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アメリカ耳鳴協会(American Tinnitus Association)の概要(2) 活動内容
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ミッション
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ATAのミッションは、耳鳴研究を前進させるリソース(資源・方策) 開発により、耳鳴りを治癒すること。
ATAの特徴は、その際立った独自性(Standout Identity)にある。

【研究サポート】
1971年の設立以降、ATAは米国の非営利組織(NPO)として、耳鳴治療分野で研究者個人に対して研究資金を提供する唯一の団体。

【公的資金の確保】
アドボカシー(政策提言)プログラムにより、耳鳴り研究に公的資金が必要であると立法者の認識・理解を得ることに成果を上げている。耳鳴り研究のために公的資金を連邦予算の中に組み込むよう、省庁・委員会・立法者(議員)に強く働きかけている。

【徹底した情報の提供】
ATAは継続的に最新情報を提供する情報センター。ウェブサイト、電話や社会的なメディア、会員間のコミュニケーション、機関誌「Tinnitus Today」を通じて、人々の耳鳴りに対する理解やマネジメントに役立つ情報を提供する。

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研究助成活動
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1980年以降、耳鳴り研究に関する助成開始。
Scientific Advisory Committeeが申請された研究を審査し、助成対象に推薦。
最終的にBoard of Directorが承認した研究に対して、助成金が支給される。

ATAが助成した研究をベースに、研究者の多くはアメリカ国立衛生研究所(NIH)や国立聴覚・伝達障害研究所(NIDCD)から、より多額の研究助成を受けている。

助成実績
累積助成総額(1980年以降累積):4,843,659ドル
助成研究件数(1980年以降累積):104 件(耳鳴りの原因・治療法に関する研究)
研究助成額:1件当たり1万ドル~15万ドル程度。助成金総額は年間20~40万ドル程度、助成件数は5件前後。
研究期間:単年度と2年~3年の複数年研究。それぞれ毎年助成金が支給される。

助成研究一覧
最近および過去の助成研究概要

"Roadmap to a Cure"
ATAのScientific Advisory Committeeが作成した治療ロードマップ"ATA's RoadMap to a Cure - The cientific Version"(図)
助成研究がロードマップのどの段階に該当しているのか図示されているバージョン"ATA's RoadMap to a Cure"もある。


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アドボカシー活動
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議会・政府機関に対して、効率的・効果的な戦略に基づくアドボカシー(政策提言)活動を実施。
ATAの耳鳴治療のための活動は、直接的および非直接的助成研究を通じて展開されている。
毎年、議会キャンペーンを行い、有力議員に対する広報・提言活動通じて、政府機関の耳鳴り研究予算の増額や、議会での予算法案の立法化を働きかけている。
会合する相手は、ワシントンの議会リーダーで、最も目的にかなった影響力のある委員会に所属している人々を対象。

ATA’s advocacy toolkit
耳鳴りに関する説明用資料(「What You Should Know About Tinnitus」)や、議員へのレターを作成する方法などが載っている。

「What You Should Know About Tinnitus」(PDF)
耳鳴りに関する医学的情報、患者数、耳鳴り関連の予算動向などを、文字・グラフでわかりやすくまとめた資料。
PDFファイルをダウンロードして、自分の選挙区の上院・下院議員にコンタクトすることで、ATAのアドボカシー活動に参加するという仕組み。

Action Alliance
ATAのボランティアのネットワーク。議会や他の政府関係者へ耳鳴り関連の話題について情報を広めている。
助成決定や公的政策の形成に関して影響力のある人物に対して、ポジティブな影響を与えることが目的。


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アドボカシー活動の成果
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近年、耳鳴り研究予算が増加している背景の一つは、耳鳴りが幅広い年齢層の人にみられる症状というだけでなく、現役・退役軍人の間で広がっていること。
退役軍人管理局は、イラク・アフガニスタンから帰還した兵士の軍務に関わる機能障害として、3年連続で耳鳴りをNO.1にランクしている。

国防総省は、軍人が軍役についている全期間について、耳鳴による障害に対して110億ドルを費やしている。
近年この費用は増加傾向にあり、2014年までに226億ドルに達し、対象となる軍人は150万人以上になると予測されている。
軍人の場合は、日常的に銃声や爆発音に晒されているため、急性音響外傷にかかりやすく、戦地から戻った帰還兵・退役軍人が耳鳴りに悩まされることとなる。
ATAは、耳鳴治療法やより良い診断方法・予防方法の研究促進に議会が注目するよう、議会への啓蒙・提言などを継続的に行っている。

"Tinnitus Research for Military Health Improvement Act,H.R.5203"
下院外交委員会(House Armed Services Committee)は、"H.R.5203 -- Tinnitus Research for Military Health Improvement Act"(軍人の健康改善のための耳鳴り研究法案)を議会提出。[法案テキストへのリンク]
耳鳴り研究に対して、今後5年間にわたって毎年1000万ドルを拠出することを定めたもの。
ATAのアドボカシー活動において、この法案の提出は歴史的な瞬間。法案を議会通過(可決)させるため、継続的に多大な努力と活動が必要である。

"House version of the National Defense Authorization Act for Fiscal Year 2011, H.R.5136"
防衛関連法案の一部として、この耳鳴(研究)法案が米国議会の下院を通過した。
法案では、耳鳴りを患っている個々人(特に退役および現役の軍人)に対する2つの直接的利害規定を含む。
1)軍人が軍役前・後に耳鳴り診断を含む聴覚検査の適用を受けることを確保する。
2)Department of Defense (DoD)に、軍事の聴覚機能保護を改善するための方法の進言とあわせて、研究と報告を要求する。
この2つの条項は、 共和党下院議員により加えられた修正条項である。
これは、2010年5月に2人の共和党議員から提出された、より包括的な耳鳴り法案"H.R. 5203,"The Tinnitus Research for Military Health Improvement Act."からとられている。

"H.R.5136"は下院を2010年5月29日に通過。上院版の"FY 2011 DoD bill,S.3454"はまだ検討されていない。
この2つのバージョンが最終的に法律の形になるように妥協させる必要がある。

国立聴覚・伝達障害研究所 (NIDCD; National Institute on Deafness and Other Communication Disorders)が研究加速
ATAのアドボカシー活動による立法化促進により、NIDCDは過去数年に渡って、耳鳴り研究予算を増やし続けている。

150万ドル(2005年) ⇒ 490万ドル(2008年) ⇒ 850万ドル(2009年)

国防総省の最新予算と合算すると、米国政府の耳鳴り研究助成額の合計は、2009年で最大1000万ドルに達する。
国防総省は、Peer Reviewed Medical Research Programを通じて、耳鳴研究者への助成を継続している。
医学・基礎科学研究者が研究助成について情報を得ることが確実になるように、ATAは助成金申込の詳細を放送した。

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サポート活動
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サポートネットワーク
耳鳴りに関する情報、ヘルスケア専門家、サポートグループとボランティアを提供している。
"Support Network"は全米にある36の耳鳴りサポートグループで構成。
さらに、156人の個人ボランティアにより一対一の個人ベースのサポートを行う。

ATAホームページの<Support Network>サイトでは、以下の4つの機能を提供。

【Find a Support Network Contact】サポートグループの検索

【ATA Calendar】 (meeting time, location and details);サポートグループの会合予定表

【Volunteer to Start a Support Group】ATAサポートグループのリーダ用手引書“Help Book”

【Becoming A Help Network Volunteer】サポートネットワークのボランティアになる方法の紹介


サポートグループ以外のサポート活動として、ホームページや機関誌を通じて、耳鳴り・治療に関する情報提供や製品販売を行っている。
ATA Online (http://www.ata.org/)
1日あたり約1000人がホームページにアクセス。
マネジメントツール、研究者・患者向けリソース、耳鳴りに関するメディア情報。会員限定サイトもあり。
コンテンツは、耳鳴りに関する知識治療法、サポートネットワーク、ATAへの参加・寄付方法、アドボカシー活動への参加方法、など。

ATA オンラインストア
個々人がempowerment感覚を持つために役立つ製品の提供。
耳鳴りをマネジメントし、聴力を保護するためのツール(自然環境音のCD,有益な情報が入っているDVD・書籍、音響機器など)を販売。
別頁に<オークションサイト>も開設している。

『Tinnitus Today』
機関誌。会員・寄付者とATAや国際的な助成研究に関する報告を共有する。
耳鳴り治療の専門家による記事やQ&A、アドボカシー活動の紹介、果敢に耳鳴りに対処した家族に関する読み物など。

American Tinnitus Association's Channel[Youtube]
Youtubeの公式チャンネル。耳鳴りに関する広報活動のために、ATAの会員・支援者が出演したTV番組や、自主制作したビデオなどを公開。
TODAY SHOW with Dr Stephen Nagler 1997(Nagler前ATA理事長と俳優のシャトナーが出演)
William Shatner speaks about his tinnitus
Jennifer & Denise Capriati talk about tinnitus in their family



アメリカ耳鳴協会(American Tinnitus Association)の概要(1) 歴史・組織・財政
耳鳴協会(Tinnitus Association)は世界でいくつか設立されているが、その中でも歴史的に古く、活発で幅広い活動を展開している組織がアメリカ耳鳴協会(American Tinnitus Association:ATA)。

アメリカ耳鳴協会(以下、ATA)は、耳鳴治療分野に関して米国で最大の非営利組織。
耳鳴治療研究の進展を促進するために、様々な活動を行っている。
主な活動:
 -耳鳴り研究への助成(原因究明と治療法開発)
 -耳鳴りカンファレンス・セミナー・ワークショップ開催
 -サポートネットワーク構築
 -著名人(俳優、歌手など)によるATAのPR(TV・雑誌などマスメディア、Youtubeの公開動画など)
 -ワシントンでのアドボカシー活動(影響力のある議員・政府機関への働きかけ、議会向けキャンペーン、議会での証言など)

ATAに関する情報サイト
- ATAのホームページ
- アニュアルレポート(年間活動報告書)
- ATA概要(Wikipedia)
- ATAのYoutubeサイト


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ATAの歴史
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1971年 耳鳴り患者でもあるJack A. Vernon博士とCharles Unice博士が、オレゴン州ポートランドで"American Tinnitus Association"を設立。 耳鳴り関連分野で唯一の全国規模の組織の誕生。
1975年 会員向けに最初のニューズレターを発行。当時の会員数は95。耳鳴りをマスキングするための器具を作るという最初のアイデアを紹介している。
1976年 Gloria Reich博士が、最初のボランティアコーディネーターとして参加。
1976年 "Scientific Advisory Committee"設置。
1977-1980年 耳鳴りに関する教育的ワークショップ開催。全国規模で実施され、1200人以上の専門家に、耳鳴り患者の評価・マネジメントに関する情報を提供。
1978年 Vernon博士とRobert Hocksが耳鳴りマスカーに関する特許申請。
1979年 ATAが "501(c)(3) organization"の非課税組織(非営利状態)となる。
1979年 Parade magazineが耳鳴りとATAの活動関する記事発行。20,000通以上の手紙がATA事務局に到着。有償スタッフが必要になる。

1980年代~1990年代 耳鳴治療の医学的研究が大きく進展。耳鳴りの発生原理や発生部位を特定する研究が進む。
1982年 ATAが全国規模のサポートネットワークを設立。1年以内に全国で80グループができる。
1983年 俳優のウィリアム・クリストファー(「M*A*S*H*」のマッケイ神父役)が、ATAのために耳鳴りに関する広報活動開始。
1986年 ATAのサポートネットワークが150以上に増加。米国内とカナダに広がる。

1994年 女優バーブラ・ストライサンドが耳鳴り患者であることを公表、ATAの研究活動のため25,000ドルを寄付。
1995年 第5回International Tinnitus SeminarをATA主催でポートランドで開催。25カ国の科学者が参加。
1995年 俳優ウィリアム・シャトナーとGloria Reich博士が議会で証言。シャトナーはATAのための広報用ビデオを録画。"1995 - William Shatner tinnitus PSA"

2002年 Sid Kleinman(70歳になるATA Board of Directors議長)が、ウィスコンシン、アイオワ、イリノイ、テネシーまで1000マイルを自転車で走破。耳鳴りへの関心を高めるための歴史的イベント。
2004年 匿名の耳鳴り患者による寄付をもとに、Floyd David Lisinskiを記念した"The FDL Tinnitus Assistance Fund"を設立。200人以上の耳鳴り患者に対して、聴力検査や治療のために上限1500ドルを支給。
2005年 治療ロードマップ(ATA's RoadMap to a Cure - The Scientific Version)公開。Path A and B :耳鳴り発生の原理。Paths C and D:治療に焦点。
2008年 ウィリアム・シャトナーが。ATA会員と世界中の耳鳴り患者のために、個人的ビデオ"William Shatner speaks about his tinnitus"を公開。
2010年 テニスのジェニファー・カプリアティが、耳鳴り患者である母と耳鳴りに関するビデオ"Jennifer & Denise Capriati talk about tinnitus in their family"を作成。


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組織・スタッフ
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ATA Board of Directors
理事会(会社の取締役会に相当)は理事16名で構成。理事長はMark K.Johnson。

名誉理事:設立者のVernon博士、俳優のウィリアム・シャトナー
シャトナーは、『スター・トレック』のカーク艦長役などにより、米国では超有名人。耳鳴り発症後に、ジャストレボフ博士に会い、TRT療法による治療を受ける。

Scientific Advisory Committee
科学的アドバイザー委員会。ボランティアの医師・研究者17人で構成。。
助成申請に対して研究内容を審査し、助成対象となる研究をBoard of Directorに推薦する。
Board of Directorが承認した研究に対して、助成金が支給される。

事務局スタッフ
エグゼクティブ・ディレクター 1名
研究・特別プロジェクト/パブリック・アフェアーズ(広報活動)/ファンドレイジング担当 各1名 (合計3名)
メール管理・製品販売のコーディネーター 1名
会員・支援者担当マネージャー 1名
受付担当者 1名

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財政状況
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歳入と歳出 (会計年度:2009年7月~2010年6月末)

歳入:約88万ドル=7000万円
  Revenue and Support $ 877,273
  個人寄付が90%。助成金が10%。

歳出:約107万ドル=8600万円
  Total Program Services $ 811,366 
  Total Supporting Services $ 263,302
  (内訳)
   22% Advocacy (政策提言)
   39% Research (調査研究)
   15% Support  (サポートサービス)
    4% Management (運営管理)
   20% Fundraising (ファンドレイジング/資金調達活動)

期末純資産:約58万ドル=4600万円
  End of Year Net Assets $ 576,787

※歳入・歳出の差分は、資産勘定から繰り入れ。
『2009-2010 ANNUAL REPORT』 AR-6頁参照

寄付
「Our Generous Donors」として、寄付者の一覧リストをホームページで公開している。

寄付区分は以下の通り。
 -Research Advocate ($10,000 to 49,999)
 -Principal Investigator ($5,000 to 9,999)
 -Benefactor ($1,000 to 4,999)
 -Sponsor ($500 to 999)
 -Friend ($100 - 499)

オンライン寄付
ATAのホームページで、入会や寄付の手続きができる。

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会員制度
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ATA会員(ATA Membership)
『Tinnitus Today』の定期購読、ATAホームページでの会員限定サイト、近隣の耳鳴ケア専門家とサポートネットワークのリスト。会費は年間40ドル。

専門家会員(Professional Membership)
耳科医、内科医、心理学者、耳鳴治療・研究に関心のある専門家対象。会費は年間150ドル。
会員特典は専門家向けの情報提供が中心。
希望すれば、ATAホームページ上にある"Health Professional Listing"に名前を載せることができる。

