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ポール・ジェイコブス 『Busoni ;the Legendary Recording』 (1) ブラームス=ブゾーニ/11のコラール前奏曲(ピアノ独奏編曲版)
チェリストのイッサーリスの子供向けの作曲家列伝『もし大作曲家と友だちになれたら…』に書かれていたブラームス最後の作品のエピソード。
ブラームスが最後に取り組んでいた作品は、ほとんど残してこなかったオルガン曲で、《11のコラール前奏曲 Op.122》。
最後の曲のタイトルは、《おお、世界よ!わたしはおまえから去っていかねばならない》。
「かれの先輩だったバッハと同じように、ブラームスは宗教的なコラールを別れのあいさつとして、ぼくらに残した。まるで生の終わりを覚悟していたと告げるかのように。「さよなら」をいうのに、もちろん、かれはことばではなく音楽を選んだんだ。」(イッサーリス)

ブラームス好きなら、この曲を聴きたくならないというのは無理な話。
ブラームスはオルガン曲をほとんど残していないし、この曲以外に4曲あるオルガン曲には作品番号がついていない。

全11曲のコラール前奏曲のうち、同じ曲名のものが2曲づつ合計4曲。
 第1番 Mein Jesu, der du mich/イエスよ、あなたは私を選ばれた
 第2番 Herzliebster Jesu/最愛のイエスよ
 第3番 O Welt, ich muss dich lassen/おお、世界よ!わたしはおまえから去っていかねばならない(1)
 第4番 Herzlich tut mich erfreuen/心より喜びに満ちて
 第5番 Schmucke dich, o liebe Seele/装え、おお、愛する魂よ
 第6番 O wie selig seid ihr doch/おお、あなたはなんと至福なのか
 第7番 O Gott, du frommer Gott/おお神よ、慈悲深い神よ
 第8番 Es ist ein Ros' entsprungen/一輪の薔薇が咲いて
 第9番 Herzlich tut mich verlangen/心からの願い(1)
 第10番 Herzlich tut mich verlangen/心からの願い(2)
 第11番 O Welt, ich muss dich lassen/おお、世界よ!わたしはおまえから去っていかねばならない(2)

ブラームスの作品の中ではあまり知られていないオルガン作品にしては、録音はかなり多い。
ロマン派のオルガン作品として、レパートリーの定番の一つなのかも。
オルガンの録音をいくつか聴いてみたけれど、オルガン曲を聴き慣れていないせいか、ぼわ~とした響きが重なってモコモコと聴こえて、曲の旋律や和声がはっきり聴きとれない。
本来はオルガン原曲版をしっかり聴くべきなのだろうけど、フラストレーションがたまるので、ピアノ編曲版があるのでは...と探してみたら、ブゾーニがピアノ独奏用編曲版を書いていた。

ブゾーニ編曲版のピアノ録音はかなり少なく数種類のみ。
4,5,8,9,10,11番の6曲だけ録音している場合が多いので、ブゾーニが6曲しか編曲していないのだと思う。
6曲抜粋盤なら、グロショップ(Capriccio)、ジェイコブス(Arbiter)、ステルチンスキ(Selene)。プリマコフが9&10番の2曲。オムニバス盤なら1曲だけ録音しているピアニストもいる。

グロショップとジェイコブスは、かなり違ったタッチの演奏。
グロショップは輪郭のきっちりしたソフトな暖かみのある音で、表現はとても穏やか。
ロマン派的な深い感情移入ではなく、まるで遠い昔をほのぼのと回想しているかのように、人生の黄昏を迎えた淡々として落ち着いた心境を感じさせる。

ジェイコブスは力強い意志と感情が抑えきれずに溢れでてくるようなタッチ。
音が柔らかく響きが重層的に重なって、オルガン的な太く厚みのある響き。
昔を回想しているとしても、その起伏の大きな表現は、様々な出来事が走馬燈のように駆けめぐり、リアルな記憶として甦っているかのようにドラマティック。
心の奥から湧き上がってくるような深い情感を感じさせる演奏がとても印象的。特に、第10番”Herzlich tut mich verlangen(心からの願い)”が感動的。
ジェイコブスのブラームス=ブゾーニのコラール前奏曲は、バッハ=ブゾーニの録音と並んで評価が高い。
1980年頃に録音されているが、その約3年後、ジェイコブスはAIDSで亡くなる。もしかしたら、この曲を録音した時には、すでに自らの運命を予期していたのかもしれない。

                             

第4番”心より喜びに満ちて”:ブラームスらしい子守歌風の夢見るような主題旋律が美しい。
ジェイコブスはフォルテがとても力強くて情熱的で、子守歌風の雰囲気は薄め。グロショップは穏やかで透明感があって清々しい。
Brahms / Busoni / Paul Jacobs: Herzlich Thut Mich Verlangen, Op. 122, No. 4 - 1979



第5番”装え、おお、愛する魂よ”:透明感のある響きが清々しく、敬虔な雰囲気。
第4番よりはずっと落ち着いたタッチのジェイコブス。深みのある太い響きが厳か。
Brahms / Busoni / Paul Jacobs: Schmücke dich, o Liebe Seele, Op. 122, No. 5 - 1979



第8番”一輪の薔薇が咲いて”:やがて眠りにおちていくように、静寂で安らかな雰囲気。
Brahms / Busoni / Paul Jacobs: Es Ist Ein Ros Entsprungen, Op. 122, No. 8 - 1979



第10番”心からの願い”:悲痛な祈りが込められているような曲。
バッハ=ブゾーニのコラール前奏曲「いざ来たれ、異教徒の救い主よ」に似ている感じがする。
バッハの同名のコラール"Herzlich tut mich verlangen"は、死を観想するコラールだという。
曲自体が良い上に、ジェイコブスのピアノの織り重なる色彩感のある響きと濃淡のある情感のこもった表現が素晴らしく、この曲集の中で一番印象的で忘れがたい曲。
Brahms / Busoni / Paul Jacobs, 1979: Herzlich thut mich verlangen (2nd version)



最後の第11番”ああ世よ、私は去らねばならない”はオルガン原曲で。
Brahms: O Welt ich muss dich lassen (#2) - Bradley Lehman


                             

ジェイコブスの録音は、バッハ=ブゾーニ、バルトーク、ストラヴィンスキー、メシアンの作品集に収録。
この作品集は、amazon.comのリスナーレビューで評価が高い。
現代ものの演奏で定評があったジェイコブスは、1983年に53才の若さでAIDSで亡くなり、その後は忘れられたピアニスト。(同名のアメリカのオルガニストもいるが、これは別人)
LP時代にNonesuchにかなりの録音を残したが、CD化されたものはわずか。
この作品集はNonesuchではなく、ArbiterというレーベルがCD化したもの。
ジェイコブスに関する情報は少なく、彼の録音に関するリスナーレビューは<私版光と風と夢>さんの”ピアニスト讃(HOMMAGE A PIANISTES)”にわりとまとまったものが載っている。(ユーリ・エゴロフとオリ・ムストネンのレビューもあり)

Busoni;the Legendary RecordingBusoni;the Legendary Recording
(2000/07/24)
Paul Jacobs

試聴する(allmuisc.com)



tag : ブラームス ブゾーニ ジェイコブス

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ロジェ ~ サティ/ジュ・トゥ・ヴー
フランスの現代もので好きな作曲家といえば、プーランク。
でも、プーランクよりもサティの方がよく知られている。コマーシャルでも流れていたせいか、かなりの人気。
昔はサティが全く好きではなったけれど、たまたまクラシックを初めて聴く人に聴きやすい曲を探していて、ふと思い浮かんだのがプーランクではなくてサティ。

初めは《ジムノベティ第1番》が良いかなと思ったけれど、他の曲をいろいろ聴いていたら、《ジュ・トゥ・ヴー(あなたが欲しい)》が遊園地で遊んでいるような明るさとのどかさがあって、こっちの方がずっと良さそう。
この曲を聴くと、映画の中に出てくるパリの街の洒落た雰囲気がいっぱい。
しっとりした潤いも漂っているので、梅雨の日にも聴くには意外に似合っているかも。

フランス音楽では定評のあるパスカル・ロジェが、若かりし頃に弾いた《Je te veux》。
明るく暖かみのある音色と柔らかなタッチのロジェのピアノが素敵。

Erik Satie - Je te veux (Pascal Rogé)

tag : サティ ロジェ

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スティーブン・イッサーリス著 『もし大作曲家と友だちになれたら… 音楽タイムトラベル』
チェリストのイッサーリスは、CDの作品解説を自分で書くし、本まで出していて、なかなか筆の立つ人らしい。
イッサーリスが書いた子供向けの作曲家列伝が『もし大作曲家と友だちになれたら…―音楽タイムトラベル』。
英国ではかなり評判になり、amazonUKのベストセラーランキングでは、あのハリポタの真下に(1日だけ)ランクインしたこともあるというほど、音楽書にしては珍しくよく売れたらしい。

大作曲家の人生や作品を描いた楽しいスタイルの文章は、まるで目の前でイッサーリスが親しく語りかけているよう。
内容も興味が次々に湧いてくるようなお話がもりだくさん。一番最初に作曲家の生涯と人物像を描いたミニ伝記、次に音楽論とおすすめの曲「これをきいてみよう」、最後に数多くのエピソード。
ページ数のわりに充実した内容で、密度はかなり濃い。大人が読んでも充分面白いし、下手な大人向けのクラシック入門的な本よりもずっと質の高い良書だと思う。

作曲家の作品論も入っているけれど、それよりも、その人となりに重きをおいている。
彼らのパーソナリティや、数々の困難に直面した時の様子を描いたところはとてもリアリティがあって、”等身大”の姿が伝わってくる。
苦手のシューマンや、かなり変わったところがあってなかなか親近感が湧きにくいストラヴィンスキーのお話でも、この内容にこの文章なら、ついつい引き込まれて一気に読んでしまう。
各作曲家ごとの音楽論(バッハの音楽、ベートーヴェンの音楽、など)は、数ページの短い内容ながら、それぞれの音楽のエッセンスがよくわかって、そうそう、その通り!と同感。

もし大作曲家と友だちになれたら…―音楽タイムトラベルもし大作曲家と友だちになれたら…―音楽タイムトラベル
(2003/02/01)
スティーブン イッサーリス

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紹介している作曲家は6人。当然のことながら、3大B(バッハ、ベートーヴェン、ブラームス)とモーツァルトは外せない。
それに加えて、イッサーリスが最も愛するシューマン、そして、なぜかストラヴィンスキー。
現代の作曲家なら、マーラー、プロコフィエフ、ショスタコーヴィチ、ストラヴィンスキー、シェーンベルクあたりがすぐに思い浮かぶけれど、子供向けなら、ストラヴィンスキーかプロコフィエフの音楽がやっぱり入りやすいかな。

ベートーヴェン
ベートーヴェンは、子供向けの本にありがちな”楽聖”ベートーヴェンではなく、奇人ぽいところはあるけれど喜怒哀楽が激しく、とても情感深く、情熱的に物事に取り組む人。
「「どうだってかまわない」ということばは、ベートーヴェンの辞書にはなかったように思える。もっとも小さな音符から、コーヒーのいれ方にいたるまで、かれには、ものごと全てが重要なんだ。」(拘らないのは散らかしっぱなしの部屋の掃除くらい?)

ベートーヴェンは悲喜こもごものエピソードがとりわけ多い作曲家。
彼の作品も同じで、イッサーリスが書いた<ベートーヴェンの音楽>を読むと、ベートーヴェンに対する愛情と尊敬が強く伝わってくる。
ベートーヴェンの作品は、力強く、暗く、デモーニッシュな音楽もあれば、ほがらかで楽しい、穏やかな曲もある。自然が好きなベートーヴェンらしい「自然を愛する気持ち」があらわれている曲が多いし、生活でも音楽でも冗談が大好きだったから、おもしろおかしい表現もたくさん出てくる。

「生きることはすばらしい。でも、私の人生はずっと台無しのままだ」とベートーヴェンは自ら言っていたという。「人間としてもっとスケールの小さい男だったら、耳の機能を失うという不幸に押しつぶされてしまったかもしれない。一生の仕事でいちばん大事な感覚だったのだから。しかし、ベートーヴェンはそうではなかった。」
イッサーリスにとっても(それに他の誰かにとっても)「かれはほんとうにヒーローだった」。

ベートーヴェンが”ハイリゲンシュタットの遺書”を書いて後、「耳の具合はますます悪化し、四六時中ゴーゴー、ヒューヒューと耳鳴りしかきこえない状態になった。そして、亡くなるまでの九年間はついに、何もきこえなくなってしまった。音のない世界だ。」
「耳が悪くなるにつれて、ベートーベンの音楽はさらに美しさを増していった。かれは静けさの中に完璧な音の世界をつくりあげたんだ。晩年、かれは、クラシックの世界でも指折りの、心を打つ音楽をいくつも書いている。」

ブラームス
ブラームスは気難しいところはあるけれど、実は人間的な感情が豊かな人で、それを表現するのが下手だった...いうところは、彼の作品そのものかも。
青年期は疾風怒涛のような激しさを見せたかと思うと、徐々に頑強な鎧をまとうように構築性が増し、一見とっつきが悪くて難渋。
でも、あちこちで細やかな情感がにじみ出てくるし、短調の重く悲愴な雰囲気の曲を書いたと思ったら、のどかな田園風景や南国の明るい陽光を感じさせるような明るい長調の曲も書いたりと、明暗が錯綜しているのは、彼の人生の複雑さを反映しているかのように思える。
ブラームスの行きつけのレストランは「赤いはりねずみ」という名前だったけれど、イッサーリスはブラームスを”人間ハリネズミ”と言っている。この比喩は本当にぴったり。

イッサーリスはブラームスに深い愛情を持っているに違いない。
「ブラームスの音楽は、じつにさまざまな気分をあらわしている。・・・それらすべてを、ひとりの作曲家の作品として、ひとつにたばねているのは、豊かさと、深みがあって堂々とした美しさだ(ちなみに、そこには、とげとげしさはまったくない)。これこそ、ほかのだれのものでもない、ブラームスがうたいあげるかれの音楽なんだ。」
ラジオでブラームスの音楽が流れてくるとすぐわかる、とイッサーリスは言っているし、これもその通り。
ブラームスらしさというのは、若い頃の作品からしっかりと刻印されていて、それは晩年に至るまでずっと作品に流れ続けていると思う。

バッハ
バッハの伝記は多数あれど、あまり面白そうな感じがしないので、本格的なものにはなかなか手が出ない。
イッサーリスの本を読んでも、やっぱりベートーヴェンほどに豊かな人物像は感じないところはあるけれど、それでも面白い。
<バッハの音楽>という音楽論では、バッハの音楽と宗教は不可分のもので、音楽は神をたたえる一つの方法だった。
でも、近づきにくいどころではなく、「バッハの音楽は、決してもったいぶってはいない。そこには、力強さ、ユーモア、思いやり、そして美しさが脈打っている。そして、それよりなにより、生きている喜びを感じさせてくれるんだ!」。

シューマン
シューマンの人生はやっぱり悲劇的。イッサーリスが描くシューマンは、今まで読んだ短い評伝よりも、ずっとリアリティがあるというか、シューマンに対する強いシンパシーが伝わってくる。
シューマンの音楽は夢想から湧き出てくるらしく、聴く人に親密感のある感情的なリアリティを感じさせるのが特徴らしい。
「シューマンは心の一番奥の秘密や、いちばん大事にとっておいた夢の話を打ち明けてくれる。じっさい、かれの音楽は、まるできき手を大の親友のように思って、語りかけてくれるんだ。」
「シューマンは、曲を書かずにいられないから書いたのだ。」、「その時にシューマンが見ている夢によって、いろんな曲が生まれるんだ。」
シューマンの録音は昔から結構聴いているし、好きな曲はいくつかあるとはいえ、やっぱりもう一つ溶け込めない。
ベートーヴェンやブラームスのような構築的で、感情と理性が調和したり拮抗したりしながら、バランスされている音楽なら、すっと馴染めるのとは逆。
イッサーリスの<シューマンの音楽>という音楽論を読むと、どうして苦手意識が消えない作曲家なのか理由がよくわかる。

