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ドヴォザークのピアノ独奏曲 ~ 《 詩的な音画 》、《 8つのユモレスク 》
ドヴォルザークのピアノ曲は、他の分野(管弦楽曲、室内楽曲)に比べて、なぜかあまり知られていない。
ピアノ協奏曲は1曲のみで、チェロ協奏曲やヴァイオリン協奏曲に比べて演奏機会が少ないし、ピアノ連弾のスラブ舞曲集は、管弦楽編曲版の方が有名になってしまった。

ピアノ独奏曲は作品数がわりと多いので、全集をCDで録音すると5枚分。ブラームスのピアノ独奏曲と数としてはさほど変わらない。
でも、ブラームスのピアノ曲が、規模が大きく難度も高いピアノ・ソナタや変奏曲、中期や晩年の小品集とバリエーションが豊富で、頻繁に演奏・録音されているのとは違って、小品中心で実演も録音も少ないのがドヴォルザークのピアノ曲。

さすがにメロディーメーカーだけあって、ドヴァルザークのピアノ独奏曲は、美しくメロディアスな旋律とスラブ風の抒情が豊か。小粒だけれどキラキラときらめきのある小品が多い。
比較的知られている曲は、ユモレスクを収録した《 8つのユモレスク 》と《 詩的な音画 》。
ヴァイオリンで弾かれるユモレスクは、原曲がピアノ独奏曲。それはすっかり忘れられているらしく、てっきり、元々、ヴァイオリンのための曲かと思っていた。

ドヴォルザークのピアノ作品を録音した全集は数少ない。
有名なのはステファン・ヴェセルカ(今はNAXOS盤)か、クヴァピル(Supraphon盤)あたりかな?(ドヴォルザークはあまり聴かないのでよくはわかりません。)
クヴァピルよりもヴェセルカの演奏の方がより感情表現が濃くて、チェコの民族色を感じさせるところがある。
ヴェセルカは、1968年生まれで、チェコ系の両親の元に生まれたノルウェー出身のピアニストで、ヤナーチェクの遠縁にあたる家系らしい。


ピアノ独奏音楽全集ピアノ独奏音楽全集
(2004/08/01)
ステファン・ヴェセルカ

試聴する(HMV)[詩画:DISC3、ユモレスク:DISC4]

NAXOSからは分売盤もリリースされている。


ドヴォルザークのピアノ独奏曲の特徴は、HMVのCD紹介文によると、「主に短い舞曲や情緒的な小品として書かれたものが多く、情熱的なものと親密さ、華麗な賑やかさと抒情性が立ち代り現れる、サロンで弾くよりもコンサートホールでの演奏に適した内容」。

「詩的な音画」(Op.85)
13曲の連作ピアノ曲集で演奏時間は1時間近くかかるという、小品集にしては結構なボリューム。
曲集のタイトルどおり、ポエティックな旋律と美しい和声が散りばめられた色彩感のある曲で、イメージが浮かんでくるような「音画」。
旋律はとてもメロディアスなものが多くて、ピアノのもつ響きの豊かさを引き出したような和声がとても綺麗。
1つの曲の中でも曲想が移り変わっていくので単調さは全くなく、ドヴォルザークのメロディメーカーぶりがじっくり味わえる。

No. 1: On the Road at Night
 -アルペジオがとても美しくて、満点の星空の下で道を歩いているようなポエジー。
No. 2: Toying
 -いろんなリズムと旋律が次から次へと移り変わって、いろんな遊びに夢中になっている子供心溢れたファンタジー。
No. 3: At the Old Castle
 -ややアンニュイな気分とゆったりとした時間の流れを感じさせるがところがあって、途中で一瞬ドラマティックに高揚するのは、古い歴史を重ねた古城の不可思議さのせい?
No. 4: Spring Song
 -春らしい明るさと晴れやかさに溢れた曲。
No. 5: Peasant's Ballad
 -素朴なボヘミア地方の民謡風な曲で、楽しげで、どこかしら、のどか。
No. 6: Reverie
 -弱音で弾かれる哀しさと明るさが交錯する旋律がとても美しい曲。
No. 7: Furiant
 -これも民謡風な曲で力強く動きの目まぐるしい曲。
No. 8: Goblins' Dance
 -舞曲風でユーモア溢れた曲で、とても楽しげ。
No. 9: Serenade
 -コミカル・セレナーデと言われる曲で、穏やかだけど明るく楽しさに満ちた曲。
No. 10: Bacchanal
 -速いテンポの短調の曲。この曲集では珍しく、ドラマティックな激しさと華やかさがある。
No. 11: Tittle-Tattle
 -今までの曲にくらべてややつかみ所のない軽妙さや不可思議さのある曲。
No. 12: At a Hero's Grave
 -追悼の気持ちを込めた厳粛さを感じさせる曲。冒頭は和音・重音主体で重厚さがある。
 -中間部でメロディアスな旋律に変わり、英雄を讃えるかのような高揚感がある。
No. 13: At svata hora
 -スヴァター・ホラ(Svatá Hora=聖なる山)は、17世紀後半の初期チェコ・バロックの至宝で、チェコで最も重要な聖母マリア巡礼地。
 -下降する音のカスケードと聖歌風の旋律が組み合わされた清々しさと神々しさを感じさせる曲。


「8つのユモレスク」(Op.101)
ドヴォルザークの最後の重要なピアノ作品。第7曲があの有名な「ユモレスク」。
曲想は「ユモレスク」のようなAndanteのメルヘンティックな曲が多いけれど、Vivaceで力強い民族色を感じさせる曲、舞曲風の軽快な曲まで、わりとバリエーションがある。
なかでも「ユモレスク」は有名なだけあって、小品ながらもやっぱり名曲。
冒頭の軽やかなリズムから、一転してドラマティックな旋律に変わると、故郷への郷愁を歌った哀愁が漂い、ここが一番美しい。こういう旋律の曲は、ヴァイオリンで弾いた方が叙情感がずっと濃厚な感じがする。


ピアノ独奏版。アントルモンのピアノだと、とても爽やかでほんとにメルヘンの世界みたい。
ドヴォルザークというより、瀟洒なフランス音楽を聴いている気分。
Dvořák - Humoresque Philippe Entremont, Piano



スークのヴァイオリンによる”Humoresque”。ピアノはハーラ。ホレチェクとの旧録音もあり。
ドヴォルザークを聴くときは、なんともいえない独特のコクがあるので、いつもスークのヴァイオリン。
Josef Suk, A. Dvorak Humoresque

tag : ドヴォルザーク スーク

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ハイドン ~ 短調のピアノ・ソナタ(3) Hob.XVI:32
ハイドンの短調のピアノ・ソナタのなかで、最も好きな曲が第47番ロ短調Hob.XVI:32。
ハイドンにしては珍しい調性のロ短調。
録音で聴いたのは、ブレンデル、オルベルツ、リヒテル、ヤンドー、ガヴリリュク。今回は、このうちブレンデル、オルベルツ、ガヴリリュクの印象について。

第1楽章 (Allegro) Moderato
冒頭の旋律は、装飾音が入って、凛とした強さが漂う美しい短調の旋律。
この楽章はこのトーンで続くのかなと思ったら、その後で長調の旋律が現れて、かなり明るめ雰囲気に。
短調と長調が頻繁に交代し、短いフレーズの中でも入り混じり、明暗が激しく交錯する。

オルベルツは少しノンレガートを交えているけれど、テンポは遅めで打鍵するタッチまったり、最初の方に出てくるフォルテの和音はかなり弱くて鍵盤を押し込むようなタッチ。
全体的に緩々した感じがして、私のテンポ感覚とはかなり違う。
テンポが遅い分、旋律がくっきり浮かびあがるのは面白いところ。弱音で弾くパッセージの響きが美しさが強調され、語りかけるような親密感が強くなっている。

ブレンデルは粒立ちの良い線の細めの音で、優美で軽やか。
装飾音の弾き方が多彩でニュアンスも豊か。装飾音の違いを注意して聴くと、それだけでもかなり面白い。
細かい起伏やアクセントもかなりつけて、いつもながら凝ったアーティキュレーション。

ガヴリリュクは、やや硬質なタッチで輪郭がくっきりしたコロコロと丸みのある音で、背筋をぴんと伸ばしたようなきりりとした雰囲気。
歯切れのよいタッチでフォルテのアクセントがよく利いて、刻むようなリズム感が気持ち良い。
弱音は微妙なニュアンスがあって多彩だけれど、華美な煌きはなく、神経質的な繊細さと粘り気もないので、自然な趣きがあって流れが淀みない。
ブレンデルの凝った演奏を聴いていると、少し息が詰まるところがあるので、こういう飾りの少ないすっきりした演奏が爽やかで新鮮に聴こえる。

Alexander Gavrylyuk - Haydn sonata No. 47 in B minor



第2楽章 Andante con moto
ゆったりとしたテンポで、穏やかで優しげな主題に変わり、左手は主に和音伴奏、右手は単音だけで構成した旋律。
右手のトリルがわりと多く、小鳥が柔らかくさえずるような感じ。
リズムが工夫されていて、右手と左手が半拍ずれて入るせいか、旋律自体はシンプルでも全然単調さを感じない。
トリオは短調に転調し動きも出て、雰囲気が変わる。ここは軽快なタッチで雰囲気を変えて弾く人が多いところ。

ブレンデルは、主題部分がかなり繊細な弱音の表現でとても優美な雰囲気。対照的にトリオはテンポが上がって、とても軽快。

オルベルツも柔らかい弱音で親密感が強いだろうと予想していたら、これが全然違って、一番軽やかなタッチ。
そよ風が流れるような開放感で明るく爽やか。中間部になるとブレンデル同様テンポが上がって軽快に。

