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シュライアー ~バッハ/カンタータ BWV140 ”Wachet auf, ruft uns die Stimme”
ペーター・シュライアーの録音をYoutubeで探していたら、たまたま見つけたのがバッハのコラールBWV140"Sleepers awake"。
聴いてみると、管弦楽の伴奏がバッハ=ブゾーニ編曲版の《Wachet auf, ruft uns die Stimme. BWV 645》と同じ。
バッハのカンタータやコラールなどの合唱曲・声楽曲はあまり聴かないので、曲同士の関連が全然わからない。
調べてみると、シュライアーの歌っているのは、1731年のカンタータ《Wachet auf, ruft uns die Stimme.BWV140》の第4曲"シオンは物見らの歌うの聞けり"。これは特に有名なテノールのアリア。
この第4曲は、後にバッハ自身がオルガン独奏に編曲。シュープラー・コラール集として知られる《6曲のオルガン・コラール》の第1曲《Wachet auf, ruft uns die Stimme.BWV645》に入っている。

《Wachet auf, ruft uns die Stimme》は、日本語では《目覚めよと、われらに呼ばわる物見らの声》など、英語では《Sleepers awake》と訳されている。


いつも聴いているジェイコブスのブゾーニ編曲版ピアノソロとは違って、シュライアーの歌を聴いていると、ゆったりしたテンポでしっとりと歌いこまれているので、随分雰囲気が違う。
他のテノールの歌で聴くと、テンポ設定や雰囲気がそれぞれ違うけれど、シュライアーの歌はしみじみとした味わい深さがあって、とっても良い感じ。

Bach - Cantata BWV 140 - Peter Schreier - Sleepers wake
Karl Richter、Munich Bach Choir, Munich Bach Orchestra
Choral: "Zion hört die Wächter singen"



シュライアーの歌うバッハを聴くと、解釈が似ているせいか、すぐにレーゼルのピアノソロを思い出した。
レーゼルはブゾーニ編曲版のピアノソロでBWV645を録音している。
シュライアーのようにゆったりしたテンポで落ち着きがあり、柔らかい弱音でじっくり語りかけるよう。


ポール・ジェイコブスのブゾーニ編曲版。速めのテンポで軽快なタッチは、とても快活で爽やか。
Paul Jacobs: Wachet auf, ruft uns die Stimme (Bach / Busoni)




これはケンプ編曲の自作自演録音。ゆっくりしたテンポで、優雅でしっとりした品の良さがあるのがケンプらしい。
冒頭主題で、軽やかにちょっとスキップするかのようなスタッカートが入っているところが可愛らしくて、微笑んでしまいそう。
J.S. Bach: Wachet auf! Ruft uns die Stimme, BWV 645

(スピーカーのひずむ音が入っているので、ボリューム絞った方が良いかも)


tag : バッハ ブゾーニ ジェイコブス

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『セルジオ・フィオレンティーノ・エディション Vol.1:ベルリン・レコーディングス 1994-97』
HMVの新譜情報をチェックしていたら、『セルジオ・フィオレンティーノ・ザ・ベルリン・レコーディングス』の紹介文~かのミケランジェリが「彼は私以外の唯一のピアニストである」と評した~が目に入ってきて、興味を惹かれたので、フィオレンティーノについてちょっと調べてみることに。

セルジオ・フィオレンティーノ(Sergio Fiorentino)は1927年生まれで、すでに1998年に亡くなっているイタリア人ピアニスト。
プロフィールを読むと、若い時に飛行機事故で背骨(らしい)を痛めたことから、1950年代後半にはコンサートピアニストとしての演奏活動はイタリア国内で数少ない演奏会を行うくらいになっていった。
60歳半ばも過ぎた1993年に音楽院の教職から退き、再びイタリア国外でのコンサート活動を再開して、カムバックした。

プロフィール[Wikipedia]

SERGIO FIORENTINO[www.fortepianos.org]
  ディスコグラフィ音源ダウンロード(MP3/MPEG)[一部は、ライブ演奏の音源]、レビュー、写真集など。

第10回 フィオレンティーノ/曲:フォーレ:「夢のあとに」(ルイ・レーリンク)[ピティナ]

"Sergio Fiorentino The Early Recordings"(Volume One~Three)のレビュ記事 [フランツ・リストに花束を]

セルジオ・フィオレンティーノ[ピアノ音楽名盤選]


『Sergio Fiorentino Edition Vol.1 :The Berlin Recordings』は、Piano Classicsから先月リリースされた10枚組BOXセット。
元の音源はイギリスのAPR盤『Fiorentino Edition』シリーズ。1994-97年のデジタル録音。
収録曲は、シューマン、リスト、ショパン、シューベルト、ラフマニノフ、スクリャービン、プロコフィエフ、バッハ(バッハ=ブゾーニ、バッハ=ラフマニノフの編曲作品もあり)など。

『Sergio Fiorentino Edition Vol.1 :The Berlin Recordings 1994-97』
Berlin Recordings-Fiorentino Edition Vol. 1Berlin Recordings-Fiorentino Edition Vol. 1
(2012/01/10)
Fiorentino



収録曲リスト(http://www.piano-classics.com)
 - シューマン:幻想曲 Op.17
 - シューベルト:ピアノソナタ 第4番、第13番、第21番、即興曲 D.899
 - ショパン:ピアノソナタ 第3番
 - リスト:バラード 第1番、第2番、葬送、軽やかさ、森のささやき、ソナタ ロ短調
 - フランク:前奏曲 フーガと変奏曲、前奏曲 コラールとフーガ、前奏曲 アリアと終曲
 - スクリャービン:ピアノソナタ 第1番、第2番
 - ラフマニノフ:ピアノソナタ 第1番、第2番
 - プロコフィエフ:ピアノソナタ 第8番
 - J.S.バッハ:
   プレリュードとフーガ BWV532、BWV.552「聖アン」(ブゾーニ編)、
   フランス組曲 第5番、組曲より パルティータ 第3番 BWV1006(ラフマニノフ編)
   パルティータ第1番、第4番、ヴァイオリンソナタ 第1番(フィオレンティーノ編)
 - ドビュッシー:ベルガマスク組曲
 - スカルラッティ、モシュコフスキ、フォーレ(フィオレンティーノ編)、他

試聴ファイル(APR盤)
Boxセットの試聴ファイルが今のところアップされていない。元のAPR盤でかなり多くの音源が試聴できる。
APR盤の録音は、次の3種類。
このBOXセットに収録されているのは、『FIORENTINO EDITION』9巻分。それに新リリースらしきCD1枚の合計10枚。
 『FIORENTINO EDITION』 Vol.I~IX
 『Sergio Fiorentino in Germany, 1993 Live Recordings』(2CD)
 『SERGIO FIORENTINO The Early Recordings』 Vol.1~6

 - The Fiorentino Edition 1: Prokofiev,Rachmaninov,Scriabin
 - The Fiorentino Edition 2: Chopin, Schubert
 - The Fiorentino Edition 3 :Rachmaninov, Scriabin
 - The Fiorentino Edition 4: J. S. Bach, Volume 1
 - The Fiorentino Edition 5: J.S. Bach, Volume 2
 - The Fiorentino Edition 6: Schumann
 - The Fiorentino Edition 7: Schubert / Sonatas Nos. 4 & 13; 4 Impromptus
 - The Fiorentino Edition 8: Liszt/ Sonata, Ballades Nos. 1 & 2, Funérailles
 - Franck: Prélude, Fugue et Variation; Prélude, Chorale et Fugue; etc.

プロフィールや逸話がどれだけ興味を引いても、CDを買うかどうかは演奏次第。
試聴ファイルとYoutubeのライブ映像などを聴いてみると、これがとっても面白い。
残響が多いせいか、和声が豊かに響き、ルバートがかった歌心のあるフレージングにはいろんな想いがしっかりつまっているよう。
今まで聴いたことのある曲が、どれもかなり違って聴こえてくる。
音色が煌くように輝いて華麗なのに、柔らかい響きのなかにはどこかノスタルジーを感じさせる心地良さがあり、嫌味が全然なくて、本当に品の良いピアノ。
それに演奏のなかにいつも優しさと暖かさが流れているような"体感"がする。

収録曲は、バッハを除いて、ショパン、ラフマニノフ、シューベルトにスクリャービンと、かなり苦手な作曲家と曲のオンパレード。
よく聴くバッハのパルティータは、アーティキュレーションが面白いわりに飾り気なく聴こえるし、なにより優しく安らぎと喜びに満ちたバッハ。
バッハ以外の曲は、よほど好きなピアニストでないと、試聴してもやっぱり避けてしまうものばかり。なのに、どの演奏も全く抵抗感なく自然に耳に入ってくる。
ピアノの音と和声の美しさに加えて、"雰囲気"に満ちているのに、過剰な情緒や神経質な繊細さを全く感じないからだろうか。これはかなり不思議な体験。


ピティナで紹介されていたフォーレの《夢のあとに》は、フィオレンティーノ自身のピアノ編曲。
タペストリーのようにびっしりと音が織り込まれ、声部が重なりあって、煌くように豊麗で濃密な和声。
これもやっぱり"雰囲気"に満ちていて、ムード音楽風(?)なところはあるけれど、とってもロマンティック。

Fiorentino plays Fauré Après Un Rêve



ファンが公開しているらしきホームページ"SERGIO FIORENTINO"[www.fortepianos.org]では、フィオレンティーノのライブ録音等の音源(MP3/MPEG)がダウンロードできる。
特に美しいのが、フィオレンティーノ編曲によるラフマニノフ《ヴォカリーズ》(MP3)
フォーレと同じように素敵な演奏。
フォーレもラフマニノフも、"meanigful"というのか、演奏のなかにいろいろな想いや意味あるものがしっかり詰まっているような感覚がする。

《ヴォカリーズ》のYoutubeのライブ映像はこちら。
Sergio Fiorentino - Rachmaninov Vocalise Op.35 No.14


試聴ファイルやYoutubeのライブ映像を聴いていると、BOXセットを全て聴きたくなってきてしまう。
それに、初期の録音集『SERGIO FIORENTINO The Early Recordings』Vol.1のリスト作品集は、ブログ<フランツ・リストに花束を>のミッチさんが「フィオレンティーノの最高の一枚」と書かれていたアルバム。これも試聴してみるとやはり素晴らしかったので、結局、両方ともオーダー。
取り寄せするのに2週間~1ヶ月くらいかかりそうなので、待ち遠しいなあ。


[2012.2.21 追記]
フィオレンティーノの録音はSAGA,apr,Concert Artistsと、複数のレーベルからリリースされているが、レコード会社が実在しないピアニスト名義でフィオレンティーノの録音を無断で流用したり、逆に他のピアニストの録音をフィオレンティーノ名義でリリースしたりと、なぜか事件が多い。(記事中のaprとpiano classicsの録音は全く問題のない正規録音です)
ミッチさんのブログ<フランツ・リストに花束を>の記事"セルジオ・フィオレンティーノのサーガ録音"を参照してください。


