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ブレンデル ~ シューベルト/即興曲 Op.90/D.899 第3番 変ト長調
苦手のシューベルトのなかで、例外的に好きなのは、《3つの小品》の第1曲、《ピアノ・ソナタ第19番》、それと、《即興曲》D899(Op.90)の第3番変ト長調。
シューベルトの即興曲集は2つあり、全部で8曲。このD899の第3番は、即興曲のなかでもとりわけ美しい。

ブレンデルの即興曲はとても柔らかい音色と滑らかな旋律が流麗でとても綺麗。
右手の高音部の主旋律は澄んだ響きでくっきりと浮かび上がり、ときおり静かに盛り上がっていくようなクレッシェンドがちょっとドラマティック。
神経質的な繊細さや情念過多なところがないので、自然に曲のなかに気持ちが溶け込んでしまうような感覚がする。
いつもは冗長気味に思えてしまうシューベルトでも、ブレンデルのピアノで聴くこの曲は、何度聴いても美しくて聴き飽きることがなく。




tag : シューベルト ブレンデル

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天然酵母「パネトーネマザー」
天然酵母パネトーネマザー(粉末)は、生種おこしをすることなく、ドライイーストと同じような感覚で手軽に使えるところがとっても便利。
イタリアで400年間も使われ続けてきた「パネトーネ酵母」。
これを粉末にして酵母(ドライイースト)を加えた製品が日本で使われている「パネトーネマザー」。
メーカーの酵母工業のウェブサイト<ぱねぱんクラブ>には、「パネトーネマザー粉末(製パン用)」に関する詳しい説明やレシピ集などが掲載されている。
「酵母の説明」に、パネトーネマザー粉末の特徴が載っている。
パネトーネ酵母を100%使っているわけではなく、ドライイーストが20%添加されている、
パネトーネマザーを使うと、ドライイーストのレシピに比べて吸水が若干(3~5%ほど)増える。そういえば、水分を10ccくらいは増やしたような気がする。その分、膨らみがよくなりふんわりとした焼き上がりになる。


ユーザーが公開しているパネトーネマザーのホームベーカリー用レシピサイトがいくつか。

パネトーネマザーでつくるパンのレシピ[調理家電のレシピィ]

パネトーネマザーの食パンレシピ[*I LOVE BREAD* ~ホームベーカリーでドライイーストから自家製酵母でパンを焼く 卵を使わないパンレシピ集~]


これは面白いデータ。パネトーネマザーで焼いた食パンは、ドライイーストの食パンに比べて、なかなかカビが生えなかったという。
「ドライイーストとパネトーネマザー食パンの劣化の違い実験」[*I LOVE BREAD*、以下同]

また、パネトーネマザーを使って比較実験ではないけれど、バターの含有量の違いが焼き上がりにどう影響するのか、試した結果が載っている。
この2つの比較データでは、やはりバターの量が多いほど、キメが細かくなり口どけもよく、日持ちが良いという傾向。
「バターの配合の違いで見る食パンの出来具合の違いの実験」
「バターの配合の違いで見る食パンの劣化の違い実験」


面白いレシピは、パネトーネマザーの使用量を通常の1/3くらいに減らして、天然酵母で焼くという方法。
パネトーネマザーでも、量を減らせば上手く長時間発酵してちゃんと焼きあがるというレシピ。
4gのパネトーネマザーでホームベーカリーおまかせ食パン[*~ミルクの無添加パン工房~*]
4gのパネトーネマザーでミルクココア食パン[*~ミルクの無添加パン工房~*]

ドライイーストの場合は、小さじ1/4に減らして天然酵母コースで焼く方法がある。
これは、パン教室を主宰している高橋雅子さんがレシピブック『少しのイーストで ホームベーカリー 天然酵母コースでゆっくり発酵』でいろんなレシピを公開している。

tag : ホームベーカリー

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耳鳴り治療薬情報(1)ネラメキサン ③海外治験結果(第3フェーズ)に関する情報
耳鳴治療薬Neramexane(ネラメキサン)の海外治験(第3フェーズ)は、2件のうち1件は研究が2011年6月に完了し、もう1件は2011年12月に研究終了・打ち切りとなった模様。

第3フェーズの治験に関する情報が、ウェブ上にいくつか掲載されています。

最も詳しい情報は、ドイツの医師向け日刊紙"ARZTE ZEITUNG"のウェブサイト"Ärzte Zeitung Online"の記事で、治験結果に関するレポートと、メルツ社のManaging DirectorであるDr.Martin Zugelの話が掲載されています。
記事のレポートによれば、"第3フェーズの治験結果は、当局の(新薬)承認を得るには不充分なものだった"ということです。
さらに、Dr.Zugelが治験が失敗に終わった理由を述べています。

ロイターのドイツサイトでも、"ネラメキサンの治験結果は期待したものではなかった"、とレポートされています。

また、耳鳴り関係の海外サイトの複数のフォーラムで、"Ärzte Zeitung Online"の情報が投稿されています。フォーラム参加者は、「ネラメキサンの治験は失敗に終わった」と理解しています。

なお、メルツ社は、今回の第3フェーズの治験結果に関する論文やニュースリリースを公式にはまだ発表していないようです。

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"Merz steckt Neramexane-Schlappe gelassen weg"(Ärzte Zeitung Onlineの記事)
(英文タイトル:Merz-infected Neramexane defeat left out)[2011.11.23]
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メルツ社は、耳鳴治療に有望だと注目されていた製剤ネラメキサンから、ドラマを作り出すことに失敗した。
もしネラメキサンが成功していたら、さらに売上・利益目標が上乗せされていただろうと、Managing DirectorのDr. Martin Zugelは語った。
第3フェーズの3つの国際治験の結果、メルツ社の研究者たちは、試験データが新薬承認には充分なものではないという結論に達した。その間、メルツ社はネラメキサンに関わる活動を停止している。

しかし、日本の開発パートナーであるキョーリンは、メルツ社の治験結果を踏まえて、フェーズⅡの治験を実施中である。
メルツ社はこの治験結果が出てくるのを待ち、その後で最終的にネラメキサンに関して決定を下すつもりである。

フェーズⅢの治験が失敗した理由:
Dr.Martin Zugelによれば、治験が失敗した理由は以下の通り。
1)3つの治験における被験者数が平均300人で、おそらく少なすぎた。
2)プラセボ効果の高さを過小評価していた。プラセボ効果は耳鳴(治療効果)の約40%に達しており(der beim Tinnitus etwa 40 Prozent betrage)、効果の評価を著しく複雑にしていた。
3)耳鳴りの重篤度に関連する主観的要素。耳鳴りを煩わしいと認識していない患者もいれば、窓から飛び降りられるならそうしたいと思う患者もいる。これらの患者を個々に特定してフィルターをかける手法が見つかっていない。"我々は診断方法をさらに向上させなければならない"。これはキョーリンが行っている現在の治験にも言えることだろう。

(以上は、記事の抜粋・要約です)

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"Expansion ins Ausland zahlt sich fur Pharmagruppe Merz aus"(Reuter Deutschlandの記事)[2011.11.23]
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メルツ社の業績レポート記事のなかで、ネラメキサンに言及しています。

"Allerdings gab es zuletzt auch Ruckschlage. So brachten Medikamententests fur das Tinitus-Praparat Neramexane nicht die erhofften Resultate. "

「しかし、結局後退したものも複数あった。耳鳴治療用製剤ネラメキサンの治験は、期待した結果を生まなかった。」


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海外の耳鳴りフォーラムの投稿記事
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tinnitus research initiativeのForum:2012/2/1の投稿

tinnitussupporのForum:2011/11/20の投稿

ドイツ人のネイティブスピーカーが、"Ärzte Zeitung Online"のドイツ語記事の概要を英語で要約しています。
"For those who do not speak german: they say that the results so far from the 3 phase III were not sufficient to get authorization and that Merz therefore stopped all activities. They mention three reasons which made it difficult to prove efficiacy as needed for authorization 1) high placebo effects in tinnitus treatments of 40% 2) Subjectiveness of tinnitus severity measures 3) (too) small study groups of 300 patients each. Their japanese research partner Kyorin is nevertheless currently running a phase II study where they try to consider those insights. Merz will wait for the results of this study before deciding any further steps on neramexane."

このほかに、Action on Hearing LossのTinnitus Forumでも類似の投稿があります。

また、ネラメキサンの研究グループの一員であるDr.M.Suckfüllは、Onmeda.deのフォーラムで、2011年11月に下記の投稿をしています。
"Die Fa. Merz hat tatsächlich die Studie abgebrochen. Offensichtlich hilft das Medikament nicht für alle Tinnituspatienten und Merz möchte nun genau analysieren welche Patientegruppe einen Nutzen hat und welche nicht."
(メルツ社は実際に研究を中止している。ネラメキサンは全ての耳鳴患者を助けるものではないことが明らかであり、今メルツ社はどの被験者グループに効果があるのか、ないのかを、正確に分析したいと考えている。)


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最終結果
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進行中だった第3フェーズの2件の治験のうち、以下の臨床試験は試験データ収集・研究が完了。
2011年12月12日付け、ClinicalTrials.gov上の最新の進捗状況では、"This study has been completed."
完了年月は2011年6月。
Efficacy, Safety, Tolerability of Neramexane in Patients With Subjective Tinnitus 

次の臨床試験は、2012年3月16日付けで更新されたClinicalTrials.gov上の進捗状況では、研究終了。"This study has been terminated."と記載されている。
研究完了年月は2011年12月。当初計画では、Primary Completion Dateが2012年7月。
Open-Label, Long-Term Treatment Study, to Assess the Long-Term Safety and Tolerability and Efficacy of Neramexane in Patients With Subjective Tinnitus (OLLTT)

※"Terminated":被験者募集・登録が永久に停止されて、再開しないこと。被験者に対する臨床試験も治療もそれ以上行われない。

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備考
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収集した情報に関する個人的な感想としては、ドイツの医事新聞記事とDr.M.Suckfullのコメントから、「ネラメキサンが耳鳴りに効果がなかった」というのではなくて、プラセボ効果があまりにも高かったため、実薬自体の効果が立証できなかったように思います。

記事中のメルツ社の研究者の話から、実薬でも耳鳴り緩和効果が出ている被験者がいると考えられます。(数値データが公表されていないので、その比率が不明です)
軽度な耳鳴りの被験者の場合は、プラセボ効果が高かったのかもしれません。
同程度の耳鳴り症状であっても、個々人によって主観的苦痛度がかなり異なるため、その特性や違いを個々人について特定して被験者にフィルターをかけることができなかった点が、治験失敗の原因の一つに上げられています。

実薬を投与した被験者で耳鳴り改善効果がある程度出ているのなら、耳鳴り特性が的確に測定・診断できる検査手法を導入することで、投薬効果と耳鳴り特性との間でどの程度相関関係があるのか、把握できる可能性があると思われます。

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利用上の注意
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記事中の日本語翻訳文は厳密な精度を期したものではありません。また、リンク先の情報の事実関係について確認したものではありません。
正確な内容については、リンク先の独文・英文の原文をご確認いただき、ご自身でご判断ください。

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更新情報
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2012.4.16 「最終結果」を追記
2012.4.21 「最終結果」を加筆修正

フィオレンティーノ ~ バッハ/パルティータ第1番
久しぶりに聴いたバッハの《パルティータ第1番》は、セルジオ・フィオレンティーノの1996年10月ベルリンでのスタジオ録音。
1927年生まれなので、当時70歳間近。長年、在職していた音楽院の教職を辞め、若い頃のようにイタリア国外で演奏活動を再開していた頃の録音になる。

今まで聴いた第1番のパルティータのなかで、好きなのはアンデルジェフスキ、それに、ずっと硬派な印象のリパッティやヴェデルニコフ。
それ以上にフィオレンティーノのパルティータは魅力的。どうしてこんなに自然に語りかけるように優しくロマンティクに弾けるのかしらと不思議なくらい。
このパルティータを聴くと、どんなときでも心穏やかになれそう。

フィオレンティーノが弾くバッハは、ペダルを多用しているので響きがまろやかで厚みもあって、ロマンティックな雰囲気。
技巧的な切れ味が良く、音の輪郭もしっかりとした安定感があり、丸みのある甘く暖かい音は粒立ちがよいので、ペダルをかけても音はクリア。
レガートとノンレガートを取り混ぜたアーティキュレーションが面白い。ノンレガートは尖りの少ないふんわり柔らかいタッチなので、それがレガート気味に繋がって、旋律は軽やかで滑らか。
ほんとにノンレガートなタッチで弾いた時は、逆にその短く軽やかな響きがアクセントのように引き立ってくる。ノンレガートで弾いたクーラントは歯切れは良いけれど、なぜか可愛らしい愛嬌があったりする。
ころころ丸みのある音で弾く左手側のノンレガートは、リズミカルで軽やか。
レガートでもスタッカートでも、旋律には語りかけるような歌心があって、親密感を感じさせる。