ガヴリリュクは、主題部分は柔らかい弱音で表現はさりげなく、子守歌を聴いているような穏やかさ。
中間部は、ブレンデルとオルベルツとは正反対で、Andanteのテンポを変えずに、ゆるやかな重めのタッチでやや厳粛な雰囲気。
明暗の違いはあっても、音楽の流れが繋がっていて、この移り変わりがとてもスムース。

第3楽章 Allegro
同音連打のオスティナートとトリルが多用されて、冒頭主題は左右の旋律がカノン的な動き。この音型が繰り返し現れるので、記憶にしっかり定着してしまう。

ブレンデルは、主題部分はややゆったり目のテンポで(他の曲でも、急速楽章でテンポがあまり速くないことが時々ある)、タッチも鋭くはなく、ちょっと密やかな雰囲気。
リズミカルな躍動感といったものは薄めで、その代わりに、左右両手で呼応していく音型の動きがくっきり。響きも多彩。
細かいパッセージが続くところでは、タッチもシャープで軽やかになり、動きも速くして、少し躍動感が出ている。

オルベルツは、ガヴリリュクよりは少し遅いけれど、それでもかなり速いテンポ。スピード感はあるけれど、打鍵が強くシャープなので、同音連打がちょっと重たく、音も硬く感じる。

ガブリリュクは、かなりテンポが速くて、音の切れ良く一音一音が明瞭。超絶技巧の人なのでさすがに指回りは滅法良い。
目まぐるしく動き回る躍動感とスピード感が爽快。でも、ちょっとユーモラスな感じも。
これだけ速いテンポでも、単音の細かいパッセージから重音移動まで、タッチがきちんとコントロールされて、音も柔らかく軽やか。つい一本調子になりがちなところを、表情豊かに弾いている。
この第3楽章は、わりと端正で穏やかなタッチの第1楽章・第2楽章とはガラりと雰囲気を変えて、メリハリのある構成。

全楽章通して考えると、ブレンデルの第1楽章の演奏にはかなり魅かれるけれど、最も好みに合うのはガヴリリュク。解釈に奇抜さはないけれど、新鮮さや面白さがあるし、私にはとっても納得感がある。
第1楽章は粛々と端正、第2楽章は全体的な流れが一環してスムーズにつながり、第3楽章はタッチが良くコントロールされて、軽快でスピーディ。
全体的にアーティキュレーションやソノリティに強くこだわった感じがせず、過度な繊細さも極端なディナーミクもつけていないので、流れがなめらか。
独特の強い個性で聴かせるというタイプではないけれど、線がしっかりして飾りが少なく、端正で自然な趣きがあるところがとても気に入っている。

ガヴリリュクのプロフィール(2011年の演奏会用パンフより)
ガヴリリュクにまつわるエピソードはいくつかあるけれど、一番有名なのは、浜松国際コンクールで16歳で優勝した時に、審査委員長の中村紘子が激賞した「20世紀後半最高の16歳」というセリフ。

プロコフィエフのピアノ・ソナタ第6番を聴くために買っておいたガヴリリュクのライブ録音のCD(DVDも出ている)。
若手ピアニストのライブ録音を買うことは滅多にないけれど、いくつかのサイトのレビューがかなり良かったので。
レビューどおり、ハイドンだけでなく、ブラームスのパガニーニ変奏曲、プロコフィエフの第6番ソナタ、それに珍しいメンデルスゾーンの結婚行進曲のブゾーニ=ホロヴィッツ編がとても良くて、若手ピアニストのライブ録音では掘り出し物だった。

Live in RecitalLive in Recital
(2006/04/25)
Gavrylyunk

試聴する(米amazon)

tag : ハイドン ブレンデル ガヴリリュク

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手作りポップコーン
たまたま、手作り用ポップコーンのパッケージをスーパーの棚で見かけたので、面白そう~と思って買ってみて、早速ポップコーンづくり。
ポップコーンを作るのに使うコーンは、爆裂種というコーン。
普段食べているスイートコーンでは、ポップコーンにはならないらしい。
コーンは1袋150g~200gが80円~100円くらいなので、5回~10回分くらいは作れる。

家庭用のポップコーンメーカーというのも出回っているらしく、数千円くらいするものが多い。

フジキン ポップコーンメーカーFUJIKIN FJK-P005フジキン ポップコーンメーカーFUJIKIN FJK-P005

フジキン

商品詳細を見る


下村 スナック工房 ポップコーンメーカー ACP-01下村 スナック工房 ポップコーンメーカー ACP-01

下村工業

商品詳細を見る



そういうマシンをわざわざ買わなくても、ポップコーンのパッケージの作り方どおり、フライパンで簡単にできる。

<フライパンで作るポップコーン>
1.深めのフライパンにコーン、油、塩を入れる。
2.よくかき混ぜて、コーンに油をまんべんなくつける。
3.蓋をして中火で数分加熱する。
4.コーンがはじけ始めたら、フライパンの蓋を押さえながら振る(焦げ付き防止のため)。
5.数分加熱し続けると、ほぼ全部ポップコーン化する。

これで出来上がり。10分もかかりません。
油を入れずに作っている人もいるので、出来ないことはないらしい。(フッ素加工フライパンだとコーティングが剥げかねないので、油は入れた方が良いと思うけど)


<電子レンジで作るポップコーン>
クオカのオンラインショップでも、ポップコーン用のコーンを売っている。
作り方をみると、耐熱ボウルにコーン(50g)とサラダ油、塩を入れて、2重ラップにして、電子レンジで約4分加熱。
こっちの方がフライパンよりもずっと簡単。大量に作るときは、フライパンの方が良いらしい。

電子レンジでポップコーンを作るときは、油も塩も入れなくてもOK。
深めの耐熱容器にコーンを少量(10gくらい)入れて、電子レンジ用のプラスチックフタをかぶせて、3分くらい加熱。
全部一度にははじけないので、3分くらいしたら、はじけた分を先に取り出す。残りは、さらに1分ほど加熱。
そうしないと、早くはじけたポップコーンが焦げて、苦くなるので。

カレー粉、バター、キャラメルシュガーなどを絡めるのは、はじけた後に。
クックパッドには、ポップコーンのレシピがたくさん。フレーバーがいろいろあるので、お好みのレシピで。

手作りポップコーンは、コーンが順番にはじけていく音が聞こえて面白いし、食べてみたら市販のポップコーンと同じ食感。
電子レンジだと、塩も油も入れずに作れるので、とてもあっさりした味。
油断するといくらでも食べれそうだけど、すぐにお腹いっぱいになるので、ちょっとした間食がわりに。
『レーゼルの芸術 ピアノ独奏曲編』 ~ バッハ=ブゾーニ編曲集(2)
レーゼルのバッハ=ブゾーニ編曲集より、原曲がコラールの残り5曲。
そのうち数曲は、ケンプが編曲していて、ケンプ自身の録音も残っている。

Piano Arrangements of Works By BachPiano Arrangements of Works By Bach
(1994/09/06)
Peter Rosel

試聴する(米amazon)
分売盤が入手可能。
レーゼルのソロ録音集BOXにも収録されている。

Works for PianoWorks for Piano
(2008/07/08)
Peter Rosel

試聴ファイルなし



「今ぞ喜べ、愛するキリストのともがらよ/Nun freut euch, liebe Christen gmein」 BWV 734
他のどの曲とも違ったメカニカルな面白さを感じる曲。これもかなり好きな曲。
速いテンポで3声がほぼ同じ音量で聴こえてくるので、3声が交わることなく並行して、独自の動きを追求して競いあっているような感じ。

ソコロフのライブ音源。この軽快なタッチと立体感はさすがソコロフ。
3声のなかで一番長い音価の主旋律をレーゼルよりもかなり強く弾いて、くっきりと浮かび上がらせている。
Sokolov plays Bach Nun freut euch



「いざ来たれ、異教徒の救い主よ/Nun komm der Heiden Heiland」 BWV 659
とても厳粛な雰囲気の曲。タイトルからして、祈りの気持ちがこもっている。
最初は暗いトーンの厳かな雰囲気で始まっているけれど、やがてコラールような清明さと切々として訴えるような叙情的な旋律に変わる。
ケンプ自作自演の編曲版もあり。使っている和声が違うからなのか、全体的にブゾーニ版の方が響きが明るく華やかさもあり、ケンプ版は暗い短調のトーンがやや強めで悲愴感が強い感じがする。(どちらかというとケンプ版の方が好き)
楽譜をつき合わせたわけではないので、気のせいかも。


「汝にこそわが喜びあり/In Dir ist Freude」 BWV 615
タイトルどおり、速いテンポで明るく華やかな曲。
新年の幕開けとかセレモニーのオープニングに相応しい雰囲気。
重音移動が多く、レーゼルの歯切れ良く鳴る和音がとても軽快。


「目覚めよ、と呼ぶ声あり/Wachet auf, ruft uns die Stimme」 BWV 645
これはとても有名な曲で、クリスマスの時期になるとよく流れている。この曲はかなり好き。

これもケンプ自作自演の編曲版がある。
ケンプ版は伴奏の和音の音が多く、響きに重層感がある。
ケンプの演奏は、伴奏は弱音で低音がぼわ~と響き、主旋律はとても力強い。明るさのなかに敬虔さが感じられて、とても清々しく晴れやか。
軽快なタッチのヒューイットの演奏だと、リズミカルでずっと明るく快活なので、随分イメージが変わる。

Bach - W. Kempff (1955) -Chorale 'Wachet auf, ruft uns die Stimme' from Cantata No 140



ブゾーニ版は、ケンプ版よりも、(珍しくも?)全体的に音が少なくてシンプル。
レーゼルはタッチがしっかりして、線の太めの音と厚みの響きで、音が少なめのわりにかっちりとした安定感があるし、ペライアよりもさらっとした表現で爽やかな雰囲気。
ペライアの演奏だと音が柔らかくて軽めで、しっとり、しみじみとしたムード。しなやかに歌うように旋律を弾くので、レーゼルよりもメロディアス。

