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レーガー/モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ(2台のピアノのための)
マックス・レーガーは、ドイツ3大B(バッハ、ベートーヴェン、ブラームス)の後継者と自認していたらしく、対位法や変奏曲を多様した作風と、オルガン曲から管弦楽曲・協奏曲・室内楽・器楽曲・歌曲・合唱曲まで幅広いジャンルの多作家。
身長2mと体重100kgを超える巨漢で、ヘビースモーカーの大酒飲み(?)。その人となりも豪快だったらしい。[Wikepedia解説]

不摂生な生活がたたってか、43歳で急逝してしまったけれど、その短い生涯に残した作品は、交響曲とオペラ以外のジャンルをカバーし、数も多い。優れたピアニスト・オルガニストであったレーガーの作品は、ピアノ作品全集はCD12枚(Thorofon盤)、オルガン作品全集はCD14枚(Mdg盤)にわたる。
それにしては、一般にあまり聴かれていないのは、オルガン作品が有名なこと、重厚長大で時として難渋な作風なのが、大きな理由なのかもしれない。
彼のピアノ作品で有名なのは、おそらくピアノ独奏曲の《バッハの主題による変奏曲とフーガ Op.81》。
レーガーのピアノ作品は、対位法と変奏を駆使した作品を聴くと独特の作風がよくわかる。
《ピアノ協奏曲》も書いてはいるけれど、これも重厚長大な曲で、ロマンティックで馴染みやすい曲とはとても言い難い。
ピアノ小品数が膨大にあり、陰翳の薄いあっさりとしたブラームス風の作風で聴きやすくはあるけれど、演奏や録音が多いとは言えない。編曲作品も多く、そのなかではバッハの編曲ものが有名。

珍しい2台のピアノのための作品は、いくぶん奇妙な作風が面白い《モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ/Variations And Fugue On A Theme Of Mozart Op. 132A For Two Pianos》。
あのピアノ・ソナタが、こういう曲に変容するのかという斬新さがとっても刺激的。これはレーガー自身が管弦楽版に編曲し、そちらの方が有名。
《バッハの主題による変奏曲とフーガ》の如く、やたらに音が密集し、不協和音じみた濁った響きの和音があちこちで聴こえる。
冒頭のシンプルな主題のモチーフは、とても可愛らしいモーツァルトのピアノ・ソナタ第11番(トルコ行進曲付き)第1楽章の第1主題。
変奏は全部で8つ。変奏が進んでいくと、主題がイメージできないような旋律と和声に変形されていたりする。
最終変奏(に限らないけれど)になると、原曲の主題がどういう風に変形されているのかよくわからなくなる。
それに、レーガーらしく極度に密集した重層感のある旋律や和音と、やや調子の外れた不協和的な和声が、2台のピアノでさらに強化されている。第2変奏はまだしもましな方で、急速な第4変奏、第5変奏、第8変奏はとってもパワフル。
全体的に混沌として錯綜したような独特の雰囲気がとっても摩訶不思議。

どことなく不健康で(?)物憂げな気だるい雰囲気の和声は、世紀末風かも。現代音楽や無調・不協和音を聴き慣れた人なら、面白く思えるのではないかと。
この曲は、1914年に書かれたので、レーガーが43歳で急逝する2年前の作品。
調性感がずれた不安定感を感じさせるのは、調性感が曖昧になっていった後期ブゾーニの音楽を思い出す。
そういえば、ブゾーニが書いた不可思議な雰囲気の2台のピアノ作品《バッハのコラール「幸なるかな」による即興曲》も、同時期の1916年に書かれていた。(ブゾーニとレーガーは親しい友人だったらしい)

Youtubeにある音源は、Genova & Dimitrovが、ポーランドのInternational Chopin Piano Festivalで演奏したライブ録音。
Genova & Dimitrov in Duszniki - Max Reger - Mozart Variations op.132a (1)


Theme
I Listesso
II Poco agitat
III Con moto
IV Vivace
V Quasi Presto
VI Sostenuto
VII Andate gra
VIII Moderato
Fugue Allegro grazioso


レーゼルのディスコグラフィで見つけたCD(ロドリゲスの専属レーベルの録音)は廃盤らしく入手しにくい。
それに90年代のデジタル録音のわりには、狭い室内で録音した古い音源をリマスタリングしたような古ぼけた響きがするので、音質は良くない。日本のamazonやitunestoreでダウンロード可能。
Con Brandenburg 3/5/Var & Fugue on Theme of MozartCon Brandenburg 3/5/Var & Fugue on Theme of Mozart
(2002/05/21)
Santiago Rodriguez,Peter Rosel

試聴する(MP3ダウンロード)


                           

2台のピアノ版よりも、管弦楽盤の方が、レーガーの重厚さと、混沌・錯綜とした雰囲気が強く出ている。
Max Reger - Variations and Fugue on a Theme by Mozart, Op. 132 - Variation 5: Quasi presto


Max Reger - Variations and Fugue on a Theme by Mozart, Op. 132 - Fuge: Allegretto grazioso


tag : レーガー モーツァルト レーゼル

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マルクス・ベッカー ~ バッハ=レーガー/ピアノ・トランスクリプション集
レーガーが編曲したブランデンブルク協奏曲を聴いて、たしかレーガーのバッハ編曲集がHyperionから出ていたのを思い出した。
Hyperionは、バッハのピアノ編曲集の編曲者別シリーズをVol.10までリリース済み。
編曲者は、ブゾーニを始め、ジロティ、レーガーから、サン=サーンスやイギリス人作曲家まで、聴き比べるには面白そう。
他に、ヒューイットのバッハ編曲集、リストのピアノ作品全集でバッハ編曲物のCDとかも出ている。

レーガーのバッハ編曲集(シリーズVol.7)は、マルクス・ベッカーによる録音。
ベッカーといえば、レーガーのピアノ作品全集(Thorofon盤)の録音で知られている。バッハのゴルトベルク変奏曲(CPO盤)も録音している。
Thorofon盤では、編曲作品は録音していなかったはずなので、これは聴いてみたくなる。

Bach Piano TranscriptionsBach Piano Transcriptions
(2009/06/09)
Markus Becker

試聴する(Hyperionウェブサイト)
2008年9月録音。演奏時間約108分のCD2枚組(録音時間から言えば、実質的には1.5枚分くらい)。1枚ものと同価格なのでHyperionにしてはお得なセット。

CDレビュー
Markus BeckerのJ.S.Bach/Regerピアノ・トランスクリプション集 ["Piano e forte"]
全曲聴いてみると、やはり演奏内容はこのレビューの通り。
レーガーの音が過密で重厚な編曲のために、インテンポではなく、ルバートが多くなってしまうのは仕方がない気がする。
リスト編曲版でしか聴いたことのない《前奏曲とフーガ BWV548》はこのCDを買って良かったと思わせてくれる曲。
バッハ編曲集 第7弾 [Bach with Piano]

                          

レーガーのオリジナル作品はいろいろ聴いたことがあるので、編曲版の方向性は大体想像がつくところはあったけれど、CDで全曲聴くと試聴したときよりも、作品と演奏の両方とも予想以上に良かった。
ブゾーニの編曲版(聴いているのは主にポール・ジェイコブスとレーゼルの録音)は、レーガーと比べれば、すっきりした響きで端正さと古典性を感じさせるところもある。
ベッカーのピアノの音自体が、潤いのある柔らかい響きとカラフルな色彩感があるので、レーガーのオルガン的なソノリティが楽しめる。

レーガーの編曲は、ブゾーニよりも音が過密な上に、響きが重なりあって、重厚で荘重なスケール感がある。
音色の色彩感も、声部が多いために、さらにカラフル。
ベッカーは柔らかいタッチの微妙な変化により、声部の色彩感の違いを際立たせ、強弱の変化も細かて表情豊か。かっちりとした構築感よりも叙情性の方が強い。
重層感のある響きは、オルガン的。音色も色彩感が豊かで、声部の分離も明瞭なので、声部の動きがよくわかる。
音が過密なパッセージや和音の響きが混濁しないように細かなペダルワークをしているようで、特に過密な和音が速いテンポで連続するとペダリングのバタバタという音がする。(ゼルキンのペダリング音よりは静かだけど)
音が過密なところに、主旋律、対旋律、ペダル鍵盤に相当する左手低音部の声部それぞれが明瞭に聴こえるように弾き分けるというのは、かなり至難の技。
その上、音楽的に表現しなければならず、それを全て満たそうとすると、速いテンポのところで、テンポが揺れたり、流れが淀むのは、無理ないように思える。その代りにオルガン的な多彩な色彩感と響きの重層感が味わえるので、トレードオフのようなもの。
ブゾーニ編曲版とはまた違った趣きがあって、レーガーの編曲したバッハは新鮮な響きがするので、とても素敵。
探してみても、レーガー編曲版の録音はあまリ見かけないので、このベッカーの録音は貴重。

収録曲は、《前奏曲とフーガ》3曲(BWV532、BWV552'St Anne'、BWV548'The wedge')。
《トッカータとフーガ》はニ短調のBWV565のみ。
他にはオルガンコラール作品の編曲版16曲。これは知らない曲がほとんど。ブゾーニ編曲ばかり聴いていたので、初めて聴く曲が多いというのもこのCDの良いところ。

Prelude and Fugue in D major, BWV532
《前奏曲とフーガ》の中でも一番好きな曲がBWV532(とBWV543)。
ブゾーニ版のフーガは、レーゼルが歯切れ良いタッチで勢いよくインテンポで弾き切っている。
レーガー版は、前奏曲のなかで高音部の旋律にトリルが数ヶ所連続して使われている小節があり、これはブゾーニ版では聴き慣れないフレーズ。ちょっと可愛らしい響きが面白い。
ベッカーは柔らかいタッチで、しなやかなで優美なところもある。フーガの終盤は厚みのある和音が連続したり、跳躍するので、インテンポでは弾き切れていないけれど、色彩感が豊かで重層感のある響きがオルガンのような雰囲気がして良い感じ。
ペダルワークが煩雑なのか、バタバタとペダルを踏みかえる音が時々聴こえてくる。

Durch Adams Fall ist ganz verderbt, BWV637
ブゾーニ編曲版あり。下降する旋律が溜め息のようで、やや重苦しく抑制された哀感が美しい曲。

Ach Wie Nichtig, Ach Wie Fl|chtig, BWV 644
Herzlich Tut Mich Verlangen, BWV 727
ブゾーニの編曲版はなし。どこかで聴いたことがあるような、哀感のある旋律が綺麗。

Valet will ich dir geben, BWV736
この曲も聴いた気がすると思って記憶を辿ると、シューマンの「ペダル・ピアノのための練習曲(6つのカノン風小品)」に似ている。
似たような音型が頻繁に現われ、声部間で受け渡されていく。ハープのような流麗なスケールの響きは、色調が明るくてとても華やか。
オルガンよりもピアノ演奏の方が音色が柔らかくて、蝶のように軽やかなファンタジー。

これはTon Koopmanのオルガン演奏。
J.S. Bach Valet will ich dir geben, Bwv 736.wmv



Prelude and Fugue in E minor 'The wedge', BWV548
リスト編曲版で有名な曲。リストのバッハ編曲は、リストの他の編曲物とちがって、かなりシンプルな旋律に和声なので、この編曲版も静謐で透明感のある瑞々しい叙情感がある。
旋律と和声に厚みのあるレーガー編曲版は、リスト編曲版とはかなり違った趣きで、重厚感と叙情性が融合して荘重。

Ich ruf' zu dir, Herr Jesu Christ, BWV639
これはブゾーニ、ケンプの編曲で有名な曲。レーガーにしては、かなりシンプルな編曲で、それほど重苦しさはなく叙情的。

An Wasserfl|ssen Babylon, BWV 653b
ゆったりしたテンポで明るい色調の曲。こういう曲想の編曲が多く収録されていて、ベッカーの暖かく柔らかい響きとふんわりと包み込むような情感がよく映えている。
葉巻のヘビースモーカーで大酒飲みの巨漢レーガーが、こんなに優しげな曲を書いていたというのがなぜか面白く。
(レーガーは、不摂生がたたってか、心筋梗塞のために旅のホテルで43歳で早世してしまった)

Komm, Heiliger Geist, BWV 651
明るく伸びやかで開放感のある曲。高音部の主旋律は夢想しているように楽しげで美しく、対照的に低音部で時折ボーンボーンと和音が響く。

Toccata and Fugue in D minor, BWV565
ブゾーニ編曲版あり。有名な《トッカータとフーガ ニ短調》。


ベッカーの音源がないし、元々録音・演奏機会も少ないので、Youtubeで見つけた音源で。
Bach ”Ich Ruf' Zu Dir, Herr Jesu Christ, BWV 639” (Reger's piano transcription)



ベッカーに比べると、Laurialaは残響が短めで響きがすっきりし、表現もシャープでややあっさりした感じ。
Johann Sebastian Bach ,Toccata D minor BWV 565 Transkription für Klavier (Piano:Risto Lauriala)


tag : レーガー バッハ ベッカー

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Medical Rresponse Dog
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Medical response dog
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先日たまたま見ていた医療関係のネットニュースの見出しで目にした言葉は"低血糖アラート犬"。
もしかして、医療ニュースだから、人間が低血糖になったら(なりそうだという兆候を感じたら)、ワン!と吠えて、警告してくれるんだろうか?まさか~と思っていたら、実際その通りだった。

障害のある人を介助する犬と言えば、真っ先に浮かんで来るのが盲導犬。それから、介助犬、聴導犬、セラピー犬。
医療分野以外でも、人間の手助けをする犬は、警察犬、麻薬捜査犬、災害救助犬(救難犬)、軍用犬。
探せば、このほかにもいろんな文野で役立っている犬たちがいそう。

驚くべき能力を持つ犬たち~Extraordinary Dogs~ [National Geographic Channel]
イギリスの実話では、ヨークシャー・テリアが糖尿病の飼い主の発作を事前に警告する、コリー犬が飼い主のガンを発見して知らせた。ベルギーでは持病を抱える飼い主に発作の前兆を知らせる犬がいる。

"Medical response dog"のタイプ
国際団体Assistance Dogs International, Inc.(ADI)の定義・分類によると、使用者(handler)に対して特殊なサービスを提供する犬のことを"Assistance dogs"と言う。
"Assistance dogs"のタイプは3種類:Guide dogs(盲導犬)、Hearing dogs(聴導犬)、Service dogs。
"Service dogs"は、視覚・聴覚以外の障害を持つ人を手助けする犬で、ほとんどが特殊な訓練を受けたゴールデン・リトリバーかラブラドール・リトリバー。
ニュース記事を見ていると、例外的にたまたま飼っていた犬が、訓練も受けていないのに、同じような役目を果たしたケースもある。
使用者の障害・症状は様々で、車椅子使用者や平衡感覚障害、自閉症、てんかん、糖尿病、精神的障害を持つ人など。
"Service dogs"の定義・役割[Assistance Dogs International, Inc.(ADI)]

