*All archives*

レーゼル 『ベートーヴェンの真影 ピアノ・ソナタ全集 4 』 ~ ピアノ・ソナタ第12番「葬送」 Op.26
《葬送行進曲》付きなら、ショパンのピアノ・ソナタ第2番第3楽章が有名。
私にとって《葬送行進曲》といえば、このベートヴェンのピアノ・ソナタ第12番をすぐに思い出す。
ショパンの《葬送行進曲》は、陰々滅々と暗い雰囲気がお葬式を連想させるので、どうも好きになれない。
ショパンのピアノ・ソナタ第2番も、<葬送行進曲>の後の終楽章は、ベートーヴェン同様トッカータ風。
ベートーヴェンとは全く違った曲想で、摩訶不思議で空間に拡散していくようで、中心が空洞のような曲。木枯らしがあたり一帯をヒューヒューと舞って、一瞬のうちに通り過ぎていくような気がする。


レーゼルのライブ録音は2009年10月の東京・紀尾井ホールのリサイタル。カップリングは、第19番、第4番、第12番《月光》。

ベートーヴェンの真影 ピアノ・ソナタ全集4ベートーヴェンの真影 ピアノ・ソナタ全集4
(2009/12/09)
レーゼル(ペーター)

試聴する


ピアノ・ソナタ第12番 変イ長調「葬送」/ Sonate für Klavier Nr.12 As-Dur Op.26[ピティナの解説]

今までのピアノ・ソナタとは違った楽章構成が特徴的で、第1楽章が変奏曲、第2楽章がスケルツォ、第3楽章が葬送行進曲、第4楽章がトッカータ風のフィナーレ。

第1楽章 Satz Andante con variazioni
ピアノ・ソナタで変奏曲楽章のある曲といえば、第30番(第3楽章)。第32番の第2楽章も切れ目なく変奏曲で展開されている。
ヴァイオリンソナタでも変奏曲楽章があるのが、第1番、第6番、第9番、第10番。
ベートーヴェンの変奏曲は、ブラームスとは違って、変形されていても主題旋律とのつながりがわかる明瞭さがあるので、展開がわかりやすい。

第1楽章は、主題と5つの変奏で構成。
主題の穏やかで清々しい旋律が格調高くてとても綺麗。
第1変奏は、主題の雰囲気をそのまま受け継いだようにアルペジオがとても優美。
第2変奏は曲想が一転。重音主体で左右のリズムをずらしているので、重音ばかりなのにとても軽快。
短調に転調して8分音符主体に変わった第3変奏は重音の響きが重々しい。
長調の第4変奏になると、どこかしら諧謔で軽やか。
第5変奏は両手の八分音符の三連符や分散和音がとても優美。

レーゼルは少し速めのテンポ。木質系の温かな響きが伸びやかで、レガートはとても柔らかくて綺麗で、さらりとした語り口が優しく和やか。
和音は重たくない切れ良く軽快なタッチ。しっかりと芯のある重みのある響きがよく鳴っていて、レーゼルらしい充実した響き。

第2楽章 Satz Scherzo and Trio: Allegro molto
この曲の中では一番好きな楽章。
冒頭の跳ね上げるように上行する三度のスケールが粋な感じがするし、続いてデクレッシェンドするオスティナート的な音型は、次のステップに向けて息を整えているような雰囲気。
次にくる主題とシンコペーションの伴奏的な旋律はとても颯爽としている。聴いていてとても爽快。

レーゼルは軽快なテンポで、打鍵は一音一音しっかり。丁寧なタッチで、力強く堂々としたスケルツォ。
mfで入る第2主題は、左手のオクターブのsfやリズムが力強くて、左手がよく響くレーゼルらしい弾き方。
レーゼルの弾き方も好きだけれど、意外なことに(?)レーゼルより颯爽としているのが旧盤のアラウ。

アラウにしては珍しく、レーゼルよりもずっと速いテンポをとり、アクセントをよく効かせたリズミカルでシャープなタッチ。いつものアラウとはちょっと違って、軽快なのに力強く切れ味の良いこと!
47小節目から始まる右手の旋律は、テンポは速いけれどやや力を抑えぎみのタッチで、ちょっとダンディな趣き。
壮年期のアラウらしい力強さと躍動感もあって、こういうアラウのベートーヴェンを聴くのは楽しい。

Arrau - Beethoven sonata no.12 op.26 (II) - Scherzo (Allegro molto)


第3楽章 Satz Marcia funebre sulla morte d'un eroe
有名な《葬送行進曲》。
短調なので悲愴感はあるけれど、鬱々とした重苦しさはなく、厳粛で格調のある高貴な雰囲気が漂い、英雄を葬送するような情景が浮かぶ。
レーゼルの弾き方も、遅いテンポやフォルティシモなどで悲愴感や重苦しさをことさら強調することはせず、インテンポでわりと淡々としたタッチなので、余計にそう感じる。

エンディングでは、なぜかムソルグスキーの「展覧会の絵」の<古城>を連想。
低音のオスティナートや和声の響き、静寂な雰囲気がよく似ているせい? 
<古城>もレーゼルの録音で聴いているので、音色やタッチに似たところがあるのかも。

第4楽章 Satz Allegro
トッカータ風のフィナーレ。
この楽章に関する注釈で、”クラマーのような練習曲”と書かれているものがいくつかあるらしい。
確かに指回りが良い人なら、メカニカルな細かなパッセージが続くので、練習曲風に聞こえる曲ではある。
ラストは、徐々に下行しつつデクレッシェンドしてピアニッシモで収束。肩から力が抜けていくような感じがちょっとユーモラスかも。

バドゥーラ=スコダの第2楽章の解釈では、表面的にはクラマーに似た響きがあっても、驚くほどの技術的な難しさを除けば、練習曲などではなくて、葬送行進曲に対するに自然で味わいのある反歌。
『アラウとの対話』のなかで、クラマーのように弾くピアニストが多いとアラウも言っている。
アラウはゆったりしたテンポで弾いている。なぜかというと、この終楽章は、”新たな世代の発生を表象”し、”死のあとに生命の流れの再出発”であって、できるだけ遅いテンポを保つことで、葬送行進曲と終楽章との脈絡に意味が生まれるという。

レーゼルは、アラウと正反対の速いテンポで、メカニックな正確さと打鍵の切れの良さでとても機動的。
といっても、練習曲風なメカニカルな感じはなく、低音がよく響いてリズミカルで、ダイナミックで生き生きとした雰囲気。
特に、43小節目から始まる右手の下行スケールと、左手オクターブの力強いシンコペーションのリズムの組み合わせがダイナミック。同じ音型でも、冒頭部よりも再現部の方がずっと力強いタッチ。

主題部や中間部でsf、f のスタッカートのオクターブが強調されて、少し荒々しい跳ね上がるように弾いている。レーゼルらしくない(?)気がしないでもなくて、ちょっと面白いタッチ。
速いテンポであっても、全然練習曲風にはならず、力感と躍動感は充分。ダイナミズムと推進力を感じさせる終楽章。

tag : ベートーヴェン レーゼル

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
バッハ/G線上のアリア(チェロ&ピアノバージョン)
音楽療法について興味があって、少し情報を集めているところ。
音楽免疫療法を専門にしている和合教授の説明では、”脳内エネルギーの90%は聴覚から送られており、聴覚シグナルを送る蝸牛管内のコルチ細胞の分布は、低周波音1 に対し、高周波音は240 倍の分布率があるため、高周波音により脳活性が行われると言われている。”なのだという。
(音楽療法が耳鳴りに効くといっても、”治る”というわけでは、誤解しないように!)