ストラヴィンスキー
ストラヴィンスキーは、なかなか面白いパーソナリティ。6人の作曲家の中では最も”現代人”的で、ビジネスライクなドライな面を感じさせる。
2人の妻との関係も複雑だけれど、これはありがちな話とも思えるし、ロシア革命のおかげで財産を失って、家族だけでなく、妻の家族の生活の面倒もみていたりして、なかなか苦労人。
他の5人の作曲家とは違って、現代という同時代を生きてきた作曲家なので、ほんとに生身のリアリティがあるというか、ありすぎかも。
そういえば、『シャネル&ストラヴィンスキー』という映画、少し以前に公開されていたけど観ないまま。DVDが出ているだろうから、ちょっと観たい気がする。

特に愛弟子と言われるロバート・クラフトとの関係は、音楽上の師弟関係を超えて、まるで親子のような深い親交だったという。ストラヴィンスキーが亡くなるまでの20年間を夫妻とともに暮らしたほど。
ロバート・クラフトは、名前だけは聞いたことがあるけれど、どういう人なのか全然知らなかった。
クラフトがストラヴィンスキーに与えた影響がいろいろ書かれていて、もうストラヴィンスキーの片腕か半身のような存在だったのかもしれない。

これをきいてみよう
それぞれの作曲家のおすすめ曲が、<これをきいてみよう>と紹介されていて、これがとても子供向けとは思えないラインナップ。
”子供”のイメージはせいぜい小学生くらいなんだけど(中学生や高校生まで入っているのかも)、これなら大人にだっておすすめしてしまう。
イッサーリスはチェリストだからチェロの曲が多いかと思ったら、ほとんど紹介していなかった。

「駄作のない」バッハの場合は、《ブランデンブルグ協奏曲第3番》、《ゴルトベルク変奏曲》に《マタイ受難曲》。

モーツァルトなら、最初はオペラから。《ドン・ジョバンニ》か《魔笛》、次にピアノ協奏曲(特に後期の作品)として、第23番。
交響曲なら最後の3曲、特に《ジュピター》。それに《レクイエム》と《弦楽五重奏曲ト短調 K516》。

個人的には、映画「アマデウス」もおすすめ。《ドン・ジョヴァンニ》《魔笛》などのオペラのハイライトシーンに、《ピアノ協奏曲第20番》第2楽章、《レクイエム》の“コンフタティス(判決を受けた呪われた者は)”,”ラクリモーサ(涙の日)”,”ディエス・イレ(怒りの日)”など、有名な曲が散りばめられている。(ストーリー自体は史実と随分違うらしいけど)


「完璧かつ徹底的な才能を示す作品はいくらでもある」ベートーヴェンを最初に聴くなら、やはり交響曲で、第5番、第6番、そして、第7番。
次はピアノ・ソナタで、《月光》《悲愴》《ワルトシュタイン》。(《熱情》ではなく《ワルトシュタイン》をあげているところが好き)
それから、再び交響曲へ戻って第9番、《荘厳ミサ曲》、最後の弦楽四重奏曲。
チェロ曲はここではとりあげていないけれど、<ベートーヴェンの音楽>という直前の章で、耳の症状がかなり悪化した頃に書かれた《チェロソナタ第3番》は、「彼の音楽のうち、もっとも明るくて幸せな作品の一つだよ」と書いている。
確かにその通りで、全部で5曲あるチェロソナタのうち、一番好きなのはやっぱり第3番。
イッサーリスが<これをきいてみよう>という曲は、名曲中の名曲とはいえかなり重たいものもあるけれど、「もしベートーヴェンと友だちになれたら、きみは一生つきあえる親友と出会ったことになるぞ。生涯きみをぜったい失望させない友達を。」

イッサーリスが愛するシューマン。音楽論のなかでも、《子供のためのアルバム》《子供の情景》《謝肉祭》《クライスレリアーナ》《チェロ協奏曲》をとりあげていて、「シューマンの曲はどれを取っても、愛らしくて、変わっていて、個性的なんだ。」
<これをきいてみよう>では、一番最初は《ピアノ五重奏曲》か《ピアノ協奏曲》。
《ピアノ五重奏曲》は精神的な不安定さを感じさせず、調和に満ちた曲。《ピアノ協奏曲》は繊細さと情熱がほどよくバランスしてた、私がシューマンで一番良く聴いたのがこの2曲。
次は交響曲で第1番《春》と第3番《ライン》。
親しみやすい面を聴くなら歌曲で、《詩人の恋》か《リーダークライス》。
暗い世界なら《ピアノ三重奏曲第1番》、《2つのバラード》。
最後の作品は《ピアノ変奏曲変ホ長調》(聖霊の変奏曲)で、シューマンが「この世に告げた、気高い別れの言葉」。

ブラームスの名曲は、「生きるうえで、なにか深い思いをかかえていた時期に書かれたもの。」
<これをきいてみよう>では、シューマンが亡くなってから書かれた《ピアノ協奏曲第1番》、《ヴァイオリン協奏曲》、母親の死を悼んで書いた《ドイツ・レクイエム》。
交響曲は最初の第1番と第4番があげられている。
第4番が「朝、目が覚めたらすぐに聴きたくなるような、お日さまの光のように明るい曲だよ」とイッサーリスは書いている。
でも、あの第4番を聴いていて、そう思ったことは一度もないんだけど...。第2番(または第3番)の間違いではないだろうかと、読み返したけれど、やっぱり「最後の交響曲」と書いている。どうも私の聴き方が間違っているんだろうか?? それでも一番好きな交響曲なのは変わりないし、何度聴いても第4番は深い叙情に満ちた名曲。

最後にあげているのは、短くてもキラリと光る作品として《子守歌》。
この曲はたしかに有名だけど、《ワルツ第15番》も曲想が似ていて、気難しいブラームスが書いたとは思えないほど同じくらいに素敵な曲。
エピソードの中で紹介されていた最後の作品《11のコラール前奏曲 Op.122》。原曲はオルガン曲だけれど、11曲中6曲についてはブゾーニ編曲版があって、これがとても美しいピアノ独奏曲。

ストラヴィンスキーといえば、三大バレエ音楽《火の鳥》《ペトルーシュカ》それに、最大の傑作《春の祭典》。
その他には、コーラスと打楽器と4つのピアノのための《結婚》、《詩篇交響曲》、音楽劇《リナルド》。楽しい作品なら、《ラグタイム》や《サービス・ポルカ》(これは50頭の象の踊りの伴奏曲)。
荒々しくとんがった曲なら、晩年の大作《レクイエム・カンティクルス》。
変わった曲なら、最後の作品《ふくろうと猫》。イッサーリスによると、宇宙人のこどもが聴くのにぴったり。

本書の続編で紹介されているのは、ヘンデル、ハイドン、シューベルト、ドヴォルザーク、フォーレ。
これは未読。そのうち読まないと。特に好きな作曲家はいないけれど、イッサーリスの筆にかかると、誰もが生き生きとしたリアリティがあって、面白く読めてしまうに違いない。

続・もし大作曲家と友だちになれたら・・・・・続・もし大作曲家と友だちになれたら・・・・・
(2008/05/03)
スティーブン・イッサーリス

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スーク&カッチェン ~ ブラームス/《F.A.E.ソナタ》より ”スケルツォ”
ブラームスのヴァイオリンソナタのなかで、最も演奏機会が少ないのが《F.A.E.ソナタ》の第3楽章スケルツォ。
《F.A.E.ソナタ》自体が全曲演奏されることはまず無く、第3楽章のスケルツォの録音をたまに見かけるくらい。

スーク&カッチェンが珍しくも録音したスケルツォは、収録時間の制約からか、彼らのヴァイオリンソナタ全集には収録されていない。
ピアノ三重奏曲全集の2枚目のディスクに、チェロソナタ第2番とこのスケルツォが収録されていて、つい最近まで聴いたことがなかった。
チェロソナタがなかなか渋い曲なので、その後にあるスケルツォまで注意して聴いてなかったので。
ブラームスのピアノ・トリオを聴いていて、よくよく見ると最後に全然知らない曲が入っている。これが《F.A.E.ソナタ》のスケルツォ。

《F.A.E.ソナタ》は、シューマンとその友人ディートリヒ、それにブラームスの合作という珍曲。
第1楽章はディートリヒ、第3楽章がブラームス、第2楽章と第4楽章はシューマンの作曲で、後に彼のヴァイオリンソナタ第3番に転用。(Wikipediaの作品解説)
このスケルツォにシューマンとディートリヒの曲が付け加わった《F.A.E.ソナタ》、一体どんな曲になっているのか、一度は聴いてみたくなる。NMLで探せば1つくらい録音が見つかるかも。

スケルツォというと、若い頃のブラームスのピアノ小品にも同名の曲がある。
どちらも、聴けばすぐにブラームスの曲だとわかるくらいに、若い頃のブラームスらしい陰翳のある情熱的な短調の曲。
こういうタッチの曲はブラームスの中でもかなり好きなので、聴き逃さずにすんで良かった。

《F.A.E.ソナタ》のスケルツォの方は、同音連打がヴァイオリンとピアノパートの両方に頻繁に出てきて、これが結構物々しい雰囲気。(最初は一瞬、あのメンデルスゾーンの結婚行進曲風に聴こえる)
スークのヴァイオリンの高音のシャープな響きは、ピアノパートの重厚な響きに負けずに、まるで悲鳴をあげるかのように力強い。

冒頭は嵐か何かが襲ってくるかのように勇壮な雰囲気。
やがて、明るく伸びやかなタッチの長調の第2主題が入ってきて、垂れ込める暗雲のなかから、太陽の光が差し込んでくるよう。
中間部はとても優美な長調に変わって、スークのヴァイオリンがちょっと甘くてしなやか。カッチェンのピアノも柔らかく優しいタッチで、主題との明暗のコントラストが鮮やか。
再現部は相変わらず物々しいけれど、最後は急に長調に転調して明るく調和に満ちて終ってしまう。


Josef Suk plays Brahms´s Scherzo from 'F.A.E.' Sonata (Piano:Katchen)



Piano Trios 1-3: Cello Sonata 2Piano Trios 1-3: Cello Sonata 2
(1997/03/03)
Julius Katchen, Josef Suk, Janos Starker

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 『ジュリアス・カッチェンにまつわるお話』

 ジュリアス・カッチェンのディスコグラフィ

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耳鳴りマスカーソフト ~ ”Atmosphere Lite”(環境音ソフト)
最近使い始めた”Atmosphere Lite”。
耳鳴マスカー用のソフトを探しているときに見つけた、アンビエント(環境音)系フリーソフト。
多種類の自然音がビルトインされているので、耳鳴りのマスキングや気をそらせるのに役立つ。

パソコンソフトなので、パソコンを使っているときに”Atmosphere Lite”で自然界の音を再生すると、耳鳴りの有無に関わらず、かなり快適な音環境になる。
最近静かになっている耳鳴りも、パソコンを使っているとファン&モーター音で刺激されるため、音がきつくなる。
今までクラシック音楽を同時に流していた。でも、Dr.Jastreboffの共同研究者であるDr.HazellのTRT療法の「サウンド・エンリッチメント」に関する解説を読んでいたら、音楽は不適だという。
TRT療法では、不快な耳鳴りを引き起こす反応性の抑制が目的なのに、音楽(や話し言葉)のような意味をもった音を流すと、自律神経系統を刺激してしまう。
そのため、音楽を「サウンド・エンリッチメント」としてずっと聴き続けるべきではなく、普段どおり楽しむ(余暇の)ために聴くべきものと位置づけられている。

音楽のかわりに、自然音が推奨されていたので、”Atmosphere Lite”を使ってみた。
こういう環境音を聴くと、「馬耳東風」のごとく、水音や鳥・昆虫の鳴き声が耳と頭の中をスルーしていく感覚。
たしかに、聴覚や意識への負担は少ないと実感する。これがかなり快適。
パソコンがブンブン煩くても、耳鳴りはとても大人しい。
自然音と比較してみると、音楽の場合は耳と意識がどうしても引き寄せられていたのが、よくわかる。聴覚神経が刺激されて、意外と負担になっていたのかも。
パソコンを使う時は、”Atmosphere Lite”で自然音をずっと流しておくと、耳にとても良い感じがする。

”Atmosphere Lite”に組み込まれているシナリオ(情景のこと)は10パターン。
Deep Forest、Rainy Day、Oceans Night、Thunder Storm、Night Stream、Forest Stream、Dawn Chorus、Rain Forest、Oceans Edge、Woodland Campfire。

各シナリオに、あらかじめ自然の音(川、泉、雨、嵐など)と鳥・昆虫類の鳴き声などがいろいろなパターンで組み合わされている。組み合わせ方や音量は個別に自由に変更できる。
TRT療法で、カウンセリングと並ぶ2本柱の一つである「サウンド・エンリッチメント」では、水の音が特に良いとされている。実際、泉や小川の水音はとても心地良い。
大事なことは、耳鳴りが聴こえる程度に自然音の音量を抑えておくこと。TRT療法では、耳鳴りが聴こえなくなるようにマスキングしてはいけない。聴こえない音に対しては、”慣れる”ことはできないので。

日中に流すシナリオで特に気に入っているのが、”Dawn Chorus”。
鳥たちの鳴き声が爽やかで、早朝の森みたい。これに背景音のstream2を追加すると、小川の流れる音がずっと流れて、適度なノイズになる。
鳥や昆虫の鳴き声を増やしたかったら、Random SoundのBank1~3で追加設定できる。

夜はやっぱり”Night Stream”。背景音が、Fontamne、Stream、Night、Campfire、Campfire2と多数組み込まれている。
それぞれ音量が小さいけれど、バックグラウンドで水や火の音が流れて、そこにコオロギとか昆虫のしずかな規則的な鳴き声、獣の遠吠え、鳥の鳴き声など音が加わって、本当に夜の森みたい。とっても風流。

今は夜なので”Night Stream”のシナリオ画面。
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”Atmosphere Lite”にビルトインされている音の種類と数は、有償ソフトのDeluxe版よりも少ないけれど、背景音やランダム音の組み合わせと音量を変えればバリエーションは極めて豊富。全然違った印象のシナリオになる。
その上、音は全て録音できるので、まずWaveファイルで保存して、そのまま(またはMP3ファイルに変換して)CD-Rにコピーすれば、ラジカセやステレオで聴けるようになる。
MP3ファイルをiPodやMP3プレーヤーに転送すれば、いつでもどこでも聴くことができる。
絶対この音が入っていないとダメという人はともかく、フリーソフトにしては操作性・機能ともとても良く、かなり使えるソフトだと思う。

”Atmosphere Lite”はフリーソフトなので、Vectormediasoftware社のホームページから、無料でダウンロードできる。

tag : 音響・音楽療法

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イッサーリス ~ チェロ作品集 『Cello World』
たまたまチェロ&ピアノバージョンの《G線上のアリア》をYoutubeで聴いていたら、以前は苦手だったチェロの音がとても耳に心地良い感じ。
いつの間にか、音に対する好みが変わったらしい。
これはチェロの曲もいろいろ聴いてみなければ...と思って、ラックのあちこちに長い間眠っていたチェロのCDを探しだしてきた。
チェロが苦手なわりには、なぜかチェロが入っているCDが数十枚。室内楽はチェロが入っている曲が多いし、カップリングでたまたま入っていることもあるし。
ブラームスの二重協奏曲とピアノ三重奏曲以外は、ほとんどちゃんと聴いたことがないので、無駄にならなくて良かった~。やっぱり思い立ったときにCDは買っておくものです。