ときどき、楽譜にない音が聴こえてくるので、楽譜そのままには弾いていないらしい。フィオレンティーノは編曲もするし、他の曲でも低音を付け加えて弾いているという。
フィオレンティーノがさらに編曲した..と明記されているラフマニノフやブゾーニのトランスクリプションでも、一層音が増えているのではないかと思うくらい、和声の響きが重厚。そういう響きを好む人らしい。

Sergio Fiorentino: Partita n.1 (Bach)


冒頭の"Praeludium"は、ややゆったりとしたテンポで、旋律を口ずさんでいるように優しい歌いまわし。トリルや時々使うふわっと軽いノンレガートがとっても愛らしい。
続く"Allemande"はややテンポを上げているけれど、バタバタと快活すぎることなく、軽やかにダンスをしているように優雅。リピートでは少し弱音になり、タッチも少し軽やかに。
後半部分はやや力強いタッチで雰囲気がちょっと変わる。リピートでは、最初と違ってくぐもった弱音が密やかな響きに。
"Courante"はノンレガート主体でとてもリズミカル。でも旋律はとても滑らか。ここでも、1回目とリピートではタッチや強弱を明確に変えている。
しっとりとした情感が流れる"Sarabande"。しつこくならないルバートがほどよく、ロマンティックなのにウェットになりすぎない叙情感が自然な趣き。
さらりとさりげなくリズムを刻む最初の"Menuet"はどこかしら可愛らしい。
速いテンポとノンレガートなタッチが歯切れ良い"Gigue"。右手の高音部と低音部の声部がくっきりと分離して呼応しているので、五線譜上の音符の位置が目の前に浮かんできそうなくらい。

フィオレンティーのバッハは、一昔前(?)のピアニストが弾いていたような"ロマンティックなバッハ"なのかもしれない。
それにしては、情感豊かでありつつ、情念過多にならない節度もあり、この微妙なバランスは、長年地道に培ってきた年季のいった職人芸なのか、元々そういうピアニズムなのか、よくはわからない。

先日、ピアニストの近藤嘉宏さんがTwitterで、「ロマン的情緒と実直さを併せ持ち、さらに名人芸も堪能できる。紙一重の領域で音楽の均衡が保たれていて刺激的」とフィオレンティーノを評していたのを偶然目にした。
"紙一重の領域で音楽の均衡が保たれていて"というのは、晩年のフィオレンティーノの録音を聴くと、実感としてわかる。
宝石が煌くような華麗な和声と情感豊かな語り口はとってもロマンティック。
それでいて、しつこさや嫌味を感じさせることのない品の良さがあるところが個性的。
フィオレンティーン独特の"雰囲気"が、曲の隅ずみに織り込まれているので、それと波長がぴったり合うと、とっても幸せな気分になれる。

Berlin Recordings-Fiorentino Edition Vol. 1Berlin Recordings-Fiorentino Edition Vol. 1
(2012/01/10)
Fiorentino

試聴ファイル(分売盤にリンク)(allmusic.com)


試聴ファイル(apr盤):パルティータ第1番&第4番、ヴァイオリンソナタ第1番(ピアノ編曲版)">試聴ファイル:パルティータ第1番&第4番、ヴァイオリンソナタ第1番(ピアノ編曲版)
試聴ファイル(apr盤):フランス組曲第5番、プレリュードとフーガBMW532&552(ピアノ編曲版)、パルティータ第3番BWV1006(同)、「主よ人の望みよ喜びよ」(同)

このBOXセットに収録されているフィオレンティーノのバッハ録音は、他に7曲。
ブゾーニやラフマニノフの編曲版にさらに編曲を加えたり、独自に編曲した曲があったりと、いつも聴くバージョンとはところどころ響きが違っている。

- Violin Sonata No.1 in G minor, BWV 1001 (編曲:フィオレンティーノ)
- Partita No.4 in D, BWV 828
- Prelude&Fugue in D major,BWV 532 (編曲:ブゾーニ&フィオレンティーノ)
- French Suite No. 5 in G, BWV 816
- Suite from Partita No.3 in E, BWV 1006 (編曲:ラフマニノフ&フィオレンティーノ)
- Jesu, joy of man's desiring (編曲:フィオレンティーノ)
- Prelude & Fugue in E flat, BWV 552 (聖アン) (編曲:ブゾーニ&フィオレンティ)

                          

フィオレンティーノのBOXセットに入っているブックレットは、彼のピアニスト人生の軌跡、教え子・友人・知人などの回想、彼自身が語った音楽観などが書かれていて、貴重な情報が詰め込まれている。

それを読むと、フィオレンティーノは、温厚で思慮深く、誇張することもセンチメンタルになることもなく、言葉よりも行動を重んじた人だった。
ミケランジェリが「自分以外の唯一のピアニスト」と語り、ホロヴィッツが彼のピアニズムに動かされ、さらにアレクサンダー・ロンクィヒ(フランク・ペーター・ツィンマーマンとの室内楽のデュオなどで知られるピアニスト・指揮者)はこう語っている。
(ロンクィヒがフィオレンティーノとどういう接点があったのかは、書いていないのでわからない)

「驚異的なテクニック。輝きのある地中海人らしい音色。信じられないほど軽やかで明晰。彼はかなり朝早い時間に起き、瞑想にふけっていた。彼の演奏にはアナーキスト(無政府主義者)のようなところがある。シューマンの《幻想曲》のような曲で、低音を付け加えていた。たとえ彼が楽譜に対して極めて"true"だったとはいえ、自分の弾きたいと思うように弾いていた。」

実際、それを裏付けることをフォレティーノ自身がインタビューで語っている。
「以前の時代には、他の作曲家が書いた曲に少し変更を加えるのは、普通のことだった。リストはショパンの曲に低音を加えていたし、ショパンは抗議(object)しなかった。音楽をドグマにしてはいけない。」
(※ローゼンの『ピアノ・ノート』を読むと、ショパンはリストに対して不快感を持っていたらしい)

フィオレンティーノが晩年になって、再びコンサートピアニストとして舞台にカムバックしたが、これに深く関わっていたのは、ドイツ人の高校教師で、フィオレンティーノの録音コレクターだったエルンスト・ルンペ氏。
ルンペ氏は1989年にフィオレンティーノにコンタクトして以来、文通を重ね、ステージにカムバックするべきだという結論に達したが、フィオレンティーノもこれに応じて、まずドイツ国内で演奏活動を再開した。
"under modest circumstances"とある通り、小規模なコンサートではあったけれど。
(当時、ルンペ氏がビデオ撮影したライブ映像を見ると、立派なコンサートホールではなくて、ローカルな多目的ホールか講堂のような場所で演奏していた)

コンサートを重ねるうちに、突然、専門家の間で噂が広まっていく。
忘れられていた独創的なピアニスト、円熟した音楽家、素晴らしいピアニスト...。でも、相変わらず、本国イタリアでは注目されなかったという。
1996年に米国のNewport Music Festivalに出演して大きな成功を収めると、米国内のエージェント達が競ってフィオレンティーノと契約しようとし、ニューヨークのAlice Tully Hallでのリサイタルも行った。
フランスや台北にも招聘され、ニューポート音楽祭へも定期出演し、さらに数多くのコンサートの依頼が列を成していた。
結局、1998年に彼が急逝したことにより、全てに終止符が打たれたのだった。

若かりし頃のフィオレンティーノは、レコードを通じて聴いたラフマニノフのピアニズムにとりわけ傾倒していた。
いつも立ち戻るところはラフマニノフの音楽。フィオレンティーノは、ラフマニノフ亡き後、"ラフマニノフの優れた演奏家"として、最期の時まで賞賛されていた。
フィオレンティーノ自身、「ラフマニノフの演奏を聴くと、自分自身が演奏しているように聞こえる。ラフマニノフの音楽は"偉大な作品"ではないが、ピアノにとってはファンタスティックなつくりになっている。ピアノが自らを表現するには最適な音楽だ。」
フィオレンティーノは、ラフマニノフの演奏のなかで、特にエレガンスと耽溺することのない節度(Sobriety)を賞賛していた。
この特徴は、フィレオンティーノの演奏が表現豊かではあるけれど全体的には非感傷的であることに、驚くほど当てはまっている。

バッハを弾くフィオレンティーノは、"no stylistic purist"(形式的純正主義者ではない)で、音楽にとって大事な要素が(material conditions)が完全にコントロールされているだけでなく、歌うような旋律と明晰な和声が相互に絡み合うなかで、それを超えている...と評されている。

フィオレンティーノの録音を聴いていると、このブックレットに書かれていることが、実感としてわかります。

tag : バッハ フィオレンティーノ

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ソコロフ ~ ハイドン/ピアノ・ソナタ Hob.XVI:37(No.50)
ピアノ学習者がまず最初にハイドンのピアノ・ソナタを弾く機会は、全音版のソナチネアルバム、次にソナタアルバム。(昔はそうだった。今は変わっているかも)
ソナチネアルバムで弾いたハイドンの曲はすっかり忘れてしまったけれど、ソナタアルバムの方で練習した曲はよく覚えている。

ソナタアルバムの収録曲は、Hob.XⅥ:35、27、37、36、34、40、49、28の8曲。
短調はHob.XⅥ:34、36の2曲。残りは長調。
私が練習したのは、Hob.XⅥ:35、37、49、短調の34。もしかしたら36も練習したかも。
全く練習した記憶にないのが、Hob.XⅥ:27、40、28。
録音を聴いてみると、印象に残る曲ではなかったので、練習したとしても忘れている可能性はある。
一番よく練習されているのは、たぶんHob.XⅥ:35と37ではないかと。ピアニストの録音も多い。

たまたまYoutubeで、グレゴリー・ソコロフの弾くハイドンのピアノ・ソナタの録音をたくさん見つけてしまった。
以前はなかったのに、ソコロフファンらしき人が大量にソコロフのライブ録音をYoutubeにアップロードしている。
ソコロフはスタジオ録音・ライブ録音とも長年にわたって出していないので、指揮者のチェリビダッケの存命中と同じように、海賊盤やら放送・放映された音源が多数出回っている。

ソコロフの弾くハイドンで一番面白かったのは、Hob.XⅥ:37の第1楽章。
子供の時は、のどかにダンスでもしているようなテンポで弾いていたので、わりと優雅な曲だな~なんて思っていた。
初めてブレンデルの録音でこの曲を聴いたら、大違い。
猛スピードで目が回りそうなくらい。まるでコマネズミが忙しそうに走り回っているみたい。
録音をいろいろ聴いてみると、やや遅めのテンポで弾いているピアニストも時々いる。第3楽章のFinaleがPresto ma non troppo なので、第1楽章のAllegro con brioは、それよりも遅いテンポにしているらしい。

第1楽章は、ソコロフはかなり速いテンポ。演奏時間にして5分少々なので、ブレンデルと同じくらいに速い。
タッチが軽やかで細く柔らかい音色のブレンデルは、スピード感はあるけれど音が指先でちょこまか動いているようで、時々塊のように密集していて、幾分こじんまりした曲という感じがする。
ソコロフはノンレガート気味なシャープなタッチで切れ良く、装飾音を含めて全ての音が明晰でクリア。
スタッカートのように短く切ったタッチで弾くと、とても可愛らしくて、ちょっとユーモラス。
全体的にキビキビとリズミカル、明解なフレージングで、スピード感と弾けるような勢いが気持ちよい。
フレーズ末尾の処理の違いが明瞭で聴き取りやすいせいか、コロコロと細部の表情がよく変わる。きり上がっていくような音の切れがあり、スタイリッシュ?とでも言おうか、カッコよく颯爽としている。

第1楽章を聴いていて、すぐに連想したのは、ベートーヴェン《ロンド・カプリッチョ”失われた小銭への怒り”》
ソコロフがこういうタイプの曲を弾くと、スピード感とリズミカルなところにユーモラスな雰囲気が加わって、ほんとに絶妙。

Sokolov Haydn sonata Hob XVI.37 (第1楽章)

この音源は第1楽章のみ。全楽章録音されている音源は2002年のロンドン・リサイタル(Youtubeの音源。音質は良くない)