聴覚過敏な人は、ピアノやヴァイオリンの高音の曲が、耳にキンキンと響いて痛いという。
高周波が聴覚細胞を強く刺激しているせいかもしれない。
それなら、逆に低音(低周波数)のチェロやホルンは耳に優しいに違いない。
ということで、チェロで弾く名曲を探してみました。

チェロの名曲というと、私がすぐに思い浮かべるのは、ブラームスのワルツ第15番。(他にも、バッハの無伴奏とか、名曲がたくさんあるのでしょうけど)
ブラームスのワルツ集は、普通はピアノソロ(連弾もあり)で弾く曲。
はるか昔に見た『トスカニーニ~愛と情熱の日々~』という映画のなかで、主人公の若きトスカニーニ(トーマス・ハウエル)が、南米のリオの街角で、この曲をチェロ独奏で子供たちに聴かせるシーンがあった。
この演奏があまりに印象的だったので、それ以来、この曲がしっかり記憶に刻み込まれている。
でも、ブラームスのワルツのチェロ独奏は、もしかしてあまり多くはないのかも。(Youtubeに良いものがなかったし)

それなら、バッハの《G線上のアリア》をピアノ&チェロで。
昔から名曲だったけれど、ケーゲルの東京公演のライブ録音で聴いて以来、とても好きになった曲。
昔からチェロは聴くのが苦手な楽器の一つ。でも《G線上のアリア》をチェロで聴くと、太く深く沈み込むような響きは美しく包容力があり、耳にもとても優しい。
チェロの響きも美しいけれど、それ以前にこの曲はいつ聴いてもやっぱり名曲です。

Air on a g string - with Cello (cello:Yoko Hasegawa)




古楽器演奏バージョン。演奏はSan Francisco Early Music Ensemble Voices of Music。
J.S. Bach: Air on the G String High Definition Video Voices of Music

tag : バッハ

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
耳鳴り治療のための音響・音楽療法トピックス ~ 音楽療法とクラシック音楽
音楽療法
モーツァルトが精神的なヒーリング効果が高いとよく言われている。
私には、モーツァルトより、ベートーヴェン、バッハ、ブラームスの方がずっと効果が高いんだけど...。
モーツァルトに関しては、雰囲気的には確かにそう思うけど、医学的な根拠は?と思って調べてみると、それなりに根拠はあるらしい。

免疫音楽医療が専門の和合教授の解説では、
”モーツァルトの音楽には、3500ヘルツから4500ヘルツの周波数帯の音が豊富にバランスよく組み込まれていると同時に、それらがシンプルな一定の音の波形で繰り返され、規則性と不規則性の調和がとれたゆらぎ効果があり、さらに高周波音と高周波音がぶつかりあって、さらに高い周波数になるという倍音効果もみられるのです。ある曲には 20000ヘルツという非常に高い周波数も存在して、大脳を刺激しエネルギーを与える曲もあるほどです。”
(出典:労働者の健康と音楽療法

教授によると、脳内エネルギーの90%は聴覚から送られており、聴覚シグナルを送る蝸牛管内のコルチ細胞の分布は、低周波音1 に対し、高周波音は240 倍の分布率があるため、高周波音により脳活性が行われると言われている。


周波数
フランスの耳鼻咽喉科医アルフレッド・A・トマティス博士の研究では、音が耳や脳に与える影響について、音の周波数と背骨の関係をあらわした「トマティス理論」というのが有名。

「トマティス理論」によると、音の周波数と脊髄の対応関係は以下の通り。

頭頂 8000ヘルツ
延髄 4000~6000ヘルツ
頚椎 2000~3000ヘルツ
胸椎 750~2000ヘルツ(胸:1500、胃:1000)
腰椎 250~500ヘルツ
仙椎 250ヘルツ

そういえば、腰痛治療にはたしか低周波が使われていたのを思い出した。
モーツァルトの曲に含まれる3000ヘルツの高周波音は、基本的には、頚椎から上の延髄を非常によく刺激すると言われる。
例えば、耳鳴りに関して言えば、延髄を効果的に刺激して、副交感神経を活性化し、血液の流れとリンパの状態を改善したり、内耳の膜にある有毛の働きを回復したと、考えられるらしい。
トマティス博士によれば、モーツァルト以外に、グレゴリオ聖歌や童謡にも同じ効果があるという。

楽器別の周波数帯域を見てみると、最も周波数が広く高域まで伸びているのがパイプオルガン(1/fゆらぎも多い楽器)、次にピアノ。
周波数域が狭くても、周波数が高いのは、ヴァイオリン、ピッコロ、フルート。

図:楽器別の周波数域
2KHz~5KHzが耳につく帯域で、音のシャープさが出る。
楽器としては、ピアノ、ヴァイオリン、ピッコロ、フルートの高音域。
聴覚過敏の場合には、この音域はかなり耳にキンキンと響くため、3000Hz以上の周波数が耳に良いとは限らない。


倍音
パイプオルガンは倍音が豊かで、鍵盤1つで5音が別個、または一斉に鳴らすことができる。
(参照サイト:鳴るほど楽器解体全書 パイプオルガンの構造(ヤマハ)
他に、チェンバロ、弦楽器、ホルンなども倍音が豊か。ピアノは倍音が少ないので、逆に音の純度が高いという。


1/fゆらぎ
1/fゆらぎとは、自然界にあまねく存在する基本のリズム。
1/fゆらぎが規則性との不規則性ちょうど中間の存在であって、その中途半端さが人間にとってとても心地よいという。

1/fゆらぎの多い音楽の代表は、モーツァルト。他にバッハ、ハイドンなどのチェンバロ・パイプオルガン曲等の教会音楽に近い楽曲。
1/fゆらぎの多い楽器は弦楽器。バイオリンのほか、より音域の広いハープやシタールも。1/fゆらぎの宝庫はオーケストラによる管弦楽曲・交響曲。

(参照サイト:1/fゆらぎの歌手


《目覚めよ、とわれらに物見らの声が 呼びかける》
バッハのコラールが原曲のオルガン曲《目覚めよ、とわれらに物見らの声が 呼びかける》BWV645。
どの程度上記の3条件を満たしているかはわからないけれど、この曲を聴くと明るく晴れやかな気分になれる。クリスマスの朝の清明な雰囲気にぴったり。

いつもは、ブゾーニかケンプの編曲版でピアノ演奏で聴いている曲だけど、今回はオルガンで。
有名なトッカータのオルガンの響きは厳粛で耳に突き刺さるようで好きではないけれど、トン・コープマンのオルガンの響きはとても心地良い感じ。


Bach - Choral Prelude ''Wachet auf, ruft uns die Stimme'' BWV 645


tag : 音響・音楽療法

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
レーゼル 『ベートーヴェンの真影 ピアノ・ソナタ全集 3 』 ~ ピアノ・ソナタ第21番 「ワルトシュタイン」Op.53
ワルトシュタインは、長らくアラウのスローテンポの演奏を聴き慣れていたので、テンポが速い普通の演奏を聴くと、どうも居心地が悪い。
特に第1楽章のテンポについていけない。この楽章は、最速記録競争でもやっているのかと思えるほどに、どのピアニストもかなり速い。(といっても、Allegroなので、本来速く弾くのが普通だけど)