まず最初に聴くのに良さそうなのは、チェロ名曲集。
イッサーリスとマイスキー、ヨーヨー・マのCDを昔買ったのは覚えていたのに、ヨーヨーのCDが行方不明。どこにいったんだろう?
イッサーリスとマイスキーを両方聴いてみると、やっぱりマイスキーは私には合わない。豊饒で深い音色は魅力的には思うけれど、ルパートとアゴーギルがたっぷりかかった感情移入が激しい弾き方には疲れてしまう。

イッサーリスの方は、スチール弦ではなく、ガット弦を使っているので(これも初めて知ったか、全然記憶になかった)、響きが穏やかで落ち着いて、とても品の良い響き。
表現もわりとさらっとしている。といっても、理知的で硬い感じがするハインリヒ・シフのような弾き方ではなくて、しっとりとしてはいるけれど、べたつかない叙情感がほど良い感じ。

イッサーリスのチェロ曲集の選曲を見ると、チェロ曲に詳しくない私でもかなりのこだわりを感じる。
定番ものもいろいろ入っているけれど、ちょっと毛色の変わった曲もちらほら。
特に好きなのは、ベートーヴェン、シューマン、ドビュッシー、ベルリオーズ、サン=サーンス、ドヴォルザークにヴェイン。
作曲家自体が好きだったり、原曲が好きな場合は、やっぱりチェロで聴いても好きなことが多い。
シューマンだけは、ピアノソロよりもチェロ曲の方が馴染みやすいし、シューマンは《チェロ協奏曲》と《幻想小曲集》は有名だったはず。
ブックレットの曲目解説は、イッサーリス自身が書いている。音楽関係の本も何冊か出版しているので、文章も書ける人らしい。

インタビュー:スティーブン・イッサーリス(September 2, 2010)[英文]


Cello WorldCello World
(1998/07/28)
Steven Isserlis

試聴する(米amazon)


Beethoven/Andante and variations for mandolin & piano in D major, WoO 44/2
珍しいチェンバロ伴奏。ベートーヴェンをチェンバロで弾かれるのはあまり好きではないけれど、ガット弦のチェロとチェンバロの響きが不思議とよく合っている。

Schumann/Sonata for violin & piano No. 3 in A minor, WoO 27 Intermezzo

Debussy/Nocturne and Scherzo, for cello & piano, L. 26
わりと好きなドビュッシーの曲。ドビュッシー独特の軽快さや諧謔さがチェロの響きで落ち着いた雰囲気に。

Berlioz/La Captive for voice & piano (or orchestra), H. 60 (Op. 12)
なぜかベルリオーズの歌曲はとても好きで、歌曲集のCDを持っている。
この曲も聴いたことがあるけれど、チェロ&ピアノが伴奏しているのは珍しいかも。
Felicity Lottの歌声がとても綺麗。

Faure/Morceau de Concours, for flute & piano (or strings, arranged) in F major (original title: "Morceau de Lecture")

Leonard/Donkey & Driver, for cello & piano
これは笑える!チェロの低音がドンキーの雰囲気そのもの。サン=サーンスの《動物の謝肉祭》といい勝負。

Saint-Saens/The Swan (from "Carnival of the Animals"), original (for 2 pianos & ensemble)
伴奏が珍しい2台のピアノ版である上に、指揮者のティルソン・トーマスとダドリー・ムーア(誰だったっけ?)がピアノを弾いているという、面白い顔合わせ。
いつも聴く《白鳥》よりも、かなり華麗なピアノでファンタスティック。なかなか洒落てます。でも、シンプルにピアノ伴奏は1台の方が、チェロが引き立って聴こえる。
※どこかで名前を聞いたことがあると思ったムーアのプロフィールを調べてみたら、ピアノ・オルガンが弾けるし、ジャズピアニストで作曲家としても有名な人だった。

Villa-Lobos/O canto do cysno negro (Song of the Black Swan), for violin & piano, A. 123

Dvorak/Romantic Piece No. 4 for violin & piano ("Larghetto"), B. 150/4 (Op. 75/4)
これはヴァイオリン&ピアノのレパートリーの名曲。
この曲を聴くときは、スークのヴァイオリン(とホレチョクのピアノ)と決まっているけれど、イッサーリスのチェロもやや抑制気味のタッチが情感深くてとても良い感じ。

Martinu/Piece for 2 cellos, H. 377

Popper/Elfentanz for cello & piano, Op 39 "Dance of the Elves"

Julius Isserlis/Souvenir russe
イッサーリスは音楽家の家系で、この曲はイッサーリスの祖父が作曲。明るく少し古典的な雰囲気がちょっとブロッホの《コンチェルト・グロッソ》に似ているかも。

Tavener/The Child Lived, for soprano & cello
珍しくもタヴナーの歌曲。タヴナーの作品集も録音しているので、イッサーリスとタヴナーは親交があるらしい。

Rachmaninov/Lied (Romance), for cello & piano in F minor, TN ii/32

Scriabin/Romance for voice & piano
ショパン的な作風だったスクリャービン初期の頃の作品のような、調和して安定した和声とメロディアスな旋律。

Tsintsadze/Chonguri

Seiber/Dance Suite for cello & piano
昔懐かしいダンス風のジャズ(?)のような曲。(これがCDラストの曲だったなら、気が抜けそう。エンディングでなくて良かった)

Carl Vine/Inner World, for cello & amplified CD
オーストラリアの作曲家カール・ヴァインの《Inner World》。
このチェロ曲集のCDは、元々、前曲《Dance Suite》で終るはずだったらしい。
録音セッションが始まってから、たまたま耳にしたVineの《Inner World》にイッサーリスが惚れこんだので、これが最後の収録曲に。
チェロを弾いているのはイッサーリスではなく、David Pereira。この曲を献呈されたチェリスト。
多重録音をデジタル加工しているので、ほんとに全てチェロで弾いているとは思えないような曲。
イッサーリスが20世紀のチェロ作品の古典だと言うとおり、まさに現代音楽そのもの。
現代音楽のなかでも電子音楽系が好きな人なら、とても面白く聴ける曲。

このCDには収録されていないカザルスの《鳥の歌》。イッサーリスのチェロ独奏で。
Steven Isserlis - Song of the Birds



                                

<チェロの周波数特性に関する記事>
チェロの倍音がどれくらい出ているか知りたかったので、チェロの周波数特性を解析した記事をインターネットで検索すると、とっても参考になる記事がいろいろ。
やはりチェロの豊かな響きが、チェロ独特の倍音成分の多さを視覚的・物理的に分析したいという欲求を刺激するからでしょうか。
物理は昔からさっぱりわからなかった私には、チェロの倍音がこんなに豊かなのだと目で見てよくわかるとても貴重なデータ。

「目で見る 楽器のサウンド」(工房ミネハラ)

「音色」に関する数学的ハッタリ的考察 -準備編-

tag : イッサーリス

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レーゼル 『ベートーヴェンの真影 ピアノ・ソナタ全集 2 』 ~ ピアノ・ソナタ第30番 Op.109
好きになりたいと思って、何度聴いてもやっぱり好きにはなれない曲というのがあって、ベートーヴェンのピアノ・ソナタなら、《熱情》と第30番。
《月光》もそうだったけれど、第1楽章は誰の演奏でも眠たくなるのでしようがないとして、クライマックスの第3楽章はレーゼルのライブ録音を聴いて、こういう曲だったのかとようやくわかって、これはとても好きな曲に。

《月光》が素晴らしく良かったので、それなら《熱情》と第30番をレーゼルのライブ録音で。
2008年10月1~2日、紀尾井ホールでのリサイタル。カップリングは収録順に第9番、第30番、第6番、第23番。
前半の第9番と第30番は優美さと力強さのコントラストが強め。元々好きな第9番に続いて、第30番も今まで聴いてきた録音のイメージよりも、力感とダイナミズムを強く感じる。

ベートーヴェンの真影 ピアノ・ソナタ全集2ベートーヴェンの真影 ピアノ・ソナタ全集2
(2008/12/25)
レーゼル(ペーター)

試聴する


ピアノ・ソナタ第30番ホ長調 / Sonate für Klavier Nr.30 E-Dur Op.109[ピティナの作品解説]

第1楽章 Satz Vivace, ma non troppo
旋律自体はメロディアスだけれど、強い強弱のコントラストで、優美でしかもダイナミック。
過去の幸福を追憶するような濃密な叙情感があるので、あまり得意な曲想ではないので、誰の演奏が一番好きとも言い難い。
ゼルキンは優美でちょっと女性的だし、アラウはルバート多用で感情移入が深くすぎる。
レーゼルは、dolceの部分もかなりシャープなタッチで、クレッシェンドもかなり前の方の小節から。全体的に力感強めで、しなしなしていないので、こういう弾き方の方が私には聴きやすい。(人によっては力強すぎるように感じるかも)

第2楽章 Satz Prestissimo
この曲のなかで一番好きな楽章。Prestissimoでフォルテの多い曲というイメージがあるのに、楽譜を見ると弱音部分もかなり多い。このイメージは、オクターブで弾く主題の激しさと、からクレッシェンドしていく部分が長いので、緊張感が続くせいだろうか。
レーゼルは、冒頭の主題から速いテンポと鋭く力感のあるタッチ。全ての音がよく鳴っていて、堅牢な構造感と一気に駆け抜けるような緊迫感があって、今まで聴いた録音のなかでも一番好きな弾き方。

第3楽章 Satz Andante molto cantabile ed espressivo
変奏形式のピアノ・ソナタは、第12番《葬送》の第1楽章以来。
十年後に書かれたこの曲の変奏は、はるかに自由度が高く、変奏パターンが多彩。まるで達観した境地の仙人が、自由自在に戯れているかのような自由さ。
主題と第1変奏は、とても優美な雰囲気。
第2変奏は左右の手が交互に入るリズム感が面白くて、最初はまばらな音が飛び跳ねて軽快かと思うと、重音になると逆にとても優美に変わる。
第3変奏は左右が交代で同音型の旋律を弾く快活なアレグロ。この軽快で諧謔な雰囲気のせいか、なぜかディアベリ変奏曲を連想してしまう。
第4変奏は軽やかに舞うようなレガート。主題旋律がまたディアベリ変奏曲に似ているような。アタッカでアレグロのフーガはとっても楽しげ。
レーゼルが弾いていたブゾーニ編曲版バッハの「前奏曲とフーガ」のように、明快な打鍵の軽快なノンレガートと屈託のない清明な雰囲気で、とても晴れやか。

最終変奏は徐々に、旋律を構成する音価が短くなって音が増え、最後はトリルで敷き詰められてしまう。
このトリルの大きさがピアニストによってかなり違い、背景的にやや弱い音量で弾くか、旋律と対等に同じ音量で弾くかのどちらか。
レーゼルは後者。トリルが速く鋭いので、旋律よりも強く大きく聴こえる気がする。
トリルの存在感がとても強いけれど、不思議と邪魔にならず、まるで歓喜に満ち溢れているかのよう。
徐々にディミニュエンドして、最後は穏やかに主題の回想。トリルが入った変奏が息づまるような力強さだったので、力がす~と抜けたような心地良いエンディング。

レーゼルは、どちらかというと、楽章中で強弱・緩急の細かい変化をつけて優美な繊細さを出すよりも、テンポやディナーミクの強いコントラストをつけて楽章・変奏間の曲想の違いを明確にしている(と思う)。
そのせいか、構造的な堅固さと安定感があり、優美さが強くなりすぎないような柔と剛のバランスが良い感じ。
第1楽章はしなやかな優美さではなく、シャープな力感が印象に残るし、第2楽章も強い意志が漲っているような力強さ。
第3楽章も叙情性の強い変奏以外は軽快で躍動的。特に最終変奏の力強さと高揚感が素晴らしい。
もともとこの曲のしなやかな優しい雰囲気が好きではなく、力強くポジティブな意志が貫かれているようなレーゼルの演奏を聴いて、これが自分が聴きたかった音楽なのだと、ようやくわかったのでした。



[2012.6.6 追記]

「レコード芸術」(2012年3月号)に、昨年10月のツィクルス最終回となるリサイタル直前のインタビューが掲載されている。
生真面目な人柄だと思っていたレーゼルだけど、結構ユーモア好きの面白い人らしい。
(ドレスデン音楽大学でレーゼルに師事したお弟子さんのピアニスト高橋望さんも「怖そうな顔してますが、意外にジョークが好きな先生です」と言ってます。)

- 振り返ってみて個人的に深い思い入れや愛着を感じる作品はありますか?

「難しい質問ですが(と深い溜め息をつく)、特に深い印象を得たのは作品109(第30番)です。作品111(第32番)は22歳の時に弾きましたし、大曲と呼ばれる多くの作品は若い頃から弾いていましたが、年を追っていろいろなソナタを弾くうちにも多くの発見がありました。そのようにベートーヴェンと向き合ってきたなかで、一番深い印象を残した、また自分が弾いたなかで最も気に入っているのが今回の作品109ですね。・・・・・自分のなかでも非常に深い理解を得ることができたし、同時に演奏も今回の録音シリーズのなかでも特に満足する出来になりました。」

- その理由をもう少し具体的に紐解いてお話いただけますか?

「その日とてもコンディションが良かったのです。それが質問の答えではないことはわかっていますが(笑)。」(これはジョークのつもり?)
「私が特に作品109を好きな理由は最終楽章です。ベートーヴェンが書いたなかでおそらく3番目に長い緩徐楽章で、変奏曲形式をとりますが、シンプルなテーマのヴァリエーションのなかに、ほんとうに豊かな宇宙が凝縮されている。変奏ごとに多様な音楽内容が凝縮されているのが素晴らしく、それがこの曲に私が思い入れを持つ理由の一つです。」

- 最後にあなたが信条としていることがあれば教えてください。

「私は人間を楽しませることを望んだわけではなく、人間を善くしたかったのです。残念ながらこれは私ではなく、ヘンデルの言葉ですが、確かに真実です。」

tag : ベートーヴェン レーゼル

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耳鳴り治療のための音響・音楽療法トピックス ~ 楽器の周波数解析データ
耳鳴りのマスキングに向いている楽器の音というのは、どういうものか調べていると、楽器ごとの周波数解析の論文を発見。

ピアノ、チェンバロのほか、ヴァイオリン、ギター、フルート、トランペット、オルガン、ビブラフォンなどの解析データが載っている。(”オクターブ3のド”を弾いた時のデータ)
「音の周波数解析と楽器の音色について」[2003/2/26,平野拓一(東京工業大学)]

以前の記事<音楽療法とクラシック音楽>にも載せていた「楽器別の周波数域」の図はこちら

時間波形では音の減衰のペース、周波数スペクトルの振幅では楽器ごとの倍音の多さの違いがわかる。
楽器の音の違いが、周波数解析データで視覚的に説明されるのは、私にはとても面白い。

解析対象となっている楽器のうち、好きなのは、ピアノ、ヴァイオリン、ハープシコード(チェンバロ)、ビブラフォン。
倍音の多い楽器が、ヴァイオリンとチェンバロというのは以前から知っていたけれど、波形をみるとそれがよくわかる。
とりわけチェンバロは倍音が多い。あのチェンバロ独特の豊饒な音はこの倍音の多さのため。

面白かったのは、ビブラフォンのデータ。
ビブラフォンの音色や響きはかなり好き。
ピアノとは全く発音機構が異なる楽器だと思っているので、ピアノとちょっと似た音のパターンを持っているのというのが面白い。
ビブラフォンは共鳴管が鳴ることと、ダンパーペダルを踏むと余韻を調節できるので、残響が多いエコーがかった音がするけれど、音自体はクリア。
このデータを見ると、倍音がとても少なく、音の純度が高い。

ビブラフォンの曲を初めて聴いたのは、小曽根真のデビューアルバム『OZONE』
特にジャズに興味があったわけではなかったのに、中学(それとも高校)時代にたまたま買ったかCDがこれだった。
有名なビブラフォン奏者ゲーリー・バートンのデュオという、デビュー盤にしては珍しいフォーマット。
曲想とピアノ&ビブラフォンの明るく透明感のある音色とがよく似合っていて、若かりし小曾根真らしい瑞々しさと意気込みが伝わってくるようだった。(結婚後の彼は、ピアニズムが以前と変わったように感じるけど)

「クリスタルラブ」小曽根真&ゲーリー・バートン



                              

音響測定サウンドコラム「周波数/オクターブ/基音と倍音」の解説によると、基本周波数(基音)と倍音の関係は、基音が最も成分としてレベル(音量)が高く、倍音は基音よりレベルが低い、という傾向にある。
しかし、ギターなどの撥弦楽器やピアノなど打弦楽器は、弦と強さによって、時間と共に、第2倍音(オクターブ上)の周波数の方がレベルが高くなる場合がある。弦の端で反射する振幅が進行する振幅と一致するからだという。

「音の周波数解析と楽器の音色について」の著者コメントでも、基本波よりも倍音の方が強いがあるが、音の高さとしては基本波の周波数を音の高さとして感じる、と書いていた。

「音の周波数解析と楽器の音色について」の周波数解析データを見てわかったことを記録のためにメモしておいた。(でも、この見方、合っているのでしょうか??)