第2楽章は打って変わって、深く内面に沈潜し、滲み出てくるような悲愴感が重苦しい。

第3楽章は、ブレンデルとソコロフでは、全く雰囲気が違っている。
楽譜上のテンポ指定は、Presto ma non troppo。
ブレンデルが第1楽章と同じような速いテンポで、タッチも短く軽やかで歯切れ良い。
ソコロフの方は、第1楽章よりもかなり遅めのテンポで、ノンレガートなタッチは少なく、音もしっとり柔らかい。
長調に変わっているので冒頭は明るい雰囲気...のはずなのに、第2楽章の哀感を帯びた雰囲気を引きずっているかのように、どこかしら哀しさが吹っ切れないような...。
テンポ設定が楽譜指定とはかなり違うために、ソコロフの演奏解釈は作曲者の意図に沿ったものではないのだろうけれど、各楽章の性格が明確に異なる組み立てになって、曲自体はずっと魅力的に聴こえる。
第1楽章の弾けるように駆け抜けていくユーモラスな面白さから、重苦しい第2楽章を経て、第3楽章で再び快速テンポで終わるよりは、最終楽章はやや遅めのテンポでしっとりとた情感と透明感のある明るさのあるソコロフの弾き方が、気持ちとして自然な流れに感じる。

tag : ハイドン ソコロフ

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ブラームス/ハイドンの主題による変奏曲(2台のピアノ版)
ブラームスの《ハイドンの主題による変奏曲》は管弦楽曲とばかり思っていたけれど、2台のピアノ版の方が先に作曲されている。
ブラームスは交響曲や協奏曲を作曲するときに、先に2台のピアノ版を書いて、小さな集まりで試演して反応を確かめていたことも多い。

《大学祝典序曲》と《悲劇的序曲》は好きな曲なのでよく聴いていたけれど、《ハイドンの主題による変奏曲》はCDはいくつも持っているのに、あまり記憶に残っていない。
2台のピアノ版は室内楽的な曲でちょっと地味かも。とてもシンプルな響きで、旋律も和声も明瞭。ピアノの柔らかい音色でちょっと女性的な優しげな雰囲気。オケにような色彩感はいけれど、曲の骨格がよくわかる。

Duo KONTARSKY @ BRAHMS Haydn Variations Op.56b - 1978




こちらは管弦楽曲版(アバド指揮ベルリンフィル)
Johannes Brahms - Variations on a Theme of Haydn for orchestra Op. 56a



tag : ブラームス

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福井一『音楽の感動を科学する―ヒトはなぜ“ホモ・カントゥス”になったのか』
最近読んでいるのは、”音楽と脳”の関係をテーマにした本。
医療法の一つである音楽療法の文献を読んでいると、脳科学や神経学に関連したものが多い。
オリヴァー・サックス『音楽嗜好症』も、脳の一部が損傷したり、脳神経の異常な活動によって発生する病的な症状を音楽との関連で取り上げていた。
医学用語も頻繁に出てくるので、その分野の基礎的な知識をインプットするのによさそうだったのが福井一著『音楽の感動を科学する―ヒトはなぜ“ホモ・カントゥス”になったのか』。
amazonのレビューも良く、予備知識が全然ない素人でもわかりやすく読める。

特に興味があったテーマが、音楽によって情動が起きるメカニズム、音楽とホルモン(テストステロン)の関係、音楽が脳に与える影響、音楽家と非音楽家の脳の違い、音楽療法の効果の話など。

音楽の感動を科学する―ヒトはなぜ“ホモ・カントゥス”になったのか (DOJIN選書35)音楽の感動を科学する―ヒトはなぜ“ホモ・カントゥス”になったのか (DOJIN選書35)
(2010/09/30)
福井 一

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出版社のウェブサイトでは、目次と参考文献リスト(PDF)がダウンロードできる。
以下は読書メモ。

                           

音楽はチーズケーキ

「音楽はチーズケーキ」という言葉は、音楽は生活の添え物で、人間が生きていくうえではたいした意味はない。あればよし、なくてもかまわない、音楽は余剰という意味。
ピンカーは『心の仕組み』で、音楽には生物学的・進化学的な存在価値はないと言っている。(少数派)
進化的な意味があるという考えるヒトは多い。(諸説あり)
アメリカの進化学者のグールドは、音楽や芸術が人間の進化においてなんらかの機能を持っているという考えに反対している。
ピンカーは徹底した『遺伝論者』、グールドは頑固は『環境・学習論者』。
ガードナーも少数派。人の知能は複数の能力からなっているという「知能の多重理論」。言語や論理と並んで、音楽をヒトに不可欠な知能、すなわち遺伝的に備わっている能力としている。

情動と音楽
音楽と情動の科学的研究は始まったばかりで、研究は少ない。
音楽を理解することと楽しむことは別の回路。
扁桃体が音声や音楽の情報に深く関わっていることは確か。詳しいことはまだわかっていない。
大脳辺縁系に支障があると、音楽の情動障害や記憶障害が起きる。
従来は、音楽的情動が起きるためには、聴覚皮質などの大脳新皮質が重要だと考えてられていたが、極端な言い方をすると、皮質がなくても大脳辺縁系を中心とした情動回路が働いていれば、音楽を楽しむことができるようだ。
音楽にかかわる情動回路は独立しているからだ。(IRという音楽聴取に障害を持つ女性患者の例が有名)
音楽を知覚・認知することと、情動反応との間には、分離、乖離がある。旋律を知覚したり、違いを聞き分けたりすることはできなくなったが、音楽が楽しいか悲しいかは理解できた。

音楽を知覚するのは大脳皮質。音楽の抽象的な知覚・認知は皮質レベルの活動で、より基本的な知覚は大脳辺縁系を中心とした器官で処理されることになる。

音楽による生理的反応
聴くことと演奏することを含めた音楽行動は、脳に働きかけ、神経回路を活性化すると考えられる。
音楽が気分や感情に影響を与え得るということは、同時に免疫機構やホルモン分泌にも影響を与えることを意味する。
感情(情動)と免疫、自律神経系がお互いに関係を持ちながら働いている。怒りや敵意は交換神経の働きを増して戦いに備えるが、同時に免疫機構を抑制する。一方、前向きな気持ちは副交感神経の活動を促し、免疫機構の働きを高める。

生理現象だけでなく、心理現象もさまざまなホルモンの働きによって引き起こされる。
ホルモンのなかには、音楽行動に影響を与えるものもあるし、逆に音楽行動によって変化するものもある。
音楽を聴いたり演奏したりという行為は、ホルモンの変化を引き起こし、その結果生理的な変化を引き起こす。

ラウシャーらがラットを使って実験した「モーツァルト効果」-モーツァルトの音楽が空間知覚認知能力を上昇させるという-は幻想。
1999年にネイチャー誌上で否定されている。なぜか日本ではまだ信奉している人が多いらしい。

音楽が操るホルモン
音楽能力については、女性ではテストステロン値が高いほど能力が高く、男性では逆に低いほど能力が高い。最適値は女性の高いレベルと男性の低いレベルの重なり会う部分が音楽能力には最適なホルモン量。
男性のテストステロン量は圧倒的に高く、その値は女性と男性では連続的で、明確に男女の境界となる値を見つけることはできない。

200人の被験者に多種類の音楽を聴かせてテストステロン値の変化を調べたが、音楽の種類や好き嫌いによる差はなかった。
男性ではテストステロン値が下がるが、女性では上昇する。男女とも中性化する。
音楽行動がテストステロンを抑制するのかメカニズムは不明。
テストステロンは、男女とも独立心や支配欲と相関がある。
ダーウィンは「音楽は性行動を促進する」と唱えたが、この逆の仮説になる。

音楽が脳に与える影響
音楽で使用する脳領域は言語にも用いられる。また、言語以外の認知回路と重複していることも多い。
脳には、音楽を理解(知覚・認知)するネットワーク(回路)と情動(感情)を処理する回路、および演奏する回路が別々に存在する。音楽の情報は分散して処理されている。音楽にかかわる中心的な脳領域は、前頭皮質、側頭皮質、頭頂部、小脳そして大脳辺縁系である。

音楽を聴いているときの脳
聴覚だけでは音楽を楽しむことができない。入ってくる音楽をリアルタイムに処理するだけではなく、以前に入ってきた音を覚えている必要がある。音楽の情報処理には入ってきた音を一時的に蓄えておく作業記憶(ワーキングメモリ)が必要で前頭野がかかわっている。外界から入ってきた音楽をいったんバラバラにして、ふたたび脳の中で再合成するという面倒なことをやっている。情報の加工や補完、ときには想像も行っていると考えられる。本能に加え、記憶や経験に基づいたさまざまなフィルターを通して聴いている。
演奏にはからだの筋肉を動かす能力が必要。運動にかかわる脳組織-運動皮質や小脳との連携が必要になる。

旋律の理解
聴覚野の上側頭回と右脳の前頭側が旋律処理に関わっている。
ピッチの認知は右前頭葉前部が活性化し、ピッチの一時的記憶は右前頭葉前部と右側頭葉が活動する。楽譜をみて歌う場合、つまり視唱のときには左後頭頂骨の皮質が活躍する。これは後頭葉には視覚にかかわる視覚野があるからだ。この部分は、楽譜を見るときでも、あるいは思い浮かべるときでも活動する。こうした現象は、音を空間的、時間的に扱う音楽の知性を反映している。同じ曲でも聴き方が違うと、脳の活動箇所は変化する。非音楽家の場合、通常リズムは左脳、ピッチと旋律は右脳優位。どちらに注意を払うかで活動の優位性は逆転する。

言語や音楽などの、振動や波でできている現象は、時間分析と周波数(スペクトル)分析が必要になる。ヒトの場合、左聴覚野は時間変動に対して活発な活動(血流)を示した。対照的に右聴覚野は周波数変調、つまりピッチの変化に反応して活動した。

和音と不協和音の脳内処理
基底膜から神経核、脳の聴覚野のニューロンに至るまで、担当する周波数に対応するニューロンが整然と並んでいる。これを「周波数局在」という。
音楽に用いられる音はほとんどの場合、さまざまな周波数が混じり合った複合音であり、基音に対して、その上方に部分音(倍音)が存在する。倍音は基音と単純な整数比。和音の場合、複数の音が同時になるが、それらの周波数が単純な整数比関係にあるほど「ひずみ」がなくなる。ヘルムホルツは、われわれの脳には、単純な整数比を好む「検出器」があると言った。(理由は不明、科学的には意見は一致)

脳の中には、それぞれの周波数に特化して反応する「周波数専用ニューロン」がある。和音を聴いたとき、聴覚経路の神経は、和音に含まれているいくつか複数の周波数(倍音)に敏感な専用ニューロンが反応して発火する。そして、ほとんどの倍音の分析は、蝸牛から聴覚野に至る聴覚システム全体に存在する各周波数に対応したニューロンが行う。

聴覚野にもそれぞれの周波数に対応したニューロンが並んでおり、周波数局在に対応した地図が作られている。左右の聴覚野では周波数に対するニューロンの反応に差がある。右聴覚野では周波数により厳密に反応するが、左聴覚野はテンポや時間間隔の知覚に敏感である。周波数(音程)解析は主として右半球で行われ、時間(テンポ)の処理は左半球で行われる。

協和音と不協和音では、ニューロンの反応の仕方が異なるようだ。
協和音の場合、神経発火の反応は、実際に和音に含まれる音に反応するニューロンに加えて、各音と関連した倍音に対応するニューロンも同時に発火する。対して、不協和音は、和音構成音と全く関連のない音に対応したニューロンも発火する。基底膜ではたくさんの部分音(倍音)に対応するニューロンは非常に近接しているので、不協和音では、お互いが干渉し合う。そのことが、末梢神経や中枢神経に複雑な変動を引き起こし、これがひずみの感覚になると考えられている。
協和音や不協和音に反応して活動する大脳の組織は、情動をつかさどる大脳辺縁系。
ヒトの協和音への反応は生得的。(生後二ヶ月の乳児でも協和-不協和音の弁別が可能)
西洋音楽、非西洋音楽(インド、中国、アラブの民族音楽)では、西洋の12音階とほぼ同様の音階システムを持っており、オクターブ、4度、5度を協和音程としている。和音の協和音や不協和音の好みは普遍性があるといえそうだ。

音楽家の脳、非音楽家の脳
ヒトの大脳皮質は、外界の環境に適応して変化する機能、すなわち可塑性がある。音楽行動が脳の構造や機能に変化を与え、脳の可塑性をもたらすことがわかってきた。その変化は才能とは関係なしに、どんなひとでも起きる。
音楽の練習や訓練は、脳の形や、ニューロンの数に差をもたらす。また、その程度は経験年数や楽器によって異なる。