レーゼルのライブ録音のワルトシュタインのCDを手に入れたので、アラウのスローテンポのワルトシュタインを一時的に記憶から追い出して、速いテンポの演奏ばかりとっかえひっかえ聴いているとすっかり耳も慣れたらしい。
こういう快速ワルトシュタインもやっぱり良いなあ...とすっかり思い直してしまった。

第1楽章の録音時間を調べてみると、グルダ9'26"、ポリーニ9'58"、ゼルキン(ライブ)10'35"、ポミエ10'37"、ケンプ10'55",ギレリス11'07",ブレンデル11'20"(新盤。2度目の全集は10'46")、アラウ11'45" といったところ。
おそらく過去(と未来)のどの演奏よりも最速であろうグルダは、あまりに速過ぎて慌しく落ち着きなく聴こえる。(グルダ自身も、”ある一線を超えて”速すぎたテンポだったと録音しなおすことも考えたほど)
ポリーニの1988年の録音が速さの限界という感じがする。さすがに若い頃のポリーニは、凄く速いけれど、タッチも拍子も何も全く崩れることなく堅牢。
どうも私のテンポ感に合う演奏時間は、10分台半ばから11分くらい。となると、ブレンデルやギレリス、ポミエ。レーゼルのライブ録音も10'39"。
いろいろ聴いた快速テンポのワルトシュタインのなかでも、レーゼルの演奏にはすっかり聴き惚れてしまう。
《月光》の第3楽章や《熱情ソナタ》と同じく、こういう力感豊かでダイナミックな曲は、速いテンポと安定したテクニックで、美しいソノリティと余計な装飾のない演奏が好みにぴったり合うらしい。

ベートーヴェンの真影 ピアノ・ソナタ全集3ベートーヴェンの真影 ピアノ・ソナタ全集3
(2009/12/09)
レーゼル(ペーター)

試聴する
2009年10月、紀尾井ホールのリサイタルのライブ録音。カップリングはピアノ・ソナタ第5番,第16番,第10番。

ピアノ・ソナタ第21番ハ長調《ワルトシュタイン》/ Sonate für Klavier Nr.21 Op.53[ピティナの作品解説]

第1楽章 Satz Allegro con brio
アラウの演奏が、スローテンポでゆっくりと絵巻物を見るような描写的な語り口が優美で女性的だとすると、レーゼルはがっちりと安定した構成感とインテンポで一気に弾き進み、力感とスピード感のある男性的なタッチ。
といっても、力で押していくような一本調子の単調さはなく、硬軟とりまぜたタッチやペダリングで、ソノリティが多彩。弱音の柔らかな(しなしなしていない)優美さも美しく、安定したメカニックとこれだけ音響的に充実した響きのワルトシュタインはそうそう聴けないかも。

レーゼルの音はブレンデルのような煌きのある色彩感はないけれど、木質感のある落ち着いた音色で、どの音も粒立ち良く鳴っている。
若い頃の録音を聴くと、蒸留水のような透明感のあるクールな音色だったけれど、このライブ録音シリーズでは、濁りがなく木質的な暖かみのあるやや丸みのある音色なので、とても心地良く聴こえる。
タッチやペダリングによって、響きに透明感や重層感が出て音響的にいろいろ変化していくので、この速いテンポで一気に弾きこんでいくのに、全然単調さを感じない。
レーゼルはいつも左手側が強めに出てくるので、伴奏部分でも左手側の旋律がリズミカルでよく響いて存在感も強く、重みのある安定感がある。
強拍部分がよく響くせいか、それが繋がっていくとトレモロが拍子を刻むようなキビキビとしたリズム感があったり、上行・下行するアルペジオでは一つの声部として副旋律のように聴こえてきたりする。

全体的に緩徐部分でもそれほどテンポを落とさず、第2主題dolceもタッチは軽やかで柔らかいけれど、しなしなせずに力強い感じ。
90小節くらいから、右手が高音部と低音部の間を移動して旋律を弾くところは、2つの声部が対話しているような感覚。
167小節などで、デクレッシェンドしてフェルマータになる部分は、フェルマータ直前の休符がちょっと長め。肩の力が急にすっと抜けていって一休みして、再び、速いテンポで疾走しはじめていくところが、面白い感覚。
レーゼルのアルペジオの重なる響きは、どの曲を聴いても美しく、細かく音が詰まったパッセージでも粒立ち良い音が滑らかに繋がっていくのが颯爽としていて、聴いていてとても気持ち良い。終盤のコーダも、テンポが上がって、勢い良く滑らかに駆け上がっていく右手の上行スケールが爽快。
こういう一気に駆けぬけるような疾走感と緊張感のあるワルトシュタインを聴くと、気分もすっきり晴れやか。やっぱり良いものです。

ベートーヴェン/"ワルトシュタイン"第一楽章 演奏:ペーター・レーゼル(ピティナ音源配信/CD録音より)




第2楽章 Introduzione. Adagio molto - attacca - Rondo. Allegretto moderato
やや速めのテンポで表現もあっさり。線が太めで落ち着いた音色もあってか、陰翳が薄めで、深く沈潜するという感じはなく、暖かめの明るい色調で穏やかな雰囲気。

第3楽章 Rondo. Allegretto moderato
ppで弾く柔らかい響きと、f,ff,sf の力強いタッチのコントラストが鮮やか。
ロンドの冒頭はやや太めの柔らかい響きがふんわりとまろやか。その上を流れる右手の高音の旋律は、鐘のように優しい響き。
続いてf になると、弾力のあるタッチのフォルテの響きがよく響き、左手がスケールで上行するところのクレッシェンドがダイナミック。
ff で弾く両手の和音の響きは深く重みがあり、アルペジオも滑らかにうねるよううで、力強い打鍵と相まって、重層的な響きの安定感がとても良い。

コーダのPrestissimoは、インテンポでかなり速い。
キビキビと歯切れ良い弾力のあるタッチで、グリッサンドによるオクターブのスケールはとても滑らかなレガートなのに音も粒立ち良く聴こえる。
グリッサンドの弾き方がちょっと面白い。途中で一つだけ四分音符になっているG音のオクターブをアクセントをつけるように強く響いている。それが、後に出てくる和音と繋がって一つの旋律となって、これがリズミカルで気持ちの良い響き。他のピアニストは、このオクターブをこんなに強い音で弾いていないので、レーゼル独特のタッチ。
レーゼルの解釈だと、ベートーヴェンが使っていた時代のピアノとは違って、このグリッサンドを鍵盤の重い現代ピアノでppで弾くのは無理なので、メゾフォルテで弾く方が良いと言っていたし、実際そうしていた。

トリラー部分も速いテンポのまま、トリルが煩くならない程度に一音一音よく響き、ラストはさらに加速して軽やかで厚みのある和音で堂々としたフィナーレ。
過剰・大仰な表現をとらず、かっちり堅固な構造感とほどよい叙情感のある、力感豊かですっきり引き締まったレーゼルらしいワルトシュタインでした。

                         

