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カート・ヴォネガット 『スローターハウス5』,『追憶のハルマゲドン』
ドレスデンの歴史を調べていて、カート・ヴォネガットの小説『スローターハウス5』のことを思い出した。
この小説は、若い米軍兵士だったヴォネガットが第ニ次大戦末期のヨーロッパでドイツ軍の捕虜となり、ドレスデン爆撃に遭遇した体験を元に書かれた半自伝的小説。
ドレスデンは、ドイツ軍の敗色濃厚となった1945年2月、2日間にわたる連合軍(英米軍)の絨毯爆撃により、街のほとんどが破壊された。(ドレスデン爆撃から約3ヶ月後の5月8日、ドイツは無条件降伏した)
ドレスデンは、「エルベ河畔のフィレンツェ」と言われたバロック建築の歴史的な美しい街並みと文化財が存在する古都。目ぼしい軍事施設や軍需工場もなく、「非武装都市」と言うドイツ人がいたほどに、空襲にはほとんど無防備だった。

小説『スローターハウス5』
ドレスデン爆撃のことを知ったのは、学生の頃に好きだった作家の一人カート・ヴォネガットの小説『スローターハウス5』。
スローターハウスとは「屠殺場、食肉処理場」のこと。ドレスデンで捕虜収容所代わりに使われていたのが「シュラハトホーフ=フュンフ(Schlachthof Fünf)」=「スローターハウス5」だった。
この小説は、第二次大戦中にドイツ軍の捕虜となりドレスデンで英米軍の爆撃に遭遇した体験に基づいているけれど、時空を浮遊するタイムトラベルのようなSF風な仕立てでもあり、さらにヴォネガット作品の登場人物(キルゴア・トラウト、エリオット・ローズウォーター、ラムフォード(ファースト&ミドルネームは違う)、トラルファマドール星人、ハワード・W・キャンベル・ジュニア)が、多数登場する。

ヴォネガットの代表作と言われているし、ヴォネガット自身、『スローターハウス5』と『猫のゆりかご』を自身の作品の中で最高の「A+」と評価していた。(出典:カート・ヴォネガット非公式ページ)

ヴォネガットの没後に公開された作品のなかに、ドレスデン爆撃の体験を記したノンフィクションがある。
それを読むと、実際のところ、当時のドイツ人は市民も軍人も、歴史的遺産が多く文化都市で大した軍事拠点もないドレスデンが爆撃の対象になるとは誰も思っていなかった。
戦場の負傷者がドレスデンの病院に次々と運びこまれ、爆撃にあったドイツ国内の都市から避難民が多数流入していた。
防空壕はベルリンで作られたものとは違った簡易なもので、市内の高射砲は他地域へ移動させており、爆撃する英米機を迎撃するはずのドイツ空軍機はほとんどいなかった。

『スローターハウス5』の解説によると、ドレスデン空爆で投下された航空機と爆弾は、英空軍のランカスター重爆撃機800機が数千トンの高性能爆弾と65万の焼夷弾、米軍のB17が450機、最後は翌朝のP51ムスタング戦闘機による機銃掃射。犠牲者数は3万5千~20余万まで諸説あるが、今のところドレスデン警察の推計「135,000人」が公式の数値とされている。


スローターハウス5 (ハヤカワ文庫 SF 302)スローターハウス5 (ハヤカワ文庫 SF 302)
(1978/12)
カート・ヴォネガット・ジュニア

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『スローターハウス5』は、ドレスデン爆撃から24年後に発表されたが、それまでは、(少なくとも米国では)ドレスデン空襲については広く知られてはいなかったという。
今回読み直してみると、随分昔に読んだので、小説の展開も登場人物もほとんど忘れていた。
学生時代はSF小説の『プレイヤー・ピアノ』と『タイタンの幼女』や、ばかばかしいユーモアが面白い『ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを』が好きだったので、『スローターハウス5』は内容が重すぎた。
今読んでみると、戦争という極めてシリアスなテーマに、時空浮遊するタイムトラベルSF的要素と、トラルファマドール星人の時間観念・世界観・人生観とが複雑に絡み合って、ずっしりとした読み応えのある小説だった。ヴォネガットの最高傑作と言われるのもよくわかる。

「半自伝的小説」と言われるとおり、自身の生い立ちと、捕虜として体験したドレスデン爆撃の体験(とくに破壊されて瓦礫と硝煙に埋もれた街の様子や防空壕に折り重なる夥しい死体の山の光景)が色濃く反映されている。
小説自体は、時間の流れがバラバラで、主人公ビリー・ピルグリムが経験した(する)の過去・現在・未来の出来事と、異世界トラルファマドール星での"囚人"生活が、断片的に映画のフラッシュバックのように次々と現われる。
普通の小説を読むのとは全く違った感覚なのに、目まぐるしく移り変わる時間と場所に意識が自然とついていけるので(かなり個人差はあると思う)、違和感も錯綜感も感じることなく読めてしまう。

ヨーロッパでの従軍とドレスデンでの爆撃前後の話は、実体験に基づいているだけあって、実話のごとくリアリティがある。
戦争や抑留生活という異常な状態では、平和時の常識・良識など消滅し、別の秩序が支配する。登場する軍人たちにはいささかクレイジーな人もいる。

時間の流れのなかを自由に行き来きするトラルファマドール星人の思考方法と時間観念が独特。
過去と未来に起こる出来事を変えることはできず、トラルファマドール星と宇宙とを一瞬にして消滅させる出来事がいつどう起こるかも知っている。今日は平和でも、別の時にはおそろしい戦争がある。
「それをどうこうすることは、われわれにはできない。ただ見ないようにするだけだ。無視するのだ。楽しい瞬間をながめながら、永遠をついやす」・・・・「いやな時は無視し、楽しい時に心を集中するのだ」

いたるところで繰り返して出てくる「As it goes.」(そういうものだ)。
自分の力では変えることも止めることもできない好ましからざる出来事や運命でも受け入れるしかないという、虚無感、諦観、忍容の言葉。
この言葉自体に説得力があるというよりも、不条理極まりないが避けられない状況に直面してできることは、そう思うことしかない。

ビリーがトラルファマドール星で動物園の檻の中の動物の如く捉われていた時、家族を作るべく地球から連れて来られた女優が首にかけていたロケットに刻まれた言葉。
「神よ願わくばわたしの変えることのできない物事を受け入れる落ち着きと、変えることのできる物事を変える勇気と、その違いを常に見分ける知恵とを授けたまえ」


追憶のハルマゲドン
ヴォネガットは、2007年4月に自宅の階段から転落した時の脳損傷が原因で、84歳で急逝した。
2008年に出版された『追憶のハルマゲドン』は、ヴォネガットの講演予定原稿、第2次大戦中に家族に宛てた手紙、生前の未発表作品(主に戦後まもなく書いたもの)をまとめたもの。

追憶のハルマゲドン追憶のハルマゲドン
(2008/08/22)
カート・ヴォネガット

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戦時中、上等兵だったヴォネガットが家族に宛てた手紙はドレスデン空襲後に書かれたもので、ドイツでの捕虜生活とドレスデン爆撃前後の様子が、抑制した筆致で、淡々と報告書のように書かれている。
多くの米国人捕虜が捕囚中に死に、ドレスデンにいたドイツ人など25万人が米英軍の爆撃で死んだが(死者数は2万5000人や15万人など、諸説ある)、ヴォネガットは幸運にも(それに、捕虜収容所代わりに使われた地下の食肉処理場が理想的な防空壕となったおかげもあって)生き残った。

未発表作品は、第2次大戦中の捕虜生活とドレスデン空襲の体験を元に書かれた作品が多い。
とりわけ印象に残るのは、ドレスデン空襲の体験を綴った回想『悲しみの叫びはすべての街路に』(Waling Shall Be in All Streets)。
これを”エッセイ”と呼ぶには、あまりに重いルポルタージュ。
敵国の地で捕虜生活を余儀なくされた兵士が、その地で友軍による爆撃を体験し、爆撃直後の破壊された街で夥しい敵国の民間人の死体を掘り起こしていくという、異様な状況を記録している。
ドイツ軍の命令で、一日中夥しい数の死体を掘り起こしていると感覚が麻痺してしまい、死者の尊厳や遺体に対する丁重な扱いといった平和な状況では当然とされる観念も薄れ、「そのうちに死は日常茶飯事となり、われわれもわびしい重荷に関するジョークをやりとりしながら、死体をゴミ袋のようにほうりだすようになった。」
薪を積み上げて火葬しようにも、遺体が多すぎて、人手も足らず。結局、死体が山のように積み重なっている防空壕に兵士を派遣して、死体の山を火炎放射器で一気に”火葬”するしかなかった。

爆撃から数日後、米軍機が空中からドレスデン市民へ捲いたビラには、”鉄道施設を破壊する必要があったため止むを得ない爆撃だった。必ずしも目的に命中しなかった爆撃もあるが、軍事目標以外を破壊する意図はなかった云々”という趣旨のことが書かれていた。
実際、米軍が軍事目標だと主張した鉄道施設は48時間以内に復旧し、鉄道用鉄橋は依然として通行可能だった。
一方、爆撃目標より3マイル(約5km)も離れた場所に投下された爆弾により、10万人以上の非戦闘員が死に、文化都市が灰燼に帰した。

その他に収録された未発表の短編も、戦争中の捕虜生活の体験を元にして書き上げた短編小説が多い。
その記憶が、終生ヴォネガットの心の中に強く焼き付けられていたに違いない。


映画『スローターハウス5/Slaughterhouse Five』 [Goo映画の作品解説]
『スローターハウス5』は、ジョージ・ロイ・ヒル監督(『明日に向って撃て!』『スティング』の監督)で1972年に映画化。マイケル・サックス、ロン・リーブマンなどが出演。
ヴォネガット自身、自分の小説よりも良く出来ている映画だと言っていたという。

映画ではグールドが弾くバッハのピアノ協奏曲などが使われていたことが、ちょっとした話題になった。
ビデオか何かで、随分昔に一度見た記憶があるけれど、たしか冒頭は深い雪原のなかを主人公が逃走しているシーンだったような....。流れたいた音楽は、《チェンバロ(ピアノ)協奏曲第5番ヘ短調 BWV1056 第2楽章》。
廃墟となったドレスデンのシーンに流れているのは、《ゴルトベルク変奏曲》第25変奏。
他に使われているのは、《ゴルトベルク変奏曲》のアリアと第18変奏、《ヴァイオリン協奏曲第2番ホ長調BWV.1042》第3楽章、《18のライプツィッヒ・コラール集》第2曲〈来たれ、聖霊、主なる神 Komm, heiliger Geist, Herr Gott〉BWV.652、《ブランデンブルク協奏曲第4番ト長調BWV.1049》第3楽章、《チェンバロ協奏曲第3番ニ長調BWV.1054》第1楽章。


DVD『スローターハウス5』
スローターハウス5 [DVD]スローターハウス5 [DVD]
(2009/05/13)
マイケル・サックス、ユージン・ロッシュ 他

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参考サイト
Slaughterhouse Five /スローターハウス5 (1969),(映画)スローターハウス5('72・米) [PAPERBACK GUIDE]
追憶のハルマゲドン [月うさぎより愛をこめて・・・]  


関連映画 『ドレスデン、運命の日』
ドレスデン爆撃を映画化した作品。2007年公開。
詳しい解説は、ドイツの戦争叙事詩「ドレスデン、運命の日」[All About,2007年04月06日]。

ドレスデン-運命の日- [DVD]ドレスデン-運命の日- [DVD]
(2007/11/02)
フェリシタス・ヴォール、 他

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DVDを借りて観たけれど、セットを使った爆撃・炎上シーンはかなりの迫力はあるが、時々挿入されている当時のモノクロ記録映像が一番真に迫ってくる。
(全然必然性が感じられない)看護婦と英軍兵士の恋愛話など入れずに、実録的なノンフィクション風タッチの映画にした方が、より事実の持つ重みと凄みが伝わっただろうに...という印象だった。

Bombing of Dresden - 1945, Remembrance, 13 -15 February
空中からのドレスデン爆撃、建物がほとんど破壊され廃墟となった街の様子、建物の瓦礫の山や防空壕の中から遺体を掘り起こす作業の映像など。

tag : 東ドイツ グールド

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新譜情報:カヴァコス&パーチェ ~ ベートーヴェン/ヴァイオリンソナタ全集
カヴァコスのDECCA移籍後の初録音は、ベートーヴェンのヴァイオリンソナタ全集。
8月下旬のザルツブルグ音楽祭で演奏する(すでに演奏会は全て終了)ベートーヴェン・ツィクルスに間に合うように、4月下旬の専属契約締結後にレコーディング開始。

録音はスムーズに完了したらしく、DECCAのウェブサイトの情報では10月1日にリリース予定だった。
でも、「Int. Release 07 Jan. 2013」に変更されていたし、予約しておいたHMVから「2013年01月31日」に延期するとメールで連絡してきた。
3ヶ月以上も延期されるのはどうしてなんだろう。まさか録音のやり直し? 編集に手間どっているのかな?


