokolov

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ロルティ~ショパン/エチュードOp.10

ソロコフはOp.25のライブ録音しか出していないので、Op.10の良い録音がないかと探してみたら、ロルティの録音がとても評価が良く、聴いて見るとそれも納得。
残響長めの柔らかく煌きのある音が綺麗で(もう少しすっきりした音の方が好きですが)、メカニックも緻密で正確。Op.10の第1番からして輝きのある明るい音とスピード感が素晴らしい。
ポリーニのように一音一音が力強くゴツゴツしたタッチではないので、演奏がとても軽やか。いかにも凄い技巧でしょう風な弾き方はせずに、指回りがスムースでシームレスのようにスラスラ弾いている。
それ以上に、軽快なリズム感は歯切れ良く、細かい起伏の変化で表情豊かに聴こえ、繊細でべたつきのない叙情感があって詩情も豊か。
力感がもう少し欲しいかなと思ったり、”革命”の右手の旋律は力強いタッチで一気に弾いて欲しかったりと、曲によってはペライアかポリーニの方が好きなのもあるけれど、曲の面白さを味わえるという点では一番良いような。
Op.10ならロルティの録音がメインで、時々ペライアとポリーニかな...と思ったけれど、ペライアを聴き直して思い直し、ロルティとペライアがメインになりそう。

ちょっと気になる点といえば、ロルティの録音は、Op.25よりもOp.10の方が良いというレビューをいくつか見かけたこと。
Op.10が目的だったのであまり気にしていなかったけれど、ついでにOp.25も聴いてみると、全体的に急速系の曲でタッチの切れが悪く感じる曲が多く、テンポもちょっと遅めかも。No.8以降でそれを強く感じるし、特にNo.10はレビューの通り、ぼてっと重たい印象。同じ1986年の録音なのに、Op.10とOp.25で演奏レベルにばらつきがあるのはなぜなんでしょう?

Chopin: The Complete ÉtudesChopin: The Complete Études
(1992/10/28)
Louis Lortie
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ペライア~ショパン/エチュードOp.10&Op.25

ペライアは好きなピアニストなので、バッハを中心に結構CDは集めていて、このエチュードもそれで買ったCD。(でも、一度も聴いていなかった)
ペライアのエチュードは、打鍵は力強く切れも良いけれど、残響が短くクリアで柔らかさのある音で、アコースティックというか、耳に自然と馴染む響き。
メカニックはそつなく安定して、テンポの揺れも少なく表現はロルティよりもマイルドだけど、?と思うような演奏がなくて、どれもかっちりと均整が取れて、堅実で折り目正しいといった感じがするショパン。強いクセがないので、練習曲のお手本にするならペライアが一番良さそうな感じ。

ポリーニを聴いてから聴くと、圧迫感がなく、淡い詩情がとても心地よいけれど、ソコロフとロルティを聴いてしまうとちょっと物足りないかなあ..と思ったりもする。
ロルティのOp.25がもう一つだったし、Op.10も残響の多いロルティの録音よりも線がしっかりしたクリアな音は気に入っているし、速いテンポのNo.6はさらりとした叙情感が綺麗だし、《革命》は好きな弾き方だったし...といろいろ考えると、やっぱりペライアのエチュードはやや地味とはいえどわりに好みに合っているらしい。

ショパン:練習曲作品10&作品25ショパン:練習曲作品10&作品25
(2004/11/17)
ペライア(マレイ)

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このジャケット写真、ちょっと威圧的な雰囲気がするので、あまり好きではなくて...。パルティータやゴルトベルクのポートレートがペライアのピアノの雰囲気に良く合っているので、この写真もエチュードのイメージに合わせたのでしょうが。

                                

ショパンのエチュードのCD比較レビューはいろいろありますが、好みに合うこともあって、比較のポイントがわかりやすく的確だと(私は思う)のが<Kyushima's Home Page>
ロルティ、ポリーニ、ソコロフ、ペライアに関しては、全くその通り。(それでも、ペライア盤は好きなので、好みの違いは別にして)
凄いと思う録音は試聴しただけでたいていすぐにわかるので、横山氏と小菅さんの録音はちょっと興味があって試聴。小菅さんは特に魅かれるものがなく、横山氏はメカニックを聴くなら面白いかもしれないけれど、そういうのが目的ではないので試聴どまり。
この比較レビューを読めば演奏内容がだいたい想像がつくし、HMV&amazonのリスナーレビューと試聴でチェックしたので、むやみに異聴盤を買い込まなくて済みました。

<音楽図鑑CLASSIC>も、異聴盤の数がとても多く、ブロガーがピアノが弾ける人だけあって、その視点が入っているのがとても参考になるCD比較評。
上のサイトと合わせて読めば、評価の視点と好みの違いがわかって面白い。演奏技術に関する内容はこちらの方が詳しいので、ピアノを弾く人にはおすすめ。
高評価はポリーニとペライア。ロルティは「繊細・優美という方向性で演奏されたショパンエチュードとしてはこれが最高峰」とコメントされていて、これには納得。

tag : ショパン ソコロフ ロルティ ポリーニ ペライア

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吉松隆 『すばるの七ツ』 ~二十絃箏の独奏曲・室内楽曲集
何台があるCDラックのなかみをたまに入れ替えると、聴いた覚えのないCDをいつも発見する。
今回は吉松隆の2枚のアルバムで室内楽曲ばかり。吉松作品は昔かなり凝っていた頃にCDをほとんど集めたはず。
2枚とも楽器編成に特徴があって、二十絃箏のソロと洋楽器とのアンサンブルの『すばるの七ツ』、ピアノとパーカッションの明るく楽しい『チェシャねこ風パルティータ』。
CDを買ったときに聴いたかもしれないけれど、その頃は室内楽曲はあまり好きではなかったので好みに合わなかったか何かで、全く記憶にない。
全曲聴いてみると、『すばるの七ツ』は二十絃箏は音色が美しく、曲も現代的で和風・洋風が混在していて、とっても気に入ったCD。
『チェシャねこ風パルティータ』はピアノの響きが薄いのが気になり、曲のタイプも好みに合わないものが多くて、残念ながらこれは再び長期保管用ラックに。

お琴といえば、一般には「琴」で通っているけれど、日本の和琴は「箏」。「琴」は別の楽器で奈良時代に中国から渡来したもので、やがて弦楽器全般を指すようなって、用法が混乱していったらしい。
一般的に知られている(思い浮かぶ)「箏」は弦の数が13本のもの。音域が狭くて音色も少ないので、コンテンポラリーの分野でよく使われているのは、新しく開発された「二十絃箏」の方。絃が21本に増えて音域が拡張されて、音色・音量も増強され、固定された7音階なので五線譜による記譜ができる。さらに音域が拡張されたのが二十五絃箏で、これを使った現代音楽の曲もある。(二十絃箏と二十五絃箏のどちらが良く使われているのかは不明)
二十絃箏の特徴については、二十絃箏奏者の中垣雅葉さんのホームページに詳しく載っている。