レーゼルがこのワルトシュタインを弾いていたリサイタルは、NHK-BS放送のクラシック倶楽部でも放映していた。
その録画でレーゼルの演奏姿をみると、上半身のぶれが少なく、手の肘も開かずに、ペダリングもとても静か。体全体の姿勢が安定して、折り目正しい性格が姿勢にも現れているような...。
手の形を見ると、手の甲があまり動かず、指もあまり高く上げず、ややフラット気味の手指の形から打鍵している。
フォルテでも全然力まずに、軽いタッチで弾いている。それで力感・量感のある響きになるのだから、指の力がかなり強いのだろうか。
動きに無駄が無く、余計な力も入っていないので、速いテンポでも打鍵ミスは少ない。
打鍵後に指を上げるスピードが速い上に、低いポジションから打鍵するので、音が明瞭、粒の揃ったレガートになっている。
第3楽章のグリッサンドもほとんど力を入れていないような軽やかさ。それでも、G音のオクターブは深めに打鍵してしっかりアクセントがついているし、なんて滑らかで軽やかな綺麗なグリッサンドなんでしょう。
こういうタッチだからこの演奏が可能になるのかと、すっかり納得。

アンコールに1曲だけ弾いたのは、同じくベートーヴェンの「7つのバガテル作品33」の第2曲。
拍手が延々と続くので”しようがないなあ~、じゃあ1曲だけ”みたいに首をちょっと振る仕草をして、ピアノの前にさっと座った姿がちょっとユーモラス。
初期のパガテルはブレンデルのPhilips盤で聴いたのに、あまり記憶に残っていない。
レーゼルが弾いたバガテルはリズムが面白くて、とてもチャーミング。他のバガテルも聴いてみたいなあと思わせてくれたアンコールでした。

続きを読む

tag : ベートーヴェン レーゼル

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
ケンプ ~ ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第22番
ケンプの弾くベートーヴェンは、どれもアーティキュレーションが独特。
時に強いテンペラメントが噴出したりする(ように思える)し、自然な趣きはあまり感じないけれど、解釈の面白さはとても魅力的。

ピアノ・ソナタ第22番のケンプの録音は第2楽章が素晴らしくて、こんなに個性的で面白い演奏ってなかなかないのでは?と思えるくらい。
くっきりと浮かび上がってくる持続音や、線が細く色彩感豊かな繊細な高音、薄い絹が幾重にも重なったようなレガートな響きがとても綺麗。
いつものケンプらしく、急激に変化するディナーミクで起伏が大きく、隠れた音や音型やくっきりと浮かび上がってくる。
作曲家でもあるケンプらしいベートーヴェンの演奏は、楽譜上の音符や音符の間に隠された意味を解読していくように思えてくる。まるで古文書の謎ときのような意外性と発見があるのが刺激的で、ちょっとスリリングかも。

ケンプの全集録音は、モノラルとステレオの2種類。
ステレオ録音版ははるかに音が美しく、絹のような響きがファンタスティック。(短時間の試聴ファイルでもケンプの音の美しさがよくわかる)


Piano Sonatas 1-32Piano Sonatas 1-32
(2008/11/18)
Wilhelm Kempff

試聴する(英amazon)

tag : ベートーヴェン ケンプ

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
アラウ ~ ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第22番
ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第22番を初めて聴いたのが、アラウの旧盤の録音。
軽快なテンポと滑らかなタッチのレーゼルの演奏と比べると、ゆったりしたテンポで訥々とした語り口。
切れ味の良い洗練されたとはちょっと言えないけれど、なぜか和んでしまう。

第1楽章は、ゆったりしたテンポと、一音一音を確かめていくかのように、コツコツしたタッチで丁寧に弾いていくので、柔らかなレガートが美しいレーゼルとは違って、とても素朴な感じ。
古き良きロマンティシズムというのか、アラウ独特のコクがあって、遠い過去を懐かしんで回想しているような趣き。
第2主題の重音移動は、感情が噴出するような力強いタッチ。輝かしい思い出が溢れて出てくるよう。
再現部で主題旋律が装飾的に変化していくところも、再びゆったりとしたテンポで語りかけるように弾いていく。言葉で表現しにくい叙情感のあるトリルがとても素敵。
第1楽章の穏やかで深い味わいは、本当にアラウならでは。


Arrau - Beethoven sonata no.22 op.54 (I) - In tempo d`un Menuetto




第2楽章は、ややテンポが遅めで少し重たいリズム。アラウらしい太めの響きで、この楽章も音がコツコツ粒立ち良く聴こえる。
アーティキュレーションとソノリティに凝ったケンプやブレンデルの演奏には洗練されたものを感じるけれど、それと比較すると、やっぱりアラウは飾り気がなくて朴訥とした印象。
面白みがないといえばそうかもしれないけれど、聴いていてほっと安心できるような飾り気のなさと親近感を感じてしまう。

Arrau - Beethoven sonata no.22 op.54 (II) - Allegretto - Più allegro




Complete Piano Sonatas & ConcertosComplete Piano Sonatas & Concertos
(1999/11/09)
Claudio Arrau

試聴する(米国amazon)

tag : ベートーヴェン アラウ

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
アルヴォ・ペルト ~ Spiegel im Spiegel
随分昔、グレツキの《悲しみの聖母》が流行った後に注目され始めたのが、エストニアの作曲家、アルヴォ・ペルト。
クレーメルとキース・ジャレットも参加したECMの『Tabula Rasa』を偶然聴いてかなり気に入ってしまったので、ペルトのアルバムは随分集めたものだった。

ペルトを久しぶりに聴きたくなったのは、”Tinnitus”(耳鳴り)が、ペルトの”Tintinnabuli”(ティンティナブリ様式)を連想させたため。
語源が同じだろうというのは推測がつくけれど、調べてみると

耳鳴りを表す”Tinnitus”は、ラテン語の「tinnītus」(鳴る:ringing)に由来した語。
また、ラテン語の「tinnire」(輪)が語源としているのは、シーメンスのホームページ。

ペルトの作曲様式である”Tintinnabuli”は、ラテン語の”tintinnabulum”(鐘)に由来している。

※英語・ギリシャ語・ラテン語などの祖語である印欧語では、”ten”(張る)は、太鼓の皮を張って音を調べること。英語でもten ton tun tin tain の語形を持つものは「音の調子、張る」という意味を持つ。(参照:http://homepage3.nifty.com/fujikawa/007C.html)


”Tintinnabuli”はペルト独自の作曲様式。
初めてその様式を使って作曲した作品が《Fur Alina》(1976) と《Spiegel Im Spiegel》(鏡の中の鏡)(1978)。
”tintinnabuli”の説明は”Akihiko Matsumoto Web”の「Tintinnabuli / ティンティナブリ様式」が詳しい。
聴けばわかるように、単音の3声によるハーモニーで構成されたとてもシンプルな曲。
ミニマル的ではあるけれど、機械的な単調さは全くなく、メロディと和声の美しさと静謐な雰囲気は、ロマン派音楽よりも叙情的にさえ感じることがある。

《Spiegel Im Spiegel》(鏡の中の鏡)というと、ミヒャエル・エンデの『鏡の中の鏡 -迷宮-』をすぐに思い出したけれど、この2作品の間には全く関連性はありません。
《Spiegel Im Spiegel》の録音でポピュラーなのは、ピアノ&ヴァイオリンのバージョン。ピアノ&チェロのバージョンもあり、CDには両方収録されている。
どちらのバージョンも、心洗われるようなシンプルで透明感のあるメロディと和声の響きが美しく、この曲を聴くと気持ちがすっかり落ち着きます。

Arvo Part - 'Spiegel im Spiegel'



ペルト: アリーナペルト: アリーナ
(2000/02/23)
Alexander Malter, Dietmar Schwalke, Sergej Bezrodny