楽器を演奏したり歌をうたったりするときに、バランスや筋肉の動きを調整し、運動機能をコントロールするのも小脳。音楽家のほうが非音楽家よりも約5%大きい。性差もあり、女性より男性音楽家の容積が大きいらしい。
大脳の大きさにも差がある。運動野は、音楽家は中心前回(一次運動野)に非対称性(左右差)がみられた。楽器の練習によって、運動野が発達した結果だと考えられている、
練習で脳の領域が増えるのはヴァイオリンだけではなく、ピアノの練習も指の動きをコントロールする運動皮質が増加する。
側頭平面(聴覚野がある)は言語(発話)で重要な役割を果たすが、同時に様々な音楽処理にかかわる。音楽家は非音楽家よりも左側頭平面が大きかった。音楽家の中でも絶対音感の持ち主は、その比率が大きかった。

被験者にピアノの音を聴かせ、MEGを使ってどこが活動しているのかを調べた研究では、音楽家の方が非音楽家よりも聴覚皮質で活性化する領域が広い。演奏の練習を始めた年齢が若いほど、活性化した領域は広い。音楽家は非音楽家に比べて、膨大な音楽情報を分析的に処理する必要があるため、左脳、なかでも本来は言語活動を担う言語野を使っている。

脳の活動領域は、専門とする楽器によっても異なってくる。専門としない楽器の音を聴くと、聴覚皮質の活性が増えなかった。

訓練により追加される音楽回路
大まかな話として、音楽は右脳、言語や計算は左脳で処理されるといわれてきた。音楽の処理を詳しく見ると、音楽家、非音楽家を問わず、旋律は右脳優位で処理され、リズムは左能優位で処理される。様々な場所で同時平行的に処理されている。
一般に、熟練した演奏家は、音楽処理に論理・計算を得意とする左脳を多く使う傾向がある。音楽情報をより分析的に処理することを身につけたからだろう。特に音楽才能がある場合、左右皮質の非対称性が顕著で、左脳の音楽関連領域が拡張している。

音楽家と非音楽家の機能差(ピッチ、記憶、和音、旋律、リズムの処理)は、大脳の前頭葉と側頭葉の間を走るシルヴィウス溝周辺で見つかっている。この部分や言語や運動と関連がある。和音と旋律を課題として聞かせたところ、音楽家は左前頭側頭葉で処理していたが、非音楽家やアマチュア音楽家では両側前頭葉と右側頭葉で処理していた。音楽家は非音楽家とは違った認知処理を行っている。音楽の複雑精巧な情報の分析処理は左脳が中心となるようだ。

音楽訓練によって、従来からの脳基質(構造)に負担がかかり、それを処理するための回路が追加されるのだろう。

リズムやテンポの処理においては、音楽家では左脳は使うものの、右脳の関与が大きくなる。つねに音楽を支配するリズム、あるいはテンポを識別する必要があり、その分、右脳の前頭葉や側頭葉にある諸領域を使用する場合も高くなるようだ。
ピッチや和音を識別するときの音楽家は、右脳に加え左脳の活動が増す。これはより精緻で分析的な処理を行っているためだと考えられる。しかし、音楽家が個々の音や和音ではなく、旋律全体に注目(意識)したときには、逆に右脳が活性化する。音楽はつねに左右の脳を切り替えて、あるいは平行的に音楽を処理しているようだ。

音楽家で特徴的に活動する脳領域は、左右の上側頭回。左脳の上側頭回後部には、言語の意味理解を担うウェルニッケ言語中枢がある。音楽家では、本来言語を処理する回路を音楽の処理にも使用している可能性が高い。音楽が脳全体を効率的に使っている証拠でもあり、音楽の情報処理の特殊性を示している。

音楽に関する障害
訓練や練習のしすぎによって失調症(ジストニー)が起る可能性がある。音楽訓練のしすぎで体性感覚野の反応領域が増えすぎるとそれぞれの指の動きを担当する領域同士が重なってしまし、指が思い通りに動かなくなってしまう。
演奏家のジストニー発症率は高く、約100人に一人。遺伝的要因も関係している。
音楽家と非音楽家の区別は難しく、才能の程度の可塑性の違いは加味されていない。脳の可塑性を考える場合、経験によるものか、生まれついてのものによるのかは、分離することは不可能だから。
音楽家とは、小さいときから音楽の練習や訓練をつんできた人と解釈するのが良い。その影響は経験年数によって異なってくる。

失音楽症は、演奏や鑑賞などの音楽能力が失われる病気。脳の病気や損傷によって音楽能力が失われる病気を後天性失音楽症という。
後天性失音楽症は、言語能力を失う失語症との関連で知られていた。失語症の場合、言語のみ失われるケースと、音楽能力も失われる場合がある。
後天性失音楽症の場合は、言語能力が失われていないが、音楽能力のみが失われる例がある。(ピッチやリズム感覚が失われたり、協和-不協和音がわからなくなったりする。あるいは音楽が楽しめないといった情動障害が出る)

生まれつき音楽能力がない人については、「音痴」と呼ばれることが多かったが、現在では先天性失音楽症を呼ばれる。失語症と同じく発達障害と考えられている。総人口の4-5%が該当するとされるが、実態は不明。
脳卒中などの右脳が損傷した場合、失音楽症になる確率が高い。逆に、左脳が障害を受け、言語能力が失われても、音楽能力は無傷の場合もある。認知症でも音楽能力は最後まで保持されることが多い。

tag : 伝記・評論

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
耳鳴り治療のための音響・音楽療法 (9) サウンドジェネレーター付き補聴器
マスキングやTRT療法に使われるサウンドジェネレーターは単体モデルが多いが、難聴者向けに補聴器とのコンビネーションモデルも複数の補聴器メーカーがラインナップに揃えている。
サウンドジェネレーターでサポートしているのは、ホワイトノイズなどのノイズ音が一般的だが、専用の音楽プログラムを組みこんだ機種も発売されている。

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Mind440[Widex]
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「Mind440」は、耳鳴り対策用の音楽とノイズを組み込んだ世界初の補聴器。
デンマークの有名な補聴器メーカーWidex(ワイデックス)社が2009年6月に発売。
価格:片耳428,000円、両耳728,000円(いずれも非課税)。

「Mind440」の製品紹介(ワイデックス社の日本サイト)
左側カラムの「ゼン プログラム(Zen Program)」をクリックすると、5種類のZen音が試聴できる。

「Mind440」に組み込まれている音楽プログラムは、"Zen Program"。
サポートしている音源は、環境音、スピーチ、"Zen tone"(音楽とノイズ)の4種類。
"Zen tone"の音楽は、<fractal(フラクタル)>テクノロジーに基づいた音楽。
Aqua/Coral/Green/Lavendar/Sandの合計5種類。
この音楽は耳鳴マスキングにも使えるが、"ノイズ"もオプションで追加できる。
ユーザーの好みによって、ピッチ、テンポ、ボリュームが調整できる。
Zen programsのシミュレーションサイト(日本語)
※試聴したところ、繰り返すことのない似たようなパターンのアコースティックなランダム音はまろやかで、ゆらぎ特有の浮遊感をもち、精神的なリラクゼーション効果が期待できそうな心地良さがある。

"Zen Program"の専門家向け英文パンフレット

Tinnitus and Widex Zen[Widex社のYoutubeチャンネル]
Widex社の提供動画。スピーカーはカリフォルニア大学のDr.Robert Sweetow。耳鳴患者に"Zen tone"(音楽とノイズ)を聴かせた時の臨床試験の方法とその結果について説明している。
-試験期間は6ヶ月。被験者は14人。
-音声増幅(amplification)のみ、音声増幅&zen tone、音声増幅&ノイズなど、様々な条件で、音楽の設定(ピッチ、テンポなど)を変えて、耳鳴りに対する反応がどう変化したかを自己評価する。
-リラックスできるzen toneのテンポ、ピッチは、個々人でかなり異なる。(一般的なリラクゼーションできる音楽の傾向と同じとは限らない)
-ノイズのほうが耳鳴り抑制効果は高い。しかし、長時間聴くのであれば、ノイズではなくzen toneのフラクタル音を選択する人が多い。(被験者14人のうち2人だけがブロードバンドノイズを選択)
-音声増幅だけでなく、zen tone(必要に応じてブロードバンドノイズも)を聴くようにすると、ポジティブな効果がある。ただし、その効果は患者によって変わり、全く効果がない患者もいたが、大多数の患者には大きな効果があった。


《関連記事・サイト》
「はじめての&再挑戦の補聴器選び」~ワイデックス・mind(マインド)シリーズ
特別広告企画で、協賛企業として、ワイデックス、オーティコン、スターキージャパンの3社の紹介記事がある。

[2012.2.16 追記]
Zen program搭載補聴器に関する補足。
英文製品カタログ「product overview hearing aid performance / feature overview October 2011」のスペック比較表を見ると、「Zen」と「Zen+」の2種類のプログラムがあり、補聴器によって搭載プログラムが異なる。さらに、標準機能またはオプションという違いもある。

「Zen」:mind440
「Zen」(オプション):mind330、maind220
「Zen+」:SUPER440、mind440、CLEAR440、CLEAR330
「Zen+」(オプション):mind330、mind220、SUPER220、CLEAR220

mindシリーズに搭載されているのは、「Zen」。環境音・スピーチ、Zen tone(音楽とホワイトノイズ)[ホワイトノイズはオプション]。
SUPER、CLEARシリーズの場合は、「Zen+」。「Zen+」では、異なるタイプの「Zen」スタイルを3種類まで切り替えることができる。
このほかに、PASSION440(非常に小さいサイズ。子供向け)でも、「Zen」と「Zen+」が選択可能らしい。別途リモートコントロール機能が必要。(ユーザーガイド参照

「Zen」と「Zen+」の違い(mind440セッティング画面):"Using the Zen program in Compass"(Widex Ireland's Blog)

論文:The Efficacy of Fractal Music Employed in Hearing Aids for Tinnitus Management(Kuk F, Peeters H, Lau CL. Hearing Review. 2010;17(10):32-42.)
※mind440搭載「Zen program」の耳鳴り患者に対する効果について。


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Life Combi (ライフコンビ)[Siemens Hearing Instruments]
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「Life Combi」は、TRT療法専用のノイズジェネレーターTCI器に、補聴器機能を付加した統合モデル。
シーメンス社の補聴器機能付きのTCI器は、以前から海外で販売されていたが(機種名は「Siemens Life」と「Siemens Pure Carat」)、2011年9月に日本でも発売された。
治療音(ノイズ)は、TCI器と同様、ホワイト、ピンク、スピーチ、高音の4種類
モード設定は3種類:ノイズモード(治療音だけを聴く)、マイクロホンモード(補聴器機能を使う)、ミックスモード(補聴器機能を使いながら、治療音を聴く)
価格(片耳):11、14、24、34万円の4種類。

海外で販売中の機種;「Siemens Life」と「Siemens Pure Carat」

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ティニトレアTTHA[マキチエ株式会社(旧社名:キコエ補聴器株式会社)]
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「ティニトレアTTHA」は、サウンドジェネレーター「ティニトレアTT」に、補聴器機能を備えたコンビタイプ。
価格:68,000円
ノイズは4種類;ホワイト、ピンク、低域強調、高域強調(順天堂大学サイト参照


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Reach [Belton]
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Belton社は1940年設立。デンマークのGN ReSoundグループ企業で、本社はデンマークのバラールップ。
Belton社のサウンドジェネレーター(SG)単体機種は、「Beltone Tinnitus Breaker」
組み込まれているホワイトノイズ(英文User Guide仕様)
 - Low-pass filter: 500 Hz、1kHz、2kHz
 - High-pass filter: 2,3,4,5,6kHz
 ボリューム最大値:90dB SPL
「Tinnitus Breaker」には、ホワイトノイズ以外に、"Sound modulation"(木々の間を吹き抜ける風のようなランダムな快適な音)も組み込まれている。ノイズを聴き疲れた時などに利用する。

「Tinnitus Breaker」機能を搭載した補聴器が「Beltone Reach」(英文製品紹介)

日本のベルトーン社総代理店は、ニュージャパンヒヤリングエイド社(独占製造技術提携)
同社が販売している「Beltone Reach」は耳鳴りマネージャー(=Tinnitus Breaker)搭載。
プログラム設定:補聴器のみ、補聴器&SG、SGのみ
価格:298,000円~458,000円(モデルにより異なる)
※現在、「Beltone Reach」の製品情報は掲載されていない。(2012.5.11確認)

論文:サウンドジェネレーター付き補聴器によるTRT の検討(伊藤まり他、(社)こうかん会日本鋼管病院耳鼻咽喉科、Audiology Japan 53, 695~701, 2010)
※「Reach」を使用したTRT療法の効果に関する論文。


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Alera TS [ReSound]
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ReSound社は1984年設立。デンマークのGN ReSoundグループ企業。本社はデンマークのバラールップ。
日本法人はGN ReSound Japan