カヴァコスは好きなヴァイオリニストの一人。それに今回の伴奏ピアニストは、ツィンマーマンとデュオを組んでいる頃から好きなエンリコ・パーチェ。
さらに、室内楽曲の中では、ベートーヴェンとブラームスのヴァイオリンソナタが最も好きな曲集。
どちらの曲集もピアノパートが充実しているので、ヴァイオリニストよりもピアニストを聴くために、CDを集めているようなもの。
ラックの中をチェックすると、ベートーヴェンの全集は、スーク&パネンカ、パールマン&アシュケナージ、ファウスト&メルニコフ、カプソン(カピュソン)&ブラレイ、グリュミオー&アラウ、シュナイダーハン&ケンプ、シェリング&ヘブラー、クレーメル&アルゲリッチと、室内楽はそれほど凝っていないわりに、いつの間にかCDが溜まっていた。
ピアニストで聴くなら、個人的な好みとしては、アシュケナージ、ブラレイ、メルニコフ。昔はアシュケーナージのピアノ伴奏が一番良いと思っていたけれど、メルニコフもかなり良い感じ。

Beethoven: Violin SonatasBeethoven: Violin Sonatas
(2012/11/06)
Leonidas Kavakos

試聴ファイル(国内盤へリンク)

現在、輸入版は国内のHMV、Towerrecords、amazonサイトで予約受付中。HMV、Towerrecordsの発売予定は2013年1月末。

国内盤(SHM-CD)は11/14に発売済み。試聴ファイルもあり。
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集
(2012/11/14)
カヴァコス(レオニダス)

試聴する(HMV)


カヴァコス&パーチェは、海外の演奏会で第5番のスプリングソナタ、第9番のクロイチェルソナタを度々弾いているし、演奏会レビューもほとんどがポジティブな評価。(カヴァコスは、エマニュエル・アックスとも、時々演奏会でデュオしている)
数日前のザルツブルク音楽祭の演奏会に関するレビューは、今のところ3件読んだけれど、DrehPunktKulturはとても好意的、聴衆の反応も非常に良かったという。
DiePresse.comはかなりネガティブな評価かも。(原文がドイツ語で辞書を引くのも面倒なので、英語の機械翻訳で読んだので、正確な内容はよくわからない)。
Salzburger Nachrichtenはややネガティブ。エネルギッシュなピアノに比べて、ヴァイオリンが控え目だったらしい。


今年11月14(水)には、カヴァコス&パーチェの演奏会がトッパンホールで開催予定。[リーフレット(PDF)]
この2人のデュオとしては日本初演のはず。パーチェの方は、2007年11月にツィンマーマンと来日してクロイチェルソナタなどを弾く予定だったけれど、ツィンマーマンが急病で直前にキャンセル。
今回のプログラムは、ベートーヴェンのヴァイオリンソナタの第1番、《スプリング》と《クロイツェル》。


このYoutubeのライブ映像(たぶん放送用録画)は、ヴァイオリンソナタ第6番の第3楽章(変奏曲形式)。
変奏曲好きの私としては、ベートーベンのヴァイオリンソナタのなかでも、とても好きな楽章の一つ。
このパーチェのピアノ伴奏も(アシュケナージの演奏と同じくらいに)好きなので、今回リリースされる全集盤を聴くのが待ち遠しい。

Leonidas Kavakos and Enrico Pace playing Beethoven Violin Sonata No.6, Op.30 No.1 (3 of 3)


面白いのは、4:00や4:12あたりの弾き方。カヴァコスがかなり力を入れて弾いているのに応じて、ピアノのパーチェの弾く和音も、びっくり箱のようにバンッ! 一瞬間をあけて、何事もなかったかのように平然としたタッチで弾いている。この対比がちょっとユーモラス。


tag : ベートーヴェン カヴァコス パーチェ

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大西順子、秋の国内ツアーを最後に演奏活動から引退
ジャズピアニストの大西順子が公式サイトに、プロとしての演奏活動から引退するという引退表明のメッセージを載せている。今回は本当に引退するつもりらしい。

2000年に突然、演奏活動を止めてしまったことがあり(専業主婦になるとかいう話が出回っていたけど)、2007年頃に日本のどこかのライブハウスで、これまた突然姿を現して演奏活動を再開。
それ以来、ライブやレコーディング(『楽興の時』、『Baroque』)が続いていたし、「大西順子 / 『バロック』EPK エピソード」(Youtube)を見ると、リラックスして楽しんでレコーディングしている(ように思えた)ので、復帰後の音楽活動は順調なのかと思っていた。
2011年10月に、翌年1月以降のライブ予定を全てキャンセル。どうやらご家族に不幸があったらしく、それ以来音沙汰がなかった。
大阪での最後のライブは、10月30日のBillboard Live OSAKAにて。日本国内の最終ライブは11月8日のCABIN(厚木)。[国内ツアースケジュール]

引退後の予定は未定とのこと。
「自分のための演奏は出来ても、オーディエンスを満足させるパフォーマー、クリエーターにはなれない」という言葉に、即興音楽のジャズと、解釈すべき楽譜が存在するクラシックとの違いが、私には感じられる。
(例えば、アラウやレーゼルが言っていたことは、”聴衆が自分の演奏を受け入れてくれればありがたいが、大事なのは聴衆の評価ではなく、自分が音楽とどう向き合うかということ")
「むしろ研究者でいたい」ということは、ジャズ音楽と演奏に関する研究や教育活動の方へ向かうのかも。

彼女のピアノは、やや粘りのあるゴツゴツと重みのあるタッチで、メロディアスではあっても硬派で、ウェットな感傷性を感じさせない。でも、復帰後のCDは、試聴しても強く印象に残るものが(私には)なかった。
今までリリースされたアルバムで一番好きなのは、『ビレッジ・バンガードの大西順子 / JUNKO ONISHI LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD』。それに《ユーロジア》と《ユーロジアII》の2曲もとても好き。
骨太のタッチでがっちりとした存在感と、どこかしらクラシカルな雰囲気が漂っている。


これはかなり昔のライブ映像。この頃は、ウェービーなヘアスタイルとエレガントな雰囲気が彼トレードマークだった。
演奏曲は、ビレッジ・バンガードのライブ録音でも弾いていた《CONGENIALITY》。

Mt.Fuji Jazz Festival Junko-Ohnishi(大西 順子)



チャイスパイス
冬に限らず、夏でもよく飲むお茶はチャイ。
夏でも、アイスではなくホットで。夏には熱いお茶を飲むのが体に良いと昔から言うし。
昔はアールグレイが一番好きだったのに、好みがすっかり変わって、スパイシーでほんのり甘いチャイが今では定番。

春頃までは、あらかじめスパイスがブレンドされたリーフやティーバックのチャイを飲んでいた。
チャイやチャイ系のティーバック・リーフのパッケージの原料表示をみると、シナモン、ジンジャー、カルダモン、クローブ、ナツメグなどが入っている。
チャイ系の紅茶で、クリスマス用の特別ブレンドになると、バニラなどが入っていることもある。
"Chai Masala チャイ・スパイス"の記事を読むと、インドでは地域や家庭によって、ブレンドするスパイスがかなり違うらしい。
ということは、自分でスパイスを数種類混ぜてチャイが作れるはず。
早速、スパイスを数種類買い込んで、好みの配合を研究中。

カルディコーヒーファームでスパイスを探していると、「ティーマサラ(カルダモン)」というチャイ用スパイスも売っていた。
今までスパイスは何度も買っているのに、全然気がつかなかった。
「ガムラマサラ」はカレー用なので、コショウやクミンとかがブレンドされているが、「ティーマサラ」はカルダモン、ジンジャー、シナモン、そのほか香辛料がブレンドされたスパイス。

マスコット ティーマサラ カルダモン 28gマスコット ティーマサラ カルダモン 28g
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マスコット

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amazonでよく売れているらしいのが、このチャイマサラ
スパイスは、カルダモン、シナモン、フェンネル、ジンギャー、ナツメグ。クローブのかわりにフェンネルがブレンドされている。
アショカチャイマサラ 80gアショカチャイマサラ 80g
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ヒマラヤ

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チャイ用スパイスの中で一番使いやすいのは、シナモン。シナモンはお菓子やパンによく使うし、シナモンだけでも美味しいチャイになる。
カルダモンはスパイスの女王と言われるらしく、たしかに爽やかな甘い風味はとても上品。チャイ用スパイスの中では価格も一番高い。
クローブはバニラのような甘い香りがする。これは大好き。
使いにくいのはナツメグ。ハンバーグに入れると風味が良いけれど、紅茶に入れるとちょっと抹香のような香りがして、かなりクセがある。
ジンジャーは香りよりも味が強くでて、他のスパイスの風味を打ち消してしまうので、入れるなら少量。

カルダモンクローブは、メーカーによってかなり価格差がある。
一番手ごろな価格と用量なのは、カルディのオリジナルブランド。
普通のスーパーで売っている日本メーカーやGABANのスパイスは、価格自体は高くても用量が違うので、単価にしてみる割安なこともある。

ブレンドする配合を変えれば、毎日違った風味のチャイが楽しめる。
その日の気分で、ちょっと引き締まった味にしたいときはジンジャーを入れたり、ぴりっとスパイシーにしたければブラックペッパーを入れたり。冬はシナモン&ジンジャーを入れるとポカポカ身体が温まりそう。

毎日ブレンドする暇があるとは限らないので、ベースになるブレンド済みチャイスパイスを作っておくと便利。
カルダモン・シナモン・ナツメグ(微量)をあらかじめブレンドしてスパイスボトルにストックしているので、それにホールのクローブを手で細かく砕いて入れれば簡単。
クローブは必ず入れるので、ホールではなく、パウダーのクローブを使ってベースのブレンドスパイスに加えておくという方法もある。
でも、スパイスはホールの方が保存性が良い。料理で使うブラックペッパーも使う度にミルで挽いているので、風味が良い。

店頭でときどき見かけるオールスパイス
パウダータイプだったので、てっきりブレンドスパイスかと思っていたら、もともとそういう名前のスパイス。お店によっては、ホールの瓶もおいていた。
シナモン、クローブ、ナツメグをブレンドしたような風味がするらしい。これにカルダモンやジンジャーを加えても良さそう。
カルディでオールスパイスパウダーを早速買って、紅茶に入れてみた。
クローブ&ナツメグをブレンドしたようなマイルドな風味で、シナモンの風味がほとんどしない。
シナモンパウダーを加えてみると、味がしゃんとしてコクが出る。
さらにカルダモンを入れると、上品な甘い香りが加わる。
結局、オールスパイスだけでチャイを作っても、他のスパイスをブレンドすることになる。オールスパイスを使うなら、クローブの代用にするのが良いかも。
価格的には、オールスパイスの方がクローブよりほんの少し安く、ホールで買っておけば、保存性も良い。
ナツメグは入れない方が甘い風味が強くなるので、気が向いた時にしか使わないことにした。


                     