BACH - Wachet Auf, Ruft Uns Die Stimme, BWV 645 (Perahia)

tag : バッハ ブゾーニ レーゼル ケンプ

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『レーゼルの芸術 ピアノ独奏曲編』 ~ バッハ=ブゾーニ編曲集(1) シャコンヌ、前奏曲とフーガ
ブゾーニとくれば、まず思い浮かぶのが《シャコンヌ》。
この曲はキーシンの20歳頃の録音で聴いて以来、ブゾーニ作品のなかでも、ヴァイオリンソナタ第2番と並んで好きな曲なので、知っているピアニストの録音を見かけたら時々聴いている。
ブゾーニは編曲ものの方がオリジナルよりも有名だと思うけれど、オリジナルはかなり独創的でユニークな曲が多い。
有名なのは、長大な《対位法的幻想曲》や最終楽章に男声合唱をおいた《ピアノ協奏曲》(誇大妄想的という人もいるけど)など。
晩年の2台のピアノのための《バッハのコラール《幸なるかな》による即興曲》は、調性感が曖昧になった幻想的な雰囲気で、かなり現代音楽風。

ブゾーニの《シャコンヌ》は、ロマン派的な荘重華麗な編曲でバッハとは異質な気はするけれど、インテンポでメカニックが安定した、どちらかというと端正な演奏が好きなので、定番はストイックなミケランジェリと、流麗で大伽藍のような華麗な響きのキーシン。
いずれもメカニックの切れが良いけれど、ミケランジェリはEMI時代のモノラル録音なので、音質がずっと良いキーシンの方が頭に刷り込まれてスタンダード化している。
テンポが揺れて感情移入過多のタイプは許容範囲外なので、情緒的なシャコンヌの代表のようなグリモーは全く合わず。
オピッツもかなりロマンティックだとは思うけれど、ドイツ的な重厚さと力強さに加えて、かなりの迫力に白熱感。オピッツのベートーヴェンとブラームスは全然魅かれなかったけれど、これだけ気合の入ったシャコンヌを聴くと、好みと違っていても惹き込まれてしまう。


《シャコンヌ》は、レーゼルもブゾーニ編曲集で録音している。
レーゼルのソロ録音は全て聴いてみることにしているし、《シャコンヌ》以外は聴いたことがない曲が多いので(ケンプ編曲版で聴いた曲はある)、勉強も兼ねて聴いてみた。

Piano Arrangements of Works By BachPiano Arrangements of Works By Bach
(1994/09/06)
Bach、Ferruccio 他

試聴する
分売盤が入手可能。
レーゼルのソロ録音集BOXにも収録されている。

Works for PianoWorks for Piano
(2008/07/08)
Peter Rosel

試聴ファイルなし



無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番 ニ短調 BWV1004 - シャコンヌ
レーゼルらしく、冒頭から速いテンポであっさりとしたタッチ。
全体的にインテンポで、ロマンティックさよりも骨格のかっちりした端正さのあるシャコンヌ。
キーシンを比べると華やかさが薄いけれど、澄んだ響きが清明さを感じさせるし、弱音の柔らかく粘り気のない表現がさりげなくて良い感じ。

重音移動の速いパッセージをスタッカート的なノンレガートで、それもペダルを入れずに弾いているところがいくつか。
タッチがとても軽やかで、響きの重層感がなくて、曲に重みがない感じがするところ。いつも聴いている《シャコンヌ》のイメージとは違っていて、初めて聴いた時はかなりの違和感。
何度か聴いていると慣れてきたけれど、どうもこの響きを聴くと居心地が悪い。
こういう重音でテンポの速いアルペジオを弾くところは、ペダルを使っている人が多い。
レーゼルは、楽譜でスラーがかかっていない部分では、あまりペダルを使っていないので、意図してペダルを多用しないようにしているらしい。
ノンレガートで弾いているところを除けば、それ以外のところは響きの厚みを出して荘重な雰囲気。
強弱・緩急のコントラストも必要なところはしっかりついているので、クライマックス部分になると、タッチも力強く勢いも増していき、レーゼルにしてはかなり白熱感と高揚感があって、結構聴き応えあり。


前奏曲とフーガ ニ長調 BWV 532
これは初めて聴いた曲。原曲がオルガン曲のせいか、シャコンヌとは違ってロマン派的な香りは薄く感じる。
この曲と次の《トッカータ、 アダージョとフーガ》では、原曲のオルガンの響きを考えたのか、レーゼルはスタッカート的なノンガレートではなく、もう少し軽やかで柔らかい響きで、ややレガート寄りのノンレガート。
カラフルな色彩感のある音色と重層的な響きは、まるでオルガンを聴いているような気がしてくる。
レーゼルの明るく澄んだ音がこの曲にとても似合っていて、とても晴れやかで清々しい雰囲気。
何度も聴けば聴くほど素晴らしくて、どうしてこんなに澄み切った清明なピアノが弾けるのかしら。

冒頭は序奏らしく、ファンファーレ的に明るい。
前奏曲に入ると清明だけれど賛歌のような喜びに溢れた美しい旋律で、クリスマスに聴きたくなりそう。
フーガへ移行する部分は、テンポが落ちて静かに眠りにつくように。
フーガの冒頭は、子供のピアノの練習曲みたいなシンプルな旋律。とっても可愛らしくて、このごろイギリス組曲やパルティータのフーガばかり聴いていた耳には、とても新鮮。
やがて音の密度が増して、音色も響きも多彩になり、弾むような躍動感とシンフォニックに音が重なっていく。
同じような音型で構成される素朴な旋律と荘重な和声の響きは、教会建築のような揺ぎない構築感があって、このアルバムの中では一番気に入った曲。

Bach / Busoni - Prelude & Fugue in D major BWV 532 - Rösel (1986年録音)



トッカータ、 アダージョとフーガ ハ長調 BWV 564
これはキーシンのCDで聴いたことがあるけれど、どうもトッカータが好きには慣れなかったせいか、あまり記憶に残っていない。
レーゼルのピアノで聴いても、トッカータの冒頭はやっぱりう~んという感じ。途中で叙情的な旋律が出てきても、《前奏曲とフーガ》ほどには魅かれない。
アダージョの旋律は、そこはかとなく哀感が漂うとても静かで綺麗な旋律。終盤は悲愴感を訴えるように力強いフォルテに。
フーガになると、符点のついたリズム感が面白くて(すぐにカッコウを思い出した)、とっても楽しげ。子供
がうきうきして遊んでいるような無邪気で可愛らしい雰囲気。
こういう曲を聴くと、どうもすぐにクリスマスを連想してしまう。
レーゼルのピアノの響きは透明感があった明るい音色で、和音も濁りなく良く鳴っているので、《前奏曲とフーガ》と同じく、こういう清明で響きの厚みのある曲にはぴったり。


<関連記事>
バッハ=ブゾーニ編曲「シャコンヌ」

ブゾーニ/ピアノ協奏曲(男声合唱付き)

ツィンマーマン&パーチェ ~ ブゾーニ/ヴァイオリンソナタ第2番

ブゾーニ/バッハのコラール《幸なるかな》による即興曲(2台のピアノのための)

tag : バッハ ブゾーニ レーゼル

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フランツ・シュミット/ベートーヴェンの主題による協奏的変奏曲
左手のためのピアノ協奏曲の多くは、戦争で右手を失ったピアニスト、ヴィトゲンシュタインが委嘱したもの。
委嘱した作曲家は、ラヴェル、プロコフィエフ、ブリテン、コルンゴルト、フランツ・シュミット、リヒャルト・シュトラウス。(たぶんこれだけのはず)

一番有名なのは、ラヴェルの《左手のためのピアノ協奏曲》。
ラヴェルの両手で弾く方のピアノ協奏曲ほどには演奏機会が少ない。これは、まるで両手で弾いているかのように思えるほどに、左手だけで弾くには至極難曲のため。
プロコフィエフの曲も、ピアノ協奏曲全集には録音されているので、わりと聴かれているはず。(人気はそれほどないけれど)

それ以外の曲は、録音自体が少ないので、たぶん聴いたことのある人はそう多くはない。
ブリテンの《ピアノと管弦楽のためのディヴァージョンズ》は、ブリテンの才気が煌く名曲。
録音は少ないとはいえ、カッチェン、フライシャー、オズボーン、ドノホーと、ヴィルトオーソ系のピアニストが録音している。

ヒンデミットの曲は、そもそも楽譜が長い間公開されず、最近ようやくフライシャーが録音したくらいなので、これは知られていなくて当然。
でも、曲自体がそう面白く聴けるというものではないので、楽譜が出回っていたとしても、あまり状況は変わらなかったかもしれない。

ヒンデミットの曲に比べると、ずっと聴きやすいのが、フランツ・シュミットの《ベートーヴェンの主題による協奏的変奏曲》。
ベートーヴェンのスプリング・ソナタの主題をモチーフにした変奏曲だし、現代音楽的な無調ではない安定した調性音楽。
なぜかこの曲も録音が少ない。曲自体は聴きやすいけれど、ベートーヴェンの主題旋律以外は、どの変奏も強く印象に残るわけでもなく、全体的に弱音域が多くて穏やかで雰囲気が漂っているし(変奏によっては違うところもあるとはいえ)、現代にしてはあまりに古典的な風合いが強くて、目新しさがもう一つ。