"低血糖アラート犬"は、Service dogsの一種である"Medical response dog"に分類される。
"Medical response dog"が対応している障害・症状は4種類。
- Diabetic alert dog : 糖尿病患者の低血糖状態の感知
- Seizure response(alert) dog : てんかんや発作性障害の発生の予知
- Psychiatric service dog : 精神障がい者のサポート
- Cancer & bio-detection dog : 癌を感知
犬の病気探知能力~低血糖、てんかん、癌 [子犬のへや]

身体障害者補助犬法
この法律では、「補助犬」として、「盲導犬、介助犬及び聴導犬」が規定されている。
特定の病状を感知・予知する犬は対象外。
てんかんや発作などの予知対象・予知確度がわからない、予知能力が学術的に解明されていないことなど、「予知犬」として認定することが困難というのが理由らしい。

Assistance Dogs International,Inc.(ADI) (国際アシスタンスドッグ連盟)
1987年にアメリカで設立。事務局本部はカリフォルニア州。
加盟団体数:世界中の110の補助犬(盲導犬、介助犬、聴導犬)育成団体が加盟。日本では、日本盲導犬協会の他に、介助犬が1団体、聴導犬が1団体合計3団体が正会員として加盟。
目的は、補助犬育成事業者の訓練方法や認定基準の統一、補助犬を受け入れるための理解促進。毎年、米国や欧州で国際会議を開催している。
(参照:日本盲導犬協会ホームページ)

訓練団体
一般的に非営利団体、慈善団体が"Medical response dog"の訓練を行っており、海外サイトには関連NPOや個人のホームページが多数ある。
Indiana Canine Assistance Network (ICAN)
米国インディアナ州で介助犬訓練のボランティア事業を実施。hearing alert dogs(聴導犬)、seizure alert/response dogs(てんかん予知犬)は訓練していない。
Medical Detection Dogs : 英国の慈善団体。Cancer & Bio-detection dogMedical Alert Dogの訓練を行っている。



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低血糖アラート犬(diabetic alert dog)
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"低血糖アラート犬"は、英語で "diabetic alert dog" または "Hypo alert dog" と言う。
(diabetic=糖尿病、hypoglycemic=低血糖)

「“低血糖アラート犬”が1型糖尿病患者の低血糖を感知し、意識消失や緊急通報回数が減少」 [日経メディカルオンライン]
2012年6月8日~12日にフィラデルフィアで開催された第72回米国糖尿病学会での研究報告。
"低血糖アラート犬"は、患者の生活全般を手助けする介助犬の訓練と、糖尿病患者の低血糖時の汗を嗅ぎ分ける訓練を受けている。
アラート犬が患者の低血糖を感知したら、どういう行動をとるかと言うと
1)患者の腕や足を揺すり、患者がそれに反応しないときは、ワンワンと吠えて他の人間に知らせる。
2)周囲に誰もいないとわかると、アラート犬は電話の受話器を外し緊急通報用パッドを叩いて救急車を呼ぶ。
3)患者が反応した場合は、冷蔵庫を開き、糖分を含む飲食物を選んで、患者の手元に運ぶ。

実際の生活場面でアラート犬の能力を調査した結果は、調査期間中に67回反応し、そのうち28回は正常血糖値。
低血糖の検出感度は97.5%、低血糖をアラートしなかった偽陰性は2.5%(1回)。
アラート犬の警告により、患者が低血糖で意識を喪失した回数が時間が経つにつれ減少している。

低血糖アラート犬が汗の中のどのような成分に反応しているのかは未解明。

<参考サイト>
犬の低血糖探知能力[子犬のへや]

関連記事:低血糖を感知して知らせる「糖尿病アラート犬」 [糖尿病ネットワーク:創新社,2011年09月21日]
犬のトレーナーの説明では、ヒトの1000倍の嗅受感覚器を持つ犬は嗅覚が鋭く、低血糖やケトアシドーシスを嗅ぎ分けるらしい。

関連記事:Dogs alert diabetes patients when blood sugar is off [USA Today,10/13/2010]
- 犬の訓練施設の一つで非営利団体の"Dogs4Diabetics"(D4D)でトレーニングを受けたBriaは、13歳の少女Ashleyに低血糖状態の兆候が現われる(または定期的に行っているデジタル血液テストの)数分前に、低血糖の危険ゾーンに入りそうになるとAshleyに知らせる。
- 低血糖アラート犬の価値は3万ドル相当。しかし使用者は申し込んでから数ヵ月後に、わずか150ドルの申込費用と諸経費(application and materials fee)を支払って、アラート犬を手にすることができる。
- D4Dは今までに12歳~75歳の糖尿病患者(航空整備士や大学生もいる)にアラート犬を提供している。
- D4Dが行う犬のscent-detection(臭い弁別)訓練は数ヶ月。訓練している犬の大半はすでに盲導犬育成団体で訓練済みの犬で、テニスボールに興味を示したり遊ぶのに気をとられたりするため、盲導犬としては不適格だった、
- 糖尿病はおびえて孤立した状況にもなりうるため、アラート犬は医療面だけでなく、精神的にも良い効果をもたらす。



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てんかん反応犬(Seizure response dog)
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使用者のてんかんや発作性障害を予知して対処する犬は、"Seizure response dog"、"Seizure alert dog"(てんかん反応犬、てんかん予知犬)と言う。
"Seizure response dog"に関する研究論文はほとんどなく、今のところ、てんかんなどの発作を"予知"する犬の能力とそのメカニズムは科学的に未解明。

彼らが使用者のてんかん発作に対してとる行動 (英文Wilipediaの解説)
- (てんかん発作を起した使用者のために)助けになる人を見つける、または、医療用警報や事前にプログラムされた電話を作動させて、助けを呼ぶ。
- 潜在的に身体への危険がある物(歩行上の障害物など)から使用者をブロックする。
- 発作中または発作後に意識不明になっている使用者を起こす。
- 精神的なサポート(と二次的に感情面でのサポート)。
- 犬と使用者の病状に関する情報、最初に発見した人向けの指示書き、緊急医療用キットと酸素の携帯。

Seizure Dogs に関する定義とQ&A [Epilepsy Foundation of America, Inc]
Epilepsy Foundation of Americaは、メリーランド州に本部のあるてんかん患者のための全国的非営利組織。
- 犬がてんかんを予知する行動は訓練可能だというトレーナーの言葉に対しては、(特に高額な訓練費用がかかる場合はなおさら)非常に慎重に考えるべき。
- 犬ができることとできないこと、血統による違いがあるのかどうか、この独特のスキルを開発・習得するための一番良い方法はなにかについて、より多くの研究が必要。

Epilepsy Foundation’s Position on Seizure “Predicting” Dogs
Epilepsy Foundationの"Seizure 'Predicting' Dogs"に関する見解。
- メディアの報道記事はほとんどが逸話(anecdotal)であり、個人的な経験を語ったもの。
- このタイプの犬の能力を試験した研究はほとんどないが、ある英国の研究結果では、生まれながらこのスキルを持っている犬がおり、訓練すれば使えるようになるかもしれないと示唆している。
- Roger Reep博士(フロリダ大学生理学部准教授)の研究(1998年):30~60歳のてんかん患者77人に対して、てんかん発作前・発作の間に飼い犬がとった行動等をアンケート。調査後のインタビューでは、31人中3人がてんかん発作が起こるのを飼い犬が知っているように思えると言い、他の28人はてんかん発作の間、飼い犬が一緒にいてくれたと答えている。
- "seizure predicting" dogsに関して、さらに多くの研究が必要だと考えており、"seizure predicting"するServeice animals(介助サービスを行う動物)を訓練して提供するというプログラムには注意が必要。

<参考サイト>
犬のてんかん予知能力[子犬のへや]

関連記事:Seizure-Alert Dogs Save Humans With Early Warnings (February 11, 2004) [National Geographic News]
How dogs detect an oncoming seizure in a human is a mystery. Some trainers and researchers think they detect subtle changes in human behavior or scent before an episode occurs. There are no scientific studies, however, to prove these theories. Trainers also believe the behavior is not breed, age or gender specific in dogs.
- Seizure alert dogsがどうやっててんかん発作を事前に察知するのかは謎。理論的に証明するための科学的研究はない。
人間の行動の微妙な変化を見つける、てんかん発作前の臭いをかぎ分けるという訓練士や研究者もいる。彼らは、血統や年齢などとは無関係の生まれながらの能力によるものだと信じれている。
- 1996年以降、非営利団体が25頭以上のseizure alert dogsを育成。てんかん発作が起こる15分~12時間前に、鼻を鳴らす、足で掻く、不安そうに吠えるという行動で警告する。
- 犬たちの出自は様々。ブリーダーやアニマルシェルターの犬やもともと飼い主のペットなど。
- 飼い主がテンカン発作を起している間、その側に留まるか、電話で911番をダイヤルするように訓練される。
- てんかん予知能力を持ったアラート犬の実際の頭数は不明。標準化された訓練や認証システムが無く、個々人でペットを訓練している人もいるため。
- 1998年の研究では、29人の犬の所有者(少なくとも月1回の発作がある)のうち、9頭が飼い主のてんかん発作に対処し、うち3頭は事前に警告したという報告がある。

関連記事:Personal Story of a Seizure Dog [Epilepsy Foundation (Minnesota)、2008.6]

"危険予知犬":日本に一頭しかいない飼い主の発作を予知する犬。

映画「私の中のあなた」
白血病の姉のドナーとなる目的で遺伝子操作により生まれてきた9歳の少女から、両親を相手どった訴訟の弁護人を依頼された敏腕弁護士の飼い犬がボーダーコリーのジャッジ。飼い主の態度や臭いでてんかん発作が起こるのを察知し知らせるように訓練された"てんかんアラート犬"。(<私の中のあなた  MY SISTER'S KEEPER>[映画の話でコーヒーブレイク])



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ガンを感知する犬(Cancer detection dog)
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低血糖やてんかん・発作を予知する以外に、癌を感知する能力を持つ犬は"Cancer detection dog"と呼ばれる。
ガン患者の体内で生成される化学物質を犬の嗅覚が捉えるらしいが、その化学物質は特定されていない。

Can dogs detect the smell of cancer? [Cancer Research UK]
Dogs detecting cancer: Intriguing but not practical [Cancer Research UK]
上記2件の記事は、この犬の能力については、"興味深いが実用的ではない"という批判記事。
それによると、トレーナーと犬との両方の育成訓練に時間がかかり、訓練できたとしても犬の能力差やその時々のコンディションによるばらつきがあり、医療手法として導入できるものではない。
犬ではなく、"electronic noses"(電子式の鼻=検知装置)を開発するべきであり、実際、世界でその種の装置の研究開発が行われている。

<参考サイト>
犬のガン探知能力 [子犬のへや]

参考論文:Olfactory detection of human bladder cancer by dogs:proof of principle study

関連記事:Saved by the dog-tor: Pet collie 'sniffed out' that owner had breast cancer (27 February 2009,Mail Online)
イギリスでコリー犬が飼い主の乳ガンを発見してその命を救ったという逸話。

関連記事:The dogs that can detect cancer: Meet the four-legged 'bio-detectives' who are pioneering a health revolution (16 November 2011,Mail Online)


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C.difficile感染を検知する犬
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ビーグル犬クリフがC.difficile感染患者を高精度に探知 ベッドサイドで座り込めば陽性[日経メディカル オンライン]


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備考
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この記事は、主に英文情報を要約・編集したものです。正確な内容はリンク先の原文情報をお読みください。
レーゼル 『ベートーヴェンの真影 ピアノ・ソナタ全集 6 』 ~ ピアノ・ソナタ第27番,第28番
レーゼルの『ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ全集』は全8巻からなり、各巻の収録曲の配列はレーゼル自身が新たに考えたもの。
基本的に、作曲年代順(作品番号順)に並べることはなく、調性や曲想の関連性・対称性、また、各巻には一般的に有名な曲を1曲は入れておくという方針で配列している。
レーゼル自身、この曲目構成に「『そうでなければならない!』。自分でも良くできた構成だったと思ってます」。

第6巻の最後の2曲は、珍しくも第27番と第28番と連番になっている。
といっても、ベートーヴェン中期の最後の作品第27番は1814年、後期の最初の曲第28番は1816年に書かれた、作曲法も作風も大きく異なり、2曲連続して聴くとその変化がよくわかる。

ベートーヴェンの真影 ピアノ・ソナタ全集6ベートーヴェンの真影 ピアノ・ソナタ全集6
(2010/12/22)
レーゼル(ペーター)

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ピアノ・ソナタ第27番ホ短調 Op.90 [ピティナ作品解説]
第1楽章 Mit Lebhaftigkeit und durchaus mit Empfindung und Ausdruck(速く、そして終始感情と表情をともなって)
ドイツ語で速度と表現が指定されている。他の曲の楽譜をぱらぱらと見ると、思ったよりもドイツ語での指定が多い。

いかにもベートーヴェンといったホ短調でやや悲愴感のある劇的な雰囲気と旋律は、コリオラン序曲やエグモント序曲にちょっと似ている気がする。
29小節から右手で2オクターブ一気に下降するスケールはとってもドラマティック。
ロ短調に転調した55小節目の主題で、和音からアルペジオへ変わった左手伴奏の暗い音色と律動感は、嵐が迫りきつつある予感がする不穏さ。
120小節から、両手で徐々に鍵盤上をすり上がっていく部分は、左手のsfで強調された音が良く響いて旋律のように繋がっていき、息詰まるように。
全体的に緩急・静動のコントラストが強く、どんよりした暗い鉛色の不吉な暗雲が垂れ込め、全編に緊張感が流れている。こういう雰囲気の曲はいつ聴いてもゾクゾクっとする。


これはアラウのPhilips旧盤。
Arrau - Beethoven sonata no.27 op.90 - mov.1



第2楽章 Nicht zu geschwind und sehr singbar vorgetragen (速すぎないように、そして十分に歌うように奏すること)
軽やかで優美な明るい曲想は、第一楽章とのコントラストが鮮やか。
旋律が軽やかに流れているわりに、静けさが漂っている。喩えていうと、雨雲と去った後の秋の水色の空のような透明感。何か憑き物が落ちたようなさっぱりとした感覚。
歌謡性のある主題旋律が何度も何度も登場し、展開が変化に富む...というわけではないので、ロンド形式というのが、元々聴きにくく感じるせいもあって、あまり好きな楽章ではない。。