企業会員(Corporate Membership)
耳鳴り治療の研究推進に対するパートナーシップに関心のある企業対象。会費は250~50000ドル以上まで4区分。

会員になる以外に、ATAの活動に参加する方法として、寄付、"Action Alliance"(アドボカシー活動)、耳鳴りネットワークのボランティア活動、などがある。

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加入・提携団体
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Tinnitus Research Initiative:非営利の研究組織
National Institutes of Health(アメリカ国立衛生研究所)
Department of Defense(国防総省)
Department of Veterans Affairs(退役軍人管理局)
Veterans of Foreign Wars(海外戦争復員兵協会)
Disabled American Veterans(米国退役軍人障害者協会)
Coalition for Iraq and Afghanistan Veterans(CIA)

>> (2)に続く


中野達哉著 『ブラームスの辞書』
音楽用語辞典は、世の中にたくさん出回っているけれど、世界で唯一の音楽用語辞典ではなかろうかと思うのが、中野達哉さんのブラームス専用音楽用語辞典『ブラームスの辞書』

自費出版した400頁の本に、ブラームス作品に出てくる音楽用語と用例(記載作品の該当頁)、用法や解説、譜面(一部の用語について)など、多くの情報が詰め込まれている。辞書編纂の苦労が伝わってくる労作。
この辞書を執筆するにあたって、ブラームス作品の楽譜から用語を抽出して、全部で22,000件のデータベースを作成したという。

著書と同名の中野さんのブログ<ブラームスの辞書>には、ブラームスや彼にゆかりのある人物・作品の記事が満載。
他の作品解説書や情報サイトなどでは見つからない情報が多数載っているので、ブラームス大好きな人や興味を持っている人には、インフォマティブで読むのが楽しいブログ。

中野達哉著『ブラームスの辞書』中野達哉著『ブラームスの辞書』
(2005/06/15)
中野達哉

問い合わせ先
(仕様:A5判、上製本カバー付き、400ページ、収録項目数約1170、譜例173箇所、4300円税込)

『ブラームスの辞書』を購入する時に、通し番号のシールが貼付されるので、その番号には自分の好きな作品番号を選ぶことができる。
といっても、すでに何十冊も本が売れているので、残っている作品番号はかなり少ない。
私は、とあるご縁で、ありがたいことにこの本を贈っていただいたけれど、そのときに私がお願いしたのは"69"。
「9つの歌」の作品番号。この歌が好きという理由からではなく、ブラームス弾きのジュリアス・カッチェンが43歳で亡くなったのが、1969年だったから。
残り少ない番号のなかで、運良くこの番号がまだ残っていたというのは偶然だろうけれど、やはり目に見えない何かの縁があったのかも...。

『ブラームスの辞書』の中身の方は、最初から頁を繰って、順番に最後まで読んでいく...というスタイルだと、読み終えるのは難しい。
タイトルどおり「辞書」なので、目的の用語を探して読んでいくか、よく知っている作品が載っている項目を拾いながら、読んでいく方が、私には読みやすい。
用語の使われ方からみると、「トップ系」と「パート系」の2種類に分けれている。
「トップ系」は、楽譜冒頭で指定されて曲(楽章)全体にかかるが、「パート系」は、曲の途中で特定の部分に関して指定されている。
「パート系」の場合は、楽譜でどの部分に使われているのか確認した方が解説内容がわかりやすくなる。
楽譜があれば手元に置いておけば良いけれど、膨大な作品群の楽譜を全部そろえている人はほとんどいないだろうから、IMSLP(無料楽譜ダウンロードサイト)で提供されているデジタル楽譜を使えば、PDFファイルで、閲覧・印刷ができる。
ただしどの版の楽譜なのか、注意が必要。版によって、記載されている用語が違ったり、記載がなかったり、逆に記載が追加されていたりする。

ブラームスのピアノ曲を弾いたり、聴いたりしていると、昔からずっと気になっていたことがあるので、早速『ブラームスの辞書』で調べてみました。

 andante Con Moto/歩くような速さで、動きをもって
《4つのバラード Op.10》 の第4曲で指定されている。
この曲は、演奏時間にして9分前後が多いけれど、カッチェンは5:35、レーゼルは6:27、グールド9:37、ミケランジェリは9:31。
テンポが倍近くも違うと、曲の雰囲気もガラッと変わる。
おそらくカッチェンが最速。この速いテンポだと、軽やかでとても明るい雰囲気。
"andante"にしてはかなり速いと感じるので、"andante"が抜けて、"con moto"だけが残ったような躍動感がある。
作曲家のSchweizer_Musikさんは、「カッチェンの速いテンポで同じ動機の繰り返しが、もう一つの大きなメロディーとなっていたことに気を付かせるという、主題の旋律のつながりが浮かび上がってくるので、これもまた妥当な解釈」だと言われていた。

私には《4つのバラード》が、「起承転結」というストーリー展開の組曲形式になっているように聴こえる。
第1曲が陰鬱で暗い短調「エドワード」。第4曲は長調で、軽快に弾いた方が明るく開放感があって終曲らしいし、曲ごとの性格のコントラストが明瞭になる。

『ブラームスの辞書』の項を見ると、ソナタの緩徐楽章では"andante"が良く使われていたが、"andante con moto"になると、緩徐楽章で使われることは少ないと書かれている。
その理由は、緩徐楽章にしては速すぎるのかもしれないため。
9分以上かけて弾いているグールドやミケランジェリの録音は、緩徐楽章の"andante"かそれ以上に遅い感じのテンポで、"con moto"の意味がかなり薄まっているように思える。

 andante/歩くような速さで
『ブラームスの辞書』の解説によると、ブラームスにとって、"andante"自体は、「速い」というよりは「遅い」概念。
速さの順番では、"allegretto - andantino - andante" の順に遅くなる。
面白いのは、ベートーヴェンとの用例比較。
ブラームスだけでなく、ベートーヴェンの音楽用語データベースまで作っているというのが凄い。
べートーヴェンは"adagio"の使用頻度はブラームスより多く、単独使用例が46例、混合使用例が115例。ブラームスは単独使用が25例ある。
ベートーヴェンの"andante"の単独使用は20例、ブラームスは56例。"andante"を含む語句の使用も87個、ブラームスは131例。
「Adagioのベートーヴェン、Andanteのブラームス」というところは、今まで弾いていても、聴いていても、全然気がつかなかった。

 calando/だんだん遅く弱く
Op.118-2のインテルメッツォで、主題部と再現部の2ヶ所に使われている。
指定自体は何の問題もない。気になるのは、その後で元のテンポに戻るはずなのに、テンポを戻す用語が指定されていないこと。
これは単に暗黙の了解として、テンポを戻すものなのだろうと思うし、いくつか聴いた録音でもそうして弾いている。
この"calando"が延々と効果をもってしまうと、その少し後で"rit"する部分があり、さらに遅くなってしまう。
やはり指定がなくても"a tempo"と解釈すべきところ。
『ブラームスの辞書』のデータ分析では、"calando"の後に"a tempo"が続いている例はなく、"in tempo"が続くのが2例。

 "a tempo"と"in tempo"/元のテンポで
『ブラームスの辞書』の解説によれば、"a tempo"と"in tempo"の両方がテンポを戻すために使われているが、用法に規則性はどうやらないらしい。
テンポを戻すときは、"a tempo"だと思い込んでいたが、"in tempo"は、ルバートなどをかけずに、拍子どおり一定の正確なテンポで...という意味なので、"a tempo"と同じように使えるらしい。

 rasch und feurig/速く、しかも、情熱的に
《スケルツォ Op.4》の冒頭の速度指定。なぜか、ドイツ語表記なのが不思議に思える。
『ブラームスの辞書』で確かめると、このドイツ語表記は《スケルツォ》でしか見当たらないという。
イタリア語ではなく、ドイツ語であえて表記したのは、《ドイツ・レクイエム》をドイツ語で書いたように、それだけ強く深い感情を込めて書いた曲なのだろうか。
いくら考えても、ブラームス本人に訊かないことには、確たることはわからない。

 più lento/いままでよりゆったりと
『ブラームスの辞書』で説明されているのが、Op.118-2の用法。
全部で3ヶ所に使われているが、両端と2番目の"più lento"では、用法が異なる。
2番目に出てくる場合は、直前の数小節にかかっている"rit"に引き続いてテンポを落とすような使い方。
両端の"più lento"は、内声部にある主題(冒頭主題を1オクターブ下げた「内声部のつぶやき」)にかかっている。
カッチェン、レーゼル、アックスの録音を聴いていると、この指定部分でテンポがかなり遅くなり、内声部の主題の旋律がはっきりと浮かびあがっている。

 maestoso/威厳を持って
ピアノ協奏曲第1番第1楽章の冒頭で、"maestoso"のみ指定されている。テンポの指定がないというのは、珍しい気がする。
『ブラームスの辞書』に載っている用例では、"maestoso"を単独で使っているのは、全部で3例。

アラウが力説していたのは、この"maestoso"と指定された第1楽章のテンポが、どのピアニストも速すぎるということ。
「速く弾くことと情熱とを結びつけて考えることは誤りです。音楽では、情熱はゆっくりと演奏すべきものです。速いことは情熱とは対照的なものです。緊張感がまったく失われるのです。私としては、このニ短調協奏曲に解釈が二通りあるとは思いません。第1楽章は4分の6拍子で書かれています。それにアレグロですらありません。マエストーソ、威厳を持って、とあります。もし、速く弾いたら、どこに威厳があるというのでしょう。」(『アラウとの対話』(みすず書房))

「私としては、このニ短調協奏曲に解釈が二通りあるとは思いません。」というのは、とてもアラウらしい言葉。
アラウの弟子だったピアニストのギャリック・オールソンが、アラウについて語っていたことを思い出す。
「アラウ先生は何事もいったん思い込んだら頑として強く思いこむ人です。絵を壁に架けること一つでも、別の架け方というものはないのです。一度架けたら、それが絶対なのでした。」(同上)


tag : ブラームス アラウ カッチェン

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
『A Steinway Christmas Album』
あと2ヶ月でクリスマス。ちょっと早いような気はするけれど、とても素敵なクリスマス・アルバムを聴いたので、すっかりクリスマス気分に。

クリスマスに聴くアルバムといえば、昨年までの定番はプラッゲの《クリスマス変奏曲~クリスマス・キャロルによる即興変奏曲》とスウェーデンのピアニスト・ペンティネンのクリスマスアルバム『EVENING BELLS』

《クリスマス変奏曲》は、ノルウェーの現代音楽作曲家ヴォルフガング・プラッゲが自作自演したピアノソロ・アルバム。
色彩感のある音色と響きがとても綺麗で柔らかく、旋律も素朴で親密感のある雰囲気がクリスマスらしい。

ペンティネンの『EVENING BELLS』は、最初と最後にケンプ編曲のバッハのコラール、クリスマスにちなんだリスト、レーガー、ブゾーニの曲、さらに現代曲のメシアンなどバラエティ豊かで、よくあるクリスマスアルバムとは一風違ったクラシックピアノ曲集。

今年のクリスマスにメインで聴くに違いないアルバムは『A Steinway Christmas Album』
和泉範之さんの<合唱音楽 聴いたり 弾いたり 振ったり blog>で新譜情報が紹介されていたもの。
早速試聴してみたら、これが思いのほか素敵なアルバム。
クリスマスのオムニバスアルバムは、編曲があまり良いものがないので、まず買わない。
このスタインウェイのアルバムは、試聴しただけですぐに気に入ったほどに、選曲・編曲がとても良く、柔らかいピアノの音がとても綺麗。

トラディショナル、クリスマス・キャロル、クラシック、ポップスと、バラエティ豊か。
ピアニストは、初めて聴いたジェフリー・ビーゲル。アメリカの中堅ピアニストらしく、NAXOSなどに録音がある。
全曲ピアノ・ソロなので、編曲ものが多い。ビーゲル自身が編曲していることもある。
どの曲も編曲が良くて、ポピュラー化した時の薄っぺらさがないのが特に良い。
《きよしこの夜》の編曲した作品が合計3曲あり、マックス・レーガーの曲が入っている。これが3曲中一番良かった。(Lienhardのジャズ風編曲も良いけれど)
ベートーヴェン風の編曲もあり、ほんとにベートーヴェンの音楽のように聴こえてくるので面白い。
2つの曲の旋律を使った編曲が何曲も入っているところも新鮮で、いつも聴いているクリスマス・ソングとは違った曲になって聴こえてくる。
ピアノが大好きな人には、とてもおすすめのクリスマス・アルバム。

"おまけ"についているのが、クリスマス・オーナメント(Keepsake Steinway Lyre Ornament)。[写真
竪琴のデザインがクリスマスらしいところ。薄っぺらくはないけれど、それほど厚みもないので、取り扱いにちょっと注意が必要。本の栞に使えそう?


Steinway Christmas AlbumSteinway Christmas Album
(2011/09/27)
Jeffrey Biegel(piano)

試聴する(米amazon)



1. Sleigh Ride (arr. A. Gentile for piano)
冒頭は、とっても楽しいクリスマスの雰囲気がいっぱいのリロイ・アンダーソンの《そりすべり》。
1948年作曲の管弦楽版をGentileが編曲したピアノソロで。
すべりだしは、連弾か、2台のピアノで弾いているような、厚みのある和声でとっても良い感じ。
でも、そのうち、とても凝ってずいぶん込み入ったパッセージが連続してくると、急にテンポが落ちて、もたもた。これはいただけません。これがハフなら、速いテンポで鮮やかに弾きこなしているでしょうけど。

2. The Sussex Mummers' Christmas Carol (version for piano)
《サセックスの役者が歌うクリスマス・キャロル》は、パーシー・グレインジャーの瞑想的な曲。
1889年のブリティッシュ・フォークソング集で初めて登場した曲をベースに作曲したもの。初めて聴いた曲。

3. Ding Dong! Merrily on High - Herz und Mund und Tat und Leben, BWV 147: Jesu, bleibet meine Freude (Jesu Joy of Man's Desiring) (arr. C.M. Taylor for piano)
2つの曲をつなぎ合わせた面白い編曲。
バッハの超有名なカンタータBWV147《主よ、人の望みの喜びよ/Jesu, bleibet meine Freude》と、キャロル《ディンドンほがらかに/Ding Dong! Merrily on High》の旋律を合体させた編曲。
全然違う曲なのに、不思議と違和感なく違う旋律がパッチワークのように繋ぎ合わされて、これがとても素敵な曲に聴こえてくる。
編曲の発想がとても面白くて、他のアルバムではたぶん聴くことができないという点で、このクリスマスアルバムの魅力の一つ。

4. Quiet Night (for Jeffrey Biegel)(Gregory Sullivan Issacs)
とてもゆっくりとして静けさ漂う《きよしこの夜》。夜も更けて雪が静かにしんしんと降る聖夜の雰囲気。
これも2つの曲の旋律を使っているらしく、クリスマスキャロル《飼い葉桶の中で/Away in a manger》と《Silent Night》。
英語の歌詞は、"星は、飼い葉桶の中で寝ている小さなイエスを照らす"という、キリスト誕生を歌ったものらしい。
右手が弾く《Silent Night》の旋律の後ろで、時折、和音がしんしんと降り落ちてくるような、静かで厳粛な雰囲気。

5. The Christmas Song, "Chestnuts Roasting On An Open Fire" (arr. J. Biegel for piano)
《ザ・クリスマス・ソング/暖炉では 栗の実が焼け》。ジャズ・ピアノ風の曲。《Quiet Night》と同じく、静けさに満ちた曲。
かなり有名な曲らしく、確かに聴いたことはあるような...。