チャイ/スパイシーチャイの作り方 [ruru-askeo]
これはかなり凝っているレシピ。スパイスが多いし、黒胡椒とジンジャーも使っているので、とってもスパイシー。

おいしいチャイの作り方 -インドではマサラ・チャイとも呼ばれる- [アーユルヴェーダ]
コショウとかが入っていない普通のチャイ。



インド人シェフ・プラバールさんのレシピ(Cookpad)
インドの料理・お菓子といえば、プラバールさんのレシピは必ずチェック。
手間がかかって作らないことも多いけれど、レシピを見ているだけでも結構楽しい。

カルダモン ティー ~ インドのチャイ
カルダモンはとても上品な甘い香りのするスパイス。このレシピではホールとパウダーどちらでもOK。

スパイスの香り高い~マサラチャイ~
カルダモン、シナモン、しょうが(スライス)、黒コショウ、クローブ。黒コショウがスパイシー。

本当のインド家庭のジンジャーチャイ
しょうが茶はアジアではポピュラー。葛粉でとろみをつけた「しょうが湯」、ベトナムの「しょうが茶」(茶葉)、ゆず茶のような韓国の「しょうが茶」などいろいろ。

舩津 邦比古 『ドレスデンの落日と復活 ~ 精神科医が見た東ドイツ終焉前夜』
ドレスデンといえば、交響曲やオーケストラに詳しい人なら「シュターツカペレ・ドレスデン」の名前が最初に浮かんで来るのでは。
オーケストラに疎い私は、ピアニストのレーゼルがドレスデンで生まれ育って、今は母校ドレスデン音楽大学(正式には、ドイツ・ザクセン州立ドレスデン音楽大学”カール・マリア・フォン・ウェーバー”という長い名前)で教えていることを知って、ドレスデンは旧東ドイツの都市だったのだとようやく気がついた。
そういえば、旧東ドイツ時代のレーゼル(やBerlin ClassicsのCD)のレコーディング場所は、" Lukaskirche, Dresden"(ルカ教会,ドレスデン)と記載されているCDが多かった。

今はなき社会主義国家の東ドイツ(東ドイツ民主共和国/Deutsche Demokratische Republik:DDR)の資料を調べてみると、旧ソヴィエト連邦に比べて、資料がそれほど豊富にあるわけではない。

ドイツ統一前後の東ドイツ国内の様子をルポ的にまとめた本が数冊出ているので、順番に読んでいるところ。
『ドレスデンの落日と復活~精神科医が見た東ドイツ終焉前夜』は、ある論文を発表したことがきっかけで、東ドイツ人医師と文通することになった日本人医師の東ドイツ訪問記。
本書は、ドレスデンの都市誕生800年祭が開催される2006年を迎える直前、2005年12月に出版された。


ドレスデンの落日と復活―精神科医が見た東ドイツ終焉前夜ドレスデンの落日と復活―精神科医が見た東ドイツ終焉前夜
(2005/12)
舩津 邦比古

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<目次>
第一章 甦る記憶
第二章 国境の女スパイ
第三章 エルベが美しい
第四章 聖母教会
第五章 統一直前の東ドイツ食糧事情
第六章 受難の国東ドイツ
第七章 東ドイツから出国
第八章 甦ったドレスデン
第九章 ゼンパー・オペラ劇場(ザクセン州立歌劇場)
第十章 医療制度の変遷


本の最初の部分に、ドレスデン市内のカラー写真(4頁分)が載っている。
王宮教会の外観と内部、エルベ川、最高級のインター・ホテル、ベルヴュー。
中国趣味(シノワズリー)のビルニッツ宮殿、ゼンパー・オペラ劇場の外観と絢爛豪華な内装。
狩猟の館モリッツブルク、旧マルクト広場、(周辺のバロック建築とは異質で無粋な)東ドイツ式建築の文化宮殿、ドレスデン・バロック様式のツヴィンガー宮殿など。


◆フリードリヒ・アウグスト一世
アウグスト強王と言われたザクセン選帝候フリードリヒ・アウグスト一世(1670‐1733)のエピソードが面白い。
当時流行していたシノアズリー(教養としての中国趣味)に並々ならぬ熱意をかけ、オランダ東インド会社から大量の景徳鎮や伊万里を買い付けた。シノアズリーは国力示威の手段でもあった。
王は戦争に明け暮れ、ツヴィンガー宮殿などのバロック建築にいくつも造営し、シノアズリーや財宝収集に熱中していたので、ザクセン選帝侯国の金庫はカラッポ。錬金術にも凝っていた。
その財政的危機をマイセン磁器が救った。錬金術は上手くいかなかったが、ドレスデンからエルベ川を30km下ったマイセンで磁器の開発に成功。欧州全土から注文が殺到し、マイセン磁器のおかげで富める国となった。

<参考情報>
- おそらく最も名の知られたザクセン選帝候ポーランド王の治世の成果 [ホテル Rothenburger Hof ドレスデンの情報]
- 1707年から1709年ヨーロッパで初めての磁器[同上]

◆ドイツ人医師R氏と知り合う
著者の医学論文に興味をもった東ドイツ人医師でドレスデン医学アカデミーのR氏から照会の葉書が届いたことをきっかけに、2人の間で文通が始まる。
R氏は、以前から日本に興味を持ち、独学で日本語を学んでいた。川端康成を読み、日本語でなんとか芭蕉の俳句を書けるほど。

著者は1987年にドレスデン観光を計画。R氏に事前に連絡すると、休暇をとってドレスデンを案内してくれるという。
当時、外国人の東ドイツ訪問は、全て東ドイツ国営旅行社が取り仕切っていた。
代理店経由で手配することはできず、直接申し込みするしかない。外国人が滞在できるのは国営インターホテルと決まっており、個人で訪問する場合は、身元引受人(R氏に依頼)が必要だった。


◆東ドイツの街
マイカーブームが到来する前の昭和30年代頃の日本にオーバーラップする。
東ドイツのアウトバーンは制限速度が時速100Km。
伸井太一『ニセドイツ1≒東ドイツ製工業品』によると、東ドイツの国産車トラバントは、120kmを超えるとボルトが落ちるという構造になっていた(でも、欠陥とは言わない)。

夜のドレスデンには青い排気ガスの臭いが立ち込め、信号機もうっすらと霞んでいる。ドイツでは無鉛ガソリンが普及していない。
信号も自動車のテールランプも暗く、信号の反応も鈍い。エネルギー消費節約のため低規格品が多いらしい。
ネオンや広告付きの照明もない。西側の明るい夜の風景に慣れていると、著者は数十年前の昔の日本に戻った気がするという。

エルベ川は昔から重要な交通路。東ドイツ時代、エルベ川の輸送力増力に改修工事が頻繁に行われた。(アウトバーンを修繕するよりも安上がり?)

東ドイツでは暖房燃料として練炭ボールを使っていた。
煉炭は日本の都市部ではほとんど使われることはなかったが、地方で使っている家庭があり、たまに一酸化炭素中毒事故が発生していた。
著者はその治療法の症例報告を論文で発表して、著者とR氏が知り合うきっかけになった。
東ドイツでは、煉炭を使っているために大気汚染が酷く、一酸化炭素中毒事故も多かった。
東ドイツで産出するのは褐炭で、品質が悪く、深刻な大気汚染の原因。
品質の良い石炭は西ドイツのルールやザール地方に豊富にある。

東ドイツでも私企業が禁止されていたわけではなかったが、国から冷遇されていたため、次第に事業を手放す人が増えていった。


◆インターホテル
外国人がドイツ人の家庭へ個人的に宿泊する場合は、事前に当局へ申請する必要がある。
東ドイツ人が東欧・ソ連・ベトナムなどの共産主義国へ旅行するのは、比較的自由にできる。西側諸国への旅行は制限が多い。

インターホテルはドレスデン市内に7~8軒。グレードが数種類あり、西側から来る人は高級クラス、東側諸国や第3世界の人は並クラスのホテルに宿泊するらしい。
ベルヴューホテルは最上クラスで、西側の一流ホテルに匹敵する良いホテル。
ドイツ統一前は、西側の一流ホテルと比較して格安の料金で、サービスはとても良かった。(統一後には、西側のホテル並に宿泊料金が高騰した)
ミドルクラスのインターホテルは満室だったので、最上のベルヴューに宿泊。
ベルヴューは東ドイツのなかの別世界。高級でエレガントな雰囲気が漂い、1個数十万円のマイセン磁器が飾られ、朝食にはパン、バター、肉、野菜、フルーツが豊富に盛られている。リムジンは全てスウェーデン製ボルボ。東ドイツマルクは使えず、西側通貨のみ。


◆ドレスデン空爆と復興
1945年2月13~14日、英米軍によるドレスデン空爆により、ドレスデン市内の建物は壁だけを残して壊滅。犠牲者は135000人。(※犠牲者数については諸説あり)
ドレスデンは文化都市なので、まさか連合軍が爆撃することはないだろうとドレスデン市民(と軍)は思っていたらしく、防備が手薄だった。戦後、ドレスデン市内の復旧作業がすぐに進められた。
東ドイツ政府によって王宮教会やオペラ劇場は比較的早期に再建。
※ツヴィンガー宮殿と敷地内の歴史的建物もかなり破壊されたが、宮殿は1963年にほぼ元通り復元。宮殿内のドレスデン美術館も破壊され、200点の作品が消失、500点が行方不明。復元・修復作業により、1992年に美術館も再公開された。(参考情報参照)

聖母教会は復旧が進まず、ベルリンの壁崩壊後に基金が創設され、全世界に再建のための寄付が呼びかけられた。
再建工事は1993年起工、2005年竣工。
崩壊した建物の瓦礫を掘り起こして、それを元通りの形に積み上げていく巨大なジグゾーパズルのような作業。
修復、復元であって、新しく建設するという発想ではない。
小山をなしていた聖母教会の瓦礫は、みえている石塊に全て番号札が張られ、石塊同士の位置関係を性格に記録するために幾方向からも念入りに写真が撮られて、掘り出された瓦礫は番号順に棚に並べられた。
名器ジルバーマン・オルガンを再現するために、多数の技術者が投入された。
※瓦礫から掘り出したオリジナルの部材を、コンピューターを活用して可能な限り元の位置に組み込む作業は「ヨーロッパ最大のジグソーパズル」と評された。(Wikipedia)


東ドイツ建国後、劇場やコンサートホールは優先的に再建されたようだ。
ドレスデン旧市街中央には東ドイツ建築様式の文化宮殿が造られ、クラシック、ジャズなどのコンサートが開催されていた。
これは3階建ての平べったい建物で、外装はアルミニウム板とブロンズ色のマジックミラーを多用。全体的に安っぽく、周辺の王宮宮殿などのバロック建築やエルベ湖畔の景観とは場違い。

オペラ劇場(ゼンパー・オーパー)はゼンパーが設計した元の建築に忠実に、豪華に再建された。
ドイツでは劇場や音楽堂の運営は昔から公営が原則。
王宮はドイツ統一までは再建されなかったし、聖母教会の再建は実質的に放棄されていた。

<参考情報>
- 荘厳なバロック建築の都ドレスデンを歩く[All About,2007年05月11日]
- 美しく甦ったドレスデンのフラウエン教会[All About,2007年04月25日]
- ドレスデンのツヴィンガー宮殿 (写真をクリックすると、宮殿写真のスライドショーが始まる)



◆歌劇場(ゼンパー・オーパー)の再建
ドレスデンは、北のバロック、エルベのフィレンツェと謳われたザクセン王国の壮麗な首都。
よくある小噺は、”村を作るとき、日本人はまず学校を建てる、イタリア人は教会を建てる、しかし、ドイツ人は劇場を建てる”。

ゼンパー・オーパー(ゼンパー・オペラ)再建に先立って、すぐ近くに東ドイツ政府は演劇場シャウシュビールハウスを再建した。
戦後直後の1946年に着工し、48年に完成。大戦前はヨーロッパでも最も斬新な演劇場で、外観は元通り復元されていた。
ソ連軍占領下で、生活は困窮していただろうが、戦後すぐに再建された演劇場は、その後37年間オペラ劇場も兼ねることになる。