《ベートーヴェンの主題による協奏的変奏曲》の録音もそう多くはなく、NMLでラグナ・シルマーの録音をたまたま発見。
それに、つい最近、好きなピアニストのマルクス・ベッカーが、シュミットの《左手のためのピアノ協奏曲》(これはさらに稀少な録音)と合わせてCDをリリースしていた。(それで、この曲のことを思い出した)
それにカルロ・グランテも録音している。グランテはなぜかややマイナーな全集ものをかなり多く録音している。他に録音がない時は重宝だけど、あまり好きなタイプの弾き方ではないのが残念。

CONCERTOS (BOREYKO, HAMBURG SO, SCHIRMER)CONCERTOS (BOREYKO, HAMBURG SO, SCHIRMER)
(2006/02/28)
Ragna Schirmer

試聴する(米amazon)


シルマーのピアノとオケは、全体的に弱音域側で演奏することが多く、緩々と穏やかなタッチ。
変奏によってはそうでもないけれど、起伏の緩さと強弱のコントラストの弱さで、全体的に平板で、印象が弱い。

この曲を聴いていると、いろんなところで、どこかで聴いたことがある旋律のような気がしてくる。
それが何の曲だったか思い出するのに意識が向いてしまって、いつの間にが曲が終っていた。おかげで2回続けて聴かないといけなくなってしまった。

I. Langsam
冒頭のオケの出だしは、どこかで聴いた気がする。もしかして、ベートーヴェンか何かの交響曲のモチーフ?
続くピアノ・ソロのアルペジオの旋律は、ドシュッシーの《アラベスク第1番》の冒頭のアルペジオの反行形のように聴こえる。
さらに続いて出てくる爽やかなロマンティク旋律は、初めはイージー・リスニングのようにも聴こえたけれど、ロマン派初期あたりのピアノ協奏曲(フンメルとかリースとか)に出てくるような、わりとありがちな旋律のような...。
この変奏は、いろんなモチーフが次から次へと、さして脈絡もなく(と思えるくらいに関連性が良くわからない)登場して、穏やかな雰囲気のままに終ってしまう。

II. Thema: Scherzo, allegro vivace
なぜかここで主題が登場する。聴けばすぐに思い出す、あのベートーヴェンの《スプリング・ソナタ》の有名な緩徐楽章の旋律。(私はあまり好きではなくて滅多に聴かないので、思い出すのに苦労した)
allegro vivaceのスケルツォのわりには、さほど躍動感がなくて、とても優しく軽やかで優雅。
原曲は、もっと歯切れ良くて元気に弾いていた演奏が多かったような気もするけれど...。
左手だけで弾くので、旋律も響きにも厚みがないせいか、伴奏のオケの音量もかなり抑え気味(元からそういう指定なのかもしれない)。
ピアノが旋律をいろいろ変形させながら弾きオケが伴奏というパターンが多い。(逆もあるけれど)

III. Ruhig fliessend
この変奏は相変わらず、ゆったりしたテンポで密やかな雰囲気。長調と短調が交錯して、薄い明暗のコントラスト。

IV. Lebhaft, doch nicht zu schnell: Tempo di bolero
Lebhaft(生き生きと)だけれど、”速過ぎないように、ボレロのテンポで”とあるせいか、やっぱりこの楽章もおとなしめ。
前半は、プロコフィエフか何かのロシア物のバレエ音楽のように聴こえる変奏。ややシニカルさが入り混じって、トリルが多いところはちょっとコミカルで不可思議な雰囲気。
後半になると、ピアノのカデンツァが、アルペジオと和音を交えてわりと華やか(でも、勢いがあまりない)。

V. Langsam
Langsamなので、ゆったりとしたテンポの静かな変奏。
終盤のオスティナートを背景にするところの変奏は、ピアノがほとんどスタッカートになっていて、やっと動きが出てきた感じ。このスタッカートの響き、どこかで聴いたことがあるような...。

VI. Sehr ruhig
穏やかでのどかな田園風景風の長調の変奏。

VII. Massig bewegt
今まで続いてきて、優しく穏やかな雰囲気と違って、短調でややコラール風の厳粛な曲。
ピアノの和声の響きがとても美しく、この変奏だけは印象的。
続いて、スタッカートで明るく軽快に主題が再登場し、主題が変形されて徐々にクレッシェンドしていく。


全体的に演奏が弱音側に寄っていて、テンポも緩やか、盛り上がるところもほとんどなく、どの楽章も穏やかで平坦な起伏の部分が多い。
変奏自体は、聴いている時は部分的に面白いところもあるけれど、聴き終わってみるとさして(というか、ほとんど)印象に残らない。
1つの変奏のなかで、さらにいろいろ展開していくけれど、一つの筋のある流れがないかのように、変形された旋律に加えて別のモチーフもパッチワークのように次から次へと登場する。

タイトルが”協奏曲”でも”交響的”でもなく《協奏的変奏曲》というところが、この曲の性格を物語っている気がしてくる。
ピアノ協奏曲にしては、ピアノがそれほど目立たず、ピアニスティックなところも少ないし、交響曲的というには、オケの存在感がなさ過ぎる。
実際、曲自体がそういう曲なのか、それとも演奏があまりに控えめ目なのか(多分、両方のような気がする)、この曲は異聴盤を聴かないと、どうもよくわからない。

変奏曲形式の左手のピアノ協奏曲といえば、ブリテンが書いた《ディヴァージョンズ》。
この曲も正確には、”管弦楽とピアノのための”変奏曲であって、コンチェルトではないし、ラヴェルのようにピアニスティックな作風ではなく、左手だけのシンプルな旋律で表現できるアイデアを追求している。
こちらは、シュミットと違って、自作主題を元に変奏が展開していく。
変奏はそれぞれ性格が明確に違っていて、ブリテン得意の組曲形式で、不協和的な響きも美しく聴こえ、閃きに満ちたところがとても刺激的で面白い現代的な曲。
同じ変奏曲と言っても、作品のもつ力の違いを強く感じるので、シュミットの《ベートーヴェンの主題による協奏的変奏曲》がほとんど演奏されないのも無理ないかと。
ヴィトゲンシュタインは、数多くの委嘱曲のなかで、ブリテンの《ディヴァージョンズ》を最も高く評価していたという。

ブリテン/ディヴァージョンズ <左手のピアノと管弦楽のための主題と変奏> の記事

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ハイドン ~ 短調のピアノ・ソナタ(2) Hob.XVI:20
ピアノソナタ第33番ハ短調 Hob.XVI:20 [ピティナの作品解説]
1771年作のハ短調ソナタXVI:20は、ハイドン中期のSturm und Drang期の代表的な鍵盤楽器曲といわれる作品。
当時、チェンバロからフォルテピアノへ移行しつつあったため、フォルテピアノを想定したのか、自筆譜には初めて多くの強弱記号が記入されているという。
芹澤尚子さんの「J. ハイドンのクラヴィーア音楽 ─フォルテピアノとの関わりを中心に─」という論文で、楽器の変遷が作曲法に与えた影響について書かれている。
たしかブラウティハムやシュタイアーがフォルテピアノで録音していたはずなので、ピアノ演奏との違いを知るには良さそう。

ハ短調というと、ベートーヴェンでは「運命」、ピアノ協奏曲第3番、悲愴ソナタ、最後のピアノ・ソナタ第32番とか、劇的で力強い主題・曲想の曲が多い。
その感覚で聴いてみたら、冒頭から物哀しい雰囲気で始まりはするけれど、展開部では速いテンポの細かいパッセージが入って緊迫感と疾走感があったりする。
ベートーヴェンの短調ほどに強い感情的なものやドラマティックさは薄くはあっても、やはり長調の曲とは随分違った雰囲気。

XVI:20を全曲楽譜どおりに演奏すると30分近く。この時代でもかなり長大な曲なのかもしれない。
楽譜は10数頁しかないのに、全てのパートにリピート指示があるので、同じ旋律が繰り返されて、聴き慣れないとかなり長く感じる。
バッハだと、リピート時に装飾音を多用して変化をつけることもできるけれど、ハイドンの場合はそういう余地はほとんどない。
全てリピートするとあまりに長いので、スタジオ録音であっても、録音時間の関係か演奏効果を考えてか、リピートを一部(またはほとんど)省略して録音しているものをよく見かける。ブレンデルのスタジオ録音では全てリピートされている。リヒテルはリサイタルでも全部リピート。
ベートーヴェンの初期のピアノ・ソナタは、もともと短くはないのに、さらにリピートがかかっていることが多くて、なんでこんなに長いんだろうといつも思っていたら、その理由がよくわかって疑問が解決。


第1楽章 Moderate
長調に転調するところがこの楽章ではかなり少なくて、明暗ではなく緩急のコントラストが主体。
冒頭の主題旋律がとてももの淋しげであまりに印象的。
展開部に入ってしばらくすると、細かいパッセージのスケールやアルペジオが多用されて、動きが激しくなり、ときに左手低音部を利かせたシンフォニックな響きも入ってくる。
展開部にはいっても、冒頭主題を織り込んだ部分が多いせいか、急速部分の力強さよりも冒頭主題の旋律と雰囲気が印象が強く残る。

リヒテルは、第1楽章冒頭はブレンデルよりも遅いテンポで、タッチも粘着的でまったりと弾いているので、内省的な雰囲気が強め。24小節目のAdajoのリタルダンドはかなりテンポを落として、たっぷり時間をかけて弾いている。対照的に長調部分や展開部の急速部分はかなり切れ良いタッチ。

SVIATOSLAV RICHTER Haydn - Piano Sonata No.33 Hob.XVI:20 I. Allegro moderato



ブレンデルは、リヒテルと比べると、全体的にやや速めのテンポで、音がシャープでタッチも軽やか。それほど物悲しさは強くなく、それよりも優美な雰囲気が漂う。24小節目のAdajoのリタルダンドはややあっさり。
長調部分や急速部分はタッチも鋭く、リズミカルで軽快。長調部分は色調がかなり明るくなって、強弱のコントラストが強く、タッチの変化がいつもながら多彩で色彩感豊か。