チャールズ・ローゼンの作品解説書『ベートーヴェンを"読む"-32のピアノソナタ』で、第27番の終結部の解説を読むと、かなり変わった指示が書き込まれている。たしかに楽譜を確認してもその通り。
282小節から4小節間に渡る長いリタルダンド、その直後から4小節後までアッチェレランド、その4小節目の後半(2拍目)に突如 a temp が現われて、次の小節で終結。
ローゼンは「最後24小節にわたり、複雑ではあるが繊細な着想が語られた後、最終小節はさりげなく投げ出されるかのようだ。・・・ この効果は繊細でとても美しく、叙情の中に控えめなユーモアが篭められている。」
最後にアッチェレランドで盛り上がって、そのままフィナーレ...という期待を裏切るように、a tempoで沈着冷静に。
ほのかなユーモアを漂わせて終わるところは、ベートーヴェンらしいひねりが利いていて面白い。

ベートーヴェンを “読む”ベートーヴェンを “読む”
(2011/12/22)
チャールズ・ローゼン

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この第2楽章に続けて、テオドール・アドルノがベートーヴェンのピアノ・ソナタの中で「最もミステリアス」と評したという第28番Op.101。
第1楽章冒頭から、第27番で終わる「中期」のベートーヴェンとは違った世界に入っていくのを実感する。

ピアノ・ソナタ第28番 イ長調 Op.101 [ピティナ作品解説]

第1楽章は美しい叙情と静寂さに満ち、第2楽章は対照的に符点のリズムで躍動的な行進曲風のスケルツォ、第3楽章は沈みこむような陰鬱な叙情に覆われ、第1楽章の主題の回想を経て、第4楽章のフーガ。
各楽章の作曲技法や曲想の違いが面白くて、特に第2楽章と第4楽章が記憶にこびりついてしまった。ふと気がつくと、頭の中で記憶が勝手にこの2つの楽章のどちらかを再生している。こういうのを"Brainworms(脳の虫)"というのかな?
ハンマークラヴィーアの解説は巷にたくさんあるだろうけれど、ローゼンの『ベートーヴェンを"読む"』では、その影に隠れてしまって地味な存在(?)の第28番をかなり詳しく解説している。
ローゼンによると、2つのチェロ・ソナタOp.102と同時に作曲されているので、第1楽章はこの2曲に似ているし、チェロソナタ第4番(Op102-1)と楽章構成や曲想の共通点も印象的。
「形式が極めて変わっているため、ベートーヴェンが構造を実験的性格のものと考え、2つの異なる音楽素材で作曲しようと望んだかのようだ。彼の作品の中で、このような二重の試みを行った例を、私はほかに知らない。」

第1楽章 Allegretto, ma non troppo
8分の6拍子の叙情的小品。
第30番と第31番の第一楽章に通じるような叙情性を感じる楽章。
その3曲の中では、第28番が一番落ち着いた静寂さを湛えて、内省的な雰囲気があり、ときどき高音部のばらけた音の配置のなかに音楽が拡散していくようにも聴こえる。
レーゼルの弱音は、音色は明るく、タッチも柔らかくレガートで優美。過去を回想するような叙情感が美しい。
ダイナミックレンジをあまり大きくは取らず、ゆったりしたテンポや、休止の間のとり方で、この曲のもつ静寂な雰囲気がよく伝わってくる。

ベートーヴェンには珍しいmfの指示がある。これは「より柔らかな伴奏声部の響きに対し、カンタービルの旋律を際立たせることを意味している。」(ローゼン、以下同)

第2楽章 Vivace alla Marcia
符点のシャープなリズムが一貫して流れる行進曲風。楽譜を見ていると、上行下行を繰り返している。
主旋律が中~高音部寄りにあり、両手の旋律が重ならないところも多いので、和声に重厚感も少なく、厳めしいミリタリー調にはあまり聴こえない。ところどころ入っているトリルの装飾音がリズミカルで響きも面白い。
レーゼルの演奏にも余計な力みがなく、明るめで透明感のある抜けの良い音で弾くと、軽妙。
現代的な乾いた感性に近いものを感じるせいか、どこか諧謔で摩訶不思議な雰囲気がする。

中間部は、一転してレガートで鐘が鳴るような旋律で始まる。(ベートーヴェンがリピート記号を書き落としているので、原典版ではリピート記号が追記されている)
小鳥が囀るような旋律が可愛いらしい。レーゼルの演奏では、何かを"問いかけて"いるような曖昧さを感じる。


第3楽章 Adagio, ma non troppo, con affetto - Allegro
Adagioは、第31番のアリオーソ的な悲愴感があるけれど感情を込めて歌うような旋律ではなく、深く沈潜して重苦しい。

ローゼンが解説していた9~16小節のペダル指示について。
14~16小節の最後の半拍にのみペダルを要求しているが、演奏上は、その前の小節にもペダルを使ってバスの響きを保持するか、譜面通りのペダル指示でタッチとルバートによりバス音を際立たせるか....。この部分は、「ショパンのような響きがする」。

第1楽章の主題が回想された後、トリラーを経て、イ長調の主題が現われるところは、フィナーレらしく力強く華やか。
第1楽章と違うところは、主題のフレーズの後で、フェルマータの休止が加えられて、旋律の流れが止まってしまうところ。
この効果は、「自信を持って思い出すことがなかなかできない記憶」のようで、断片的に繰り返される。
ちょっともどかしい感じがする。最後にやっと答えを見つけだして、確信したかのように、力強いフォルテでフーガに入っていく。

このフーガの最終楽章は、「複雑なソナタ形式で、おどけた作品であるばかりか田園的でもあり、ヨーデルの動機が第44-48小節に現われる。」
フーガの抽象性の中に、飄々とした軽快さと諧謔性が織り込まれているような自由闊達さがある。
終結部は最後のソナタ3曲に通じる部分が多いように思える。
フーガが2回現われる第31番は、最後はポリフォニーが解体されてモノフォニーで輝かしく高揚して終わる。
第30番の最終楽章の最終変奏や、第32番の第2楽章は終結部分でトリルが現われる。
第28番はフーガが延々と続き、最後は左手低音部の長いトリルを背景に、展開部の主題が変形されてリタルダンドしながら回想される。飛び跳ねるように軽やかでちょっとユーモラス。最後にa tempoして、フォルテで力強いエンディング。

ブレンデルが"作品101は激しい曲ではない、このなかで情熱をほとばしらせることは問題外。あらゆる喜び、あらゆる力と確信がきわめて冷静に告げられる。"と断言していたけれど、アラウはかなり情熱的に弾いていた。
ブレンデルが弾く第28番はたしかに冷静な面持ちでソノリティがとても美しい。どこか分析的で人工的(artificial)な風に聴こえることもあるけれど、他のピアニストと違って、クールなフーガが逆に面白い。
ソコロフはダイナミックレンジが広く、テンポの遅い楽章(特に第3楽章)は繊細で内省的な弱音に深い叙情感があり、最終楽章は速めのテンポで力強く、アラウとはまた違ったパッションがある。
レーゼルは、レガート的な優美さが品良く、極端な強弱のコントラストやテンポの変化を避けて、淀まず、走らず、熱くなりすぎず。表現過剰でない情感とクールすぎない理性が(私には)ほど良いバランス。

レーゼルの音源がないので、アラウの旧盤のスタジオ録音とソコロフのライブ録音で。(ソコロフにはスタジオ録音もある)
演奏は三者三様。アラウは、急速楽章はごつごつとした骨太なタッチでがっちりとした構成感、緩徐部分はルバートがきいて深い感情移入を感じさせる。
ソコロフはダイナミックレンジが広く、急速部分は切れ良く軽快で、弱音部分では深く沈潜していく。
レーゼルは、端正ですっきりとした構成感にレガートな優美さと透明感があり、いくぶんさっぱりとした叙情感。
今のところこの3人の演奏が私の波長にぴったり。

C. Arrau plays Beethoven Sonatas No.28 & 29, Op.101 & 106


Sokolov Beethoven Sonata op 101



<関連記事>
ブレンデル『音楽のなかの言葉』 ~ ベートーヴェンの後期様式の特徴

tag : ベートーヴェン レーゼル

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アラウ/ベートーヴェン・フェスティバル・リサイタル ~ ピアノ・ソナタ第30番 Op.109
"ベートーヴェン・フェスティバル"というと、世界各地で開催されているらしい。
ベートーヴェンの生地であるドイツのボンでも、毎年9月にベートーヴェン・フェスティバルが開かれている。
アラウもこのフェスティバルでリサイタルを行い、1970年と1977年のリサイタル映像はDVDでリリースされている。

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DVDでは、Disc1が1977年のライブ映像(カラー)で、ベートーヴェンのピアノ・ソナタから、第3番、ワルトシュタイン、第32番。
Disc2が1970年のライブ映像(モノクロ)で、第13番、月光ソナタ、告別ソナタ、熱情ソナタ、第30番のソナタ。

1970年と1977年では、アラウの全盛期(の最期あたり)になる1970年の演奏がずっと良い。
音が少し篭もっているけれど、技巧的にも安定して余裕があるし、Philipsの1960年代のスタジオ録音(旧盤)と比べると、ライブ特有のテンションの高さ、深い感情移入が篭められている。
力強さとしっとりとした潤いのある深い叙情が融合して、自然に音楽が湧き出てくるようなところは、スタジオ録音とは違った良さ。

1977年のリサイタルでは、74歳という年齢のせいか、かなりミスタッチが多く技巧的な切れが鈍くなっている。
1970年の演奏を先に聴いていると、余計にそう感じてしまう。(第3番は、技巧的に安定感があるけれど)

第32番は、1970年の放送用録音のDVD(EMI盤)がかなり以前にリリースずみ。
旧盤のスタジオ録音よりもさらに深く思索しているような演奏なので、第32番のアラウのライブ・スタジオ録音のなかでは、これが一番良いように私には思える。

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 ピアノ・ソナタ第30番 ホ長調 Op.109 [ピティナ作品解説]
ベートーヴェンが書いた最後のピアノ・ソナタ3曲のうち、一番若い作品番号がついている第30番。
昔から、第31番と第32番の方が好きだったのに、最近レーゼルのライブ録音を聴いてこのソナタもとっても良いなあと思い始めて、アラウの録音もまた聴き直し。

アラウのスタジオ録音は、Philipsの旧盤・新盤の2種類。
第32番には、以前からスタジオ用録音のDVDがリリースされていたけれど、第30番と第31番のライブ映像が見当たらなかった。
この第30番のライブ映像は、1965年のスタジオ録音(62歳頃のPhilipsのスタジオ録音(旧盤))から、5年後の演奏。
スタジオ録音も好きだけれど、テンションが高く生き生きとしたエナジーを感じるライブ録音の方が魅力的。
ライブ録音は音がやや篭もっているけれど、残響が長めで、解釈もより深まり、自然に湧き出る生気と深い感情移入を感じるせいか、叙情感もずっと強い。

第1楽章 Vivace, ma non troppo
スタジオ録音は冒頭から、強弱のコントラストがかなり強くて、ちょっと元気が良すぎるような...。
スタジオ録音よりもフォルテがやや抑えたタッチなので、しっとりとした潤いのある音色と濃密な叙情感がタペストリーのように織り込まれている。
線がしっかりとしたやや粘りがある音は、時々マルカート気味に聴こえる。
鍵盤を強打せずとも重量奏法で、弱音でもしっかりした発音で、フォルテも濁らず力強く深みのある響きが綺麗。

第2楽章 Prestissimo
スタジオ録音は、フォルテの打鍵が強くて重みがあり、拍子を刻むような硬くきちょうめんな感じがする。
いくぶん落ち着きすぎているような冷静さを感じるところがあり、全体的に勢いがあまり良くはない。
ライブの方は打鍵に切れがあり、リズム感がよく、緩急のメリハリも強くなっているので、演奏に勢いがある。こちらの方が音楽の流れとしてはずっと良い感じ。

第3楽章 Andante molto cantabile ed espressivo
第1楽章と同じく、冒頭から潤いのある濃密な叙情感。スタジオ録音の方は響きがすっきりとして、たっぷりルバートを使っていても、少しさらりとした情感。
変奏ごとの性格がくっきりと浮かび上がって、多彩なバリエーションがおりなす宇宙は魅力的。
(レーゼルが「シンプルなテーマのヴァリエーションのなかに、ほんとうに豊かな宇宙が凝縮されている。変奏ごとに多様な音楽内容が凝縮されているのが素晴らしく」、この曲がとても好きだと言っていた。)

アラウは、ベートーヴェンの後期ソナタはルバートを使って弾くものだと言っていた。
アラウの場合は、ルバートを利かせても、ベタベタと感傷的にならない品の良いロマンティシズムがあって、とても優美。
この最終変奏は、スタジオ録音とは違ってテンポが速めで、勢いと躍動感がある。(演奏時間はスタジオ録音より1分近く短い)
フーガから最終変奏に入って鳴り続けるトリラーは、左手で弾く低音のトリラーが力強く、右手の高音部のトリラーへ移るとあまり強く浮き上がらせず柔らかく優しい響き。
この最終変奏も、スタジオ録音では感じられないような高いテンションが漲り、やはりライブで聴くアラウはスタジオ録音とは別人みたい。
最後に主題が再現されると、長い旅路が終わって眠りにつくかのように、徐々にテンポが遅くなり、静かなエンディング。


1970年、ベートーヴェン・フェスティヴァル(ボン)でのリサイタル映像。
この映像の良いところは、アラウの細いしなやかな指で鍵盤に吸い付くような独特なタッチが、アップで克明に映し出されているところ。
アラウはとても小柄な人だったけれど、手だけは大きくて、指揮者のコリン・ディヴィスが「大きなひづめに似ている」と言っていた。たしかに、映像で見るとその通り。鍵盤上で10度は楽々と届いたらしい。

Claudio Arrau Beethoven Piano Sonata No. 30 (Full)


tag : ベートーヴェン アラウ

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新譜情報:ルドルフ・ゼルキン『ベートーヴェンBOX』
ついに(というか、ようやく)、ルドルフ・ゼルキンのベートーヴェン録音のBOXセットがリリースされます。
ピアノ・ソナタ集BOXは長らく廃盤になっていたし、ピアノ協奏曲(オーマンディとバーンスタインの指揮)やディアベリ変奏曲などは、分売盤しかなかったので、このBOXセットで主に1960~70年代のゼルキンのベートーヴェン録音(セッション録音)の多くの音源がカバーできます。
音源は全てSONY。なので、晩年に小澤征爾&ボストン響と録音したピアノ協奏曲全集(テラーク)は入っていません。

