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コロリオフ ~ バッハ=リスト編曲/前奏曲とフーガ BWV543
先日コロリオフのゴルトベルク変奏曲を久しぶりに聴いてから、コロリオフの『フーガの技法』や『平均律曲集第2巻』をまだ買っていなかったことを思い出して、ディスコグラフィを確認すると、珍しいデュオ録音が収録されている『The Korolio Series vol.12/Bach: Original Works & Ttanscriptions』もリリースしている。

収録曲には、あまり見かけたことのないピアノ編曲版が多い。
コロリオフのソロ演奏は、『音楽の捧げ物 BWV.1079』より「リチェルカーレ ト短調」の原曲、『クラヴィーア練習曲第3巻』(コラールのピアノ編曲11曲)、『前奏曲とフーガ イ短調BWV.543(リスト編曲)』。
4手ピアノのデュオ演奏は、ジョルジ・クルターク編曲のコラール集とコロリオフ編曲『パッサカリア ト短調BWV.582』など。

"Piano Duo Koroliov"のプロフィールを読むと、コロリオフとリュプカ・ハジ=ゲオルギエヴァ(Ljupka Hadzigeorgieva)は、チャイコフスキー音楽院在学中に知り合い、1976年にデュオを結成したというから、かなり年季が入っている。
デュオとして数々のコンクールで、"Jeunesse musicale" prize(1977年、Belgrade)、prize of the Russian Composers' Association for the best interpretation of 20th century music(2000年、International Duo Festival,Jekaterinburg/Russia)などを受賞。CD、ラジオ・テレビ放送のレコーディングも多いという。

<追記>
コロリオフの英文プロフィールを調べてみると、”in piano duets, he often performs with his wife Ljupka Hadzigeorgieva.”と書いているので、リュプカ・ハジ=ゲオルギエヴァはコロリオフの奥さん。夫婦でプロのピアニストというのは、珍しいかも。(パスカル・ロジェも奥さんとDUOを組んでいるけど)
コロリオフが師事していた先生は、ゲンリヒ・ネイガウスとマリア・ユーディナ、レフ・オボーリン、レフ・ナウモフなど。
チャイコフスキー音楽院卒業後、モスクワ音楽院で教職につくという、ソ連では順調なピアニスト人生を歩んでいた。1976年に結婚を機にユーゴスラヴィアへ渡り、(たぶん)音楽アカデミーで教えていた。その2年後に、ハンブルクで教授職に任命されたため、ハンブルクに移住し、現在もAcademy of Music and Dramaの教授職についている。

Vol. 12-Koroliovol. Series-Bach-Original Works & TVol. 12-Koroliovol. Series-Bach-Original Works & T
(2010/11/15)
Duo Koroliov

試聴ファイルなし
収録曲リスト(HMV)

TacetのCDは試聴ファイルがなかなか見つからないので、買うときにかなり迷うことが度々。
Youtubeにあるのは、バッハのリスト編曲でとても好きな『前奏曲とフーガBWV543』、このDUO演奏で初めて聴いた『Passacaglia in c BWV582』の音源。

リスト編曲の方は、私が一番好きなユーディナのパッショネイトなライブ録音とは趣きがかなり違うけれど、コロリオフの演奏も同じくらいに素敵。
まず最初に感じるのは音の美しさ。一つ一つの音の色彩感が鮮やかで、しっとりとした潤いと叙情感も含んだようなクリアな音色がとても綺麗。
多彩な音色に、全ての声部の線が太くしっかりとして明瞭に浮き出て、堅牢な骨格と建造物のような構築性を感じさせるところがコロリオフらしい。
やや粘り気のあるタッチで、拍子を均一に揃えずに、ルバートをかけたように、最初の音をほんの少し引き伸ばし気味にして微妙にずらして入ってくるところは独特な弾き方。不均等でカクカクとしたひっかかりのあるリズム感は、ピアノよりもチェンバロの奏法に近いような気がしてくる。
強弱のコントラストもそれほど強調せず、終盤の盛り上がり(8:10くらいから)でもフォルテはやや抑さえ気味。(ここはフォルテを大きく鳴らす人が結構多い)
ゆったりしたテンポで、起伏はあまり大きくはないのに、一音一音を着実に踏みしめていくような弾き方に平板さを感じることなく、底からじわじわと立ち上ってくるような強い叙情感が滲み出ている。
繰り返し聴けば聴くほど、力強くも流麗で格調高い美しさと静かに燃え立つようなパッションが感じられて、これだけ編曲もののバッハが素晴らしいのなら、他の編曲の演奏も聴きたくなってしまう。