オルベルツは、リヒテルとブレンデルの中間のような弾き方。タッチはやや重めで柔らかい響きで、哀感はそれほど強くなく、色調は明るい。24小節目のAdajoのリタルダンドはリヒテルと同じようにゆったり。
フォルテは強めで強弱のコントラストは明確。ブレンデルよりは線が太めで力感もやや強い。弱音部分の親密感が強めで、優美な雰囲気。

第2楽章 Andante Con Moto
全体的に弱音域のゆったりテンポで、とても穏やかで優雅な雰囲気の長調。
時々挟まれる息の長いトリルは小鳥が囀るように愛らしい響き。
左右の拍子の入りをずらした(縦の線をずらした)シンコペーション的な動きが特徴的。これがスローモーションのようなカスケードに聴こえてきて、とても面白い。
ときどきバッハの緩徐楽章に出てくる旋律や和声に似ている気がする。

リヒテルはテンポが速めで、かなりさらりと弾いていて、軽やかで開放感が強い。
ブレンデルは、逆にリヒテルよりも遅いテンポで落ち着いた雰囲気で、旋律をじっくり歌っている。トリルの響きがとても綺麗。
オルベルツは、リヒテルとブレンデルの中間のようなタッチで、テンポはやや速めで、明るさと開放感に加えて、優美な雰囲気も感じさせる。最後の方はまるで夢見るような柔らかな響きでとても優しげ。

Walter Olbertz Joseph Haydn - Piano Sonata in C-minor, Hob XVI:20 (2/2)



第3楽章 Allegro
速いテンポで力強さのあるフィナーレ。
やや哀感のある冒頭主題は、すぐに長調の第2主題に変わってしまい、全体的に短調ながらも明るい色調で、フィナーレらしい躍動感。
展開部分は、冒頭主題が長調に転調して顔を出し、長調だった旋律が短調に転調したりするし、さらに、右手が三度で分散的に段階的に上行するパッセージが続いたら、次は分散和音で徐々に下行していったりと、鍵盤上を行きつ戻りつし、明暗が絶えず交錯している。

リヒテルは、第1楽章の哀感を払拭するように、歯切れの良い(リヒテルらしい、切るように鋭い)タッチと速いテンポで、フィナーレらしい力強さと推進力のある弾き方。
オルベルツは方向性はリヒテルと同じ。リヒテルほどタッチがきつくないので、響きがまろやかで多彩。力強さにも尖ったところがないほど良い感じ。色調も明るく開放感があって晴れやか。

ブレンデルは、リヒテルとオルベルツとは対照的。曲想と構成から一般的に期待するところの逆を行くようなところが面白く感じる。
テンポは上がっているけれど、どこかしら第1楽章に引きづられたように、冒頭主題を弱音で密やかに弾いていて、少し不安げな雰囲気。
長調部分も柔らかいタッチと抑えた音量で、穏やかでくすんだような明るさ。なぜか長調の方が明るさのなかに哀しげな雰囲気が漂っている。
展開部分も、最初の方は軽快に始まるけれど、同じように抑えた抑えたトーンで陰翳が濃くなり、明暗が交錯して浮き沈みつつも、つねに下へ沈み込んでいきそう。フィナーレらしい力強さや開放感はなく憂いに満ちた雰囲気で、第1楽章の方が明るく感じるくらい。

Brendel plays Haydn Sonata No.33, Hob. XVI 20 - 3. Finale (Allegro)




曲想が曲想だけに極端な違いはないのでは..思っていたけれど、やっぱり随分違っていた。
違いをかなり感じる第1楽章と第3楽章を考えると、リヒテルとオルベルツは、方向性としてはオーソドックスな行き方ではないかと思える演奏。
リヒテルの方が楽章間の性格の違いを明確に出し、フォルテ部分は鋭く切れるタッチで力感もあり、ちょっとベートーヴェン風な趣きがあるかも。
オルベルツは、リヒテルような尖った鋭さのあるタッチではないので響きもまろやか。リヒテルよりはやや穏やかで自然な趣き。一番ハイドンらしい演奏なのかもしれない。
ブレンデルは楽章ごとの性格づけに面白いところがあって、第1楽章と第3楽章は、構成上普通に期待する方向とは逆のパターンになっているんじゃないかと思えてくる。
特に第3楽章の解釈と表現はブレンデルならでは。弱音のタッチと響きが多彩で、全体的に抑えたトーンのなかで移り変わっていく表情がとても魅力的。

tag : ハイドン リヒテル ブレンデル

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クリストフ・ルセ ~ バッハ/イギリス組曲第2番
昨年夏頃から、少しずつ集めてきたチェンバロの録音。
NMLでも鈴木雅明やダントーネなど、名の知られたチェンバロ奏者の録音を多数聴けるので、手持ちのCD以上にいろんなチェンバリストの演奏を聴いている。
最近はピアノとは違った音と奏法にも慣れたせいか、ピアノとは別の楽器として、チェンバロの演奏を聴く回路が頭に中にできたらしい。

チェンバロ盤は、バッハのパルティータ、イギリス組曲、ヴァイオリンソナタの録音を収集中。
チェンバロは奏者が少なく、名盤・定番がそれほど多くないので、ピアノ盤よりも収集がかなり楽。
イギリス組曲は荘重・華麗な演奏が理想的なイメージ。
ピアノ盤だと、曲単位ではホルショフスキの5番、アンデルジェフスキの5番(ライブ)や6番。全曲盤になるとベストと思えるものがなかなか見つからない。
結局、たまたま聴いたレオンハルトの新盤が素晴らしく良くて、伸びやかで格調高く、荘重華麗と、イギリス組曲のイメージにぴったり。
その後で見つけたクリストフ・ルセのイギリス組曲も素晴らしく、こちらは速めのテンポで、躍動感とスピード感に溢れた若々しさに厳かさも加わっている。
古楽信奉者では全然ないけれど、ピアノ盤も含めて考えても、全曲盤はレオンハルトの新盤とクリストフ・ルセが今のところベスト盤。

English Suite No. 2 in A Minor, BWV 807, Prelude - J. S. Bach (Christophe Rousset)



Christophe Rousset Box SetChristophe Rousset Box Set
(2010/02/23)
Christophe Rousset

試聴する(米amazon)
イギリス組曲とフランス組曲の全曲がカップリングされて、さらに「ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハのためのクラヴィーア小曲集」が抜粋収録。この小曲集を元に、平均律曲集やインヴェンションとシンフォニアが編集されたので、なじみのある曲がたくさん入っている。
2003年~2004年の新しい録音なので、ヨハネス・リュッカースの音がとても綺麗。
フランス組曲にはイギリス組曲のような荘重さは求めていないし、曲自体にさしたる拘りを持っていないので、チェンバロでもピアノでもどちらでも聴ける。すっきりした音が好みなのでよく聴くのはピアノ盤。
全曲盤なら、ピアノ盤は柔らかく澄んだ響きがとても綺麗なガヴリーロフ、チェンバロ盤はルセ、この2つあれば今は充分。

                              

ルセのイギリス組曲の録音の一番最初は第2番。
冒頭にもってきたのはこの曲が得意なせいかもしれないけれど、これは本当に颯爽として鮮やか。6曲中一番気に入っている演奏。
イギリス組曲は最初のプレリュードの規模が大きく、ここをどう弾くかで演奏の良し悪しが決まるという人もいる。たしかにプレリュードを聴き比べると一番よくわかる気はする。

ルセのイギリス組曲はどれも気に入っているけれど、第5番のプレリュードはレオンハルトくらいの少し遅いテンポの方が好みに合っている。
この曲はピアノでもかなり速いテンポで弾く人が多くて、スピード感はあるけれど、荘重さに欠けるといつも感じるところ。
ピアノ盤で好きなのは、かなり遅いテンポのホルショフスキのライブ録音。荘重で厳粛、それにピュアなものを感じてくる。チェンバロなら、テンポがやや遅めのレオンハルトの新盤。こちらは荘重にして華麗で、どちらも格調の高さを感じさせるもの。

ルセのチェンバロは、ヨハネス・リュッカース1632年・1745年製。
昔聴いていたルイジチコーヴァのモダン・チェンバロの音がガチャガチャと金属音が煩くて、チェンバロに対する私のイメージをかなり悪くしていた原因の一つ。
最近聴いたチェンバロ録音は、どれも古楽器の復元・コピーモデルを使っているので、音はそれぞれ特徴が違うけれど、まろやかで色彩感豊かなとても綺麗な音がする。
ルセのチェンバロの音は、そのなかでもとりわけ美しく、煌くような輝き、鮮やかな色彩感、まろやかさでしっとりした響きが魅力的。
ピアノとは違う色彩感の豊かさと、倍音を多く含んだ多層的な響きには、荘厳で華麗な雰囲気が漂い、純度の高いピアノの響きとは違った美しさ。
それに、チェンバロの奏法独特のテンポやリズム感、アーティキュレーションに対する自分の好みが、ピアノ演奏を聴く時とは違っているところが自覚できるのが面白くもあるところ。
ルセの演奏は、軽快なテンポとリズミカルな躍動感があって、明るい色調で颯爽としている。
レオンハルトのような格調の高さは感じないけれど、堂々とした構えで崩れることのない安定感があって、バランスはとても良い感じ。

I. Preludeは、速いテンポと軽快なタッチで、リズム感とスピード感が良く、とても颯爽としたプレリュード。低音の響きの厳しさは、ちょっとぞくっとするようなカッコ良さ。輝きと色彩感のある音なので華やかさもあって、これは私の理想的なイメージとぴったり。