[2012.1.29 追記]
「フィオレンティーノ」を検索すると、いろんな「フィオレンティーノ」がヒットする。
名前はもちろん、イタリアントマト・フィオレンティーノ、ズッキーニ・フィオレンティーノ、フィレンツェ名物「ビステッカ・フィオレンティーノ」。それに、ベーカリーショップでは、フィオレンティーノというイタリアブレッドを見つけた。
どうやら、「フィオレンティーノ」という言葉は、"フィレンツェ(風)の"という意味らしい。


tag : フィオレンティーノ フォーレ ラフマニノフ

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『ブラームス回想録集〈3〉 ブラームスと私』
ブラームス回想録集全3巻の中で、一番内容的にバラエティがあって密度が濃いと思ったのがこの第3巻。
第1巻も面白いけれど、手紙の文面が結構多くて、若かりし頃のブラームスに関する回想が多い。
晩年の気難しいひげ面ブラームスとは違った細身の青年ブラームスが爽やか。特にブラームスのレッスンやピアノ演奏に関する回想が印象に残っている。

第3巻の目玉(らしい)のは、シューマン夫妻の娘オイゲニー・シューマンのシューマン一家とブラームスとの生活に関する回想。
私はそれよりも、ヴィトマンの回想の方がブラームスの生活を幅広く伝えていて、面白かった。
愛犬にまつわるエピソードやイタリア旅行記など、とても印象的なエピソードも多数。
他に、作曲家スタンフォードが語るブラームスとイギリスにまつわる話、作曲の弟子イェンナーが伝える師ブラームス、ゴルトマルクが語るライバル作曲家(?)ブラームスなど、違った立場から語られるブラームス像からは、ブラームスの率直さと複雑さが混在した一筋縄では解釈できない人となりがうかがえる。
スタンフォードの話も結構面白くて、おかげで、昨年か一昨年に聴いた時にはそれほど記憶に残っていなかったスタンフォードの作品をまた聴き直してしまったくらい。

ブラームス回想録集〈第3巻〉ブラームスと私 (ブラームス回想録集 (3))ブラームス回想録集〈第3巻〉ブラームスと私 (ブラームス回想録集 (3))
(2004/09/01)
オイゲーニエ シューマン、カール ゴルトマルク 他

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シューマン一家とブラームス(オイゲーニエ・シューマン)
オイゲーニエは、シューマン夫妻の娘。彼女の回想を読むと、ロベルト・シューマン亡き後のシューマン家の人々とブラームスがどれだけ深く親密な付き合いをしていたのかが、よくわかる。
ブラームスは、クララの弟子たち以外に、娘達にもピアノレッスンをしていた。
クララの弟子たちとオイゲーニエとでは、技術的にかなりレベルが違うので、指の訓練用練習曲の選び方が違っていたり、相手によって練習方法に変えていた。

スイスのブラームス(ヨーゼフ・ヴィトマン)
ブラームスとの出会いに始まり、スイスでのヴィトマン家との交流、ブラームスのオペラ観や結婚観、音楽・文学以外の話題を語るブラームス、遺言と財産の使い道、など、音楽以外に関する回想がかなり多い。

小柄でずんぐりした体型で亜麻色の髪をした(ヒゲのない)33歳のブラームスの演奏を初めて聴いたヴィトマンは、「名人芸とも違う激しい演奏とその独特な風貌」の印象が強烈だった。
ブラームスの全身からは力が漲り、獅子のごとき胸板とヘラクレスのような肩幅で、ピアノを弾きながら後ろに頭を豪快にそり返していたという。
洞察力を表わす美しい額にブロンドの睫毛の下からはゲルマン人の眼が演奏の喜びに光り輝き、芸術家魂が指先まで伝わっているようだった。
(※ブラームスの青い瞳の印象深さは、他の著者の伝記でも頻繁に語られている。)

ベルンのヴィトマン家に滞在したブラームスはいつでも元気っぱい。
成功した人物の顔に特有の静けさと光がブラームスを照らし、創造的な仕事から得られる幸福感や深い人間性、あらうることについて考察する誠実さや素直さが現れていた。
産業技術や自然科学の進歩に対しても敏感で、鉄道馬車の広告付き切符やよくできた玩具等実用的な発明を歓迎し、電気やエジソンの蓄音機など大発明を賞賛していた。例外的に自転車は大嫌いだったそうだけど。

《四つの厳粛な歌》は、語り伝えられるような、クララの死やブラームス自身の最後を予感して作られたものではないというのがヴィトマンの解釈。
クララが亡くなる前に作品はすでに完成しており、自分自身の誕生日に贈ったものとブラームスは言っていた。
それに、病気が進行していても、ブラームスは全く気にかけていなかったことを、身近な友人達は知っていたという。

ブラームスと共に巡ったイタリア旅行記が珍しくて面白い。
ブラームスがイタリア好きなのはイタリア・ルネサンスの造形芸術もさることながら、イタリア人気質のため。明けっぴろげで情熱的な人々と一緒にいるのが楽しかった。
ゲルマン民族やブラームス自身にない気質を持つ人たちと過ごすのが好きだったらしい。
ブラームスが感心したエピソードは、古代遺跡のある地域のとある小さな駅で、小銭と大理石のかけらを売る子や地元民がドイツの高名な歴史学者モムゼンのことを知っていたこと。
ドイツの田舎町ならインテリ以外は気にもとめないドイツ人学者の名声が、イタリアの下層階級の人たちにまで響き渡っていることを大喜びしたという。

一番記憶に残ったエピソードは、音楽ではなく、なぜか愛犬アルゴスの奇跡のようなエピソード。
ブラームスが犬を飼っていたとは知らなかったので意外だったこともあるけれど、まるで名犬ラッシーみたいだったので。
グリンデルヴァルトの氷河へ旅行したブラームスは、そこで小さな赤毛のシュナウツァーと逸れてしまい、探したけれども見つからなかった。クレパスに挟まった可能性があるが、秋の落日真近い氷河を探し回るのは危険極まりなかった。
ブラームスは仕方なく諦めて自宅に戻ったが、4日後の早朝、扉を引っかく音で扉を開けてみると、アルゴスの姿が!
4日間かけて、小犬の小さな足でいくつもの氷河や山を越えて(アイガーの中腹に沿って、シャイデッグとヴェンゲンを越え、ラウターブルンネン、インターラーケン、トゥーン湖、最後にベルン)、ヘトヘトになりながらも、ブラームスの家に帰ってきたという。
犬にも帰巣本能というものがあるのかどうか知らないけれど、家からはるか遠くにある氷河で迷子になっても、方角を間違うことなく戻ってきたのは凄い。

ブラームスと付きあう(カール・ゴルトマルク)
ライバルの立場にある作曲家で、それも、音楽上、ブラームスとは対立的な関係にあったと言われるワーグナーを支持しているゴルトマルクの回想。
彼らは感性も気質も水と油のように全く違うので、ブラームスはゴルトマルクの音楽自体は好きではなかったが、なぜか人としては好意を寄せていた。
彼らの付き合いは30年近く続いていた。ゴルトマルクはブラームスから音楽上いろいろ攻撃されていたらしいが、彼の誠実さは認めていた。
ゴルトマルクの回想では、ブラームスの棘のある話のエピソードがたくさん出てくる。
ウィーンの冗談好きが言いふらしたネタ。ブラームスがパーティに招かれ、辞去する際に、「どなたかお気を悪くさせるのを忘れていたら、ごめんなさいよ」。
そんなブラームスも作品が認められるようになると、駆け出しのころの「粗暴で反抗的な」ところが消えて、人当たりもよく丸くなったという。


イギリスのブラームス(チャールズ・ヴィリアーズ・スタンフォード)
英国の作曲家スタンフォードがウィーンやドイツで、見聞きしたり、実際に会ったブラームスと、英国でのブラームスのエピソード。
英国ケンブリッジ大学の博士号授与とイギリス訪問招請の実際の正確な顛末が書かれている。

ハンブルクでスタンフォードが初めて聴いたブラームスの自作自演《ピアノ協奏曲第2番変ロ長調》。
ブラームスの演奏はミスタッチが続出。ソロパートにちりばめられた危険極まりない跳躍音型は正確さとは無関係に弾かれ、間違った音は両手からこぼれんばかり。緩徐楽章はビロードのような肌触りで見事だったが..。
「その威容といい解釈といい、あれほど凄い協奏曲の演奏を聴いたことがない。....正しい音が書かれているのだから、音を外すなどという些細なことは誰も気にしない。」
ブラームスの演奏する姿は、よく見かけるベッケラース教授のスケッチ姿と瓜二つだったという。均整のとれない変わった体形だったらしいが、何よりも目が印象的。
「あんな綺麗な目を見たことがない。深い青で透明。彼の友人曰く「目の中に向かって飛込みができる」。」

「ブラームスが《ピアノ協奏曲二短調》を指揮すると、作品全体に新しい光があたる。特に第一楽章のリズムの揺れだ。厄介な四分の六拍子でかかれており、(略)ブラームスは均等ではない四つ振りだ。このやり方で引きずったり急いだりを押さえ込み、楽章の最後の一音まで徹底的に維持するのだ。テンポは自由自在でところどころビューローのようでもあるが、抑えが利いているので、全体のバランスは崩れない。まさしくルバート本来の姿である。」
それに、「遅い楽章では、無味乾燥な四角四面の演奏を嫌っていた。」(交響曲ハ短調のエピソードが書かれている)

「ブラームスの人柄とは、非凡を絵に描いたようなものである。ユーモアがあり豪胆で目端が利く。周囲に向けては態度が悪かったこともある。しかし、子供好きで彼らからもその文句のつけようのない部分と、ちょっとひねくれて「お下品」なところを慕われていた。」 
同じ年格好の人にはつっけんどんな態度のブラームスでも、年長者にはとても控え目だったという。

スタンンフォードは、「もしもある作品が、それを創った人物の魂を読み解く手掛かりになるとすれば、ブラームスの残した最後のコラール前奏曲、感動的な"世界よ、あなたに別れを告げよう"にこそ、作曲家の心がはっきりと表れている。」と言っている。
《四つの厳粛な歌》は有名だけど、この曲が収録されている最後の作品《11のコラール前奏曲集 Op.122》はオルガン曲を聴く人以外は、あまり知らないに違いない。
このコラール前奏曲集は、ブゾーニが編曲していたことで知ったので、いつも聴いているのはピアノ編曲版。

これは原曲のオルガン演奏。
Bernard Lagacé: O Welt, Ich Muss Dich Lassen - Op. 122, No. 11 (Brahms) - 1978




思い出すこと(エセル・スマイス)
独立心が強く、当時の男尊女卑的思想に批判的だった女性の視点で見たブラームス像なので、かなり手厳しい。
そういう面もあったのだろうと思う部分(女性作曲家に対する偏見らしきもの)と、彼女が理解するブラームス像に強くバイアスがかかっているのではと思える部分があって、あまり読んでいて気持ちの良いという回想ではない。