6. Fetes de Noel (Svyatki), Op. 41: No. 3. Chanteurs
これはとっても楽しげなクリスマス・ノエル。Chanteurs de Noel。
ロシアの作曲家リャプノフのピアノ組曲《降誕祭/Fetes de Noel(Svyatki)》(1910年)より第3曲"Chanteurs de Noel"。

7. The Nutcracker, Op. 71 (arr. for piano): I. Miniature Overture: Allegro giusto
8. The Nutcracker, Op. 71 (arr. for piano): III. Dance of the Sugar-plum Fairy
9. The Nutcracker, Op. 71 (arr. for piano): IV. Russian Dance, "Trepak"
チャイコフスキーのバレエ音楽《くるみ割り人形》から、合計3曲。編曲はStepan Esipoff。
オープニング曲らしく明るく軽快な"Miniature Overture"、密やかなで不思議な雰囲気の妖精のダンス"Dance of the Sugar-plum Fairy"、フィナーレのように快活で軽やかなRussian Dance, "Trepak"。
《くるみ割り人形》の音楽は不思議とクリスマスに良く似合う。

10. Aus der Jugendzeit, Op. 17: No. 9. Weihnachtstraum
ドイツの作曲家マックス・レーガーの《Aus der Jugendzeit/若き日々より》より第9曲"Weihnachtstraum/クリスマスの夢"。
《きよしこの夜》の旋律を編曲したもので、旋律と和声の清楚な美しさは、あの重厚長大な作品群で有名な巨漢のレーガーからは想像もつかないくらい。
レーガーは膨大なピアノ独奏作品を残していて、有名な重音オンパレードで複雑極まりなく演奏至難の変奏曲が有名。
それ以外には、ブラームス風の小品が多数。
このクリスマスアルバムでは、《きよしこの夜》の編曲版が全部で3曲。そのなかでレーガーの編曲が最もオーソドックスで美しい編曲だと思う。

11. Yolka, Op. 21, "The Christmas Tree" (arr. for piano): Yolka (The Christmas Tree), Op. 21: Waltz (arr. for piano)
ウラディーミル・レビコフ音楽劇《Yolka/ヨルカ》から、"ワルツ"。
《Yolka》とは"クリスマス・ツリー"のこと。
下降する重音の旋律がとても美しい曲。

12. Les saisons (The Seasons), Op. 37b: XII. December: Christmas
チャイコフスキーの有名なピアノ組曲《四季》より、"12月:クリスマス"。

13. In the Bleak Midwinter - 3 Etudes de concert, S144/R5: No. 3 in D flat major, "Un sospiro" (arr. C.M. Taylor for piano)
これも2つの曲の旋律を組み合わせた編曲。
リストの《三つの演奏会用練習曲》の第3番"Un sospiro/ため息"と、イギリスの有名なキャロル《In the Bleak Midwinter/冬のさなかに》の2曲。
キャロルの作曲はグスタフ・ホルスト、作詞はChristina G. Rossetti。
この曲を聴いていると、ドヴォルザークの交響曲第9番《新世界にて》の有名な旋律(日本では"遠き山に日は落ちて"、または"家路"で知られている)にところどころ似ている。

14. Silent Night (arr. N.G. Lienhard for piano)
これでアルバム中3曲目になる《きよしこの夜》のピアノソロ編曲。
少し不協和音がかった和声が独特の響きがして、とても現代的。ジャズ風の編曲に聴こえる。

15. Christmas is a 'Coming (and the Geese are Getting Fat) (arr. S. Calderone for piano)
マザーグースの有名なクリスマス・キャロル《Christmas is coming》を元にした曲。
ビング・クロスビーが歌っているので有名らしい。

16. Hark the Herald Angels Sing (in the style of Beethoven) (arr. D. Sosin for piano)
Hark! the Herald Angels Sing
賛美歌98番「天(あめ)にはさかえ」をベートーヴェン風にピアノ編曲。
たしかに、ベートーヴェンのピアノ作品を連想するような和声や分散和音が出てくる。
かなりファンタスティックなべートーヴェンといった感じ。
最後に出てくるのは、多分、ベートーヴェンのヴァイオリンソナタ(?)か何かのフレーズだった気がする。

17. Weihnachtsbaum, S186/R71: III. Die Hirten an der Krippe (In dulci jubilo)
フランツ・リストの《Weihnachtsbaum/クリスマス・ツリー》は、クリスマス・キャロルからの編曲が数曲を含むピアノ組曲。
第3曲は、クリスマス・キャロルを元にした"Die Hirten an der Krippe/飼葉桶のそばの羊飼たち"。
明るく軽やかな雰囲気で、リストにしてはシンプルな和声が美しい曲。
ところどころ聴いたことのある有名なクリスマス・キャロルの旋律が聴こえてくる。

18. Bring a Torch - I Saw Three Ships (arr. S. Calderone for piano)
16世紀のプロヴァンス舞曲と17世紀の英国のキャロルを融合した曲。

19. Christmas Lullaby (arr. J. Biegel for piano)
2001年作のAnn Hampton Callawayの《Christmas Lullaby/クリスマス・ララバイ》。

20. My Grown-Up Christmas List (arr. J. Biegel for piano)
1992年にデイヴィッド・フォスターが作曲(歌詞はLinda Thompson-Jenner)した《My Grown-Up Christmas List》。
デイヴィッド・フォスターといえば、"THE SYMPHONY SESSIONS"をよく聴いていた。
このアルバムに収録しているのは、ピアノを弾いているジェフリー・ビーゲル自身が編曲したピアノソロ。

フォスターの原曲を一番初めに歌ったのがナタリー・コールらしい。
Youtubeの映像は、シャリースのロックフェラー・センターでのライブ。
シャリースの名前も歌も聴いたのは初めて。ピアノ伴奏は作曲者のフォスター自身。
シャリースの歌も素敵だし、ピアノソロはそれとは違った味わいで、これも同じくらいに素敵な編曲。

CHARICE PEMPENGCO: My Grown up Christmas List at Rockefeller 30Nov2010



21. Auld Lang Syne (arr. J. Biegel for piano)
言わずと知れた《蛍の光》。変奏曲風なピアノソロ。最後にこの曲を聴くと、やっぱりお別れの気分。


tag : レーガー フランツ・リスト

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メラトニン&ロゼレム関連情報
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メラトニン
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「メラトニン」は人間の体内の松果体で分泌されるホルモン。

メラトニンは、アミノ酸のトリプトファンからセロトニンを経由して合成される。メラトニンの合成は昼間(明期)に抑制され、夜間(暗期)は促進されるというように明暗サイクルと関連している。このことからメラトニンは、睡眠・覚醒周期などの生体の日内リズムや内分泌系を制御する働きをもつと考えられている。(「健康食品」の安全性・有効性情報:素材情報データベース(国立健康・栄養研究所)より引用]

メラトニンが注目されたのは、1995年に米国で刊行された『奇跡のホルモン・メラトニン』『驚異のメラトニン』という本がきっかけ。
催眠作用以外にも、ガンを防ぎ、抗がん剤の副作用を緩和したり、免疫系を強化して病気に対する抵抗力を高める...などと書かれていたために、一時期、米国では「不老長寿の秘薬」などと言われて、メラトニンがブームになったという。

現在、日本と欧州諸国では、メラトニンは「医薬品」に相当するものとして規制されているが、米国では「栄養補助食品」として扱われている。
日本では、メラトニンを輸入又は製造することは薬事法により禁じられている。メラトニンを入手したい場合は、サプリメントを個人輸入という形で購入することになる。

メラトニンの効能・服用方法
<New York Naturals> "メラトニンFAQ"
通販会社ニューヨーク・ナチュラルズのホームページ情報


メラトニンの危険性、安全性
「健康食品」の安全性・有効性情報:素材情報データベース(国立健康・栄養研究所)

危険性、安全性に関して、既存文献での報告事例が多数記載されている。
「抗凝血薬、糖尿病治療薬、ベンゾジアゼピン類、中枢神経抑制薬、免疫抑制薬など併用に注意を要する医薬品は多く知られている。」
「妊娠中の摂取は危険性が示唆されている。また小児の使用は注意を要する。」
「てんかん患者、ならびに抗凝血薬ワルファリンカリウムの服用者の摂取は危険である。」など


メラトニン中毒
北九州総合病院救命救急センターでの症例と考察。
ヨーロッパでは、メラトニンはニューロホルモンと考えられ、OTCとしては販売されていない。
考察では、「メラトニン中毒は,この症例からは,安全域も広く,代謝,排泄も早いことが示唆された」。
※OTC医薬品(一般用医薬品):薬局・ドラッグストアなどで販売されている医薬品


Melatonin helps your sleep(Ringinginears.net)
耳鳴り患者(米国人男性)さんのホームページ<Ringinginears.net - Tinnitus Treatments, Tinnitus Advice and Help>に、メラトニン情報が載っている。
彼は、14年間の耳鳴を経験した後、6ヶ月間以上メラトニンを服用した結果、耳鳴り&睡眠改善に効果があったという。
(以下は要約)

作用
メラトニンは、脳の中央に位置する松果腺によって分泌されたホルモン。夜の暗闇の始まりで刺激されるホルモンで、人間の精神的サイクルや体内時計にとって非常に重要な要素。
メラトニンは睡眠や覚醒サイクルを規則化するために体内で生成されるが、加齢によって生成量が減少する。
ある研究では、睡眠パターンが不規則な耳鳴り持ちの人に役立ち、危険性や副作用もないことが示されている。同時に、メラトニンは免疫システムを強化し体内のフリーラジカルを再生産する。

使用法
メラトニンは、天然のナイトキャップに似たようなもの。耳鳴り患者は、規則的に使用することで効果がある。
適切な使用量は医師の処方に従うべきであり、個人差がある。
通常、耳鳴り患者は、毎晩就寝前に少量を服用することから始めて、必要に応じて増量する。
就寝する1時間~30分前に服用することを推奨。
長時間乗り物で移動する旅行中は、乗る前に服用する。
メラトニンの効力を高めて、体内時計やリズムを整えるためには、メラトニンを決まった時間に規則的に服用することが大事。

副作用、安全性
副作用は、各種研究によれば、悪夢、頭痛、記憶力の混乱、軽い気鬱、性行動の減小などがある。(経験的に言えば、そういう副作用はなかった)。
服用してはいけない人:妊婦や乳幼児を育児中の人、ひどいアレルギー症、ガン患者(leukemia or lymphom)、健康な児童、など。
メラトニンは、安全性が高く、毒性のある物質が極めて少ない薬の一つ。規制当局へのクレームも非常に少ない。
クレームの大半は、ある種の人々にとって、動きや反応が鈍くなるということに関連している。

(以上、要約終わり)


メラトニン分泌自己増加法 [メラトニンの総合情報サイト]
メラトニンは本来は体内で生成されるホルモン。サプリメントの助けを借りることなく、生成量を増やす方法がいくつか載っている。

1)メラトニンの量は光の量と関係する。
部屋の照明を調整する。就寝前の数時間は、部屋の照明を少し暗くし、テレビやパソコンも控える。
カーテンを閉めて部屋を暗くする。(※遮光カーテンを使うのも良さそう)

2)メラトニンは、必須アミノ酸のトリプトファンから生成される。
トリプトファンは、腸で消化されて脳内に入ると、セロトニンに変わり、最終的にはメラトニンに分解される。
トリプトファンを多く含む食品、赤身の魚(サンマ、マグロなど)や肉、大豆製品、乳製品、くるみ、ゴマ、ふ、落花生、バナナなど。

また、トリプトファンがビタミンB6と合成されて、有効なセロトニンが生成されるため、ビタミンB6が豊富な「バナナ&牛乳」という組み合わせが良いらしい。(美と健康のコラム「夏の寝苦しい夜にはトリプトファンいっぱいのバナナ牛乳を」


メラトニンに関する書籍

『驚異のメラトニン』は、メラトニンブームのきっかけとなった書籍の一つ。
驚異のメラトニン驚異のメラトニン
(1996/03)
ウォルター ピエルパオリ、キャロル コールマン 他

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『睡眠ホルモン 脳内メラトニン・トレーニング―よく眠れない人のための本』は、メラトニンの効用のうち、睡眠に特化して書かれたハウツーもの。
目次を読むと、メラトニンの効用以外にも、質の良い睡眠をとるためのいろいろなポイントが記載されている。

睡眠ホルモン 脳内メラトニン・トレーニング―よく眠れない人のための本睡眠ホルモン 脳内メラトニン・トレーニング―よく眠れない人のための本
(2008/01)
有田 秀穂

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関連情報:ロゼレム
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日本では、メラトニン受容体を刺激して睡眠障害を治療する新薬「ラメルテオン(商品名:ロゼレム錠8mg)」が、2010年4月に医薬品として承認されている。
日本に先立って、米国では2005年に承認されている。

【新薬】ラメルテオン ロゼレム:メラトニン受容体を刺激する日本発の催眠剤[日経メディカル・オンライン]

自然な眠りを求めて-ロゼレムの研究開発[創造性の育成塾夏合宿2009](ストリーミング動画)
武田薬品工業㈱医薬研究本部副本部長が、中学生向けセミナーでロゼレム開発経緯をレクチャー。
ストリーミング動画で、実際の授業を視聴でき、内容・資料ともわかりやすい。
睡眠の仕組み、睡眠薬の歴史など、睡眠薬の開発に関連する話もいろいろ入っている。
参考資料(1):セミナー資料[PDF]
参考資料(2):ロゼレム(=ラメルテオン)プレゼン用資料(専門家向け)[PDF] 
※メラトニンとの比較表あり:①受容体への親和性 ②作用の持続 ③睡眠潜時に対する効果 ④総睡眠時間

メラトニン受容体アゴニスト「ロゼレム」の話 [医療のトピック](六号通り診療所所長のブログ)
ロゼレムの薬効、利点、副作用、使い方のポイントなどが、本文、コメント欄に書かれている。
この記事の解説によると、薬効は睡眠潜時の短縮(約10分短縮)と睡眠時間の増加(約20分程度)、薬がないと長時間眠れない人向けではない、睡眠剤特有の副作用が極めて少ない、抗うつ剤ルボックス(デプロメール)との併用は禁忌、基本的には睡眠リズム障碍の治療薬のため決まった時間に飲むこと、など。

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注意事項
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この記事は、本文中の記載されている医薬品・健康食品・食品の服用を推奨・奨励する目的のものではありません。
また、本文中に記載している引用情報、および、リンク先の記載情報に関して、その信頼性を保証するものではありません。
英文の情報については、厳密な訳文ではない要約文のため、正確な内容については原文で確認してください。

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新譜情報:カッチェン&マーク指揮ロンドン新交響楽団/モーツァルト ピアノ協奏曲第20番
CDの新譜が売れないおかげで、製作コストの安い古いスタジオ録音・ライブ録音のリイシューや初出盤が最近やたらに多くなっている。
11月はカッチェンの新譜が2枚リリースされる。
ブラームスのピアノ協奏曲のライブ録音集(ica盤)と、1955年のモノラル録音のモーツァルトのピアノ協奏曲第20番(Eloquence Australia)。
ライブ録音集は初出音源ばかり。モーツァルトのピアノ協奏曲はLP盤からCD化されていなかったスタジオ録音。

Mozart: Piano Concertos Nos. 13 & 20 Six German DaMozart: Piano Concertos Nos. 13 & 20 Six German Da
2011年11月20日
Julius Katchen、Peter Maag,New Symphony Orchestra of London

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カップリングは、 ピアノ協奏曲第13番(既出音源)、ペーター・マーク指揮ロンドン交響楽団によるツァルト《6つのドイツ舞曲 K.509》。

カッチェンの第20番は、カール・ミュンヒンガー指揮シュトゥットガルト室内管弦楽団と録音した1966年のスタジオ録音がある。
また、第2楽章のみ、コンヴィチュニー指揮ゲヴァントハウス管の伴奏で、1960年のライブ録音もある。ブラームスのピアノ協奏曲第1番の演奏会で、アンコールで弾いたもの。
ペーター・マーク指揮ロンドン新交響楽団とのスタジオ録音は、存在は知っていたけれど、CDを見かけたことも聴いたこともないなかった録音。

CDの紹介文によると、このカッチェンとマークの録音したピアノ協奏曲第20番は、「ハスキル以前の最高の演奏と呼ばれ、「すばらしい暖かさと爽やかさを両立させた演奏」と高い評価を得ていた名演」と書いている。
それは初耳。インターネットで検索しても、そういう記述は見かけなかったので、本当かな?
その真偽はともかくとして、カッチェンのCDコレクターとしては、これを聴かないわけにはいかない。

ピアノ協奏曲第20番は、カッチェンがわずか10歳のとき、演奏会で弾いてデビュー。それを聞いたオーマンディがカッチェンを招き、バルビローリの指揮のもと演奏会で弾いたという記念すべき曲。
Decca盤では、モノラル時代にマークと、ステレオ時代にミュンヒンガーと録音している。
ミュンヒンガー指揮の第20番は、ピアノが弱音側に寄っていて、録音が聴き取りにくい上に、指揮者とオケで枠がカッチリはめられているようなところがあり、ピアノの存在感がやや薄いような気がする。どちらかというと、第25番の方がまだピアノが伸びやかかも。

マークと録音した第13番のコンチェルトは、硬質で線のしっかりしたタッチが個性的だった。
ミュンヒンガーと録音した時より10年も前に、この第20番のコンチェルトをどういう風に弾いていたのでしょう?