吉松隆は、二十代の頃に尺八と琵琶を中心にした変わった編成のバンドを組んでいたせいか、他にも邦楽器を使った作品をいくつか書いている。
アルバム『すばるの七ツ』には、二十絃箏の独奏用組曲が3曲、ヴァイオリン&チェロ&クラリネットとのアンサンブル用組曲が1曲が収録されている。
いずれも二十絃箏の美しく多彩な響きと、独特の緊張感がとても印象的。音域が4オクターブあり響きも多彩なので、洋楽器との相性も良い感じ。曲自体も吉松作品らしい旋律・和声の美しさと馴染みやすいモダンに加え、和洋が混在しているようなちょっと変わった雰囲気もある。人気のある『プレイアデス舞曲集』よりも、曲想も響きもヴァリエーションが多くて、これは面白い曲集。

二十絃箏奏者は吉村七重さん。この楽器の世界ではとても有名で、邦楽だけでなく現代音楽の分野で国内外とのオーケストラと演奏しているそうなので、邦楽器の中では尺八と並んで二十絃箏も人気があるらしい。

すばるの七ツ~プレイズ吉松隆すばるの七ツ~プレイズ吉松隆
(2000/02/25)
吉村七重

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[吉松隆による作品解説(全曲)](左側カラムの「曲目解説」-<ソロ&邦楽>タブ)

夢あわせ夢たがえ Op.74(1998)
ヴァイオリン・チェロ・クラリネットという洋楽器とのアンサンブル。
「夢あわせ」とは、見た夢が吉か凶かを解読すること。「夢たがえ」とは、夢が凶夢だったとき夢あわせで吉夢に変えること。

絃の数が多い二十絃の響きが、洋楽器の音よりもずっと多彩。ハープ、ピアノ、パーカッションのようにも聴こえることもあり、色彩感がとても豊か。

1.水の夢:二十絃による波の音型にcl,vn,vcそれぞれの旋律が重なってゆくアダージョ
最初の方の二十絃は、ハープのような響きで幻想的。力を強めていくと、輪郭がしっかりした音になって箏らしい響きに変わる。
静寂で別世界のように時間がゆったりと流れている曲。スローなテンポのなかを二十絃が変則ぎみのアルペジオのような音型で規則正しくリズムを刻み、その上を弦楽器とクラリネットがいきの長い旋律を弾いていく。

2.木の夢:ピチカートの乾いた響きによる間奏曲風スケルツォ
二十絃のピチカートの響きは鋭いけれど、細かく強弱を変えていくと、すぐに響きが変化するので、起伏が多く聴こえる。
二十絃と他の楽器がこだまするように交互に断片的な旋律を弾いているところはあっても、この曲は二十絃のソロがメイン。

3.火の夢:二十絃の変拍子のオスティナートに全楽器が重なってゆくアレグロ
最初は静かに規則正しいリズムで始まり、このミニマル的な二十絃のリズムが不思議な疾走感。
そのリズムが徐々に熱を帯びたように力強くなり、楽器の響きが重層的になり、旋律も躍動感がでていく。
二十絃のグリッサンド(といえば良いのか)が少し入っていて、これが華麗でシャープな響き。

4.雲の夢:弦のロングトーンに二十絃のソロが静かに浮遊するアンダンテ
時々ピアノにも似ていたりする二十絃の響きの変化が多彩。
日本風の箏曲らしい旋律が混じっているように感じるせいか、誰もいない静謐な日本式箱庭風のイメージがする。

5.空の夢:協和音の大気の中に全楽器が穏やかに漂うフィナーレ
遅いテンポで、二十絃が規則正しく刻むリズムの上を洋楽器がとても息の長い旋律を重ねていく。
高揚感のある曲ではなく、現代音楽で多い静寂なフィナーレ。

すばるの七ツ Op.78(1999)
「すばる」はプレイアデス星団の和名。ピアノソロ曲集『プレイアデス舞曲集』の姉妹作のような性格の曲。
この曲集は、二十絃だけで和音伴奏と旋律を弾いているので、まるでピアノソロを箏で聴いている気がしたり、二十絃が響きが多彩なので複数の楽器によるアンサンブルにも聴こえたりするので、独奏曲だと二十絃の表現の多彩さがよくわかる。

1.月(MOON):七音の主題によるプレリュード
ハープのような響きがちょっとファンタスティック。

2.火(FIRE):いくぶん情熱的なアレグロ
和音伴奏と旋律の部分に明確に分かれていて、まるでピアノソロを聴いているような感じ。
旋律は短調で哀感があるけれど、二十絃の響きがシャープなので力強さがある。

3.水(WATER):水のように揺れるモデラー
水気のある響きはパーカッションのような感じがして、ちょっと箏で弾いているとは思えないような気もする。

4.木(WOOD):乾いた木質のスケルツォ
冒頭はちょっと木質感があるけれど、テクノっぽい響きのする音。
ギターやエコーのかかったヴァイオリンのような響きも入ったりして、タイトルどおり木のゴツゴツとした質感のある響きが面白い曲。

5.金(METAL):かすかに光沢のあるアダージョ
伴奏はパーカッションのような柔らかい響きで、旋律部分が二十絃らしいシャープで明瞭な響き。

6.土(EARTH):今までの楽想を回想するアレグロ
これは二十絃らしい輝きのあるシャープな響きがとても華麗。

7.日(The SUN):主題の提示と冒頭への回帰
二十絃の鋭く響く旋律が力強く、ややゆったりめのグリッサンドを挟んで、弱音の主題がエコーしてフェードアウト。


もゆらの五ツ Op.41(1990)
 「もゆら」は古語で「響き」の意味。吉松隆自身の解説では”人間の持つかすかな希望や、乾いた夢のような絶望、透明な諦感、遠い不安、そういったものたちの破片が、木に触れ、絲をかき鳴らす、そんな音の軋みの五つの情景。あるいは誕生から死までの一幅の変奏曲とでも言ったらいいかも知れない。”

1.調
これは使っている音階のせいか、箏曲でよく聴く風流な和風の雰囲気が漂う旋律。
2.急
ミニマル的でエキゾチックな雰囲気の漂う旋律は、スペイン風(?)の哀愁と情熱が入り混じっているような。
3.連
冒頭はペルト風の静寂でまばらな音がミニマル的に響いている。
時々和風の旋律が混ざっているけれど、それを除けば本当にペルトを聴いているような気がしてくる。
ご丁寧にも最後にチ~ンと鐘が鳴っているのは、”ティンティナブリ”の意味に聴こえる。(ちょっとパロディ的?)
4.緩
これもペルト風と和風な旋律と響きが混在して、最後は鐘の音で締めくくり。
5.舞
とても華やかな”舞”のイメージどおりの曲。
単音の主旋律と副旋律の異なる動きの旋律が絡み合っていく。締めくくりは力強く華麗なグリッサンドとトリル。やわらかなグリッサンドから静かなコーダへと移って、箱庭風旋律が流れて、最後はまた小さく鐘が鳴る。


なばりの三ツ Op.54(1992)
「なばり」は古語で「隠れる」の意。陰旋法ならぬ「隠旋法」(Re,Mi♭,Fa#,Sol,La,Si♭,Do)で編まれている。

1.緩:暗い主題(レント)
冒頭は和風の響きの入り混じったペルト的な静寂で瞑想的な主題。
ときどき絃を擦るようなざらついた響き(よく時代劇の効果音で出て琵琶のような音)が入ったり、典型的な和風(風流な箱庭的な風景で流れるような)の旋律も挿入されている。