「Alera TS」は、最新機種の補聴器「Alera」にサウンドジェネレーター機能を付けたモデル。
「ReSound Alera Mini Microphone」を使用することで、TV, MP3プレーヤー、ステレオ、パソコンの音声・音楽が、ワイヤレスマイクを経由して、補聴器でストリーミングで聴ける。
「ユナイトワイヤレスシステム」の説明(日本法人のウェブサイト)では、TV/携帯/マイクの3種類のユナイトがあり、目的の状況・対象機器によって使うユナイトが異なる。
マイクユナイトをiPodなどの携帯用音楽プレーヤーに接続すると、音声が直接補聴器へ転送され、聴くことができる。

仕様(Alera TS Fitting Guide
ブロードバンドノイズ:low-cut ~ high-cut。好みに応じて設定。
音量・スピード(変動幅)を調節しシークエンスを変更することで、"ocean-like"なノイズなどに変わる。

サウンドジェネレーター付き補聴器として、「ReSound Live TS」が発売されていたが、現在、同社の日本・グローバルサイトのどちらにも記載されていない。
「Alera」が新発売されたため、サウンドジェネレーター付き補聴器の機種は「Alera TS」になっている。
※「ReSound Alera TS」は日本法人のウェブサイトの製品情報には掲載されていない。

参考:Resound TS: An Innovative Tinnitus Sound Generator Device to Assist in Tinnitus Management
※「ReSound Live TS」を使用した耳鳴り治療の臨床試験報告


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Tranquil RIC Combination Device  [General Hearing Instruments]
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1984年設立の米国の聴覚関連機器メーカー。本社はニューオーリンズ。
「Tranquil RIC Combination Device」は、サウンドジェネレーター「TRANQUIL SIMPLICITY II OTE」タイプに、補聴器機能を付加したモデル。
難聴・聴覚過敏をもつ人向けの製品。
仕様(Tranquil COE pdf specification sheet
ブロードバンドノイズ:オーダーメイド時に、希望するNM Circuitを3種類(normal-to-mild、mild-to-moderate、moderate-to-severe)の中から選択。

※補聴器シリーズの一つとして、ミュージシャン向け補聴器「The Musicians’ Listening Design(MLD)」(Digi-K circuit搭載)を発売している。


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DAC TRTBehind The Ear 42 MA[Puretone]
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Puretone社は1987年設立された英国の企業。本社はケント州ロチェスター。
2006年4月にAudio Medical Devices社の耳鳴対応機器部門(製造・開発)を買収。

TRT療法用サウンドジェネレーターを付加した補聴器は、「DAC TRT」と「Behind The Ear 42 MA」の2種類。

「DAC TRT」は耳鳴り機器単体、または、補聴器とのコンビネーションとして使用。
ホワイトノイズの周波数を変化させることができる。


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elia TRT seriesprado TRT seriesswitch 8 TRTarriva TRT series
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独audifon社のTRT向けのノイズジェネレーター製品は、「elia」「prado」「switch」「sueno」「jump」「arriva」と多数。
そのうち、補聴器機能を併せ持ったコンバインドタイプは、以下のシリーズ・機種。
 - elia TRT series(combined devices)
 - prado TRT series(combined devices)
 - switch 8 TRT
 - arriva TRT series(combined devices)

米国内では販売されているのは「jump」と「switch」のシリーズのみ。

搭載しているノイズは、ホワイトノイズのみ。
周波数範囲は100Hz~8000Hz (製品によって、周波数レンジが異なる)

audifon社のTinnitus-Solutionsの概要[英文ウェブサイト]

製品カタログ(全製品)(PDF):耳鳴り対応製品は、20~27ページに記載。


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参考論文
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「サウンドジェネレーター付き補聴器によるTRTの検討」
    伊藤まり他、Audiology Japan 53(6), 695-701, 2010-12-28

「補聴器機能つきサウンドジェネレーターによる耳鳴治療の経験」
    若林聡子他、Audiology Japan 54(5), 307-308, 2011-09-30

「Music&Sound Generator 機能付き補聴器を用いた耳鳴治療 その2」
    吉岡正展他、Audiology Japan 54(5), 305-306, 2011-09-30

「Music&Sound Generator 機能付き補聴器を用いた耳鳴治療 その1」
    高橋真理子他、Audiology Japan 54(5), 303-304, 2011-09-30
 

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参考情報
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「補聴器の歴史 ~~耳穴への道のり~~」[補聴器愛用会ウェブサイト]

補聴器と補助金(公的助成)[難聴と補聴器の情報源。みみから。(ワイデックス社ウェブサイト)]

 モスキートゲームで耳年齢チェック [ジーエヌリサウンド社ウェブサイト]


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利用上の注意
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記事の内容は、ウェブ上にあるホームページ・製品カタログ・映像資料などを元に抜粋・要約したものです。
正確な内容については、本文中にリンクしているホームページ・論文・パンフレット・映像資料などを直接ご確認ください。
(ただし、リンク先のURLの変更または、該当ページの削除により、リンクが切れている場合があります。)

現時点で販売されている製品を網羅したものではないため、記事中に記載した製品以外にも同種の製品が販売されていることがあります。

tag : 音響・音楽療法

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
エンリコ・パーチェ ~ リスト/ピアノ・ソナタロ短調、巡礼の年
アクセス解析データを見ると、たまに「エンリコ パーチェ」で検索している人がいる。
イタリア人ピアニストで、オランダで行われている第2回リスト国際コンクールの優勝者。
そのため、開催地オランダでは演奏会やラジオ・テレビにも登場しているので、わりと知られているらしい。
2011年の第9回リストコンクールのオープニングコンサートでも、リスト《Vallée d'Obermann》とラフマニノフ《パガニーニ狂詩曲》を弾いていた。

日本で彼のことを知っている人は、少ないに違いない。
ヴァイオリストのフランク・ペーター・ツィンマーマンとのバッハ演奏をNHK-BSで見て知った人が、ブログで記事を書いているのをたまに見かけることがある。
でも、DVDやCDまで買ったことがある人はそんなに多くはない気がする。

エンリコ・パーチェは、ソロのレコーディングはしない主義の人なので(ライブ特有のインスピレーションや気合がスタジオ録音にはないためらしい)、過去にソロ録音したのはリストの《ロ短調ソナタ》のみ。
それに、ドイツ・ニーダーザクセン州のフーズム城で毎年開催される、あのフーズム音楽祭のライブ録音シリーズに収録されている。
稀少曲の演奏が多いことで知られる音楽祭のリサイタルの一部を抜粋して収録しているものなので、通常のスタジオ録音とは違う。

彼の正規録音で一番有名なのは、フランク・ペーター・ツィンマーマンとの『バッハ/ヴァイオリンソナタ全集』。
DVDとCDがあり、それぞれ録音場所・時期が違っているし、DVDはライブ録音、CDはスタジオ録音。
モダン楽器だけで演奏したという、近頃ではとても珍しいフォーマットで、地味ながらも評判はわりと良い(と思う)録音。
それより以前にリリースしたブゾーニの《ヴァイオリンソナタ第2番》の録音は、この曲のベストと個人的には思えるほどに鮮やかな演奏。特にパーチェのピアノ伴奏は、ソロ並のピアニスティックな演奏で切れ味のよさは抜群。
さらに、フームズ城音楽祭のヒンデミット《ピアノ・ソナタ第3番》も、有名なグールドの演奏とは方向性が違うけれど、これが切れ味の良い技巧とヒンデミット特有のやや乾いた叙情感とが融合して、とても鮮やか。

このバッハとブゾーニ、ヒンデミットを聴いて以来、好きなピアニストの一人。
数少ないCD以外の音源は、主にYoutubeのライブ映像。
リストコンクールの優勝者だけあって、コンクール当時のライブ映像がYoutubeで視聴できるし、コンクール後の演奏会のライブ映像は、コンチェルト&ソロ、室内楽とも多数あるので、スタジオ録音がなくても、彼のピアノを聴くだけならさほど困らない。
でも、いつかスタジオ録音した良い音質のCDでピアノソロを聴きたいなあと思って、あまり期待しないで待っていたら、とうとうスタジオ録音がリリースされた。
レーベルはPiano Classicsというクラシック・ピアノ専門の新興レーベル。どうやらイタリアの会社らしい。
契約アーティストの新規録音だけでなく、ライセンス盤もいろいろ出している。あのフィオレンティーノンのBOXセットもリリースしている。
彼がスタジオ録音をする気になった理由はよくわからないけど、最近は新譜を出すのが難しくなっているクラシック界とはいえ、メジャーレーベルよりも、マイナーレーベルの方が元気が良い気がする。それに、メジャーからマイナーレーベルへ移籍する演奏家も以前よりも増えているようだし。

【新譜:リスト《巡礼の年 第1年&第2年》】
Annees De PelerinageAnnees De Pelerinage
(2011/12/13)
Enrico Pace

視聴する(仏amazon)

録音場所は、若い時に学んだイタリア・ぺーザロのロッシーニ音楽院にあるアウディトリウム・ペドロッティ。
アルバムのレビュー[vk.nl](オランダ語)

【過去のソロ録音:リスト《ロ短調ソナタ》】
過去に唯一ソロレコーディングしたリストのロ短調ソナタ。
プライベート録音?らしく、市場には流通していない。
Enrico Pace plays Liszt - Sonata in B



《参考情報》
パーチェについていろいろ知りたい方のために関連情報を列記しておきます。
CD・DVD情報は各記事に記載しています。

【プロフィール】
 - トッパンホールのウェブサイト
 - wikipediaの英文サイト
 - Piano Classicsの英文サイト

【過去記事:CD&DVD関係】
 - ツィンマーマン&パーチェ ~ バッハ/ヴァイオリン・ソナタ全集
 - ツィンマーマン&パーチェ ~ バッハ/ヴァイオリン・ソナタ全集(ライブ録音/DVD)
 - ツィンマーマン&パーチェ ~ ブゾーニ/ヴァイオリンソナタ第2番
 - カヴァコス&デメンガ&パーチェ ~ メンデルスゾーン/ピアノ三重奏曲第1番
 - カヴァコス&デメンガ&パーチェ ~ メンデルスゾーン/ピアノ三重奏曲第2番
 - ヒンデミット/ピアノ・ソナタ第3番


【過去記事:Youtube関係】
 - カヴァコス&パーチェ ~ ブラームス/ヴァイオリンソナタ第3番
 - カヴァコス&パーチェ ~ ベートーヴェン/ヴァイオリンソナタ第6番
 - ツィンマーマン&パーチェ ~ サン=サーンス/ヴァイオリンソナタ第1番

他にも、メンデルスゾーン《スコットランドソナタ》、リスト《死の舞踏》、ラフマニノフ、ブラームスなどがYoutubeで聴けます。


【Youtube】
Youtube:enricopace67さんのチャンネル
オランダ在住のファンのチャンネル。リスト、ブラームスなど、パーチェのライブ映像が多数登録されてます。

Youtubeを検索すれば、その他に、リストコンクール時のライブ映像、友人のイタリア人ピアニストとのデュオ、インタビュー番組など、かなりの動画が見つかります。

《演奏会予定》
今年4月にマドリッドの演奏会で、カヴァコスのピアノ伴奏者として、プロコフィエフのヴァイオリンソナタ、アウエルバッハの作品(これは珍しい)、ベートーヴェンのクロイチェルソナタを弾く予定。
ツィンマーマンは最近はアンデルジェフスキと演奏会でよく弾いているので、パーチェの方はカヴァコスと演奏することが多いのかもしれない。

tag : パーチェ フランツ・リスト

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シュライアー&オルベルツ ~ ベートーヴェン/愛されない者の溜息と愛の返答
《愛されない者の溜息と愛の返答》というちょっと珍妙な曲名で、正式な作品番号も付いていないベートーヴェンの歌曲WoO118。
この曲が有名なのは、おそらく《合唱幻想曲》のフィナーレの合唱部分で使われている旋律が出てくるため。
ずっと以前、フィッシャー=ディースカウのベートーヴェン歌曲集を聴いていた時、突然、あの聴き慣れた《合唱幻想曲》の旋律が聞こえてきて、ちょっとびっくり。

第九よりも好きな《合唱幻想曲》の旋律が使われているので、この曲は記憶にしっかり残っている。
ベートーヴェンはそれほど多くの歌曲は残していないけれど(リートだけでCD3枚分くらい)、ロマン派の歌曲集よりも情緒過多でないところが良くて、元々ベートーヴェンの歌曲はかなり好き。

Ludwig van Beethoven - Seufzer eines Ungeliebten und Gegenliebe WoO 118
Peter Schreier, tenor. Walter Olbertz, piano.
《合唱幻想曲》のフィナーレの変奏主題に相当する旋律は、3:24~。