おそらく、ミュンヒンガー指揮シュトゥットガルト室内管(1966年)のスタジオ録音。
Mozart con n°20K466(2)+++audio only+++





tag : モーツァルト カッチェン

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ブレンデルとフランツ・リスト ~ 『音楽のなかの言葉』と『対話録「さすらい人」ブレンデル』より
ブレンデルがリストについて書いた評論や意見は、著書『音のなかの言葉』や『対話録「さすらい人」ブレンデル』に載っている。

『音のなかの言葉』で、ベートーヴェン、シューベルトと並んで、重点的に取り上げられているのが、リスト。
リストに関するエッセイ・小論に数章を割いていて、リストの人間像や作品に関するブレンデルの考えがまとまって書かれている、
ブレンデルは通俗的なリストの人物像や音楽論に対しては否定的で、「高潔なリスト」「リストの悲しみ」の2つの章で、ブレンデルが思うところの"リスト"像を書いている。

個々の作品論として、「リストの《巡礼の年》第1年・第2年」と「リストのロ短調ソナタ」の2章があてられている。
ブレンデルは、リストの"高潔なる本質"を抽出することがリスト奏者には必要であり、そのための作品として"独自性と完成度の高さ、豊かさと抑制、威厳と情熱を同時にそなえた作品"をいくつか選んでいる。
ピアノ・ソナタロ短調、《巡礼の年》、《泣き、嘆き、悲しみ、おののき》の変奏曲、《モショーニの葬送》のような後期の作品、練習曲集から何曲か。特に、ロ短調ソナタと《巡礼の年》はリストの最高傑作だという。

音楽のなかの言葉音楽のなかの言葉
(1992/03)
アルフレート ブレンデル

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日本語版はどうも絶版らしい。表紙の画像はハードカバーのものを使用。


                           

『対話録「さすらい人」ブレンデル リストからモーツァルトへの道程』の方にも、リストに関する記述は多い。
リスト作品との出会い、作曲家論・作品論・演奏法などについて、簡潔に述べられているので、『音のなかの言葉』とあわせて読むと、ブレンデルのリスト観がさらに良くわかる。

対話録「さすらい人」ブレンデル リストからモーツァルトへの道程対話録「さすらい人」ブレンデル リストからモーツァルトへの道程
(2001/10/09)
マルティン マイヤー

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本書の紹介文;音楽の本のはなし 「第18回 名教師と名演奏家」

リストとの出会い
ブレンデルのリスト録音は、VOX時代~Philips時代まで、多数残されている。
再録音やライブ録音など、同じ曲の録音も多い。
ブレンデルにとって、リストを弾く理由は、「技術的な難題を解決する喜びだけではなくて、音楽的な関心があったからです。基本的に一生つきあっていける曲を弾いていました。特に贅沢な一生でなくてもよかった。」

当時はリストを弾くことは珍しかったらしく、超絶技巧のテクニックを鍛えることができたという。
リストは膨大な作品を残していたが、作品の質には差があり、改訂も度々行っている。
ブレンデルが弾くリスト作品は、彼独自の選択眼によって選ばれているので、超絶技巧を核にした"リスト弾き"のレパートリーとはかなり違っている。

ブレンデルは、信仰心の厚い人間ではないが、芸術に関してはたいていのことは受け入れられるそうで、「宗教的な作品を弾くときは、パウラの聖フランチェスコが雲の上を実際に歩いていると確信していますし、鳥に説法をするアッシジの聖フランチェスコの気持ちになって、鳥が静かに彼の言葉に聞き入っている様子をイメージします。」

リストに魅せられたきっかけは、ラジオから流れてきた《ソナタロ短調》を聴いたことだという。
その後に、リストに関する本や彼自身が書いた文章を読んで、ブゾーニと同じように、リストについてさらに知りたいと思うようになる。

「リスト、そしてのちのブゾーニは、私にとっておそらくもっとも多くの面で「理想的」な音楽家です。どちらも幅広いレパートリーを持ったピアニストですからね。リストなどはその作品を通して、ピアノという楽器が持つすべての可能性を紹介しています。それに、リストは彼の音楽を毛嫌いしていた当時の人たちからも一代のピアニストとして認められていました。
個人的に音楽以外の芸術にも興味があり、書物を読み、言葉を操って何かを表現するのが昔から好きなので、リストとブゾーニに魅了されたのかもしれません。」


ブレンデルの最初のリストのレパートリーは、グラーツの音楽大学時代の最初の頃、演奏会で弾いた《葬送》,《マゼッパ》,《バッハの名による幻想曲とフーガ》。

リスト作品の特徴について
「リストほど、ピアノという楽器について多くのことを学ぶことを可能としてくれる作曲家はいません。リストは叙情的な小品から、オーケストラ曲やオペラのパラフレーズといった大曲にいたるまで、ピアノが持つ幅広い可能性を追求し、それまでなかった多くの技術を開拓していきました。その一例がペダルの使い方なのですが、彼の表記の方法はあまり明確ではありません。彼の作品は不思議なことに、書かれた印とはまったく一致しないペダル奏法を必要としていることが多いのです。」

「文学、造形芸術、自然、政治情勢、個人的な印象といったさまざまな外的要素にも影響を受けています。リストの解釈は、ときおり伝記的背景を参考にしても良いと思います。《巡礼の年第3年》の第5曲《ものみな涙あり》などは、ビューローがコージマに散々な目にあった時期に書かれていて、ビューローに捧げた徹底的に暗い作品です。」

「ありとあらゆる素材を使ったという点で、彼はピカソ、あるいはストラヴィンスキーの先駆者のような人です。テクニックの面でずば抜けた力量の持ち主だっただけではなく、シューマンが語っているように「天才的な表現力の持ち主」でした。」


「リストは宗教色のあるピアノのための作品を書いた最初の作曲家で、私はこうした彼のピアノ曲のほうがオラトリオやミサといった宗教曲よりも説得力があると思います。彼のこうした作品を弾いていると、書かれている内容を信じる気持ちになれます。不可知論者で懐疑主義者の演奏家でもそのような気分になれるのです。水面を歩いたり、鳥に説法をして、彼らが羽根をわずかに動かすだけで静かに聞き入るようにもっていくことができるリストの音楽家としての本質がそこにあるのです。リストは演奏家として不可能を可能にすることができた人でした。」

リストの宗教的なピアノ作品として、代表的な曲は《2つの伝説》(S.175/R.17)。第1曲《小鳥に語るアシジの聖フランシス》と第2曲《波を渡るパオラの聖フランシス》の2曲がある。
その他の有名な作品は、《詩的で宗教的な調べ》(S173/R14)、《死の舞踏》(S.126/R.457)(ピアノ&管弦楽曲版とピアノ独奏版)など。

「忘れてはならないのは、特にヴァイマル時代、リストが素晴らしい作曲家であり、ベートーヴェンの功績を全て知っている人間だったということです。ベートーヴェン以降、《リストのロ短調ソナタ》ほど彼の基本理念を忠実に継承している作品を私はほかに知りません。ベートーヴェンのソナタと同じように、このソナタも序奏なしでいきなり始まります。序奏のように見える導入部分がありますが、あれはすでにソナタを構成し、性格づける重要な素材です。最初から動機的な素材が提示されているのです。譜面を詳しく追っていくと、のちにこの冒頭の素材がいかにして利用されていくかがわかります。」

「私にとってはやはり、題名もなく、絶対音楽として書かれた《ソナタロ短調》がリストの作品のなかでもっとも強く訴えかけてくる作品です。比較的長い曲で最初から最後まで緊張が続き、終始完成度が高いところがすばらしい。この作品のテーマで何が語られているのかを解釈するうえで、『ファウスト』との関連性が役に立ちました。」

《ロ短調ソナタ》については、ブレンデルは『音楽のなかの言葉』で、一つ章を割いて作品解説を書いている。
 ブレンデル ~ リスト/ロ短調ソナタ [1981年録音と作品解説]

《ロ短調ソナタ》の録音は、スタジオ録音が1958年、1981年、1991年の3種類。

Alfred Brendel plays Liszt´s sonata in b minor (3rd) (1991,Brendel)



「つねに何かを表現しながら音楽的展開をみせる作品の一例として、変奏曲《泣き、嘆き、悲しみ、おののき》をあげたいと思います。ここでリストは、バッハのカンタータの低音部の動機と冒頭の言葉を用いています。この言葉がもつ精神的な意味合いが、半音階がコラールの形で解決する前に音楽的な表現に印象深く転換されています。コラールは確信的に弾かなくてはなりません。」

リストの編曲ものといっても、編曲とパラフレーズの2種類がある。
ベートーヴェンの交響曲全集は前者の編曲作品にあたる。難曲として有名で、全集録音はわずか。なかでも定評のあるのが、カツァリスとシチェルバコフ。グールドは第6番の田園交響曲の編曲版を録音している。
カツァリスはリストの編曲版に自分でかなり音を追加しているので、音響的により厚みが増してシンフォニック。音が多すぎて聴きにくい時もある。
シチェルバコフは、リストの楽譜どおりに弾いている(らしい)ので、旋律線が明瞭。声部ごとの色彩感の違いもあり、立体的でポリフォニックなところが聴きやすい。
リストには、バッハのオルガン曲の編曲もあり、原曲の旋律を生かしあまり手を加えていないシンプルな編曲。バッハのオルガン曲の持つ敬虔さと崇高さが伝わってくる。

「編曲とパラフレーズは区別すべきです。編曲は原曲を基本的にあまりいじらずに、オーケストラの響きをピアノで再現しようとする作品です。」
「しかし歌曲に基づく改編曲は違います。どれほど内容が素晴らしくてもあの一連の歌曲のパラフレーズはあまりにもシューベルトの原曲からかけ離れています。《ドン・ジョヴァンの回想》は、超人か、あの曲を弾くために生まれてきたような人にしか弾けません。」


「《巡礼の年》の場合、(第1年スイスについて特に)、人を取り巻く自然と心のなかの自然を描いています。《オーベルマンの谷》はどこかの谷にでかけていくのですが、その旅は心の旅なのです。セナンクールの小説『オーベルマン』と深い関係にある作品なのですが、小説では不安や自殺願望といった心情が描かれています。リストの作品は心の旅という部分が特に強く感じられます。狂詩曲風のモノローグです。彼の作品のなかでは最も重要な作品のひとつではありますが、演奏中に「脱線する」危険性の大きい作品でもあります。」

リストの後期作品を積極的にとりあげるピアニストはそれほど多くはないが、ブレンデルの録音には後期作品が多い。

「リストの素晴らしいところは、新しい音楽の開拓者として常に若々しく、若者のような好奇心に老人としての豊かな経験を作品のなかで巧みに合致させていることです。・・・・大胆にも機能和声法を離れ、調性的な安定を求めず、《調性のないバガテル》のように調性が明確でなくなっているような作品を意図的に書いたり、ある調で始まり、別の調で終る曲や、同じ音楽的素材をまったく関連性のない調で繰り返すといったこともしています。時には圧倒的な半音階の利用がすでに調性からの解放を暗示しています。ただし、減7度の和音というのは「治外法権」の素材なので、音楽的にプラスに作用しているとは限りません。あの和音はどの調性にも属せず、調性の間に位置するものです。ベートーヴェン、シューベルト、ワーグナーといった偉大な作曲家は、これを恐怖、危険、悪魔的なもの、不安といった機能和声らしい意味合いで利用しています。リストは音楽がどこに向かっているのか、どういった傾向に進みつつあるのかをいち早く察知していました。」

「リストのピアノ曲のそうした幅広さ(若いピアニストに適した派手な作品と、経験豊かな演奏者を必要とする奥深い思弁的な作品がある)こそが、彼のおもしろいところなのです。それでもリストの詩的なピアノ曲は特別な存在だと思います。」

「《死の舞踏》はこれらの作品のなかで、もっとも個性的だと思います。とても好きな作品です。しかし、この曲は大きな音や速さを追求するのではなく、音楽的な面からアプローチしていかなければなりません。リストの弟子だったジロティ版の楽譜は、テンポの数字も書かれていますが、おおむねそれほど速くありません。私は演奏する際にこの譜面を参考にしました。」
「一番頻繁に弾いたオーケストラ作品はピアノ協奏曲イ長調です。提示部が素晴らしい曲です。協奏曲で《ソナタロ短調》に匹敵するような傑作は、せいぜい《死の舞踏》が肩を並べるくらいでしょう。きわめて一面的な作品ですが、とても個性的で「滑稽」といえるようなパッセージもあります。」


リストの《死の舞踏》には、2種類の作品がある。
サン=サーンスの管弦楽曲をピアノ独奏用に編曲したものと、宗教的題材をもとに書いたオリジナルのピアノ協奏曲的な管弦楽曲。さらに、オリジナル作品の編曲版として、ピアノ独奏版と2台のピアノ版があるので、オリジナルは全部で3バージョン。
また、ブゾーニがオリジナルの管弦楽曲版を改訂したものがあり、こちらを弾いているピアニストも時々いる。
ミケランジェリも改訂版の方を演奏会で弾いていた。オリジナル版との違いがすぐにわかるのは、エンディングで弾くピアノのスケールが、オリジナル版では下行、ブゾーニ改訂版では上行しているところ。
このピアノ協奏曲的なオリジナルの《死の舞踏》は絵画的・詩的な情趣のあるとても華麗で叙情煌くような作品。2つのピアノ協奏曲よりもずっと詩情豊かでドラマティックな曲ではないかと。