ザクセン王立王宮劇場は1841年竣工。設計者ゴットフリート・ゼンパーの名を冠して”ゼンパー・オーパー”と呼ばれた。
初期ルネッサンス風の豪華な建築だったが火災で焼失。ゼンパーの設計で再建されたが、火災に強いことが重視された。
隣接するツウィンガー宮殿には膨大な美術品が収蔵されていたため、ゼンパー・オーパーの火災で延焼することがあってはならなかった。
イタリア産大理石を多用した最盛期ルネッサンス様式で、1871年に完成。
歌劇場自体がドレスデンを代表する美術品であり、ヨーロッパ中からドレスデンにオペラ鑑賞に訪れ、作曲家はここで上演してもらおうと腕を競った。豊富に産出する銀のおかげで、贅を尽くした劇場が建設できた。
縁の深い作曲家はワーグナーとシュトラウス。リヒャルト・シュトラウスはドレスデンが大変気に入っていたようで、主要作品をここで指揮したこともある。

旧東ドイツ政府によるゼンパー・オーパー再建は1977年に開始。
ドレスデン市内では、当時の価値で約2億円の寄付が集まる。
8年間の工事の末、完成。同時期に対岸の新市街には、最高級インターホテルのベルヴューもオープン。
今では両方ともドレスデンの重要な観光資源となっている。

ドイツやオーストリアのオペラの観劇料金は最も良い席でも数千円。オペラは国の文化事業として国庫補助を受けている。


<参考資料>ドイツの劇場運営方法
ドイツには助成を受けた240の劇場、数百の交響曲オーケストラ、数千の博物館そして25,000以上の図書館がある。[Wilipedia日本語サイト]
ドイツの劇場運営方法に関する資料は、学術文献から体験的ルポまでいろいろある。
最近、日本では公営・民営オーケストラに対する公的補助金や民間寄付金が削減・減少しつつある現状と引き比べてみると、公共支援のウェートがかなり高い。
しかし、ドイツ統一後、財政難に陥っている自治体も多く、ローカルな地元小劇場の多くは存続できるかどうか厳しい状況だという。

- 「世界の劇場/ドイツ」[新国立劇場ホームベージ]
- 「ドイツの地方劇場、組織と運営」[オペラ座の・・・なにじん?田辺とおるのドイツ便り]:元東ドイツの小都市劇場も、経済の混乱と財政難から存続の危機にあるという。
- 「ドイツ 市営劇場、法人化の動きあり」[Interlocal Journal/文化芸術報道] 
- 「ドイツにおける舞台芸術政策と劇場における運営状況」(藤野一夫、国際文化学研究:神戸大学国際文化学部紀要、2001年11月)


◆東西ドイツ統一後のドレスデン
統一前は、レストランが極端に少なく、高速道路のサービスエリアのレストランは休日は閉店。外国人用インターホテルのレストランだけがオープンしていて、賑わっていた。
、東ドイツでは外食の習慣がなく自宅で食事するので充分、自宅で手料理を作って客人を持て成すのが普通とR氏は言っていた。

1993年夏、著者はドイツ統一後にドレスレンを再訪。
全体に灰色にくすんだドレスデンの街並みのなかで、建物の一階にいくつもの商店が新たに開店。
西側資本のスーパー、コンビニ、美容室、ブティック、化粧店・菓子・文具・本屋・高級皮革製品、高級ブランドショップなど。
瀟洒でセンスが良く豊かで、そこだけ明るくカラフルで浮き上がっていた。
有名なホテルチェーンも進出。起業した小さなホテルやペンションもあり、レストランも増えていた。
ドイツレストラン、ビアホールフレンチ、中華、イタリアン、ギリシャ、トルコ、日本料理などのレストランが週末は賑わっていた。西ドイツと同じ光景。
R氏も「レストランへ行こう」と再訪問した著者を誘う。(やはり我慢していたのだろうと著者は思った)

使いものにならない穴ぼこだらけのアウトバーン、鉄道、電話など、多くのインフラが大改修されるか、最初から作り直された。
ほとんどの国営企業は二束三文で西側世界の企業に買い取られ、採算が見込めないものは整理された。
東ドイツ国内には失業者が溢れ、外国人排斥を叫ぶネオナチが台頭。
国営企業を整理するために設立された信託公社の総裁は、一部の人の恨みを買って暗殺された。

東ドイツ時代、医者は国家公務員だったが、統一語は自由に開業できる。旧東ドイツ地区の医者は、旧西ドイツ地区の医者よりも収入が低く抑えられている(2割減?)
東地区の若い医者は収入の良い西地区に移住していき、東地区では医者不足が深刻。田舎では無医村も発生。

戦後、東ドイツから西ドイツに脱出した人の土地は、東ドイツ政府が接収したという。そこに別の人が住んだり仕事をしたりすることはよくあったらしく、統一後、元の所有者が土地返還を求める裁判が続出。

統一後、東ドイツ地域にあった大学ではあらゆる分野で教育研究水準が検討され、多くの研究者が西側の大学で再教育を受けた。それでも大学を去らなければならなかった研究者も少なくなかった。
(注)原文では「少なかった」と書いているが、文章の流れから考えると「少なくなかった」の誤植ではないかと思う)

東ベルリンの中心部、ブランデンブルク門の近くにある共和国宮殿は、東ドイツ政府が国家の威信をかけて1976年に完成させた。
5000人が収容できる大会議場や、劇場、画廊、レストラン、バー、カフェなども併設した総合文化施設。
ドイツ皇帝の宮殿があった場所で、大戦中の市街戦による宮殿は激しく破壊されていた。東ドイツ政府はそれを爆破して、共和国宮殿を建設した。
ベルリンの壁崩壊後、共和国宮殿にアスベストが使われていることがわかり、立入り禁止に。
ドイツ統一直前に、東ドイツ人民議会により、取り壊しが決定されるが、2005年現在でも取り壊されていない。


tag : 東ドイツ 伝記・評論

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アラウ ~ ウェーバー/コンツェルトシュテュック(Konzertstück) Op.79
グールドが弾いていたシュトラウスの《ブルレスケ》を聴いて、思い出したのがカール・マリア・フォン・ウェーバーの《Konzertstuck Op.79》(コンツェルトシュテュック(小協奏曲)ヘ短調,1815年)。
ウェーバーはロマン派初期の作曲家。有名な曲というと、(聴いた覚えがない)オペラ《魔弾の射手》、ピアノ曲の《舞踏への勧誘》。

珍しくもハフがルーブルのリサイタルで弾いていた《舞踏への勧誘》。(この曲を知らない人も結構多そう)
ハフは録音もしているので、この曲が好きらしい。
Stephen Hough plays Carl Maria von Weber - LIVE (2008)


ピティナの解説によると、作曲家のウェーバーはフンメル、モシェレス、ツェルニー並の演奏技術を持った優れたピアニストでもあった。
それがピアノ作品にも反映され、半音階や分散和音が散りばめられ、鍵盤を端から端まで使ったパッセージがピアニスティックで、ヴィルトゥオーゾ向きの華やかな雰囲気がある。

《コンツェルトシュテュック》は、ロマン派のピアノ協奏曲らしく、華麗でドラマティックで、ロマンティシズム漂う曲。
喩えていうと、メンデルスゾーンをベースに、ショパンの華やかさと陰翳をフレーバーにしたような感じ。
アラウやカーゾン、ブレンデル、レーぜルなどが録音しているので、技巧華やかな名曲なのだろうと思う。(なぜかグールドも1951年に録音している)

このウェーバーの小協奏曲はアラウの愛奏曲だったという。
アラウはガリエラ指揮フィルハーモニア管とEMIにスタジオ録音している。
1950年代後半から1960年にかけて、ガリエラの伴奏指揮で録音したピアノ協奏曲はベートーヴェン、グリーグ、シューマン、チャイコフスキーと多い。
テンポは速めで技巧の切れ味も良く、流麗なロマンティシズムと煌くような輝きがあるので、後年のPhilipsのスタジオ録音よりも好きなものが多い。

Icon: Claudio Arrau-Virtuoso Philosopher of the PiIcon: Claudio Arrau-Virtuoso Philosopher of the Piano
(2011/02/28)
Claudio Arrau

試聴する


NAXOSの英文解説を読むと、《コンツェルトシュテュック》には、ウェーバー自身が語った音楽的ストーリーがある。
友人の批評家Friedrich Rochlitzに、別離、嘆き、哀しみ、再会と歓喜をテーマにした作品を書こうと考えていると言い、ベルリンで1821年6月に完成。
初演の日の朝、ウェーバー自身がピアノを弾きながら、彼の弟子と妻カロリーヌにこの新作にまつわるストーリーを説明したという。

”哀しみ沈んでいるレディ(姫)が塔の中で座っていた。彼女のナイト(騎士)が十字軍に従軍して旅立ってしまったのだ。彼から便りがなく、彼女の祈りが応えられないままになって以来、彼女は彼と再会できるだろうかと思い悩んでいた。彼女は、騎士が戦場で死に横たわっている姿を想像し、彼の元へ飛んでいき、彼の傍らで死にたいと切望している。
彼女が気を失いそうになった時、遠くから行進曲が聞こえてきて、太陽の光が再び雲を突き抜けて差し込んできた。騎士たちとその従者が、旗印と十字架を運びながら段々と近づいてきた。彼女の騎士も帰還し、恋が勝利した。全てが幸せだった”

ただし、ウェーバーは、この話を楽譜と一緒に出版して広めようとはしなかった。
作品自体は単一楽章形式のピアノ協奏曲で、基本的にロマンティックな曲であり、(付いているかもしれない)音楽上のストーリーとは独立したもの。(以上、NAXOS解説の要約)

このストーリーを念頭にすると、劇伴音楽のようにいろいろなシーンを連想しながら聴けるし、それを知らずとも濃厚なロマンティシズムとドラマティックな雰囲気を楽しめる。


第1部:Larghetto ma non troppo
冒頭の憂愁漂う旋律は、劇伴音楽の序曲風。続くピアノソロは、貴婦人の哀しみを歌うようにメロディアス。
ロマン派の感傷的な音楽はそれほど好きというわけではないにしても、これだけ素直にロマンティックだと、かえって割り切って聴けてしまう。

Claudio Arrau - Carl Maria von Weber: Konzertstück - 1/3
Alceo Galliera(conductor),Philharmonia Orchestra



第2部:Allegro passionato
疾走感とドラマティックなところがあるので、これは戦場のシーン。
戦闘の激しさと、ナイトの元へ飛んで行きたいというレディの情熱が相まって、とってもパッショネイト。
鍵盤上を駆け巡るようなピアニスティックなフレーズは、メンデルスゾーンのピアノ協奏曲にとても良く似ている。

Claudio Arrau - Carl Maria von Weber: Konzertstück - 2/3




第3部:Tempo di Marcia
ここは騎士と従者達が十字軍の遠征から帰還したところ。
トゥッティで演奏される冒頭の行進曲風の旋律は、小学校の構内放送で良く聴いた懐かしいメロディ。曲名自体は知らなかったけど。
学校の昼休みや運動会の時にもたびたび流れていたのは、雰囲気的に似合うかららしい。

第4部:Piu mosso~Presto giojoso
トゥッティ(とピアノ)による行進曲風の主題が終わってから、ピアノソロで始まるPresto giojosoの主題は、ナイトと再会したレディの歓喜満ちた心のように、軽やかで明るて愛らしい。
曲自体が私には劇伴音楽風に聴こえるので、ウェーバーのストーリー展開をイメージして聴いた方がやっぱり面白い。

Claudio Arrau - Carl Maria von Weber: Konzertstück - 3/3


tag : アラウ

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『アシュトンマニュアル』日本語版、ウェブサイトで無料公開
英国のニューカッスル大学神経科学研究所ヘザー・アシュトン教授が著した『アシュトンマニュアル』は、ベンゾジアゼピンの作用、副作用、離脱症状、減薬法などをまとめた本。
英語など10カ国語のマニュアル全文が、”benzo.org.uk”のウェブサイトで公開されている。
今月8月19日には、日本語版(PDFファイル)が同サイト内で新たに無料公開された。
この日本語版は、ベンゾジアゼピンの常用量依存で苦しんだ経験のある患者さん2人が、ボランティアで日本語への翻訳作業を行い、2人の医学専門家(神経内科、神経生理)が医学監修している。