ヨハネス・ブラームス 人間、師匠、芸術家――研鑽と体験記(グスタフ・イェンナー)
ブラームスが教師を職業にしなくて良かったかも...と思えるほどに、作曲家を育てるには、厳しいスパルタ教育者だった。
唯一、ブラームスから長年にわたって直接教えを受けた弟子イェンナーの"汗と涙の修業記"。
まだ30歳代の若い頃、クララ・シューマンの弟子たちや娘オイゲニーたちにピアノをレッスンしていた回想録を読むと、誉めることもするし、親切に辛抱づよく教えていた。
クララがブラームスは"最高のピアノ教師"と評していたほどに、ピアノ教師になっていたら弟子志願者が殺到したかもしれない。

一方、作曲家ブラームスに「君は音楽についてきちんとしたことを何一つ学んでいない。見せてもらった和声法やら作曲法やらオーケストレーションやらは、どうにもならんじゃないか」と宣告された23歳の若き作曲家イェンナー。
イェンナーが弟子になるまでのいきさつと、実際の教育方法を綴った体験記を読むと、精神的に粘り強く素直な性格でなければ、ブラームスの弟子は務まらないに違いない。
イェンナーがウィーンのブラームス宅近くに引越して、弟子入りしてから1年経った頃、ブラームスはこう言っていた。
「いいかね、これからも僕にほめられることは絶対にない。それに耐えられないようなら、きみの心の中にあるものは、すべて意味がなかったことになるんだ。」
それでも、ブラームスの厳しい指導にめげずについていったイェンナーは、どうにか作曲家らしくなっていった。

ブラームスと「赤いはりねずみ」で食事を共にし語らった時間のなかでも、ブラームスは自分の作品のことや人生について語らなかった。
ブラームスは短く細切れに話すので、必要な時だけ仕方なく口を開くが、その言葉は鋭く正確で核心を衝いていた。
しかし、肝心なことをぼかして話すので、何を言っているかわからないことも多く、自分自身や作品について話すと、わかりにくく真意を理解するのも難しかった。
誤解されていても、それをさらに助長するところがブラームスにはあったらしく、その状態を克服しようと努力した人たちだけがブラームスの信頼を勝ち得た。
弟子イェンナーが言うくらいだから、数々の伝記で伝えられる通り、かなり気難しく、言葉に棘があったり、誤解を招くことが多かったのは事実らしい。

作曲指導には厳格だったブラームスも、弟子の将来のことは気にかけていた。
ウィーンで音楽家としての地位を確立し地盤を固めるために、外出するときにはどこでもイェンナーを同行させたり、音楽関係の仕事で彼を推薦したり、いろいろバックアップしていたようだ。

イェンナーの回想録には、ブラームスの作曲に対する考え方も書かれている。
特に歌曲の作曲法について詳しく、ほかには、転調、変奏曲、ピアノ・ソナタなどについて。

「変奏は少なければ少ないほど良い。でもその中で言うべきことがすべて言えていなくてはいけない」
ブラームスはこの形式を非常に厳格なものと考え、主題選びの段階から細心の注意を払うようにイェンナーに言った。
「変奏曲向きの主題は本当に少ないんだよ」

ブラームスは、まず主題の低音(バス)に注目するようによくイェンナーに言っていた。
「低音は旋律よりも重要なんだ」
上声の旋律は、低音に補足されて初めて形をなす。そして、低音が変奏されるとさらに強い影響が及び、全体の性格が明確になる。曲全体が勝手気ままな変奏を与えないためにも、「絶えず目標を見定めていること。低音部ががっちりしているときだけ、それが可能なんだ。さもないと宙ぶらりんになってしまうぞ。いざ真っ直ぐに、迷わず目標に向けて出発だ」

イェンナーが変奏の調を変えても、怒られることはなかった。ただしブラームス本人はベートーヴェンと同様、変奏曲で調性を変更するのは限定される用法と考え、一貫した変奏の究極の姿、すなわちバッハの《シャコンヌ》を至高のものとみなしていた。

イェンナーはブラームスの自宅に通って指導を受け、昼食を共にし、ウィーン音楽界の会合や演奏会にも一緒に行き、避暑地イシュルへも教えを受けに行っていた。
イェンナーがブラームスと一緒にいた時間は、彼の友人・知人達のなかでも、とりわけ長いかもしれない。
その間、ブラームスからいろいろな話を聞き、生活の一部をともにしていたようなものなので、厳しい師ではあったけれど、尊敬と敬愛の念を抱いていたのが、回想から伝わってくる。




tag : ブラームス 伝記・評論

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キャラメリゼ
冬に生の果物を食べると体が冷えるので、電子レンジで加熱して温めて食べたり、キャラメリゼにしてデザート風に。

キャラメリゼのコツを実演で教えてくれるのが、「たかシェフのバナナのキャラメリゼ」
ブログ記事はこちら
パイナップル、桃でも作り方は同じ。



ブログ<たかシェフのおうちごはん。>には、写真付きで作り方がたくさん載っている。


梨とりんごでも美味しいキャラメリゼができる。トロトロにしたいのなら、あらかじめフライパンで焼いておくと、カラメルを手早く絡めるだけで簡単。

果物以外にもキャラメリゼはバリエーション豊富。

キャラメルポップコーン[Cookpad] :蜂蜜、生クリーム入りのレシピ

キャラメルポップコーン[パルシステム(生協/コープ/COOP)] :バターなしのレシピ。

シナモン香るクルミのキャラメリゼ[Cookpad]

ふわカリ☆キャラメリゼなフレンチトースト[Cookpad]


節分の余り豆で「炒り大豆の砂糖がけ」[Cookpad]: バターを使わずに、砂糖がけ大豆。
乾燥大豆を戻して使う「砂糖がけ大豆」[ドイツ菓子工房] : 砂糖がけアーモンドのレシピも載ってます。

これはおまけ。キャラメリゼではないけれど、大豆を使った大人気レシピ。
大豆の甘辛揚げ[Cookpad] :片栗粉をまぶして揚げた大豆を砂糖・しょうゆ・お酢のタレをつけるだけ。


野菜までキャラメリゼ。
白菜のキャラメリゼ[たかシェフのおうちごはん]

カッチェン ~ シューベルト/即興曲 Op.90 第3番
カッチェンのとても珍しいライブ映像は、シューベルトの《即興曲Op.90》の第3番。
1967年11月16日、パリのSalle Gaveauのリサイタルでの演奏。
コメント下さった方に教えていただいたYoutube映像で、1ヶ月前にアップロードされたばかりのもの。

このYoutubeのライブ映像は全部で5曲。ブラームスの《ハンガリー舞曲》2曲と《ピアノ・ソナタ第2番》、シューベルトの《さすらい人幻想曲》、それにこの《即興曲》。
《即興曲》以外は、EMIのDVDに収録されている。《即興曲》のライブ映像を見たところ、《さすらい人幻想曲》を弾いたリサイタルで《即興曲》も演奏していたように思えるけれど、DVDには未収録。

《即興曲》は46:14~。
シューベルトはめったに聴かないけれど、カッチェンのピアノで聴くと、いつもとは違ってなぜか好きになれそうな気がしてくる。
この第3番は、Op.90の4曲ある即興曲のなかで一番美しい曲。淀みなく流れる旋律のなかにも、感情の起伏がときにドラマティックに聴こえてくる。
カッチェンらしい少し速めのテンポで、流麗・耽美的になりすぎないのが好きなところ。
3声部の音色・タッチがそれぞれ違っていて、上声部の主旋律の柔らかい弱音は優しく囁くようなレガートで、かすかな響きが儚げ。
右手中声部の伴奏的音型が玉のようにコロコロとした響きでリズミカル。カッチェンらしい太く力強い低音はゴロゴロと唸るよう。

Julius Katchen plays Schubert (Video)



Youtube動画の一番最後に「INA」とクレジットされているので、調べてみると、「フランス国立視聴覚研究所(L'Institut national de l'audiovisuel、略称:INA)」のことらしい。
INAはラジオフランスが主催し、フランスの全ラジオ・テレビの視聴覚アーカイヴの宝庫といわれ、100,000件の歴史的番組、合計10,000時間分のアーカイヴが無料で試聴できる。

検索してみたところ、カッチェンのシューベルト録音は見つからず。
その代わり、ブラームスの《ピアノ協奏曲第1番》のライブ録音が登録されていた。
1965年2月18日、アンドレ・ヴァンデルノート指揮フランス国立放送管弦楽団(現フランス国立管弦楽団)の伴奏。
映像はないけれど、演奏を聴けばカッチェンのブラームスだとすぐにわかる。
カッチェンは3年でアメリカの大学を卒業して、20歳過ぎの時にパリに留学。そこでピアニストとして演奏活動を始めてからはずっとパリで暮らしていたので、フランスではよく演奏会で弾いていたに違いない。
演奏が終っても、拍手がなかなか鳴り止まず。生まれも育ちもアメリカ人とはいえ、パリを拠点にしていたし、ブラームス弾きとして有名だったので、フランスでも人気があったのでしょう。


tag : カッチェン シューベルト

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耳鳴り治療のための音響・音楽療法 (5) ②Short and Intense Tailor-Made Notched Music Training
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短期集中型 "Tailor-made Notched Music Training(TMNMT)"
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以前に記事で取り上げた耳鳴り治療法としての音楽療法”Tailor-made Notched Music Training(TMNMT)”に関して、最新論文"Short and Intense Tailor-Made Notched Music Training against Tinnitus: The Tinnitus Frequency Matters"が昨年9月に公開された。
最新論文では、前回のフォローアップ研究として、より効率的なトレーニング方法である短期間の集中コースを開発し、実際に被験者で試験した結果が報告されている。
また、2012年6月13-16日に開催された耳鳴り研究の国際会議である「TRI2012」(6th International Conference on Tinnitus)のPoster Sessionで、経頭蓋直流刺激(tDCS)を同時に行った複合療法の臨床結果が公表されている。

(以下、論文抄録の要約)

 "Short and Intense Tailor-Made Notched Music Training against Tinnitus: The Tinnitus Frequency Matters"

【実施要領】
対象者:慢性でTonal型の耳鳴り
被験者群:耳鳴周波数が低周波数群(8kHz以下、10名)、高周波数群(8kHz超、10名)の2グループ
訓練期間:短期間(5連続日)
訓練時間:第1日&第5日:3時間/日、第2日~第4日:6時間(3時間×2回)/日
指定使用機器:クローズド型ヘッドフォン(Beyerdynamic DT-770, 32 Ohm Edition)
音量:被験者が快適な音量で設定。
音楽加工:被験者が最も好きな音楽を用意(6時間分)し、患者の耳鳴周波数を中心に1オクターブ分の周波数を音楽のエネルギースペクトラムから除去。

【評価ポイント】
効率性:行動面、脳磁図のデータにより測定・評価
効果持続性:訓練後4週間で測定・評価

<行動面の評価方法>
- 耳鳴に起因する苦痛度:E+C subscale of the German version of the Tinnitus Questionnaire
- 評価時点:(i)TMNMT開始直前 (ii)TMNMT完了直後 (iii)TMNMT完了後3日 (iii)同17日 (iv)同31日