2.急:展開(アレグロ~プレスト)
初めは序奏のように動きが緩く、駆け出そうとしては立ち止まるような動きの旋律を何度か反復。
ようやくエンジンがかかったようにテンポが上がり、ギターで弾くような動きの旋律は、スペイン風と和風が混在したような哀愁感と情熱的な雰囲気。
最後はオスティナートで徐々にテンポが落ちていく。再び疾走し始め、テンポの速いアルペジオの伴奏も入ったりして疾走感があり、最後は力強いグリッサンドとトリルでエンディング。

3.緩:暗い回帰(レント)
再び静かなペルト風の主題が始まる。第1曲の半分くらいの長さで主題の旋律が明瞭に再現されて、全体的にはソナタ形式のような構成。

吉松隆は《なばりの三ツ》のライブ演奏で解説をしていて「人生の荒波に翻弄され、苦悩する作曲家の姿とか、ベートーベンのピアノ・ソナタなどをイメージして聴いて下さい。」と言っていたそう。
<ミモザのおでかけ日記>の”CD「すばる」発売記念 トーク(吉松隆)&ライブ(吉村七重)”に書かれていました)

tag : 吉松隆 吉村七重 二十絃箏

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アスポース ~ ピアノ作品集(ベートーヴェン,シェーンベルク,ウェーベルン,ベルク)
アスポースの録音したデュカスのピアノ作品集がとても良かったので、他の録音を探してみると、ベートーヴェンと新ウィーン学派というちょっと珍しいカップリングのアルバムを出していた。

収録曲はベートーヴェン《ピアノ・ソナタ第32番》、シェーンベルク《6つのピアノ小品Op.19》、ウェーベルン《ヴァイオリンとピアノのための4つの小品 Op.7》、ベルク《ピアノ・ソナタ》。

デュカスとこのアルバムを聴いてみると、アスポースの特徴は、緻密に設計された響きの多彩さ、透明感と爽やかさのあるしっとりとした叙情感、それに弱音の内省的な表情、といったところだろうか。
特に響きの美しさとヴァリエーションが素晴らしく、滅多に録音されることのない混沌とした響きのデュカスのピアノ作品集をアスポースが録音したのも、なるほどと納得。
偶然が重なって見つけたこのアルバムも予想していなかったほどに素晴らしく、アスポースの録音はこれからも必ずチェックしないといけない。

Mirror Cannon [Hybrid SACD]Mirror Cannon [Hybrid SACD]
(2008/04/29)
Tor Espen Aspaas

試聴する(米国amazon)

レーべルの2Lは、NAXOSの紹介文によると、”アコースティックな音の景色に誘ってくれるノルウェーのレーベル”。2Lの録音で聴いたのはプラッゲの《クリスマス変奏曲~クリスマス・キャロルによる即興変奏曲》。現代音楽風ではない素朴な趣の美しい旋律と色彩感のある音がとても綺麗で、ほのぼのとした味わいのある曲。


ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第32番 Op.111(1822年)[ピティナの楽曲解説]
ベートーヴェンの最後のピアノ・ソナタは、ペダリングやタッチをかなり工夫して、フレーズや旋律ごとに緻密に響きを設計していると感じられて、そこを聴いているとても面白い演奏。
はじめはそっちに気をとられてしまったけれど、繰り返して聴くと、それ以上に演奏自体が素晴らしくて、これは今まで聴いた最後のソナタのなかでも、特に好きな演奏の一つ。

第1楽章は、情熱的というよりは、冷静さと透明感を感じるせいか、色で言えば青のイメージ。
楽章途中で遅いテンポの弱音で弾くところは、ルバートがかかって粘着的なタッチでちょっと感情的な雰囲気がするけれど(もう少しさらりとしたタッチが好みなので)、情緒的というほどでもなく、内省的な雰囲気。
音が詰まってテンポが上がる部分になると、すっきりとしたタッチで淀みなくスラスラ弾いていく。

第2楽章は低音の深い響きが落ち着きと重みを出していて、主旋律とそれ以外の旋律でタッチと響きを変えているので、色彩感があって綺麗な音で、立体的な感じもする。
全体的に弱音に湿り気のある叙情感と内省的な雰囲気が漂っているように感じるので、フォルテの明るく力強い響きと対照的。

第2楽章の冒頭主題は、かなりゆっくりしたテンポで弱音も囁くように弱く、とても内省的な雰囲気。(ここはよく聴いているカッチェンの弾き方にわりと似ている感じ)
第1変奏以降は、わりと動きが出て、音もずっとしっかりした響きで明るくなっていく。特に、躍動的な第3変奏は、力強く一音一音明瞭な打鍵で、音色が輝くように明るい。アルペジオの響きの重ね方が面白くて、オルガンのようにエコーする響きも華やかで綺麗。
特にこの変奏では、響きの重ね方をフレーズによってかなり変えていくので、強弱のコントラストと相まって、表情の変化が大きくメリハリがよくついている。ペダリングも上手くて、アルペジオでも響きが混濁せずとても綺麗なレイヤーに聴こえる。
ちょっと気になったのは、57小節と58小節で、スラーが切れて、音型が変わるところで(ペダルも切っている)、一瞬だけ流れが途切れて間が空くところがいくつか。跳躍が入るので、直前で少しリタルダントしたり間が空いたりしていて、流れが止まるような気がする。移行するタイミングがほんの少しだけ遅い感じがして、なぜかひっかかってしまった。その後の変奏でも和音の跳躍で同じような間が入ることがあるので、跳躍のタイミングのズレなのか、もともとこういうフレージングにしているのか、どっちなんでしょう。

第4変奏もゆったりしたテンポでいろいろ変化する弱音の響きがとても綺麗(ちょっとタッチが粘着的ではあるけれど)。トリルはかなり明瞭で強め。音色や響き、緩急の変化のさせ方が上手く、滑らかな流れのなかでうねるように大きく起伏をつけていくところが見事。
終盤への盛り上がりでは、一気呵成な情熱的な高揚感や開放感ではないけれど、静かに着実に階段を上がっていくように、ほんの少しアッチェレランドとクレッシェンドをしながら、ペダルでアルペジオの響きを重ねて、高揚感を出していく。やや粘り気のある打鍵としっかりと芯のある響きと相まって、緊張感がありじわじわと強く訴えかける圧力を感じる。
トリルが響き続けるコーダは静寂さはそれほど強くなく、旋律とトリルがそれぞれ明瞭に響いて煌きがあり、明るく爽やか。

響きの移り変わっていく第2楽章の美しさが特に素晴らしく、しっとりとした叙情感は澄んだ水のように爽やかで、清々しく美しい印象。何より、内省的な静けさやじわじわと核心に近づいていくような緊張感があり、これは珍しくも繰り返し聴きたくなるほどに気に入ってしまった。

名前もほとんど聴いたことのないピアニストなのに、こういう素晴らしい演奏に出会うことがあるというのが、CD探しの大きな楽しみ。未知のピアニストの場合は、自分の耳と感性で判断するので、ネームバリューなどのフィルターが全くかかっていないだけに、本当に良いと思える録音に出会えます。

32番ソナタのマイベストは、カッチェンの68年録音。多分聴いたことのある人はほとんどいないと思う録音だけど、一度聴いてすっかり好きになった演奏。
アスポースの演奏を聴いた時も、そのときと同じように直観的に素晴らしい!と思ったので、この録音もカッチェンの次によく聴くことになりそう。