試聴する(米amazon)


tag : ペルト

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
レーゼル 『ベートーヴェンの真影 ピアノ・ソナタ全集 5 』 ~ ピアノ・ソナタ第22番 Op.54
ベートーヴェンのピアノ・ソナタは全部で32曲。
そのうち、有名なのは7大ソナタといわれる標題付きの曲(悲愴、月光、熱情、テンペスト、ワルトシュタイン、テレーゼ、告別)。
後期ピアノ・ソナタは、作風がかなり変わっていった時期の第28番~第32番。32曲のうち最大規模のハンマークラヴィーアは第29番。
ほかに標題の付いた曲といえば、第12番<葬送>、第15番<田園>、第18番<狩>。第4番は<グランドソナタ>、第13番は<幻想曲風ソナタ>とも言われる。
標題といっても、ベートーヴェン自身がつけたものは少ないけれど、さすがに定着している標題だけあって、曲のイメージに不思議とぴったり。

一般的によく聴かれているのが、7大ソナタと後期ソナタ。
他の標題曲は知名度が少し低くなって(<葬送>は有名だと思うけれど)、標題なしのピアノ・ソナタになると聴かずじまいの人も多いのではないかと。
ピアノを習ったことのある人なら、たしか第1,9,10,19,20番は、全音などのソナタ/ソナチネアルバムに収録されているので、有名曲ではなくても、知っている人は結構多いはず。

7大ソナタ&後期ソナタ以外の曲でも、聴いてみると素敵な曲が多い。
初期のソナタも、初めて聴いたときは、似たような曲想でリピートが多くて長いな~なんて思っていたけれど、1曲づつちゃんと聴けば、どの曲・楽章もそれぞれ個性があって、魅力的。
標題が付いていない一見地味めな曲でも、標題付きの曲と同じくらい好きな曲もできたし、全集のどの曲もそれぞれ個性的できらきらと煌きがあって、やっぱりベートーヴェンのピアノ・ソナタは良いなあと改めて思います。

ベートーヴェンのピアノ・ソナタは楽章構成が数パターンあって、2楽章構成の曲は中期以降の作品になっている。(第19,20,22,24,27,32番)
そのなかで、第22番は《ワルトシュタイン》と《熱情》と大曲に挟まれている上に、2楽章で演奏時間も短い曲なので、ピアノ・ソナタ全集を持っていない人だと(持っている人でも)、あまり聴いたことがなさそう。

第22番は、一度聴いただけでとっても気に入った曲。
同じ2楽章構成の《テレーゼ》よりもはるかに好きで、短い曲なのにピアニストによってかなり違った弾き方をしているので、聴き比べるのがとても面白い曲です。

第22番は、レーゼルの『ベートーヴェンの真影 ピアノ・ソナタ全集』のVol.5に収録。
2010年月10月1日~2日の東京・紀尾井ホールのリサイタルのライブ録音。カップリングは、第3番、第15番《田園》、第26番《告別》。
ベートーヴェンの真影 ピアノ・ソナタ全集5ベートーヴェンの真影 ピアノ・ソナタ全集5
(2010/12/22)
レーゼル(ペーター)

試聴する


ピアノ・ソナタ第22番ヘ長調 / Sonate für Klavier Nr.22 F-Dur Op.54[ピティナの作品解説]

パウル・バドゥーラ=スコダ著『ベートーヴェン ピアノ・ソナタ 演奏法と解釈』の作品解説がちょっと面白い。
第1楽章は、音楽学者ローゼンベルクが解釈していて、”おとぎ話の美女と野獣”を引用しているという。
ドイツでは、魔法にかかった竜とそれをやさしい心で救った少女の物語り..になる。
メヌエットは愛すべき少女の象徴で、だんだん装飾を施されてより豊かに愛らしくなる。
オクターブは竜の象徴で、荒れ狂った後に竜が疲れている様子が視覚的に。
最後は3連音符が2連音符になって、竜は王子に戻る、という展開を表現しているという。


第1楽章 Satz In tempo d'un Menuetto
右手側の主題旋律が装飾的に変化していくところがとても美しい曲。
レーゼルの冒頭の入り方は、ゆったりととても和やか。柔らかく伸びやかで暖かみのある響きがとても綺麗。
優美な第1主題とは対照的に、両手ともオクターブの和音で動く第2主題は力強いけれど、軽快。
再現部での第1主題の装飾的な旋律の動きが、少し変奏曲風で、とても流麗。
レーゼルの柔らかいタッチのシンコペーションのリズムやオスティナートが、まるで軽やかなステップでダンスをしているように優美。上行スケールもキラキラと煌きがあって、宝石の粒がコロコロと転がるよう。

第2楽章 Satz Allegretto
バドゥーラ=スコダの解説によると、あまり類例をみない転調の豊富さと斬新な和声で展開され、ベルリオーズ、リスト、ヴァーグナーのライトモチーフを先取りしているという。

ケンプとブレンデルの録音で聴いた時は、凝ったソノリティでハープのように重なる響きがとても綺麗でファンタスティック。
そのせいか、アンデルジェフスキの弾くシューマンのペダルピアノのための練習曲を連想した曲。

アラウやレーゼルの録音だと、和声の響かせ方がかなり違って、凝ったきらびやかな色彩感はないけれど、落ち着いたトーンでさりげなく。
それよりも、音型と音の動くパターンが面白く聴こえてきて、第12番《葬送》の第4楽章のようなリズミカルな運動性の方が強く感じる。
分散和音、シンコペーション、持続音など、音型・リズムのパターンが数種類。それが左右交代で現れたり、ユニゾンになったり、さらにffsfpもコロコロ交代して、その運動性がとても面白い。
それでも、主題旋律が優しく音楽的に聴こえるせいか、《葬送》よりもメカニカルな感じは薄め。
最後はPiu Allegro。ラストスパートのようにテンポが上がって、フォルテで堂々とエンディング。

レーゼルは速めのテンポと軽やかなタッチで流れるように滑らか。(アラウはコツコツしたタッチで、もっと素朴な趣き)
ffsfの力感・量感のある和音の響きもレーゼルらしい。
全体的に軽妙で諧謔、思わず笑みがこぼれおちるような軽やかさと明るさで、とても可愛らしい。
ベートーヴェンって、大曲の狭間になんて可愛らしくて素敵な曲を残してくれたのでしょう。


レーゼル『ベートーヴェンの真影 ピアノ・ソナタ全集 4 』~ピアノ・ソナタ第14番《月光》

tag : ベートーヴェン レーゼル

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
メアリー・マッグレガー 《SAYONARA》
劇場版『さよなら銀河鉄道999』のエンディングテーマ《SAYONARA》(歌:メアリー・マッグレガー)

たまたま思い出して聴きたくなったのは、30年前の1981年に公開された映画のエンディングテーマ。
いつ聴いても、歌詞もメロディも別れとともに新たな旅立ちを感じさせるところがとても清々しく。

レーゼル 『ベートーヴェンの真影 ピアノ・ソナタ全集 4 』 ~ ピアノ・ソナタ第14番「月光」 Op.27-2
このところ、ずっと聴いているのが、ペーター・レーゼルの 『ベートーヴェンの真影 ピアノ・ソナタ全集 』のシリーズ。

レーゼルの演奏を初めて聴いたのが、Berlin Classicsのシューマンのピアノ五重奏曲。
安定した技巧と爽やかで明るい叙情感が素敵に思えて、ちょっと興味を魅かれたのでした。
最近、レーゼルのことを思い出して、ピアノ協奏曲全集を聴いてみたら、ドイツ風というか質実剛健で堅牢な構成と過剰な味付けのない表現が私の好みにぴったり。
カッチェンのピアノ協奏曲全集と同じくらいに気に入って、個人的ベスト盤。