【結果と考察】
(1)訓練の効果
訓練完了後、低周波数群(耳鳴周波数が8kHz以下)で、主観的な耳鳴の大きさ、耳鳴りがもたらす苦痛度、耳鳴に関連した聴覚皮質の活動が、いずれもかなり低減した。
高周波数群(同8kHz超)では、大きな変化は見られなかった。
耳鳴音の低減効果は持続的なものではなく、訓練終了後3日経つと低減効果は測定できなかった。

訓練によって引き起こされた可塑的変化は単に機能的なものであって、本質を変化させるものではなかった。
従って、より安定的で持続的な効果をもたらすためには、より長期間(少なくとも数週間~数ヶ月)のトレーニングが必要である。

(2)効果の持続性
8kHz以下の耳鳴周波数患者では、訓練終了後、耳鳴りがもたらす苦痛の低減効果は、耳鳴音量の低減効果よりも、さらに長期間にわたって測定できた。
精神面での改善効果が大きければ大きいほど、時間が経過してもより安定して効果が持続するようになる。
従って、TMNMTを長期間実施することを奨励する。クリニックでの標準的治療法として導入されることが望まれる。

(3)耳鳴周波数と訓練効果の関係
重要な発見は、TMNMTの訓練効果は耳鳴周波数に左右されるという点。
音楽加工の時点で、音楽に含まれる高周波数域を増幅し、さらに比較的、非常に高周波数を伝えやすいヘッドフォンを使用した。
それにも関わらず、 TMNMTは平均的に、8kHz以下の耳鳴周波数患者で効果があったが、8kHzを超える耳鳴周波数患者では効果が無かった。

理論的には、この結果は複数の理由で妥当である。
(i)極めて高い周波数では、人間の蝸牛の感度は相対的に低くなる。従って、高周波数の音を聞こえるようにするためには、音圧レベルをより高く設定されなければならない。
(ii) 加齢による難聴は高周波数から低周波数へと進むため、極めて高い高周波数に対する蝸牛の感度が低くなる。
(iii)音楽は通常、極めて高い周波数域をほとんど含んでいない。
(iv) 結局、リスニング中、患者は無意識に、音楽知覚や娯楽として考えれば高周波数よりも適当な低周波数の方へ、注意を向けていたのかもしれない。(歌手の声など)

これらの論点は、非常に高い周波数のコーディング(符号化、記号化)を目的とする神経活動を、効果的に抑制することはかなり難しい課題だということを示している。
8kHz超の耳鳴周波数患者に対して、TMNMTは原理的に作用するものなのか、依然として調査課題のままである。

そのようなケースでは、治療用刺激が充分な量の高周波数エネルギーを含むべきだと仮定するのは合理的に思える。
一方では、治療用刺激や戦略が、可塑性を促進すると考えられる注意および報酬系(attention- and reward-related)脳内ネットワークを作動させるほどに、充分に興味深くモティベーティブであることが重要だと推定している。
一つの可能性としては、ハイパス・ノイズを付加することで、高周波数帯での音楽スペクトラムをより増強することがあげられる。


"Combining “TAILOR-MADE NOTCHED MUSIC TRAINING (TMNMT)” with left auditory cortex tDCS: an explorative study"
(Teismann H., Wollbrink A., Okamoto H., Pantev C.)

短期集中型"Tailor-made notched music training"とtDCS(経頭蓋直流刺激)との複合療法により、耳鳴緩和効果があった。
tDCSが"脳の可塑性への扉を開く"という前提に基づき、 短期型TMNMTの治療効果向上のためtDCSも実施。
TMNMT療法コース:トーナル(Tonal)型慢性耳鳴りの被験者30人に対して、10日連続で1日あたり2.5時間、合計25時間。
tDCS:TMNMTコースの当初5日間、治療用音楽を聴いている最初の30分間に、左聴覚野に対してtDCS実施。(anodal、cathodal、shamの被験者は各10人、電流の強さ:2mA)

"Music-induced cortical plasticity and lateral inhibition in the human auditory cortex as foundations for tonal tinnitus treatment."
Front Syst Neurosci. 2012;6:50. Epub 2012 Jun 27.
Pantev C, Okamoto H, Teismann H./Institute for Biomagnetism and Biosignalanalysis, University of Münster Münster, Germany.



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現在の研究内容
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研究機関(Universität Münster)のホームページには、現在の研究計画と被験者募集告知が記載ている。

【被験者条件(共通)】
 - トーナルな耳鳴(ピー、ホイッスルの音のような)
 - 3ヶ月を超える慢性耳鳴
 - 重度の難聴がないこと(60dB未満)
 - 神経学的・精神医学上の疾患がないこと
 - 年齢:18~60歳

【試験期間】 
 Tailor-made notched music and brain stimulation
Münster大学で連続5日間(月~金)、1日あたり3時間実施。

 Advancement of music customization
期間は3ヶ月。自宅で1日1~2時間実施。

[注]以上の情報は、現在ホームページから削除されています。被験者募集が終了したためと思われます。


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参考:《過去記事》耳鳴り治療のための音響・音楽療法 (5) Tailor-made Notched Music Training
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備考
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新論文を読んだ個人的な感想:
前回の研究結果では、8khz超の高周波数耳鳴患者が対象になっていないことが課題となっていた。
従って、高周波数の耳鳴患者に対する長期的訓練の効果は不明だった。

今回の新論文では、短期間の訓練では高周波数耳鳴患者に対して効果がないということはわかる。
しかし、長期間にわたって訓練した場合に効果があるかどうかは、依然として不明なまま。

人為的に高周波数域を増強した音源を使用しても、日常的に聴いている音楽とはかなり異なるため、通常の音楽知覚能力では反応しにくい可能性があると推測されている。
高周波数域を様々な方法で増強した訓練用音源は、通常聴く音楽とは違って特殊なものなので、どれほど効果が期待できるかは、今後の検証次第。

気になる点は、高周波数域を増強した音楽を高周波を伝えやすいヘッドフォンを使って聴いていること、また、周波数に関わらず耳鳴音が大きい人は、音楽を聴く時にボリュームをかなり上げていると思われること。
こういう条件で、1日数時間、それも長期間にわたって訓練していたら、耳にかなり悪そう。ヘッドフォン難聴のリスクがあるように思える。
被験者が自由に設定する音量レベルは数値で確認した方が良いと思うし、可能なら音量制限機能つきのハードウェアを使った方が無難では。
ヘッドフォンをつけずに聴いた方が耳には負担がかからないと思うので、ヘッドフォンの有無でどのくらい訓練効果の差があるのかデータで確認してみたいところ。

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利用上の注意
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記事中の英文和訳部分は厳密な正確さを期したものではありません。正確な内容については、論文およびホームページの英文原文をご確認ください。



tag : 音響・音楽療法

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ケーゲル&ドレスデンフィル ~ バッハ/G線上のアリア
ヘルベルト・ケーゲルとドレスデンフィルが、1989年10月18日に東京・サントリーホールの来日公演で演奏したアンコール曲は、バッハの《G線上のアリア》。

この来日公演のライブ録音は、ALTUSから国内盤CDでリリースされている。
ベートーヴェンの《運命》とカップリング。アンコール曲とはいえ、この《G線上のアリア》を聴くことができただけでも充分。
この録音を聴いた人のレビューがウェブ上にたくさん載っている。一度聴いたら忘れようがないくらいに強く心に残る演奏だという点は同じ。

ケーゲルとドレスデンフィルが来日した頃は、東側諸国の社会主義体制が動揺している最中であり、来日公演から数ヶ月後にはベルリンの壁がついに崩壊してしまった。ケーゲルは社会主義の信奉者だったという。
ドイツ統一から1ヶ月半後(来日公演から約1年後)にピストル自殺を遂げるケーゲルの運命を考えると、それでなくても尋常ではないこのバッハが、何か象徴的な意味を持っているかのようにも思えてくる。

ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」 ほかベートーヴェン:交響曲第5番「運命」、J.S.バッハ:G線上のアリア
(2003/03/08)
ヘルベルト・ケーゲル

(試聴ファイルなし)



これはカラヤンとケーゲルの《G線上のアリア》を聴き比べることができるファイル。
カラヤン&ベルリンフィルの演奏を聴いてから、ケーゲル&ドレスデンフィルの《G線上のアリア》を聴くと、ケーゲルたちの演奏がなぜそれほど人を惹きつけるのか、よくわかる。

ケーゲル&ドレスデンフィルの演奏は、06:08~。


去り行くもの・滅びゆくものへのレクイエムであるかのように、消え入りそうに儚く美しいけれど悲痛でもあり、寂寥感と惜別の情のような何かが流れていると感じるのは、昔も今も変わらない。


《過去の記事》
 ケーゲル最後の来日公演から ~J.S.バッハ「G線上のアリア」

《参考情報》
 許光俊 「ケーゲル、悲惨な晩年の真実~写真集について」(HMVサイト)
    『ヘルベルト・ケーゲル伝記』(CD&BOOK)の紹介記事。

tag : バッハ

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小曽根真&ゲーリー・バートン 『Virtuosi』
小曽根真とゲーリー・バートンのデュオの『Virtuosi(ヴァーチュオーシ)』は、バロックから現代のクラシックを中心にした今までとは一風違ったジャズアルバム。
2002年の第45回グラミー賞"Best Classical Crossover Album"にノミネートされている。

「virtuosi」とは、virtuoso(ヴィルトオーソ)の複数形。クラシックの世界で「ヴィルトオーソ」というと、超絶技巧を持つ演奏家のことを言う場合が多い。
名人や達人といった意味合いもあるので、どちらかというと"鮮やかなテクニックで音楽を奏でる達人たち"というところだろうか。

収録曲の多くは、クラシックのピアノ曲をが素材にしている。
クラシックのジャズバージョンというと、原曲の旋律にジャズ風の伴奏をつけただけ..みたいなものが少なくない気はするけれど、小曽根&バートンのデュオなら、そんなつまらないアレンジになるわけもなく、原曲の旋律を使いつつも自由自在に動き回って、さすがにどの曲も素敵。
クラシックをこんなに面白くアレンジしているジャズピアニストというと、私がすぐに思い浮かぶのはリッチー・バイラーク。彼のアルバム『哀歌』、『Round About Mompou』、『Round About Bartoks』は、どれも凝ったアレンジで原曲を忘れてしまう。

クラシックの原曲を知っていれば、雰囲気の違いや編曲の面白さを楽しめるし、原曲を知らなければ知らないで、いつものモダンジャズとは違ったクラシカルなタッチのジャズが聴ける。
聴いたことのないクラシックの曲は、ラフマニノフ、ガーシュウィンの前奏曲、ドリーブ。それに、カルドーソはアルゼンチンのクラシックギタリスト、コンフリーはジャズピアニスト。
小曽根のデビュー盤『クリスタル・ラブ』を聴いて以来、ピアノ&ヴィブラフォンというフォーマットは、ピアノトリオよりも好きなので、なおさら楽しいアルバム。