ゼルキンの録音の大半は、分売盤でこつこつ集めてきたので、BOXセットと手持ちのCDは半分くらいの曲が重複している。
持っていないのは、1番、6番、11番、12番、13番、16番、28番、ワルトシュタイン、ハンマークラヴィーア。それに、バガテルOp.111と幻想曲、マールボロ音楽祭のライブ録音。
この中にはゼルキンが生前にリリースを許諾しなかったピアノ・ソナタ録音が一部ある。(ゼルキン亡き後、息子のピーターがリリース許諾したので、CDではリリースずみ)
ワルトシュタインとハンマークラヴィアはBBCのライブ録音を持っている。
今はゼルキンのベートーヴェンはほとんど聴かないので、どうしましょう。廉価盤なのでBOXセットで揃えておいても良い気はするけど。

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲全集、ソナタ集、ディアベッリ変奏曲(11CD) (ルドルフ・ゼルキン、バーンスタイン&ニューヨーク・フィル、他) (Sony Classical Masters、2012年8月21日発売予定)
HMVのオンライン会員特価で2,190円(予約すれば10%OFF)と、信じられない安さ。ゼルキンのベートーヴェンをまとめて聴きたい人にはとってもおすすめ。
最後のCD11には珍しいマールボロ音楽祭のライブ録音も収録。
ピアノ・ソナタ第26番は、カーネギーホールのライブ録音(1977年)かと思ったけれど、収録曲リストにはセッション録音と書いている。

tag : ベートーヴェン ゼルキン

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Julius Katchen 『encores』
ずっと探していたカッチェンのアンコール集が、iTunes storeで昨年末からダウンロード販売していた。
amazonの日本・海外のサイトではダウンロード販売していないので今まで気がつかず。
久しぶりにiTunes storeを検索していたら、ダウンロードできるカッチェンの音源が随分増えていた。

このアンコール集は、1961年にステレオ録音されて、LPでリリース。
特に稀少な録音は、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第8番「悲愴」第2楽章。モノラル録音はなく、このステレオ録音のみ。
DECCAがCD化した輸入盤『The Art of Julius Katchen Vol.8 Piano Encores』(Decca:466 717-2)には未収録。
このCDは廃盤状態で、どの音楽サイトでもダウンロード販売はなし。

悲愴ソナタの第2楽章は、なぜか国内盤『ジュリアス・カッチェンの芸術 月の光~ピアノ小品集』(Decca:UCCD-3311)にだけは収録されている。
この国内盤も長らく廃盤状態でUSED品もここ数年間は全然見かけないし、出ていてもかなりのプレミアムがついている。
DECCAやキングレコードのオムニバス・ピアノ名曲集に、『encores』の一部の曲は収録されているので、《主よ、人の望みの喜びよ》《月の光》《火祭りの踊り》《歌の翼に》はCDかダウンロードで入手済み。

それ以外の曲を収録しているオムニバスCDは見当たらず。
ベートーヴェンの《悲愴ソナタ》第2楽章を除いて、すでにモノラル録音で聴いているとは言え、encores集は全てステレオ録音での再録音なので、やはり聴いておきたい。
結局、今簡単に入手できる音源で、LP盤encore集に収録されている曲を全曲聴くことができるのが、このダウンロード版だけだった。

EncoresEncores
(2011/12/25)
Julius Katchen



レーベルはDECCAではなく、英国のレーベルHallmark(後にMaestoso)。LPは1961年録音なので、ちょうどパブリックドメインとなる50年経過後の2011年末にダウンロード販売を開始している。(今はこのアルバムは販売していない)

<収録曲>
1.Jesu, Joy Of Man's Desiring (Bach)
2.Rhapsody No.2 In G Minor, Op.79 (Brahms)
3.Piano Sonata No.8 In C Minor, Op.13: II. (Beethoven)
4.Hungarian Rhapsody No.12 (Liszt)
5.On Wings Of Song (Mendelssohn/arr.Listz)
6.Piano Sonata No.15 In C Major: I. (Mozart)
7.Rondo Capriccioso (Mendelssohn)
8.Polonaise In A Flat (chopin)
9.Fantaisie-Impromptu In C Sharp Minor, Op.66 (Chopin)
10.Clair De Lune (Debussy)
11.Ritual Fire Dance (Falla)

この音源は、LPから板起こししたような音で、もこもこと篭もったところがあり、大きなホールではなく、室内で弾いているのを聴いているような気がする。
CD化された音源の音楽ファイルもいくつか持っているので、同じ曲を聴き比べてみると、CDの音源はデジタル録音風にエコーがかかったような煌びやかでシャープな響き。
ダウンロード版は、多少ぼやけた感じはするけれどまろやかさがあって、アコースティックな感じが強くなる。
CD盤の方で《ロンド・カプリチオーソ》を聴くと、急速なフォルテ部分とかは、演奏がよりダイナミックに聴こえる。
ダウンロード版でもそんなに不満なところはないけれど、やっぱりCDもいつか手に入れて聴きたい気がする。

3.Piano Sonata No.8 In C Minor, Op.13: II. (Beethoven)
カッチェンの悲愴ソナタの第2楽章は、まるでブラームスを聴いている気がするようにルバートがたっぷり。
カッチェンのルバートは嫌味がなくて流れが自然なのが良いところ。
主題部はやや速めのテンポながら穏やかに寄り添うように優しく、対照的に三連符の伴奏に変わる中間部~再現部ではテンポを上げて感情が湧き出てくるような叙情感があって、とってもロマンティック。

『ジュリアス・カッチェンの芸術 月の光~ピアノ小品集』(国内盤)
月の光~ピアノ小品集月の光~ピアノ小品集
(2004/10/27)
カッチェン(ジュリアス)

試聴する
※LP『encores』にブラームスを3曲追加収録。

 『The Art of Julius Katchen Vol.8』(2枚組)
The Art of Julius Katchen Vol.8The Art of Julius Katchen Vol.8
(2004/11/9)
Julius Katchen

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1.Jesu, Joy Of Man's Desiring (Bach)


5.On Wings Of Song (Mendelssohn/arr.Listz)


7.Rondo Capriccioso (Mendelssohn)



<関連記事>
 『ジュリアス・カッチェンにまつわるお話』


tag : カッチェン ベートーヴェン ドビュッシー メンデルスゾーン バッハ

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携帯音楽プレーヤーの難聴リスクとEUの規制動向
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[調査報告]パーソナル音楽プレーヤーおよび音楽再生機能付きモバイルフォンによる騒音暴露の潜在的健康リスク
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Potential health risks of exposure to noise from personal music players and mobile phones including a music playing function : Preliminary report (2008)
(Scientific Committee on Emerging and Newly Identified Health Risks、SCENIHR)

過度の騒音は世界的に聴力障害の主要因の一つ。その原因は職業上の騒音で、成人の聴力損失障害の16%がそれによるもの。
ディスコやパーソナル音楽プレイヤー等で余暇の時に聴く音の大きさも過剰なレベル。
社会的な騒音にさらされている若者の数は約19%(1980年代の3倍)。一方、職業上の騒音は減少。
ポータブルオーディオ機器(MP3プレーヤーを含む)の販売台数の増加は、EU内では過去4年間にわたり驚異的なレベル。
販売台数:ポータブルオーディオ機器全体は1億8400万~2億4600万台、MP3プレーヤーが1億2400万~1億6500万台。

騒音が原因の聴力損失は、騒音レベル(大きさ)と暴露時間との掛け算の産物。
その対策として、EU指令"Noise at Work Regulations"が2006年2月に発効。
1日8時間(または週40時間)の労働時間に対して、等価騒音暴露制限値(equivalent noise exposure limit)で80dB(A)という最小源の安全レベルを確立。このレベルを下回る場合、聴覚に対するリスクは無視しうるものだと思われる。
8時間等価レベル(Lequ,8h) は、産業界の聴覚損害リスクに対して幅広く使われている基準。余暇における騒音暴露に対しても同様に適用可能。

PMPs(ポータブル音楽プレーヤー等)の最大の音量コントロール設定は、機器によって異なり、自由音場(free-field)の等価騒音レベルが約80~115dB(A)。さらに、イヤフォーンのタイプの違いの影響もあり、このレベルは7~9dB分は修正可能。
暴露時間の平均時間は、1週間につき1時間以下~14時間の範囲。
PMPsと典型的な音量コントロール設定を使って音楽を聴く1日あたり(または週単位)の時間を考えれば、PMPsによる加重平均した8時間等価騒音暴露レベルは、75~85dB(A)と算定される。
この程度のレベルでは、大半のPMPユーザーにとって、聴力障害リスクは最小。
しかし、リスナーの約5~10%は、聴き方の好みやレベルパターン、聴取時間のためにハイリスクの状態にある。ハイレベルの音量設定で毎日1時間以上音楽を聴いているリスナーが該当し、EU圏内では250~1000万人と算定。

過度の騒音は、耳の複数の細胞型にダメージを与え、耳鳴りや一時的または恒久的な聴力損失(難聴,deafness)につながる。
公開されたデータでは、最大または最大近い音量で極度に激しくPMPsの音楽に曝されると、一時的または可逆的な聴力障害(耳鳴または軽い難聴)になることを示している。
PMPユーザーの騒音起因の恒久的聴力損失については、公表された研究(ポジティブ・ネガティブ両方)の結果に大きな矛盾(食い違い)が存在する。
慢性的に音楽にさらされているティーンエイジャー(PMOユーザーも含む)では、非ユーザーよりも耳鳴りや聴覚的な疲労を経験することが多いかもしれない。
聴覚的影響に加えて、PMPsの過剰リスニングがもたらす有害で持続的で不可逆的な非聴覚的影響も想定できる。不注意とマスキング効果に加えて、心循環系への影響、認識力が含まれる。
しかし、PMPsの音楽が、そのような影響をもたらすリスクの構成要素であるという充分な証拠はない。

PMPs使用が増加することで聴力(と耳鳴)リスクも増加する事態に直面しているが、次のデータが欠如している。
a) 現在のPMP使用パターン、時間、出力レベル、その他の高い音量音源へのユーザーの暴露
b) 子供や若者における聴覚的な問題や認知・注意力の欠点に対する騒音の寄与
c) 聴力に関するPMPsの影響を評価し、より高いリスクのある潜在的サブグループを特定するため、さらに高感度の測定値(例えば、耳音響放射)を使用した長期的研究。(サブグループの例:遺伝学的なサブグループ、騒音環境にある仕事や学校に通っている人など環境的なサブグループ)
d) 騒音に対する個々人の感受性と薬物療法による効果の生物学的根拠
e) 過度な使用を自発的に行っているPMPリスナーが、そのノイズが止んだ後で、永続的かつ不可逆的な認知・注意力の欠陥に繋がるかどうか。

(以上、要約)


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パーソナル音楽プレーヤーに対するEUの新規制
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EUのパーソナル音楽プレーヤーに関する情報(規制情報・調査報告など)は、Official website of the EU(欧州連合)の公式ウェブサイト"Personal Music Players & Hearing"に掲載されている。

パーソナル音楽プレイヤー(PMPs)の定義:携帯オーディオ装置。CD/カセット/MP3プレーヤー、および音楽再生機能付きモバイルフォンなど。


<新聞報道>
EU、MP3プレーヤーに音量制限 聴覚障害防止のため、MP3プレーヤーのメーカーに安全な音量レベルをデフォルト設定にすることなどを義務付ける。[ITmedia、2009/9/29]
欧州委、難聴予防で携帯音楽プレーヤーの音量規制へ[ロイター、2009/9/29]


<EUの規制動向>
CENELEC(欧州電気標準化委員会)の新規制案:"Sound level limits for personal music players and mobile phones" 
   (Brussels, Belgium, 2011-02-09 News Release)

CENELEC Technical Committee(欧州電気標準化委員会の技術委員会) 108Xは、‘Safety of audio, video and similar electronic apparatus’ (EN 60065:2002)と、Safety of information technology equipment (EN 60950-1:2006)という既存の欧州規格の改正案2件を策定し、EU各国のNational Standardisation Committeesの公式採決により、2010年末に可決ずみ。

標準規格に適用されたアプローチは、85dBAの音量制限がベース。これは、合理的に予測できる全ての利用条件下で安全と考えられる音量レベル。
しかし、最大100dBAまで音量レベルを上げることができるよう、ユーザーがその上限をオーバーライドする選択ができる可能性もある。
この場合、ユーザーがパーソナル音楽プレーヤーを20時間聴く毎に、ユーザーにリスクを繰り返し警告する必要がある。

2011年早期に改正案のドキュメントが公布され、その後設定される24ヶ月の移行期間中に、国家基準の公布によって国レベルで標準規格が導入されることになる。
移行期間終了までに、産業界は自社製品を標準規格へ適合させるよう着手しなければらなない。
その間、ワーキンググループは付託業務の次段階として、放出音(sound dose)の測定値を元にして、パーソナル音楽プレーヤの過剰な音圧レベルに対して保護を提供する"スマート"な方法の開発作業に着手予定。

参考:STANDARDISATION MANDATE TO CEN, CENELEC AND ETSI IN THE FIELD OF DIRECTIVES 1999/5/EC, 2006/95/EC AND 2001/95/EC FOR HEALTH AND SAFETY ASPECTS OF PERSONAL MUSIC PLAYERS AND MOBILE PHONES WITH A MUSIC PLAYING FUNCTION(Brussels, Brussels, Belgium, 2011/2/28)
「パーソナル音楽プレーヤーと音楽機能付きモバイルフォンの健康・安全性に関して、EU指令1999/5/EC, 2006/95/EC AND 2001/95/ECの分野における欧州標準化委員会(CEN)、欧州電気標準化委員会(CENELEC)およびヨーロッパ電気通信標準化協会(ETSI)に対する標準化義務付け」

参考:職場の騒音に対するEUの規制基準 
- Table 3: The examples of equivalent time-intensity levels referred to the action levels 
(according to the Directive 2003/10/EC,2006年発効)
- EU Action levels for noise protection at work

《職場における3つの推奨保護基準》 (1日8時間の労働時間に相当する騒音レベルに基づく)
80 dB(A):労働者に利用可能な保護(例:イヤープラグ(耳栓)、イヤーマフ)によって、保護されるべき。
       この基準以下の音量では、聴力に対するリスクは無視できるものと推定(assume)される。
85 dB(A) :労働者保護が必須
87 dB(A) :暴露音量の上限

例えば、パーソナル音楽プレーヤーで、95dB(A)の音量で1日15分音楽を聴くことは、職場で80dB(A)の音に1日8時間曝されることに相当する。(これらの暴露が長期間にわたって繰り返されるという前提)

参考:職場の騒音に対する国際規格
国際規格(ISO 1999:1990; NIOSH revised criteria, 1998)では、職業上の騒音暴露上限値は、等価音圧レベル(Lequ, 8h)で85db(A)(A特性音圧レベル、8時間労働時間-加重平均)。
しかし、この制限値では労働者の聴覚システムへの安全を保障するものではなかったため、EU指令「Directive 2003/10/EC」が制定された。


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日本語参考資料
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<東京都による調査報告>(生活文化スポーツ局消費生活部生活安全課)
危険!イヤホンからの音楽で周りの音が聞こえない(平成20年3月17日)
イヤホンの使用が聴覚に及ぼす影響についての調査結果【概要】(同上)
イヤホン使用による聴覚感度の低下の体感サンプル音(平成18年度及び平成19年度「イヤホンの使用が聴覚に及ぼす影響についての調査」による)

<日本音響学会ホームベージ:「Q and A」>
Q:ヘッドホンで大きな音を聞いていると難聴になるという話を聞いたのですが本当ですか?
Q: 携帯音楽プレーヤを大音量で聴き続けると聴力を失う危険があるそうですが,実際どれぐらいの音量で聴いているのでしょうか?