『アシュトンマニュアル』日本語版(PDF)
 『ベンゾジアゼピン - それはどのように作用し、離脱するにはどうすればよいか』(通称アシュトンマニュアル)(ヘザー・アシュトン教授 (DM, FRCP)2002年8月改訂) ※「補遺」も含む。

<関連記事>
「抗不安・睡眠薬依存(8)マニュアル公開記念・アシュトン教授に聞いた」[佐藤記者の「精神医療ルネサンス」/yomiDr.(ヨミドクター)]
記事中で、離脱を目指す際の注意事項について、アシュトン教授が6項目あげている。


<参考記事>
『アシュトンマニュアル』の日本語版公開に関しては、読売ONLINEの「yomiDr.(ヨミドクター)」の下記の連載記事”佐藤記者の「精神医療ルネサンス」”で告知されていた。
抗不安薬・睡眠薬依存… 離脱症状減らす『やめ方』
抗不安・睡眠薬依存(2)ベンゾジアゼピンの害

<追記 2012.10.10>
抗不安・睡眠薬依存(9)うつ病学会も漫然処方批判
- 日本うつ病学会の「大うつ病治療ガイドライン」でも、ベンゾジアゼピンの漫然投与を戒める記述が何か所も盛り込まれた。
-「大うつ病治療ガイドライン」のなかに「抗うつ薬とBZDの併用は治療初期4週までは脱落率を低下させるなど有用性がある」と記載されている。執筆者の一人の解説によると、この文章の意味は、「4週までは有用性があるというのは、それ以上は有用性がないということ。そう読んで欲しい」。


<追記 2012.11.13/参考ブログ記事>
”読売新聞 抗不安薬依存の記事” [化け猫ゼロと、メンヘラおかん]
”読売新聞 ベンゾジアゼピン系のネガキャン?” [双極性障害ブログ]
”「抗不安薬依存  深刻」に・・アシュトンマニュアル・ベンゾジアゼピン系薬剤” [なんとか「gooブログ」やっております]

<追記 2014.6.4>
向精神薬 多剤処方を制限…診療報酬認めず[2014/2/18,日経メディカル]
NEWS◎2014年度診療報酬改定 向精神薬の多剤処方は厳しく規制へ [2014年3月7日,読売新聞/yomiDr.]



『アシュトンマニュアル』英語版
 ”Benzodiazepines: How They Work & How to Withdraw ”(aka The Ashton Manual)(著者:Professor C Heather Ashton DM, FRCP,2002年8月改訂)
 ”Benzodiazepines: How They Work & How to Withdraw (2002)”への補遺(2011年4月7日)

<関連記事>
冨高辰一郎 『なぜうつ病の人が増えたのか』 
日本うつ病学会が公表した国内初の「うつ病治療ガイドライン」


自家製ホットック
もち米ホットックミックス
韓国で人気のおやつ(らしい)ホットック。
たまたまイオンで「ホットックミックス」という輸入品を見つけて、もちもちして美味しそうな感じだったので、買ってみた。
作り方は、封入されているミックス粉とドライイースト、水を混ぜて、しばらく捏ねるだけ。
発酵させる時間もいらず、「おやき」のように、小さく円形に伸ばした生地の真ん中に、ジャムミックス(粉末シロップ。加熱するとシロップ状になる便利な代物)を載せる。
生地の縁をとじ合わせて、大福のような形に整え、フライパンで両面を焼く。

今は暑いせいか生地がベタつくので、成型するのが少し手間。
それにフライパンで焼いている最中に、平らになるようにターナーで軽く押し付けていたら、中のシロップが生地から漏れ出してきた。

出来上がってすぐに食べてみると、もちもちとした食感で、味は「焼いた柏餅」。
生地(買ったミックス粉は緑茶入なので、ほんのり緑色)にピーナッツ味のシロップが甘くて美味しい。これはおやつにぴったり。
約200gのミックス粉だと、直径5-6cmくらいの小さいホットックが8個ほど作れる。焼いてもすぐに食べない分は冷凍できる。
ミックス粉は結構高いので、「焼いた柏餅」風の生地なら、上新粉や白玉粉を使ってホットックもどきが作れるはず。

amazonで検索すると、ホットックのミックス粉は数種類。カルディでも見かけた。
CJ もち米ホットックミックス 270g 【常温】CJ もち米ホットックミックス 270g 【常温】

UCCフーヅ

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チーズと蜂蜜のホットク(ホットック)♪  [Cookpad]
自家製ホットックのレシピ。
強力粉と白玉粉、砂糖、ドライイースト、塩、水だけで生地ができる。
白玉粉は常備していないので、もちもち感は多少減っても、だんご粉や上新粉(米粉)で代用しても良さそう。
(つくれぽでは、水を減らして上新粉で作った人がいた)

舘野鏡子『絶品!薄力粉レシピ』
薄力粉を使って生地を作るときに、配合が覚えやすいレシピ集が、舘野鏡子さんの『絶品!薄力粉レシピ』。

薄力粉と水分の配合・種類を変えれば、「サラサラ」、「トロトロ」、「モチモチ」の3種類の生地が完成。

「サラサラ」生地
薄力粉、水、砂糖、塩、サラダ油で、薄焼き、お好み焼きに。
薄力粉、水の代りに牛乳、砂糖、卵、バターで、クレープに。
薄焼きというのは、中国の春餅のようなクレープ生地。これなら、春巻きの皮もつくれそう。

「トロトロ」生地
蒸しパン、パンケーキ、ホットケーキ、アメリカンドッグに。
薄力粉に水(または牛乳)、ベーキングパウダー、砂糖、塩は共通。
作るものに応じて、はちみつ、卵、サラダ油を使う。
パンケーキ、ホットケーキ、アメリカンドッグは、このレシピだと、卵がいつも使う量の倍量。

「モチモチ」生地
薄力粉、水、塩、サラダ油でショートパスタ、ギョーザの皮。油を抜けば、すいとんに。
ベーキングパウダーと砂糖を加えれば、ナン、ピザ、蒸しまん、花巻、お焼きが、全て同じ生地で作れてしまう。
ナンとピザは強力粉&ドライイーストタイプではないので、ちょっと生地が硬いらしい。
いつもナンとピザは強力粉で作っているので、薄力粉ではふっくら感が少なくなるので、ぬるま湯を使っているらしい。もちもち感は水を使うときよりも出やすいはず。

つくる料理自体はとくに凝ったものはなし。配合がわかりやすいので、基本の配合を覚えておけば、いちいちレシピを確認しなくても、すぐに作れそう。
レシピ数自体は多くはないし、目新しい生地も少ないので、内容から考えると、ちょっとお値段が高め。
ビジュアル的にはレイアウトもすっきりして、見やすい。写真も明るくてきれいで、工程写真もときどき載っている。


絶品!薄力粉レシピ―「サラサラ」、「トロトロ」、「モチモチ」  3つのタネで絶品!薄力粉レシピ―「サラサラ」、「トロトロ」、「モチモチ」 3つのタネで
(2011/11/22)
舘野 鏡子

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シューベルト/水の上で歌う (歌曲とリストのピアノ編曲)
リストはシューベルトの名だたる歌曲集をほとんどピアノソロ用に編曲している。
その中で演奏機会が多い曲はそれほど多くはなく、《セレナーデ》《魔王》《アヴェ・マリア》《ます》《糸を紡ぐグレートヒェン》《水の上で歌う》など。


 Auf dem Wasser zu singen/水の上で歌う D774)
(詩:シュトルベルク)(訳詞:[梅丘歌曲会館 詩と音楽])

カスケード状に高音域からレガートで絶えず降り落ちてくるピアノのパッセージは、風に揺らぎ太陽の光に瞬く波の動きのよう。
最初は波が静かに揺れるようなパッセージでとても冷んやりとした清涼感がある。
やがて徐々に動きが速くなって音も密度を増していき、太陽の光りが反射してきらきらと輝いているようなイメージ。
終盤の再現部では、厚みのある和音やユニゾンの和音が入ってダイナミックで力強い。これはピアノ編曲版ならでは。
それに、歌詞のないピアノソロは視覚喚起力が強く、水の動きのイメージがいろいろ膨らんでくる。

Evgeny Kissin Schubert Liszt Auf dem wasser zu singen




ブラームス歌曲を聴いてとても気にいったプライスのシューベルト。伴奏はサバリッシュ。
プライスの歌を聴いていると、耳にとても心地良い。
やや硬質で真っ直ぐに伸びていく歌声と、コテコテとせずすっきりと明晰な表現が涼しげな感じ。

Margaret Price: Auf dem Wasser zu singen by Franz Schubert



tag : シューベルト フランツ・リスト キーシン プライス

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ブリヂストン美術館 『ドビュッシー 、音楽と美術 ー印象派と象徴派のあいだで』
月刊ショパンのオフィシャルブログをたまたま見ていたら、東京のブリヂストン美術館で『ドビュッシー 、音楽と美術 ー印象派と象徴派のあいだで』という美術展を開催中。期間は7月14日~10月14日まで。
ドビュッシーの生誕150年を記念したブリヂストン美術館、オルセー美術館、オランジュリー美術館の共同企画で、各美術館の所蔵作品を中心に、国内外から借用した作品約150点を展示するというなかなか豪華な美術展。

巡回展ではないので、近畿で開催されることはないに違いない。
東京に行く機会があれば、ついでに見に行けるんだけれど、とりあえず今のところは展覧会の公式ホームページを見て楽しむことに。
コンテンツをチェックするとドビュッシーに関連する情報やアイテムがいろいろ載っている。

展覧会の構成
ドビュッシーの経歴や音楽的志向、同時代の美術への関心などをテーマにして、関連する絵画や陶磁器の写真が掲載されている。これだけ見ていても、結構面白い。
 第1章 ドビュッシー、音楽と美術
 第2章 《選ばれし乙女》の時代
 第3章 美術愛好家との交流 - ルロール、ショーソン、フォンテーヌ
 第4章 アールヌーヴォーとジャポニスム 
 第5章 古代への回帰
 第6章 《ペレアスとメリザンド》
 第7章 《聖セバスチャンの殉教》《遊戯》
 第8章 美術と音楽と文学の親和性
 第9章 霊感源としての自然-ノクターン、海景、風景
 第10章 新しい世界
展示(掲載)されているのは、ドビュッシーの肖像画、ドビュッシーの所蔵美術品、ドビュッシーの音楽と関連した印象派や象徴派の作品、バレエ音楽の舞台デザイン図、同時代に交流のあった芸術家の肖像画、ドビュッシーの影響を受けた画家の作品、etc.