ピアノ
-音の減衰が早い。周波数域が狭く、周波数が高くなると一気に音量が下がってゼロに。倍音が少ないことがよくわかる。

ヴァイオリン
-ピアノと違って、音がかなり持続する。周波数域はピアノより幅広く、音量も大きい。ピアノより明らかに倍音が多い。

フルート
-ヴァイオリンと同じく、音がなかなか減衰しない。周波数域は、ヴァイオリンよりは狭いが、ピアノよりは広い。

アコースティックギター
-ナイロン弦とスチール弦では、音の減衰パターンはあまり変わらない。
-周波数域の特性がかなり違って、ナイロン弦は周波数域が狭く、スチール弦は広いので、スチール弦の方が倍音が多い。

チャーチ・オルガン
-音の減衰が遅い。周波数分布がかなり規則的。パイプオルガンなら、倍音となる音を独立したパイプでそれぞれ発音可能なため?

ビブラフォン
-時間波形はピアノに少し似て、減衰は比較的早いが、そのペースはピアノよりも遅い。共鳴管が振動して音がなるために、残響が長くなっているのだろう(たぶん)。
-周波数スペクトルの振幅も狭く、ピアノよりもさらに倍音が少ない。

ハープシコード(独:チェンバロ)
-ピアノよりも音の減衰が遅いので、残響が長い。実際、CDでチェンバロ演奏を聴くと実感する。
-音量は大きくはないが、発生する周波数の幅が広く、チャーチ・オルガン以上に倍音が多い。

tag : 音響・音楽療法

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ホームベーカリーでご飯パン
お米からパンが焼けるGOPANを持っていなくても、ご飯を使ったパンは手持ちのホームベーカリーでも簡単に焼ける。
GOPAN人気が気になるのか、GOPAN以外のホームベーカリーでも、最近はご飯を使ったパンが焼けることをPRしている。

米粉コースがあれば、米粉100%パンが焼けるのは当然として、米粉コースがなくても、早焼きモードで米粉パンは焼ける。
ただし、米粉は相変わらず強力粉の倍以上の価格なので、かなり割高。
それなら、ご飯を強力粉に混ぜれば、普通のホームベーカリーでも簡単にご飯パンが焼ける。余りご飯が使えるし、米粉パンよりも小麦粉パンに近い味なので、こっちの方が美味しい。
強力粉に炊いたご飯を混ぜて食パンコースで焼けば、お米の甘みともっちり感のあるパンが4時間くらいで出来上がる。
強力粉とご飯の比率は好みに応じて変えられるけれど、ご飯を捏ねるのはかなり力がいるので、硬かったり、多すぎたりすると、充分捏ねられずに米粒が残ってしまう。

象印「パンくらぶ」の”ご飯食パン”レシピ
象印のホームベーカリーは、大々的にPRしているわりには、ご飯パン専用コースはなし。
小麦パンと同じ工程の「もちもちコース」を使用。
象印のレシピは、ご飯の比率・量がかなり多い。(モーターがかなり強力なんだろうか)
ごはん食パンのレシピは、白米、玄米、赤飯の3種類。配合がそれぞれ違う。

 水(5℃) 130mL
 ごはん(常温に冷ます) 200g
 強力粉 250g
 砂糖 16g(大2)
 塩 5g(小1)
 バター 15g
 ドライイースト 3g(小1)

強力粉250g&ごはん200gというのは、かなりのボリューム。
よほどモーターが強力でないと、ご飯が硬くて思いので、捏ね不足になりかねない配合。
ご飯100gだけでも、panasonicのホームベーカリー(1斤用)で捏ねると、ご飯は飛び出るし、モーターが弱いせいか、ご飯が多すぎてなかなか羽根が回らない。
モーターに負担がかかって、故障の原因になりかねないかも...と思いながら使っている。


panasonic「ベーカリー倶楽部」の”ごはんdeパン”レシピ
強力粉とご飯の量の両方が象印よりも少なめ。
ごはんdeパンの作り方(パナソニックホームベーカリー使用の場合)

 強力粉 200g
 ごはん 100~150g
 砂糖 14g
 塩 8g
 バター(無塩) 8g
 スキムミルク 5g
 水 150ml
 ドライイースト 2.1g
※水分量はご飯によって違うので、水の分量は様子を見ながら調整した方が良い。


マジ超もっちもち☆HB☆ご飯deパン!!(クックパッド)
早くも2007年にクックパッドでレシピ公開していて、現在、つくれぽが1000件以上と大人気のレシピ。
強力粉が多め・ご飯少なめの作りやすい量なので、どのホームベーカリーでも使える。


ホシノ天然酵母の焼きたてパンLESSON
ホシノ天然酵母でつくるご飯パン”玄米ごパン ”のレシピが載っている。
レシピでは、最強力粉と玄米ご飯を使っているけれど、普通の強力粉と白米ご飯でもちゃんと焼ける。
玄米ご飯だとかなり硬くてご飯粒が残ってしまうので、いつも使うのは白米ご飯か玄米を3割混ぜたご飯。
強力粉は、国産小麦の方が小麦の味が強くて、ホシノ天然酵母に良く合う。


ホシノ天然酵母の焼きたてパンLESSON―からだがよろこぶたのしさとおいしさ (白夜ムック―白夜書房のレシピBOOK (No.170))ホシノ天然酵母の焼きたてパンLESSON―からだがよろこぶたのしさとおいしさ (白夜ムック―白夜書房のレシピBOOK (No.170))
(2005/01)
深本 恭正、深本 和美 他

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tag : ホームベーカリー

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パッヘルベルのカノン
”カノン”と言えば、すぐに思い浮かぶのが《パッヘルベルのカノン》。
ポピュラーピアノの楽譜に載っていたときは、《涙のカノン》なんて名前がついていた。
正式には「3つのヴァイオリンと通奏低音のためのカノンとジーグ ニ長調」の第1曲。

超有名な曲なので、オーケストラで演奏されることが多い。
私の好きなのは、ピノック&イングリッシュコンサートによる古楽器オケによる演奏。
古楽オケ特有の空中にすっと消えてしまうような軽やかな音色と透明感が、遠い昔ののどかな時代を偲ばせるよう。
現代オケのレーデル&ミュンヘン・プロアルテ管の演奏だと、現代楽器の厚めの響きと色彩感でかなり華やか。
古楽版がペザント風な素朴な趣きだとすると、こちらは宮廷音楽風に華麗な雰囲気。


Johann Pachelbel, Canon and Gigue in D major. The English Concert
カノンの後についているジーグが聴けるのが珍しい。




パッヘルベルのカノン クルト・レーデル&ミュンヘン・プロアルテ管



ピアノバージョンもいろいろあるけれど、全く違った編曲のジョージ・ウィンストンとデヴィッド・ランツのピアノソロを聴き比べると面白い。

ウィンストンはジャズ風。ピアノのタッチや音色は好みとは違うけれど、ジャズのピアノソロを聴き慣れているせいか、弾力のあるタッチとキビキビしたリズム感が爽やかで気持ちよい。
ランツはイージー・リスニング風。ピアノの音が柔らかくて綺麗で叙情豊か。凝った装飾の旋律は煌くように流麗でロマンティック。時にシンフォニックで壮大な響きにもなり、9分近くとかなり長いのに全く飽きずに聴かせる。

昔から聴き慣れているせいもあって、やっぱりピノック&イングリッシュコンサートの古楽オケのとても素朴な雰囲気が一番。


canon in d - george winston piano variations



David Lanz - Canon in D major (piano)

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耳鳴治療記録(2)
耳鳴治療記録(1)から続く]


[2011.5.18 追記]
ヘッドフォンを使わない理由は、長時間(といっても数十分くらいで)ヘッドフォンで電子ピアノの音を聴いていると、頭痛がするため。
ステレオでCDを聴くときでも、ヘッドフォンと使うのは、音の表現の細部を聴き取りたい時や就寝前のみ。
愛用していたAKGのスタジオモニター用(セミオープン型)ヘッドフォンは、装着感はそれほど悪くないけれど、高音の耳鳴りが増幅する。
特に良くないのは、ヘッドフォンで音楽を聴きながら眠ってしまうこと。
覚醒した時に耳鳴りが強くなっている(気がする)ので、個人的には耳にはとても良くないと思う。
たしか、以前見つけたインターネット上の情報でも、音楽として認識されていないのに、聴覚器官が音にさらされているだけの状態は良くない...とかいう趣旨のことが書いてあった覚えがある。
そういえば、耳鳴りを発症した日のことを思い起こすと、前夜ヘッドフォンで音楽を聴きながらうっかり眠ってしまって、目が醒めたら耳鳴りがしていた。
これが耳鳴り発症とどういう因果関係があるのかはわからないけれど、ヘッドフォンで音楽を聴くことに対してはかなり注意するようになっている。

[2011.5.21 追記]
例年のごとく、これから夏にかけて睡眠障害気味。
夜中の3時か4時頃に寝付いて、朝の6時頃に中途覚醒し、あとは数十分おきに目が醒める。結局トータルの睡眠時間は4~5時間未満。(睡眠薬などの薬は一切服用せず)
それぐらいの睡眠時間だと、以前は耳鳴りがかなり大きく数種類がピーピーと煩かったけれど、今はシ~という小さな雑音が頭の上方で鳴る程度。種類も音量も減っているし、そのうち消えることも多い。
睡眠不足の状態でもこの程度で済んでいるというのは、確実に耳鳴りが治まってきた証拠。

[2011.6.2 追記]
やはり昨年と同じく、夏に近づくにつれ耳鳴りはますます静かに。
雨や湿気が多い天候で増幅することもなく影響されない。
今の耳鳴りは、蚊の鳴くような雑音性の音で、聴こえるか聴こえない程度の大きさ。これは全く気に鳴らないし、無視できる。それに、聴こえない時、気がついていない時が多い。
右耳の低音型モーター音もかなり静かで、不思議なことに閉塞感がほとんど消滅。
気温が高くなってきたせいか、パソコンのファン・モーター音がかなり大きくなり、これが耳を刺激する。環境音ソフトで水音を流しておけば、マスキングできるし、電源を切れば、そのうち耳鳴りもおさまるので、大した問題にもならず。
今の状態なら、これからもずっと耳鳴りとお付き合いしても全くかまわないと思うレベル。

[2011.6.29 追記]
昨日、5年ぶりに歯医者さんに行って、右下の歯と歯根嚢胞の治療。
治療が終ってから、なぜか右耳の低音耳鳴りが全然聴こえてこないし、閉塞感・圧迫感も消えている。
この暑さのせいか、歯の治療のせいか(同じ右側だし)、または、ドリルの音がマスキング効果になっているのか、今のところ理由はわからない。頭の頂上で鳴っているジ~という雑音は相変わらず鳴っている。
しばらく様子を見れば、これが一時的なものかどうか、わかるに違いない。

[2011.7.27 追記]
昨日、朝起きたら、突然右耳がふさがったような感じ(閉塞感)があり、右耳と左耳との聴こえのバランスが明らかに悪い。
ピアノを弾いていても、右耳の閉塞感は消えず。それに右耳からピーピー不規則な高音の耳鳴りが聴こえているのも気にはなる。
最近、睡眠障害でトータル4時間くらいしか寝ていないので、睡眠不足のせいかもしれない。
それとも、閉塞感なら中耳炎か外耳炎かも...とも思ったけれど、午後、あちこち買い物しに出かけていたら、いつの間にかすっかり閉塞感が消えていた。
今日は全く閉塞感なし。昨日のあれは、一体何だったのでしょう?
まあ、医者に行かずともすぐに治ったから、良しとしましょう。

[2011.8.4 追記]
低音の閉塞感が再発することもなく、耳鳴りはやっぱり暑さに弱いらしく、静かなことが多い。
夜寝るときでも全く耳鳴りが聴こえないか、意識されていない。これは開いた窓から入ってくる外部の自然騒音と、扇風機の羽の音がマスカー代わりになっていることも理由の一つ。
日中も、耳鳴りがなっていても気がついていないか、鳴っている認識はあっても、注意が全く耳鳴りに向かっていない。
ほとんど自然音のBGMと同じで、意識のフィルターを素通りしている。
"耳鳴りと付き合う"とか"共存する"というよりも、"互いに無関心な同居人"と言う方がこの状況には相応しい。

[2011.9.19 追記]
昨年同様、夏もそろそろ終わりになってくると、また右耳の低音耳鳴りが聴こえ始めてきた。
夏の間はほとんど聞こえなかったのは、たぶん生活騒音のおかげ。窓を開けているとクーラーの室外機の音やら何やらで、自然にマスキングされている。
これから涼しくなると窓を閉めるので、モーター音の類の生活騒音が聴こえなくなると、低音の耳鳴りが大きくなってくる。
低音の耳鳴りは、閉塞感と振動を物理的に感じるので、高音の耳鳴りとは違って、意識しないですむというわけにはいかないのが厄介。夜になると特に煩くなるのはいつものこと。今は閉塞感と振動とも感じていないのでさほど気になることはなく、当分観察しておくことに。
高音のジーという音は、頭のてっぺん近く、やや右よりのところと、左耳で鳴っている。これは一日中鳴っているらしいが気がつかないことも多いし、鳴っているのはわかっていても、BGM化しているので、全く気にならない。

[2011.9.27 追記]
昨日は歯のインプラント手術。術後、インプラントを埋めた部分から右下顎全体にかけて、鈍痛と腫れがでてきて、耳鳴りどころではありません。
身体のどこかが痛くなると、耳鳴りなどは全く聴こえなくなるか、聴こえていても意識の外にあるかで、人間の注意力というのは面白いものです。

[2011.11.6 追記]
秋になって、また耳鳴りが大きくなってきた。
気温が下がったせいか、ほとんど窓を閉めているので外部騒音によるマスキング効果がなくなったせいか、理由はわからないが、季節変動型の耳鳴りなのは確か。
特に、右耳の低音のモーター音は賑やか。寝る前は、5種類くらいの色とりどりの音が両耳と頭頂部で賑やかに鳴っている。
でも、不思議と気にせずにすぐに眠りに落ちるし、途中で目が醒めても、またすぐに眠ってしまう。
ラジオもCDの自然音も薬も、全て使っていないけれど、眠るには全く支障がない。
昔から、多少の騒音でも、どこでもすぐに眠れる体質。これが幸いしているに違いない。