同じくBerlin Classicsからリリースされているのが、レーゼルのベートーヴェンのピアノ・ソナタ集(第17,18,24,29番)。特にテンペストがアラウの旧盤と同じく良くて。
1980年代に録音したシャルプラッテンの国内盤の3大ソナタ(悲愴、月光、熱情)も、切れの良いテクニックと透明感のある音色が美しく、クールな叙情感がとても清々しい。
夾雑物のないピュアな趣きを感じさせる演奏で、こんなベートーヴェンを聴いたら、今のレーゼルが弾くベートーヴェンを聴きたくなってしまう。

レーゼルは2008年から4年間かけて、キングレコードにピアノ・ソナタ全集を録音しているところ。新日鉄文化財団とキングレコードとの共同プロジェクトらしい。
全8巻中、今はVol.6までリリース済み、日本の紀尾井ホールのリサイタルのライブ録音を収録したもので、一部セッション録音も入るらしい。
「プロジェクト発表時の記者会見」に関して

参考:Peter Rösel Homepage(英文)Peter Rösel: Short Biography (写真を数点掲載)

2008年から、毎年2つのプログラムのリサイタルを行っているので、ちょうど6回分が終了したところ。
今年が最後のシリーズリサイタルで、10月開催予定。12月くらいにライブ録音のCDがリリースされるのではと思うけれど。
全集盤も一緒にリリースしてほしいけれど、セールスの都合で分売盤が先行して、全集盤リリースはずっと後になるのかもしれない。
プログラムを見ると、最終回は第1・2・31・32番。リサイタルは東京でしか開催されないので(とっても残念)、ライブ録音を必ず手に入れなければ。

この全集録音のうち、リリース済みのVol.2~6の5枚は入手済み。
試聴しただけでピピっとくるものがあり、CDで全曲聴いてみると期待以上に素晴らしくて、すっかりはまってしまいました。
レーゼルのピアニズムの特徴というと、曲想にマッチしたほど良いテンポ感、粒立ちの良い滑らかなレガート、スケールとアルペジオのダイナミズム、暖かみをおびて尖ったところのない音色、過度に繊細になることない弱音、柔らかく透明感のある高音、強打せずに力強く充実した和音、微に細に穿つことも誇張することもなく過不足ない表現、というところでしょうか。
それに、ライブ録音の音質が良いので、木質感のある柔らかい響きと暖かみのある音色がとても心地良くて。

今まではアラウの旧盤がベスト。でも、一部の曲は新盤も良いけれど、もう一つ満足できない曲もいくつかあるし、もう一つ定番となる全集を探していたところ。
レーゼルの全集が揃えば、アラウと並ぶベスト盤になるのは間違いなく、もしかしたらそれ以上かも。これでベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集の収集はとりあえず打ち止めにしても良いかと。
今までいろいろ集めてきたけれど、全集盤はアラウとレーゼルに加えて、ブレンデル(3度目の録音)とケンプがあれば、もう充分なくらい。

                                 

5枚集めたライブ録音は、どの曲の演奏も全く不満に思うところがないけれど、とりわけ聴き惚れてしまったのが、《月光ソナタ》。
この曲は、誰の演奏で聴いてもあまり好きになれなかったけれど、試聴してみたら、これは聴いてみなければ...と思ったもの。

2009年10月、東京・紀尾井ホールのリサイタルのライブ録音。カップリングは、第19番、第4番、第12番《葬送》
レーゼルは今65歳なので、これが最初で最後のピアノ・ソナタ全集になる可能性は高そう。
もし再録したとしても、技巧面がかなり落ちているだろうから、この全集がレーゼルにとってベストの録音になるのではないかと思う。

ベートーヴェンの真影 ピアノ・ソナタ全集4ベートーヴェンの真影 ピアノ・ソナタ全集4
(2009/12/09)
レーゼル(ペーター)

試聴する


緩徐楽章苦手の私としては、第1楽章はやっぱり眠たい。演奏云々というより、曲自体が好きでないので。
第2楽章は、ピアニッシモはやや柔らかいタッチと暖かい音色、フォルテは芯のある充実した響きで、優しさと強さがほどよくバランスして、明るく和やか。

第3楽章はバックハウス、グルダ、ギレリス、ゼルキン、アラウ、ポリーニ、ブレンデル、etc.と、名だたるピアニストのはほとんど聴いたけれど、どこかが物足りないか、過剰すぎるかで、ほとんど繰り返して聴いたことがない。

レーゼルが弾く第3楽章。これはすっかり目が醒めるくらいに素晴らしくて、気がつくとここ数日、この第3楽章だけもう数十回聴いている。
ライブ独特の生き生きとした躍動感やテンションの高さを感じさせる勢いと力強さで、滑らかな音楽の流れ、構造的な安定感、済んだ叙情感と緊張感が、私には理想的なバランス。

重みのある芯のしっかりした音が重厚ではあるけれど、切れの良い打鍵で、はじけるような弾力とスピード感があるので、力強く颯爽とした弾きぶり。
粒の揃ったパッセージには力感があり、鋼のように重厚な響きの和音、アルペジオでクレッシェンドする時の重層的な響き、左手の力強いタッチから立ち上がってくる低音部の安定感などは、若いころからのレーゼルらしいタッチ。左手の強拍の音がリズミカルに響いているのは、左手が強めに出るレーゼルらしい弾き方。

昔からメカニックの切れが良く、速いテンポで弾くところは変わっていないけれど、急速なパッセージでアッチェレランドしたり、弱音部ではリタルダントして、微妙なテンポの変化があり、和声の響きもタッチとペダリングの変化で、バリエーションがあって、全体的に一本調子にならず。
スケールとアルペジオは滑らかなレガート。粒の揃った粒立ちの良い打鍵で、勢いのあるダイナミズムが爽快。
波がうねるような滑らかな音楽の流れがとても気持ちよく、ライブ録音のせいか、とてもパッショネイトな高揚感を感じる。
ピアノの基本は、スケールとアルペジオ...と言ったのはバックハウスだったか誰だったか、よく覚えてはいないけれど、レーゼルのスケールとアルペジオを聴くと、基本的な奏法が本当にしっかりしている人なんだといつも思う。

レーゼルは1945年生まれ。このベートーヴェン全集の録音を開始した時にはもう63歳。
アラウが旧盤を録音したときよりも、少し年上だけれど、メカニック面はレーゼルの方が上だと思う。
若い頃とほとんど変わらない技巧の切れと安定感、透明感のあるソノリティに加えて、壮年期になって膨らみや奥行きを感じさせる表現が加わって、ほどよい叙情感。
細部の繊細さや凝ったソノリティに拘ることなく、技巧と表現が理想的なバランスで、過不足のないいわゆる”正攻法”と言いたくなるような堂々としたベートーヴェン。
何度聴いても惚れ惚れとする《月光ソナタ》の第3楽章でした。

tag : ベートーヴェン レーゼル

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
アンダ ~ シューベルト/ピアノ・ソナタ第21番
アンダのディアベリのCDにカップリングされているのは、シューベルトのピアノ・ソナタ第21番。
シューベルトは、その心象世界がまったく異質に感じるので全然好きではないせいか、めったに聴かない。
ただし、後期ソナタの最後の3曲と《3つの小品》の第1曲だけは、好きなピアニストの録音を集めていると、CDがいろいろ溜まってしまうので、例外的に何度も聴いている曲。