ヘッドフォン難聴 [耳鼻科50音辞典]
- 特に高い周波数の音の方が内耳に与えるリスクが大きい。
- 同じボリュームで同じ音楽を聞いていて、 よりヘッドフォンは高音域の周波数帯に強い音を含む音楽を聴くことになる。

ヘッドホン難聴にご注意 [gooヘルスケア]

若者に増えている急性音響性難聴と心因性難聴(2007年2月),ヘッドホン難聴の予防(2009年2月)[学校保健ニュース高校版/監修:笠井耳鼻咽喉科クリニック 笠井創]


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参考情報:音響外傷とイヤープラグ
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強大な騒音に長期間さらされて徐々に進行する難聴は騒音性難聴、爆発音などの強大な音響のために突発的におこる難聴は音響外傷。

音響外傷に関する最近の研究調査報告
72 % of Teenagers Experienced Reduced Hearing Ability After Attending Concert
米国ロサンゼルスにある聴覚関係の非営利研究機関 House Research Institute(HTI)(旧House Ear Institute)が公表した研究結果(2012/3/21)によると、「ティーンエイジャーの72%がコンサート参加後に聴力低下を経験」。

ポップ・ロックコンサート後に経験する聴力損失は永続的なものではないと一般的には信じられている。これは一時(的)閾値移動(temporary threshold shift)と言われ、普通は16-48時間以内に消滅し、以前の聴力レベルに回復する。

House ClinicのM. Jennifer Derebery医師によると、「ティーンエイジャーはコンサートやパーソナルなリスニング機器で過剰な騒音を一度聴いただけでも聴力損失につながることを理解する必要がある。85dbを超える騒音に度々曝された場合、有毛細胞が機能停止し、聴力損失が永続するかもしれない。」

この研究では、実際にロックコンサートを聴いたティーンエイジャーの聴力の変化を調査。

<調査概要>
- 被験者はティーンエイジャー29人。ロックコンサートのステージ正面の席で3時間26曲を聴く。研究者も同席。
- 被験者は、聴覚保護としてイヤープラグの着用を勧められるが、使ったのは3人のみ。
- コンサート中に、音圧メーターで1645件の音量レベル値を計測。測定値の範囲は82-110dBAで平均98.5dBA。平均値で100dBAを超えていたのは、26曲中10曲。
- コンサートの音量レベルは、職場における許容基準(Occupational Safety and Health Administration (OSHA)による基準)を超過。OSHAの安全基準ガイドラインでは、85dBの音量に対する暴露時間制限が設定されている。
コンサート中に記録された音量は、30分未満におけるOSHA基準を超えている。
- ティーンエイジャーの1/3が、大人の職場では許容不可能な一時的な閾値移動(聴力損失)を示していた。
- コンサートに続いて、過半数の被験者で歪成分耳音響放射(Distortion Product. Otoacoustic Emissions: DPOAE)testの結果が大きく低下。(DPOAEは耳の外有毛細胞の機能をチェックする試験)

客観的試験結果を概括すると、コンサートを聴いたティーンエイジャーの72%が閾値移動をすぐに経験したか、または、DPOAE amplitude testでの低下が見られた。
コンサート後、53.6%が(以前と)同じように聞こえていると思わないと回答し、25%はコンサート前にはなかった耳鳴が聞こえた。

研究者が特に関心を示しているのは、最新の全米健康栄養調査(NHANES)で、2005-2006年では、若者の20%に少なくとも軽度の難聴があることがわかり、1988-1994年の調査結果よりも31%増加しているためである。
今回の試験結果により、ティーンエイジャーに対する騒音暴露ガイドラインを見直す必要があるか、また、ティーンエイジャーの耳が大人よりも騒音により敏感かを決定するために、さらなる研究が必要なのは明らか。

Derebery医師は「イヤープラグ使用を推奨されているのに、ティーンエイジャー29人のうち3人しか使わなかったが、これは10代のリスナーの多くに典型的な行動である。従って、我々は安全なレベルに音量を引き下げる責任がある。」
研究者達は、スマートフォンで利用できるいろいろな音量メーターアプリを使って、自ら聴覚を保護するために積極的に行動するよう、若者達に勧めている。
さらに、コンサートプロモーターとミュージシャンたちがコンサートに参加する若者達に聴覚保護(イヤープラグ)の使用を奨励するとともに、音量レベルを引き下げるよう期待している。

(以上、要約)

<参考記事>
 レスター大学の研究(騒音暴露による耳鳴り発症メカニズム)


イヤープラグ
ロックコンサートなどの大音量の音楽イベントの場合は、イヤープラグ(耳栓)使用が推奨されている。
睡眠中にはめるような耳栓ではなく、ミュージシャン向け、コンサート用の耳栓は、普通の耳栓よりも機能が高いらしく、価格も1000円以上(数千円のもある)。

英国のエリザベス女王も、ロックコンサートに参加している間、耳に黄色いイヤープラグをつけている写真が英国のオンラインニュースサイトに掲載されていた。(出典:Turn it down! Queen wears earplugs at Buckingham Palace Jubilee rock concert/Mail Online,2012/6/5)

<イヤープラグに関する参考サイト>
- ATA Shop(米国耳鳴協会のオンラインショップ)で販売されているイヤープラグEarPeace: 11-17dB High Fidelity Hearing ProtectionEtymotic Research ER-20 Hi-Fidelity Earplugs

- ライヴと音響難聴と耳栓[ハマハナ帳]
- ライブ用耳栓[音問題研究所]


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備考
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日本語訳文は、英文情報を抜粋・要約したものです。正確な内容は、リンク先の原文情報をお読みください。
また、文中で紹介している製品について購入を推奨する目的のものではありません。

"Jack Vernon Walk to Silence Tinnitus"
America Tinnitus Association(米国耳鳴協会:ATA)が毎年行っているファンドレイジング(資金調達)イベントの一つが"Jack Vernon Walk to Silence Tinnitus"
Dr. Jack Vernon は、ATAの共同創設者の一人(2010年11月に亡くなっている)。
In Memory of Jack(Dr.Vernonに関する追悼文)


日程と参加方法
今年の"Jack Vernon Walk to Silence Tinnitus"は、6月16日(土)午前10:00~、ポートランドのWillamette Parkにて開催。
Willamette River沿いの歩道を歩く5kmをウォーキングする。
当日会場へ行ける人は、ウォーキングに参加したり、沿道で声援を送るという方法で参加する。参加できない場合でも、ウォーキングに参加しているチームに対して寄付することで貢献できる。
また、会場では地域の耳鳴医療の専門家・企業などが開設しているブースでのraffle(チャリティ用の宝くじ販売)も行っている。

具体的な参加方法:
1) 自分のチームを作って参加する(チーム名をつけて、友人などを誘う)。
2) 既存のチームに参加して、家族・友人に支援してもらう。
3) 個人的に寄付する場合は、「Team ATA」を選択する。
チームの結成や選択は、ATAのホームページ上で行う。そのときに、自分が寄付する金額を設定する。

マッチングギフト
今回のイベントの最大の特徴は、ウォーキングイベントで集まった寄付金に対して、マッチングギフトが適用されること。
マッチングギフトとは「企業や団体などが社会貢献のために寄付や義捐金を募る際、寄せられた金額に対して企業側が金額の上乗せを行い、寄付金額を増やした上で同じ寄付対象に寄付するという取り組み」(新語時事用語辞典)
このイベントでは、25ドル以上の寄付に対して、倍額がマッチングギフトとしてATAに寄付される。
たとえば、100ドルの寄付に対して、ATAがマッチングギフトとして受け取る寄付金は200ドル。100ドルの寄付で合計300ドルが最終的な寄付金になるという仕組み。マッチングギフトの支給額は最大で合計70,000ドル。
寄付金(マッチングギフトも含む)は、全額がATAの研究助成金に充当される。寄付金5万ドルごとに1件の研究助成が可能になる。
従って、このマッチングギフトが全額支給されると、少なくとも2件の研究助成が可能になる。
スポンサー企業は、Sound Cure、WIDEX、General Hearing、Opticon、Starkey、など。補聴器、耳鳴マスカーなどのメーカーが多い。


Walk Progress Report(進捗状況レポート)
最新の寄付状況がホームページで確認できる。
チーム別寄付金額(Individual Teams)ランキングを見ると、トップはTeam ATA。次いで、俳優のウィリアム・シャトナーチーム。
表に記載されているチームは一部。右側のカラムに、「チームのランキングを上げる方法」という項目があり、ランク外のチームの名前が表示されている。
◆合計寄付金額 $42071.00(17日22:45現在、日本時間)
ライブ録音集 『Great Pianists』
Membranの10枚組BOXシリーズ"documents"の『Great Pianists』は、名だたるピアニストのライブ録音が10枚組セットで千数百円という超廉価盤。
数年前にリリースされたときは、オンラインショップだけでなく、近所のショッピンセンターのCDショップでも輸入盤が平積みされていた。
収録されているのは、あまり見かけたことのない音源ばかり。
ゼルキンのルガーノライブは、随分昔に買ったErmitage盤でも出ている。
ほとんどの音源は、ルガーノ、アスコナなどの音楽祭のリサイタルを放送用に録音しているものらしく、バックハウスのCDの音質が少し悪い以外は、1950-60年代の録音のライブ録音でもかなり良い。
ベルマンは1989年、カニーノは1993年と比較的新しいので、音質も充分なくらいに良い。

Great PianistsGreat Pianists
(2007/08/14)
Frederich Gulda、Wilhelm Backhaus 他

試聴ファイルなし

収録しているピアニスト・演奏曲目(HMV紹介文)


気に入っているのは、昔から聴いていたゼルキンはもちろん、グルダ、ベルマン、アンダ、カニーノのライブ録音。

ゼルキンは、1957年の演奏なので、壮年期のエネルギッシュで気合の入った演奏が聴ける。
選曲も得意な曲が並んでいるし、熱情ソナタはスタジオ録音と同じかそれ以上の内容ではないかと。
ブラームスのヘンデルバリエーションも、後年のスタジオ録音は指回りがやや悪くソノリティが美しく優美な雰囲気が強いけれど、このライブ録音では、ずっと若いゼルキンの技巧の切れ味が良く、生き生きとした躍動感もあって軽快。
ゼルキンが良く弾いていたバッハの曲は、カプリッチョ「最愛の兄の旅立ちに寄せて」変ロ長調BWV992。
しっとりとした情感と端正さがとても清々しく綺麗な曲。

Bach-Capriccio on the departure of a beloved brother BWV 992




もともとあまり好きではないグルダでも、モーツァルトとシューベルトは良く思えたし、何よりワルトシュタインが普通に聴けた。
グルダの大人気のピアノ・ソナタ全集(1967年スタジオ録音)に収録されているワルトシュタインは、猛スピードでせかせか慌しい。
このスピード感が好きという人もいるけれど、私のテンポ感覚だと異様な速さでコミカルに聴こえる。
グルダ自身、テンポが速すぎて一線を超えていた..と言っていたくらいだし。
このライブ録音ではそれより少しテンポを落として、限界に近い(超えない)くらいの速さで弾いている。(これでも充分すぎるくらいに速いけど)

Friedrich Gulda - Beethoven - Piano Sonata op.53 "Waldstein" - I. Allegro con brio
(第1楽章のリピートは省略)



ベルマンは、1960年頃の全盛期よりも30年ほど後年の演奏なので、昔のような切れの良さはないのだろうけれど、リストの編曲・オリジナル、それにスクリャービンも、わりと好きなタイプの曲なので、これは聴いて楽しい。

アンダのライブ録音は1965年のアスコーナ音楽祭のリサイタル。
エチュードOp.25は、アンダのショパン録音の中でも一番多い。1955年~1965年にかけて全部で6種類の録音があり、モノラル・ステレオ録音を取り混ぜて、セッション録音よりもライブ録音の方が多い。
今時の若手ピアニストと違って、アンダは技巧的にバリバリと弾きこなしているわけではなく(テンポも遅めだし)、技巧の鮮やかさよりも、アンダらしい音楽づくりを聴くためのエチュード。
シューベルトのピアノ・ソナタの録音は珍しい。第21番はスタジオ録音が残っているけれど、この13番はアンダの甘く美しい音色にとても良く似合う。

Géza Anda plays Chopin 12 Etudes Op 25 No 10,11,12


カニーノのゴルトベルクは、いつ聴いても新鮮。
カニーノを聴くのが目的のBOXセットだったけれど、他にも気にいった録音がたくさんあるので、これはやっぱりお得なBOXセットだった。

tag : ゼルキン グルダ アンダ カニーノ ベルマン

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シューベルト=リスト編曲 ~ セレナーデ(歌曲集『白鳥の歌』より)
マインダースの歌曲編曲集の演奏をYoutubeで探していると、リストのシューベルト歌曲編曲の音源がたくさんある。
レスリー・ハワードの「リスト/ピアノ作品全集」(ハイペリオン盤)ではVol.31-33の3巻分合計9枚のCDに収録されているくらいに多い。