ヴァーチュオーシヴァーチュオーシ
(2010/05/26)
ゲイリー・バートン&小曽根真

試聴する(米amazon)


最後のオリジナルを除いて、各曲とも、冒頭は原曲の主題をシンプルに演奏し、その後、ジャズらしい即興演奏に入り、最後に原曲の旋律を凝ったアレンジで演奏して終るという展開。
原曲はピアノ独奏曲が多いので、ヴィブラフォンとピアノのデュオだと音色も多彩で、両者の息の合った即興でのやりとりも入って、とても面白く聴ける。
ガーシュウィンのピアノ協奏曲だけは、原曲の記憶への刷り込みが邪魔して、音も演奏もスケールダウンしたような感覚を覚えたので、もう一つ楽しめないところはあったけれど。

特に好きなのは、クープランとラフマニノフの前奏曲、ブラームスの奇想曲。スカルラッティのソナタも面白い。特にクープランが鮮やかに思えたし、ブラームスは原曲が好きなので、この2曲はとりわけ気に入ったもの。
それに、ラストの小曽根のオリジナル。他の曲と脈絡のない気はするけれど、やっぱり彼のオリジナルはいつ聴いても良い感じ。



1. ラヴェル 《クープランの墓》 第1曲「前奏曲」
ラヴェルの瀟洒で軽妙なプレリュードは、無機質なメカニカルさを感じさせるところがあり、冷たい輝きを放つ宝石のようにクールな感じがする。
でも、ヴィブラフォンの音色が柔らかく温もりがあるし、小曽根のピアノの音色も明るい色調で、原曲とは少し違った感覚。
ヴィブラフォンとピアノがユニゾンで弾く旋律は、速いテンポで軽やか。全編を流麗なフレージングと軽快なリズム感で淀みなく流れてとても鮮やか。とても明るくて楽しそうなラヴェル。このアルバムの中で特に好きな演奏の一つ。
小曽根真のピアノは、原曲をソロで弾いたとしても安心して聴けそう。

2. バーバー 《遠足》 第1曲 作品20
あまり演奏されることのないバーバーのピアノ作品が原曲。
これはどこかで聴いた事があるモチーフ...と思って曲名を見ると、《遠足》。
珍しい曲名なので、すぐにバーバーだと思い出した。
即興部分でも、不可思議な雰囲気の漂うやや不協和的な和声や、ピアノの左手伴奏部のオスティナートなどが使われているので、原曲の現代的なタッチがよく伝わってくる。

Gary Burton & Makoto Ozone - Barber
これはCDとは違う音源のライブ映像。




3. ラフマニノフ 《13の前奏曲》第8番 作品32の8
ラフマニノフはあまり聴かないけれど、冒頭の旋律がとても面白くて、原曲をどうしても確かめたくなってしまった曲。
冒頭の最初の2小節の旋律がフーガのようにあちこちで現れ、全編、まるで何かに追い立てられているような急迫感。
中間部の即興に入ると、ヴィブラフォン、次にピアノが、速いテンポで疾走して鮮やかなソロ。
ラフマニノフの前奏曲って意外にわかりやすくて面白いかも...と思えてきたので、いくつかある前奏曲集をまとめて聴いてみた方が良さそうな気がしてきた。

4. カルドーソ 《ミロンガ》
苦手なタンゴもバートンのヴィブラフォンなら、雰囲気やリズムがちょっとまろやか。

5. ガーシュウィン 《前奏曲》 第2番
物憂げな雰囲気にどっぷりつかったガーシュウィン。
有名な《サマータイム》も苦手なので、こういうタイプの曲はやっぱり好みとは全然違う。

6. スカルラッティ 《ソナタ》 K.20 L375
ハープシコードの尖った音を模したような、弾むように軽やかなスタッカートなタッチがとってもメカニカル。でも、ヴィブラフォンとピアノの可愛らしい音色は、陽気で楽しそう。
ちょっとデフォルメ感があるのがユーモラス。ヴィブラフォンとピアノのユニゾンがお茶目な感じ。
即興部分に入ると、スタッカート的なタッチを少し残しながらも、短調の和声の響きが華麗な雰囲気。
単調になりがちなバロックのシンプルな旋律でも、長調と短調が頻繁に交錯し、表情がコロコロと変化していくのが面白い。

Gary Burton & Makoto Ozone - K20
これもCDとは違う音源のライブ映像。



7. ゼズ・コンフリー  《スリー・リトル・オディティズ》より 「即興曲」
コンフリーは「ノベルティー・ピアノ」の第一人者。「ノベルティー・ピアノ」とは、技巧的で描写的ラグタイムで”新奇さ、奇抜さ”が強調されたものらしく、、「ノベルティー・ラグ Novelty Rag」というジャンルがある。
コンフリーの自作自演が、『鍵盤上の子猫~ゼズ・コンフリー/ノベルティ・ラグの名技』で試聴できる。
下降音型と余韻漂うヴィブラフォンの音色が、どことなく曖昧模糊とした不安げな雰囲気をかもし出している。

8. ガーシュウィン/《ヘ調のピアノ協奏曲》~第3楽章
旋律自体は原曲で聴き慣れたものなので違和感はないけれど、ピアノがタッチがやや軽い感じがするのと、楽器が2つだとオケ伴奏に比べて色彩感や音の厚みがないので、どうしても迫力不足。
原曲を聴き慣れているだけに、ピアノ&ヴィブラフォンだとどうも調子が狂ってしまう。原曲は忘れて別ものと思って聴かないと...。
原曲の旋律をなぞっている冒頭部分と終盤部は(個人的な好みとしては)もう一つだったけれど、原曲からかなり離れた即興部分とか、元の旋律をジャズ風にアレンジして弾いているところは、スピード感があって技巧鮮やかで、聴き応え充分。

9. ドリーブ 歌劇《ラクメ》メドレー
《ラクメ》自体は見たことも聴いたこともないけれど、メドレーに使われている旋律はどこかで聴いたことがある。
これはごく普通のジャズらしい華麗なタッチ。

10. ブラームス 《8つの小品》 作品76 ~ 第2曲「カプリッチョ」
ブラームスのピアノ小品をモチーフにしているのは、ブラームス好きには嬉しい選曲。
ピアノソロで聴いても、面白いリズム感でお茶目な感じがする曲なので、ヴィブラフォン&ピアノのデュオで弾くにはぴったり。
"奇想曲"らしさのある軽妙でちょっと不思議な雰囲気が良く出ていて、ピアノソロで聴くよりも曲想に似合っている気がするくらい。
中間部に挟まっている即興部分は、流れるように華麗なタッチに変わり、原曲とはかなり違った雰囲気。

11. 小曽根真 《サムシング・ボロウド、サムシング・ブルー》
しっとりとした叙情感が心地良い小曽根のオリジナル。
ゆったりと呟くようなヴィブラフォンとピアノの旋律と余韻漂う和音の響きが美しくて、ちょっとセンチメンタルな気分。
なぜか、戦いすんで日が暮れて、心地良い疲れに浸っている...ような感覚がする。


tag : 小曽根真

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スタンフォード/The Bluebird
スタンフォードの音源をYoutubeで探していると、とても多いのが《The Bluebird》という合唱曲。
アカペラならではの静謐さと透明感がとても綺麗な曲。

この曲は"パートソング"という種類の曲らしい。
"パートソング"とは、世俗歌で構成された無伴奏合唱曲。
通常は4声(または全ての男声または女声アンサンブル)向けに書かれている。
最上声部が主旋律、他のパートは伴奏用ハーモニーのホモフォニー。
英国では、パートソングの全盛期は20世紀に変わる頃あたりで、パリー、スタンフォード、エルガーが主要な作曲家。
彼らの作品は、同時代またはそれより古い時代の有名な英詩を使っており、かなり高尚な厳粛さのある作風。
スタンフォード以降の作曲家では、レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ、バックス、ワーロック、ホルスト、ブリテンなどがパートソングを多数書いている。
以上、英文Wilipediaの解説

作品解説でとても詳しいのが、札幌コダーイ合唱団の<合唱インデックス>"The Blue Birdの分析と解釈(その1,その2)"
メアリ・コールリッジの詩の日本語訳、曲の構造分析や詩との関連性などの解説が載っている。


The Bluebird - C.V. Stanford
John Rutter and The Cambridge Singers sing

指揮は作曲家でもあるジョン・ラター。彼の作品は合唱曲が多く、現代音楽といえば無調や折衷的な作風が主流のなかでは、アナクロ的な(?)完全調性音楽しか書かないらしい。
彼の作品はどれも聴きやすくて、とてもクラシックの現代音楽とは思えないくらい。





tag : スタンフォード

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スタンフォード/ピアノ協奏曲第2番
『ブラームス回顧録集(3)ブラームスと私』を読んでいると、イギリスの作曲家チャールズ・ヴィリアーズ・スタンフォードの回想が載っていた。
スタンフォードのプロフィールと紹介を読むと、平明で優しい作風で多数の作品を残し、イギリスの大作曲家たち(ヴォーン・ウイリアムス、ホルスト、アイアランドなど)を門下から輩出している。
ブラームスとの関係については、《交響曲第1番》のイギリス初演やケンブリッジでの《ドイツ・レクイエム》演奏会を実現したことなど、ブラームスの音楽をイギリスに紹介した功労者の一人。
《交響曲第3番 "アイリッシュ"》の第3楽章では、ブラームスの交響曲第4番第2楽章に出てくる旋律が使われているという。
スタンフォードの室内楽・ピアノ作品を聴いてみると、ブラームスの面影を感じさせるものがあるので、ブラームス好きの私にはとても心地良い音楽。

スタンフォードが書いたピアノ作品は多数あるけれど、録音はそれほど多くはない。
ピアノ作品よりもオルガン作品の録音の方が多いくらい。
室内楽曲は、ピアノ三重奏曲、四重奏曲、クラリネットソナタ、ヴァイオリン&ピアノ曲などジャンルはいろいろ。いくつか聴いていると、かなりブラームス風。
数少ないピアノ独奏曲の録音のうち、《6つの性格的作品 Op.132》の"第6番 Toccata"は、まるでブラームス。ブラームスの未発表作品と言われても、さほど違和感を感じないと思えるくらい。
ピアノ曲も室内楽曲も、ブラームスの音楽よりも和声が重たくなくて重厚さが少なく、陰影も薄くて渋みはないけれど、風通しのよい爽やかな趣き。ブラームスが好きな人なら、すぐに馴染めそう。
どの曲もとても聴きやすくて、ピアノ作品集のまとまった録音があるなら、聴いてみたくなる。

ピアノ独奏曲よりも、ピアノ協奏曲の方がどちらかといえばポピュラーらしく、3つのピアノ協奏曲のうち、録音が一番多いのが第2番。
シューマン、ブラームス、さらにラフマニノフがブレンドされたような印象。
力強く勇壮でありつつ、流麗でロマンティックな叙情感は、ロマン派のピアノコンチェルト。
それほどベタッと情緒過剰ではなく、繰り返し聴いてももたれないくらいに、穏やかで節度のある叙情感がほどよい感じ。

ChANDOS盤は、フィンガーハットのピアノ、ハンドリー指揮アルスター管の伴奏。
Six Irish Rhapsodies / Piano Concerto 2Six Irish Rhapsodies / Piano Concerto 2
(2004/01/20)
Vernon Handley (Conductor), Ulster Orchestra, Margaret Fingerhut (piano)

試聴する(米amazon)




Charles Villiers Stanford - Piano Concerto No. 2 in C Minor Op. 126 (1911)
Margaret Fingerhut. Conducted by Vernon Handley with the Ulster Orchestra.