こちらは《合唱幻想曲》の終盤部分。
4:30あたりで、"Allegretto, ma non troppo,quasi Andante con moto"に入って、ピアノのアルペジオとオケが序奏的な伴奏を初めて、やがてソリストたちの四重唱で、次に合唱で、変奏曲の主題を歌うところ。
この主題が、シュライアーの歌っている旋律と同じもの。
何度聴いても、明るく伸びやかで、開放感と喜びに満ちたフィナーレ。この高揚感が何とも言えません。

Hélène Grimaud - Beethoven Choral Fantasy, Part 2 - Proms 08
Helene Grimaud,Sir Roger Norrington,BBC Singers,BBC Symphony Chorus,BBC Symphony Orchestra



tag : ベートーヴェン

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池田浩明著 『パンラボ』
パン好きや出版人の間で、ちょっとした話題になっているのが、先月出版された『パンラボ』。
amazonの紹介文を読むと結構面白そう。
パンラボパンラボ
(2012/01/25)
池田 浩明

商品詳細を見る

帯に大書きされている言葉は「パンの図鑑」。
ネット上に書評がいろいろ出ているけれど、パン好きが書く書評とは違う視点が入っているのが、TRANSIT誌のチーフ・エディター加藤直徳さんの書評 "作り手の意匠が光る2冊の本"
著者はパンライターさんで、本の中身はざら紙(わら半紙風?)で、モノクロパン写真に文章がいっぱい。
「写真が綺麗なだけで結局何が言いたいか分からないお洒落パンガイドではない。小麦の話に始まり、作る、切る(!)、歴史...まで懇切丁寧に編集されている。....この本以外はパンについては生涯要らんわ!と思ってしまった。うーん、素晴らしき編集魂。」と言うくらいに個性的なスタイルの本らしい。
225ページもあるのに、紙質とモノクロ写真のおかげで、1050円と破格の安さ。
パン好きなら読みたくなってしまう。
早速、近くのショッピングセンターの本屋さんで探すと、1冊だけパンコーナーの棚に並んでいた。

手にとって見ると、本体価格1000円にしては、膨大な情報量。
モノクロのザラ紙の体裁でも全く気にならない...というか、かえって斬新で良いくらい。ムック本のような趣き。
パンに関する歴史や作り方など、いろんな話が載っているけれど、一番多いのは、ベーカリーショップの短い紹介と、作っているパンの比較。
パンはホームベーカリー(と時々手捏ね)で作るので、ほとんど買わないし、遠いお店だと買えないパンが本に載っているので、そういうパンの比較をされても、どうもピンと来ない。
元々、手捏ねで作ることは少ないので、製法の細かなところはそれほど興味がない。
それよりも、それぞれのパン自体の歴史とか、ベーカリーショップ・パン職人さんのパン作り・店づくりに関する話がずっと面白い。

『パンラボ』というのは、元々は、とある雑誌の連載記事。
「パンラボ」ブログもあって、これが充実した読みものが多くて、とっても面白い。
お洒落なパン屋さんもそうではないパン屋さんも、いろんなパン屋さんが紹介されている。
ブログには、連載記事では書ききれなかった話が載っているという。
内容面では、本よりもブログ記事の方が、個人的な興味をそそられる話が多い。
カラー写真だし、特にユニークなベーカリーショップの紹介記事(かなり長文)がブログで読めるのが嬉しい。
パン職人と店づくりの話(コンセプト、店舗のつくり、経営方法、修行時代の話など)が載っていて、本の方に書かれていない話が読めてしまう。
こういう話も、まとめて本で読んでみたくなる。

ベーカリーショップのパンの話ばかりかと思ったら、 「コンビニ・ラボ」というカテゴリもある。
これは、コンビニ・パンのレビュー記事。袋物もパンも買わないけれど、大量生産パンの比較は意外と面白い。
袋物のパンといえども、常に新商品を発売しているので、商品サイクルが短く、アイデアも創意工夫も必要だろうし。

菓子パン・袋パンのレビューサイトなら、「パンな気分」も面白い。
よくこれだけ、次々と新製品を出すものだと感心してしまう。

「パンラボ」のブログ記事をいくつか読んでみると、 「シャポードパイユ(中目黒・中野) 133軒目(東京の200軒を巡る冒険)」の記事が面白い。
週に2日、ラッシュアワーの朝だけ、駅前でリヤカーを引いてフランスパンを売っているというパン職人さんのお話。
自分のベーカリーショップを持つ前から開店していたこの出張パン屋さんをずっと続けているという。
ミニバンで自家製パンを売っているパン屋さんは、大阪のオフィス街で見かけたことはあるけれど、リヤカーというのはあまりに斬新な(?)スタイル。
そこで売っているのは、カスクルート(バゲットのサンドイッチ)のみ。
彼のつくるバゲットは、ホシノ天然酵母で長時間発酵させている。
このパン職人さん、パリでお菓子修行をしていて、なぜかパン職人になってしまったという。
今まで紹介されたパン屋さんの記事は、ブログ上部にある「CATEGORY」をクリックすると、路線別に分類されている。
単に、お店で売っているパンの写真と内容がレビューされている記事と、パン職人さんのインタビューも載っているものと、2種類あるようなので、後者は読み物として面白い。

昨日(2月7日(火))の記事は、 「カンパーニュを伝えた男 ピエール・ブッシュ【職人インタビュー 007】」
これはかなり長文のインタビュー記事。ブッシュさんが日本でカンパーニュを焼き始めた理由やパン作りに対するポリシーが詳しく語られている。
こういう記事を読んで、写真を見ていると、彼らの作るパンを食べたくなってしまう。

勉強になったのは、酵母の話。
ドライイーストの製造方法とか、生イーストの違いなど、メーカー側の説明が注記されている。
いずれも、安全性に問題はないけれど、合成添加物が使われている。

天然酵母とイーストの話は、2月10日の記事 「天然酵母とのうまい付き合い方 帝国ホテル金林達郎 講習会」にも載っている。
"天然酵母信仰"や"美味しい焼きたてパン"という錯覚に対する辛口の話が逆に面白い。

過去の「職人インタビュー」記事 001-006 
 001. ル ブーランジェ ドミニク・サブロンのドミニク・サブロンさん
 002. ペリカンの渡辺猛さん,ペリカン 職人インタビュー取材を終えて
 003. シニフィアン・シニフィエの志賀勝栄さん
 004. ル・プチメックの西山逸成さん
 005. ルヴァンの甲田幹夫さん
 006. Zopfの伊原靖友さん・伊原りえさん


"演奏中にケイタイの着信音が鳴った時"
ときどき立ち寄っているyoshiさんのブログ<善福寺手帳>で、面白い映像が紹介されていた。
このyoutube映像は評判になっているらしく、アクセス数が370万件以上。
いくつかの動画ニュースサイトやブログでも紹介されている。

"演奏中の携帯着信音への対処法"という記事タイトルの通り、ヴィオラ奏者のリサイタルで無伴奏の曲を演奏している最中に(それも弱音部分)、近くでケイタイの着信音のメロディが...という最近ありがちな出来事。
こんなシーンに遭遇すると、ホールの空気が凍りつくのがわかる。
最近では、携帯電話抑止装置というものを設置しているクラシックのコンサートホールもあるらしい。
ただし、ホール内を"圏外"にする装置らしいので、着信音が鳴るのは防げても、携帯のアラーム機能には効き目がないという。

Youtube映像のヴィオラニストは、機転がきいて、ユーモアのある人らしい。
これくらい余裕をもって、リサイタル中の"突発事故"に対応できる人は、そんなに多くはないかも。

Nokia ringtone during concert of classical music


耳鳴り治療のための音響・音楽療法 (8) Ultrasonic Treatment(超高周波・超音波療法)
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Ultrasonic Treatment/超高周波・超音波療法
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"Tailor-made Notched Music Training(TMNMT)"に関する最新の臨床報告では、8000Hz以上の耳鳴周波数をもつ人に対しては効力がない...という結果だったので、高周波数の耳鳴り治療に関する論文を探してみると、超高周波または超音波を利用した耳鳴り治療法が発表されていた。
この療法は、Ultra high Frequency/Ultrasonic/Ultrasound treatment など、いくつかの名称がある。
数年間に渡ってこの療法を継続的に研究中または研究していた研究者は存在するが、研究者数・論文数とも少ない。
専用の治療機器も米国で開発・販売されたが、耳から聴くのではなくて、骨伝導を利用して振動によって高周波数の音を聴かせる。
日本でも、骨導超音波補聴器を応用した難聴者向けの耳鳴マスキング法が研究中。

概要
超音波を最初に耳鳴治療に活用したのは、1986年のCarrickらの研究。
被験者40人のうち40%(プラセボでは7%)が耳鳴改善効果を認めた。しかし、翌年のフォローアップ研究では、効果が全くないという、相反する結果が出ている。

2001年以降、Lenhartらの研究グループが、"UltraQuiet therapy"に関する論文や臨床報告を継続的に発表している。
同研究グループが参画する企業Sound Technique Systems社は、2002年頃に耳鳴治療機器"UltraQuiet"を開発・販売した。
また、Hearing Innovations Inc社でも、"Hi-Sonic TRD (Tinnitus Relief Device)"という治療機器を同時期に開発・販売した。
いずれもFDA(米国食品医薬品局)の承認(Clearance)を取得した機器。

超音波療法は、どのような条件の場合でも(耳鳴、難聴&耳鳴の両方、など)、骨伝導機器(音声信号を骨導用のバイブレーションに変換する)を使用する。
耳の後ろの頭蓋骨上(乳様突起)に機器をあてて、骨伝導により超音波を短時間出力する。
"UltraQuiet"は、高周波(14kHz以上が中心。20kHzまで)の合成したハープシコード音を使用。
"HiSonic"は、高周波と低周波の両方(19kHz~25.8kHz)をスイープ音または広い高周波数帯の音を使用。
この種の機器は全てのタイプの耳鳴りに適合するわけではない。また永続的な治癒につながるとは限らない。

参照資料
上記の内容は、以下の記事を元にまとめている。

【eHow.comの下記3件の掲載記事】
Ultrasound Treatment for Tinnitus
※この記事は、TRT療法のJastreboff&Hazelの共著『Tinnitus Retraining Therapy - Implementing the Neurophysiological Model』(Cambridge University Press、2004)の第6章を参照している。
Vibration Therapy Treatment for Tinnitus
Ultrasonic Treatment for Tinnitus

「Tinnitus_Device_Directory」(America Tinnitus Association『Tinnitus Today』,2003年9月号掲載)

参考情報
骨伝導製品メーカー・ゴールデンダンス㈱のウェブサイト:骨伝導のしくみ骨伝導のしくみ(オンラインショップ版)

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研究論文
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文献レビューでは、次の2グループによる研究報告が紹介されている。

Pubmedで論文検索したところ、超高周波/超音波を利用した耳鳴治療法に関する研究論文は多くはない。
検索KW:((high audio frequency) OR (ultrasonic) OR (ultra high frequency) OR (high frequency bone conduction)) AND tinnitus AND (treatment OR therapy)=61件
※ノイズ含む。期間、言語などの限定なし。

Carrick の研究グループ
"Low-powered ultrasound in the treatment of tinnitus: a pilot study"(1986)
-超音波を乳様突起上にあてて、長期慢性耳鳴りの主観的な改善の有無を測定する。
-試験方法は二重盲検交差試験。
-患者40人に対して、超音波ジェネレーターおよび同型のプラセボ機器でそれぞれ10分間の治療。
-試験を完了した患者のうち、40%が超音波で、同じく7%がプラセボで、それぞれ耳鳴りが改善。

Low-powered ultrasound in the inhibition of tinnitus(1987)
-試験方法は二重盲検交差試験。超音波による試験中と試験後の耳鳴緩和効果。被験者40人。
-前回のパイロット試験と同じ機器を使用したが、改善効果がほとんどない&全くない、という結果。プラセボと差がなかった。

Lenhardtの研究グループ
Lenhardt,Goldstein,Shulman他の研究グループによる研究論文は10件あまり。
”UltraQuiet therapy”を提唱している。

論文
UltraQuiet 関連論文リスト(5件)

【上記リスト以外の文献】
"Ultra-high-frequency ultrasonic external acoustic stimulation for tinnitus relief: a method for patient selection"(2005)
-"UltraQuiet"器:10-20 kHzのUltra-high-frequency (UHF)による音響刺激:10-14 kHzの閾値が40-50 dBSPL以下の患者に推奨。
-"HiSonic"器:20-26 kHzのUltrasonic (US) による音響刺激:10-14 kHzの閾値が50-60 dBSPL以下の患者に推奨。
-重度の耳鳴り患者52人にUHF/USの骨導音響刺激を与えたところ、52人中22が緩和。うち上記基準に該当する患者22人中20人が緩和したと回答。