リスト編曲版のシューベルト歌曲の録音で、確かに持っていると記憶しているのはキーシンのCDのみ。全部で10曲くらい。
その中で好きな曲というと、あの有名な《セレナーデ》と《糸を紡ぐグレートヒェン》、《水の上で歌う》。

歌曲集「白鳥の歌」の《セレナーデ》のリスト編曲版は、キーシンの音源がYoutubeになく、どうやらホロヴィッツの録音が有名らしい。砂糖菓子のように甘くてロマンティック。
Horowitz plays Schubert-Liszt Ständchen (Serenade)


リスト編曲版のシューベルト「白鳥の歌」 [楽譜ダウンロード/IMSLP]


原曲の歌曲は、最近よく聴いているシュライアー。
男声の歌曲はほとんど聴かないけれど、シュライアーの声質や歌いまわしがなぜか好きなので。
ホロヴィッツのピアノ編曲版のような甘ったるいセンチメンタルなところがなくて、この曲はやはりテノールで聴くに限る。

Schubert Ständchen (Serenade) Peter Schreier

ピアノ伴奏は、若かりし頃のルドルフ・ブッフビンダー。ウィーンのシェーンブルン宮殿にて。

tag : シューベルト シュライアー フランツ・リスト

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”6th International Conference on Tinnitus (TRI 2012)”
"6th International Conference on Tinnitus"(6th Tinnitus Research Initiative (TRI)conference:TRI 2012)が、6月13日~16日にベルギーのBruge(仏語:ブリュージュ、オランダ:Brugge(ブルッヘ))で開催される。
会議のプログラムやPoster Sessionの概要が公式ホームページで公表されている。

 "TRI 2012"の公式ホームページ
 Scientific Program(概要):スケジュール、講演タイトル・講演者名、poster sessionの研究名・研究者名を記載
 Poster Session:分野別の研究結果(抄録)。Pathophysiology、Auditory and Cognitive sciences、Treatment、Functional Imgagingの分野に分かれている。(Posterとは研究概要をパネル(90×120cm)表示したもの)
 Program and Abstracts : Sixth International Conference on Tinnitus:会議中に行われた研究報告&Poster Sessionの抄録集


下記のリストは、治療法に関係する研究テーマを中心に、その一部をキーワード的にピックアップしたもの。
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講演(研究発表)
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<Treatment>
- 薬:Clonazepam(クロナゼパム)、L‐BACLOFEN(動物実験結果)、naltrexone(ナルトレキソン)、AM‐101
- サプリメント:イチョウ葉エキス(Ginkgo Biloba)、亜鉛(Zinc)
- drug‐loaded nanoparticles(薬を運ぶナノ粒子)
- (Transcutaneous) Vagus Nerve Stimulation((経皮)迷走神経刺激)、rTMS(反復経頭蓋磁気刺激)
- Virtual reality exposure therapy (バーチャルリアリティによる曝露療法)
  ※暴露療法:心的外傷(トラウマ)による恐怖の連想を無効化するために、安全な環境でトラウマ的体験を再体験する。
- Hyperbaric Oxygen Treatment (HBOT)(高圧酸素療法)

<Functional Imagingの研究対象(例)>
- fMRI、Resting‐state fMRI、diffusion tensor imaging(DTI:拡散テンソル撮像法)
- Neuromodulaiton(ニューロモジュレーション):rTMS、neurofeedback

<Auditory & Cognitive Changes>
- computerized selfadministered tinnitus measurement system(コンピュータによる自己管理式耳鳴評価システム)


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"Poster Session"
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<Treatment>
- 薬:amitriptyline(アミトリプチリン)、Cyclobenzaprine(シクロベンザプリン)、Memantine(メマンチン)(動物実験)
- Antioxidant(抗酸化剤):N-acetylcysteine(NAC)とmagnesium(マグネシウム)
- Nanotheranostics(ナノテラノスティクス)
※テラノスティクス:Therapy と Diagnostics を合わせた造語。治療方法を決定するための診断方法の開発を基軸としたビジネス戦略。
- Neuromodulation(ニューロモジュレーション)
- Transcranial direct current stimulation (tDCS)(経頭蓋直流刺激)
- rTMS(反復経頭蓋磁気刺激):Multisite(多部位)、bilateral(両側)
- Acoustic CR neuromodulation(coordinated reset (CR) neuromodulation)

- インターネットベースの音響療法(IBST))
- TRT療法:音の種類やカウンセリング方式(個人カウンセリングとグループカウンセリング)の違いによる効果の差
- 周波数判別トレーニング(frequency discrimination training)
- 耳鳴マスカー
- ReSound Live TS combination(サウンドジェレネーター付き補聴器)
- “TAILOR-MADE NOTCHED MUSIC TRAINING (TMNMT)”とtDCSとの複合療法(下記に要約)

P48. Combining “TAILOR-MADE NOTCHED MUSIC TRAINING (TMNMT)” with left auditory cortex tDCS: an explorative study
(Teismann H., Wollbrink A., Okamoto H., Pantev C.)
短期型"Tailor-made notched music training"とtDCS(経頭蓋直流刺激)との複合療法により、耳鳴緩和効果があった。
tDCSが"脳の可塑性への扉を開く"という前提に基づき、 短期型TMNMTの治療効果向上のためtDCSも実施。
TMNMT療法コース:トーナル(Tonal)型慢性耳鳴りの被験者30人に対して、10日連続で1日あたり2.5時間、合計25時間。
tDCS:TMNMTコースの当初5日間、治療用音楽を聴いている最初の30分間に、左聴覚野に対してtDCS実施。(anodal、cathodal、shamの被験者は各10人、電流の強さ:2mA)


<Functional Imaging>
- PET studies、fMRI study、qEEG analysis
- 聴性定常反応(ASSR)

<Pathophysiology>
- biomarker(plasma BDNF):耳鳴の客観的評価指標としてのバイオマーカー
  ※BDNF:Brain derived neurotrophic factor


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備考
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日本語訳は、英文情報を抜粋、要約、編集したものです。
正確な内容については、リンク先の原文情報をご確認ください。
バッハ=レーガー編曲/ブランデルブルク協奏曲(ピアノ連弾版)
レーゼルの英文ホームページでディスコグラフィをチェックすると、珍しくもレーガーのピアノ作品を録音しているのを発見。
Elanというマイナーレーベルへの録音なので、レーベルの看板ピアニストサンチャゴ・ロドリゲスのデュオのパートナーとして、レーゼルがこの曲を弾いたらしい。(ロドリゲスはキューバ出身のヴィルトオーゾピアニスト。ロドリゲスの奥さんが彼の演奏を世に広めるためにElanレーベルを創設したという)
収録曲は、レーガーがピアノ連弾版に編曲したバッハ《ブランデンブルク協奏曲》から第3番と第5番、レーガーのオリジナル作品で2台のピアノのための《モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ》。

Con Brandenburg 3/5/Var & Fugue on Theme of MozartCon Brandenburg 3/5/Var & Fugue on Theme of Mozart
(2002/05/21)
Santiago Rodriguez,Peter Rosel

試聴する(MP3ダウンロード)
CDは廃盤状態で、amazonならMP3ファイルでダウンロードできる。
音がかなり近くから聞こえ、デジタル録音なのにモノラル録音みたいなデッドな響きがする。音質はTrenkner&Speidel盤(Mdg)の方がずっと良い。

ブランデンブルク協奏曲(ピアノ連弾版)
レーガーは《ブランデンブルク協奏曲》第1~6番を全曲編曲している。
演奏至難の曲なのか、単に知られていないだけなのか、録音は少ない。
演奏が至極難しいわりに、そう難しそうには聴こえない曲なので、ピアニストの苦労が報われないからかもしれない。

Youtubeにある音源は、Evelinde TrenknerとSontraud Speidelのデュオによる第1番と第3番。これは連弾版。(彼らのCDは第1~6番全曲を収録)
レーガーの編曲楽譜は、連弾版は出ているけれど、2台のピアノ版が見当たらない。(レーゼルのCDタイトルには、"for two pianos"と書いているけど、これは間違い?)
バロックの管弦楽曲はほとんどまともに聴いたことがないので、固定したイメージがないせいか、ピアノ連弾で聴いても違和感なく聴ける。
Trenkner&Speidelのデュオは、クリアで明るく伸びやかな音のピアノが良く鳴って、屈託のない快活さが気持ちよい。
音の線が太く和音が速いテンポで連続するとタッチが重たくなるので、こういうところはレーゼル&ロドリゲスの演奏の方が軽快。
レーガー独特の過密に音が密集して重音を多用した編曲はピアノ1台だけでも、とってもシンフォニック。
朝にバロックの管弦楽曲を聴くと眠たくなってしまうけれど、ピアノの音だと目も醒めて頭もすっきり。
ゆったりした気分の休日の朝に聴くのにとっても良さそう。


Max Reger Piano Duo: Bach's Brandenburg Concerto No.3 in G Major, BWV 1048  (piano:Trenkner,Speidel)
背景の写真はミュンヘンのオクトーバーフェスト(Oktoberfest)。
バッカス万歳!のような雰囲気がとても楽しそう。 でも、どうしてビールの映像なんだろう?





たまたま見つけた連弾版ブランデンブルク協奏曲の楽譜のレビュー(amazon「楽しい連弾の部屋」)が面白い。
レーガー作品は、概して音が密集して和声が豪華(時々混濁気味)に聴こえるけれど、連弾版でも、単旋律が6度+対旋律に拡張されたりして、物理的に演奏困難なフレーズが続出。
1人で弾くだけでも難しいのに、手を交差して弾かないといけないところで、奏者2人がぶつかりそうになって、さらに難易度が増しているらしい。
過密な音が複雑に絡んだ楽譜を1台のピアノで2人が同時に弾くことになるので、想像するだに大変そう。
第3番の連弾版楽譜(PDF)[IMSLP]

tag : バッハ レーガー レーゼル

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耳鳴り治療のための認知行動療法(4) インターネットベースのセルフ・ヘルプ・トレーニング
認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy:CBT)は、慢性化した耳鳴りが引き起す障害(impairment)を緩和するのに効果的であると証明されてきた。
認知行動療法の実施手法として、最近開発されたのが、インターネットベースのセルフ・ヘルプ法
スウェーデンの研究者(Andersson et al., 2002; Kaldo et al., 2007; Kaldo et al., 2008)により有望な結果が発表されている。

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臨床試験
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"Comparison of an Internet-based Guided Self-help and a Group Therapy for Chronic Tinnitus”
(慢性耳鳴り治療として、インターネット上で訓練されるセルフ・ヘルプ法とグループセラピーの比較)
Johannes Gutenberg University Mainz(Germany)、Linkoeping University(Sweden)

研究計画
研究目的:インターネットベースのセルフ・ヘルプ・トレーニング(自助訓練)の有効性を評価する。比較に用いた手法は、従来型の認知行動療法(グループ治療)とオンライン・ディスカッション・フォーラム・グループへの参加。

手法:ランダム化、クロスオーバー試験、オープン試験
予定被験者数:120人
研究開始:2010年5月
研究完了(予定):2012年3月

試験方法
1)実験群:インターネット経由で訓練されるセルフ・ヘルプ法(Internet-based guided self-help)
- インターネットを利用して、認知行動アプローチに基づいたセルフ・ヘルプ・トレーニングを10週間実施。
- 18モジュールの耳鳴り対処戦略:(例)応用リラクゼーション(applied relaxation)、ポジティブイメージ、注意を逸らす訓練(attention shift exercises)、認識の再構築、睡眠マネジメント、集中力マネジメントなど。
- 全モジュールは、説明用テキスト、詳細な実施方法要領、ワークシート、課題(宿題)で構成。
- 各モジュールの終了時に、被験者とセラピストがメールでコンタクト。被験者はレポートを提出し、どのような問題を経験したか報告する。
- セラピストは、トレーニングの進め方について、フィードバック、サポート、助言を行う。

2)実験群:認知行動グループ療法(cognitive-behavior group therapy)
- Hiller&Haerkötter 2005)により確立された手法。毎週90分のグループセッションを10週間実施。
- 厳格にマニュアル化されたプログラム。慢性耳鳴り患者向けに特化したメニュー構成:教育、リラクゼーション技術、認識の再構築、耳鳴り知覚に対する注意処理過程(attentional processes)のルール、回避行動(avoidance behaviors)分析、耳鳴りとヘルスケアシステム、再発防止策
- 各セッションは、資料、訓練、課題(宿題)で構成。被験者をそれらにより理解を深め、新しい情報を日々の生活に取り入れる。

3)対照群:ディスカッション・フォーラム・グループ
- 被験者は10週間の待機期間の後、インターネットベースのセルフ・ヘルプまたはグループ治療を行う。
- 待機期間中は、耳鳴り対象のオンライン・ディスカッション・フォーラムにアクセスする。(治療ではない)


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臨床試験結果
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"Internet-based therapy relieves persistent tinnitus:A German-Swedish study shows that internet-based self-help training for tinnitus is as successful as group therapy"
(インターネットベースのセルフ・ヘルプ・トレーニングが鳴り止まない耳鳴りを緩和:ドイツ-スウェーデンの研究で、インターネットベールのセルフ・ヘルプ・トレーニングがグループセラピーと同等の耳鳴り緩和効果があることが明らかになる)
(Johannes Gutenberg-Universität Mainz, press release、2012年3月7日)

要旨
認知行動療法は耳鳴症状に対処する有効な手法でありうるが、誰もが心理療法のコースを受診できる機会や希望をもっているとは限らない。
中度~重度の慢性耳鳴患者に対して、10週間にわたって、数種類の異なるアプローチで治療を行った。
インターネットベースの治療法とグループ治療セッションの両方で、オンライン・ディスカッション・フォーラムだけに参加した対照群よりも、結果は良好。インターネットベースの治療法は、耳鳴り症状に対する有効な療法だと証明できた。

今回のドイツ-スウェーデンの研究により、インターネットベースの治療プログラムは、通常の認知行動療法と同等レベルの治療効果が期待できる。耳鳴り患者は、個々人で積極的な耳鳴り対処戦略を使うことができるようになる。


研究結果
研究目的:スウェーデンで開発されたトレーニングプログラムが、ドイツ人患者に適用された場合の有効性を評価する。

実施機関:Clinical Psychology and Psychotherapy division of the Institute of Psychology at Johannes Gutenberg University Mainz (JGU)、Department of Behavioral Sciences and Learning at Linköping University in Sweden.