第1楽章 Allegro moderato
冒頭からピアノソロの力強いアルペジオのカスケード。それを背景に、ホルンが勇壮でドラマティックなソロ。
ピアノはアルペジオや和音を多用しているので、華麗でダイナミック。
たとえて言うなら、シューマン、ブラームスにラフマニノフをブレンドした感じ。流麗なところはシューマンやラフマニノフ、勇壮でダイナミックなところはブラームスとラフマニノフ風。
緩徐部分はべタベタした叙情感はなく、平和的な穏やさ、夢見るように繊細な詩情がこぼれるようでとても綺麗。
ピアノが華やかに動き回るわりには、交響曲の一部をピアノパートが弾いているようなシンフォニックな感じがする。

冒頭、緩徐部分、終盤で頻繁に聴こえてくるモチーフがあり、どこかで聴いたことがある旋律。何の曲だったかなかなか思い出せない..。リストか、それともラフマニノフのピアノコンチェルト?

第2楽章 Adagio molto - Piu mosso [quasi andante]
やや瞑想的で夢見るようなふんわりとした柔らかなムード。とってもブラームス風。
線の細い繊細さはなく、穏やかで落ち着いたタッチで、詩情豊か。
第1楽章で度々出てくる旋律(思い出せないあの旋律)がここでも何度も使われている。
ピアノが弾くしっとりと潤いのある響きのアルペジオや軽やかなトリルがとてもロマンティック。

第3楽章 Allegro molto - Largamente e sostenuto
どこかしらラフマニノフのピアノ協奏曲を連想するけれど、ロシア的憂愁のような濃い叙情感はなくて、華やかで爽やかな開放感のある曲。
緩徐部分は、夢見るように優しい雰囲気の旋律でやっぱりブラームス風。その後、覚醒したような勇壮華麗な曲想に。
この楽章も和音とアルペジオが多用され、ピアノが鍵盤上を縦横無尽に動き回って、とってもピアニスティックで華麗。

3つの楽章の中では、華麗で勇壮な曲想の第1楽章が一番印象的。第2楽章もブラームス風な夢見るような詩情がとても綺麗。
旋律はロマンティックで情感豊かで、聴けばどの曲かすぐに思い出すくらいに独特のものはあるけれど、シューマン、ブラームス、ラフマニノフほどに、一度聴けば忘れないくらいの強いインパクトはない。
イギリスの作曲家のピアノ協奏曲で一番印象的だったのは、ブリテンの《左手のピアノと 管弦楽のための主題と変奏~ディヴァージョンズ》。
その他にもイギリスのピアノ協奏曲はいろいろと聴いたけれど、それと同じくらいに記憶に残っている曲がなかったので、少なくともスタンフォードのピアノ協奏曲第2番は、ブリテンの《ディヴァージョンズ》に次いで印象的だった。



tag : スタンフォード

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アラウ ~ ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第5番
ベートーヴェンの初期の1ケタの作品番号のピアノ・ソナタ群のなかで、有名なのは第8番の《悲愴ソナタ》。
第9番はピアノ学習用の曲で有名だし、第1番・第4番・第7番は比較的録音も多い。
逆に、演奏機会があまり多くはないと思うのが、第2番、第5番、第6番。
第2番と第6番は長調の明るいタッチの曲で凄く好きというわけではないけれど、陽気で楽しげなベートーヴェンは聴いていて楽しい。
第5番は、第1番や第8番のように、激しい感情が渦巻く短調の曲で、いかにもベートーヴェンらしいと思わせる曲。

この曲の第3楽章、どこかで聴いたことがあると思ったら、映画『敬愛なるベートーヴェン』で使われていたたのを思い出した。(この映画のタイトルは日本語がおかしい。”親愛なる”か”敬愛する”が正しいと思うけど)
この映画では、3大ソナタとか7大ソナタではなくて、あまり一般的に知られていない《ディアベッリ変奏曲》の第29変奏と《ピアノ・ソナタ第32番》の第2楽章が使われていた。《交響曲第9番》と《大フーガ》がテーマになっていたので、あえて晩年のピアノ作品から選んだのかな。(サントラの曲目リスト

Complete Piano Sonatas & ConcertosComplete Piano Sonatas & Concertos
(1999/11/09)
Claudio Arrau

試聴する(米国amazon)


ピアノ・ソナタ第5番ハ短調 / Sonate für Klavier Nr.5 c-Moll Op.10-1

4楽章構成だった第4番とは違って、第5番は3楽章構成。
解説にある”明快な形式、和声を多用しないくっきりとした音像、めりはりの効いた速度設定”どおり、とても見通しの良い曲。無駄なくシンプルで、明と暗/緊張と弛緩のコントラストが明快で鮮やか。


第1楽章 Satz Allegro molto e con brio
ハ短調の激しく暗い情熱を感じさせる第1楽章の冒頭主題は、重厚な和音とシャープに駆け上がる符点のリズムが対照的。すぐに長調の明るく伸びやかな第2主題に変わるが、どことなく憂いが漂い、短調が忍び込んでいたりして、全体的に陰翳が濃い。

Arrau - Beethoven sonata no.5 op.10 no.1 (I) - Allegro molto e con brio


第2楽章 Satz Adagio molto
初期のピアノ・ソナタの第2楽章は、第3番や第7番を聴いているとベートーヴェンにしてはかなり叙情的なものが多い気がする。この曲は穏やかで平和的な雰囲気が、ハイドン時代のピアノ・ソナタを思い出させるところがある。

第3楽章 Satz Prestissimo
不安感や焦燥感のようなものを感じさせる短調の冒頭主題。
嵐の前の予感みたいな雰囲気がするので、第1楽章に似て暗い曲想なのかと思ったら、高音部から一気に下行きしていく細かいパッセージが軽快で、どことなくユーモラス。
すぐに転調してゆったりしたテンポの明るい雰囲気の第2主題。細かいパッセージと分厚い和音が入り混じって、力強く。
ラストは冒頭主題が静かに現れて力を抜いたタッチ。これで終わり?と思わず思ったくらいにあっさり。

レーゼルはかなり速いテンポで、一気に駆け抜けるようなタッチ。全体的に短調の部分が多く、明暗・緩急のコントラストも強い曲だけれど、暗さや翳りはやや薄い。
アラウの旧盤を聴くと、テンポが遅いせいもあってか、陰翳が強くなり、長調の部分であっても、漠然とした不安感が底流に流れている印象。

Arrau - Beethoven sonata no.5 op.10 no.1 (III) - Finale (Prestissimo)





tag : ベートーヴェン アラウ

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酒粕活用レシピ
お正月用に買っておいた酒粕(500gパック)がまだずいぶん残っている。
酒粕は冷凍保存できるので、半分は冷凍庫、残りは冷蔵庫。

冷蔵している酒粕を甘酒と数の子の粕漬け用に使っているけれど、他に使うとすると粕汁がポピュラー。
パッケージに書いてあったのは、そのまま薄くスライスしてコンロで焼いて、砂糖をまぶすおやつ。
まだいろいろ使えそうな気がするので、レシピを探して見ると、面白い活用法も発見。

 酒粕レシピ [大関㈱]
ぜんざい、クリームシチュー、パン、ココアケーキ(バター大量でかなりコッテリ)。
ぜんざいは、お餅のかわりに、白玉粉に酒粕を混ぜたお団子を入れたもの。

 甘酒 [農家のレシピ/Farmer's KEIKO農家の台所]
甘酒は本来は麹で作るものでこれはとっても美味しい。お家で作るなら、酒粕を使った方が簡単。
甘酒に凝るなら、「酒粕で作る甘酒レシピ」[アウルネット]がとても詳しい

 甘酒ぜんざい [Cookpad]
甘酒&ぜんざい&ミルクまたは豆乳で、いつもと違うぜんざい。

 粕漬け
粕漬けの基本作り方・レシピ[All About]:オーソドックス(らしい)粕漬けレシピが載っている。
プロに学ぶ「美味しい粕漬け」の作り方[うなぎ情報館]:粕漬けというのはかなりアバウトというか、いかようにも漬けて良いらしい。

おせちで余った薄しょうゆ味の数の子を、みりんを混ぜた酒粕に直接漬けてみると、簡単に数の子の粕漬けが完成。
ガーゼは使っていないので、酒粕のついた数の子をそのまま食べると濃厚な味で、お漬物代わりにも。
珍味の"数の子わさび"がお店で売っているけれど、添加物がいろいろ入っている。手作りなら、簡単で無添加。


 パン・焼き菓子 [Cookpad]
酒粕食パン
酒粕ベーグル
酒粕スコーン
酒粕クラッカー
酒粕の風味がどことなくチーズ味。酒粕クラッカーは、しっかり焼き色をつけた方がカリカリして美味しい。(酒粕が入っているせいか、翌日には湿気ていた)


 NHKためしてガッテン「日本伝統あの発酵食で 驚きコレステ減効果!」(2010年11月24日放送)
酒粕を利用したレシピとして、珍しいのが、「酒かすチュウニャン」
中国料理(四川料理)で使われている調味料が酒醸(チュウニャン)。
本来は、もち米と麹、酒で作るが、家庭でも簡単に作れるように酒粕を使っている。

番組で紹介しているのは、チュウニャンの作り方と活用レシピ(カンタンめんとデザート)。
酒粕をそのまま利用するレシピは、酒かすクラッカー、酒かすフルーツヨーグルト、酒かすホワイトソースパスタ。

番組内容&全レシピ(PDF)ダウンロード

tag : おせち

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大西順子トリオ ~ Blue Skies(live at the Village Vanguard)
2000年に引退した(PR用プロフィールでは「休養宣言」ということになっているらしいけど)ジャズピアニストの大西順子が、数年前にカムバック。
ジャズハウスのライブ情報で名前を見かけてから、ときどきライブで演奏をしているという話を聞いていた。
※公式ホームページを見ると、なぜか今月のライブが中止になって、今はライブの予定を入れていないらしい。どうしたんでしょう?