"Congenital atresia of the external ear and tinnitus: a new syndrome."(2006)
"The role of the insula cortex in the final common pathway for tinnitus: experience using ultra-high-frequency therapy"(2006)
"Increasing the effective use of high-frequency spectrum tinnitus therapy"(2008)


上記の研究報告に関するレビュー論文
"Critical Review:The efficacy of ultra-high frequency bone conduction stimulation for the treatment of tinnitus"(2010)
1)論文レビュー
-超高周波/超音波による耳鳴治療に関する論文をPubmed等で検索し、8件を抽出。
 抽出基準:骨伝導で超高周波数(=10kHz超)の刺激を与える耳鳴り療法。
-8件中5件が対照群をおかない一般試験(試験中-試験後に測定)。 1件が非無作為化臨床試験のコホート研究。
残り2件が前向きクロスオーバー試験。(グループ内での繰り返し測定)
-Carrick他による2つの研究が、Lenhardtたちの研究よりもハイレベルのエビデンス。しかし、パイロットおよびフォロー研究は相反する結果。
-Lenhardt他の研究論文は、6件が分析対象。エビデンスのレベルが低く、ほとんとがレベル3(レベル4と2cも各1件)。最大の欠陥は対照群をおいていないこと。また、非盲検試験で被験者数も少ない。
-高周波が耳鳴の緩和やResidual Inhibition(比較的大きな音を聞いた後、耳鳴りが数秒以上抑制される現象)をもたらす仕組み、骨伝導で高周波音を与える理由について詳細な情報を示していない。
-研究グループは、"UltraQuiet device"の商業化も行っているため、利益相反があるように思われる。

2)今後の研究の方向性について
-適切な研究方法でハイレベルのエビデンスが提示された場合、さらに、様々なタイプの患者、より多い被験者において、前向きクロスオーバー試験、二重盲検・プラセボ試験による研究を進めるべき。
-被験者の聴力・耳鳴りの評価・測定(通常の聴力検査と超高周波聴力閾値)を行うことが重要。超高周波数帯の聴力域値が低い患者に効果があるとは考えられない。
-異なる周波数の刺激を使う、気導と骨導から刺激を与えるなどの方法で、比較することも有益。

『Tinnitus Retraining Therapy - Implementing the Neurophysiological Model』(Jastreboff&Hazel,Cambridge University Press、2004)
「6 Critical overview of selected tinnitus treatments:6.8.4 Ultrasonic stimulation」
-UltraQuietTMとHiSonicRによる治療効果について、今のところ明確な結果が出ていない。
(※これは、同書の執筆時点での見解)


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UltraQuiet therapy
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上記のLenhardtらの研究グループが提唱・開発した耳鳴り治療法。
骨伝導で超高周波数/超音波を聴かせる音響ジェネレーター”UltraQuiet"を使用する。

ジェネレーターの開発・販売は、Sound Technique Systems LLC.
1998年設立。 Dr.Lenhardtの研究グループが参画。音波利用による新しい機器の探索・開発を目的。

"UltraQuiet"製品概要
カスタマイズタイプの骨導高周波音療法機器。
FDA承認(clearance)済み:510(k)SUMMARY(Sound Technique Systems, LLC: UltraQuietTM)
価格:3200ドル。医療保険の対象外。専門医の処方箋が必要。
設計者はDr.Lenhardt。
合成したハープシコード音(6kHz~20kHzが抽出されるようにフィルター)は、14,000Hz以上の音に集中している。
小型のブラックボックスから、耳の後ろの乳様突起につけたヘッドバンド式トランスデューサーへ音が伝送される。
パソコンのCDプレーヤーやMP3プレーヤーでも再生可能。臨床試験をNew YorkとVirginiaで実施。
1週間以上のresidual inhibitionが現れる場合もある。
移動中のマスキング利用にはあまり適していない。
この機器を利用・研究している耳鳴治療機関は少ない。

参照文献
「Tinnitus_Device_Directory」(America Tinnitus Association『Tinnitus Today』,2003年9月号掲載)
Ultrasonic Treatment for Tinnitus(ehow.com)


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Hi-Sonic TRD (Tinnitus Relief Device)
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開発企業:Hearing Innovations Inc.(ウェブ検索したところ、該当なし)
機器製造企業;Misonix

"Hi-Sonic TRD"の機器概要
超音波利用の骨伝導マスカー。
FDA承認(clearance)済み:510(k)SUMMARY
価格:2200ドル。医療保険の対象外。専門医の処方箋が必要。
周波数は19,000Hz~25,800Hz。スイープ音と、広い高周波帯域の音の2つが選択できる。
ユニットがケーブルでヘッドバンドとトランスデューサーに接続。乳様突起にあてる。携帯可能。
重度の難聴者であっても、超音波によるスイープ音は聴き取り可能。
耳鳴が悪化することは稀で、あったとしても数分間の一時的な現象。
音が耳鳴り音に似ているため不快感を感じる場合がある。

参照文献
「Tinnitus_Device_Directory」(America Tinnitus Association『Tinnitus Today』,2003年9月号掲載)
FDAへの510(k)SUMMARY
Oregon Hearing Research Center's Tinnitus Clinicで臨床試験を実施(詳細不明)。Dr.Meikleの報告では、被験者20人のうち80%が耳鳴りが緩和し、多くの人でresidual inhibitionが見られた。

Hearing Innovations Announces Patented HiSonic-TRD Tinnitus Relief Device Now Available to Consumers[findarticles.com]
TINNITUS - What are those noises you hear?[hearinglossweb.com]


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The Inhibitor
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開発企業:Melmedtronics Inc.

"The Inhibitor"の機器概要
超音波利用の骨伝導マスカー(音で耳鳴をマスキングするわけではないので、メーカーのウェブサイトでは、マスカーではないと書かれている。)

FDA承認(clearance)済み:510(k)SUMMARY
価格:895ドル。専門医の処方箋が必要。
ハンドヘルド型。周波数は20~60kHz。
耳の後ろの乳様突起に機器をあて、超音波を1分間だけ出力する。(繰り返し行っても良い)

メーカー説明では、50%が耳鳴消滅(Total Releif)、20%(または25%)が部分的緩和、30%(または25%)が効果なし。
効果の持続時間は数分、数時間~数日(長い場合)。この"residual inhibition"が起こる正確なメカニズムは不明。
耳鳴の消滅・緩和はあくまで一時的なものであり、結局、治療前の耳鳴レベルに戻っている。聴覚過敏の場合には効果がない。

臨床試験の方法(510(k)SUMMARY記載):
-実施機関;The Hearing & Balance Research Center(ヒューストン)
-2004~2006年の3年間に、数回の臨床試験を実施。
-複数のultrasonic deviceを使用し、異なる超音波周波数(広帯域ノイズ、スイープ周波数(掃引周波数)、単一周波数(19~60kHz)で比較したところ、似かよった結果が得られた。
-乳様突起に1分間超音波を当てた。
-被験者は、治療前・後の耳鳴の大きさを10段階で評価した。
-被験者のうち数人は、1セッションで4回治療実施した。
-聴力は14earsで測定。(1.5~6.5時間で、1分間治療を16回実施)
"The Inhibitor"は、連邦調達庁(GSA)の連邦資材調達計画に含まれており、復員軍人援護局、国防省関係の病院など、政府機関で利用することができる。


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注記:"UltraQuiet","Hi-Sonic TRD"の最近の動向
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"UltraQuiet"の製造・販売メーカーであるSound Technique Systems社のホームページは2002年2月以来、更新されておらず、インターネット上の新しい情報がほとんどない。
開発者の一人Dr.Lenhardtは、現在、Virginia Commonwealth UniversityのSchool of Engineeringの教授。

"Hi-Sonic TRD"の販売メーカーであるHearing Innovations社は、インターネット検索では2社ヒットするが、米国オハイオとオーストラリアの企業で、いずれも"Hi-Sonic TRD"を販売していない。
Hearing Innovations社のCEOでオーナーだったMr.Przybylは、現在はANI Pharmaceuticals,Inc.のChief Executive Officer。
製造メーカーであるMisonixのカタログにも、"Hi-Sonic TRD"の情報について記載なし。

両社とも、FDA(米国食品医薬品局)の規制対象である医療機器のデータベース"Establishment Registration & Device Listing"(事業所登録と機器リスト)上に、製造・販売事業所及び治療機器の登録情報が、現在は記載されていない。

以上の情報から考えると、現時点で2社が実質的な企業活動を行っているのか、また、"UltraQuiet"と"Hi-Sonic TRD"機器が今でも製造・販売されているのかは不明。


FDAの医薬機器販売規制について
米国向け医療器具の製造または流通に携わる施設の所有者または経営者で生産や流通に携わっている場合、毎年FDAへ登録を義務付け。
医療器具によっては米国販売前にFDAからの510(k)許可書が必要。米国内ですでに販売されている医療器具と同等のものであるということを証明する科学的なまた技術的な情報を提出しなければならない。
(参照サイト:Registrar Corp社ホームページ


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骨導超高波補聴器型耳鳴マスカー(試作段階)
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重度の感音難聴者でも骨導で超音波を聴くことができる補聴器を開発し、そのハードウェアを利用して、耳鳴り用マスカーのプログラムを組み込み、マスキング装置を開発するもの。
研究代表者は、(独)産業技術総合研究所の中川誠司主任研究員。

「骨導超音波知覚を利用した最重度難聴者のための耳鳴マスキング法の検討」(研究概要報告書書)

科学技術振興機構が実施中の「平成20年度シーズ発掘試験 A(発掘型)」の事後研究評価では、"骨導超音波知覚を利用した最重度難聴者のための耳鳴遮蔽装置の開発"に対して、「総合的には評価できるが、耳鳴りマスカー開発に不可欠とされている改善効果の定量化、最適化条件の解明が不十分である。」となっている。


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参考:超高周波音の医療分野での活用に関するトピックス
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ハイパーソニック
ハイパーソニック・サウンドは、人間の耳には聞こえない20kHzを超える高周波成分を豊富に含んだ音のことで、この音が人間の脳の活性に影響を及ぼす「ハイパーソニック・エフェクト」について、研究者で作曲、指揮なども多彩な活動をしている文明科学研究所長大橋力氏が著書等で自説を発表している。

[音で探る関わり] 音は身体全体で感じている:大橋 力×中村桂子(生命誌ジャーナル 2006年夏号Talk ─ 対話を通して)
・ガムラン音の可聴領域を超える高周波を含む音を使った実験の紹介。
・ガムラン音を聴いた被験者は、脳波α波が増強された。
・ガムランの超高周波を含む音を聴いているときに基幹脳の活性は高まり、高周波をカットした音を聴いていると、基幹脳の活性は低下する。その結果、脳の報酬系や自律神経系が活性化され、免疫活性が増大しストレス性ホルモンも減る。

「人が生きていくのに欠かせない「必須音」というものがあるんです」(COMZINE かしこい生き方のススメ 第13回大橋力)
・人間が知覚できない20kHz以上の超高周波音には、人間の快感の回路を刺激する効果がある。
・この非知覚高周波だけを聴かせても脳が反応せず、逆に脳基幹部の活性は低下してしまう。聴こえる音と聴こえない音との両方がないと、脳は活発に働かない。
・熱帯雨林には豊富に存在していながら現在の都市環境に著しく欠乏している「知覚できない音」が、脳基幹部の活性をコントロールしていて、それが十分に与えられなかったり、取り除かれたりすると、脳基幹部の活性が著しく低下してしまう。

大橋力著『音と文明―音の環境学ことはじめ』(2003、岩波書店)
音と音環境について、文明論、生態学、音響学、聴覚知覚、脳科学、芸術など、多角的なアプローチで論じている。

『平成17年度ハイパーソニックデジタル音響システムに関する調査研究報告書 -可聴域上限を超える高周波成分によるハイパーソニック・エフェクトとその応用にむけて-』(社団法人 日本機械工業連合会・財団法人 デジタルコンテンツ協会、平成18年3月)
[報告書全文ダウンロード][報告書要約ダウンロード]
「ハイパーソニック・エフェクト」の評価手法(脳機能計測指標)と知覚モデルの検討。

高周波音を活用したオルゴール療法
「オルゴール療法と高周波音効果(ハイパーソニック・エフェクト)」 [オルゴール専門店オルゴール屋]
オルゴール販売会社のウェブサイトで、高周波音を医療に活用した事例等の情報が記載されている。
三協精機製の50弁及び72弁シリンダーオルゴールは70~80kHzまで、80弁ディスクオルゴールは100kHzまでの超高周波の音が出力できる。