リストの人物像について
リストは、その派手な演奏スタイルと、技巧的難曲が多く演奏効果の高い作品群、さらに、若い頃からの恋愛遍歴なども加わって、"俗っぽい"人物というイメージが昔から強かったらしい。
リスト弾きのブレンデルやアラウは、リストが人間的に尊敬できる人物だと考えている。
実際、リストは教育者としても優れた人で、優秀なピアニストを数多く育て、アラウの師であるマルティン・クラウゼはリストの高弟の一人だった。ピアノ演奏以外に評論活動も行い、才能のある作曲家への援助もしていた。
リストの師ツェルニーは、経済的に豊かな家庭ではなかった少年リストを教えていたとき、授業料もとらず、生活面での援助までしていた。リストはそのことをとても感謝していたのだと思う。

「リストの素晴らしいところは、聖フランチェスコのような顔と多少悪魔的な顔の両方を合わせ持っていたということです。宗教的なものと世俗的なものでもそうですが、彼はつねにすべてをこうして二元的に見る人でした。自分は「半分はフランチェスコ派の修道士で、残り半分はロマだ」と。」

ブレンデルは、リストは「音楽家のなかではもっとも寛容な心の持ち主」であり、「ひじょうに品格のある人間」だという。
「...だから彼の音楽には「品」のある響きが求められます。まさに演奏家にとって、気品のある演奏を学ぶ教本のような作曲家です。」
たしかに、ブレンデルも、ブレンデルが尊敬するケンプも、そのリスト録音を聴いていると、響きにも表現にも品の良い美しさがある。

「リストの作品は、人間性と芸術性に大きな隔たりがなく、どちらの側面も密接につながっています。双方を映し出している鏡なのです。寛容な人間、寛容な芸術家、人間愛に満ちた人間、慈善家、そして恋人としても才能豊かで愛された男性でした。そして彼には、信心深い、悪魔の存在をつねに意識して生活し、その魅力をときには味わって楽しむ聖職者という顔もありました。」

リスト作品の演奏法について
「リストが三回繰り返すことを、単に飽きさせないように聴かせるのではなく、必然的な反復としての説得力ある演奏ができる奏者でないといけません。リストの場合、これはいつも簡単なことではありません。安易な繰り返しが多いですから。」

「書かれている音楽がきちんと見えて来るように、正しい目で読み取る能力をもった演奏家を最も必要とする作曲家だと思います。リストの作品というのはまるで暗号文のようなところがあります。読み方さえきちんとしていれば、にわかに書いている内容が見えてくるのです。」

「指が良く回って、力強い演奏ができるけれど、音楽性や詩的な感性が不十分なピアニストによって安易に取り上げられてしまうことがよくあるため、リストは長い間誤解されることが多かったのです。リストの作品自体にも大きな質の違いがあることは否めません。非常に多くの曲を書きましたが、作品を批判的に見つめなおす時間のない人でした。こちらで価値のあるものとないものを区別しなければならないのです。もちろん、この取捨選択には主観が伴います。好き嫌いの判断ですからね。《孤独の中での神の祝福》の五音音階には昔ほど強い印象を受けなくなりました。少なくとも、ハープの和音しかなくなる再現部には全く感動しなくなりました。リストのハープの響きへの傾倒はときどき不幸な結果をもたらしています。」

「練習曲も最高の演奏では、つねに音楽的表現として、品格のある作品として、ちょうどショパンの《練習曲集》と同じように演奏されなくてはなりません。《練習曲集》は技術的に上達するための利用価値もありますが、音楽的な性格をもった立派な作品であり、はシューマンも絶賛しています。」

《超絶技巧練習曲集》でブレンデルが好きなのは、10番目の《ヘ短調》と2番目の《イ短調》。《ヘ短調》は傑作のひとつだという。《夕べの調べ》《雪かき》も「演奏がよければ」という条件付きで、説得力のある名作としている。



tag : ブレンデル 伝記・評論 フランツ・リスト

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レーゼル 『ベートーヴェンの真影 ピアノ・ソナタ全集 5 』 ~ ピアノ・ソナタ第15番「田園」 Op.28
ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第15番といえば、別名<田園>。
一応、標題はついている曲なのだけれど、標題付きの名曲を総称した"7大ソナタ"(悲愴、月光、テンペスト、ワルトシュタイン、熱情、テレーゼ、告別)には入っていない。

標題付き名曲の直後の曲は、なぜかあまり聴かれていないような気がする。
 第8番<悲愴>-第9番(ソナタアルバムの収録曲。ピアノ学習者には良く知られている曲)
 第14番<月光>-第15番<田園>
 第17番<テンペスト>-第18番<狩>
 第21番<ワルトシュタイン>-第22番(和声が美しくオルガンやハープのような響きがする)
 第24番<テレーゼ>-第25番
 第26番<告別>-第27番(第1楽章がベートーヴェンらしい暗雲迫り来るようなドラマティックな雰囲気)

第9、18、22、27番はとても好きな曲なので、よく聴いたけれど、この第15番と第25番はあまり聴くことは多くはない。
第15番は、ソコロフのパリ・コンサートで弾いていたので、DVDで視聴。ソコロフの澄み切った色彩感豊かな音が瑞々しく、なんて綺麗な曲なんだろう!と思ったのは覚えている。
もともとベートーヴェンはこのピアノ・ソナタに標題はつけていなかった。
交響曲第6番<田園>に雰囲気的には似ているので、誰かがそう名づけたのだろうけど、田園交響曲はあまり聴くのが得意な曲ではないので、同じように第15番の<田園ソナタ>もあまり積極的には聴いていない。

今回はレーゼルのライブ録音から、そのピアノ・ソナタ第15番<田園>。
Schweizer_Musikさんの<鎌倉スイス日記>"超私的「ランキング」ピアニスト編 Vol.5 第26位 ペーター・レーゼル"で、「あの何でもない冒頭のD音の反復をどれだけ意味深く、音楽的に弾いていることか!!」とまで書かれていて、聴かないわけにはいかないので。
この、"超私的「ランキング」ピアニスト編"は、全部で30位までランキング。ピアニストの特徴や名盤がどれかコンパクトに書かれているので、CDを選ぶときの良い参考になる。

この《田園ソナタ》を全楽章聴いてみると、全く標題の通り《交響曲第6番<田園>》のピアノ版のような曲想とパストラルな雰囲気に満ちている。
本当に冒頭のD音のオスティナートがニュアンスに満ちて音楽的。第1楽章冒頭の主題部以外でも、第3楽章以外の各楽章のいたるところで、いろんなパターンのオスティナートが左手側に出てくるので、これが結構耳についてしまう。

ベートーヴェンの真影 ピアノ・ソナタ全集5ベートーヴェンの真影 ピアノ・ソナタ全集5
(2010/12/22)
レーゼル(ペーター)

試聴ファイル


ピアノ・ソナタ第15番 ニ長調<田園> "Pastorale" Op.28 [ピティナの作品解説]

第1楽章 Allegro
標題どおり、目の前に田園風景が広がっている情景が浮かんでような曲想。爽やかで伸びやかで、自然のもつ開放感に満ちている。
冒頭の主題旋律と左手が同音連打するD音が印象的。
レーゼルは、このオスティナートを単なる同じ音の繰り返しではくて、微妙に長さや強弱を変えていて、微妙なニュアンスがついている。ンタッター、ンタッター、みたいなリズミカルで、なんともいえない余韻のある響きがとても印象的。
音の美しいブレンデルやケンプの録音でも、こんなに音楽的なオスティナートには聴こえない。
通奏低音のように響く同音連打は、第1楽章のいたるところで、パターンを変えて出てくる。レーゼルはいろいろ弾き方を変えていて、その違いを聴いているだけでも、結構面白い。
展開部は短調で、次々と転調していく。雨雲が広がって、にわか雨が振り出しそうな気配。

第1楽章を聴き始めてすぐに感じたのは、レーゼルのピアノの音が本当に綺麗なこと。
柔らかく木質感のある響きがホール中に広がっていく感触が伝わってくるような、自然で臨場感のある音がする。

第2楽章 Andante
この楽章も左手のスタッカートの伴奏的な音型や同音連打が印象的。
短調の主題でも、哀しげというよりは、ひとりで黙々と歩いているような雰囲気とリズム感。
続いて出てくる長調の主題は、ちょっと休憩してあたりを見回している感じ。
再び短調の主題が再現されるときは、装飾的な美しさのある変奏になっている。

第3楽章 Scherzo and Trio-Allegro vivace
冒頭の主題の音のパターンが面白い。
数度離れながら下降していく和音の旋律、それに続く装飾音的な小刻みなリズムの旋律。
トリオは短い主題旋律の繰り返しで、かなり短くて、あっけなく終る。

第4楽章 Rondo-Allegro ma non troppo
この楽章も左手の通奏低音的なオスティナート風の旋律。右手で弾く主題は第1楽章に似た雰囲気のパストラル風。
最初聴いたときは、第1楽章の主題がリフレインされたのかと感じたのは、雰囲気がとても似ているから。
展開部も第1楽章に似ていて、雨雲が垂れ込めて激しい通り雨が降ってきたかのような短調。
終盤のコーダでは、アルペジオから急速に加速していくアレグロとプレストで華やかにエンディング。

                        

交響曲第6番は、リストがピアノ独奏用に編曲している。
管弦楽曲をピアノ1台で弾いているにしては、カラフルな色彩感とシンフォニックな響き。
田園交響曲の方はさほど好きではないけれど、ピアノ編曲版の方は、一台のピアノで複数の旋律が立体的に聴こえてくるところが面白くて、ピアノの表現の幅広さを実感できる。
演奏者名は記載されていないが、おそらくグールド。シチェルバコフの演奏ならもっとテンポが速く、カツァリスの演奏は和声の響きがより重層的に聴こえる。

Beethoven/Liszt:Symphony N.6 in F Major Op.68. I (part1)




tag : ベートーヴェン レーゼル

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乳製品を使わない”チーズ”の作り方
ベジタリアンやマクロビ的食生活を実践している人に重宝なのが、"チーズもどき"のレシピ。
作り方はいろいろあって、乳製品を使わないところがポイント。

乳製品を使う"チーズもどき"なら、水切りヨーグルトがクリームチーズに、牛乳にお酢やレモン果汁を入れるとカッテージチーズの代用になる。

豆乳チーズの作り方 [*I LOVE BREAD*]
乳製品を使わない"チーズもどき"のレシピで、よく知られている一番簡単な方法は、牛乳の代りに豆乳を使って、レモン果汁を混ぜ、水切りする方法。
レモン果汁の代わりに、お酢でも作れるらしい。出来上がった"チーズもどき"に、白味噌を加える人もいる。


豆乳で!「とろけるベジチーズ」[ゆるベジなキッチン/あな吉さん]
手間はかかるけれど、豆乳に上新粉と白味噌などを混ぜて煮ると、"とろけるチーズもどき"に。
作るのにいろいろ材料が必要で、作る手間もかかるので、手軽さはもう一つ。
出来上がった"チーズもどき"が冷凍できるところは便利。


マクロビレシピ!チーズが恋しくなったら。[Cookpad]
今まで見つけた"チーズもどき"レシピの中で、一番面白かったのが、豆腐と納豆を混ぜて作った"チーズもどき"。
コペルニクス的(?)にこの上なく斬新なアイデア。冷蔵庫の中であまっていた食材で簡単に作れるという手軽さが良い。
このレシピを見ると、一度は試したくなってくる人も結構いるようで、つくれぽもすでに140件あまり。でも、公開日が2006/09/12なので、100件に到達するまで、かなり長い時間がかかっている。

水切りした豆腐にネバネバさせた納豆を混ぜ、冷蔵庫で1晩寝かしてからよく混ぜると、豆腐までネバネバ。とろけたチーズのような感触。
かすかに納豆味のする豆腐のようなものなので、味自体はほとんどついていない。
そこに醤油を混ぜるとだんだん味が濃厚になって、チーズに少し近づいてくる。
でも、普通のチーズとはやっぱり違うので、あくまで"チーズもどき"。
ミキサーにかけると納豆の粒も砕けて、なめらか~。
味つけ次第に何にでも使えそう。

お醤油の代りに麦味噌を混ぜると、ちょっと甘いチーズ風。
コチュジャンなど、味のついているものを混ぜてみたり、オリーブオイルやピーナッツバター、蜂蜜とか、いろいろ試してみると面白そう~。
味付け例としては、ぽん酢・ハーブ・塩・胡椒などを一緒に混ぜたり、メープロシロップをかけたり、かなりバリエーション豊富。
相性の良い味付け材料を実験してみたいので、豆腐と納豆を常備しておかないといけない。

この"チーズもどき"が、スイーツに使えるかどうかは、試してみないとわからない。
お豆腐スイーツはいろいろあるので、納豆の量を減らしてフープロかミキサーにかけると滑らかになって、クリームチーズ代わりに使えるような気がする。(でも、多分作らないと思う。失敗する確率が高そうなので)

レシピは、豆腐1丁につき納豆2パック(白いトレイ入りのパック)になっている。
豆腐半丁(200g)に納豆1/2パックでも、充分ネバネバする。
できあがった"チーズもどき"に、お醤油やお味噌、塩・胡椒・バジルなどで味をしっかりつけてから、ピラフの上にかけてオーブンかグリルで焼けば、ドリアの出来上がり。スパゲティに和えても美味しい。
胡椒・塩・バジルだけ混ぜると、洋風の料理に合うので、ピザ生地やパンに塗って焼いたりと、いろいろ使えそう。

納豆の味がついているので、好みは分かれるだろうけれど、納豆の分量を減らせば、味も薄くなる。
この"チーズもどき"は、意外に美味しくて、晩ご飯1回で豆腐半丁分を完食。
チーズほど塩分が強くなく乳製品独特の香りもなくて、油脂も入っていないので、この味が気に入ったらとても食べやすい。
ただし、日持ちの問題があって、少なくとも2晩は大丈夫らしい。冷蔵庫で5日くらいとも書いている。
豆腐も納豆ももともと生ものだし、全然加熱していないので、冷蔵庫保存で数日で使い切った方が良い気がする。

[2011.11.14 追記]
この豆腐と納豆を混ぜたマクロビチーズ。なかなかオツな味で、すっかりはまって、毎週作っている。
豆腐半丁プラス納豆1/2パック(20g)を混ぜて、冷蔵庫で、2日目または3日目がネバネバ&クリーミー度がちょうどよく、それ上経つとクリーミーすぎる。味付けしてそのまま食べても美味しいし、グラタンやパスタにも使える。
冷凍できるかどうか試したら、ちゃんとカチカチに固まって、電子レンジで解凍すれば、元通り。
これはとっても画期的なアイデアのレシピ。乳製品を極力避けたいので、とっても重宝している。

[2012.12.1 追記]
今ではこのマクロビチーズを冷蔵庫に常備して、週に5日間(朝食には時々。夕食時は毎日)は食べている。もうすっかり病みつき。
茹でてからさらに重しを載せて水切りした木綿豆腐1.5丁(600g)プラス納豆1パック弱(35gくらい)使用。
日曜日の夜に仕込んで、金曜日中には全て食べ切るというサイクルなので、日持ちさせたいので水分はかなり抜いている。
豆腐をマッシャーでかなり細かく崩して、ネバネバ糸が引いた納豆とよく混ぜてから、冷蔵庫で保存。
木綿豆腐を使っている上に、豆腐の水分も少ないので、3日目くらいからネバネバ&クリーミー度が増してくる。
作った日から毎日1~2回はスプーンかフォークでグルグルかき混ぜると、クリーミーになるのが速くなるようだ。水切りを浅くしておけば、残った水分と混ざり合って、クリーミーになるのが早くなる。
クリーミーになればなるほど、豆腐と納豆の味が抜けて、そのままで食べても美味しいチーズクリーム風。
挽きたての黒胡椒とドライバジルをたっぷり混ぜると、本当に美味しい。