シェーンベルク/6つのピアノ小品 Op.19(1911年)[ピティナの楽曲解説]
シェーンベルクのピアノ作品集も、アスポースが弾くと響きの美しさと叙情感を強く感じる。
無機的に思えるポリーニの録音とは違って、ピーター・ヒルの透明な叙情感のあるシェーンベルクが一番聴きやすいと思っていたところが、アスポースはヒル以上に叙情的。
ヒルは音も雰囲気もやや暗めのトーンで、タッチはやや軽やか。陰鬱さや不気味さ、不安感といった雰囲気が強め。
アスポースは明るい色彩感のある太めで明瞭な音のせいか、美しく潤いのある叙情感が強い。

この小品集は、いずれも短く無駄のないシンプルな旋律で、各曲のモチーフは独立している。
第1曲Leicht, zartは、いろんな断片的なフレーズがちらちらと現れては消える。色彩感と叙情感が強い演奏だと、無機的には聴こえない。
ヒルはかなり沈んだトーンの音と動き。アスポースは音色が明るく音も大きく、響きがクリアで動的。

2曲目以降は、第1曲のフラグメントな音の動きとは反対に、メロディアスな旋律や和声が美しい。
特に、第2曲Langsamはリズムが面白く、バルトークの《夜の音楽》のように、暗い森に潜む動物たちの息遣いが聴こえてくるような感じ。ヒルはテンポが速く動的で何かが蠢くようで、アスポースは遅めのテンポで一軒づつ扉を叩いて回っているような。
第3曲は冒頭は力強い和音が重苦しく悲愴な雰囲気で、後半は静かに沈潜。
第4曲は、沈潜した雰囲気。和音がアクセントになって、静寂さから突発的に感情が噴出したように。続く第5曲も似たような曲想。
第6曲のSehr langsamは、マーラーの葬儀に参列した後に書かれた曲。まばらな音が静寂さのなかで、ぽつ~ん、ぽつ~と響いては消えていく。ヒルの方が鬱々とした雰囲気は強め。


ウェーベルン/ヴァイオリンとピアノのための4つの小品 Op.7(1910年)
シェーンベルクとベルクがくると、普通はウェーベルンの《ピアノのための変奏曲Op.27》のカップリングになるけれど、珍しく《ヴァイオリンとピアノのための4つの小品Op.7》を選曲。
ウェーベルンのピアノ独奏曲は、シェーンベルクよりもずっと聴きづらい。管弦楽曲なら音色がカラフルで旋律も増えるせいか、ピアノソロよりはまだしも聴きやすい気はするけれど。
この曲もヴァイオリンが入っているせいか、旋律がかなりメロディアスになり、音色も増えて色彩感が増している。
ポツポツと密度の薄い音が、あちこち飛び跳ねるようなウェーベルンらしい音の配列が聴こえるけれど、ピアノ独奏曲よりはずっと聴きやすい。
一番わかりやすい曲は<第2曲 Rasch>。旋律はかなり明快で動きが激しい。すぐに思い浮かんだのは、ヤナーチェクのヴァイオリンソナタや弦楽四重奏曲。和声の響きやヴァイオリンの音の動き、突発的なフォルテの激情感とかが似ているから。
<第1曲 Sehr langsam>は、ゆったりとしたテンポで、ヴァイオリンはキ~コ~とやや神経質な旋律と響き、ピアノはポロンポロンと響きが長くずっと瞑想的。
<第3曲 Sehr langsam>これは静寂で闇に包まれた森の情景風。ぽつん、ぽつんと時々飛び跳ねるピアノの音が印象的。
<第4曲 Bewegt>は、感情が噴出したような冒頭のフォルテから、すぐに沈静。


ベルク/ピアノ・ソナタ Op.1(1908年)[ピティナの楽曲解説]
現代音楽のピアノ・ソナタの名曲の一つ。学生の頃(くらいに)一度聴いて、旋律の美しさと張り詰めた叙情感が強く印象に残って、この曲は忘れることがなかった。
一楽章形式で10分以上かかり、冒頭主題がとても印象的。これが変形しながら、和声の美しい響きと濃い情感が織り込まれて、感情の激しい噴出と瞑想が度々交代しながら進行していく。

このピアノ・ソナタは、グールドの演奏が昔から私のスタンダード。グールドの録音のなかでは、ヒンデミットのピアノ・ソナタと並んで珍しくも好きな曲で、シャープで硬質なタッチで、クリスタルのような冷たい情熱と刺すような強い緊張感が漂っている。
アスポースは、グールドのような冷たく研ぎ澄まされたタッチではなく、やや丸みの帯びた生温かさを感じる響きで、演奏に柔らかさを感じる。
呟くような弱音の響きが内省的に聴こえ、ベルク独特の妖艶で濃密な雰囲気はやや薄く、しっとりとしたマイルドな叙情感がとても心地良い感じ。


アスポース~デュカス/ピアノ/作品集
グールド~アルバン・ベルク/ピアノ・ソナタ

(参考)ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第32番のCD聴き比べサイト

tag : アスポース ベートーヴェン シェーンベルク ベルク

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『エリーゼのために ~ 珠玉のピアノ名曲集』
ピアノ協奏曲や同じ作曲家の作品集ばかり聴いていると結構疲れることもあるので、たまにこういう脈絡なく小品が詰め込まれているオムニバスのCDを聴くのは、とても良い気分転換。

私が持っているオムニバス形式の唯一のピアノ小品集のCDは、DECCAのかなり古い音源(モノラル録音が結構入っている)でまとめたピアノ小品集。今は廃盤。
ピアニストと選曲の組み合わせが一風変わっていて面白いのと、ピアニストの個性が感じとれる演奏も多いのとで、音はちょっと古めかしいけれど結構好きなアルバム。

エリーゼのために~決定盤!珠玉のピアノ名曲集エリーゼのために~決定盤!珠玉のピアノ名曲集
(1997/11/06)
オムニバス(クラシック)

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CDの曲順はほぼ作曲家の時代順。これをピアニスト別にまとめてみると、

ジョゼフ・クーパー(なぜか小品集の録音でしか名前を見たことがないピアニスト)
-バダジェフスカ《乙女の祈り》:とっても緩々したタッチ。クーパー自ら編曲した版で弾いているし、子供の頃聴いていたLPとはちょっとイメージが違っていた。
-ベートーヴェン《エリーゼのために》:ちょっと憂いのあるエリーゼ。でもそんなに暗くない。
-シューベルト《即興曲変ホ長調》:同じ主題が転調しながら何度も登場するせいか、小品でもやっぱり長く感じてしまう。
-リスト《忘れられたワルツ》:ハフの小品集にも入っていた曲。リストにしてはシンプルで素直に綺麗な曲。
-ラフマニノフ《前奏曲~鐘(幻想的小品集より)》:ラフマニノフの小品なら《ヴォカリーズ》が一番だと思っていたけれど、この曲は荘重でおどろおどろしいところが素敵な曲。フィギュアスケートでは使われていたオケの演奏よりも、ピアノソロの方が綺麗な曲に聴こえる。