一転して、しっとりとした憂いを感じさせる響きのII. Allemande。ルバートはかけてはいるんだろうけれど、ベタベタしたところはなく、ほどよい濃さの叙情感。ややゆったりしたテンポなので、空間の中で音が流麗に響いていくよう。

III. Couranteはとても軽快でリズミカル。装飾がかなり多いのかもしれないけれど、ゴテゴテ感がなくて、とても洒落た感じ。

ゆったりとしたテンポのIV. Sarabandeは、アルペジオで弾く和音がギターのような哀愁を帯びた華麗さがあって、とても美しい響き。

V. Bourree I-IIは、かなり速いテンポで、切れの良いリズム感とスピード感が爽快。イネガル奏法を多用しているらしく、一本調子の単調さはないし、それでいてテンポやリズムが崩れた感じはしなくて、躍動感のあるブーレ。

VI. Gigueも速いテンポで、弾むようなリズム感と開放感のある明るさが素敵。声部もそれぞれの線が明瞭で、縦と横の線がぴったりと揃って、きりっと引き締まった印象。


                              

バッハのチェンバロ録音を収集するときに参考にしたサイトは<朝歌>
”J.S.Bach(バッハ)とLute(リュート)が好きな”方が開設しているサイトで、バッハの主要な曲別について、録音の評価とコメントが載っている。
《イギリス組曲》では、レオンハルトの新盤、ルセ、曽根麻矢子、渡邊順生の評価が高い。
チェンバロに詳しい人でも、推奨盤は人によって結構違う。好みの方向性が違うとハズレることが多いので、いくつかのサイトやブログの推奨盤を試聴してみると、この<朝歌>さんの評価が私の好みに一番合っていた。

チェンバロの様式別カタログ
チェンバロ製作者の久保田彰氏のホームページにあるチェンバロのギャラリー。様式別の特徴やチェンバロの写真がいろいろ載っている。
実物を見たことがないけれど、チェンバロの写真を見ると、楽器というよりも美術工芸品のような美しさ。典雅なフォルムと内部に描かれた図柄がとても綺麗。

tag : バッハ ルセ

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シンディング/ピアノ・ソナタ、組曲
ノルウェーの作曲家シンディングと言っても、知っている人はそう多くはないに違いない。
シンディングの曲を初めて聴いたのは、パールマン録音したシベリウスのヴァイオリン協奏曲のカップリング曲に入っていた『ヴァイオリンとオーケストラのための組曲 Op.10』
シベリウスのコンチェルトと同じくらいに気に入った曲で、しっかり覚えている。

五嶋みどりのシンディング解説によると、「1889年に作曲されたヴァイオリンの為の『古い様式で書かれた組曲』と1896年に作曲されたピアノ曲の『春のささやき』以外の作品は、最近ではほとんど忘れ去られています。『古い様式で書かれた組曲』が、今日でも繰り返し演奏され、広く親しまれているのは、ヴァイオリンの巨匠ヤッシャ・ハイフェッツの功績が大きく、彼がレパートリーに取り入れたことによって再び脚光を浴びたからです。」

Heifetz plays Sinding Suite in A minor - I Presto


 Heifetz plays Sinding Suite in A minor - II Adagio
 Heifetz plays Sinding Suite in A minor - III Tempo giusto

シンディングの《組曲》は、パールマンの全盛期の録音。
明るい色調でロマンティックな演奏(いつものパールマンよりは、大らかに歌いだすところをかなり抑えてはいるけれど)のシベリウスと、この技巧華やかなシンディングの『組曲』が素晴らしく良くて。パールマンの数ある録音のなかでも、とても好きなCDの一つ。

Sibelius & Korngold Violin Concertos-Sinding SuiteSibelius & Korngold Violin Concertos-Sinding Suite
(2003/07/08)
Itzhak Perlman,André Previn,Pittsburgh Symphony Orchestra

試聴する(米国amazon)



シンディングは、ピアノ協奏曲は1曲、ピアノ小品はかなり書いたらしい。今でも演奏・録音されることが少ないので、耳にする機会がほとんどない。
『春のささやき』は管弦楽曲用に編曲されていて、これは録音がいくつか。

たまたまシンディングのピアノ作品集の新譜が出ていたので聴いてみると、『ピアノ・ソナタロ短調』はドイツ風の重厚さとロマンティシズムがあって、これはわりと好みのタイプの曲。
たとえて言えば、少し軽やかで華麗なブラームスというか、ブラームスとショパンを足して2で割ったような雰囲気。

第1楽章 Allegro non troppo
重音とアルペジオを多用しているので響きに厚みがあって、がっちりとした骨格を感じさせるところは、ブラームス風。
北欧の作曲家らしい透明感があるので、ブラームスのような難渋さはなくて、音の密度が高いわりに軽やか。
ピアニスティックな華やかさと、ほろ苦いロマンティックな旋律や和声は、ショパンあたりを聴いているような気がする。

第2楽章 Andante: Vivace
とても安らかで、どこかレトロな懐かしさを感じる旋律がとても綺麗。
これはショパン風では全くなくて、屈託のないブラームス風の緩徐楽章といった感じ。

第3楽章 Vivace
ちょっとショパンのエチュード風なピアニスティックなパッセージが散りばめられいるし、時々ショパンのピアノ・ソナタ(たぶん)を連想するフレーズもあって、とっても優雅で華やか。

特に第2楽章はとても好きだけれど、全体的にロマンティクで華やかなわりに、強い印象が残らない。
旋律自体がさほど印象的ではないのと、流麗なのは良いけれど、あまり明瞭にわかる山場がなくてドラマティックさに欠けるせいか、スラスラと音楽が流れて行ってしまう感じ。

Music for PianoMusic for Piano
(2009/10/13)
Lowenthal

試聴する(NAXOS)



ピアノ協奏曲の録音はVOXやHyperionなどにいくつかあって、北欧風の爽やかさと壮大さがあるロマン派らしいピアノ協奏曲。
ところどころグリーグのピアノ協奏曲に似たスケールのパッセージが出てきたりするけれど、ピアノ・ソナタと同じで、旋律自体が印象的でなくて、こっちもさほど記憶に残らない。

Romantic Piano Concerto 42Romantic Piano Concerto 42
(2007/05/08)
Piers Lane,Andrew Litton,Bergen Philharmonic Orchestra

試聴する(独amazon)
『レーゼルの芸術 ピアノ独奏曲編』 ~ ムソルグスキー /組曲「展覧会の絵」 (ピアノ独奏版)
ロマン派系のロシアものは不得手で、好きな曲が全然思いつかないぐらいに、体質的に全く合わない作曲家と曲がかなり多い。
それでも、名の知れたピアノ作品は一度は聴いておくことにしているので、このムソルグスキーの《展覧会の絵》も以前に録音をいくつか聴いたことがある。どうも大層ドラマティックで大仰な曲に聴こえて相性がかなり悪そうだった。
最近、この曲の<Kyushima's Home Page>さんのCD比較評を見ていて、レーゼルの録音の評価がとても良かったので、ちょっと興味を魅かれたところ。
1969年録音のプロコフィエフのピアノ協奏曲第2番の2年後、1971年の録音。若い頃のレーゼルの演奏なら、この曲が違って聴こえるかも。

組曲系は曲想が曲ごとに違うし、いかにも標題音楽らしさのある曲なので、こういう時はイメージが湧きやすい作品解説を読むことに。
この曲はオーケストラが良く演奏しているし、小学校の音楽鑑賞で聴いた覚えがある。
管弦楽曲版はムソルグスキー自身の編曲ではなくて、ラヴェルやリムスキー=コルサコフの編曲だったと、初めて知ったし、ピアノが編曲版だったと思い込んでいたら、原曲がピアノ独奏曲の方だった。


レーゼルの録音は、Berlin Classicから、管弦楽曲版とピアノ独奏版が両方収録されている廉価盤が最近リリースされている。
ピアノ版のCDにカップリングされている小品(スケルツォ、子供の遊び、涙、古典様式による間奏曲、ゴパック)は曲想にバラエティがあって、たぶん珍しい録音。

Pictures at an ExhibitionPictures at an Exhibition
(2008/09/09)
Peter Rösel

試聴する(米amazon)[別盤にリンク]

レーゼルのソロ録音集BOXにも収録されている。

Works for PianoWorks for Piano
(2008/07/08)
Peter Rosel

試聴ファイルなし


ムソルグスキー : 組曲「展覧会の絵」 / Tableaux d'une exposition [ピティナの作品解説]

副題は<ヴィクトル・ガルトマンの思い出に>。39歳で早世した友人の画家ガルトマンの追悼展覧会へ行ったときの様子を音楽にしたもの。

プロムナード "Promenade"
冒頭の有名な主題は、ガルトマンの遺作展へ向かうムソルグスキーを表現したもの。
レーゼルの透明感のある音色とクリアで軽やかなタッチのプロムナードは、ゴテゴテした華やかさはなくて、清々しく爽やかな雰囲気。両手の和音の主題旋律は、フォルテでも弱音でも軽やか。
ここは、結構力を入れて華やかに弾く人が多かったような...。最初から以前聴いたイメージとはちょっと違っている。




No.1:小人 "Gnomus"
「グノームス」とは、こびとの姿をした「土の精」。
冒頭の低音域の両手ユニゾンの旋律は、不穏で不気味さが漂う。
かなり力感のあるタッチで、少しゆっくり目に重たく弾いていて、低音が良く利いている。
続く高音域の和音の旋律は、警告のような響き。
さらに、冒頭の両手ユニゾンを変形した旋律が何度もエコーし、その間に数種類のモチーフが織り込まれていき、全体的に緊張感が支配する。
終盤は、不吉さがひたひたと近づいてくるような左手低音のトレモロが入ってくる。

プロムナード "Promenade"
冒頭よりも、弱音で柔らかいタッチのプロムナードの旋律。
展覧会のなかを静かに歩きながら、絵を鑑賞するムソルグスキーの様子かな?