豆腐の塩糀漬け(塩糀豆腐)[館長の台所]
最近話題の塩麹。しっかり水切りしたお豆腐に塗って、冷蔵庫で数日置いておくと、クリームチーズのようになるらしい。
木綿と絹では食感や味わいが違うらしい。
これは一度試してみなければ。まず塩麹を作らないといけない。
そういえば、乾燥麹がスーパーで売っていたはず。前から作ってみたいと思っていたので、ちょうど良い機会。
 - 塩麹の作り方[Cookpad]
 - 塩麹に関する解説[日本味噌㈱](塩麹の塩分濃度と酵素の活動の関係など、いろいろ勉強になる)


レーゼル&マズア/ゲヴァントハウス管 ~ メンデルスゾーン/ピアノ協奏曲第1番(ライブ録画)
ペーター・レーゼルがとても珍しいライブ映像で弾いているのは、メンデルスゾーンの《ピアノ協奏曲第1番》。
伴奏は、クルト・マズア指揮ゲヴァントハウス管弦楽団。
マズアが1991年にNYフィルへ移る前か、その後に古巣のゲヴァントハウス管で客演指揮していた時の映像か、どっちかな?
今は66歳になるレーゼルの容姿も随分若くて、50歳前後? ヘアスタイル(御髪のカラーは違うけど)やお辞儀の仕方は、最近の東京公演の時と変わらない。

レーゼルのレパートリーは古典から現代まで幅広い。録音が残っているロマン派のピアノ協奏曲はシューマンとチャイコフキー。
メンデルスゾーン、ブラームス、ショパンのコンチェルトはスタジオ録音がない。
ブラームスのピアノ独奏曲集の録音はあるのに、2曲のピアノ協奏曲の方は録音していないというのは、ちょっと不思議な気がする。第2番だけは、ライブ録音がマイナーレーベルから出ている。

メンデルズゾーンの協奏曲といえば、何と言ってもヴァイオリン協奏曲が名曲中の名曲。
ピアノ協奏曲は2曲あり、最近は若手ピアニストが録音しているのを何回か見かけた。
それほど有名な曲とは言えないけれど、速いテンポで鍵盤上を駆け巡る曲なので、指回りが良い人でないと、全く様にならないピアニスティックな曲。

この曲の名盤といえば、私がすぐに思い浮かべるのは、カツァリスとルドルフ・ゼルキンのスタジオ録音。
カツァリスは優美、ゼルキンは力強くて男性的。聴けばすぐに違いがわかる。
ゼルキンは、このコンチェルトでたしか12歳頃にドイツでデビューしたはずなので、昔から得意にしていたレパートリー。
60歳代くらいのゼルキンが弾いていたライブ映像を見ると、テンポは速かったけれど、ミスタッチが目立っていた。
どちらかというと、このコンチェルトは指回りの良さに自信のある若手ピアニスト向きの曲という気はする。

Piano Ctos 1 & 2 / Violin Cto: Essential ClassicsPiano Ctos 1 & 2 / Violin Cto: Essential Classics
(2002/01/30)
Ormandy, Columbia Symphony Orchestra, Rudolf Serkin, Philadelphia Orchestra,Stern
視聴する(米amazon)


                         

レーゼルのピアノを弾いている姿は、最近のベートーヴェンのピアノ・ソナタリサイタルを放映したNHK-BSの録画で見たことがある。
今も昔も演奏する姿は全く同じ。背筋を伸ばして、ほとんど上半身を揺らすことなく、安定した姿勢。
手の形や打鍵ポイントもほぼ一定で、指の移動に全く無駄な動きがなく、どんなパッセージでも滑らかな指捌きと軽やかなタッチが鮮やか。指先の微妙なコントロールで、タッチもソノリティも自在に変わる。
低い位置から打鍵しているにしては、音に力感があり、音量も大きく、切れ良く聴こえるところがほんとに見事。
1970年代~80年代の録音を聴いても、安定した精密な打鍵と多彩なソノリティで、技巧優れたピアニストだったのがすぐわかる。
ずっと若い頃から、大仰なパフォーマンスをすることなく、こういう演奏姿勢で技術を磨いてきたに違いない。

このメンデルスゾーンのライブ映像でも、技巧優れた人だけあってミスタッチもほとんどないし、淡々楽々と弾いている様子。
力感のあるタッチは、ゼルキンと同じような男性的な力強い"剛"のタイプの演奏。
ライブではかなりテンションが高くなるゼルキンは、全身を使ったような演奏スタイルで、演奏自体にも溌剌とした躍動感がある。
レーゼルの方は、メカニックが精密で切れ良く、和音でも全ての音がよく鳴って、左手もよく効いているので、安定感とかっちりとした構成感がある。もともと音が澄んでいて綺麗なので、叙情的な旋律になるとさらりとした表現が清々しい。


3楽章が全てアタッカでつながり、楽章の切れ目にあたるところで、トランペットの独奏が入るのですぐわかる。
第1楽章と第3楽章は、鍵盤上を高速の細かいパッセージで駆け回り、特に第3楽章はフィナーレらしく、とても華やかでピアニスティック。
レーゼルは、動きの少ない指や腕でも、音の切れが良く、力感もあり、力強くも軽快な弾きぶり。
アルペジオは軽やかなレガートだし、左手8度の跳躍が続くところもバタつくこともなく軽やか。
どんなパッセージでも、肩に力が入っているような様子もなく、流麗で淀むところがないのがとても鮮やか。


ピアノ協奏曲第1番(第2楽章と第3楽章)は、20:47~。(なぜか第1楽章がないけど)
MENDELSSOHN MATINEE des Gewandhausorchesters, 1997. Moderation: Sir Peter Ustinov (0:57 HD)



<関連記事>
 ゼルキン~メンデルスゾーン/ピアノ協奏曲

 スティーブン・ハフ~メンデルスゾーン/ピアノ協奏曲第1番




tag : メンデルスゾーン レーゼル

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アラウ ~ チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番
アラウが、ナチスが支配するドイツを離れて米国へ渡った後、1938年~62年にかけて、EMIへ大量の録音を残している。
今まで、分売盤でかなり多くの録音がCD化されており、それをBOXセットにまとめたものが『Claudio Arrau Virtuoso Philosopher of the Piano』

以前、新譜情報でも書いたことのあるこのBOXセット。ようやく入手して聴いてみたところ、やっぱり50歳代のアラウのピアニズムは、1960年代から晩年までPhilipsに残した録音とは違った煌きがあって、とても素敵。
アラウは、某著名評論家の影響かどうかは知らないけれど、1960年代くらいの技巧的に安定した録音よりも、1980年代の晩年の録音を聴いている人が多い。
晩年は技巧的な衰えが進み、それが録音にもはっきり現れているので、聴きづらいものはかなり多い。
といっても、独特な音の透明感や美しさ、純粋さ・本質的な何かを感じさせる演奏の魅力にも抗し難いものがある。

アラウのディスコグラフィを調べていると、EMIでアルチェオ・ガリエラと録音したベートーヴェン、チャイコフスキーのピアノ協奏曲の評価がかなり高い。
分売盤はすでに廃盤になっていたので、入手は難しそうと思って少し諦めかけていたところ、タイミングの良いことに、このEMI録音のBOX集がリリースされた。
これで廃盤探しをする必要もなくなったし、このBOXセットはCD12枚入りなので、プレミアムの載った廃盤の分売盤を買うよりははるかにお得。

すでに分売盤では、ショパン録音とブラームス、ウェーバーのコンチェルトは持っているので、重複は5枚。
残り7枚のうち、シューベルト、シューマン、1930年代の録音はあまり興味がない。
結局、ベートーヴェンのピアノ協奏曲全集とピアノ・ソナタ9曲、それにグリーグ・シューマン・チャイコフスキーのピアノ協奏曲が実質的な収穫。

Icon: Claudio Arrau-Virtuoso Philosopher of the PiIcon: Claudio Arrau-Virtuoso Philosopher of the Piano
(2011/02/28)
Claudio Arrau

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ベートーヴェンのピアノ協奏曲は、やはり評判どおりの良さ。
Philips盤を上回る内容(4番を除いて)で、少なくとも私には、EMI盤のアラウのベートーヴェンの方をいつも聴きたくなる。

その上、あまり強い期待もせずに聴いたチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番がとっても気に入ってしまった。
そもそもチャイコフスキーは好きではないし、この超有名なピアノ協奏曲第1番も、やっぱり好きではないので、よほどのことがないと聴かない。
聴くとすれば、ハフ/ヴァンスカ/ミネソタ管か、カッチェン/ガンバ/LSOのスピーディな録音。いずれも速いテンポで、ベタベタとしたロシア的叙情感はなく、爽やか。
モノラル録音のカッチェンのチャイコフスキーは力感・スピード感のあるところが好きなので、昔からの愛聴盤。たぶん聴いたことのある人はほとんどいないに違いないけど。珍しくブログで感想を書いているのは、<ウォールのレコード部屋>さん。ほんとにその通りと、いちいち頷いてしまう。

アラウとガリエラのチャイコフスキーに興味があったのは、Schweizer_Musikさんの<鎌倉スイス日記>のブログ記事"B級?否!A級!名演奏家列伝 -4- アルチェオ・ガリエラ"で、「同じ南米出身でもアルゲリッチなどの演奏と正反対の気品あふれる演奏」と書かれていたから。
アルゲリッチを敬遠している私とすれば、彼女と逆方向の演奏なら、一度は聴いてみたくなる。

ガリエラ/フィルハーモニア管盤は、ディヴィス/ロンドン響の録音よりも演奏時間が少しだけ長いので、テンポも心持ちゆっくり。
といっても遅さを感じさせることはなく、力感・量感があり、音の切れも良く、強弱のコントラストもよく利いていて、晩年の録音とは全く違う。オケもピアノをかき消すようない威圧的な大音量で伴奏することなく、アラウのピアノを聴くのにも邪魔にならない。

  ガリエラ/フィルハーモニア管(1960年)  21:36 7:52 7:19
  ディヴィス/ロンドン響(1979年)      21:20 7:47 7:05
 ------------------------------------------------------
  リヒテル/カラヤン/ウイーン響(1962年) 22:11  6:55  7:06


『アラウとの対話』(みすず書房刊)で、アラウとピアノ協奏曲を録音することになった指揮者のディヴィスが、ボストンのホテルに滞在しているアラウの部屋に行くと、アラウは各種無数の版の楽譜を用意して、「20年もこの曲を弾いていないんですよ」と言っていたという。

その20年前に弾いたというのが、ガリエラ/フィルハーモニア管の伴奏によるスタジオ録音。
アラウの演奏は、タッチに切れと重みがあり、音が立ってキラキラと煌いている。
一音一音の輪郭ははっきりと粒立ち良く、晩年の録音と違って音には張りと生気ときらめきがある。
和音が連続するパッセージでも、重量奏法をとっているせいか、バンバン叩きつけるようなタッチではなく、ピアノに重みをかけたような音が品良く、深みがあって伸びやか。
オケが煩くなりがちなこの曲にしては、ピアノとオケのバランスがとても良くて聴きやすい。
フィナーレはテンポが上がって力強く、スケールも量感と力感豊か。
アラウらしいロマンティシズム豊かな表情には、ウェットで重厚なロシア的叙情感は薄くて、優美さとしなやかな力強さがほどよくブレンドされて、品の良さを感じさせる。
Philips盤のアラウとは全く別人のような演奏なので、この曲ってこんなに素敵な曲だったのかしらんとすっかり思い直したくらいに、アラウのピアノの惚れ惚れとするほどに素晴らしいこと。
この演奏を聴けただけでも、BOXセットを買って良かったととても満足。

第1楽章 Allegro non troppo e molto maestoso -- Allegro con spirito
やや速めのテンポで弾くピアノの和音の響きは豊かで深みがあり、力強くも優雅な感じ。
ピアニッシモは繊細で美しい人が多いけれど、フォルテを美しく弾く人はそれに比べて少ない気がする。
Philips盤のアラウは、リズム感がやや鈍く感じることがよくあるけれど、このチャイコフスキーではそういうこともなく、キビキビとリズミカル。

Tchaikovsky Concerto 1 in B Flat minor Claudio Arrau 1 mov Part1



第2楽章 Andantino semplice - Prestissimo - Tempo I
のどかな第2楽章は、かなりゆったりとしたテンポ。オケがほとんど伴奏に回って控えめ。
アラウのピアノは物語的/絵画的で、森のなかを散策しているような情景が浮かんでくる。
ピアノパートの表情がゆっくりと移り変わっていくところは、小動物が動き回ったり、小さな小川や滝があったりといったところ。
中間部の終わり(?)ででてくる細かいパッセージやアルペジオが、とてもリズミカルでダイナミック。

第3楽章 Allegro con fuoco
この楽章もテンポはゆったり。速いテンポで疾走するように弾くピアニストはかなり多いけれど、アラウの遅いテンポは全く重たくなく、落ち着いた優美な雰囲気。
一音一音明瞭で音が浮つくことなく、細かいパッセージの指回りも鮮やか。装飾音も鋭くリズミカル。
終盤はかなりテンポが上がって、スケールも弾力のある鋭いタッチと量感のある音で、力強く駆け上がっていく。

Tchaikovsky Concerto 1 in B Flat minor - Claudio Arrau 3 mov


                     
                          

アラウのチャイコフスキー録音といえば、1979年のコリン・ディヴィス/ロンドン響の伴奏によるPhilipes盤がある。
ガリエラ盤と演奏時間はあまり変わらないけれど、もともとそんなに速いテンポでもなかった。
やや力感が弱く、装飾音・符点のリズムや和音が連続する細かなパッセージのタッチの切れも悪く、76歳頃のアラウにとってはパワー&技巧面でつらいところがある。
ロシア的濃厚な叙情感は好きではないけれど、ロマンティシズムが薄く、まろやかな響きと淡白な表現で蒸留水のようにアクがない。やっぱり何か足らないような気がしてくる。

チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番
(2004/04/21)
アラウ(クラウディオ)

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《何茫然》(Hamangyeon) ~ 『宮廷女官チャングムの誓い』テーマ曲
韓流歴史ドラマで有名な『チャングム』で流れている《何茫然》(ハマンヨン、Hamangyeon)。
このドラマは好きだったので、原作・ノベライゼーション、DVDにサントラ、解説本まで、いろいろ集めたもの。
そういえば、宮廷料理レシピ本も持っていた。

《Hamangyeon》は、Alessandro Safinaのテノールの歌がポピュラー。
韓国の広大な山々や自然をバックに流れていると、とても壮大で力強くて情熱的。
男声で歌う《Hamangyeon》は、ジョンホのテーマ曲らしい堂々とした雰囲気。

Hamangyeon - 하망연《何茫然》- Alessandro Safina



管弦楽版なら、女性歌手によるバージョンも、たしかドラマの中で流れていた。
女性と男声と声が違うだけで、随分雰囲気が変わる。
海辺で水と戯れるチャングムののどかで平和的なシーンには、柔らかな女声の歌声がよく似合う。

Dae Jang Geum - Ha mang yeon (Female singer)



日本盤では、森山良子がピアノ伴奏で歌った美しいソプラノの歌声がとても印象的。
3つのバージョンで一番好きなのは、透明感と親密感と静けさのあるこのソプラノバージョン。