アンダの弾く最後のソナタは、かなり変わった解釈の演奏(だと思う)。
BOXセットの解説でも、ディアベリよりもさらに”自然さ”に欠けていると評していて、4頁強の英文ブックレットうち、このシューベルトの最後のピアノ・ソナタだけで1頁少々を使って、特別に詳しく解説していた。

アンダの弾く最後のピアノ・ソナタには、美しい音と響きが優美で透明感のある明るさがあって、どこか醒めたような知的な解釈。
感傷や叙情性に深くのめりこむことなく、時に荒々しく力強い意志を感じさせるものがある。

アンダの録音のレビューを探したけれど、ほとんど見つからない。
アンダのシューベルトがあまり聴かれていないのか、それとも、シューベルト好きには好まれなかったのか。(多分この両方とも当てはまりそう)
少なくとも、アンダの第4楽章の演奏を好むシューベルト好きの人はあまり多くはないと思う。個人的には、感傷的でも過度に叙情的でもなく、疾走していくところがとても気に入ったけれど。

第1楽章は音が美しく、ペダルを多用した多彩な響きが優美。テンポがかなり伸縮し、第2主題は直前の優美で幾分瞑想的な雰囲気を打ち消すようにテンポが上がって、タッチも鋭く引き締まった演奏。
第2楽章は冒頭主題は悲愴感が漂ってはいるけれど、中間部は透明感のある明るさでとても爽やか。
第3楽章はスケルツォらしい力強いタッチで躍動的。中間部はかなりスローなテンポで静かで穏やかな雰囲気がして、短調のわりに暗さは稀薄。

問題の第4楽章。特異と感じられるほど、第3楽章のスケルツォの勢いをそのまま受け継いだように、速いテンポとシャープなタッチで力強くダイナミック。
この楽章は、通常8分前後をかけてゆったりと穏やかな雰囲気で弾かれることが多いけれど、アンダは7分弱という速いテンポ(ma non troppoの指定には、意図的に従っていないような...)。
このスピードに加えて、打鍵が鋭く力感があり、テンポも時折伸縮し、アッチェレランドで加速していくので、何かに追い立てられているかのような切迫感がある。
とりわけ印象的なのは、冒頭部分や途中で何回も現われる打ち鳴らすような和音。f/pの指示通り、フォルテで弾いた後すぐに指を上げるという、スタッカート的なタッチ。
この時の音は、まるで警笛のように短く鋭い響き。ライナーノートには”電気ショック”のようだと形容していた。
アンダの弾く第4楽章には、全体的に嵐の中を駆け抜けていくかのような、疾走感と急迫感がある。
まるで感傷や叙情、平安、諦観といったものに浸ることを拒否し、何かに対する怒りや決然とした意志が込められているかのような解釈が、このシューベルト最後のピアノ・ソナタの終楽章に相応しいのかどうか、わからないけれど、強く印象に残っているのは、数ある定評のある録音よりもこのアンダの演奏。


アンダのDG録音集。ピアノ協奏曲・ピアノ独奏曲のDG時代の録音をほとんど収録している。(グリーグのピアノ協奏曲などは未収録)
今は廃盤。ブラームスやシューマンのピアノ協奏曲など、分売盤が入手できる曲もある。
Troubadour of the Piano (Spkg)Troubadour of the Piano (Spkg)
(2005/09/13)
Geza Anda

試聴する(米amazon)


上記BOXセットから、ピアノ独奏曲のみを抜粋収録したライセンス盤。
シューベルトのピアノ・ソナタ第21番も収録。
Art of Geza Anda: Solo Piano RecordingsArt of Geza Anda: Solo Piano Recordings
(2010/07/13)
Geza Anda

試聴する(米amazon)

tag : シューベルト アンダ

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
ラーシュ・ヤンソン/Hope
ジャズのピアノ・トリオのなかで特に好きな曲の一つは、ラーシュ・ヤンソンの《Hope》。

ピアノ・トリオは、ソロと違ってあまり印象に残る曲は多くはないけれど、忘れがたいのは哀惜感溢れるエヴァンスの《We will meet again (for Harry)》と《MASH Theme (Suicide is Painless)》、それにこのヤンソンの《Hope》。

エヴァンスの悲哀感漂う曲とは正反対に、《Hope》は北欧の自然を描いた水彩画のように澄み切った明るさが清々しい。それでいて木質感のあるほのぼのとした暖かさがあって、聴いているとなぜか幸福感に浸されるような気がする。

新しい年度が始まる4月にとても似合っている曲に思えてきて、聴きたくなったので。

Lars Jansson Trio - Hope



AA300__convert_20110403034215.jpgHope
(2000/04/03)
Lars Jansson

試聴する


tag : ラーシュ・ヤンソン

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
可聴周波数チェッカー
ちょうど1年前くらい、耳鳴りの周波数を確認したくて見つけたのが、「可聴周波数域チェッカ」というフリーウェア。

このソフトウェアは精緻なものではないそうなので、あくまで目安程度。
正確なデータは病院で検査してもらいましょう。

音量は自分で設定可能。デフォルトは30%で、この音量だと聴こえるのは12380ヘルツまで。
音量50%に上げると、12580ヘルツまでは聴こえる。
耳鳴りの周波数は、常時頭頂部から聴こえる一番高い音で12590ヘルツくらい。
この周波数以上の高音は、音量50%設定では聴きとれなくなる。

パソコンの駆動音・ファン音がマスキングして、低音の耳鳴りは聴こえない状態になっているので、指で耳を塞いで低音の耳鳴りが聴こえる状態にして、チェッカーで確認。
低音耳鳴りの周波数は400ヘルツくらい。低音は90ヘルツ以下は聴き取れず。

人間が聴こえる周波数は20Hz~20,000Hz。20歳代をピークにして加齢によって聴力が下がり、高い周波数の音が聴き取りにくくなるということは知っているけれど、低音の方も聴力が落ちている。
私の年齢だと、年相応というよりも、標準的なレベルよりも低くなっているに違いない。
ホームベーカリーで焼く”ロデブ”
「ロデブ」というパンは、フランスの町の名前に由来したという高加水パン。
水分が粉の重量の80%とかなり多いので、焼き上がると気泡がたくさん入って、クラムはしっとり。
ホームベーカリーで焼くと保存料を添加しなくてパサパサしやすい。ロデブの良いとことは、油脂類はゼロなのに、翌々日もそれほどパサつかないし、沸騰したお湯の蒸気とかに少し当ててからトーストすれば、クラムがちょっともちもちして、とても美味しいパン。
電気式のトースターよりも、ガスグリルでトーストした方が、表面はサクサクパリパリ、中味ももっちりと美味しいので、このごろはグリルでトースト。

ロデブのレシピは、高橋雅子さんのレシピ本『少しのイーストでゆっくり発酵パン』と『少しのイーストで ホームベーカリー』の両方に載っている。
他のレシピブックではあまり見かけたことがないし、ベーカリーショップでも、ハード系のパンが充実しているところでないと、たぶん売っていない。

手捏ね用の『少しのイーストでゆっくり発酵パン』は、オートリーズ法で作っていく方法。
水分量がかなり多くて扱いにくい生地なので、パン作りの上級者向きらしい。
生地の成型していく過程で、4回くらいパンチを入れるので、結構時間と手間がかかる。