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利用上の注意
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記事内容は、英文・日本文のホームページおよび論文・報告書から引用・要約したものです。
英文の日本語訳については、厳密な精度を期したものではありません。
記事に記載している情報の正確な内容については、原文をご確認ください。

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修正履歴
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2012.2.7 "The Inhibitor"の項を追記。

tag : 音響・音楽療法

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ダニー・ボーイ [ピアノ・ソロ・ヴァージョン] ~ エヴァンスとジャレット
エヴァンスのピアノ・ソロを集めた国内盤『Waltz for Debbie-Evans Solo』。
1950年代から60年代の録音なので、音が少し古めかしいけれど、あの《Waltz for Debby》が収録されている。
これは貴重な録音だけれど、それ以上に素晴らしいのが《Danny Boy》。

Waltz for Debbie-Evans SoloWaltz for Debbie-Evans Solo
(2002/06/21)
Bill Evans

※このCDは日本限定盤なので、すでに廃盤。HMVで試聴だけはできる。

《Danny Boy》は、原曲が「ロンドンデリーの歌」(Londonderry Air)で、アイルランドの民謡。
いろんな歌詞で歌われているそうで、特に有名なのが、この《Danny Boy》。
自分の元を去った息子を想う親の切ない心境を歌った曲。
エヴァンスは10分以上弾いているけれど、時間の長さを全く感じさせない。
ひとり心のなかで呟くモノローグのような静けさと淋しさが漂って、長調の明るさのなかにもの哀しい叙情感が流れている。
若い頃のエヴァンスのガラスのように脆く繊細で、研ぎ澄まされた感性が演奏から伝わってくる。




《Danny Boy》は、キース・ジャレットが東京でのソロ・リサイタルの時に、アンコール(?)で弾いていたらしい。
この頃、キ-スは57歳くらい。静かに語りかけるような落ち着いた語り口は、しっとりとした情感があって暖かい。
ピアノの音が身体の中に沁みこんでくるようで、とても心穏やかになれそう。

Keith Jarrett - Danny Boy (Tokyo 2002) 



新譜情報:ムストネン ~ スクリャービン/ピアノ作品集
2月末にリリース予定のムストネンの新譜は、スクリャービンのピアノ作品集。
レスピーギの《ミクソリディア旋法のピアノ協奏曲》という珍しい選曲の次は、初録音のスクリャービン。
それも、ピアノ・ソナタは第10番の1曲だけで、あとはエチュードやプレリュードなど。

2月末リリースなのに、すでに試聴ファイルが公開されている。
ムストネンのタッチが以前とは少し変わっているような...。全体的にチェンバロ奏法的なノンレガートが控えめになって、レガートよりのタッチが多くなっているような印象。(曲にもよるけど)
ソノリティは、いつもながら色彩感と透明感があり、硬質でクリア。レガート的なタッチが増えているせいか(それにペダリングも入っているので)、ムストネンにしては響きの厚みがあるような感じ。
初期の華麗で激情的な雰囲気はあるけれど、情念過剰でもなさそうだし、晩年の神秘的なオドロオドロしさがやや薄くて、少し爽やかな(?)スクリャービンかも。
レーベルはONDINE。リリースされたらNMLで全曲聴くことができるので、また印象が変わるかもしれない。
[2012.2.6 追記:すでにNMLに登録されているので、会員なら全曲聴けます。]


Scriabin Piano WorksScriabin Piano Works
(2012/02/28)
A. Scriabin

試聴する

<収録曲>
 12の練習曲 Op.8
 6つの前奏曲 Op.13
 5つの前奏曲 Op.16
 ピアノ・ソナタ第10番 Op.70
 詩曲『炎に向かって』 Op.72


スクリャービンは、10曲のピアノ・ソナタの他にも、練習曲や前奏曲などの小品集をいくつも残している。
どれも演奏時間は短い。ピアノ・ソナタでも、初期の第1番と第3番は20分近いけれど、他の曲は10分前後。
ピアノ・ソナタ以外の曲で演奏機会が多いのは、《12の練習曲 Op.8》や《5つの前奏曲 Op.16》。
初期作品は、ショパンの影響が強く、濃厚なロマンティシズムがあるけれど、ショパンを聴いている時に感じる"甘さ"は薄い。
そのせいか、ショパンは好きではなくても、スクリャービンなら抵抗なく聴けてしまう。

ピアノ・ソナタだと第4番までは、ロマンティシズム漂う作品なので普通に聴ける。
第5番以降になると、段々調性感が崩れてきて、神秘的な雰囲気漂う独特の和声も使われ、オカルト風(?)の曲想になっていく。
風変わりで奇妙な面白さはあるけれど、どうも好きとは言い難いものが...。

有名な曲の一つが《12の練習曲 Op.8》の第12番。
これは、くまさんのブログ<無題 - 404 Title Not Found>で紹介されていたキーシンの演奏。
ずっと若い頃のキーシンが渾身の力を込めた演奏は、ダイナミックで激情ほとばしる熱演。

Scriabin Etude op 8 no 12 by Evgeny kissin



《5つの前奏曲 Op.16》の第4番も有名。
この曲を初めて聴いたのは、リッチー・バイラークのジャズアルバム《Round About Bartok》
このスクリャービンのプレリュードを素材にした曲が収録されていて、ヒューブナーのヴァイオリンの旋律がずっと記憶に残っていた。


こちらも若かりし頃のガヴリーロフの録音。かなりゆったりとしたテンポで内省的というか、ちょっとべたっと情念が濃い感じ。
Scriabin - Prelude Op.16 No.4



ムストネンの新譜には収録されていないけれど、《練習曲 Op.2》の第1番もとても叙情的で美しい曲。
これはアムランのライブ録音。アムランはスクリャービンのピアノ・ソナタ全集を録音している。
Hamelin in Stockholm - Scriabin - Etude, Op 2 No 1 13/14


tag : スクリャービン ムストネン キーシン ガヴリーロフ アムラン

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吉松隆 ~ 大河ドラマ『平清盛』
クラシックの作曲家である吉松隆が初めてNHK大河ドラマの音楽を担当した『平清盛』。
TVは見ないし、最近は吉松ブログをチェックしていなかったので、そんなことになっていたとは露知らず。
<直仁の「善き人のための」研究室>さんのブログ記事で紹介されていて、初めて知ったのだった。
作曲家として駆け出しの頃、音楽コンクールに度々応募しては落選し続けていたそうだから、彼もメジャーな作曲家になったものだと、ちょっと感慨深いものが...。


大河ドラマ「平清盛」音楽制作メモ [吉松隆 交響曲工房]
『平清盛』の音楽の作曲過程が作曲者のホームページ<吉松隆 交響曲工房>に載っている。
(左側のメニュー:[月刊クラシック音楽探偵事務所] - [2012/01/10 大河ドラマ「平清盛」音楽制作メモ])

彼自身、そもそもテレビドラマの仕事が初体験で、映像関係の仕事も数年前に映画『ヴィヨンの妻』の音楽を担当したことがあるのみ。
「NHK最大の看板番組の音楽を一年間まかせるにしては、あまりに「未知数」かつ「ど素人」である。NHKとしてはかなり(それこそ清水の舞台から飛び降りるような…(^_^;)「冒険」だったに違いない。」と、自ら言っている。(本当にその通りかも)
制作メモには、平清盛に関する情報収集とゆかりの地めぐり、音楽のイメージ・コンセプト作り、作曲過程、メインテーマと劇中音楽の演奏収録など、舞台裏がいろいろ書かれていて面白い。

メインテーマを聴くと吉松サウンドがいっぱい。
特に冒頭導入部の透明感と静謐な音楽の美しいこと。
途中でロック風のアクション映画のような勇壮な曲想に変わるが、これがなかなか格好いい。
変拍子を使っているのか、ときどきちょっとリズムがとりにくい。
ドラマのあらすじを紹介した動画を聴いていると、吉松の交響曲作品で出てくるような旋律やリズム、ガーシュウィンの《ピアノ協奏曲》を思い出すようなリズムのトランペットとか、いろいろ馴染みのある音楽が聴こえてくる。
昔見ていた大河ドラマは、もっと雅楽風というか、クラシカルなタッチだったような気が..。
最近の大河ドラマは、こういうロック風な音楽が多くなっているんだろうか。
「今回の「平清盛」の世界は、雅楽や箏が鳴り響くような「雅な平安時代」ではなく、ダイナミックでプログレッシヴ(先鋭的)な世界=《平安プログレ》がテーマ」ということらしい。

平清盛 メイン・テーマ[Youtube]


劇伴のなかで使われている既存作品は、キース・エマーソン&グレッグ・レイク作曲、吉松隆編曲、東京フィルハーモニー演奏の「タルカス」。
それに、吉松隆の初期作品《5月の夢の歌》の旋律(ピアノ演奏は舘野泉さん)。
普通、既存作品を大河ドラマで使うことはしないらしいが、NHK側の要望で、最終的に使うことに決めたという。
どこに使われているのかよくわからないけど。サントラを聴いたらわかるかも。


「タルカス」のオーケストラ版のライブ録音が全曲Youtubeに登録されている。
原曲はもちろん、編曲版も初めて聴いたけれど、とってもカッコイイ曲。

Tarkus : Eruption ~ Mass ~ Manticore ~ Battlefield ~ Aquatarkus 
ELP EL&P Keith Emerson (arr.Takashi Yoshimatsu)




原曲はこちら。
Emerson, Lake & Palmer - Tarkus [Full Song] (Youtube)


こちらの録音は、《4つの小さな夢の歌》全曲。
演奏は、ピアニストで指揮者でもある内藤晃さん
冒頭の曲が"春:5月の夢の歌"。他の3曲は、"夏:8月の歪んだワルツ" "秋:11月の夢の歌" "冬:子守唄"。

吉松 隆/4つの小さな夢の歌/演奏:内藤 晃



さらに、大河ドラマの本編の後に放送される「紀行」で、当初3ヶ月間流れているのは「夢詠み」。
原曲は、吉松自身が二十絃ソロのために書いた《夢詠み》の第1曲"壱の夢"。
(ピアノ:舘野泉さん、ヴァイオリン:木嶋真優さん、藤岡幸夫指揮東京フィル(弦楽セクション)の演奏)


《平清盛》のサントラは、2月1日発売。
NHK大河ドラマ《平清盛》サウンドトラックNHK大河ドラマ《平清盛》サウンドトラック
(2012/02/01)
NHK交響楽団, 舘野泉(Piano), 藤岡幸夫(指揮)他

試聴する



「吉松隆 作曲家」(音楽事務所ジャパンアーツ)
「平清盛」チーフ・プロデューサーの磯智明氏の話。
ドラマの音楽を誰にまかせるか思案していたとき、吉松隆については、劇伴をほとんど書いたことのないクラシックの作曲家なので不安があったという。
最近の大河ドラマの音楽は、テレビドラマ音楽の第一線で活躍した作曲家ばかりで、計算と経験がものを言う世界。
結局、「清盛のように、常識を捨て、吉松さんの才能に賭けてみようと思い、決断」。やっぱり、吉松隆本人が言っている通り、NHKにとっては大冒険だったようだ。
『平清盛』のメインテーマを録音した際のエピソードも紹介されている。
CDの録音はN響の演奏。クラシックオケの演奏者と、ロックをオーケストラに編曲してしまうセンスを持っている作曲者では、曲に対する感覚のズレがあったらしい。



tag : 吉松隆

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生クリームを使わないトリュフ
生チョコトリュフは生クリームが必要なので作ったことはないけれど、生クリーム不使用のレシピを探してみると、牛乳、お豆腐、ヨーグルトを使って簡単にできるらしい。

❤材料2つで★ロイズ風生チョコ❤ [Coookpad]
牛乳を使うと、失敗したとか、柔らかすぎた...というつくれぽがちらほら。
『チョコ:牛乳=2:1』では、かなり柔いらしい。硬い方が良いなら、牛乳を減らした方が無難。

お豆腐deヘルシー★やわらかトリュフ[Coookpad]
生クリームの代りにお豆腐使用。上新粉(またはスキムミルク)を入れるのがポイント。
元ネタは、「伊藤家の食卓」の裏ワザレシピらしい。

トリュフ風♪ [Coookpad]
生クリームとチョコレートの代りに、豆腐と純ココア使用。

トリュフと生チョコ[勇気凛りん×cotta]
生クリームの代りに、ドリップヨーグルト(水切りヨーグルト)を少量使うレシピ。わりと珍しいかも。
ラズベリージャムも加えるので、甘酸っぱそう。
コーティングするタイプなので、手間が少しかかるけれど、フィリングが数種類作れるので、ちょっと凝った出来上がり。
トリュフタイプでない生チョコは、クリームチーズ使用。


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プロフィール

yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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