Tears~森山良子 韓流アルバムTears~森山良子 韓流アルバム
(2006/03/01)
森山良子

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ヒラリー・ハーン ~ バッハ/パルティータ第2番
天才少女と称されるヴァイオリニストのヒラリー・ハーンのデビューアルバムは、『シャコンヌ』。
いまさら言うまでもないほどの超有名な録音。
オール・バッハのアルバムで、それも無伴奏ヴァイオリンのパルティータ第2番&第3番にソナタ第3番。
しかも、当時17歳という若さで、その上、このアルバムに対しては絶賛の嵐。
深みのある伸びやかな音の美しさ、真面目で飾り気のない瑞々しさに、魅きこまれずにはいられない。

ヒラリー・ハーン デビュー! バッハ:シャコンヌヒラリー・ハーン デビュー! バッハ:シャコンヌ
(2008/11/19)
ヒラリー・ハーン

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《無伴奏ヴァイオリンパルティータ第2番》より、第1曲"allemande"と終曲"Chaconne"

"Chaconne"とはまた違った美しさと深みのある"allemande"。
Hilary Hahn-Bach partita n° 2 allemande



バッハの無伴奏ヴァイオリン曲、というよりも、全てのヴァイオリン曲のなかで名曲中の名曲"Chaconne"。
Bach 's Chaconne for Solo Violin / Hilary Hahn (Part 1/2)



 Bach 's Chaconne for Solo Violin /Hilary Hahn (Part 2/2) [Youtube]


[2011.10.7 追記]
私の一番好きなヴァイオリニストであるヨゼフ・スークの無伴奏パルティータ第2番の演奏を聴いていると、ハーンのバッハとは随分違っている。
ハーンはゆったりとしたテンポ。息が長い旋律で、弦がかすかに震えるようなヴィブラートがいたるところに入っているので、かなり感傷的でプライベートな音楽のように聴こえてくる。心が震えるような共鳴するような...といった感覚。

スークは、ずっと速いテンポで、芯のしっかりした太めのゆるぎない響き。
全く感傷に溺れることなく、背筋が一本きりっと通ったような力強さと潔さがある。
冒頭のallmandeからして、ハーンとは全く違った雰囲気の曲に聴こえる。
哀感が薄く、逆に、力強さがあり、個人的な感情・感傷性ではなく、より普遍的なもの、一般的なものに昇華されたような、安定感、包容感がある。
久しぶりに聴いたスークのバッハは、明るさとポジティブで自然に湧き出るような力強さを感じさせて、やっぱりこれが一番私の波長と合っているのだと、再認識したのだった。



tag : バッハ

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『対話録「さすらい人」ブレンデル~ リストからモーツァルトへの道程』
ブレンデルのピアニズムを知るには一番良いのでは...と思ったのが、『対話録「さすらい人」ブレンデル リストからモーツァルトへの道程』。
ピアニストにしては筆の立つブレンデルは、『楽想のひととき』、『音楽のなかの言葉』という音楽評論集の著作があるが、本書は、音楽ジャーナリストのマルティン・マイヤーとブレンデルが対話した内容を記録したもの。
対話録にしては、ブレンデルの話は、簡潔ながらポイントが明瞭で論理的で、ブレンデルの音楽に対する考え方が詰め込まれた充実した内容。

対話録「さすらい人」ブレンデル リストからモーツァルトへの道程対話録「さすらい人」ブレンデル リストからモーツァルトへの道程
(2001/10/09)
マルティン マイヤー

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本書の紹介文;音楽の本のはなし 「第18回 名教師と名演奏家」

対話録の内容は、主に3つのパートに分かれている。

まず最初に出てくるのは「伝記」。
ブレンデルの生い立ち、音楽教育、ピアニストとしてのキャリアに関するもの。
今までは、通り一遍のプロフィールくらしか読んだことがなかったので、意外なことが多かった。

彼自身、自分は「天才少年」ではなかったと言い、実際、彼の演奏を聴いていると、「天才的ピアニスト」という印象を持ったことがない。
秀才タイプの人がコツコツと努力して積み上げてきたような、緻密で精巧な職人芸のように感じる。
ブレンデルの世代で、16歳以降アカデミックな音楽教育を一切うけていなかったピアニストはかなり珍しいのでは。
アカデミックな教育には全く興味がわかなかったそうで、唯一受講したのが、わずか数回のエトヴィン・フィッシャーのマスター・クラス。その他に、エドゥアルト・シュトイアーマンの夏期講習にも参加している。

ブレンデルの演奏の特徴の一つは、声部の分離が明瞭で立体感のあるポリフォニックなところ。
バッハ弾きでもないのに、どうしてこういう弾き方をするようになったのか、ずっと不思議に思っていた。
ブレンデルはアルトウール・ミッヒルに師事して作曲を勉強。17歳のデビュー時には、完全にポリフォニックな作品を書いていたという。
彼のピアノの響きの基礎がポリフォニーにあるのは、「直接ピアノの先生ではなく、作曲の勉強を通して身についたことで、のちにその傾向はますます強くなっていきました。」

ウィーンに出てきたのは1950年。ウィーンで誰かに師事したことがなかったので、ブレンデルは「完全にアウトサイダー」だったという。
「アウトサイダーという立場は嫌いではありませんでした。今でもそうです。・・・私はどこかのグループ、一派、派閥に属したことがありません。」
アカデミックな世界を好まず、弟子をとらないことで有名なブレンデルとはいえ、少数ながら弟子といえるピアニストがいる。私が知っているのは、若手の中でも評価が高いポール・ルイス、バッハの《平均律曲集第1集》の録音で注目されたティル・フェルナー。
フェルナーのバッハ録音については、「ほかのピアニストが私とは違う視点で、もっと上手く弾いてくれているのを喜んでいます。その一例が若手のティル・フェルナーです。」とブレンデルは評している。

ブレンデルは初見は苦手だが、記憶力は良い方で、暗譜も特に速いというわけではないけれど、2週間くらいすれば覚えているという。
ちなみに、昔読んだ本のなかで印象的だったのは、初見が苦手なミケランジェリ。それに、練習しないとすぐに忘れるので、レパートリーが限定されていた。
逆に、暗譜が得意なピアニストのエピソードは数多いが、特にポリーニの暗譜力は有名。たしか、ほとんどの曲は1度弾くと覚えてしまうらしく、あの難解なシェーンベルクの作品は「3回」弾いてやっと覚えたという。
アルゲリッチはルームメイトが弾いていたプロコフィエフ(か何か)をベッドの中で眠りながら聴いていたら、いつの間にか暗譜していたという。
この2人くらいの暗譜力になると、まさに超人的。

                       

2つめは「作曲家論・作品論」。
彼のレパートリーである、ハイドン、ベートーヴェン、シューベルト、リスト、バッハ、モーツァルト、シューマン、ブラームスなど。現代の作曲家ではブゾーニ、シェーンベルク。
ハイドン、ベートーヴェン、シューベルト、リストについては、ブレンデルの著書『音楽のなかの言葉』で詳しく論じられているので、両方読むとブレンデルの作曲家に対する考えがずっと理解しやすくなる。

ブレンデルは、同じ曲を何度も録音するので、ベートーヴェンやモーツァルトなどは時期と伴奏者が異なる数種類の盤がある。
これがかなりややこしく、CDを買うときに録音年代を必ずチェックしないといけないし、同じ曲の録音をいくつも集めないといけないので、CDコレクターとしては、楽しい半面、収集するのが大変。
VOX時代の録音については、ブレンデル自ら編集していたという。ライブとスタジオ録音とは全く別物だと割り切って、スタジオ録音は編集して当然と思っているところは、アラウと一緒。

「20代の頃には、すでに、ほんのわずかな例外を除いて、生涯つきあうことができると感じた作品しか弾きませんでした。」
「重要な作品とは終始生活をともにし、間隔を置きながらも繰り返し演奏していきたいと思ってきました。再び曲を探求し、新たに自問自答することで、現在の自分の理解を再確認するのです。こうした曲は、音楽家としての自分をよりよく知り、自らの成長を意識的に確かめるための手がかりなのです。」

ブゾーニに関する評論は少なくないので、ブレンデルのブゾーニ評が面白い。
「ブゾーニはとても進歩的な一面を持った人でした。対照的なものをあえてかけ合わせたのです。美しく明瞭な様式を好む一方で、モティーフを駆使した構造を完全に解放して、音楽が子供のように自由に浮遊することを望みました。なんとも詩的な発想ですが、不思議な矛盾があります。この矛盾が彼の晩年の作品を生み出したわけですけれど。」

ロマン主義的なバッハ編曲と批判されることもあるブゾーニ編曲について、「ブゾーニのバッハが素晴らしいのは、そうした教会の残響をうまく表現しているところ」だという。
ブレンデルが特に評価しているのは、ブゾーニの後期作品。
それまでの(40歳くらいまでの)作品は"亜流"であって、例えば、彼の作品のなかでもブゾーニらしい作風を確立したと言われる《ヴァイオリンソナタ第2番》は"ブラームス風"。
この曲は、ブゾーニ作品のなかで《シャコンヌ》と並んで気に入っているので、大好きな"ブラームス風"の作風が理由なのかと思い当たった。

また、20世紀を代表する現代音楽作曲家なのに、なぜか聴衆には不人気のシェーンベルク。彼のピアノ協奏曲はブレンデルの重要なレパートリーで、録音も残っている。
ブレンデルのシェーンベルク評で面白かったのは、「シェーンベルクはいつも怒りながら曲を書いていた人です。ある時期までに書き上げられなかった作品はたいてい、未完のまま終ってしまいました。《期待》はとても感情の起伏が激しく、一音一音、ひとつの和音から次の和音にいたるまで、即興的に書かれています。」
無調時代の作品である《期待》が、「感情の起伏の起伏が激しく、即興的」とブレンデルは言う。少し不思議に思えたので、実際に聴いてみたら全くその通り。テンポがコロコロと変化し、「モノドラマ」らしく曲の表情もドラマティック。

                       

3つめは「演奏解釈」について。
彼が尊敬するのは、フィッシャー、コルトー、ケンプ。
この中で私がよく聴くのは、ケンプ。彼は一般にはスタジオ録音の方がよく聴かれている。
音の綺麗なブレンデルなら、スタジオ録音の方を好むと思っていたけれど、ブレンデルが評価しているのは、50年代のモノラル録音。
リストの《伝説》、ブラームスの《後期ピアノ作品集》は尊敬の念を持って聴いているほどの愛聴盤らしい。
個人的な印象では、ケンプのモノラル録音は、技巧的に粗いと感じるところがあって、特にフォルテの雷のような強打をすることがあり、これがかなり耳に響く。

逆に、ブレンデルが否定的な最たるピアニストはグールド。
ブレンデルの評はごもっともと思うことばかりではあるけれど、よく言われる「天才だから許される」という言葉を思い出してしまった。
ブレンデルに言わせると、グールドは「何としても聴衆を驚かせなくてはならない、たとえ作曲家の意図に反しても意外なことをしたいという演奏家」の典型。
これは、ブレンデルとは正反対のピアニズム。ブレンデルの信条は、「作曲家が書いた指示に従うというのは、安易で自動的なことではなく、そこに書かれている記号を指示を理解する必要があり、それには大いなる想像力が、個々の作品に対する集中力が求められ、全体的な関連性のなかでその指示にどのような意味があるのかをつねに自問自答しなければならない。」
ただし、グールドがモスクワのリサイタルで弾いたアルバン・ベルク《ピアノ・ソナタ》だけは、「かれは珍しく作品に忠実な弾き方をしているだけではなく、私が知る限りこの作品の最高の演奏のひとつになっています。」と賞賛している。
グールドの現代音楽の録音はどれもまっとうなものなので、彼のヒンデミットやプロコフィエフについても、ブレンデルは肯定的な評価をするのではないでしょうか。

ブレンデルを評する時によく使われるのは、"懐疑主義者"、"インテリ"、"理知的"という言葉。

懐疑主義者という評は当たっているようで、ブレンデルも、「早い時期から懐疑的で、ある種の自信と不可欠な疑心暗鬼な気持ちが、自分の中で共存している」と自己分析している。

でも、"理知的"という部分については、ライブ映像を見ていると、時々ややオーバーパフォーマンス気味で(若い時のツィメルメンほどではないけれど)、どう見ても感情というか、テンペラメントの強い人のように思えてくる。

「本当は長い年月をかけて自らの感情を正しくコントロールしていく必要があります。ノヴァーリスの言葉「芸術では、カオスは秩序の花々の間からほのかに光輝かなくてはならない」。私はカオス、つまり感情を尊重しています。でも、秩序の花々があって初めて芸術として成立するのです。」

「私は「インテリ」と呼ばれることに対して、あまりにも画一的な見方なのでいつもある種の憤りを覚えてきました。理知的な側面だけを語られるのは心外です。人々が考えているよりも私は感覚的に反応していることが多いのです。まず何よりも自分の感覚を信じている演奏家ですが、理性によるコントロール機能を利用しているだけです。私にとって感情とはアルファでありオメガでもある。つまり、全てが感情から発せられ、人を介した感情として戻ってこなくてはならないということです。もちろん、そこで理性というフィルターを使う必要があります。感情の質を観察し、評価し、時間とともに高貴で重要なものと、そうでない偽りのものを区別するフィルターです」

と、ブレンデルは明確に言っている。
本当は感情的というか、感情豊かな人なのだろうけど、それを自覚していかにコントロールするかを常に心がけているのではないかという気がする。
ミケランジェリのように自らの感情を抑制しているような(と私には思える)演奏ではなくて、理性と感情のバランスにつねに配慮しているのだと思う。
そのせいか、彼の演奏と曲の間にワンクッションはさまった感覚を覚えるところがあって、自らの感情とそれをコントロールする理性との葛藤が、演奏と曲との距離感や間合いのようなものを感じさせるのかもしれない。


ブレンデルのピアニズムを理解するのに、本書はとても役立つのは間違いない。
私にとっては、彼の演奏を聴くよりも、彼の著作や評論を読んだ方が、ピアニストとしてのブレンデルを理解しやすかった。
彼の書いたものを読んでから、彼の録音を聴くと、そういうことだったのかと思えることもいろいろ。
ブレンデルは、自分の演奏解釈を的確な言葉で論理的に説明できるだけの文才があるし、さらに、その言葉どおり演奏で表現できる技術を持っているピアニスト。
なにより、自己認識がしっかりした人で、技術と感情のコントロール力に優れたピアニストなのだろうと、この対話録を読んで改めて思ったのだった。




tag : ブレンデル 伝記・評論

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ブレンデル ~ ブラームス/ピアノ協奏曲第1番(ライブ録音)
秋に似合う音楽といえば、ブラームス。毎年夏が終ると、いつも同じことを書いている気がする。
ブラームスが大好きな人は誰しも、秋になるとブラームスを聴きたくなるというくらい、秋はブラームスに良く似合う。

ブラームスは、大学時代に《交響曲第3番》をNHK-FMでたまたま聴いてから、ブラームスとクラシックの世界にはどっぷりはまったので、それ以来ベートーヴェンと並んで好きな作曲家。
最初は交響曲ばかり聴いていたけれど、ツィメルマン/バーンスタイン&ウィーンフィルの《ピアノ協奏曲第2番》を聴いてからは、ピアノ協奏曲を聴くことが多くなってしまった。
昔は第2番の方が好きだったのけれど、今は好みが変わって第1番の方を聴くことが多い。
交響曲と違って、ピアノ協奏曲にはいろいろこだわりがあるので、好きなピアニストの録音はかなり集めているし、他のピアニストの録音も試聴することは多い。(これは試聴どまりで終ることが多い)