美術展のタイトルは「印象派と象徴派のあいだで」。
でも、ドビュッシー自身は、印象派や印象主義の音楽と言われることを嫌がっていたという。

ドビュッシーを取り巻く人々:音楽に限らず、文学・詩・絵画・舞台芸術などの分野で影響を受けたり、交流のあった芸術家との相関図。文章で説明されるよりもずっとわかりやすい。

ドビュッシー略歴と時代背景(これは現在作成中)

ドビュッシー展のオフィシャルグッズ
ドビュッシーの人気曲17曲を収録したバッジ型の音楽プレーヤー。
(難聴の原因になりかねない)ウォークマンやiPodは今は全然使っていないので、バッジ型の機種は初めて見た。綺麗な絵やイラストが書かれているので、音楽プレーヤーには全然見えない。
収録している曲を削除したり、新たに追加登録できないので、小さなCDみたいなもの。

イベント
ドビュッシーの音楽を録音したSPレコードの鑑賞会や、ドビュッシー誕生日記念コンサート(チェロ&ピアノ)


参考サイト
さすがに人気の展覧会らしく、実際に観にいった人の感想や具体的な展示内容のレポートなどが、個人ブログに多数載っている。
さっと見たなかでは、<関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~>の情報が一番詳しい。
”ドビュッシー 、音楽と美術ー印象派と象徴派のあいだで (感想前編)【ブリヂストン美術館】”
”ドビュッシー 、音楽と美術ー印象派と象徴派のあいだで (感想後編)【ブリヂストン美術館】”

”ドビュッシー、音楽と美術ー印象派と象徴派のあいだで” [intoxicate vol.99,2012年8月20日,Towerrecords]


                      

ドビュッシーの作品集・全集録音は昔から名盤が多数あるけれど、今年はメモリアルイヤーなので、エマールの新譜も出ているし、過去の録音のリイシュー盤も含めてまだまだ出てきそう。
最近の録音のなかでは、ラファウ・ブレハッチ(Rafał Blechacz)が音楽批評サイトのレビューでは評価が良いらしい。

ブレハッチの最新アルバム「ドビュッシー・シマノフスキ」の公式SP映像から、《ピアノのために》の第2曲「サラバンド」。
アルバムのDGウェブサイトには、”Trailer”と”Music Clip Szymanowski”の動画も載っている。
日本盤にはボーナストラックとして《月の光》が収録されている。

Rafal Blechacz plays Debussy's "Sarabande"


全曲試聴してみると、選曲のせいもあるだろうけど、"印象派"風のドビュッシーとは少し違って、線の細さは全くなく、力感・量感豊か。急速系の曲は、特に生き生きとした躍動感とダイナミズムで力強く。
色彩感も叙情感も豊かなのに、メカニカルなドライな切れ味の良さがあるところが、好みとは違う気がしないでもないけれど、面白いかも。
聴き慣れたドビュッシーよりも、いつもは小難しく感じるシマノフスキの初期作品《前奏曲とフーガ》と《ピアノ・ソナタ》がとても美しくて印象的。
激情的なロマンティシズムを感じるところが、スクリャービンの初期のピアノ・ソナタに似ている。
シマノフスキを聴くならCDを買っても良いなあと思っていたら、何度もドビュッシーの試聴ファイルを聴くうちに、ドビュッシーも第一印象よりもずっと良さそうな気がしてきた。

<CDレビュー>
「これは非凡なディスクである。」―英国ガーディアンによるレビュー[Preludia ―ラファウ・ブレハッチ Rafal Blechacz 情報サイト]

tag : ドビュッシー ブレハッチ

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グールド ~ リヒャルト・シュトラウス/ブルレスケ(Burleske)
グールドといえば、バッハとベートーヴェン、ブラームスの後期ピアノ作品集は広く聴かれているけれど、彼のディスコグラフィはかなりユニーク。
中世のギボンズから現代音楽のシェーンベルクまで、時代的に極めて幅広い。
グールドの現代ものは、ベルク、シェーンベルク、プロコフィエフにヒンデミットなど、どれも面白い。
グールドを「たとえ作曲家の意図に反しても意外なことをしたいという演奏家」だと彼のピアニズムに否定的だったブレンデルでさえ、グールドが弾いたベルクの《ピアノ・ソナタ》は、この曲の"最高の演奏のひとつ"だと賞賛していた。

意外なのは、現代音楽初期と時代的に重なる後期ロマン派末期のリヒャルト・シュトラウスの作品も録音していること。
シュトラウスはピアノ作品自体が少なく、ピアノ独奏曲《ピアノ・ソナタOp.5》と《5つのピアノ曲Op.3》のCDは、珍しいので昔から持っている。
調べてみると、グールドのシュトラウス録音は他にもいろいろあって、グールドはバッハ、シェーンベルク、ベートーヴェンに並んで、シュトラウスが大好きだったらしい。
グールドの最後の録音は、シュトラウスのピアノ・ソナタだった。
SONY盤シュトラウス作品集の紹介文(HMV)に、グールドが演奏したシュトラウス作品がいかに多いか、詳しく説明されている。

珍しいカラーのライブ映像は、シュトラウスの有名な《ピアノと管弦楽のためのブルレスケ(Burleske) ニ短調》。
これは、1967年9月1日~4日に録音し、1967年11月15日にCBCの『カナダ建国百年記念コンサート』という番組で放映されたもの。

この《ブルレスケ》はアラウもEMIに録音していたはず...と探してみると、ウェーバーの《Konzertstück/コンツェルトシュテュックヘ短調(小協奏曲)》の方だった。
曲想は全く違って、《ブルレスケ》はタイトルどおり諧謔でおどけた雰囲気の曲。
一方、《コンツェルトシュテュック》は、ロマン派ピアノ協奏曲らしい華麗でロマンティシズム濃厚な小協奏曲。
曲想がかなり違うのに記憶違いをしていたのは、簡潔な曲名と単一楽章形式のピアノ&管弦作品だから?

Glenn Gould - Richard Strauss, Burleske For Piano And Orchestra In D Minor [ 1967 ]
Vladimir Golschmann,Toronto Symphony Orchestra,1966


《ブルレスケ》の冒頭は、サーカスの危ない綱渡りか、空中ブランコみたいなフラフラと浮遊感のある旋律。
高音部から両手が交互にユニゾンで駆け下りてくるところは、軽い眩暈でくらくらするような感覚。
グールドの弾き方だと、脱力しそうになるようなちょっとおどけた雰囲気がよく出ていてとっても面白い。
その後は一転して優雅でロマンティックな旋律に。こういう部分は《コンツェルトシュテュック》と似ているので、混同したのかも。

《ブルレスケ》はあまり聴かないので、グールドの演奏が"まとも"なのかどうか、よくわからない。
他のピアニストの演奏はどうなんだろうと、アラウ、アルゲリッチ、リヒテルのライブ録音にゼルキンのスタジオ録音を聴くと、テンポがかなり速く、タッチもシャープで力強く華やか。
ということは、グールドの弾き方が随分変わっているということになる。テンポが遅くて、タッチもふわふわと軽やか。力感もゆるく、圧迫感もほとんどなく、洒落たユーモアを感じさせるところがユニーク。
グールドの解釈では、そんなにシャカリキに力を込めて弾く曲ではないらしい。
展開部(7分少し前)に入ると、一人呟くように哀感漂うピアノソロがとても綺麗。
実際、聴いていて面白いのはグールドの《ブルレスケ》。肩の力を抜いた軽妙な面白さと、煌びやかな華麗さというよりは、軽やかで愛らしさのある少し慎ましやかなロマンティシズムが現代的で都会的(?)な趣きというのかも。

このライブ録音の時も、グールドはかなり低い椅子に座っているらしく、鍵盤よりもひじがかなり下がって、手の形がフラット。
いつものように、体を回転させながらとっても気持ち良さそうに弾いている。このグールドのピアノを弾く姿自体が、《ブルレスケ》の諧謔な雰囲気そのもの。

tag : シュトラウス グールド

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シューベルト/糸を紡ぐグレートヒェン (歌曲&リストのピアノ編曲版)
リストが編曲したシューベルトの《セレナーデ(セレナード)》を聴いていて思い出したのは、キーシンが弾いていたリスト編曲版のシューベルト。
1990年録音のDG盤は、《糸を紡ぐグレートヒェン》、《セレナーデ"「聞いて下さい,青空に舞う雲雀の歌を"》、《水車職人と小川》、《水の上で歌う》。
2003年録音のRDA盤は、歌曲集「白鳥の歌」より有名な《セレナーデ》と《すみか》 、歌曲集「美しい水車屋の娘」より《さすらい》《どこへ?》。他に《魔王》と《ます》。

シューベルトの歌曲はあまり好きではなかったので、昔はもっぱらピアノ編曲版で聴いていた。
ピアノソロで好きな曲をいろんなソプラノ歌手で聴いてみると、やっぱり歌曲も良いなあと思えてくる。
ピアノ編曲版を聴くときは、ほとんど歌詞を確認せずに音だけ聴いている。
歌曲を聴くときに歌詞を読んでみると、曲に篭められた意味がわかるので、印象も随分変わってしまった。
やはりピアノソロで聴くときでも、歌詞は知っておかないと...。


糸を紡ぐグレートヒェン/Gretchen am Spinnrade D118 (歌詞:ゲーテ) [作品解説:梅丘歌曲会館 詩と音楽]

歌詞と解説を読むと、(タイトルからイメージしていた)素朴な乙女グレートヒェンが糸を紡ぐ姿を歌ったのではなく、グレートヒェンの「ファウストへの思慕と恋情、愛欲に満ちた歌」。
キーシンのピアノソロは、冒頭は主題旋律がつぶやくようなかなり抑えたタッチで、音色も雰囲気も暗め。歌曲よりもずっとウェットな叙情感がする。
ピアノの右手で弾く分散和音も、メカニカルで規則的なタッチというよりは、左手の主題旋律に合わせて、しなやかでちょっとねっとりしてニュアンス濃厚。
終盤は、感情が昂ぶったように力強くパッショネイトなタッチに変わり、最後は糸車がゆっくりと止まっていくようにフェードアウト。
ピアノ編曲版を聴いていると、グレートヒェンの熱く身を焦がすような感情世界が伝わってくるようにドラマティック。


Evgeny Kissin Schubert Liszt Gretchen am spinnrade




歌曲は名曲なので録音多数。ポップ、ノーマン、ボニー、etc..と、誰の歌で聴くか迷ってしまう。
初めてこの曲を聴いたのはアップショウのCD。(アップショウと言えば、グレツキの《悲歌のシンフォニー》で有名)
ポップの歌だと格調高く聴こえるこの曲が、やや舌足らず(?)の甘やかな声のアップショウの歌だと、グレートヒェンの"女性性"が肌で感じられる。
それに、アップショウのちょっと艶かしい歌声と少しまとわりつくような表現は、生身のグレートヒェン的な感覚がするので、情念に彩られた歌詞の内容によく合っている。

ピアノが右手で弾く分散和音と左手の規則的なリズムの伴奏は、糸車がころころと規則正しく回転しているイメージ。
似たようなパッセージでも、歌曲のピアノ伴奏の方が、ピアノソロよりもずっとメカニカルで規則的。
歌詞と歌の感情的なトーンとは対照的で、その2つが糸のよう絡み合っていくところが面白い。

Dawn Upshaw - Gretchen am Spinnrade


tag : シューベルト フランツ・リスト キーシン アップショウ

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ブラームス/まどろみはますます浅く ~ 《5つの歌曲 Op. 105》より
ブラームスのピアノ協奏曲第2番第3楽章の有名な冒頭主題はチェロが独奏する牧歌的な旋律。
ブラームス自身、この主題がとても気にいっていたのか、後に《5つの歌曲 Op.105》の第2曲「まどろみはますます浅く」の旋律に転用している。
詩はHermann Van Lingg。(訳詞:梅丘歌曲会館 詩と音楽)

ピアノ協奏曲の第3楽章は変ロ長調。主題旋律は穏やかで安らぎに満ちているので、子守歌のようにまどろんでしまいそう。
それと正反対に、歌曲「まどろみはますます浅く」は嬰ハ短調で、まどろむどころか、歌詞は悲嘆にくれた痛切な思いを切々と綴っている。
同じ主題を別のフォーマットの曲に転用することは多いけれど、長調と短調を入れ替えて曲想を180度変えるのは、珍しいかも。
この主題旋律は、長調でも短調でもとても美しい。
短調の歌曲は”Langsam und leise”(ゆっくりとそっと静かに)。静けさの奥深くで強く抑えた感情が滲みでてくるようで、ブラームス独特の陰翳が濃い。
調べてみると、第3楽章の中間部でクラリネットが弾いている旋律も、歌曲《Todessehnen/死へのあこがれOp.86-6》へ転用されている。
もしかして、ピアノ協奏曲の方でも、表面上の穏やかさとは裏腹に抑制された哀感を篭めていたのだろうか?