ヴィルヘルム・ケンプ
-ヘンデル《調子のよい鍛冶屋》:ケンプらしい柔らかな響きと親密感。既出のケンプの録音には入っていないかも。最近出た(出る)らしいモノラル録音盤の小品集には入っている。
この曲はまともに聴いたことがなかったし、そもそも変な標題がついているので子供の練習曲かなにかの小品かと思っていた。実はヘンデルの組曲第5番の終楽章のとても有名な曲で、変奏形式のかっちりした構成で聴き応えのある曲。
でも、なんでこの曲が《調子のよい鍛冶屋》なのだろう?と不思議に思うのは誰しも同じで、Wikipediaの《調子のよい鍛冶屋》の項にちゃんと解説が載っている。

ヴィルヘルム・バックハウス
-モーツァルト《トルコ行進曲》:バックハウスがリサイタルのアンコールでもよく弾いていたらしい。
-ベートーヴェン《月光ソナタ》第1楽章:幻想的というよりは、暖かい月の光が道を照らしてくれているような頼りがいのある感じ。
-メンデルスゾーン《春の歌》:とってもさっぱりした《春の歌》。テンポが速くて、アルペジオが塊のように聴こえてくる。

ジュリアス・カッチェン
-バッハ=ヘス編曲《主よ、人の望みの喜びよ》:低音の響きをかなり抑えたとても柔らかでふんわりしたタッチがほのぼの。(モノラル録音なのでこもった素朴な感じのする音質。ダウンロード販売のMP3ファイルの方が音がクリア。ブラームス以外はたぶんモノラル)
-メンデルスゾーン=リスト編曲《歌の翼に》:《無言歌》の一つでピアノソロが原曲と思い込んでいた曲。解説を読むと歌曲が原曲だった。
フルート&ピアノ版ならシュテックメスト編曲の《「歌の翼」による幻想曲》、ヴァイオリン&ピアノ版はアクロン編曲。どちらも良く演奏されている。
ピアノ独奏版はさすがにリストの編曲なので、まるで2人で弾いているように音の厚みがあり音も込み入っている。アルペジオの響きや主旋律以外の複旋律が綺麗に聴こえて、色彩感豊かで華やか。
カッチェンが録音したメンデルスゾーンのピアノソロ4曲中、一番良いと思ったのがこの曲。
-ブラームス《ワルツ第15番》ピアノ独奏版《ハンガリー舞曲第5番&第6番》:カッチェンのおはこ(十八番)。いつ聴いても素晴らしい。
-ドビュッシー《月の光》:カッチェン唯一のドビュッシーの録音で、今では収録したCDが全て廃盤。ややこもりがちの丸みと温もりのある響きは、暖かい春霞のなかでぼんやりと照らされる月の光のようで、夢の中に誘われるような雰囲気。

クリフォード・カーゾン
-シューベルト《楽興の時第3番》:これくらい短い曲なら苦手のシューベルトでも大丈夫。カーゾンはさりげなく軽やかなタッチで、ルプーとはちょっと雰囲気が違う。
-シューマン《トロイメライ》

パスカル・ロジェ
-リスト《愛の夢第3番》:ロジェの珍しいリスト。私の持っているロジェのCDのどれにも入っていない。

ジャン・ロドルフ・カールス(全然聴いたことがないピアニスト。DECCAの小品集の新しいCDだと、ドビュッシーはロジェの録音を使っていることが多い)
-ドビュッシー《亜麻色の髪の乙女》:女性のタイトル名が少し似ているせいか(それに静かな曲の雰囲気も)、よくラヴェルの《亡き王女のためのパヴァーヌ》と混同してしまう。ドビュッシーはあまり好きではないので、よく聴くのはラヴェルの方。

イレーナ・ベレッド(この人も聴いたことがない)
-サティ《ジムノペディ第1番》:最後の収録曲は現代もののサティ。サティよりもプーランクの方が好きなので、あまり知られていないプーランクの《エディット・ピアフを讃えて》も入っていたらうれしかったけど。

tag : バックハウス ケンプ カーゾン カッチェン ロジェ

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アスポース ~ デュカス/ピアノ作品集より ピアノ・ソナタ,ラモーの主題による変奏曲,牧神の遥かな嘆き
デュカスといえばすぐ思い浮かぶのは、《魔法使いの弟子》というタイトル。曲名だけ知っていて聴いたこともなく、そもそもフランスものは、プーランクとラヴェル以外はほとんど聴かない。
ディズニー映画にも使われていたそうなので(この映画も知らない)、youtubeで探すと映像&音楽が登録されていた。[ファンタジア2000 魔法使いの弟子](Youtube)
サントラとして聴くには良いけれど、この曲だけオケのライブ映像で聴いても、あまり魅かれるものがなくて、どうも相性が悪そうな予感。

管弦楽曲があまり好みに合わなくても、他のジャンルの曲なら合う場合も(たまに)あるので、次は本来の目的のピアノ作品。
デュカスはもともと寡作なので、ピアノ関係の曲も少なく、代表作といわれるのはピアノ・ソナタや変奏曲。

たまたま目にしたデュカスのピアノ作品集のレビュー(ピアニストはプレシャコフ)を読んで興味を引かれたので、いくつか録音を探してみた。
あまり録音は多くはないけれど、もともとピアノ作品は4曲しかないので、そう探すのに迷うこともなくてすむ。

プレシャコフ以外の録音は、デュカスの弟子のユボー、デュシャーブル、スティリアニ、アムラン、アスポース、フィンガーハットなど。アムランが弾いているというのはちょっと珍しい。
デュシャーブル以外は試聴したし、NMLにはプレシャコフ(Orion)、スティリアニ(NAXOS)、アスポース(SIMAX)、フィンガーハット(CHANDOS)盤が登録されていた。
いろいろ聴いてみると、ピアノ・ソナタは渦巻くような響きがエコーする作品で、それにルパートをかけてファンタジックに弾くような感じの録音が多いので、かなり紆余曲折して途中で混乱しそうな印象。
フランス系のピアニストなら、デュカスのお弟子さんのJean Hubeau(Apex盤)が定評があるらしい。

ピアノ・ソナタを全楽章聴いたなかでとても気に入ったのが、ノルウェーの若手ピアニストであるトゥール・エスペン・アスポースの演奏。
テンポが速く揺れも少ないし、打鍵はシャープで力強く、音の粒も綺麗に揃って響きが混濁することもなく、シンフォニックな響きのなかにも透明感があって、もやもやした雰囲気が薄めのすっきりした印象。
混沌としたデュカス独特の叙情性も充分に出ているわりに、旋律の流れもよくわかる。この録音を聴いた人たちの間では、かなり評判は良いらしい。

他の録音では時々聴いているフィンガーハットは、響きはわりとクリアに聴こえるけれど、テンポが遅く(演奏時間がアスポースより5分ほど長い45分くらい)たっぷりと情感と込めたようにテンポも揺れるし、細部の表現も濃い。モヤモヤとした霧の中で彷徨うような曖昧模糊とした雰囲気と濃い情感があり、好みとしてはちょっと苦手なタイプ。フィンガーハットは原曲の雰囲気をよく出しているような気はするけれど、演奏時間が40分以上かかるので聴き疲れしてしまう。