カムバック後の初アルバム『楽興の時』、第2作『バロック』と、2枚のアルバムがリリースされて、本格的に復帰。
2作とも評判はかなり良さそうだけれど、試聴しても、プロモーションビデオを見ても、どうもピピっと来るものがないので、未聴のまま。
カムバック後のタッチは、昔のような力感と骨太さが薄くなり、逆にパッセージワークが流麗になって洗練された印象を受けるので、昔の演奏に通じるものを期待してしまうと、ちょっと違うような...と思えるせいかも。

以前の録音なら、好きな曲を聴くとゾクゾクっとくるものがあり、たとえ好みとは違う曲でも彼女のピアノ演奏はどれも楽しめた。
マルカート気味の太く鍵盤に吸い付くようなタッチが独特で、どことなくクラシカルな雰囲気が漂う旋律や、右手で鍵盤上を縦横無尽のごとく動き回る弾きぶりがとっても颯爽。
音色は多彩とは言えないけれど、右手だけで、または両手のユニゾンで、ゴリゴリと弾いていくシンプルな旋律&リズム感(時間感覚という人もいる)と、和音を使ったときの重層的な力強さがとても格好良くて。
特に、時々入ってくる左手低音の和音の太く弾力のある響きが凄くダンディな感じ。
好きなバイラーク、メルドー、小曽根とは違うタイプだけれど、なぜか私の波長にぴったり。
気に入ったオリジナル曲やアレンジした旋律は印象的なものが多くて、記憶にすっかり刷り込まれて、すぐに思い出せてしまう。

一番好きで、よく聴いていたのが『ビレッジ・バンガードの大西順子』の《HOW LONG HAS THIS BEEN GOIN' ON》と、『セルフ・ポートレイト』(ベスト盤)の《EulogiaⅡ》

彼女のアルバムの中で一番好きな曲が多いのが、このライブ盤『ビレッジ・バンガードの大西順子』。
どの曲もピアノの存在感が強くて、アレンジも個性的で、何度聴いても楽しいアルバム。
ビレッジ・バンガードのライブ録音は、その後もう1枚リリースされているけれど、この最初のライブ録音の方がずっと印象的。

《HOW LONG HAS THIS BEEN GOIN' ON》は、どうやらスタンダート曲らしい。
旋律はスタンダート風なわかりやすさはあるけれど、原曲を探して聴いてみても、あまり似たような曲とは思えないけど。

ビレッジ・バンガードの大西順子ビレッジ・バンガードの大西順子
(1994/09/21)
大西順子トリオ

試聴する




引退(休養宣言)前のベスト盤なので、初めてアルバムをどれか1枚聴くならこれが良いかも。
《EulogiaⅡ》だけが、新バージョン。『Crusin’』には《Eulogia》が収録されているけれど、演奏時間も演奏内容もいろいろ違っている。
『セルフ・ポートレイト』の《EulogiaⅡ》の方が演奏時間が長く、冒頭のピアノソロが綺麗。それにピアノの切れと勢いも良くて、いつも聴くのは《EulogiaⅡ》。

セルフ・ポートレイトセルフ・ポートレイト
(1998/04/29)
大西順子

試聴する



《Blue Skies》は、ビレッジ・バンガードのライブ録音に収録されている。
アーヴィング・バーリンの有名な曲で1926年作曲、1946年に同名の映画『ブルースカイ』が公開され、Count BasieとBenny Goodmanの2つのバージョンがともにトップチャート入りしたという。[英文Wikipediaの情報]

この曲は、映画『STAR TREK: NEMESIS』で使われていて知ったもの。(ラストで死んでしまったアンドロイドのデータが持っていた"何か"が、機能的に劣るプロトタイプのデータの中に残っているのではないかという、希望の象徴として使われていた。)

歌自体が凄く好きというわけではないけれど、このライブ録音の《Blue Skies》はとっても好き。
いつものような骨太ゴリゴリといったピアノではなく、軽やかなタッチで明るく爽やかな"もの哀しさ"が漂っているところが何ともいえない良い感じ。

Junko Onishi Trio - Blue Skies





ドイツ耳鳴協会(Deutsche Tinnitus-Liga e.V. :DTL)の概要 (2) ウェブサイトの主要コンテンツ
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ドイツ耳鳴協会ウェブサイトの主なコンテンツ[ドイツ語版]
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耳鳴に関する知識・情報
  - 耳鳴以外に、難聴聴覚過敏メニエール病聴覚全般に関する情報も記載。
  - リーフレット(12種類):耳鳴情報、急性耳鳴りと難聴、聴覚過敏、メニエール病、TRT療法、難聴、子供と若者の耳鳴り、ストレスを克服すること、深刻な障害、騒音、頚椎と耳鳴り、顎関節と耳鳴り。ホームページから送付申込みできる。

オンラインショップ
  - 書籍、オーディオブック
  - 耳栓
  - 音響機器(ピロー・スピーカー、サウンドセラピー機器)
  - 治療・訓練用CD
  - CD(ヒーリング用など)
  - DTL発行書籍

耳鳴音のサンプル
  - サンプル音ファイル(MP3)

Tinni.Net(協会会員向けサイト)
  - 医師などの専門家向けアンケート表研究プロジェクト情報耳鳴音サンプルファイル
  - 入会説明・申込方法
  - 用語集
  - 欧州耳鳴協会連合サイト(リンク集)

耳鳴テスト(Der Tinnitus-Test)
  - 問診表:12項目の質問。日本で使われている"耳鳴の苦痛度(THI:Tinnitus Handicap Inventory)"より質問数が少ない。
  - 回答すると、耳鳴りの重篤度(4段階)と治療法のアドバイスが表示される。
  - 重篤度:I(軽度:leichtgradig)II(中度:mittelgradig)III(重度:Schweregrad)IV(かなり重度:schwerstgradig)

Tinnitus - Forum
  - 協会機関誌の紹介、サンプルファイルダウンロード(目次記事)、

セルフヘルプ
  - セルフヘルプグループ検索
  - セルフヘルプのためのTipps

Tinnitus@Forum(オンラインフォーラム)

Tinnitus-Café(Klönen, chatten, informieren)
  - chat room(チャットルーム)

テキストアーカイブ(協会発行論文など)

用語集


ドイツ耳鳴協会(Deutsche Tinnitus-Liga e.V. :DTL)の概要 (1)
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耳鳴り治療をめぐるドイツ国内の概況
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患者数
ドイツ国内で耳鳴りでひどく苦しんでいる人は100万人以上。
慢性耳鳴患者は、毎年27万人増加している。

急性耳鳴の治療
経験上、耳鳴りから回復するには、できる限り早く治療を始めれば始めるほど良い。
耳鳴り発症時の適切な治療法は、突破性難聴と同じ。
急性耳鳴りに対する第一の治療は、内耳への酸素供給を改善するため、点滴(コーチゾンとリドカインの両方、または、どちらか一方と一緒に血漿増量剤(plasma expander)を使用)により、血行を刺激すること。
この期間中、患者を私生活・仕事両面のストレスから遠ざけるために、入院治療を推奨。

今までのところ、治療成功が血行循環刺激によるものか、平穏・静寂な環境と医者のエンパシー(共感)によるものか、証明できていない。
もし、この治療が失敗した場合は、騒音性難聴の初期治療に使われる気圧室(barometric chamber)での治療が効果的な場合がある。
応急治療と同時に、耳鳴りの考えられうる原因を特定するために複数の診断方法も実施される。(頚椎、顎関節のチェックも含む)

一連の治療の費用は、国の健康保険制度および民間保険によってカバーされる。
ただし、気圧室内での酸素療法は保険対象外。

慢性耳鳴の治療
ドイツでは、耳鳴発症後、3~6ヶ月間が治癒または病状緩和が可能な期間であり、時間が経過するにつれて、その可能性も低くなっていき、その後、耳鳴は慢性化すると考えられている。
慢性耳鳴の治療法は、主に精神身体的なものとなる。
現在、30以上のクリニックがあり、合計して年間8,000人の耳鳴患者を治療することができる。(少なくとも3週間の入院治療(stationary treatment))

国の健康保険制度で治療費用はカバーされる。(DTLがほぼ10年間に及ぶ活動の成果で実現した)
現在では、クリニックとDTLは相互に情報・相談を行う密接な関係にある。

一方、TRT療法は約75のTRTチームによって実施されている。
しばしば特別なコンセプトを持った神経生理学ベースの治療手法と捉えられている。

耳鳴りに対するマスカーの適用は、英国とは違って、ドイツでは全く重要視されていない。
専門家は、マスカー装置を処方・提供するのを非常に躊躇している。
DTLの長期間にわたる努力の末、保険者がマスキングを療法として認め、約400ユーロを上限として支給するようになった。支給条件は、耳鼻咽喉科医による処方であり、少なくとも4週間以上の使用(試用)後、原則的に効果があったと証明された場合のみ。これはTRTマスキングにも適用される。

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ドイツ耳鳴協会(Deutsche Tinnitus-Liga e.V. :DTL)の組織と活動
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組織
ドイツ国内で唯一の耳鳴関係の協会であり、会員数は世界の耳鳴関連組織の中でも最多。
本部:ヴッパータール
スタッフ数:13
活動の目的:研究・開発、専門家への指導、社会政治学的な改善などの促進
会員数:現在約22,000名。うち1,200名は専門家(科学者、医師・精神科医、聴覚訓練士、補聴器販売者、クリニック。
(参考)米国耳鳴協会の会員数は2万人。

財政
財源:収入の95%超までが、協会の独立性を保障する会費と寄付。
公的助成:セミナー開催に対してのみ受入。
年間会費:耳鳴患者45ユーロ、専門家は75ユーロ。 (会員の経済状況により減額可能)

広報活動
機関誌"Tinnitus-Forum":季刊で年間4冊発行。部数27,000部。会員や提携機関、3,000人の科学者・医師・その他の専門家へ配布。
新聞とTV・ラジオ放送局へ送られた新聞発表や論評などに対して、月間3,000件の質問が電話・メール・手紙で寄せられる。質問については、少なくとも国際的にみて標準的な情報を掲載したパンフレットで回答している。
質問者の約10~15%は、その後入会申し込みをしている。

サポート活動
電話ヘルプライン:1日8時間、本部事務所に繋がっている。
セルフ・ヘルプグループ:DTLは地域のセルフ・ヘルプグループ-特に、会員が組織したグループや、地域の会員に対するサポートを提供しているグループ-を育成・サポート。この種のグループの数は150以上。
"friendly ears":全国規模で120人の会員がボランティアで行っている活動。耳鳴りに苦しむ人たちの問題を電話で聞く。
その他の活動:耳鳴りに加えて、メニエール病患者(2,000人以上の会員)に対するケアを強化中。

他機関との連携
数年来、DTLは”German association for hard of hearing (DSB = Deutscher Schwerhorigenbund)”や他の国内組織と活動上密接な協力関係にある。
さらに、世界の耳鳴関連組織とも良好な関係にある。現在、ポーランドなどの東欧の医師・専門家と協力関係を築こうと努力している。
多年に渡って、耳鳴り予防がDTLの重要な目的となっており、その活動の成果として、ドイツ連邦軍は10年前に効果的な防音保護具を導入した。

協会を取り巻く現在の状況
1986年に登録非営利法人(registered charity)としてDTLが設立されて以降、ドイツ国内の耳鳴りに関する状況は、満足というには依然として程遠いが、良い方向へと劇的に変化している。
DTLの活動により、"Tinnitus"という言葉がよく知られるようになり、ドイツ人の4人に1人がその言葉と意味を知っている。