BWV543 Prelude & Fugue in a (F.Liszt) Evgeni Koroliov 2010




デュオ演奏の『パッサカリア ト短調BWV.582』の冒頭の厳粛な雰囲気の旋律を聴くと、どこかで聴いたことがあるような気がする。
4つの声部がごちゃごちゃと混濁することなく、低音部の和音の響きが重厚で厳粛で、それと対象的に高音部の主旋律と対旋律の響きと旋律は美しく、くっきりと明瞭に浮かびあがってくる。

BWV582 Passacaglia in c Evgeni Koroliov (Piano duo) 2010


tag : コロリオフ

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スティーヴン・ハフのインタビュー
チェリストのイッサーリスの新譜は『In the Shadow of War(戦争の影で)』というタイトルのチェロ協奏曲集(BIS盤)。収録曲は、第1次世界大戦にまつわる現代曲ばかり3曲という珍しい選曲。

ユダヤ音楽で知られるエルネスト・ブロッホの代表作『ヘブライ狂詩曲「シェロモ」』(1916)
ブリテンの師フランク・ブリッジ『悲歌的協奏曲「オーレイション」』(1930)
イッサーリスのピアノ伴奏者でもある英国のピアニストで作曲家でもあるスティーヴン・ハフ『孤独の荒野』(2005)

ハフはピアノ作品や室内楽を作曲しているのは知っていたけれど、チェロ協奏曲の方は全然知らなかった。
この曲は「ハーバート・リードの1919年出版の詩から題材を得た作品」なのだという。

戦争の影で ~ チェロ協奏曲集 (In the Shadow of War / Steven Isserlis , Hugh Wolff) [SACD Hybrid] [輸入盤]戦争の影で ~ チェロ協奏曲集 (In the Shadow of War / Steven Isserlis , Hugh Wolff) [SACD Hybrid] [輸入盤]
(2013/02/10)
スティーヴン・イッサーリス

試聴ファイル



ハフのディスコグラフィをチェックしてみると、BISからハフの作品集が1年ほど前にリリースされていた。
ハフが50歳になるのを記念して録音されたもので、ハフが作曲した管楽器のための室内楽曲、歌曲、ピアノ・ソナタとチェロ協奏曲(イッサーリスの新譜と同じ音源)が収録されている。
試聴してみたけれど、ハフが作曲したピアノ作品はわりと好きとはいえ、このCDにはちょっと手がでない。
でも、《ピアノ・ソナタ"Broken Branches"》には興味があるので、米国NaxosのNMLで試聴。(米国のNMLは合計15分間で、どのトラックでも全曲試聴できるので)
このピアノ・ソナタは、静謐で重々しく、冷たい水が滴るような感覚がする。
最初は和声と冷たく研ぎ澄まされたタッチが似ているせいか、なぜかヤナーチェクのピアノ曲を連想したし、他の現代音楽のピアノ曲でも似たような雰囲気が漂う曲があったかも。
和声自体は美しく旋律もそれなりに歌謡性があることはあるので、比較的聴きやすい。
形式が散文的でモチーフもコラージュのように断片的に移り変わっていくので、つかみ所のなさはある。
ダウンロードして聴きたいかどうかというと、ちょっと微妙。

探してみると、Classic Onlineなら、この曲だけ$3.99でダウンロード販売中。
ここはNAXOS系列の音楽配信サービスで、珍しくも日本からでもダウンロード購入できるので、時々利用している。


作曲家 スティーヴン・ハフ (Broken Branches compositions by Stephen Hough)作曲家 スティーヴン・ハフ (Broken Branches compositions by Stephen Hough)
(2011/12/05)
Stephen Hough

試聴する


ハフの公式ホームページには、最新のニュースがいろいろ載っている。
インタビュー記事、ディスコグラフィ、自作曲の楽譜、コンサートの日程、それに(主に宗教関係の)執筆文など。