アスポースの録音はノルウェーのレーベルSIMAXからのリリース。
このアルバムはピアノ作品全集なので、《ピアノ・ソナタ》,《ハイドンの名による悲しい前奏曲》,《ラモーの主題による変奏曲、間奏曲と終曲》,《牧神の遥かな嘆き》の4曲を収録。

《ラモーの主題による変奏曲、間奏曲と終曲》はかなり有名らしく、これはとても聴きやすいくて面白い曲。
でも、感動するのは重厚な響きと壮大さで迫力充分の《ピアノ・ソナタ》。
現代のピアノ・ソナタでも名曲の一つではなかろうかと思うくらいに、長くて聴きとおすのはちょっと大変だけど、これは旋律と響きが独特で展開も凝っていて、これはかなり聴き応えのある曲。
ドビュッシーを追憶した《牧神の遥かな嘆き》も短い作品ながら、幻想的な響きがとても印象的。
デュカスの書いたピアノ独奏曲は少ないけれど、さすがに完璧主義者だけあって、これだけ内容が濃くヴァリエーションがあれば、充分満足できてしまう。
それに、デュカスのピアノ曲を聴いていると、旋律や和声の響きがどこかで聴いた気がすることが多く、それが何だったか記憶をたどったり調べたりしてしまうので、これが意外と面白かったところ。

Dukas: Complete Works for Piano SoloDukas: Complete Works for Piano Solo
(2004/06/14)
Tor Espen Aspaas

試聴する(米国amazon)


ピアノ・ソナタ 変ホ短調(1901年)
NAXOSの解説によると、サン=サーンスに献呈された曲で、20世紀のピアノ作品の名曲とみなされているらしい。(それにしては、聴いたことのある人は少ないはず)
明らかにベートーヴェン、リスト、フランクの影響が聴きとれる一方、洗練された感情とdiscursive density(絶えず推移していくような?)で刻印されたような古典的で審美的な思考が反映されている、リスナーとピアニストの両者に絶対的な集中力を要求する、と書かれている。これは全くその通り。
重なりあう響きと技巧的なパッセージが相まって華麗で混沌な雰囲気がベースにあって、それと対照的な透明感と静謐さ、明るさと開放感にコロコロと移り変わっていくので、面白いけれど気軽に聴くタイプの曲とは言えない。

第1楽章 Moderement vite
典型的なソナタ形式で(中間部の入りと終わりはどこなんだろう?)、主題は2つ。
冒頭の主題がとても印象的で、ここはフランク風。
不安が渦巻くように重苦しい雰囲気の旋律をペダリングで響きを重ねた左手のアルペジオがずっと支えていて、この雰囲気がほとんど第1楽章を支配している。
半音階が多く使われているようなので、調性感が曖昧で幻想的で、たえず揺れ動いているような不安定感がある。

2番目の主題は、左手のアルペジオのペダルで増幅された響きが薄まって、シンプルな和音やアルペジオに変わって、音が激減してすっきりした響き。
主題の印象もずっと明るく爽やかで、リスト風のベートーヴェン(?)のような古典的な雰囲気もある。緊張と緩和の効果があきらかで、第2主題を聴くと和やかな気分になってほっと安心。

第2主題のセクションはそれほど長続きせずに、徐々に冒頭主題がアダージョのように変奏されながら入ってきて徐々に勢いと激しさを増して、やがて冒頭部分が再び現れれる。

全体的に伴奏のパターンが同じで常に渦を巻いているような響きのする部分が多いので、さすがに10分以上も続くとちょっと単調に感じてくるところはある。

第2楽章 Calme - un peu lent - tres soutenu
動的で響きが重なって渦を巻いている第1楽章とは対照的に、静的でやや神秘的な雰囲気。テンポが遅くても、アルペジオが相変わらず多いので、さほど静謐な感じがしないけど。
解説によると、一応主題は2つあって、対立的でなく相互補完的で、17-18世紀の作曲家に好まれた装飾と二重奏の変奏で構成されている。
主題がそれほどメロディアスなわかりやすさがなく、変奏形式にもなっているので、いろんなモチーフが次から次へと現われては消えていくようで、ただでなくとも緩徐楽章はあまり得意ではないので、構成がよくわからない。

第3楽章 Vivement, avec legerete
冒頭から速いテンポで、ちょっとメンデルスゾーン風の細かいパッセージ。主題はとても明瞭で印象的。
第2楽章がかなり長くて静的だったので、フーガが使われているこの第3楽章はスケルツォ風に動きが激しく、スタッカートで飛び跳ねるようにリズミカルで、疾走感・急迫感が爽快。
主題に続いて出てくる片手づつずらしたようなユニゾンで上行下降するパッセージの響きが華麗。その後に一瞬明るい表情になったり、いろいろ変化していくので、聴いていても面白い。
中間部は、再び不安感に満たされたように沈み込んだ雰囲気に変わって、最後は、覚醒したように再び冒頭の激しい旋律と雰囲気が再現。

第4楽章 Tres lent - anime
前半はゆったりとしたテンポで、どことなくフランク風のシンフォニックな響きと厳粛・荘重さ。旋律が響きのなかに溶け込んでいくのでもやもや。
しばらくすると、旋律が明快で動的なパッセージに変わり、躍動感と明るさがでてきて、明るく開放感のある旋律(が現れて、フィナーレへ向かっていく雰囲気。ここからはかなりわかりやすい旋律と展開。
ラストに向かって開放感のある伸びやかな雰囲気が強くなってきて、和声も調性の明確で曖昧さのなくすっきりした響き。ショパンのピアノ・ソナタ(かスケルツォかバラード。あまり聴かないので思いだせない)にちょっと似ているかも。

これだけ全楽章が長いと、主題や雰囲気の推移も激しくさらに変奏も入っているので、何回か聴かないと第3楽章を除いて構成はかなりつかみにくい感じ。(第2楽章は何度聴いても構成がよくわからなかったし)
何度か聴けばそのもやもや・混沌とした印象はかなり解消されるけれど、それでもいつも集中力をもって聴かないと途中で迷子になりそうになる。この曲が好みに合っていれば、それさえも楽しく思えるくらいに内容は濃い。


ラモーの主題による変奏曲・間奏曲・フィナーレ/Variation, Interlude et Finale sur un theme de J.Ph.Rameau(1902年)
[ピティナの作品解説]
ラモーはまず聴かないので、主題がどの曲なのかは良くわからないけれど、そういうことは知らずとも、いろいろ変化があって面白い曲。
ピアノ・ソナタとは全然曲想もつくりも違うので、そんなに集中力はいらず、かなりリラックスして聴ける。ピアノ・ソナタで挫折しても(その可能性はかなり高いそうなので)、このラモーの曲の方はとても聴きやすくて、おすすめ。
この曲も、どこかで聴いたような旋律や和声が時々出てくるので、それが何だったか思い出すのに気をとられてしまった。