午後にショッピングセンターへ買い物に。店内騒音が賑やかなので、耳鳴りは全く聴こえず。
帰宅しても、耳鳴りがとっても静かで、耳鳴りを意識を集中しても、ほとんど聴こえない。
どうも、マスキング効果が残っているらしい。
どちらにしても、苦痛に思えることは全くなく、物書きや料理とか、本やCDの整理など、何かに集中していると、耳鳴りは聴こえない。
結局、意識を耳鳴りからそらす環境や状態にすることが、耳鳴りが聴こえない、または、気にしないために、一番効果的らしい。
どんな薬でも全く使わないで済んでいることが、何よりも良いことです。


[2011.12.20 追記]
去年に比べて、冬場とはいえ、耳鳴りはかなり大人しい。
右耳の低音モーター音も小さく、振動感覚や閉塞感もほとんどない。
音の種類は相変わらず5種類くらい。でも、日中は1~2種類しか聴こえない。
寝るときに音が最大、種類も最多になり、特に右耳は煩いけれど、気にせず入睡・熟睡できる。
朝起きると耳鳴りは小さくなるので、ベッドで頭がフラットに近い状態で耳鳴りが最大になる。
といっても、一つ一つの音は小さいし、明らかに昨年よりも耳鳴りが随分良くなっている。

[2012.2.20 追記]
相変わらずパソコンを使っていると、モーター音とファンの音で、高音のジーという耳鳴りが増幅されて、賑やか。
パソコン使用中は作業に集中しているので気になることはないが、電源を切るとジージー、ワンワンと頭のなかで反響している。
でも、しばらくするとすぐに元通りの静かなレベルに戻るので、パソコンを使うこと自体は問題なし。
寝ている間は賑やかに鳴っている(らしい)耳鳴りも、中途覚醒しても煩くなることもなく、朝起き上がるとすぐに静かになる。
どうも横になっている姿勢が良くないらしい。
耳鳴り持ちは枕は高い方が良い...と昔から言われているようで、これはその通り。

[2012.3.16 追記]
随分暖かくなってきたせいか、昨年の春と同様に、耳鳴りもすっかり静かに。
日中は気温が高いせいか、高音の耳鳴りはほとんど聞こえない(消滅している)時間が多くなっている。
ジ~、シ~という音が微かに聞こえるけれど、これは昔から聞こえていた音。たぶん体内活動の音ではないかと。
右耳の低音モーター音がまだ残っているけど、これも閉塞感がなくなり、音も軽くなっている。
気温が上がると耳鳴りが静かになるので、やはり血流起因の耳鳴りらしい。
睡眠不足でも耳鳴りが増幅することはなくなったのも、かなり治っている証拠。さすがにパソコンを使うと共鳴するらしく、増幅しはするが、煩さがかなりマシになっている。

[2012.7.10 追記]
相変わらず耳鳴りは続いているけれど、もう気にする、気にしないというレベルは過ぎ去って、完全にBGM化している。
耳鳴りが鳴っていること自体が、異常ではなくて普通の状態だと思うので、特に耳鳴りに対して感じることも思うことも無く。
そのせいか、耳鳴り関係の情報に対する興味や情報収集する意欲も薄れているし、「耳鳴り」という言葉が頭の中に浮かんでこない。
耳鳴りのことをすっかり忘れるには、耳鳴りに関係するものから離れるに限るし、もう書くべきこともなくなっているので、この記録は今日で終わり。
耳鳴治療記録(1)
1年間ほど続いた耳鳴りも、今ではすっかり静かになり、たとえ鳴っていても気にならないレベル。
日常生活に全く支障のない状態になったので、一つの区切りとして、発症当時(2010年3月上旬)以降の生活や、その間試行錯誤したことを思い出して、まとめてみました。
これはあくまでも個人的なケースなので、他の人が同じことを実践してみたとしても、性格や症状も人によって違いますので、同様の効果が得られるかどうかはわかりません。

耳鳴りの症状
耳鳴りの音質や種類は、1年ほどの間にいろいろ変化していた。
発症当初は左側の頭上方からピーという甲高い高音の金属音が聴こえる。
耳鼻科で検査すると、内耳性の耳鳴り。右耳の聴力も正常範囲ぎりぎりまで低下。
やがて右耳から低音が聞こえ始めて、音の数種類に徐々に増加。
しかし、2ヶ月も経てば、耳鳴りにもすっかり慣れてしまった。

梅雨くらいまでは耳鳴りを意識していたような気がするが、夏になると耳鳴りに悩まされた記憶があまりない。
10月に入って、秋になり涼しくなると、突如耳鳴りが大きく聴こえてきて、それまで耳鳴りのことが全く気にならないほど、静かだったのに気がついた。
それから耳鳴りの種類が増えて、この状態が春先まで続く。

秋~冬にかけて、以前よりも鳴っている音が増えて、合計5種類くらい。
昼間によく聞こえるのはそのうち3~4種類。音パターンは、頭頂部の中高音(ジ~~ジ~)、右耳は高音(ピー)と低音(ブーン)・低音のリズムパターン(コロコロコロコロやウ~ンウ~ウ~ン)やモールス信号。
左耳は、夜中によく聴こえる。低音モールス信号や中低音のルルルルルルルル。モールス信号のパターンは不規則。
ジ~~、ピー、ブーン以外は、リズミカルで度々パターンが変化する。配管のゴボゴボとか、お御輿の掛け声みたいな音とかも聞こえるときがあった。

今年春になると、左側の耳鳴りがかなり小さくなった。右耳の低音が静かなときに大きくなることを除けば、両耳と頭の上部でいつも鳴っていた音もやがて静かに。
完全に消滅していないにしても、ほとんど聴こえなくなった音もあるし、1年前とは見違えるように静か。もうBGM化している。
ほとんど聴こえないこともかなりあり、鳴っていても気にもならないし、意識していないことも多い。

耳鳴りが鳴っている場合は、ピーという高音はほとんどなく、かなり小さい音量のジー、シー、ザーという雑音性の耳鳴り。これは全く気にならない。
低音の耳鳴りは相変わらず時々聞こえてくるけれど、これもマスキング可能なレベル。
感音性耳鳴りはほとんど完治しないという現実を考えれば、耳鳴りで悩むことがないので、ほぼ回復したと言って良いと思う。

耳鳴りに対する心構え
発症時にいろいろ調べたところ、耳鳴りの原理自体が解明されておらず、特効薬や完治させる治療法がない。
耳鳴りを完全に失くすということは、発症後しばらくして早々に諦めて、一生共存できるように、悪化させないことを目的にした。
不可能なことを望むのではなく、50%で充分と割り切る方が精神衛生に良い。

この頃、インターネットで耳鳴り関係の情報を随分収集した。
そのときに見つけた”耳鳴りの自然経過”「耳鳴りホームページ」の左側フレームにある「耳鳴りの自然経過」の図)という説明によれば、耳鳴りの病状の推移には主に3パターンがあるという。
多くの人は比較的早期に順応して、耳鳴りの音量はかなり低減していくという経過をたどる。
しかし、徐々に悪化してそれが長期にわたって続くというケースも若干あり、原因はいろいろ。
とにかく、どうすれば初期の軽症を悪化させずにすむのかを第一に考えた。

ネガティブ思考とストレスを避ける
収集した情報のなかで、”新しい耳鳴りの理論”というホームページもとても役に立った情報。
耳鳴りに対して、頭のなかでネガティブな音だと判断すると、大脳内で不安・苛立ち・緊張などのマイナスの感情が起こり、これが悪循環となって、耳鳴りがさらに大きくなる...という原理を説明していた。
なるほど~と思ったので、耳鳴りに対しては、ピーピー鳴っていても、ネガティブな感情を抱かないように心がけた。

この原理を読んだ時に思い出したのが、「予言の自己成就(自己実現、自己達成とも言う)」という理論。
私が学生時代から強く影響を受けた米国の社会学者ロバート・K・マートンが論じたもの。
要するに、ある望まざる悪い出来事が起こるのではないかと予想し、その不安に捉われて自己の思考・行動が悪い方向へと向かってしまい、結果的に(本来は実現しなかったであろう)その出来事が現実化してしまう現象を指す。ネガティブ思考になると、この悪循環に陥る可能性がある。

ストレッサーとなるものに対しては、除去する・無視する・近づかないと、極力ストレス源は減らし、それが無理な場合でもマイナス感情(不安、後悔、怒り、失望など)を出来る限り持たない、トラブルを避ける、など、精神的・感情的に安定した状態が続くように、常に心がけていた。
よく眠る、音楽を聴く、ピアノを弾く、趣味の情報を検索する、ショッピングに行くなど、ストレスを溜め込まないこと。出来る限り、好きなもの、快適な精神状態になれるものに囲まれるのが一番。
強いマイナス感情を持つと、それが頭にこびりついて、思考も感情もそれに捉われてしまうので、絶対に避けないといけない。
常にポジティブ思考で、精神的に落ち着いて穏やかな状態でいることがなにより。(といっても、これがなかなか難しい)

治療方法の見通し
発症初期のうちに、耳鳴りの治療法を医療関係のホームページ、掲示板、ブログ、本などで調べて、病状に合わせて必要となる療法の知識をインプットしておいた。
最初から、精神安定剤・睡眠薬などの薬や、専門の医療器具(TCIなど)は可能な限り使わないことに決めていたが、耳鳴りが悪化したときにどういう治療方法の選択肢があるのか情報は収集しておいた。
特に、耳鳴緩和、不眠解消、精神安定剤としてよく処方されているベンゾジアゼピン系(benzodiazepine)の睡眠薬・抗不安薬・抗けいれん薬は、長期服用すると依存性が出るし、減薬・断薬時の離脱症状が酷いため、絶対に使うつもりはなかった。(もともと風邪薬・胃腸薬・鎮痛剤などの市販薬・処方薬も、症状がよほど酷くない限り飲まなかったので)

<参考情報>耳鳴治療に限らず、ベンゾジアゼピン系薬剤の危険性については情報多数。[2012.8追記]
医療大全:うつ病:抗不安薬・睡眠薬依存… 離脱症状減らす『やめ方』[読売ONLINE/yomiDr.(ヨミドクター)]
佐藤記者の「精神医療ルネサンス」抗不安・睡眠薬依存(1)~(6)[読売ONLINE/yomiDr.(ヨミドクター)]
抗不安薬による常用量依存の恐ろしさ [腰痛、肩こりから慢性広範痛症、線維筋痛症へ ー中枢性過敏症候群ー 戸田克広]
ベンゾジアゼピン [精神医療の真実  聞かせてください、あなたの体験]

 『ベンゾジアゼピン - それはどのように作用し、離脱するにはどうすればよいか』(通称アシュトンマニュアル)(ヘザー・アシュトン教授 (DM, FRCP)2002年8月改訂) ※「補遺」も含む。
英国のニューカッスル大学神経科学研究所ヘザー・アシュトン教授が著した『アシュトンマニュアル』は、ベンゾジアゼピンの作用、副作用、離脱症状、減薬法などをまとめた本。英語など10カ国語のマニュアル全文が、”benzo.org.uk”のウェブサイトで公開中。。
「抗不安・睡眠薬依存(8)マニュアル公開記念・アシュトン教授に聞いた」[佐藤記者の「精神医療ルネサンス」]
記事中で、離脱を目指す際の注意事項について、アシュトン教授が6項目あげている。


ネット上の耳鳴治療に関する情報を調べると、この種の薬物療法は対処療法に過ぎない。
耳鳴り緩和・馴化には、症状がまだ軽い初期段階で、TRT療法などの音響・音楽療法、認知行動療法、心理療法により、耳鳴りやそれに関連する症状(不眠、精神不安定など)の悪化を防ぐことが第一であり、ベストの治療法だと考えた。
治療法に関する知識や見通しをある程度持つことができたので、むやみに不安を抱かず、ハイリスクの薬や効果も定かではない民間療法に手を出さずに済んだという点が一番良かった。
必要であれば、TRT療法を行っている耳鳴専門治療で有名な総合病院に電車で30分ほどで通院することができるという環境だったので、これも安心材料の一つだった。

TRT療法というと、TCI器を使うものと思われているが、TRT療法開発者のウェブサイトの説明を読むと、TRT療法自体はTCI器がなくてもできる。
TCI器などの装着型サウンドジェネレーターを使う場合は、慢性患者対象で医師が必要だと判断した場合のみ。
それに急性期または慢性期であっても、TCI器を使わずTRT療法を行うことはできる。


服用薬
薬(ビタミンB12と代謝改善薬-カルナクリンだったような)は、減薬しながら、2ヶ月間だけ飲んで中止。
両方とも耳鳴緩和には効かないことで有名。毒にもならない薬とビタミン剤なので、一応飲んでみた。
効かないといわれるわりに、服用し始めてから2週間くらいで、耳鳴りが小さくなっていったのは確か。(でも、因果関係はよくわからない)
その後は日々変動があって、なかなか安定的に低い状態にならなかった。
1ヶ月過ぎてからは、大きな改善は見られなかったが、聴力は正常範囲下限から元通りに回復。(この段階で医師は投薬をもうやめましょうかと言っていた。まだ耳鳴り残っていたんだけど)
もう少し薬を服用して様子を見たかったので、徐々に薬を減らしていき、特に悪化する兆候もなかったので、服用中止。
それ以降も、精神安定剤・睡眠導入剤などを含め、薬は一切使わなかった。通院もせず。

ビタミンB12については、ベジタリアンにやや近い食生活をしているので、おそらく不足気味だったはず。
そのため、発症初期には効果があった可能性が全くない..とは言えないのかもしれない。
※動物性の食物を全く摂取しないタイプのベジタリアン(ビーガン)は、ビタミンB12が欠乏するため、普通はサプリメントまたは添加食品でビタミンB12を補充する。

耳鳴りと共存する方法
耳鳴りを気にしないようにする方法は、自己流でいろいろ試してみた。
耳鳴りから意識をそらすために実践したことは、音楽を聴く、ピアノを弾く、お料理をする、パンやお菓子を作る、ショッピングセンターに買い物に行く、など。
その目的は、耳鳴り以外の音が頭の中にはいってくる状態にしておくこと。
同時に、耳鳴り以外に集中できることがある状態にすること。いろいろな作業をすることで、耳鳴りから意識がそれるし、作業音で耳鳴りがマスキングできる。
音ではなくとも、仕事上でのライティングや読書も、作業中は耳鳴りを忘れやすいという点では多少効果があった。

また、頭のなかでいろいろ考えことをする(耳鳴り以外のこと)、記憶のなかから好きな音楽を頭の中で再生するなど、意識を別のことに向けることで、耳鳴りへ注意が向かうことが少なくなる。

試用したツール
TCIなどの医療機器を使うのは、悪化した時に試してみようと考えていたので、それまではできるだけ身近にあるものを使うようにした。

耳鳴りから意識をそらすマスキング効果と精神的安定の両方が期待できることを目的に、手持ちのクラシックのCDをプレーヤーやパソコンで再生するようにした。(「耳サプリメント」CDやラジオは使わず)
音を聴くのであれば、精神的に満足度の高い音を聴きたいと思ったので、クラシックを中心に所蔵する音楽CDのストックから、音のタイプやメロディなど、何でも好みのものを選ぶことができた。
外出するときは、周囲の環境騒音でマスキング可能なため、ヘッドフォン・イヤフォンで聴くウォークマンも使っていない。