No.2:古城 "Il vecchio castello"
左手低音が通奏低音のように弱音でオスティナートする旋律の上を、右手が柔らかいタッチで弾く旋律は、静けさとレトロな雰囲気に満ちていて、とても綺麗。
レーゼルの澄んだ音色と柔らかい弱音と抑制のきいたさらりとした表現は、絵画の中で静かに佇む古城の雰囲気にぴったり。

プロムナード "Promenade"
冒頭よりも、華やかな音色と力強いタッチのプロムナード。
展覧会に人が続々とやってきて、にぎわっている様子なのかな?

No.3:テュイルリー, 遊んだあとの子供のけんか "Tuilleries - Dispute d'enfants apres jeux"
標題のイメージどおり、子供たちが楽しそうに遊んでいるような、軽やかで楽しげな旋律。左手が同じリズムをオスティナートする部分は動き回っている感じが出ている。
レーゼルはかなり優しいタッチの弱音で弾いていて、とても上品で可愛らしい感じ。
クレッシェンドしながら、続いて少し不安げな旋律が登場。でもけんかのようにも思えない。どちらかというと迷子にでもなった感じ。

No.4:ブイドロ(牛車) "Bydlo"
ポーランドの牛にひかれた荷馬車の音楽。
冒頭の4つの和音で弾く旋律は、音は違うだろうけれど、リストの《死の舞踏》の冒頭とそっくり(に聴こえる)。
全編左手の和音で刻むリズムと旋律が重苦しく、右手が叫ぶように苦しみを感情的に強く表していて、悲愴感が漂っている。最後はデクレッシェンドして静かに。
レーゼルのフォルテは、力を込めてバンバンと弾かずとも、低音は重く線も太く、どの音もよく鳴るので響きも厚い。こういう中味のつまった綺麗なフォルテを弾く人はとても好き。

プロムナード "Promenade"
いつもの旋律の途中から始まるプロムナードの旋律。
<ブイドロ>のライトの雰囲気をそのまま引きづったように、このプロムナードだけ短調で哀しげ。

No.5:卵の殻をつけたひなどりのバレエ "Ballet de poussins dans leurs coques"
バレエといっても、優雅というよりは、リズムの面白さとちょこまかとした動きを表現した細かいパッセージがとても軽妙。
弱音ペダルを踏んだ高音域で演奏されているので、可愛らしく軽やか。
「一瞬の風のように通り過ぎていく」と解説にあるように、小さな鳥達が隊列を組んで、足早に走り去っていくよう。

No.6:ザムエル・ゴルデンベルクとシュムイル No.6 "Samuel Goldenberg und Schmuyle"
タイトルは裕福なユダヤ人と貧しいユダヤ人の名前らしい。
2種類の違った主題は異なる階層のユダヤ人の象徴。
最初の旋律は短調のユニゾンで鋭いタッチ。やや芝居じみたような大仰で怪しげ。
2番目の旋律はリズミカルだけれどちょっと物寂しげ。
次に、2つの旋律が片手ずつ割り振られて、フォルテで一緒に演奏。まるで対立しているようなトーン。

プロムナード "Promenade"
一転して雰囲気が変わる。3番目のプロムナードと似ていて、速いテンポのフォルテで弾く華やかで高揚感溢れるプロムナード。

No.7:リモージュの市場 "Limoges, le marche"
冒頭は<卵の殻をつけたひなどりのバレエ>の旋律と少し似ている気はするけれど、ずっと活気があって、音量も大きい。
ほとんど、重音の同音連打が音を変えてリズミカルに続くので、まるで運動会のように走り回っている感じ。
中音域から高音域が多いので、重音が延々続いても、とても軽快で陽気な雰囲気。

No.8:タコンブ-ローマ時代の墓 "Catacombae - Sepulcrum romanum"
カタコンブは地下に掘られた共同墓地。
長いインターバルで、厚みのある和音がジャーンとフォルテで打ち鳴らされ、和音の間には、弱音で別の和音がいくつか挟まれて、静寂で厳粛な雰囲気。

No.8:死者の言葉をもって死者とともに "Con mortuis in lingua mortua"
<カタコンブ>からアタッカで続き、右手高音のトレモロの響きがやや神秘的で、左手は弱音の低音で厳粛で不安げな響き。
初めは短調で、やがて長調に転調して、清明な雰囲気で終る。

No.9:鶏の足の上に建っている小屋 "La cabane sur des pattes de poule"
<バーバ・ヤーガ>というタイトルが有名。
バーバ・ヤーガとは、解説によると「森の中に住み、人をつかまえ手はその肉を食する痩せた妖婆のことで、鉄製の臼に乗り、杵で漕いで箒でその軌跡を消しながら進む」。
冒頭からフォルテの和音がかなり不穏な雰囲気。
続いて速いテンポで和音による伴奏と旋律が続き、左手低音の和音が杭を打ち込むように力強く響き、右手は目まぐるしく駆け回って、まるで戦闘でもしている雰囲気。
中間部は、音を変えて弱音で同音連打するオスティナートする伴奏を背景に、静かな動きの旋律が流れ、物陰に隠れて様子を覗っているのか、それとも森の中で目に見えない敵を探し回っているようなイメージ。
再び冒頭主題が現れて、終盤にリタルダンドしてそのままフィナーレへ。

No.10:キエフの大きな門 "La grande porte de Kiev"
<バーバ・ヤガー>からアタッカで続く。
プロムナードの旋律が一部使われて、華やかで重厚な響きの重音が多様され、フィナーレらしい堂々とした楽章。
弱音で弾く部分をいくつか挟みながら、フォルテの部分はオクターブやユニゾンによる華麗なスケールや、和音主体の旋律と伴奏などが使われ、登場するたびに華やかで明るく輝き、壮大な雰囲気のエンディング。


レーゼルの演奏は、情念過剰気味の濃厚なロマンティシズムや大仰な表現の白熱感とは無縁。
テンポを揺らすことなく安定し、弱音から重音を多様するフォルテまで、一音一音を明瞭に打鍵していくので、堅牢・緻密な構築性と明晰さを感じさせるもの。
外面的な煌びやかさやドラマティクな迫力というものはないけれど、ずしっと重みのある低音から軽やかな響きの弱音まで、曲想に応じてタッチも変わり、響きも多彩でクリアな色彩感が美しい。
それぞれの曲の性格づけも明確で、濃厚ではないけれど、叙情感も豊か。過剰な装飾のない均整のとれた表現で、曲の構成や曲ごとの性格もよくわかる。
以前はこの曲に芝居じみた雰囲気を感じたけれど、静的な絵画の世界からファンタジーが薫ってくるような端正で格調のある曲に聴こえる。
ようやくこの曲を聴く回路が頭になかに出来上がったので、いろんなタイプの演奏が聴けるようになる。それにしても、レーゼルが弾く《展覧会の絵》が好き...という人はそんなに多くはないでしょう。

tag : ムソルグスキー レーゼル

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ハイドン ~ 短調のピアノ・ソナタ(1) Hob.XVI:34
ハイドンのピアノ・ソナタは60曲あまり。作品リストを見てすぐに気がつくのは、長調の曲が多いこと。数えてみたら、短調の曲は10曲ほど。
どの作曲家でも短調の方が好きな曲が多いし、長調の曲が多いモーツァルトで聴くのはほとんどが短調の曲。
ハイドンのピアノ・ソナタのイメージは”長調”。子供の時に練習したのがほとんど長調の曲だったからで(短調の曲もあったけど)、これがハイドンと疎遠だった原因の一つに違いない。

短調の曲で有名なピアノ・ソナタは、Hob.XVI:20、32、34の3曲。
ハイドンのピアノ・ソナタを抜粋したアルバムには、たいていこの3曲のどれかが収録されている。
Hob.XVI:44もたまに録音がある。
Hob.XVI:47his,2a,2eは録音が少なく、全集盤でも録音されていないこともある。
ピアノ・ソナタ以外でも、短調の曲が同じように少なく、有名な《アンダンテと変奏曲ヘ短調 Hob.XVII:6》(別名は、ピアノ・ソナタヘ短調「ピッコロ・ディヴェルティメント - 変奏曲」)くらい。


ピアノソナタ第53番ホ短調 Hob.XVI:34
この曲はソナタ・アルバムに入っているので、知っている人も多いに違いない。
録音は多数。聴き比べてみるとピアニストによって、テンポ、タッチ、ディナーミク、ソノリティがかなり違う。
ベートーヴェンの初期のピアノ・ソナタに比べると、シンプルなつくりなので、弾き方の違いがわかりやすい。昔から馴染んでいた曲なので、これだけ違いがあるととっても新鮮な感じ。

第1楽章 Presto 
ベートーヴェンの短調のピアノ・ソナタを連想されるような激しさがあるので、昔から好きな曲。
この曲を思い出そうとすると、調性は違っても同じ短調で、冒頭の音の動き方と雰囲気が少し似ている(気がする)せいか、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第19番ト短調第1楽章の主題の方が先に浮かんでくる。

やや不安げな旋律で始まる冒頭から弾き方がいろいろ。
バックハウスはPrestoという指示通り、速いテンポで直線的に切り込むような力強いタッチで、もうすぐ嵐がやってくるような不穏な雰囲気。
飾りが少なく、弱音の繊細な表現にふけることなく、質実剛健とでもいうか、まるでベートーヴェンを聴いているような気がする。
ヤンドーも似た路線だけれど、テンポが速すぎてせかせかした感じ。