《5つの歌曲》は"für eine tiefer Stimme"とあるので、アルトのレパートリーとして有名らしい。ソプラノ歌手もよく歌っている。(録音があるのは、フェリアー、シュトゥッツマン、ポップなど)

これはアルトではなく、ソプラノのマーガレット・プライスの歌。
Margaret Price: Immer leiser wird mein Schlummer by Johannes Brahms
(James Lockhart, piano)




こちらがピアノ協奏曲第2番第3楽章。
冒頭のチェロ独奏は、ウィーンフィルの首席チェロ奏者シャイヴァイン。
クラリネット独奏は7:00~。(注意して聴いていないと、歌曲《Todessehnen》で使われている旋律と同じだとわからないかも)

Brahms - 4_5 - Piano Concerto N 2 - 3° mov. - Andante - Pollini - Abbado.



tag : ブラームス プライス

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レーゼル ~ ブラームス/ピアノ協奏曲第2番(ライブ録音)
レーゼルの珍しいブラームスのピアノ協奏曲第2番の録音は、2004年5月デッサウでのライブ録音(Antes Edition盤)。
伴奏は、ゴロー・ベルク指揮デッサウ・アンハルト・フィルハーモニー。
Antes Editionは、ドイツのレーベルなのに、なぜかエイノ・タンベルグ、ヘイノ・エッレルなどのエストニア作曲家の作品が多い。
このアルバムでも、1932年生まれのエストニアの作曲家ヤーン・ラーツの交響曲第5番がカップリングされている。
録音場所は、ザクセン=アンハルト州デッサウにあるアンハルト歌劇場。「バレエや演劇部門を含む総合劇場で1794年に設立された宮廷劇場を前身に持ち 当時はヨーロッパ最大級の劇場であった。旧東独時代に改築された現在の建物はゆったりした客席と両壁画の桟敷席を有する雄大な白亜の殿堂」(e-onkyo musicの紹介文)で、「北のバイロイト」とも呼ばれる由緒ある歌劇場らしい。歌劇場のオーケストラ、デッサウ・アンハルト・フィルハーモニーも歴史は古く、設立は1766年に遡る。
1968年生まれの指揮者ゴロー・ベルクは、デッサウ・アンハルト劇場の音楽総監督をしていた人で、時々来日して日本のオケを指揮している。

レーゼルのディスコグラフィには、名曲・難曲のピアノ協奏曲から、ブラームスの独奏曲集までかなり膨大な録音があるのに、なぜかブラームスのピアノ協奏曲のスタジオ録音が全然なかったのが不思議。
ピアノ協奏曲第1番の方は今でも正規録音がなく、クルト・ザンデルリングとロスフィルによるCD-R盤(ということは海賊盤)のライブ録音のみ。音質が良くないのでピアノの音がやや遠めでくすんで、ピアノパートを聴いても印象はもう一つ。
それに、音質が明るく透明感があり叙情表現も粘りがなく爽やかなレーゼルのピアニズムには、疾風怒濤のパッショネイトな第1番よりも、明るく堂々としたシンフォニックな第2番の方がよく似合っている。

この第2番は、ライブ録音にしてはピアノの音が前面に出て明瞭で、音も伸びやか。スタインウェイのピアノがよく鳴っている。
シンフォニックな曲とはいえ、レーゼルのピアノはオケよりも存在感があるかも。
ブラームスだからといって、どんより重厚長大にならず、速めのインテンポで切れの良い打鍵は、60歳直前の演奏にしてはとても若々しい雰囲気。
レーゼルらしく、粘りのないストレートで爽やかな叙情感が瑞々しくてとても気持ちよい。こういうところは、若いころに録音したブラームスのソロ演奏を思い出す。

旧東独の崩壊後、レーゼルの新規録音はほとんどなかったので、ライブ録音とはいえ本当に久しぶりの録音だった。
旧東独時代の演奏にあった生真面目な硬さの角がとれたかのように、60歳代のレーゼルのライブ録音には生き生きとした躍動感と自由さが溢れている。
これは半年前に全集録音が完成したベートーヴェンのピアノ・ソナタでも感じたこと。
年を重ねたことに加えて、旧東ドイツの崩壊により環境が激変するなかで苦労したこともあったらしく、それが良い意味で演奏に現われているのかもしれない。

Brahms: Piano Concerto No 2Brahms: Piano Concerto No 2
(2005/09/05)
Peter Rosel,Dessau Anhalt Philharmonic, Golo Berg

試聴する(NAXOS)

米NAXOSのの試聴ファイル:画面右下のFREE PREVIEWから入って、"rosel brahms concerto"で検索すれば、一番上に音源が表示されます。

このCDのレビューはネットショップの紹介文(ピアノ協奏曲第2番(レビュー集)[湧々堂])があるくらい。文章表現は大袈裟だけれど、ピアノパートに関するコメントはまったくその通り。
英文サイトでも”MusicWeb International”のレビューしか見当たらない。この英文サイトのレビューがわりと面白い。
- レーゼルは、実力のわりにあまり知られていない、共産主義国の東ドイツでキャリアを築いたので西側のリスナーが聴く機会は限られていた。
- レーゼルの録音では、《展覧会の絵》とブラームスピアノ作品集の録音の評価が高い,
- このコンチェルトの演奏は、リヒテルのように興奮ではじけることも、コヴァセヴィチのように深い感情と喜びを与えるものでもないが、暖かみのあるリラックスした演奏で、暑い夏の日の午後に似合っているし、聴いていると微笑みたくなる。ファーストチョイスではなくても、聴く価値はある。
- レーゼルは、ケンプのドイツ的伝統とギレリスの思慮深さの間にあるピアニズムのスタイルを受け継いでいる人(custodian:保管者)。


                        

ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 Op.83
[ピティナ作品解説]/楽譜[IMSLP]:2台のピアノ版(ブラームス編曲)オーケストラスコア

ブラームスのピアノ協奏曲第2番は、ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番と並ぶ演奏至難の難曲と言われるらしく、ピアニストに”血と汗を要求する”と評した人もいる。
60歳近くになっても、旧東独時代のように技巧的な精密さと安定感があるので、実演でも大きなミスタッチは無く、安心して聴ける。
レーゼルらしい硬質で濁りのない音色と一音一音輪郭の明瞭な打鍵は、低音でも厚みのある和音でも、変わりない。
重音が連続するパッセージから、細かいスケール・アルペジオのフレーズまで、綺麗に粒も揃って、音が濁ることなく、メリハリをつけつつも淀みなく滑らか。
録音音質の影響もあるだろうけれど、昔よりも音の響きと色彩感が豊かになり、演奏もレーゼルにしては熱気が篭もって叙情豊か。音楽が生き生きとして自由度がずっと増している。

第1楽章 Allegro non troppo
4つの楽章のなかでも、力技のオンパレードのような楽章。楽譜を見ながら聴いていると、難曲と言われるのがよくわかる。
重音部分はfffが頻出し、Sfが重音のスタッカートやトリルについていたり、それが広範囲に跳躍しながら出てきたりするので、この曲を大したミス無く弾くこと自体が至難の業に違いない。

レーゼルは基本的にはインテンポで、ルバートもそれほど使ってはいないし、どんなフレーズでも淀みない。といっても、フレージング中のアクセントがよく利き、リズム感もよく、メリハリがあって、平板なことはなく。
左手低音部の重音も、レーゼルらしい弾力のある引き締まったタッチで、厳めしさや濁りがなく綺麗に響く。
フレーズ最後に弾く和音にクセがあって、ベートーヴェンを聴いていても感じたように、ややアクセントを強くつけて勢いよく打鍵するせいか、音が上向きに伸びやかに響く。
不明瞭になりがちな重音のトリルも、音の粒がくっきり明瞭。そのせいか、アルペジオやスケールの滑らかさが引き立ってくる。

(どんよりと)重厚さや濃い陰翳はないけれど、かっちりとして堅牢な構成感と響きの重層感があり、きりっと引き締まって力感豊か。それに明るい音色と硬質の澄んだ響きが美しく、私がこの曲で聴きたい演奏のイメージにぴったり。
若い頃に録音したブラームスのピアノソロの演奏に似て、澄んだ音色で明るく爽やかな開放感があり、以前は急速楽章で技巧が前面に出すぎる部分もある気がしたけれど、このコンチェルトではそういうこともなく、全編に流れる瑞々しい叙情感がとても爽やか。

一番好きな部分は、曲のちょうど半ばあたりの146小節以降。(スコアで12頁、2台のピアノ版の14頁)
156-158小節のアルペジオの第1音のアクセントが強めで、クリスタルのように済んだ煌き響きが綺麗。
続く159小節は、楽譜を見ると、重音のスタッカートやトリルに、同音連打の入ったオクターブ跳躍(168-170小節のそれぞれ最後のパッセージ。トリルのように聴こえる)で、鍵盤上を低音部から高音部へと競りあがっては急降下したり。
この部分は、ほんの少しだけ形を変えて(フレーズ末尾のオクターブ跳躍を和音に変えているので、弾きやすくなっている)、終盤にもう一度出てくる。

技巧的にも体力的にもかなり厳しいのか、どのピアニストの演奏を聴いてもかなり力が入っているし、テンポが落ちたり前のめりになったり、打鍵が重かったり、トリルやオクターブ跳躍のパッセージが明瞭でなかったりする。
この部分をテンポを落とさずにきれいに弾けているのは、若い時のポリーニとツィメルマン。彼らのように若くはないゼルキンも安定しているし、レーゼルも速めのテンポのまま、和音の打鍵は力感も豊かで歯切れよく、粒立ち良い音が濁らずに明瞭。
名だたる名盤やライブ音源をいろいろ聴いても、ライブ録音・スタジオ録音の違いに限らず、もたついたり打鍵ミスが残っている録音が多い。ここはほんとに難しいのだと思う。


レーゼルの音源が見当たらないので、これはポリーニが若い頃にアバドと録音した演奏。難所は7:08~。
昔聴いたときは、叙情表現が直線的な気がしたけれど、久しぶりに聴くとやはり若い時のポリーニの技巧的な切れ味の鋭さは爽快。でも、技巧と力で押しているので潤いに欠ける気がする。
Brahms Piano Concerto No.2 Pollini Abbado Wiener Philharmoniker 1.avi



第2楽章 Allegro appassionato
楽譜をみると、第1楽章よりもシンプルな音の配置。そのわりに相変わらず厚みのある響きと力感豊かで、切々と訴えかけるように強い叙情感が流れている。

レーゼルは、シャープでクリアな打鍵で符点のリズムもシャープ。
第1拍目のアクセントがよく利いて、引き締まったリズム感がある。左手の和音移動(82小節以降)のリズムがちょっと面白い。
レーゼルにしてはかなり表情の起伏が多く、叙情感が強い。ヒートアップした情熱ではなく、青白い炎が燃え立つような鋭くクールなパッションが瑞々しく爽やか。


第3楽章 Andante
チェロ独奏とオケのトゥッティに続いて、第23小節から始まるピアノソロは、穏やかで安らぎに満ちた牧歌的な旋律。
その後短調に転調し第35小節からは、夢から覚醒したように、トリルの入った符点のリズムと数オクターブを下行するアルペジオ。とても力強く昂ぶる気持ちが抑えられないような情熱的なフレーズ。
その間に、近接する和音が続くパッセージがで入ってくるので、強弱硬軟が交錯し、ゆったりとしたテンポなのに、ダイナミック。
深い森のなかで木漏れ日が差し込んでくるように明暗が交錯し、人の気配のない自然のなかで流れる水の動きの激しさや草木がざわめく情景が浮かんで来る。

冒頭のチェロの主題は、《5つの歌曲Op.105》の第2曲"Immer leiser wird mein Schlummer"(まどろみはますます浅く)に転用されている。詩はHermann von Lingg。
それに、中間部でクラリネットが吹いている旋律も、歌曲《Todessehnen/死へのあこがれOp.86-6》へ転用されている。(これはかなりわかりにくいかも)