少しのイーストでゆっくり発酵パン?こんな方法があったんだ。おいしさ再発見!少しのイーストでゆっくり発酵パン?こんな方法があったんだ。おいしさ再発見!
(2007/01)
高橋 雅子

商品詳細を見る


『少しのイーストで ホームベーカリー』のレシピは、ホームベーカリーおまかせレシピと、生地だけHBで作って成型するレシピの2つが載っている。
結局、手捏ねもいれると、ロデブの作り方は全部で3通り。手捏ねとホームベーカリーだと、粉の種類・配合、水分量とかが違う。

少しのイーストで ホームベーカリー 天然酵母コースでゆっくり発酵 (少しのイーストでゆっくり発酵パン)少しのイーストで ホームベーカリー 天然酵母コースでゆっくり発酵 (少しのイーストでゆっくり発酵パン)
(2010/07/07)
高橋雅子

商品詳細を見る



ロデブは、手捏ねでもホームベーカリーでも、水分量は粉の重量の80%。普通の食パンやフランスパンとかと違ってかなり多いので、かなり緩い生地になる。
粉は準強力粉のリスドォル推奨。フランスパン用の粉は全然買い置きしていないので、1CWに薄力粉を混ぜて代用。
バターなどの油脂類はゼロ。砂糖も少量。卵も牛乳も使わないので、フランスパンに似た配合。

いつものとおり、”少しのイースト”で天然酵母モードにセットして長時間発酵。
油脂類は全然入れていないのに、焼き上がりはわりとよく膨らんでいる。
半日後スライスしてみると、手捏ねや成型で焼き上げたロデブのような気泡がほとんど入っていない。(ちょっと残念)
でも、水分が多いので、クラムはとてもしっとり。クラストは薄めでパリっ。フランスパンのような厚く硬いクラストではないので、とっても食べやすい。
ベーカリーショップのロデブを食べたことがないので、まともな焼き具合がもう一つ良くわからないけれど、普通の食パンとはまた違った味と食感で、小麦粉の味がしっかりしていて、これはかなり美味しい。
特に油脂なしで作れて、クラムがしっとりしているという点はかなりポイントが高い。

ロデブのレシピは、油脂なしフランスパンに良く似ているけれど、フランスパンはクラムの水分がクラストに移ってしまうそうなので、すぐにクラムがパサパサ。
フランスパンは、焼き上げて間もないうちに食べるのが一番と言われるのは、そのためらしい。
ロデブの場合は、水分量がかなり多いので、フランスパンと違って、クラムは2日たってもかなりしっとり。
焼き上げ後半日くらいなら、トーストせずにそのまま食べてもしっとりして美味しいし、トーストするなら薄い焦げ目がつくかつかないくらいに軽~く。
焦げ目をしっかりつけると、水分が飛びすぎて、しっとり感が消えてしまうので。
室温でそのまま保存してみると、2日目は多少水分がとんでいるけれど、少しパンを蒸気にあててしっとりさせて、ポップアップトースターの”あたためモード”で温めると、しっとりフカフカ。

このロデブのレシピは、巷にある数多くのホームベーカリー用レシピとはかなり違っていて、水分の多さ、油脂なし、少しのイーストで長時間発酵と、この3つがポイント。
こういうオリジナリティのあるレシピがいろいろ載っているのが、高橋さんのレシピブックの良いところ。
普通の粉でこれだけ美味しいなら、レシピ推奨のリスドォルで焼けばもっと美味しいのでは...と期待してしまう。
イオンのショッピングセンターにあるカルディ・コーヒーファームでリスドォルを売っていたので、2kg640円パッケージを購入。(まとめ買いするなら、富澤商店のオンラインショップの方が安い)
リスドォル&全粒粉でロデブを焼いてみると、気泡が大きくなって、強力粉のロデブよりもクラストがさくっとした感じで、クラムがしっとり。かなりフランスパン風の食感とお味。
ホームベーカリーで作ってこれだけ美味しいなら、やっぱり本来の製法どおり手捏ねで長時間発酵させて作ったものを食べたいもの。
最初から最後まで手捏ねというのは、完全に私の手に余るので、まずホームベーカリーで作った生地を成型していくバージョンで練習してみないと。



[参考1]お家で焼いたロデブの写真がのっているブログは、いくつかあって、手捏ねで綺麗に焼きあがっているのがこちら

[参考2]ホームベーカリーの電気代
ホームベーカリーで焼くパンのコストを気にする人が結構いるらしく、以前panasonicに問い合わせたところ、1斤タイプのSD-BM101なら、天然酵母モードで1回焼くのに9円くらい。
仕様を確認すると、消費電力がヒーター370W・モーター80W/75W。ヒーターで焼いているのは40分間、捏ねは食パンコースで2回・合計40分くらい、あとはじ~っと発酵させているだけなので、消費電力はオーブンでパンを20分ほど焼くのと同じくらいだと思う。


[2012.2.19 追記]
高橋さんのレシピブックでは、「リスドォル」が指定銘柄。
「オーベルジュ」というフランスパン用の粉がいくつかのネットショップで販売していて、これがどこでも評判が良い。
"東京ビゴの藤森さんが、今一番お気に入りの小麦粉で、「限りなくフランス産小麦に近い粉」と絶賛"...という宣伝文を読むと、一度使ってみたくなったので、早速5kg購入。
焼き上がりは「リスドォル」より少し高さが低め。
「リスドォル」の方が水分が多く、気泡も多いせいか、食感はしっかり。
「オーベルジュ」は、気泡もやや少なく、ふわふわもちもち。小麦の味が甘めで、食感はしっとり柔らかい。
保存容器(抗菌密閉できるナノシルバー)に入れて室温で4日間ほど保存してみると、「リスドォル」よりも「オーベルジュ」の方が水分の蒸発が少なくて、あまりぱさつき感がしない。
トータルで考えると、「オーベルジュ」で焼いたロデブの方が好みかも。
でも、両方ともとても美味しいので、交代で使ってみるのが一番。


[20124.1.19 追記]
「リスドォル」にライ麦粉(細挽)を加えると、クラストがソフトフランスみたいに柔らかく、クラムにライ麦の甘みが出てくる。
全粒粉を加えると、クラストがフランスパンみたいにパリパリ。クラムはライ麦粉みたいに甘くはない。



[追記]
パン・ド・ロデヴを食べる会レポート(パンラボ,2012.11.05)
ロデヴの歴史や、日本のパン職人がどういうロデブを作っているのか、とても詳しいブログ記事。

tag : ホームベーカリー

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
カレンダー
03 | 2011/04 | 05
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
ブログ内検索
最近の記事
最近のコメント
カテゴリー
タグリスト
マウスホイールでスクロールします

月別アーカイブ

MONTHLY

記事 Title List

全ての記事を表示する

リンク (☆:相互リンク)
FC2カウンター
プロフィール

yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

お知らせ
ブログ記事はリンクフリーです。ただし、無断コピー・転載はお断りいたします。/ブログ記事を引用される場合は、出典(ブログ名・記事URL)を記載していただきますようお願い致します。(事前・事後にご連絡いただく必要はありません)/スパム投稿や記事内容と関連性の薄い長文のコメント、挙動不審と思われるアクセス行為については、管理人の判断で削除・拒否いたします。/スパム対策のため一部ドメインからのコメント投稿ができません。あしからずご了承ください。