Wilhlelm Backhaus plays Haydn Sonata in E minor

珍しくバックハウスが録音しているハイドンの作品は、ピアノ・ソナタが3曲(Hob.XⅥ:48,52,34)、幻想曲ハ長調Hob.XⅦ:4、アンダンテと変奏曲ヘ短調Hob.XⅦ:6。
私の持っているのは、ハイドンとバッハがカップリングされた盤(廃盤)。ソナタはXⅥ:34のみ。


オルベルツとコロリオフは、冒頭はやや弱音よりで始まり、密やかでちょっと不安げな雰囲気。
全体的に弱音で表現するところが多く、フォルテは強めと、強弱・緩急の対比が強くなり、音も綺麗で色彩感も豊か。
こういう弾き方がハイドンのピアノ・ソナタらしい気がする。
違うところは、コロリオフはテンポが速めで、シャープなタッチに透明感のある音。オルベンツはやや柔らかいタッチで音色が温か。

ブレンデルはちょっと変わった弾き方。フレーズ末尾でリタルダンドやディミヌエンドをかなり使っているので、テンポはそれほど遅くはないのに、不安が迫りくるような急迫感や、暗雲垂れ込めるような雰囲気は稀薄。
逆に、凝ったソノリティで色彩感が最も豊かな上に、旋律を美しく歌わせているので、とても優美な曲にさえ聴こえてくる。

Youtubeにあったエッシェンバッハ、チェルカスキー、シフの演奏を聴いてみると、チェルカスキー、シフはテンポやアーティキュレーションにかなり強いクセがあって、面白くはあるけれど、これってハイドン?という感じがしてくる。
エッシェンバッハは、3人の中では一番ハイドンを聴いている気はするけれど、強弱のコントラストが強く、極めて鋭角的な表現で、やっぱり個性的。

Andras Schiff- Haydn Piano Sonata Hob. XVI: 34 Presto (1)


Eschenbach plays Haydn Piano Sonata in E minor, Hob. XVI.34[complete]


第2楽章 Adagio
ハイドンの長調のアダージョを聴くと、音と音の間に”間(ま)”を感じるせいか、呟くような、語りかけるような、親密感を感じることが多い。
この曲も同じで、この感覚はモーツァルトやベートーヴェンの曲とはかなり違う。ベートーヴェンでも初期のピアノ・ソナタだと少し似た曲もあるけれど、もっと感情的な面が強い感じがする。

コロリオフの弾き方だと、その”間”が多くて、透明感のある音色と相まって、内省的な雰囲気を強い。
オルベルツは音色の温かさと柔らかいタッチで素朴な親密感が強くなるし、ブレンデルは音の色彩感が強いせいか、静けさのなかにも煌きがあって繊細で優美。
バックハウスは、やっぱりこの楽章でも速いテンポで、タッチは強めで、さらりとした叙情感。

第3楽章 vace molto
この楽章はあまり極端に違う演奏というのは少ない(と思う)けれど、それでもやっぱり違う。
バックハウスは、硬質のちょっと尖った音でリズムが軽快でも少し暗い翳りがさして、長調部分も相変わらずシャープなタッチ。
オルベルツはやや速いテンポと歯切れ良いタッチで、とても軽やか。音色も明るくすっきり。
ブレンデルも明るく軽快なタッチで、フォルテがやや強め。長調部分はほんの少しテンポを落としてタッチも重くして、落ち着いた雰囲気に。一本調子にならないように微妙な変化をつけていて、ブレンデルらしい緻密な構成だと思うところ。
コロリオフは遅めのテンポとマットな音色で、明るさと軽快さがかなり薄い。これはちょっと変わった弾き方かも。音がとても綺麗で澄みきった水のような透明感が清々しい。

昔はレコード(やCD)で聴いたことがないので、楽譜をみたイメージからバックハウスが弾いているような曲だと思っていた。(そのせいで、ベートーヴェンのピアノ・ソナタをすぐに連想するのかも)
今になって録音をいろいろ聴くと、曲想と私の好みの両方を考えてぴったりくるのが、第1楽章と第2楽章はコロリオフ、第3楽章はブレンデル。
全楽章通しで考えるとちょっと悩ましい。第1楽章はブレンデルのテンポ感が、第3楽章はコロリオフの落ち着いたタッチが、それぞれイメージと違っているので。
それでも、この短いピアノ・ソナタでこれだけいろんな解釈があると、今まで気がつかなかったものが聴こえてくるところが面白い。


ブレンデルのハイドン作品集(4枚組)
Piano SonatasPiano Sonatas
(2009/01/05)
Alfred Brendel

試聴する(米amazon)


コロリオフの2枚目のハイドンアルバム
Piano SonatasPiano Sonatas
(2010/03/30)
Evgeni Koroliov

試聴する(米amazon)

tag : ハイドン ブレンデル バックハウス コロリオフ シフ

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マルタン/小協奏交響曲
フランク・マルタンというと、名前くらいは知っていた。
でも、てっきりフランス人だと思っていたり、マルティヌーとマルタンを混同していたりと、まともに聴いたことがないスイスの作曲家。
ピアノが入っている曲があったので、フリッチャイの録音で聴いてみた曲が《小協奏交響曲》。
どんな音楽か全く予備知識なしで聴いたら、これが意外に面白くて。
1945年の作品で、楽器編成が風変わり。チェンバロ、ピアノ、ハープとオーケストラによる協奏的なシンフォニー。

Life in MusicLife in Music
(2003/08/12)
Ferenc Fricsay,Berlin Philharmonic Orchestra ,Vienna Philharmonic Orchestra

試聴する(米国amazon)[DISC-6,track8-10]



《小協奏交響曲》は、古典的な響き、無調ではないけれど現代的な和声、十二音技法を使った(ような)前衛的な雰囲気が融合した、ちょっと摩訶不思議な音楽。
どこかで聴いたような気がする和声や旋律があちこちに出てくる。
連想するのは、ブロッホの《コンチェルトグロッソ》、ブラームスの第1交響曲第1楽章の冒頭、プロコフィエフのピアノ協奏曲、シェーンベルクの《浄夜》など。何かに追い立てられているような急迫感はブラッハーのピアノ協奏曲を思い出す。
十二音技法的な音の動きをする(と思える)部分でもわりに調性感があるし、現代ものを聴きなれていればとても聴きやすい。

全体は2部構成。全体的に短調系の暗いトーンで急迫感や陰鬱な雰囲気の曲想。なぜか最後だけ長調に転調して明るく終っている。
独奏楽器3つの音色がそれぞれ明瞭に違って聴こえるので、色彩感が出ていて面白い響きに思えるところ。
バッハのピアノ協奏曲だとオケに溶け込むようなチェンバロが、この曲ではピアノと同じように響きがクリアで存在感があるし、ハープもピチカート的につまはじいた鋭角な音とグリッサンド(というのか?)的なカーテンのように敷き詰められた音とが使い分けられている。
チェンバロとハープが入ると、古典モードに気分が変わるのに、曲そのものは現代モードなので、このアンバランスさが面白い。
フリッチャイの録音だとかなり陰鬱な不安感のようなものが強く漂って、後期ロマン派的な幾分世紀末的な雰囲気。
シュトウツの演奏だと、そういう濃密な叙情感はやや薄く、シャープなタッチでより現代的。


Frank Martin : Petite symphonie concertante (1945)1. Adagio - Allegro con moto
指揮:エドモント・ド・シュトウツ、チューリッヒ室内管弦楽団(たぶん)



この曲の録音は少なく、その中で売れているらしいディスクはapexの廉価盤。
Petite Symphony ConcertantePetite Symphony Concertante
(2003/05/20)
Armin Jordan, Suisse Romande Orchestra

商品詳細を見る


第1楽章 Adagio - Allegro Con Brio
冒頭のアダージョは、すこぶる暗い叙情感漂う陰鬱な旋律。こういう響きを聴くと、現代音楽らしくてなぜかほっとしたりする。
アレグロに入ると、チェンバロが主題を弾き、次にピアノとチェンバロで二重奏。
そこにハープのアルベジオが入ってきて、この3つの音色と響きが重なるとかなり摩訶不思議な雰囲気。
アレグロの主題はシャープでリズミカル。何かに追い立てられているような急迫感とか焦燥感を感じるので、ちょっと圧迫感を覚えるものがある。
旋律自体はわかりやすく、和声にも後期ロマン派くらいの調性感はあるので、前衛色は薄い方。

続く中間部の緩徐部分は息の長い旋律が続き、陰鬱さと妖艶で不気味さが混じったような叙情感。
チェンバロの絃をつまはじくようなシャンシャンという音とハープのポロンポロンという音が古風な感じで、この曲想によく似合っている。
中世の古い教会の薄暗い回廊に迷い込んだようなイメージが湧いてくる。
徐々に和声に厚みが増して加速していき、ピアノパートも目立ち始めて、再びアレグロに戻り、主題の再現。
ラストはテンポを落として、鬱々とした叙情的な旋律が現れて、フェードアウト。

第2楽章 Adagio
冒頭のチェンバロのアルペジオの響きがちょっと神秘的な雰囲気。
それを背景に旋律を弾くハープのポロンポロンという音色が、さらに輪をかけて不可思議さを増幅。
さらにピアノが加わって、高音域で強い調子で旋律を弾き、最後はチェンバロに交代して、徐々にテンポを上げていき、突如として終る。

第3楽章 Allegro Alla Marcia
行進曲風ではあるけれど、勇壮な行進曲というより、ひたひたと黙々と不気味な雰囲気。
最初はチェンバロがゆったりしたテンポでわりと静かなトーンで旋律を弾いている。
次に入ってくるピアノがかなり目立っている。和音移動やアルペジオが多用されて、響きの厚みが出て、勇壮な雰囲気に変わっていく。
終盤になるとテンポが上がり、まるで目的地が見えて一気になだれ込むような勢い。
なぜか、最後だけは調性音楽に回帰したような長調で明るく終っているところが面白い。
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プロフィール

yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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