主題menuetは当然ながら、バロック風の優雅で可愛らしい雰囲気。
変奏が進むに連れて、不協和的な響きが混在し、和声の厚みを増し、曖昧模糊とした不安定感が強くなっていく。全体的にテンポの遅い曲は、デュカス風の調性感の曖昧な厚みのある響きが強い。
第6変奏Modereはとても穏やかで眠たくなってくるようなまったりした雰囲気。
第7変奏のAssez figはコマネズミがちょこまか動き回っているようでちょっとユーモラス。
第9変奏Animeは舞曲風で明るい。
第10変奏Sans lenteur bien marqueは面白いリズム感。リズムと雰囲気がディアベリ変奏曲の第5変奏と第6変奏によく似ている。
第11変奏Sombre assez lentの冒頭はピアノ・ソナタの第1楽章の重苦しい雰囲気。
Interludeは、リストのロ短調ソナタの冒頭のような厳しいフレーズが出てくるし、全体的にかなりリスト風。
最終変奏Finale: Moderement animeも、とても晴れやかで透き通った響きが綺麗。ベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番の主題に似た旋律がちょっと出てくるし、とても古典的な優美で可愛らしい変奏。

牧神の遥かな嘆き(ドビュッシーを追憶して)/La Plainte au loin du Faune (en memoire de Debussy)(1920年)
親友のドビュッシーを追憶した曲なので、ドビュッシーの《牧神の午後への前奏曲》の初めの方に出てくる半音階の主題の旋律を使っている。
全体的に沈痛な雰囲気ではあるけれど、神秘的で妖艶さも感じさせる響きが魅惑的。好みとぴったり合って、この曲はかなり好き。
冒頭からしばらくすると、ドビュッシーの短い半音階の上行下降するモチーフ(私はラフマニノフのパガニーニ狂詩曲の第10変奏冒頭でオケが弾いている旋律の方をすぐに連想した)が不安げにいたるところでリピートされ、主旋律の後ろで断続的に響く雨音のようなオスティナートが、不安定感をさらに強めている。
同じくカップリング曲の《ハイドンの名による悲歌的前奏曲》とは旋律も響きも全然違っていて、こちらの方がずっと面白い。

tag : アスポース ドビュッシー

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グレゴリー・ソコロフに関する文献
CDラックで眠っていたソコロフのCDをいくつか聴いて、すっかりはまってしまったので、少しソコロフに関する情報を探してみました。
一年に何人か興味を引かれるピアニストに出会うけれど、ソコロフはそのなかでもずっと聴き続けるに違いないくらい好きなピアニストの一人。

ソコロフは日本ではあまり知られていないせいか、日本語の情報はWikipediaに載っているような簡単なプロフィールくらい。
第3回チャイコフスキーコンクールの優勝者、スタジオ録音をせず演奏会(とライブ録音)中心、現役では”世界最高”と評されることもある、etc.とか、だいたい同じような情報。

いろいろ探してみると、ソコロフに関する情報が載っている本は、
 『ソビエトの名ピアニスト―ソフロニツキーからキーシンまで』(ツイピン著、国際文化出版、1992年)
チャイコフスキーコンクールのエピソードとその後の演奏活動が中心。ソコロフに関して一つの章を起こしているので、内容が幅広くて面白い。

 『ロシア・ピアニズムの系譜 ルービンシュタインからキーシンまで』(佐藤泰一著、音楽之友社、1992年)
原著が1982年刊行の『ソビエトの名ピアニスト』よりも多少新しい情報が入っているけれど、複数の章で少しずつ断片的に紹介されているだけなので、量的には少ない。

 『ピアニストガイド』(吉澤ヴィルヘルム著,青弓社、2006年)
この本は以前少し見たことがあって、だいたい1頁くらいでピアニストを紹介している。ソコロフの項は未読。


                              

『ソビエトの名ピアニスト』は、タイトルに”ソビエト”という国名が入っているのでわかるとおり、ロシアがソヴィエト連邦だった時代に書かれた本。原著では26人のピアニストをとりあげていたが、邦訳では21人の抜粋版。

ソコロフの章は、第3回チャイコフスキーコンクールのエピソードで始まる。
若干16歳のソコロフは下馬評も高くなく(優勝するなんてほとんど誰も思っていなかったらしい)、第1次予選、第2次予選でも、優勝候補にも上がらなかった。
それが、なぜかチャイコフスキーのピアノ協奏曲を弾いた最終選考の結果、優勝した。一部の人にとっては疑問の余地のない結果らしいが、多くの人には意外だった。
この審査団の決定が正しかったかどうかは、「その後の経過がつねにコンクールの結果に最終的な決着をつけるのであり、何が適切で、何がそうでなかったかを示してくれる」。
結果的にその後の(現在の)ソコロフの評価を見れば、コンクールの時点ではなく将来性を見抜いた審査団の決定は正しかったことになる。

なぜ本選の後になって、急にソコロフが名前が浮上したのかは誰しも不思議に思うらしく、その理由に上げられているのが、演奏家としての欠点がなさすぎるという<欠点>。
実際に、チャイコフスキーコンクールでも、唯一ソコロフだけが大きなミスもなくムラのない出来栄えで、全ての選考過程を通過している。
ソコロフの若い頃は、模範的な優等生タイプの演奏家というイメージがあったらしく、そういう演奏家に対しては見方が厳しくなるらしい。

この本で描かれているソコロフ像は、練習熱心、生まれつき情緒的にも安定して調和の取れた内面世界を持っている、演奏の安定性が高くコンサートホールでも沈着冷静で自信を持ってピアノに向かう、など。
(かなり年をとった今では、一風変わりものイメージがついているような気もするけれど)

若い時にソコロフ自身が、最初は”かなり”あがるけれど、弾き始めるといつの間にか演奏に集中して没頭できると言っている。
(スタジオ録音がわずかでライブ録音が多い理由は、実演に強いライブ向きのピアニストだからなのでしょう)

若い頃は「まれに見るほど清らかで美しい演奏」(1977年、27歳の時に録音したショパンのピアノ協奏曲第1番を聴くとそれがよくわかる)で注目されたが、ソコロフの解釈は常に「まじめ」。かつての優等生的なイメージから脱皮し、内容豊かで創造的な音楽をつくるピアニストとして興味を引き寄せるようになり、徐々に思索的な傾向が強くなっていく。

ソコロフの演奏上の特徴は、フレーズ、モチーフ、イントネーションをくっきりと浮かびあがらせる音楽的新タックスと、鮮やかな音調、音色の暖かさ、ピアノをなでるように弾くタッチの柔らかさ。
この評論が書かれた頃のソコロフのネガティブな批評といえば、聴き手を安心させすぎてしまうという点。並外れて強烈な緊迫感のある燃えるような音楽的感銘をもたらさない、という批評家もいた。
(それからかなりの時が経っているし、今となってはこういう批評をする人はいないに違いない)

                               

ソコロフのディスコグラフィー
スタジオ録音がほとんどなく、正規盤のライブ録音も限られている。LPがCD化されていないものもいくつか。
ソコロフは、特に思い入れの強い作曲家や様式、作品はないと言っている。良い音楽なら好きになるし、好きな音楽は自分で弾きたくなるのだそう。多分ベートーヴェンやバッハの曲集の全集録音などはしないのでは。

ソコロフのレパートリー(Wikipediaの米国サイトの情報)
レパートリーは18世紀初頭~20世紀半ばの作品とかなり広く、若い頃から、バッハ、ベートーヴェン、シューベルトはよく弾いていた。このリストでは、ショパン、スクリャービン、シューマンの曲も多く、コンチェルトよりも独奏曲のレパートリーが広い。