試験結果:
1)苦痛度(Tinnitus Handicap Inventory)
インターネットベースのトレーニングコース治療:平均で"moderate/中度"(40ポイント)から "mild/軽度"(29ポイント)へ変化。
認知行動グループ療法:44ポイントから29ポイントに低下。
オンライン・ディスカッション・フォーラム参加:開始時40ポイントから完了時37ポイントとほとんど変化なし。

「インターネットベースの治療法は、耳鳴りの苦痛度の低減(言い換えれば、被験者の耳鳴許容レベルの向上)という点で効果がある。」(Dr. Maria Kleinstäuber of the Clinical Psychology and Psychotherapy division at JGU)

2)治療手法の選好
かなり多くの被験者が、当初はインターネットベースの治療コンセプトに対して懐疑的で、グループ治療を好ましく思っていた。
被験者をランダムに治療群に割り当て、インターネットベースの治療が完了した時、その治療効果がグループ治療と変わらなかったという結果がわかり、被験者全員が驚いた。

「インターネットベースの治療コンセプトに対して当初は懐疑的であるにも関わらず、グループ療法と同等のポジティブな結果をもたらす。」(Kleinstäuber)

最初の評価では、2つの手法とも、6ヶ月後も治療効果が持続している。

研究者の提言
インターネットベースの治療手法は、耳鳴患者の心理療法においてもっと使われるべき。
さらに、この治療法への患者の懐疑心に関する研究(特に、長期間の待機期間と外来患者用の治療手法がないという観点から)が必要。


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備考
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日本語訳文は、英文を抜粋要約したものです。
正確な内容については、英文原文をお読みください。

tag : 認知行動療法

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
”音楽耳鳴り”に関する概要と文献(2) 文献リスト改訂(2012年5月)
"音楽耳鳴り"の概要に関しては、過去記事「"音楽耳鳴り"に関する概要と文献(1)」を参照してください。

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"音楽耳鳴り"に関する文献リスト(2012年5月改訂版)
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音楽耳鳴り文献リスト[改訂版_20120511](更新日:2012年6月10日)



 音楽耳鳴り治療薬文献リスト[改訂版_20120511](更新日:2012年6月10日)


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改訂内容
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(1) Donepezilに関する臨床報告論文の追加
(2) Donepezilに関する既存論文の概要追記

Donepezil(ドネペジル)は、アルツハイマー型認知症進行抑制剤の一種で、アセチルコリン(認知機能の維持に関わる)を分解する酵素アセチルコリンエステラーゼの阻害薬。
日本のエーザイが開発し商品名「アリセプト」として販売されている。
ドネペジルを音楽型耳鳴(Musical Hllucinaion:MH)の治療に使った臨床研究報告は数少ない。

(1)新規論文(抄録なし)
 Successful treatment of musical hallucinations with the acetylcholinesterase inhibitor. 
(アセチルコリンエステラーゼ阻害薬投与による音楽幻聴治療の成功)
J Clin Psychopharmacol. 2012 Jun;32(3):422-4.
Zilles D, Zerr I, Wedekind D./Department of Psychiatry and Psychotherapy Georg-August University Goettingen, Germany


(2)既存論文の概要修正・追記
 "Donepezil in the treatment of musical hallucinations."[論文全文(PDF)]
UKAI,et al. /Psychiatry and Clinical Neurosciences (2007), 61, 190–192

-82歳の高齢女性で難聴があり補聴器を装着。MHが突然発症し、薬物療法を行う。
-当初は投与したのは、etizolam,nicergoline,fluvoxamine、さらに、carbamazepine。
-carbamazepine投与後、MHはいくぶん低減したが、消滅はせず。
-その後、antidepressant (fluvoxamine,milnacipran,paroxetineのいずれか)、anticonvulsant(carbamazepine またはvalproic acid)の組み合わせを変えていき、徐々にMHが低減。
-ただし、この変化は薬物療法による効果というよりも、患者の身体状況の自然な変化が原因のようだという評価。
-その後、再びMHが大きくなってきたため、etizolam, nicergoline,milnacipran,donepezilを投与し、MHが低減。この薬物療法を続けることで、その後症状に大きな変化はなかった。
-donepezilの投与がMH低減に最も効果があったが、donepezil単独投与の場合もMHが低減したかどうかはわからない。


(3)「アリセプト」に関する参考情報
アリセプトの話 [医療のトピック] (六号通り診療所所長のブログ)
認知症の治療とアリセプトの位置付けについての一考察 [科学検証] (同上)
アリセプトのジェネリック (kyupinの日記 気が向けば更新 (精神科医のブログ))


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リスト更新履歴
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2011/6/12 暫定版アップロード
2011/6/13 修正版アップロード(文献追加、記載内容の追記・訂正)
2011/6/18 確定版アップロード(文献追加、記載内容の追記・訂正)、参考資料アップロード
2012/6/10 文献リストおよび治療薬文献リスト(PDFファイル)を改訂


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備考
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記事本文および作成したリスト類は個人的な参考資料として作成したものであり、その内容・翻訳文・要約文・医学用語等については、厳密な正確さを期したものではありません。
この記事およびリストを参考にされる場合は、必ずご自身で論文原文・原典もお読みください。

tag : 音楽耳鳴り

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マインダース ~ 歌曲ピアノ編曲集(シューベルト、シューマン、ブラームス、マーラー)
フレデリク・マインダースのピアノ編曲集は、シューベルト、シューマン、ブラームス、マーラーの歌曲のピアノ独奏版を収録。
マインダースは、ピアニストとしてもかなりの腕前らしく、全て自作自演なので、作曲者の作曲意図がストレートにわかる演奏ばかり。

 シューベルト歌曲 
試聴した時に、シューベルトの編曲版がとてもよい印象だった。
実際にCDで聴いてみても、第一印象どおりとても素敵な編曲。
でも、歌曲を聴き慣れた人にとっては、やっぱりリートで聴く方が良いのかもしれない。
シューベルトの歌曲(だけとは限らないけれど)とは、あまり相性が良くないので、こういう時は編曲ものを聴くと意外に好きになれたりする。

マインダースの編曲は、有名な《野ばら》、《セレナーデ》のほかに、《春に》、《きみはわが憩い》、《笑いと涙》の全5曲。
特に好きなのは、《セレナーデ》と、初めて聴いた《春に》、《きみはわが憩い》。
《笑いと涙》もちょっとユーモラスなところが、ベートーヴェンの歌曲にも似ている気がして面白い。
マインダースの編曲で聴くと、シューベルトの歌曲を聴くときによく感じる"硬さ"がなくて、とってもロマンティック。
特に、《きみはわが憩い》は、ややまどろむようにゆったりしたテンポと、しっとりとした叙情感でとても暖かみのある曲。歌曲でも聴いてみたくなる。
《セレナーデ》は、このアルバム中、左手のための唯一の作品。ぼ~と聴いていると左手だけで弾いているとは気づかなかったけれど、注意して聴いてみると、高音部と低音部を同時に打鍵していないのがわかる。ペダリングで響きを持続させながら、離れた音域の音を弾いている。

シューベルトの歌曲のピアノ編曲版なら、リストの編曲が有名。
《セレナーデ》を聴き比べてみると、リスト版に比べて、声部が絡み合ってかなり装飾的で、旋律の流れもずっと流麗。
和声の響きも柔らかくて、ずっとロマンティックな雰囲気。
それに、マインダースが弾くピアノの響きが、砂糖菓子のように甘くてきらきらと煌めくよう。彼自身の編曲と演奏によく似合っている。

シューマンの歌曲はどれを聴いても、あまり旋律が印象的に残らなかったので、ピアノ編曲版を聴いてもやっぱり同じ。
もともとピアノ作品自体との相性もあまり良くないので、仕方がない気がする。


 ブラームス歌曲
ブラームスの編曲版は、シュライアー(伴奏はレーゼル)の歌曲集で最近よく聴いているので、知っている曲が多い。
それに15年くらい前に、ノーマンやオッターの歌曲集でもときどき聴いていた。
初めて聴く曲もいくつか。ブラームスの曲なら、好みの問題はあっても、どの曲もしっくりと馴染めてしまう。これは作曲家との相性の良さ。
マインダースが編曲したのは、《野の寂寥》、《眠りの精(砂の精)》、有名な《子守歌》、《乙女の唇はバラのように赤い》、《サッフォー風のオード》、《わが恋は緑》、《あの下の谷では》、《われらはさまよい歩いた》、《ことづて》、《メロディーのように》。
彼の編曲はどれも旋律がメロディアス。一度聴けば、ブラームスの曲だとすぐにわかるくらいに印象的なものが多い。
ブラームスはドヴォルザークを"メロディメーカー"だと言っていたけれど、ブラームスの歌曲を聴けば、ブラームスだってとても素敵な"メロディメーカー"だと思えてしまう。

《野の寂寥》は、タイトルほどに寂寥感はなく。長調の明るさに時折短調の陰翳が差し込み、しっとりした叙情感が綺麗。
《眠りの精(砂の精)》は、清々しく明るい色調の旋律が、クリスマスに似合いそうな気がする。
《わが恋は緑》は、歌曲でもそうだったけれど、印象的なメロディと曲想でとても情熱的。この曲はとても好きな曲。
《われらはさまよい歩いた》は、タイトルの印象とは違って、甘く爽やかな叙情感に満ちた曲。
でも、曲名を《ぼくらはそぞろ歩いた》と訳していることもある。歌詞を読むとこっちのタイトルの方が内容に合っている気がする。
タイトルでかなり印象が変わるので、やっぱり(当然のことながら)、歌曲は歌詞を知っていないといけない。
《ことづて》と《メロディーのように》は、明るく爽やかで感情があふれ出るようなドラマティックな曲。

《ぼくらはそぞろ歩いた》については、マインダース自身の珍しいライブ映像が残っている。
2002年にかの有名なフーズム城音楽祭にビジターとして聴きに行っていたところ、出演予定だったハンガリーのピアニストGyorgy Sandorが急病のため、急遽代役を依頼されたという。
いくら自分の編曲作品とはいえ、マインダースは多作家でもあり、いつでもどんな曲でも暗譜で完璧に演奏できるというわけではないに違いない。
楽譜をfaxで取り寄せたが、実質的に練習時間もなく、楽譜を譜面台に置いて弾いている。
室内でのアマチュア録音らしく音質が悪いけれど、ロマンティックな曲想に合わせるように体を揺らして弾いている様子がわかる。

Brahms/Meinders. Song [Youtubeのライブ映像]


 マーラー歌曲
マーラーの歌曲は好きなので、特に管弦楽曲伴奏でよく聴いていたけれど、ピアノ編曲版は珍しい。
マーラー自身、ピアノ独奏・協奏曲の作品はほとんど残していないので、編曲もしていない(たぶん)。
交響曲の方は、いろんな作曲家がピアノ独奏、連弾、2台のピアノ用に編曲したものがある。
歌曲なら、《若き日の歌》をベリオなどが編曲した管弦楽版があるらしい。

マーラー歌曲のピアノ編曲版を聴くと、その旋律や和声が交響曲を連想させるところがある。
マインダースが編曲したのは、「私は喜んで緑の森を歩いた」、「ラインの伝説」、「私はこの世に忘れられ」、「誰がこの小唄を思いついたの?」、「シュトラスブルクの砦に」、「死んだ少年鼓手」の6曲。
初期の歌曲集を除いて、ピアノ伴奏と管弦楽伴奏の両方をマーラーが書いている。
マインダースのピアノ編曲版で聴いても、他の3人のロマン派作曲家の編曲版よりも、旋律の装飾性が少なく、声部のからみもすっきりして、和声もシンフォニックな響きがする。

ただし、マーラー歌曲のなかで最も好きな《リュッケルトの詩による5つの歌》の第4曲「私はこの世に忘れられ」は、原曲とはかなりイメージが違う。
このピアノ編曲だと、右手で弾く旋律が、中~高音部に多く配置されているので、音色が甘すぎて響きも軽やか。
この歌曲のように、スローなテンポで息の長いメロディアスな旋律をピアノで弾くのは、ヴァイオリンと違って、ちょっと難しい気がする。
それに、原曲を聴き慣れていると、タイトルが表わしている如く、静寂さのなかに寂寥感と厳粛さが漂う奥深さは、男声の低い声が良く似合っているといつも思う。
原曲から離れて聴けば、静けさのなかにピアノの澄んだ響きとリリカルな旋律が流れて、とても美しい曲なのは間違いなく。

CDのブックレットにマインダース自身が解説を書いている。
それによると、彼が影響を受けた編曲者はレオポルド・ゴドフスキー。その和声と対位法的な作風と左手のための作品群に最も魅せられたという。

Plays Schubert, Schumann, Brahms, Mahler Frederic Meinders Plays Songs By Schubert, Shumann, Brahms, Mahler
(2008/11/24)
Frederic Meinders

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<収録曲>
 Schubert
1. Heidenröslein /野ばら
2. Schwanengesang, No. 4: Ständchen /『白鳥の歌』~セレナード
3. Im Frühling /春に
4. Du bist die Ruh /きみはわが憩い
5. Lachen und Weinen /笑いと涙

 Schumann
6. Myrthen Op.25,No.14: Hochländisches Wiegenlied /『ミルテの花』より ~ ハイランドの子守歌
7. Lieder und Gesänge II, No.2,Op.51: Volksliedschen / 『歌曲集第2集op.27』より ~ 民謡
8. Liederkreis No. 6, Op. 39: Schöne Fremde /『リーダークライス』より ~ 美しい異郷で
9. Frauenliebe und-leben No.5,Op.42: Helft mir, ihr Schwestern /『女の愛と生涯』より ~ 手伝って、イ妹たち
10. Frauenliebe und-leben No.4,Op.42: Du Ring an meinem Finger /『女の愛と生涯』より ~ わたしの指の指輪よ
11. Myrthen No. 7, Op. 25: Die Lotusblume /『ミルテの花』より ~ はすの花

 Brahms
12. Feldeinsamkeit Op.86,No.3 /野の寂寥
13. Volks-Kinderlieder No.4: Sandmännchen /『子どもの民謡』より ~ 眠りの精(砂の精)
14. Wiegenlied Op.46,No.4 /子守歌(『5つの歌曲』Op.46)
15. Deutsche Volkslieder No. 25: Mein Mädel hat einen Rosenmund /『49のドイツ民謡集より』 ~ 乙女の唇はバラのように赤い
16. Sapphische Ode Op.94,No.4 / サッフォー風のオード(『5つの歌曲』Op.94)
17. Meine Liebe is grün Op.63,No.5 /わが恋は緑(『9つの歌曲と歌』)
18. Deutsche Volkslieder No. 6: Da unten im Tale /あの下の谷では(『9のドイツ民謡集 第1集』WoO33)
19. Wir wandelten Op.96,No.2 /われらはさまよい歩いた(『4つの歌曲』 Op.96)
20. Botschaft Op.47,No.1 /ことづて(『5つの歌曲』 Op.47)
21. Wie Melodien zieht es mir Op.105,No.1 /メロディーのように(『低い声のための5つの歌曲』)