第4楽章 llegretto grazioso
イタリアの陽光が差し込むような明るさと陽気と軽快なリズム感がとても開放的。
スタッカートがついていないパッセージでも、符点のリズムが入っているところが多いし、2/4拍子でも三連符が続くパッセージは舞曲的で、全体的にとてもリズミカル。
それだけだと単調になるけれど、短調に転調するとボヘミアン的(?)な憂愁と陰翳が漂って、ここはとても素敵。
レーゼルは速いテンポで、とても軽やかなスタッカート。音が尖らず柔らかさがあり、リズミカルで心が弾むよう。
この終楽章をこんなに軽やかに、明るく楽しそうに弾いている人はあまりいないかも。


ここ数年は第1番ばかり聴いていたけれど、第2番は明るく開放感のある堂々とした曲想がとても良いなあと再認識。
やっぱり第2番の方が、曲としては聴き応えがある。それに、楽譜を見ながら聴くと、音だけ聴いている時とは違った面白さや発見があるのも楽しい。
このライブ録音は、充実した和声の響きと切れ良い打鍵で技巧面では安心して聴けるし、粘らず淀まず大仰ではない表現から湧き出てくる自然な叙情感がすがすがしく爽やかなレーゼルらしいブラームス。


tag : ブラームス レーゼル

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耳鳴り治療のための音響・音楽療法(11) Widex Zen Therapy
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”A New Integrated Program for Tinnitus Patient Management: Widex Zen Therapy”
Hearing Review. 2012;19(07):20-27.
Robert W. Sweetow, PhD, and Anne Mette Kragh Jeppesen, MA
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 Widex Zen Therapy (WZT)とは
カウンセリング、(音の)増幅、フラクタル音(fractal tones)、リラクゼーション戦略、睡眠管理、TRT療法関連の多数の要素、認知行動療法(CBT)を組み合せて、パーソナライズした包括的耳鳴治療プログラム。

- 現存する耳鳴患者治療法の最適部分を組み合わせた設計。
- 専門家向けのエビデンスに基づいた包括的プログラム。
- 柔軟性のある音響ベースのツールを用いた音増幅(amplification)と共に、幅広いカウンセリングとリラクゼーションプログラムで構成。

[注]"Widex Zen"とは、ワイデックス社がサウンドジェネレーター付き補聴器用に開発した音楽プログラム"Zen Program"のメニューの一つ"Zen tone"のこと。
"Zen Program"がサポートしている音源は、環境音、スピーチ、"Zen tone"(音楽とノイズ)の4種類。
"Zen tone"は、<fractal(フラクタル)>テクノロジーに基づいた音楽で、Aqua/Coral/Green/Lavendar/Sandの合計5種類。この音楽は耳鳴マスキングにも使えるが、"ノイズ(ブロードバンドノイズ)"もオプションで追加できる。(後掲の参考記事参照)
"Zen Program"と"Zen tone"を使うためには、Widex社のサウンドジェネレーター付き補聴器が必要になると思う。


プログラムの重点・独自性
- 重点を置いているのは、協同的(collaborative)カウンセリング手法。馴化(habituation)というコンセプトを推進すると共に、認知行動的な手法を統合し、不適応な思考と行動を修正し、耳鳴りに対処する戦略を作り出す。
- 単一の手法が正しいアプローチであるとは考えず、耳鳴りに伴う多くの問題に対処するために、それぞれの手法の重要な役割を強調する。
- 一つの療法では全ての耳鳴患者に効果があるかどうか、また、単一の音響的ツール(ノイズ、音、音楽、etc.)が全ての患者に受け入れられるかは、いずれも疑わしい。
- 柔軟性と複数の音響オプションを備えたパーソナライズ(カスタマイズ)型治療計画を提案。主観的評価手法として、新たに公開された"Tinnitus Functional Index (TFI)"を推奨。
- 耳鳴りによる3つの主な苦痛(音、注意、感情)を扱う統合プログラムという点に独自性がある。
- 患者の多くは、カウンセリングと音響療法(フラクタル音とノイズオプションを備えた補聴器)で対応するのが適切。
- 耳鳴に対して強いネガティブ反応を増大させている患者については、カウンセリングと音響的ツールに加えて、認知行動的概念、リラクゼーション訓練、睡眠管理を行う包括的プログラムによる治療が最善である。

Widex Zen Therapy (WZT)を構成する4手法
カウンセリング
- 大脳辺縁系が行っている耳鳴に対するネガティブな解釈を変更または再分類するように、患者を教育し手助けする。
- 苦痛やネガティブな感情を生み出しているのは耳鳴りではなく、そういう反応を誘引する感情を作り出している患者自身の不適応思考だと、患者が理解できるようにする。
- 指示的(Instructional)および適応的(Adjustment-based)手法の両方を備えたカウンセリング。
- Instructional カウンセリング:TRT療法の指示的(directive)カウンセリングを含み、耳鳴り自体に関する理解を促進させる。患者が耳鳴り馴化のプロセスを理解し耳鳴りを再分類できるよう手助けする。
- Adjustment-based カウンセリング:Instructional カウンセリングのコンセプトをさらに拡張し、耳鳴りが患者自身に対してどういう影響を与えているのか、患者が理解できるようにする。認知行動療法と双方向で行う。

音の増幅(amplification)
- 中枢神経の活動(過剰補償)の増大と不適応な皮質再構築を最小化するため、耳と脳を刺激する。
- 蝸牛さらには聴覚皮質に増幅された刺激を与えることにより、(外部からの)刺激の欠如を”過剰補償”しようとする脳活動を最小化することができる。
- 環境音は耳鳴りをマスキングすることも可能。
- 補聴器の使用は、耳鳴の知覚を低下させる点で非常に効果的でありうる。きわめて良くフィルタリングされた高品質の補聴器が耳鳴患者に役立つと考えられることから、Widex社の補聴器は特に効果的。

フラクタル音(Fractal tones)
- フラクタル音は、その効果が証明されている新しい音響刺激。
- リラクゼーションと音響刺激の両方が目的。聴力損失に応じてフィルターされ、控えめで目立たない手軽な方法で両耳に呈示される。
- フラクタル音は、リラクゼーション促進と耳鳴りによる煩わしさの緩和の両方に有効。音響ベースの耳鳴治療を長期的に受け入れ可能にするためには、この2つの効果が結合していることが重要な要素。
- 臨床試験では、フラクタル音とブロードバンドノイズとも耳鳴りの煩わしさを緩和するのに有効だったが、長期的(6ヶ月)にブロードバンドノイズだけ聴くことを選択した被験者はわずかだった。
- "Zen options"にはブロードバンドノイズが組み込まれているため、フラクタル音とノイズの両方、または、どちらか一方だけ選択することが可能。
- 患者の難聴の状態に応じてノイズを選択することは、この療法の初期段階で特に有益かもしれない。

ゼンシミュレーター[ワイデックス社日本サイト]
"Zen program"は、フラクタル技術をベースに、リラクゼーションにより耳鳴りを気にならなくするようにつくられた不規則なチャイムのような音楽。ゼンシミュレーターでは、ボリュームやピッチを調整できる。


<参考:フラクタル構造・フラクタル音楽の解説>
- 日本庭園に学ぶ共生コンピューティング[積水化学工業ホームページ]
「“f分の1ゆらぎ”のfはfrequency(周波数)の頭文字です。星の瞬き、ろうそくの炎の揺れ、そよ風、心拍などに“f分の1ゆらぎ”が見られ、人に心地よさを与えていると言われています。たとえば、時間の経過と共に変化する星の瞬きをグラフ化すると、ある波形が得られます。そして、全体(長時間)の波形と一部分(短時間)を拡大した波形がとても良く似たものになるそうです。つまり、細かい波形の繰り返しが良く似た大きな波形を形成していると言えるのです。これはフラクタル(自己相似性)と呼ばれ、“f分の1ゆらぎ”、すなわち心地よさの重要な特徴なのです。」

- トピックス「フラクタル音楽」[RCDIGITAL,Inc.]
- 不思議な音楽>フラクタル音楽[音楽研究所]


リラクゼーション戦略プログラム
- 行動療法(Behavioral exercise)と睡眠管理に重点。
- 具体的なリラクゼーション訓練:筋肉弛緩法、深呼吸、漸進的弛緩療法(progressive relaxation)、イメージ誘導法(guided imagery)。
- これらのシンプルなリラクゼーション法をマスターすれば、すぐに身体的な変化が現われるのが患者自身にわかる。


<参考記事> 耳鳴り治療のための音響・音楽療法(9)サウンドジェネレーター付き補聴器
- 耳鳴り対策用音楽・ノイズを組み込んだWidex社の補聴器と音楽プログラム"Zen Program"について紹介。


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備考
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この記事は、英語論文を抜粋要約したものです。
正確な内容については、本文中にリンクしている英文原文で確認してください。


tag : 音響・音楽療法 認知行動療法

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ノーマン ~ ブラームス/2つの歌曲 Op.91        
リートはピアノだけで伴奏するのが普通だけれど、なかにはピアノと弦楽器のデュオで伴奏している曲がある。
最近聴いた曲で記憶に残っているのは、フランクの《空気の精(Le Sylphe)》と《天使の糧(Panis angelicus)》。これはソプラノ独唱にチェロ&ピアノの伴奏。
このピアノ伴奏以外の楽器パートは、助奏(オブリガート/obbligato)と言われるらしい。助奏とは、独奏または独唱部の効果を高めるため、主旋律と同等の重要性をもつ伴奏パート。

助奏付きの歌曲を調べてみると、シュポーアの《6つの歌曲Op.154》((第4曲は「魔王」))がヴァイオリン助奏、同じく《6つのドイツ歌曲Op.103》はクラリネット助奏付き。
ソプラノ・クラリネット・ピアノ三重奏として有名(らしい)な歌曲シューベルトの《岩上の羊飼 D.965》はクラリネット助奏、サン=サーンス《見えない笛》はフルート助奏。
Schubert "Der Hirt auf dem Felsen" Elly Ameling (Part I ) [Youtube]
von Otter - Une flûte invisible (Saint-Saëns) [Youtube]


ピアノ伴奏&助奏付きの曲で一番よく聴いたのは、ブラームスの《Zwei Gesänge/2つの歌曲Op.91》。珍しくもヴィオラ助奏付き。
ブラームス歌曲のなかでは有名なので、歌曲集だけではなくて、ヴィオラやピアノの作品集のCDにも収録されていることがある。

第1曲 鎮められたあこがれ/Gestille Sehnsucht (1884) (詩:リュッケルト)
第2曲 聖なる子守歌/Geistliches Wiegenlied (1882) (詩:ローペ・デ・ヴェーガ/ガイベル独訳)
歌詞[梅丘歌曲会館 詩と音楽]

ブラームスの歌曲は、あまり有名ではない詩人の作品を使っていることが多いと言われているので(詩は全く詳しくないのでよくわからない)、第1曲のリュッケルトは例外的。
第2曲のスペインの劇作家ローペ・デ・ヴェーガの詩。(なぜか同じ名前の競走馬がいる)

好きなのは第1番の方。ブラームス風子守歌のような安らぎに満ちた旋律が美しく、全編いかにもブラームスといった雰囲気が濃厚。
特にヴィオラのやや低く深みのある響きがとても心地良い。
普通はバイオリンかチェロの伴奏になるところが、ヴィオラ伴奏というのは珍しく、ヴィオラソナタを書いたブラームスらしいところ。
第2曲も聴き直していると、第1曲の方がヴィオラがよく映えているように思うけれど、この曲もやっぱりブラームスらしいメロディが良いなあ~と。


I. Gestillte Sehnsucht (Stilled Longing)
Jessye Norman,daniel barenboim(piano)




II. Geistliches Wiegenlied (Holy Lullaby)
Jessye Norman,daniel barenboim(piano)





ノーマンのブラームス歌曲集(DG盤)。ノーマンはPhilipsにもブラームス歌曲の録音がある。
私が持っているのは、バレンボイムのピアノ伴奏によるDG盤(1枚組の分)。
Brahms LiederBrahms Lieder
(2000/03/14)
Jessye Norman

試聴する(米amazon)



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イッサーリス&ハフ ~ フランク/チェロ・ソナタ(ヴァイオリンソナタ編曲版)

tag : ブラームス ノーマン

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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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