ブレンデルの第1番の録音は昔から名盤といわれるものの一つ。
かなり以前に試聴したことはあるけれど、その時は音が軽くて線が細い気がして、もう一つピンと来るものがなかったような...。
最近になってブレンデルを聴き始めたので、やはりとても好きな第1番のコンチェルトのCDは手元においておきたいもの。
ブレンデルの第1番の録音は、今出ているもので3種類。

ハンス・シュミット=イッセルシュテット指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(録音:1973年5月)
クラウディオ・アッバード指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(録音:1986年9月)
サー・コリン・デイヴィス指揮バイエルン放送交響楽団(録音:1985年2~3月)

Youtubeにあったのは1973年スタジオ録音(旧盤)の第3楽章。
速いテンポとシャープなタッチは好みにぴったり。
後年、ブレンデルがスタジオ録音したベートーヴェン、ハイドン、リストの演奏で感じる理屈っぽさやクセのあるアーティキュレーションなどが少なく、鋭角的なタッチでストレートに一気に弾きこんでいく。
若いブラームスの激しい感情が込められた、疾風怒涛のようなテンションの高さを感じるのは、今まで聴いてきたブレンデルの録音では珍しいかも。

Brahms / Alfred Brendel, 1973: Piano Concerto No. 1 in D minor, Op. 15 - Rondo (Vinyl LP)



試聴した感触といくつか読んだレビューをもとに、ちょっと悩んでから、結局、1985年のライブ録音のCDを購入。
1973年の旧盤のスタジオ録音も良かったけれど、これは廃盤で入手しにくい。(でも、そのうちこの録音は手に入れないといけない)
ライブ録音は、ブレンデル80歳の誕生日を記念してリリースされた過去の録音集。
ベートーヴェンの《ピアノ・ソナタ第31番》とモーツァルトの《ピアノ協奏曲第25番》というカップリングが魅力的。
それに、ブレンデル自身、アバドとのスタジオ録音よりも、ライブ録音の方が"オケとピアノとの音のバランスが良い"と言っているので。(アバド盤は、ピアノが遠くから聴こえてくるという)

指揮者とオケには、もともとさほどこだわりはない方とはいえ、アバドは、若い頃のポリーニと録音したブラームス・ベートーヴェンのピアノ協奏曲など、少ししか聴いたことがなく、特に好きな指揮者でもない。
コリン・ディヴィスは、ベートーヴェンのピアノ協奏曲全集などアラウとの録音で昔から馴染みがあるので、やっぱりこちらが良さそう。

ブレンデル・バースデー・トリビュートブレンデル・バースデー・トリビュート
(2011/04/13)
ブレンデル(アルフレッド)

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最も好きなアラウとカッチェンのライブ録音に比べると、音質が軽くて線が細く、好みとしては量感がもう少し欲しい気はする。
ブレンデル自身が対話録で言っていたけれど、若い頃は比較的音が小さく、強弱の幅が狭いと言われて、40代、50代になってから、デビュー当初と比べて音量が倍増した。この曲(ピアノ協奏曲第1番)をいつか弾きたいと思っていたので、努力して(訓練して)音を大きくしたという。
音質が軽くて音量が小さいと、フォルティシモでは鍵盤を叩いているような強いタッチになりがちなので、それが演奏にも出ているような気がするところはある。

1973年のスタジオ録音とライブ録音を比べると、第3楽章の録音時間はあまり変わらないのに、スタジオ録音の方がずっとスピード感があってシャープな演奏。(テンポが速いところで細かいパッセージを弾くと、ちょっとせわしない感じはするけど)
たぶん、タッチが切れ良く音質も軽めな上に、表現がやや直線的で一気呵成のような勢いがあって、その分、叙情性がやや薄いせいかも。

第3楽章を聴き比べた限りでは、このライブ録音の方が、細部の表現が細やかになって、音の色彩感もずっと増して美しく、音楽のつくりとしてはライブ録音の方がずっと良い感じ。
打鍵が柔らかくなって、音に尖ったところがなくなって、音も聴きやすい。
特に、第1楽章と第2楽章は、ゆったりとしたテンポなので、ブレンデルの美音と優美な歌いまわしが映えて、叙情豊かでブレンデルらしいと思えるブラームス。
最初聴いたときは、両盤とも好みと全然違うというわけではないのに、良いとも悪いとも言えなくて、珍しくも何回も聴き直し。
初めはスタジオ録音の方がテンションが高くて好みに合いそうと思ったけれど、何度か聴くと、ライブ録音の方がソノリティと表現とも多彩で、曲に奥行きや広がりがあるように思えてきた。
どちらのブラームスもそれぞれの味わいがあって、聴けば聴くほどしっくりと馴染んでくる。
でも、ライブ録音の方が、速いテンポで疾走感は維持しつつも、ソノリティが多彩で弱音も柔らかく響き、なにより流麗さと叙情性が濃くなっているので、スタジオ録音よりもずっと好きになりそう。
初秋早々、こんな素敵なブラームスの出会うというのは久しぶりで、なんて幸先良いこと!
11月にはカッチェンのライブ録音がリリースされるし、ブラームスの音楽で実り多い秋になりそうな予感。



                       

『対話録「さすらい人」ブレンデル』(音楽之友社,2001年10月発行)で、ブレンデルがブラームスについて語っている。

ピアノ協奏曲について:
《ピアノ協奏曲第1番》は昔から弾きたいと思っていた曲だという。
しかし、右腕を故障して半年間休養してからは、体力的に特別きつい作品-このピアノ協奏曲ニ短調、《ハンマークラヴィーア・ソナタ》、リスト《ロ短調ソナタ》、シューベルト《さすらい人幻想曲》-をレパートリーから外している。

《ピアノ協奏曲第2番変ロ長調》は「それほど良い作品だと思ったことがありません。しかし、それでも弾いたのは、重要な義務であると思ったから、そしてどこまでこの曲を制することができるのかを知りたかったからです。自分の演奏には不満です。第1楽章は素晴らしいのですが、残りの楽章の質が劣るのです。逆に、《協奏曲ニ短調》ではどの音をとっても必然性があると思います。」

ピアノ協奏曲以外の作品ついて:
ブレンデルのブラームス録音は、2曲のピアノ協奏曲以外は、上記で言及されている《バラード集》など数少ない。

「若い頃のブラームスはひじょうに、「ダヴィット同盟」的です。シューマンに近い感覚があり、シューマンがなぜブラームスの音楽に感動したのか説明もつきます。しかし、すぐに《ピアノ三重奏曲Op.8》と最初の《弦楽六重奏曲Op.18》の間くらいに、もっとも美しい音楽を書いたと個人的に感じる時期がやってきます。《ピアノ協奏曲二短調》や《バラード集Op.10》がそうですが、私は録音で第4曲目を失敗しています。」

「《ソナタへ短調》は中間の3つの楽章だけ弾きたい気持ちになります。特に最終楽章が救いのない音楽だと思うのです。どのような弾き方をされても、あの楽章に説得力を感じることはないでしょう。あと、あそこで引用されているドイツのビアホールの歌が嫌いです。ベートーヴェンのソナタ《作品2の3》の最終楽章のような感じで始まるのですが、最後は学生組合の賛歌のようで、個人的に魅力を感じません。晩年[原文ママ]の作品で個人的によくできていると思うのが、一連の《ピアノ四重奏曲》です。」
※3曲のピアノ四重奏曲は、第1番&第2番が1861年、第3番が1875年の作品。ブラームスが生きていたのは1833年~1897年なので、「晩年」の作品とは言い難い。「後年」か「初期」の間違い?

後期のピアノ作品について:
「後期のピアノ作品はひとつの楽章が内容的に重すぎることがときどきあるのですが、初期の作品ではそのような曲は見当たりません。《ピアノ協奏曲二短調》の書法はのちの作品よりも明瞭で構造もはっきりしています。後期の作品では、なんらかの内声部や副声部にひっかかってしまって、ブラームスはなぜ11本か12本の指を持ったピアニストのための作品であることを明記しておいてくれなかったのだろうと感じることが多々あります。もっともレーガーとプフィッツナーにかかると13本の指が必要になりますけどね。」

「晩年のブラームス作品も好きですが、私としてはなぜかまだ充分な作品理解に達していないような気がします。ですから、忘れられていた50年代のケンプの録音が、再び登場してきたことを嬉しく思います。いまでもケンプの録音は尊敬の念をこめて聴いてます。」
(ケンプの後期ブラームス作品集は、50年代のモノラル録音と70年代のステレオ録音の2種類が残っている)


ブラームスについて:
「ブラームスは古典派の作品を研究しています。彼はとても教養のある作曲家で、のちに過去の多くの作曲家の作品を熱心に研究しただけではなく、教本もたくさん読んでいます。バロック音楽にも詳しく、編曲の才能にもたけていました。私は彼の人柄も尊敬しています。」


対話録「さすらい人」ブレンデル リストからモーツァルトへの道程対話録「さすらい人」ブレンデル リストからモーツァルトへの道程
(2001/10/09)
マルティン マイヤー

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<An die MusikクラシックCD試聴記> "アルフレッド・ブレンデル 第6回 ブラームスの2曲の協奏曲を聴く"
執筆者は、実際にピアノ演奏で「定期収入を得ているアマチュア」演奏家。
ピアニストの経験に基づいた視点が入っているので、多少なりともピアノを弾く身としては興味を弾かれるシリーズ。

ブラームス以外のブレンデル録音に関する評論リストは以下のページから閲覧できる。
<An die MusikクラシックCD試聴記> "アルフレッド・ブレンデル ―誤解を受け続けているロマンティスト― 《真のブレンデルの魅力を探るディスクの紹介》"


tag : ブラームス ブレンデル

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「脳過敏症候群と耳鳴り」に関する情報
NHKの人気番組「ためしてがってん」で9月28日放送された番組が 「不眠・めまい・耳鳴り 不快症状を解消せよ」

ためしてがってん 「不眠・めまい・耳鳴り 不快症状を解消せよ!」(NHK/2011年9月28日放映)[番組概要]

私は見ていなかったので、番組概要を確認すると、不眠・めまい・耳鳴りの「原因の1つが最新の研究で明らかになってきました。脳がささいな刺激に過剰に反応してしまう「脳の過敏状態」になっていることが問題だったのです。そして、「脳の過敏状態」を生み出すのは、なんと過去に「片頭痛」を放置した結果だったことも判明!」と書かれている。

"片頭痛が耳鳴りの原因"ということはあまり聞いたことがなかったので、少し調べてみると、番組に解説者と登場していた(らしい)東京女子医科大学脳神経外科客員教授の清水俊彦医師と獨協医科大学神経内科教授の平田幸一医師が最近提唱した新しい概念「脳過敏症候群」に基づいている。

NHKで放映されるくらいなので、「脳過敏症候群」は学会では定説とみなされているのかと思ったら、どうやらそうでもないらしい。
「脳過敏症候群」という概念が提唱されたのは最近のことで、2010年11月の日本頭痛学会総会で論文「慢性頭痛の新しい概念:脳過敏症候群」(著者:清水俊彦、平田幸一)が発表されている。


「脳過敏症候群」という学説・TV報道内容に関するコメント
平成23年9月28日放送の「ためしてガッテン  不眠・めまい・耳鳴り 不快症状を解消せよ!」について[耳鳴りホームページ]
"耳鳴り治療"の観点から、抗うつ剤、抗テンカン薬、トリプタン製剤の有効性などを批判的に解説している。

 「脳過敏症候群」に関する疑問(2012/06/20)[頭医者のつぶやき]


清水医師の「脳過敏症候群」講演に関する報告
頭痛治療の最前線 ―脳過敏症候群― (東京女子医大 清水俊彦先生)[Dr.和の町医者日記]
脳過敏症候群に関する清水医師の講演録。長尾クリニック 院長の長尾和宏医師が作成したメモである。
・片頭痛を放置するとめまい、耳鳴りになる。
・めまい、耳鳴りを見た時に、片頭痛のなれの果て[原文ママ]かどうかという視点で見ることが大切。
・使われている治療薬:三環系抗うつ薬のトリプタノール、デパケン、リボトリールなど。

 「脳過敏症候群」のインパクト[Neurology 興味を持った「神経内科」論文]
2011年11月25日&26日にさいたま市で開催された第39回日本頭痛学会における清水俊彦医師の講演要旨。学会で講演を聴いた下畑享良医師(新潟大学脳研究所神経内科)が作成。


                            


頭痛専門医である清水医師は、最近メディアに頻繁に登場しているらしく、「脳過敏症候群」に関する著書や新聞記事がいくつか。

新型頭痛「脳過敏症候群」のすべてがわかる本 今、解明された「しつこい頭痛と頭鳴」のメカニズムと治療法 (健康ライブラリーイラスト版)
新型頭痛「脳過敏症候群」のすべてがわかる本 今、解明された「しつこい頭痛と頭鳴」のメカニズムと治療法 (健康ライブラリーイラスト版)新型頭痛「脳過敏症候群」のすべてがわかる本 今、解明された「しつこい頭痛と頭鳴」のメカニズムと治療法 (健康ライブラリーイラスト版)
(2011/03/11)
清水 俊彦

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"怖い!新型頭痛 脳過敏症候群 (毎日ムック)
怖い!新型頭痛 脳過敏症候群 (毎日ムック)怖い!新型頭痛 脳過敏症候群 (毎日ムック)
(2011/09/09)
清水 俊彦(東京女子医科大学・脳神経外科客員教授):監修

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新型頭痛 脳過敏症候群の治し方(講師:東京女子医科大学客員教授 清水俊彦)[朝日カルチャーセンター 朝日JTB・交流文化塾]
「今まで治らないとあきらめていためまいや耳鳴り(頭鳴)症状も実は脳の過敏性の高さから生じていることが多く、このような場合には脳の過敏性を抑える治療により症状が軽快することが多いのです。」(講座概要より)

日刊ゲンダイの新聞記事「耳鳴り・めまい・難聴・脳過敏症候群」(2011年3月2日付)
脳過敏症候群のチェック項目が記載されている。(原文は未確認)
詳しくは、MSN相談箱の回答欄ANo.6を参照。


清水医師は脳過敏症候群を提唱する前に、抗ウイルス剤を使った耳鳴り・難聴治療に関する著書も出している。
『最新 頭痛 耳鳴り めまい 難聴を治す本―国際頭痛学会で注目の治療法、教えます。』では、難聴を患った宇崎竜童のインタビュー「宇崎竜童が語る、難聴、頭痛、帯状疱疹ウィルス」が掲載されている。

最新 頭痛 耳鳴り めまい 難聴を治す本―国際頭痛学会で注目の治療法、教えます。最新 頭痛 耳鳴り めまい 難聴を治す本―国際頭痛学会で注目の治療法、教えます。
(2009/09/18)
清水 俊彦

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主治医が見つかる診療所(テレビ東京) 「頭痛:カルテ(3) 宇崎竜童を襲った頭痛の意外な原因とは?」
宇崎竜童は、持病の頭痛が悪化し、難聴・腰痛・帯状疱疹・花粉症にもかかり、活動を控えていた時期があった。
彼の頭痛・難聴等の症状は、子供の頃のかかった水疱瘡の痕(神経)にウイルス(帯状疱疹ウイルス)がすみついたことが原因。

<追記>
テレビ東京の「主治医が見つかる診療所」でも、清水俊彦医師の「脳過敏症候群」が紹介されていた。
「専門医にかかっても治らない不快な三症状 めまい・不眠・耳鳴りの意外な原因を解決します!」(2012年5月14日放送)
「いくつもの病院を回っても治らなかった 原因不明の病気解決スペシャル!」(2012年7月30日放送)
※7月放送分では、よく似た症状をおこす病気として、「脳脊髄液減少症」も紹介されている。


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yoshimi

Author:yoshimi
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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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