 Mahler
22.Lieder und Gesänge No.7: Ich ging mit Lust durch einen grünen Wald /私は喜んで緑の森を歩いた(『歌曲集』)
23.Des Knaben Wunderhorn No.7: Rheinlegendchen /『子供の魔法の角笛』より ~ ラインの伝説
24. Rückert-Lieder No. 4: Ich bin der Welt abhanden gekommen /『リュッケルトの詩による5つの歌曲』 ~ 私はこの世に忘れられ
25. Des Knaben Wunderhorn No. 4: Wer hat dies Liedlein erdacht? /『子供の魔法の角笛』より ~ 誰がこの小唄を思いついたの?
26. Lieder und Gesänge No. 10: Zu Strassburg auf der Schanz /シュトラスブルクの砦に(『歌曲集』)
27. Des Knaben Wunderhorn No. 13: Revelge /『子供の魔法の角笛』より ~ 死んだ少年鼓手

tag : マインダース シューベルト シューマン ブラームス マーラー

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ポール・ジェイコブス 『Busoni ;the Legendary Recording』 ~ メシアン/4つのリズムのエチュード
メシアンの《4つのリズムのエチュード/Quatre etudes de rythme》(1949-1950)は、ストラヴィンスキ、バルトーク同様、このジャンルでの唯一の作品。
どの曲も、煌きのある鋭い高音の華やかに装飾されたフレーズと、低音の厳つい響きがメシアンらしい曲。
伝統音楽のような形式的規則性や叙情感はなくとも、"リズムの練習曲"という名の通り、メシアン独特の異なるリズムの組み合わせが面白い。

No.1 <火の島 第1> "Ile de feu I"
-パプア風の主題。主題がストレートに提示され、伴奏は低音部のクラスターでパーカッション的ノイズ。
-主題が度々再現され、鳥の音、不協和音、ゴングなども繰り返し伴奏される。
-対位法が長くなる部分は、インド音楽ラーガから派生した旋律が使われている。

Olivier Messiaen / Paul Jacobs, 1976: Quatre Etudes De Rythme (1949-50) - Nos. 1 and 2



No.2 <音価と強度のモード> "Mode de valeurs et d'intensites"
-完全にセリエル主義化された最初の作品の一つ。作曲技法として、メカニカルな進行を使っているだけでなく、演奏者の側に解釈の余地を与えない。この作品の最も革新的なところは、ダイナミックレベルとタッチのコンセプト。
-3つの12音のセットに分割された36音で構成。それぞれ違う長さ、打鍵の強度、各ピッチに関連したダイナミックレベルを持つ。終始断片的で、縦の線のコンビネーションが頻繁に変化するが、各音は単一のダイナミックレベルで打鍵の質も不変で、音楽もほとんど全体的にスタティック。
-この作曲の登場で、50年代の欧州の音楽にどのくらい影響を与えたかという点は驚くべきもの。電子音楽の美学に対するロジカルな橋渡し役。

解説の意味はさっぱりわからないけれど、聴いていると、氷雨のような鋭く冷たい高音が、不規則的な規則性を持って、雫のようにしたたり落ちているイメージ。
高音部はリズミカルだけれど、低音の響きと長さはそれとは対照的。高音の音はそれほどまばらでもなく、絶えず動き回っているのに、音楽としてはスタティック(静的)。


No.3 <リズムのネウマ> "Neumes rythmiques"
"neumes"とは、中世の音楽のことで、ギリシア語では〈合図〉を意する。特にグレゴリオ聖歌において、四線譜や五線譜が成立する以前に使われていた楽譜記号。旋律の動き方を1音~数音のグループで示す。(百科事典マイペディア)

-メシアンは、この作品の基本的な素材を生み出すために、メロディアスでリズミックなセル(リズミックなネウマ)を並置している。
-各セルは、再現されるたびに同じダイナミックスと不協和音で提示される。冒頭とラストに現われる2つのリフレインが散りばめられている。

この間聴いた《アーメンの幻影》を思い出させるような和声と旋律が入っている。
No.1とNo.2とは違って、運動性が低く、素材がさらに断片的に繋がっているように聴こえる。

Olivier Messiaen / Paul Jacobs, 1976: Quatre Etudes De Rythme (1949-50) - Nos. 3 and 4



No.4 <火の島 第2> "Ile de feu II"
-No.1とは異なるパプア風の主題。12の半音階ピッチが置換されて散りばめられたり、結合したりするリフレイン素材。
-コーダはインド音楽の旋律。

Busoni;the Legendary RecordingBusoni;the Legendary Recording
(2000/07/24)
Paul Jacobs

試聴する(allmuisc.com)
作品解説は、ジェイコブス自身によるもの。

tag : メシアン ジェイコブス

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ポール・ジェイコブス 『Busoni :the Legendary Recording』 ~ バルトーク/3つのエチュード
バルトークの《3つのエチュード》Sz.72/Op.18(1918年)は、ジェイコブス自身の解説によると、《中国の不思議な役人》を作曲中に書いたエチュードなので、同じ特徴が現れている。
壮麗なハーモニー、器楽的な技巧性の高さ、それに、熱に浮かされたようにエキサイティング。
前衛的な攻撃的、不確実で不気味な時代特有の不安感は、民謡をモチーフとしたピアノ曲とは全く違ったタッチ。
ピアノ協奏曲第1番&第2番よりもさらに厳つく荒々しい雰囲気だけれど、《弦楽器と打楽器とチェレスタのための音楽》を聴いていると違和感なく思えてくる。

No.1 Allegro molto
- ストラヴィンスキーの《春の祭典》の影響が顕著。
- 両手とも9度、10度という広い間隔の音が多く、外側の指(しばしばより弱い指)に対してかなりシビアな動きを要求される。
- 形式的には、オクターブで置き換えられたシンプルな半音階から派生し、その"intervallic stretch"(音の間隔、開き)はシェーンベルクの音楽においても典型的。

打楽器的な奏法で岩のように堅い低音や和音が厳めしく、プリミティブな(原始的な)躍動感と色彩感が煌いて、いたく感覚を刺激するエチュード。
荒々しい曲想とは対象的に、和声が幻想的に美しく、不思議な妖艶さを帯びている。
《春の祭典》の強い影響がある解説どおり、原始社会での祝祭空間のような混沌とした情景が浮かんで来る。


No.2 Andante sostenuto
- 全体が半音階的と3度以外の間隔に基づいた和音がベース。
- 複合和音(Polycode)のアルペジオが煌いて、色彩的には、ハープ、ピアノとチェレスタ。
- ドビュッシーが到達した新しいピアノの和声が増幅されている。

多くのピアニストはバルトークをバンバンと弾きすぎる、バルトークの和声はとても美しいのだと、ハンガリー人のシフが言っていた。
この曲の和声的・色彩的な美しさは、ドビュッシーのような線の細い透明感のある"印象主義的"なタッチとは全く違う。
近現代の合理性とは相容れない本能的・原初的なものを感じさせる和声の響きには、ねっとりとした妖艶な美しさと荒々しい逞しさが融合している。


No.3 Rubato - Tempo giusto capriccioso
- 左手の高速の16分音符が絶えず再集合し(regrouping)、それが生み出すより大きなパルスが伸縮するという、リズミックな対位法で書かれている。
- 右手は和音のフレーズで構成され、不規則的・非対称的に配置。左手の音のまとまりとは対応していない。

冒頭は幻想的な雰囲気で冷たい響きの和声で始まる。
すぐに、原子・分子のようなミクロな何かが自在に動き回っているような運動性のある高速の細かいパッセージが続く。
左・右手で弾く旋律は、それぞれ独自の運動的自律性で動いているので、規則性のない集合離散を繰り返しているような印象。最後の和音のフレーズが少しメシアン風(?)。



Bela Bartok / Paul Jacobs, 1976: Three Etudes, Op. 18, Sz. 72 (1918)
No.2(2:06-)、No.3(5:12-)




Busoni;the Legendary RecordingBusoni;the Legendary Recording
(2000/07/24)
Paul Jacobs

試聴する(allmuisc.com)
作品解説は、ジェイコブス自身によるもの

tag : バルトーク ジェイコブス

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ポール・ジェイコブス 『Busoni ;the Legendary Recording』 ~ ストラヴィンスキー/4つのエチュード
ポール・ジェイコブスの『Busoni;the Legendary Recording』は、ブゾーニ作品の演奏が素晴らしいけれど、カップリングされている現代のピアノ練習曲集も刺激的。
練習曲は、ブゾーニ《多声演奏の訓練のための6つの小品》、ストラヴィンスキー《4つの練習曲》、バルトーク《3つの練習曲Sz.72》、メシアン《4つのリズムの練習曲》。
いずれもLP時代に録音したもので、あまり知られていない作品ばかり。
コンテンポラリーをレパートリーの中心としていたジェイコブスらしい選曲と演奏が煌いている。

20世紀以前に書かれた"練習曲"とは違って、現代音楽の曲には実験的な要素が多いので、何の練習かよくわからないところはあるけれど、"練習曲"というタイトルに関わらず、これが予想外に面白い。
現代音楽的語法が数分足らずの短い曲のなかに凝縮されているので、延々と長大な曲を聴くよりははるかに聴きやすい。

現代音楽を得意としたジェイコブスらしく、明晰でブリリアントな演奏。
ストラヴィンスキー、バルトーク、メシアンは作風が違うので、万華鏡のように次々と違う絵模様が現れてくるような感覚。
ストラヴィンスキーの練習曲には最も過去の時代の面影が残っていて、現代音楽といってもそれほど抵抗なく聴けそうな曲。
バルトークやメシアンの練習曲には、初期のストラヴィンスキーを連想するところがある。
打楽器奏法が有名なバルトークは、幻想的な和声の響きにドビュッシーの影響を感じるものがあるし、オスティナートと打楽器的奏法が多用されて、全てが織り重なっていくと、時々メシアンを聴いているような気になる。
メシアンのエチュードになると、初期の《前奏曲》とは全く違って、独自の和声とリズムですぐにメシアンだとわかる。
《みどり児イエスにそそぐ20の眼差し》を連想するようでもあり、時々《トゥーランガリラ交響曲》も思い出す。
こういう厳つい尖った雰囲気でカラフルな音の洪水のような曲の方が、メシアンの"鳥シリーズ"よりはずっと聴きやすい。

ジェイコブスの演奏は、現代音楽を得意とするのもよくわかるくらいに、どの練習曲も色彩感豊かでリズム感も明快。
練習曲的な平板さや無機的なところは全くなく、鋭い造形力と明晰さで現代音楽的な難解さを感じることもない。
作曲家ごとに、タッチと色彩感を変えているので、作風の違いもわかりやすい。
バルトークは音の線が太めで重厚感があり、波のように滑らかで幻想的な響きはドビュッシー風。
メシアンでは、鋭いタッチと尖った響きが氷柱が突き刺すような感覚がする。特に、高音の音色は氷のような冷たさ。
新古典主義や調性回帰した現代音楽は耳ざわりが良くて聴きやすいけれど、20世紀前半の前衛性が強かった時代の現代音楽がかえって懐かしく、面白く思えてくる。

Busoni;the Legendary RecordingBusoni;the Legendary Recording
(2000/07/24)
Paul Jacobs

試聴する(allmuisc.com)
作品解説は、ジェイコブス自身によるもの。ピアノ演奏をする上での書法の特徴がよくわかる。
ピアニストであっても、(ピアノ作品以外の作品も含めて)作曲もするハフやムストネンも、自ら作品解説を書いていることが多い。

ストラヴィンスキー: 4つのエチュード/4 Etudes Op.7(1908)
ストラヴィンスキーが、1908年、ロシアを離れてパリへ向かう直前に書かれたもので、彼のApprentice(修業)期間と考えられている頃の最後の作品。器楽的な光彩が輝くような書法で書かれている。

No.1 ハ短調 Con Moto
- ポリリズムの練習。2連符&3連符の旋律が、4連符で伴奏される。
- ポストロマン主義的な作風で、中期のスクリャービン的。

解説どおり、練習曲といっても、ロマンティックで濃厚な叙情感は、まるでスクリャービンを聴いている気分。

Stravinsky / Paul Jacobs, 1976: Etude No. 1, Con Moto, From Four Etudes, Op. 7 (1908)



No.2 ニ長調 Allegro Brilliante
- 他の曲よりも音色(tonally)に中心をおいた作品。
- 遅いテンポの和声変化、速い動きのパターンというところは、19世紀の作品に似ている。
- ストラヴィンスキーの特徴である、ノーペダルでドライな響きの和声で、弦楽よりも木管的。
- 最初の主要部分では、右手6拍子&左手4拍子、次の再現部では、左手5拍子&右手6拍子。

クロスリズムになっているので、各声部がややずれた感じで重なって、くっきりと線的に聴こえてくるところが面白い。

Stravinsky / Paul Jacobs, 1976: Etude No. 2, Allegro Brilliante, From Four Etudes, Op. 7 (1908)



No.3 ホ短調 Andantino
- ソフトペダルを一貫して使用。最もシンプルな曲で旋律はチェロ的。
- 左手はハーモニ。右手は波のようなアルペジオで伴奏される。

和声が少し幻想的でどこかノスタルジックな旋律。
《イ長のソナタ》を聴いていると感じるのと同じく、セピア色のようなくぐもった雰囲気が漂っている。
ストラヴィンスキーの古典回帰時代を連想させる。

Stravinsky / Paul Jacobs, 1976: Etudes Nos. 3 and 4, From "Four Etudes, Op. 7" (1908)



No.4 嬰ヘ長調 Vivo
- 最も演奏機会の多い曲の一つ。軽快でドライでウィットに富み、聴覚的というより視覚的に訴えるような奇妙なところがある。
- 小節の上をstaggered(ずらして。小節をまたがって、ということらしい)で書かれているので、最後に8分音符を挿入してエンディング。

いかにも練習曲風の細かく速いパッセージ。
たしかに、何かがちょこまかと慌しく動き回っているようで、視覚喚起力が強い。
規則的に拍子がとれるので、フレーズが小節を超えて書かれているというのは、聴いていてもよくわからない。

<関連記事>
ジェイコブス 『Busoni ;the Legendary Recording』 ~ ブゾーニ/多声演奏の訓練のための6つの小品


tag : ストラヴィンスキー ジェイコブス

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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

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好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
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