とても効果的だったのはピアノ演奏。
電子ピアノの場合は、音量が調節できるので、ボリュームを落として、ヘッドフォンなしで弾いていた。
ピアノ演奏をヘッドフォンで長時間聴くと、頭痛がしてくるので(耳にも悪そう)、いつもヘッドフォンは使っていない。
ピアノを弾く時は、曲によって楽譜を見ながら、または、暗譜のどちらか。目・耳・手指・足(ペダル)と記憶など、身体のいろんな部分を同時に使わないといけないので、意識が音楽に集中する効果が高い。

就寝方法
発症当初1週間くらいは別として、音楽やノイズ、ラジオなどは全く流さず、以前と同じ状態で寝ることにしていた。
入眠するのに1時間くらいかかるので、無理に寝ようとせず、眠くなるまで音楽を聴いたり本を読んだりしていたら、自然に眠くなっていった。
もともと、細切れ睡眠や不規則睡眠が普通だった生活をしていたので(特に、春~夏にかけて毎年睡眠障害を起こす)、長時間睡眠に対して拘りがない。とにかく4~5時間眠れれば良く、後は仮眠するなり、そのまま起きているなり、そのときの状態で違っていた。
それに、電車内であろうが、高速道路近くで車騒音の煩い場所であろうが、騒音を気にせずどこでもすぐに眠れてしまうので、それが幸いしたのか、耳鳴り状態でも薬なしで眠ることができた。

枕は高枕。枕が低い(頭が水平に近い状態)と耳鳴りが大きくなるので、羽毛枕を2個ずらして重ねて高枕にして、肩を枕に乗せていた。
もともとフラットな枕だと起床したら頭痛がするので、絶対に高枕でないといけない体質。
昔からこのスタイルで寝ていたが、以前より少し頭が高くなるように傾斜角度が45~60度くらいになる姿勢。
同時に、右側の低音耳鳴りを聴こえにくくするために、体の右側を下にして、横向きで寝ていた。これで閉塞感が解消するので、とても眠りやすくなった。

就寝前にしてはいけないことは、パソコンを使うこと。
モニターの明るい光で頭や目がすっかり冴えて寝入りにくくなる。
パソコンの電源はさっさと切って、ベッドにもぐりこみ、それから寝入るまで、だいたい1時間くらい。
最近は寝入るのに30分もかからなくなっている。10分くらいで寝入ってしまうこともある。

音楽療法
耳鳴りという音に対しては、音で対処するのが一番良さそうに思ったので、音楽を利用する方法をいろいろ試してみた。

 音楽を聴く
発症後しばらくの間、聴いていた音楽はバッハ。
モーツァルトはふだんはそれほど聴いていないし、それよりもバッハやベートーヴェンが好きなので、このときに聴きたいと思ったバッハばかり聴いていた。
バッハの曲は旋律も和声もシンプルで、ロマン派のように感情的な振幅が少なく、精神的な鎮静効果が高い。
ベートーヴェンの音楽は、バッハよりも低音部が強く意志的な力強さがあり、音質・精神面の両方で、このときの状態にはあまり向いていない気がした。

音楽療法というと、特定の作曲家にこだわりがなければ、モーツァルトを聴く人が多い。
曲や演奏スタイルによって、音がかなりシャープだったり、音量がかなり大きい賑やかな曲も多い。
モーツァルトといっても、曲や演奏家を選ぶ必要はあると思うので、必ずしもモーツァルトなら何でも良いというわけではないと思う。(ピアノ協奏曲とかは好きだけど)
個人的には、モーツァルトに拘る必要はないと思っていたので、精神安定効果が高いと自分で自覚している音楽を聴いていた。

バッハの2曲は、いずれもシンプルなメロディに美しい和声、柔らかい音と穏やかな表現で、ピアノの音も美しい演奏。
これを聴くと、かなり精神的に安定するし、耳鳴りから意識をそらすことができたので、モーツァルトではなくとも充分効果はあった。(これはあくまで個人的な音楽的嗜好に基づいた感想)

当初は、耳鳴りから意識を遠ざけることを目的に音楽を聴いていた状態だった。
発症後1ヶ月くらいで、普通に音楽を聴く状態に戻り、聴く音楽も元通り幅広くなった。
単に音を聴くのではなく、耳鳴りの煙幕をかいくぐって、音をきっちり聴き取るように、音楽を聴くことに意識を集中して聴いていた。

発症からしばらくの間よく聴いていた曲
 ◎バッハ/平均律クラヴィーア曲集第1巻(ティル・フェルナー)
 ◎バッハ/フランス組曲(アンドレイ・ガヴリーロフ)

それ以外に時々聴いていた曲
  バッハ/パルティータ第1番(ピョートル・アンデルジェフスキー)
  バッハ/パルティータ第6番(第1楽章)(ユーリ・エゴロフ)
  バッハ/フランス組曲第5番(ヴィルヘルム・ケンプ)
  ブラームス/ヴァイオリンソナタ第1番(第1楽章)(ジュリアス・カッチェン&ヨゼフ・スーク)
  ブラームス/後期ピアノ小品集(ジュリアス・カッチェン)

 音楽療法の効果
個人的に思うのは、かなりの音楽好きでないと音楽療法の効果が高くならない気がする。
この療法は個人差が大きく、日ごろ音楽を聴かなかった人や、音楽を聴き流している人には、それほど高い効果は期待できないと思う。
音楽を聴くときは集中し、感情・精神面で深くシンクロしながら聴き、良い音楽を聴くと精神的に充実して安定した状態になれる...という人なら、音楽療法から高い効果を得られる可能性はある。
ただし、音楽療法は私のような初期に軽症だった耳鳴りには効果があるとしても、それよりも重い病状でどの程度効果が期待できるかはわからない。

聴く音楽を選ぶ必要があるので、耳と精神安定にはあまり良くなさそうな音楽は避けた。
耳鳴りが増幅しかねないような音楽(電子楽器や金属的な音、大音量で騒々しい音楽など)の効果・影響はわからない。

また、聴覚過敏症にかかっている場合は、モーツァルトと言えど、高音域の音は耳に響いて痛いようなので、なるべく低音域(チェロ、ホルンなど)の曲にするか、それとも、音楽ではなく、自然の環境音の方が良いのかもしれない。
私は、自然環境音は全く使わなかったので、その種の音の効果については何とも言えない。

ここで言う「音楽療法の効果」というのは、耳鳴りから意識をそらす、耳鳴りを気にせず他のことに意識を集中するという訓練ができた、また、精神面・感情面での安定につながった、という意味。
”耳鳴りを治す”という意味では全くないので、絶対に誤解しないように。
「モーツァルトを聴いて耳鳴り・難聴を治す」という類の本も出ているが、モーツァルトを聴いて耳鳴りが治るとはとても思えない。”○○を飲めば○○が治る”という民間療法と同じようなものだと思っている。
人によっては何らかの効果がある可能性も絶対ないとは言い切れないとはいえ、音楽にそんな治療ができると、間違っても過大な誤った期待をしてはいけない。

 ピアノを弾く
音楽を聴くだけでなく、ピアノを弾くことも趣味の一つだったので、耳鳴り対策にピアノ演奏を活用した。
ピアノは、幼稚園~高校時代まで、ずっとレッスンを受けていた。大学入学後はレッスンは受けず、家でピアノを弾くことも少なくなり、社会人になってからはほとんど弾かなくなってしまって、長いブランク。
その代り、クラシックやジャズのCD・FMを聴くことが日常的になっていった。思えば幼少の頃からずっとクラシックを聴いて育っていた。
趣味どころの話ではなく、クラシックは空気のようなもの。聴けなくなると窒息してしまいそう。
数年前、ある方のブログでヴァイオリンのレッスン記を拝見してから、なぜかピアノが弾きたくなってしまい、再びピアノを弾き始めた。

電子ピアノの場合は、ボリュームをほぼ最小近くに落として、耳鳴りが聴こえる状態にして、ヘッドフォンなしで弾いていた。
大事な点は、ピアノの音で耳鳴りをかき消さないこと。耳鳴りを聴きながら、ピアノを弾いていくところがポイント。これが耳鳴りから意識をそらず訓練になる。
アコースティックピアノの場合は、フォルテでバンバン弾かないこと。ピアニッシモくらいで音量を落として弾いた方が訓練になると思う。

ピアノを弾く時は、楽譜を見ながら弾くか、暗譜で弾くかのどちらか。
いずれも、譜面、鍵盤、記憶などに意識を集中させないといけない。
さらに、ピアノは他の楽器に比べて弾く音がとても多く、指回りの良さなどの運動能力(筋力・反射神経など)も必要になる。
身体のいろんな部分を同時に使って弾く楽器なので、ピアノを弾くことにひたすら集中すると、いつの間にか耳鳴りのことはすっかり忘れて、聴こえなくなっている。

弾く曲は、耳鳴りが聴こえにくくなりやすい急速系の曲。
緩徐楽章の場合は音が少ないため、耳鳴りが聴こえやすくなるので避けていた(それにもともと急速系の曲が好きなので)。
弾くのは、バッハ、ベートーヴェンが多く、たまにブラームスなど。
バッハの場合は、対位法が多用されているので、右手だけでなく左手の旋律にもかなり注意する必要があって、耳鳴りに対する注意が低下しやすいように感じる。
それに、バロック音楽は形式性が強く、ロマン派のような感情的な振幅が少ないため、曲にもよるが、精神的な鎮静効果も高くなると思う。
ベートーヴェンは、バッハよりも和声的に厚みがあり、ディナーミク(強弱)の変化が頻繁でその落差も大きいことから、耳鳴りが聴こえにくくなる。それに、気分的に高揚感や力強さを感じる曲が多い。

ピアノの練習は、だいたい毎日2時間くらい。冬は指が冷えるので隔日が多かった。
ピアノを弾いた後は、耳鳴りが小さくなっていることも多いし、さほど気にならない状態になる。
ピアノを弾くといっても、耳鳴り対策のためと義務的に弾くのではなく、あくまでもピアノを弾くことが好きで、楽しいと思って弾くことが大事。
この対処法は、ピアノという楽器に限らず、他の楽器(ヴァイオリン、チェロ、クラリネット、ギター、etc.)でも応用できる可能性はあるけれど、楽器の音が耳鳴りを増幅するケースもあるので、個人差があると思う。

マスカー療法
春になって気がついたことは、暖かくなるとパソコンのファンの音が急に大きくなって、これが耳鳴り以上に煩い。
パソコンを使っていると、高音の耳鳴りも一緒になって増幅して、ピーピー煩いけれど、電源を切ると耳鳴りだけが残る。やがて、その耳鳴りも小さくなって、聴こえなくなり、その状態が数時間続く。
注意して観察してみたら、大体5時間以上は静かなことが多い。その後で、ピアノを弾いたり、クッキングしたりすると、耳鳴りが静かな(気にならない)状態がずっと続いていた。

これは、「マスカー療法」の原理に近いのかもしれない。
マスカー療法は、耳鳴りよりも大きい音を聴き、この効果でマスカーが消えた後でも、耳鳴りがしばらく聴こえなくなるという仕組み。個人差があり、その効果があまり長時間持続しないらしい。
”マスカーを使用しないマスキング療法”という方法があるが、私の場合はヘッドフォン・イヤフォンは使わず、耳をオープンにしてパソコンのファン&モーター音を聴いているところが違う。

そういえば、昨年も暑くなるにつれて耳鳴りが小さくなって、夏はほとんど聴こえなかった(耳鳴りのことをすっかり忘れていた)のは、同じ理由なのかもしれない。
家の中には、パソコン以外にも、クーラーや扇風機もあるので、ファン・モーター音には事欠かない。

季節によって、日常生活の騒音環境が変わる。
春~夏にかけて、空調機器など家の中の騒音が増え、窓を開けているので、外部からの騒音(クーラー室外機、自動車音、セミや昆虫の鳴き声など)も入ってくる。今から思えば、耳鳴りがこれらの騒音でマスキングされていたらしい。
ああいう機械音とか乗り物内の騒音など、一定のリズムを刻む音がなぜか心地よく、電車や飛行機でもすぐに眠りこんでしまうので、それほど嫌いな音ではない。
日常生活騒音のマスキング効果で、騒音が消えた状態でも、耳鳴りが小さくなり聴こえなくなるのか、それとも、血流が悪いため気温が上がると血流が改善されて、耳鳴りも軽くなるのか。その両方が要因なのかもしれないが、はっきりとはわからない。

現状では、完全に耳鳴りが100%完全に消滅したわけではないが、音も静かだし聴こえないことも多い。(右耳の低音耳鳴りによる閉塞感が少し残っているので、周囲が静かになると圧迫感を感じることはある)
耳鳴りが聴こえていたとしても、特に気にすることもなく、何の感情も湧かないので、今や単にBGM化している。

苦痛度
発症後2ヶ月の時点で、耳鳴の苦痛度(THI:Tinnitus Handicap Inventory)チェックリストで点数をつけてみると、たしか2点くらいしかなかった。
この時点ですでに、耳鳴りは精神的にもQOLにも、何ら大きな悪影響を与えていなかったことになる。
実際、なかなか静かになってくれないのには閉口したが、ネガティブ思考に陥ることはなかった。これはその後も変わらず、今では完全に0点。

また秋になると、耳鳴りが大きく聴こえてくる可能性は残っている。それでも、音量は確実に小さくなっているので、耳鳴りに悩まされることはないだろうし、実際、昨年の秋以降も右耳の閉塞感を除けば、全くと言ってよいほど悩むことはなかった。
少なくとも、この状態から大きく悪化するとは思えない。そうなったらその時に悩めば良いことだし、そもそも将来の病状など予測不可能なので、それについて考える必要も意味もないでしょう。

以上

その後の経過は、耳鳴治療記録(2)へ]

tag : 音響・音楽療法

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リッチー・バイラーク/Sunday Song
私が聴いたことがあるジャズ・ピアニストのなかで、最も音が研ぎ澄まされて美しいのは、キース・ジャレットとリッチー・バイラーク。色彩感豊かなのはブラッド・メルドー。
キースはもう数十年前から聴いていたけれど、リッチー・バイラークは本当に偶然に知ったピスト。
10年くらい前に、たまたま仕事上のクライアントに、梅田のTowerRecordでばったり遭遇。
お互いにジャズコーナーにいたので、「あら、ジャズお好きなんですか!」なんて話になって、いくつかお勧めのCDを教えてもらった。

クライアントのおすすめは、ステファノ・ボラーノ(たぶん)、澤野工房の誰か(名前は忘れた)、それに、バイラーク。
澤野工房は好みに合わないレーベル。ボラーノはすでにCDを1枚だけ持っていたのでパス。
こういうときは、現代音楽でよく聴いているレーベルで、キースもいるECMを選ぶべきだろうと思って、バイラークのCD『Hubris』を買ったのでした。
バイラークを教えてくれたクライアントには本当に感謝。とても真面目で仕事熱心で気さくな方だったし、彼が教えてくれなければ、たぶんバイラークを聴くことはなかったと思うので。

バイラークのCDを初めて聴いたら、その音の美しさ、凛とした叙情感のあるメロディとハーモニーが素晴らしくて、他のCDも次々と購入。
キースよりも、バイラークの方が、やや弾力のある凛とした硬質な音で、透明感と同時にちょっと妖艶なところもあり、どちらかというとバイラークの音の方が私好み。

特に、ソロに関しては、長大なインプロヴィゼーションのキースよりも、バイラークの方がシンプルなメロディと和声でとても記憶に残りやすい。
バイラークのアルバムは、ECM時代の3枚が愛聴盤。
最近のアルバムでは、聴き込みたいほどに良いものと思えるものが少なく、好きなのは『No Borders』(日本語盤:哀歌)と『Round About Bartok』くらい。

リッチー・バイラークのECM時代の代表作のひとつ《Sunday Song》。
『Hubris』の収録曲のなかでは、一番好きな曲。
《Sunday Song》は、バイラーク自身がとても気に入っているらしく、何度もいろんなアルバムに録音している。
私が聴いているのはもっぱらECM盤のバージョン。これは何度聴いても素晴らしく素敵。
音の美しさに加え、凛と張り詰めた緊張感、清々しさと艶やかさが入り混じった叙情感が美しくて、ジャズピアニストでこういうソロピアノを弾ける人はそう多くはないのでは。