Wikipediaでは、ソコロフがコンチェルトを弾く機会をかなり減らした理由が書かれていて、これが面白い。
英文を要約すると、ソコロフ曰く、”ソロだと自分ひとりの努力で練習を積み重ねれば向上できる、一方、コンチェルトは相応しい指揮者&オケを見つけるのが容易ではなく、リハーサルも限られて、コンサートごとに毎回一から合わせていかなければならない。同じ量のエネルギーを投入するなら、リサイタルのために使った方が実りが多い。全てが自分自身にかかっているという考えが気に入っている。これは指揮者&オケと一緒に演奏するコンチェルトではほとんど不可能。責任がもてない”というような理由から、実演はリサイタル重視。

ソコロフのマネジメント会社のホームページ
今年のコンサート予定とプログラム、コンサートレビューが載っている。(飛行機嫌いという説もあり、ほとんど欧州大陸でしかコンサートをしないので、英文レビューはなし)
2010年のリサイタルプログラムは、バッハの《パルティータ第2番》、ブラームスの《7つの幻想曲》、シューマンの《ピアノ・ソナタ第3番》。

過去の演奏会の録音(ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第16番第3楽章、ラヴェルのソナチネ、シューマンのアラベスク、モーツァルトのピアノ協奏曲第23番第2楽章)が聴けるのが嬉しい。
いつもながら音自体が綺麗でとても魅力的。ベートーヴェンの地味なはずのピアノ・ソナタ第16番は緩急のコントラストが鮮やかでかなりドラマティック。ラヴェルとシューマンはカラフルな色彩感のある柔らかな音が綺麗。
モーツァルトは、しっとりとした響きの弱音と、陰影のある内省的で深い叙情感が美しいし、珍しいことに譜面にない装飾音やフレーズを入れたり、オケのトゥッティに合わせてピアノも音を加えるように和音を弾いて伴奏したりと、普通聴く演奏とはちょっと違って聴こえる。
これを聴いてしまうと、ベートーヴェンとモーツァルトは全楽章を聴きたくなってしまう。

tag : ソコロフ

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アシュケナージ ~ ラウタヴァーラ/ピアノ協奏曲第3番 《夢の贈り物》
ラウタヴァーラのピアノ協奏曲第3番《Gift of Dreams(夢の贈り物)》は、アシュケナージが弾き振りするために委嘱したコンチェルト。
1998年に完成し、1999年にフィンランドのヘルシンキにて、アシュケナージ&ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団が初演。
2000年10月19日には、アシュケナージが弾き振りしたN響で日本初演。TV放映もあったらしい。

第1楽章と第2楽章は、タイトルどおり夢の中にいるような幻想的で浮遊しているような感覚。色彩感が豊かで、特にピアノの響きが素晴らしく綺麗。
前2作の協奏曲よりも、響きがずっと洗練された感じがする。
第2番の鬱々とした暗さはちょっと苦手なので、この第2番のパルテル調の夢のような明るさと柔らかい響きがとても心地よい。
初めて聴いた時は、なんか緩くてふわふわした感じであまり印象に残らなかったけれど、第1番を聴いてからもう一度この第3番を聴くと、ラウタヴァーラ独特の音の動きや響きに慣れたこともあって、聴けば聴くほど良い曲に思えてきた。
個人的には前衛性のある第1番が構成も曲想もわかりやすくて好きだけれど、作品の完成度は第3番が一番高いように思うので、ラウタヴァーラのピアノ協奏曲を初めて聴くなら、このまどろむような雰囲気と音の美しさで、第1番よりも第3番の方が良いかなという気はする。

第1楽章 Tranquillo
まろやかな弦楽の響きで静かに始まり、ピアノが同じように柔らかい響きで受け継いでいく導入部。まどろみながら夢の世界へ入っていくようなプロローグ。
すぐに、テンポが上がって、叙情的なオケの旋律をバックに、煌くようなピアノのアルペジオに変わる。徐々に感情が高揚していくように、ピアノがフォルテの和音の旋律に変わって、最後はブラスと鐘が鳴り響いて、再び主題のモチーフが再現され、ピアノのアルペジオのパッセージが現われる。
ピアノが伴奏的にアルペジオを引き続けながら、片方の手で叙情的な旋律を弾き、盛り上がっていくと鐘が再び鳴り響きと、このパターンが反復されて、最後は、冒頭に戻ったように静かに落ち着いてフェードアウト。

この楽章は、オケもピアノも柔らかく暖かみのあるカラフルな音色で、まるで夢のなかにいるようにファンタスティック。
ピアノはほとんど休むことなく、アルペジオと和音を引き続け、アシュケナージの色彩感のあるピアノの響きがとても綺麗。

第2楽章 Adagio assai
ピアノがオケのいろんなパートと対話しながら、展開していく楽章。この楽章はピアノパートの表情が豊かに変化して、とても饒舌。
冒頭は弦楽の息の長い旋律を背景に、静かに語りかけるように明るい色調のピアノ・ソロ。
やがてピアノは、アルペジオ、和音、スケールを取り混ぜて、コロコロと表情を変えていきながら、弦楽やティンパニと対話していく。
途中で、ブラスが警告するような音と旋律でそれを遮ると、ピアノが起こったように速いアルペジオで対抗し、次はとても穏やかな雰囲気の中で、入れ代わり登場するいろいろな木管のソロとピアノが対話する。
最後は冒頭部分に回帰し、静かにモノローグするようなピアノのソロがとても美しい。オケも黄昏のように穏やかなで、とても内省的な雰囲気で終る。

第3楽章 Energico
前2楽章とは打って変わって、とてもエネルギッシュ。
冒頭は激しいピアノの和音の連打がブルレスケ風で、オケもピアノに呼応するような伴奏で、ドラマティックな幕開け。
いくつかの主題が変形されながら次々と登場し、速いテンポで躍動的。オケが結構賑やかで、時々シンバルやらティンパニが鳴り響いて騒々しくて、この楽章はオケがかなり目立っている。
ピアノのアルペジオがとても華やかで、中間部のピアノソロで弾くところは、とても繊細で綺麗な響き。
最後は、乱舞するようなピアノの和音が力強く、シンバル、ティンパニに、鐘の音やら、いろいろな音がエンディングを告げるように壮大に鳴り響いて、やがて曖昧な雰囲気のなかでピアノが溶け込むように静かにフェードアウト。
いろんなモチーフが入れ代わり立ち代り出てくるので、主題がどれがどうなっているのかよくわからないところはあるけれど、フィナーレらしい躍動感と高揚感。この楽章は、ピアノ独奏付きの管弦楽曲風に聴こえる。


第3番の録音はミッコラとアシュケナージの盤があるけれど、この曲はアシュケナージのために書かれたものなので、ここはアシュケナージがヘルシンキフィルを弾き振りした演奏で。
Rautavaara: Piano Concerto No. 3 Rautavaara: Piano Concerto No. 3 "Gift of Dreams", Autumn Gardens / Ashkenazy
(2000/04/25)
Vladimir Ashkenazy (Conductor,piano),Helsinki Philharmonic Orchestra

試聴する(米国amazon)


カップリング曲の《秋の庭》も、ピアノ協奏曲第3番と同じように、穏やかで明るい色調で色彩感豊かな曲。
コンチェルトの方が、ピアノの響きが入っているせいか、より繊細で煌くような輝きがあるような気はするけれど。

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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

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