耳鳴りに対する社会の関心や気付きが増加するにつれて、支援組織の活動量が急増している。
患者たちは以前よりも人間的に対応されるようになっている。

近年、耳鳴に関する教科書と約20冊のセルフヘルプ本が発刊されている。
なかでも、 Richard Hallamの"Living with Tinnitus: Dealing with the Ringing in Your Ears"のドイツ語翻訳版はこの分野のベストセラーとなった。
その間、TV、ラジオ、新聞、雑誌といったメディアは、より頻繁に、より適切な方法で耳鳴りに関する話題を登場させるようになった。
しかし、依然として、ドイツの耳鼻咽喉科の医師たちは、耳鳴患者をどうやって治療するべきかわからないまま、患者に"There is no help - you have to live with it"と言い続けている。

近年の活動トピックス
- 学校への奨励活動を実施;生徒に”聞く”ことに関する正しいルール(discipline)や衛生について啓蒙。
- 急性状態での耳鳴り治療の促進・要望。
- 集中的かつ複数の医療分野にまたがった診断と、耳鳴が慢性化した当初1年間に系統的(または標準化された)治療やリハビリ(rehabilitation)を実施することを促進。
- 慢性耳鳴においてほとんど無駄な治療を行う代りに、リハビリ(rehabilitation)を促進。
- 代替治療法の評価;効果的だと証明された(しかし未承認の)代替治療法を標準的な耳鳴り治療に組み込む。
- 医師・科学者に対する奨励:研究、教育、指導などの枠組みの中で、より多くのことを行うこと。

以上

 ドイツ耳鳴協会の概要 (2) ウェブサイトの主要コンテンツ 

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利用上の注意
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本記事は、ドイツ耳鳴協会のウェブサイトの英文を要約したものです。
正確な内容は原文で確認してください。



ポール・ジェイコブス ~ シェーンベルク/ピアノ作品集
お世辞にも聴きやすいとはいえないシェーンベルクのピアノ作品。
それでも、何人ものピアニストの録音をずっと聴いていると、好きかどうかは別として、不思議と耳も慣れてきて、普通に聴けるようにはなる。

さすがに21世紀の代表的なピアノ作品だけあって、録音は多い。
グールド、ポリーニ、内田光子、シェーン・ベルク、ピーター・ヒル、それに、シェーンベルクと懇意だったエドゥアルト・シュトイアーマン、このジェイコブスなど、この他にも多数。

鋭いリズム感と速いテンポで軽快なのがグールド。粘りのないタッチで重たさがなく、聴きやすさと面白さではグールドが一番。
情念漂うのは内田光子。色彩感が非常に豊かで強弱のコントラストが強く饒舌。弱音部は繊細で感情が沈みこむような内省的な雰囲気がする。
ジェイコブスも感情的なものが強く表現されているけれど、一音一音の発音が明瞭で音が淀まず明解。線が太くて声部ごとの線が明解に描かれ、感情が内面に篭もることなく、外面へ噴出していく。感情豊かでありつつ明晰。
ポリーニは音に強弱がついて並んではいるけれど、叙情感が薄くのっぺりと無機的な感じがするので、どうもあまり好きにはなれない。
穏やかな叙情感と透明感があるのはヒル。弱音部分はやや沈み込むような暗さと静けさがある。これを聴いたときは、シェーンベルクはなんて叙情的な音楽だろうと思ったもの。
シュトイアーマンは叙情感をやや抑えて理知的な印象。ちょっと重たいけれど、理性と感情のバランスが一番良い気がする。彼のOp.23の録音を聴いていると、なぜかベルクのピアノソナタがデジャヴのように浮かんで来る。
個人的な好みとしては、グールド、ジェコブスが面白くて聴きやすい。Op.23はシュトイアーマンで。

ジェイコブスは、メインのレパートリーが現代音楽。
戦後、欧州へ渡って、現代音楽を中心に演奏活動をしていた。
その後、米国へ帰国してからも現代音楽のソロや室内楽演奏を中心に、シェーンベルク、ストラヴィンスキー、ジェフスキ、ドビュッシーなどの現代曲や、バッハ=ブゾーニの編曲ものとオリジナル作品を録音している。
なぜかチェンバロ演奏もできる人なので、キャリアはかなりユニーク。
ベートーヴェンのライブ録音もあるけれど、これはすこぶる速いテンポでかなり特異なタッチの演奏。
彼は、1961年からニューヨークフィルハーモニーの公式ピアニストに指名され、1974年からは公式チェンバロ奏者にもなっていたので、米国ではよく知られていたらしい。

Schoenberg: Piano MusicSchoenberg: Piano Music
(2002/08/04)
Paul Jacobs

試聴する(英amazon/NONESUCHの原盤へリンク)

【収録曲】
 《3つのピアノ小品 Op.11》 (1909,1924)
 《6つのピアノ小品 Op.19》 (1911)
 《5つのピアノ曲 Op.23》 (1920-23)
 《ピアノ組曲 Op.25》 (1921-23)
 《ピアノ曲 Op.33A/B》 (1928/31)
※各曲の内容については、過去記事の「ピーター・ヒル ~ シェーンベルク/ピアノ曲集」に書いています。


ジェイコブスとグールドのどちらの演奏を聴いても、シェーンベルクが"無機的"だと感じることはないし、無調でモチーフがメロディアスでない現代音楽であっても、多彩な表情といろいろな感情の起伏があることがよくわかる。
シェーンベルクのピアノ作品は、聴き慣れてしまえば、あちこちに飛び跳ねて散乱したような音の配列が、実はこんな表情や情感を持っていたのだという発見があるし、ロマン派のロマンティズムとは違った新鮮な叙情感が意外に面白く思えてくる。

ジェイコブスの演奏で《ピアノ組曲 Op.25》
Arnold Schoenberg: Suite per pianoforte op.25 (1921)



グールドのバッハは好きではないので滅多に聴かないけれど、彼の現代もの-ベルク、ヒンデミット、プロコフィエフ、それにこのシェーンベルクは、どれも奇抜さがなくて至極まっとうな演奏なので、構えることなくすんなり聴ける。
グールドファンでは全くないので、バッハを聴くときはマイナスのバイアスが多分かかっているけれど、現代ものを聴くときはプラス・マイナスのバイアスは両方ともゼロ。
演奏自体が素晴らしく良いと思うし、自然に好きだと言えるので、グールドが弾く現代ものは誰にでもお勧め。

グールドの演奏で《ピアノ組曲 Op.25》
Arnold Schoenberg - Suite for Piano, I-II



<関連記事>
ピーター・ヒル~シェーンベルク/ピアノ曲集


tag : シェーンベルク ジェイコブス

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ポール・ジェイコブス ~ バッハ=ブゾーニ編曲/コラール前奏曲《In dir ist Freude》
お正月の晴れやかさにとっても似合うバッハ=ブゾーニ編曲のコラール前奏曲《In dir ist Freude(汝にこそわが喜びあり)》 BWV 615。
一番好きなレーゼルの録音は、それほどテンポを上げずに重音のタッチが柔らかいので、重音で連続するスケールや分散和音もばたつかずにレガートで滑らか。

バッハ=ブゾーニのコラール前奏曲を聴くときは、たいていレーゼルかポール・ジェイコブス(オルガニストではない方の)。
Youtubeにレーゼルの録音がないので、今日はジェイコブスで。

レーゼルよりもずっと速いテンポで、この曲の数ある演奏の中でも、たぶん最速レベル。
重音続きなので、時々テンポが落ちるピアニストが結構多いのに、ジェイコブスは最後までインテンポで一気に弾きこんでいるところが鮮やか。
この速いテンポでも、チェンバロ奏者でもあるジェイコブスは声部の分離が明瞭。
ペダルも短く浅く入れているようで、和声も濁らずクリア。時々、ペダルを長めに入れてオルガン的な重層感を出している。
スタッカート的な力強いタッチは少しゴツゴツしているけれど、軽快で勢い良く、弾けるような躍動感がとっても気持ち良く。

Bach / Busoni / Paul Jacobs, 1979: In dir ist Freude, BWV 615 (composed 1713; transcribed 1898)



こちらはバッハ原曲のオルガン演奏。オルガニストはトン・コープマン。
J. S. Bach - Chorale-Prelude "In dir ist Freude" BWV 615




tag : バッハ ブゾーニ ジェイコブス

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アラウ ~ ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第4番(アムネスティ・コンサートのライブ映像)
年末はあれこれと忙しくて音楽を聴く暇もなく、ようやくゆっくり聴く余裕ができたのが元旦の深夜。
気分的にはまだ大晦日なのに、日付は元旦。大晦日&元旦のどちらの日でも聴きたくなる曲というと、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番。
「皇帝」ではなく、女王様のような気品と美しさがあるので、こういう節目の時に聴くには相応しいと思うので。

誰のピアノで聴くかというのがちょっと悩ましいところ。
といっても、この曲ならここぞという時には、アラウかカッチェンのどちらか。
今はスローなテンポでゆっくり聴きたい気分なので、アラウのベートーヴェンで。
アラウの第4番の録音は、ライブ録音・映像も含めて6種類。さらにチリの演奏会のライブ映像もある。探せば他にもまだあるかも。
共演した指揮者を演奏年代順にあげていくと、クレンペラー(ライブ)、ガリエラ、ハイティンク、バーンスタイン(ライブ)、ディヴィス、ムーティ(ライブ)。
私がよく聴くのは、バーンスタイン、ガリエラ、ディヴィスが指揮している盤。

Youtubeを探してみると、バーンスタインと共演したアムネスティコンサートのライブ映像が登録されている。
ライブ録音はLPとCDでリリースされているけれど、ライブ映像が残っているのは知らなかったので、びっくり。
この頃のバーンスタインは、おひげを生やしている。いつもとイメージが違っていて面白いし、こっちの方が好き。
アラウとバーンスタインの共演はとても珍しい。
実はふたりは、アラウにピアノを師事していたバーンスタイン夫人を通じた長年の友人。(以前の記事でそのあたりのことについてもちょっと書いています。)

1976年のコンサートなので、アラウが73歳頃の演奏。
時々ミスタッチがあるけれど、ゆったりとしたテンポでも、後年のPhilips盤のような技巧的な衰えは感じない。
アラウの第4番を聴いていると、どこかしら哀しそうな翳りのある微笑みを湛えた聖母の顔が思い浮かんでくる。
深い慈愛のもつ優しさと穏やかな静けさが漂っているかのような、しっとりした叙情感と品の良さは晩年のアラウならでは。


"The Amnesty International Concert"
Arrau Bernstein Beethoven Piano Concerto No. 4
Bavarian Broadcast Symphony Orchestra,1976/10/17,ミュンヘンにて




《関連記事》
アラウ&バーンスタイン指揮バイエルン放送響 ~ ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第4番


tag : ベートーヴェン アラウ バーンスタイン

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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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