Sunday Song / Richie Beirach



別バージョンはかなり面白い曲になっている。
音がずっと柔らかくなり、不協和音をかなり使っていて、とても不思議な雰囲気。
調和的な和声のなかにさりげなく不協和音が滑り込んできて、安定した日常生活の世界に亀裂が入ってはすぐそれが閉じるような、不安定な揺らぎを感じさせる。
日常世界に潜む脆さと不安を垣間見る気がするとてもシュールな感覚。
Sunday Song / Richie Beirach (別バージョン)

耳鳴り治療のための音響・音楽療法(トピックス) ~ フランシスコ・ロペス 『Through Looking Glass』
たまたま見つけた実験音楽のCD-フランシスコ・ロペスの『Through the Looking Glass』(ガラス越しに見ると)(KAIROS盤)。
サブタイトルは、「現象論的音響素材のリアリティとバーチャリティ・環境音の録音とその変容」。
副題の言葉どおり、シンセサイザーを使わず、自然や現実に存在する音だけを使って構成されている音楽。これを”絶対的具体音楽”と言うらしい。

作曲者のロペスは、環境音を使ったサウンド・アート、サウンド・インスタレーション、実験音楽を制作し続けており、フィールド・ワークは世界60ヶ国に及ぶという。(アリアCDの紹介文)
(インスタレーションというと、宇宙人の巨大なテント(?)のようなクリストの作品くらいしか知らない)

フランシスコ・ロペス:エクスペリメンタル・エレクトロニックミュージック界のブラームス(SHIFT 日本語版/世界のクリエイティブカルチャーを紹介するバイリンガルオンラインマガジン)

Through Looking GlassThrough Looking Glass
(2009/07/14)
Francisco Lopez

試聴する(米amazon)

マスキング用だけに購入するには、4枚組なのでちょっとお値段が高め。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)に登録されているので、有料会員ならば全曲聴けます。

また、米国のNMLサイトでは、会員ではなくても、このCDが合計15分間だけどのトラックでも無料で聴くことができます。
http://www.naxosmusiclibrary.com/home.asp?rurl=/default.asp
トップページ右下にある[Free Preview]をクリック⇒検索画面の右上にある検索BOXに"Lopez Francisco"を入力⇒リストの上から4番目”LOPEZ, F.: La Selva / Belle Confusion / Buildings / Qal'at Abd'al-Salam / O Parladoiro Desamortuxado (Lopez)”がこのCDです。


このCDは、チェンバロの倍音や周波数波形を調べているときに、検索でたまたまヒットしたページに紹介されていたもの。
この音楽(というか環境音録音集?)を聴いていると、耳鳴りのマスキングとして使われる種類の音が膨大に詰め込まれている。
耳鳴りの周波数が人によって違うので、相性の良いマスキング音もそれぞれ違う。音に対する好みもあるだろうし。
マスカーに使えそうなのは、《ジャングル》。リズム、音色、高低、音量など、音のバリエーションが豊富で、音自体が聴いていて面白い。
《ベルの混乱969》も面白いと言えなくもない音がするけれど、かなり不気味なので好みによる。
《無題》は、雑音のような単調な音なら使えるかも。


CD1《ジャングル》(1997年)
熱帯のジャングルに満ちている自然の音。これだけで延々1時間以上。
冒頭からカエルがゲコゲコ合唱しているのを聴くと、なぜかカポーティの《カメレオンのための音楽》がすぐに思い浮かぶ。カエルとカメレオンって、多分鳴き声が全然違うはずだけど。
さらに、雨音、川の流れる音、滝(それとも豪雨)の轟音、虫の羽音、鳥や小動物の鳴き声など。
これを聴いていると、本当に熱帯のジャングルにいる気分になる。
ブーンという虫の低音の羽音は、こちらに本当に接近してくると感じるようなリアリティ。
全くストーリー性のない環境音が単に繋がっているだけ(に思える)なのに、それぞれの音が結構面白くて、最後までじ~っと聴き入ってしまいそうになる。

CD2《ベルの混乱969》(1996年)
”Belle Confusion”が原題。綺麗な鐘の音どころではなく、空洞を流れる風の音、配管を空気が流れる音とか、人工物を媒介にして聴こえる音。
自然界にある音なら、鍾乳洞とかの洞窟を吹き抜ける風の音に似ている。水中の音もこういう感じかも。
ゴオオーン、ワオーン、シャーシャー、etc.と、とにかく不気味。SF映画やオカルト映画の効果音向き。

CD3《ビルディング》[ニューヨーク](2001年)
ニューヨークのビル群のなかで発生する音たち。
何かの機械が動く音、モーター音、エンジン音、地面に落ちる雨音(?)、とにかく金属的・人工的な硬い音が多い。ビル群を吹き抜ける風の音らしきものも。
このCDの音は、もう一つ面白く聞こえない。
機械の音自体、聞いていて楽しいものではないし、音があまり鳴っていない部分が多くて、音楽として聴くには、リズムとか音響面の面白さが感じられない。

CD4《ガラアト・アブダル・サラム》(1993年)
(たぶん)マドリッドにある"Qal'at Abd'al-Salam"のパブリックスペースで収集した音。音と音の関連性は緩い。
I. Seeds of bird
II. The game of the tree
III. Mesedra
IV. A call from the water of life
V. The thunder hall
VI. Horses
VII. The wind and sand machine

CD4《O Parladoiro Desamortuxado》(1995)
静寂/騒音を取り混ぜた音の集合。
I. Escape of cryocriatures
II. The game of mud
III. A time spirit in the body of the plant
IV. Twelve raging fishes
V. The dream of the coffee man

CD5《無題》(2008年)
No.217~No.219の3つの無題。No.217とNo.218は似たような音で構成。人工物から発生しているのか、自然の現象なのか、音の正体がもう一つよくわからないものが多い。
No.219は人工物の音らしい。遠くから聞こえる飛行機のエンジン音?、トイレの水を流す音?、正体不明。

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耳鳴りマスカーソフト(5/5) ~ Tinnitus Masker Pro
◆耳鳴りマスカーソフト(5/5)◆
2.ハードウェア別アプリ・ソフトの概要
2)パソコン用ソフト


Tinnitus Masker Pro シリーズ

耳鳴り用に特化したマスカーソフト。Standard版、Deluxe版の2種類。
環境音とノイズ系の音を周波数、組み合わせ、左右のバランスなどを自由に調整して、個々人の耳鳴り音に合ったマスカーが自分で合成できる。英語版で、日本語対応なし。
価格:Standard($22.95)、Deluxe($34.95)。
無料トライアルが可能。下記のサイトからダウンロードできる。(今回はStandard版は試用していない)

概要説明およびダウンロード
”Download Standard Version”、”Download Deluxe Version”をクリックすると、各々のダウンロード案内画面に移動する。

StandardとDeluxeの機能比較表

----------------------------------------------------
◆Tinnitus Masker Pro (Deluxe)

音の種類:一般的なもの(General Noise)、夜間の音(Night)、自然音(Natural Noise)、人間の出す音(Man Made Noises)が各10種類。

ノイズ:White、White&Spatial、Pink,Pink&Spatial、Brown,Brown&Spatial、Blue,Blue&Spatial,Violet,Violet&Spatia
自然:雨(4)、波(2)、泉、小川、湖畔、海、風(2)、滝(3)、クリケット(2)、Cicade(3)
その種色々;エアコン(2)、飛行機客室、列車客室、水族館(2)、ファン、キャンプファイアー、暖炉、ヘアドライヤー
Custom:外部音声ファイル取り込み

複数の音・ノイズの組み合わせ、音量・バランス調整が可能。
ノイズは各々の周波数が変更できる。
MP3ファイル出力機能あり(WAVファイルで保存し、MP3に変換可能)。
ボリューム、周波数、左右バランス調整(左右にそれぞれ別の音を割り当て可能)
スケジュール設定、録音機能、MP3プレイヤー機能、アラーム機能など。

[使用感]
ノイズの種類が比較的豊富で、周波数や音量が個別に変更できる。
ノイズをサポートしていないAtmosphereシリーズよりもマスキング用には向いている。
音声ファイルをインポートできるので、ユーザーの使いたい音・音楽と合成することが可能。この機能は◎。
合成音をMP3・Waveファイルで出力できるので、パソコン以外のプレーヤーや携帯デジタルオーディオなどでも利用できるのも◎。
Standard版の音源数はかなり少ない。Deluxe版もそれほど音源数は多くないが、Deluxe版購入の登録ユーザーは、追加音源(現在40種類)のダウンロードが可能。(有効期間の制限なし)

[参考:マスキングの原理]
マスキング音と耳鳴り音が質的にかなり違うために、マスキングが可能となる。
耳鳴りは一般的に鋭い高音で不快な音。対照的に、マスキング音はスムースな音。
たいていの人は、自動的にある種の外部音を無視しているが、その種の音は音量も大きく粗いし、比較的一定パターンのモノトーンな音である。
この種の音に似せたマスキング音を無視することで、マスキング音が覆っている耳鳴り音も、同じく自動的に無視される。

[購入方法]
有償ソフトは開発企業のホームページからダウンロード購入。決済方法は、クレジットカード、Paypalなど。

以上

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耳鳴りマスカーソフト(4/5) ~ Atmosphereシリーズ
◆耳鳴りマスカーソフト(4/5)◆
2.ハードウェア別アプリ・ソフトの概要
2)パソコン用ソフト


Atmosphereシリーズ
環境音ジェネレーター(Ambient Soundscape Generator)。
Vectormedia Software社が3バージョンを開発・販売。英語版のみ。

- Lite:フリーソフト。
- Lite Plus:21日間のフリートライアルが可能。(これは試用していない)
- Deluxe:21日間のフリートライアルが可能。録音時間など一部機能制限あり。

- フリーソフト、有償ソフトの無料試用版のダウンロードサイト

-----------------------------------------------------

LiteとDeluxeの主要な相違点: 3バージョンの機能比較表参照
Liteは背景音やランダム音の種類が少なく、Deluxeは数倍。
Deluxeのみ設定可能な主な機能は
・各音の個別ボリューム設定
・Brainwavesのバイナリファイル詳細設定(周波数など)
・インポート機能(CDやMP3ファイルの取り込み)
・録音時の編集機能(フェードアウト、トリミングなど)
・スケジュール設定(実行する背景シナリオの開始時間)

試用してみたところ、フリーソフトの”Lite”でもかなり使える。
まずフリーソフトを試用してみてから、もっと高機能なものが必要な場合に、”Deluxe”や”Tinnitus Masker Pro”を購入するか検討すれば良いと思う。
ただし、Atmosphereシリーズには、ノイズが組み込まれていないので、それが必要な場合は耳鳴りマスカーを目的とした”Tinnitus Masker Pro”を検討した方が良い。

-----------------------------------------------------

◆Atmosphere Lite(フリーソフト)
背景音:12、ランダム音:36
複数音の同時再生可能。設定で組み合わせは変更できる。
脳波パターンを模したバイナリー音が4種類(同時に鳴らせるのは1種類のみ)。周波数などの変更不可。
音量設定は、マスター、バックグラウンド(脳波パターン)、ランダムの各グループごとに設定する。個々の音の個別設定はできない。
外部ファイルの取り込み不可。CD音源やMP3ファイルはインポートできない。
MP3ファイル出力機能あり。ビルトインされた音やそれを組み合わせて合成した音をWaveファイルを作成し、MP3ファイルに変換する。

[使用感]
Deluxeに比べるとかなり音源は少ないが、それでもフリーソフトにしては充実。
音を自由に組み合わせることが出来るので、実際にはかなりのバリエーションを合成できる。
WaveファイルとMP3ファイルが出力できるので、他のハードウェア(CD、ポータブルデジタルオーディオなど)でも利用可能。フリーソフトでこの機能があるのは◎。

Atmosphereシリーズのインターフェースとヘルプは全て英語。画面を見れば使い方はわかるので、ソフトウェアを扱い慣れていれば、使いこなせる。
ただし、仕様通りに動作しないときは、自力で解決する必要あり。
Liteに限らずこのシリーズは、ソフトを使って好みの環境音を作る作業が面白いと思える人に向いている。

MP3ファイル出力するための操作は、少しわかりにくい。
録音画面から設定・操作する必要があり、サウンドカードやミキサーの設定などが間違っていると録音、出力ができない。
この部分のヘルプもわかりにくいので、少し手間がかかるかもしれない。一度わかってしまえば、とっても簡単。

◆Atmosphere Lite Plus
有償ソフト($19.95)
背景音:18、ランダム音:60
機能的にLiteより上、Deluexより下という、中クラスのソフト。

◆Atmosphere Deluxe
有償ソフト($34.95)
背景音:34、ランダム音:84
複数音の同時再生可能。設定で組み合わせは変更できる。
個々の音について、音量、周波数の変更可能。(周波数の変化はあまり実感できない)
MP3ファイル出力機能あり。ビルトインされた音やそれを組み合わせて合成した音をWaveファイル/MP3ファイルで出力。
外部ファイルの取り込み可能。CD音源やMP3ファイルのインポート。
ホームページにビデオ・チュートリアルあり。

[使用感]
Deluxeは、この種のプログラムやCDで使われる自然音をほとんどカバーしているのではないかと思うくらいに音源は豊富。
個別に設定可能な項目が多いので、使いこなすのが大変。ここまで音種・設定が細かくなくても良い気はする。
個人的には、フリーソフトの”Atmosphere Lite”で充分。それに、”Tinnitus Masker Pro”があれば、環境音楽CDや耳鳴り対策用CDなどを買う必要がなくなる。

[決済方法]
有償ソフトは開発企業のホームページからダウンロード購入。決済方法は、クレジットカード、Paypalなど。

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耳鳴りマスカーソフト(3/5) ~ Aura ,Aire Freshener
◆耳鳴りマスカーソフト(3/5)◆
2.ハードウェア別アプリ・ソフトの概要
2)パソコン用ソフト


Aura(フリーソフト)
設定は2パターン:「昼間の表」と「夜の表」
「昼間の表」:川のせせらぎ、雨・嵐、キツツキ、カラス、コオロギ、カッコウ、身身近な羽ばたき(鳥・昆虫)、風、音楽(ギター・アコーディオン・フルート)、サウンドフォルダの音源
「夜の表」:川のせせらぎ、雨・嵐、焚き火、ナイチンゲール、サギ・フクロウ、カッコウ、けもの、身近な羽ばたき(鳥・昆虫)、風、音楽(ギター・アコーディオン・フルート)、サウンドフォルダの音源

各表の個々の音について、音量または頻度/リズムが設定できる。音によって設定可能な項目が違う。基本的にどれか1項目のみ設定可能。
複数音の組み合わせ可能。同時に鳴らせる音は多くて10種類くらい。
外部の音楽ファイル:2つのサウンドフォルダで設定。
時報設定;1時間ごと
簡易なスケジュール設定:再生・停止時間が各1つ選択可能。
インターフェース:日本語対応
MP3出力機能:なし

<使用感>
音の種類はあまり多くはないが、同時に鳴らせる音は多くて10種類くらい。「Aire Freshener」よりも、音の組み合わせが多い。
外部の音楽ファイルを利用できる点は便利(あまり使い勝手は良くない)。
夜と昼間で使える表が決まっている。たとえば夜に「昼間の表」は使えない(設定しても、すぐに「夜の表」に切り替わる)。
個々の音について音量または頻度・リズム間隔できるのが便利。
スケジュール設定機能は貧弱。
画面デザイン(カラー、フォント、配置など)がわかりにくく見栄えも悪く、設定キーがあまりスムースに動かないなど、操作性はあまり良くない。でも、フリーソフトなので許容範囲。

◇開発企業のダウンロードページ
http://www.umopit.ru/AuraEng.htm

◇紹介記事(デモ動画あり)
http://gigazine.net/news/20100310_aura/


Aire Freshener(フリーソフト)
Peter Hirschberg氏の開発ソフト。
Environment:30種類の環境音。雨,熱帯雨林,水泡,深海,波,泉,入浴,雷雨,滝,暖炉,田舎道,夕暮れ,夏の夜,レストラン,ロック ・コンサート,蓄音機など。
Aire Chimes:MIDI音声。チャイム、オルガン、鐘、オルゴールのような高音~低音の音が8種類。不規則なリズム・メロディ。
「Environment」と「Aire Chimes」のそれぞれ1種類、合計2音が同時再生できる。
CDも再生可能。(動作確認はしていない)
スケジュール設定:定時に自動再生できる。複数時間の細かい設定が可能。
MP3ファイル出力機能:なし
インターフェース:英語
"Quote of the day"という格言表示機能あり。

[使用感]
組み合わせ可能な音の数が少ない。
Windows画面右下のバーから立ち上げる。プログラムが軽くて扱いやすい。
チャイムの音が綺麗。環境音と同時に鳴らすと単調さが軽減されるような感じ。
スケジュール設定機能は細かくて使いやすい。

◇紹介記事
http://www.gigafree.net/media/music/airefreshener.html

◇ダウンロードサイト
http://peterhirschberg.com/mysoftware.html
(上から4番目にある”Aire Freshener”)

(4/5へ続く)

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耳鳴りマスカーソフト(2/5) ~ iPod/iPhone対応アプリ
◆耳鳴りマスカーソフト(2/5)◆
2.ハードウェア別アプリ・ソフトの概要

1)iPod/iPhone対応アプリ
iPhoneおよびiPod touchとiPad対応アプリがほとんど。iPod対応アプリはわずか。
Android対応アプリも少ない。

◆Tinnitus Masker(iPhone)
再生型アプリ。ビルトインされているマスカー音を音量調節するのみ。「耳サプリメント」CDのアプリ版のようなもの。価格:700円。
音の種類は、ノイズ(ホワイト、ピンク、ブラウン)、海の波、雨、夜のこおろぎ、ブラウンノイズ、嵐、海辺の波、嵐に揺れる木の葉、Electric Winds。
開発企業は米国Explosive Apps社。同社の主要製品は「SleepStream」というサウンドセラピー用アプリ。このアプリのMP3版もリリース予定。

耳鼻科医の診療日記/iPhone & iPod touchが耳鳴の治療器具に!でも紹介されていたソフト。


◆White Noise(iPhone/BlackBerry,Android)
Tomsoft社のアプリ。価格:230円。
40種類の環境音とノイズ(ホワイト、ピンク、ブラウン、バイオレット、ブルー):Air, Airplane, Amazon, Beach, Boat, Car Rain, Cars, Cat Purring, Chimes, City, Clock, Clothes Dryer, Crickets, Crowd, Extreme Rain, Fan, Fireplace, Frogs, Hair Dryer, Heavy Rain, Heartbeat, Light Rain, Ocean, Rain Storm, Shower, Sprinkler, Stream, Tibetan Singing Bowl, Thunder, Train, Vacuu, Washer, Water, Water Drip, Wind
複数の音のミックスしたり、バランス・ピッチの調整可能:ピッチ変更により、波の衝突音をスローダウン、チャイムを低く、列車走行音を速く、ファンをスピードアップするなど、カスタマイズ可能。
サウンドタイマーによる音のフェードアウト。
※概要説明を読んだかぎりでは、低価格のわりにかなり使い勝手が良さそうなアプリ。

◆White Noise Lite(iPhone/Android)
White Noiseの無料版。White Noiseよりも音の種類・設定機能を限定。
環境音が10種類のみ(波、雷雨、こおろぎのなき声、強雨、古い柱時計、チャイム、ホワイトノイズ、扇風機、飛行機、電車)。

◆White Noise Pro (iPod)
”White Noise”のiPod対応版。価格:350円。

◆Tinnitus help (iPhone)
IND(Ingenieurburo fur Nachrichten- und Datentechnik)というドイツ企業の開発アプリ。価格:1800円。
他アプリよりもはるかに高いだけあって、高機能(と思われる)。
周波数は20.000Hzまで。自分と同じ耳鳴り音の周波数を選択して、その周波数に、別の音・音楽をミキシングする機能がある。
タイマー機能:再生時間は15分、30分、60分、エンドレスと選択可能。
左右個別調整可能:耳鳴りの状態に応じて、右側・左側を個別に調整できる。
MP3ファイル出力機能:なし

ホームページの製品紹介を読んだ限りでは、簡易な耳鳴り用マスカーソフトのようなもので、自分でマスカーが合成できる。
パソコン対応版の開発計画あり。Android対応アプリはないが、パソコン版でMP3ファイル出力機能をサポートすることで、Androidなどでも利用可能になる。

アプリ概要(英文サイト):tinnitus help
”FREQUENTLY ASKED QUESTIONS”に操作説明を一部掲載。
※難聴がある場合は、音量設定に注意するようにとの記載あり。一般的に耳鳴りは聴力損失のピークと同じ周波数なので、通常は自身の耳鳴り周波数は聞こえない。聴力測定データを見て聴力損失のピークにあたる周波数を使い、特に音量が大きすぎないかを健聴者に確認してもらうこと。
これは非常に重要。難聴でその周波数が聞き取れなくとも、音量が大きすぎると聴覚にダメージを与える恐れがある。

◆Quiet Noise(iPhone)
ノイズ(ホワイト、ピンク)、低周波、荒い流の川、エアコン、遠めのヘイコプター音。簡易な無料版もあり。価格:115円。

◆Ringing Relief Pro (iPhone)
4000~10000ヘルツ(1000ヘルツ単位)のホワイトノイズおよびピンクノイズ。価格:350円。

◆Simply Noise(iPhone)
音源はノイズ音3種類(ホワイト・ピンク・ブラウン)。価格:115円。
開発企業のホームページで、雷雨音のMP3ファイル(60分)がフリーダウンロード可能。
60分のノイズ音3種類、環境音(Summer Waves) がMP3ファイルがダウンロード可能。1ドルまたは10ドルの寄付金を電子マネーで支払う必要あり。
Android対応アプリも間もなくリリース予定。



[備考:アプリの検索方法]
iPhone&iPod対応アプリの概要・構成画面などをパソコンで確認する場合は、iTunestoreで目的のアプリの名称を入力するか、または、アプリを対象に、tinnitus、masker、noiseなどの英文キーワードで検索すれば、該当アプリのリストが表示される。
開発企業のホームページに詳しいアプリ紹介が記載されている場合もある。

(3/5へ続く)

tag : 音響・音楽療法

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耳鳴りマスカーソフト(1/5) 1.概要
◆耳鳴りマスカーソフト(1/5)◆
1.概要

耳鳴り用マスカーに関連するソフトウェアについて、公開されている情報を元に概要をまとめてみた。
なお、特に耳鳴り用に特化したソフトでなくとも、環境音ソフトなどマスキングに使えるものも対象としている。

耳鳴りのマスキングに使うソフトウェアは、有償・無償を含めて、大半が海外企業による開発・販売。
耳鳴り用に特化したソフトの場合は、ホワイトノイズなどのノイズが組み込まれている。
汎用性の高いアンビエント(環境音楽)系ソフトも耳鳴り用マスキングとして利用可能であり、自然現象、昆虫・動物、乗り物・機械、日常生活騒音などの環境音を組み込んでいる。

携帯端末用アプリケーションは、iPhone対応のものが多く、iPod対応、Android用は少ない。
価格的に数百円クラスと安いものが多いが、MP3ファイルに音源を出力する機能がないため、他のハードウェアでは使えない。
パソコン用ソフトウェアは、有償版と無償版が数種あるが、ソフトによって機能がかなり違う。
有償版の価格は数千円。パソコン用ソフトの場合は、総じてカスタマイズ性が高く、音を自由に組み合わせて合成したり、Wave・MP3ファイル出力機能があるソフトなら、他のハードウェアでも音を利用できる。

ソフトウェアのタイプを機能的な観点から分類すると、以下の通り。

(1)カスタマイズ性:再生型と合成型

1)再生型:ソフトに組み込まれた音のみ再生する。
2)合成型:ソフトに組み込まれた音の構成を変更して、ユーザーの希望の音パターンを作成する。外部音源を追加できるものもある。

(2)音種:環境音、ノイズ、環境音&ノイズ、その他

1)環境音:自然(動植物、海・山・湖、天候など)、生活騒音、機械音など。
環境音を使うとき、自然界にある音を好む人は多いが、ソフトの中には、いわゆる生活騒音や人工物の音(ファン音、飛行機や列車客室の中の音など)が組み込んでいるものもある。

2)ノイズ:ホワイトノイズ、ピンクノイズ、ブラウンノイズ、など。
使える周波数がソフトによってかなり違う。いわゆるノイズジェネレーター。

3)環境音&ノイズ:環境音とノイズを同時に発生させるもの。カスタマイズ性の高い合成型ソフトで可能。

4)その他:脳波と同じパターンの音を組み込んだものもある。


(3)ハードウェア:iPod/iPhone、パソコン、汎用
1)iPod/iPhone対応アプリ:iPodまたはiPhone(およびiPod touchとiPad)対応アプリ。
iPhone対応アプリがほとんど。中にはAndroid対応アプリもある。MP3ファイル出力機能なし。

2)パソコン用ソフト:パソコン上で音を再生する。MP3ファイル出力機能なし。

3)汎用型:パソコン用ソフトウェアで、MP3ファイル出力機能がある。
ビルトインされている音や合成した音をWaveファイル・MP3ファイルで保存し、他のハードウェア(iPod/iPhone、Degital Walkman、CDなど)で利用できる。

(参考)
以前、リオン社から海外製のマスカー装置が販売されていたが、現在は販売中止。
マスカー装置自体があらかじめ組み込まれたマスカーを元に再生するもので、複数のイヤホーンを使用することで最大54種類のマスカーが使えるというもの。補聴器のように箱型なので、携帯性にやや欠ける。
リオン製マスカー使用経験者による試用レビューが記載されているホームページ:リオン製マスカー/TM-11(L・H)

                              

箱型マスカーからソフト利用へ
マスカー療法用ツールのトレンドとしては、箱型マスカーから、目的に応じたハードウェア&ソフトウェアを選択する方向へシフトしている。
これは、iPod/iPhoneなどのポータブルオーディオが普及したこと、マスカーを再生・合成するソフトウェアが低価格で販売されるようになったことなどによる。

使用方法とハードウェア
アプリ・ソフトが対応しているハードウェアが限定されているので、使用方法にあったものを選択する。
iPhone対応アプリはiPhoneなどの対応機器を持っていないと使えない。
パソコン用ソフトは、パソコン上でしか使えないため、携帯できない。
MP3ファイルの出力機能があるソフトなら、ソフトにビルトインされた音や合成した音をMP3ファイルで保存し、デジタル音楽プレーヤー(iPod、Walkmanなど)やCDにコピーして、どこでも聴くことができる。

耳鳴り用マスカーソフトとリラクゼーション用ソフト
リラクゼーションを目的としたアンビエント(環境音楽)系のアプリケーションは、あらかじめ設定された音源だけを再生するタイプが多い。パソコン用ソフトの場合は、自由に音を組み合わせするものが多い。
フリーソフトや低価格のiPod/iPhone対応アプリなどがあるが、音の種類・数がソフトによってかなり違う。
耳鳴り用マスキングが目的の場合は、ノイズを組み込んでいる。

カスタマイズ性
ビルトインされた音源を自由に組み合わせてマスキング音を合成できるものは、パソコン用ソフトに多い。
カスタマイズ性が非常に高く、個々人の目的・状況に適応した音を合成することができる。

海外製ソフトは英語対応
日本語版がなく英語表示なので、シンプルなソフトなら画面を見れば簡単に操作できるが、音の合成が可能なソフトは設定画面が多いので、使いこなすのに時間がかかるかもしれない。
ヘルプやマニュアルも全て英語なので、自力で操作を習得・トラブル対応できる人向け。
※フリーソフトの”Aura”は複数の言語が選択でき、日本語版がある。

有償ソフトウェア購入時の決済方法
iPhone対応アプリは数百円クラスのものが多く、iPhoneやiTunestoreで購入できる。購入方法はこちら
フリーソフトは無料なので、提供企業のホームページからダウンロードするだけで良い。
有償のソフトウェアは、バージョンによって異なるが、数千円程度。提供企業のホームページから直接クレジットカードやPayPal(eBayの決済システム)などで決済する。

------------------------------------------------------------------------------
使用上の注意
-------------------------------------------------------------------------------
「耳鳴りマスカーソフト」の記事(合計5本)を作成するにあたり、iPhone対応アプリについては、全て試用はせず、ウェブサイトの情報だけで機能などを確認しました。
パソコン用のフリーソフトは、ダウンロードして操作確認済みです。
パソコン用の有償ソフトは、Deluxe版のみダウンロードして操作確認済みです。
私が試用した限りでは、特にパソコンのハード・ソフト面の不具合は発生しませんでしたが、個々人のパソコンの設定環境によって、パソコン内の他のプログラムに影響して、様々な不具合が発生する可能性があります。
全て自己責任において、ダウンロード&使用してください。

また、本記事を作成するために必要な情報・機能に限定して確認していますので、記事中に記載されていない情報・機能も少なくありません。
各アプリ・ソフトウェアの開発元・販売元が提供している情報を必ず確認してから、ご自身の判断で購入・使用などを検討・実行してください。

(2/5へ続く)

tag : 音響・音楽療法

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ウゴルスキ ~ ブラームス/ピアノ・ソナタ全集
長らく廃盤だったウゴルスキの『ブラームス/ピアノ・ソナタ全集』が、”タワーレコード・ヴィンテージ・コレクション~5周年記念特別版”として、2011年3月4日に再リリースされています。

 ブラームス: ピアノ・ソナタ全集(Anatol Ugorski)[TOWER RECORDS UNIVERSAL VINTAGE COLLECTION]  

(試聴ファイル:別盤)
ピアノ・ソナタ第1番~第3番、左手のための《シャコンヌ》[DISK:20~21]
ヘンデルヴァリエーション

ヘンデルヴァリエーションは極めてダイナミックで表情多彩な怪演(私はわりと好きです)、左手のための《シャコンヌ》はウゴルスキならではの繊細・流麗な響きが独特の超個性的な演奏。

ピアノ・ソナタの方はよく覚えていませんが、ヘンデルバリエーションとシャコンヌだけでも聴く価値は充分。
この選曲で2枚組1500円というのは、とってもお買い得。

たぶん昔の来日公演のライブ映像。吉田秀和氏が新聞でレビューしていた演奏だと思います。
ゆったりとして微妙に伸縮するテンポと繊細で柔らかな響きの弱音、濃密な叙情感は、普通弾かれるであろうブラームスとバッハとも全く違う奏法。こういう風に弾くのはウゴルスキしかいないでしょう。
スタジオ録音の方は、演奏時間が17分半とライブより1分ほど短いので、少し速めのテンポ。タッチもやや強めシャープなので叙情感が少し薄めだけれど、それでも十分情感深く流麗なシャコンヌ。

Anatol Ugorski Brahms Chaconne for left hand 1/2


Anatol Ugorski Brahms Chaconne for left hand 2/2



[関連記事]
 バッハ=ブラームス編曲/左手のための《シャコンヌ》
 ウゴルスキ~ブラームス/ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ

tag : ブラームス ウゴルスキ

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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
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