最近のインタビューもいくつかPDFで読める。
この中で面白かったのは、「展覧会の絵」というタイトルの記事。
ハフは絵も描くそうで、2012年10月にロンドンのBroadbent Galleryでハフの絵画展が開催されていた。(こういう抽象絵画は私にはよくわからないので何とも言えません)
バレエ好きのハフは、Royal Ballet CompaniesのGovernorに任命されたそうなので、ほんとに多才な人。
この記事は、そんなハフにとって絵を書く意味と音楽の関連性、作曲家としての作品、ブラームスのコンチェルトや最新アルバム『French Album』を廻るハフの話が載っている。
ハフの写真には、修道増のようにストイックな容貌と雰囲気が漂っている。
カトリックに改宗したり、宗教関係について書き物をしたりと、彼の内面世界はとても複雑なのかもしれない。

”Pictures at an exhibition: Painting, composing blogging – when does Stephen Hough get time to play the piano?" [An interview with Stephen in Classical Music, 22 SEPTEMBER 2012]

◆絵を描くということ
ハフのスタジオには小さな部屋があり、疲れたときやストレスがたまると、そこで絵を描く。
感情的なカタルシスがあって、とてもリフレッシュできるので、ピアノへ戻ったときには、また違った芸術的表現に対する用意ができている。

「テクスチュアの色彩や透明感について考えるのが好き。どうやってペダルと音を使えば、違った旋律に聴こえるようになるのか、それぞれの異なる旋律が、独立したルバート、独立した生命を持つことができるか。」
「それは絵を描くことでも同じ。色のブロックよりもむしろ、色の幾多の異なるレイヤーが見える抽象画に興味があり、それには音楽的な関連性がある。」


◆作曲
ハフの作曲作品は、”情感豊かで、徹底的に考え抜かれた”(warm-hearted and thoroughly thought out)ものであり、多くの熱狂的な聴衆がいる。
彼の人生において、作曲という部分は重要度を増している。充分な時間を確保できないことが、ずっとフラストレーションになっている。
彼の第2のピアノ・ソナタは、今シーズンのリサイタルプログラムで重要な位置づけ。
「Notturno Luminosa”という副題がついているが、”Moonlight Sonata”ではない。」
「それは都市の夜。眠れない夜に光っているアラーム時計や寝室のたった一つの電球のやりきれなさ。それへの不安がある:幻覚、夜の非合理性、夜のパニック”。だからタイトル自体は正しいのだが、たぶん誤解を生む。」


◆ブラームスのピアノ協奏曲
ハフはブラームスのコンチェルトは2曲とも好きだが、だんだん(たぶん驚くべきことに)彼はDマイナー(第1番)の男として登場することが多くなっている。
ハフ自身は、ブラームスの第2番の方が良い(better)作品だと思っているが、第1番はより素晴らしい(greater)曲だという。
「第2番はオーケストレーションと構造の点でより優れており、ブラームスの全盛期に書かれた記念碑的な作品。」
「第1番はエッジの粗いところはあるが、それが到達したもの、我々に与えたものは、最終的にはさらに心を動かすものである。なぜなら、それは”volcanic inspiration”(爆発的なインスピレーション)の作品だから。
最終楽章のカデンツァの後の瞬間、Dmajorでホルンが入ってくるところは、音楽全体のなかで最も素晴らしい瞬間の一つ。ここにくると涙が浮かんで来る。」



◆『French Albumn』
「フランス音楽の審美的なところが好き。重要なこと、とても特別な人間的感情を伝えるのに、長くも深刻にもなる必要もない。」
それほど多くの活動分野と膨大なレパートリーの間を飛び回ることは精力的な挑戦のように見えるが、ハフにとっては、”this is Hough in his element.”(※”これがハフを形作っている重要な要素”、”ハフをハフたらしめている重要な要素”いう意味だろうか)
「それによって、私が正気の状態でいられる。俳優のようにローブを着替えることができなくてはならない。異なる作曲家の魂の中に入り込むという挑戦が好き。一年を唯一つのことに費やすのは好きではない」
「それは健康的なこと。たとえば、フンメルを弾くことはショパンを弾くことの手助けとなるし、ブラームスとドビュッシーの筋肉の使い方は、脳にとっても、ピアニスティックな点では体にとっても、良いことだ。」
「かなりバラエティがあって、独自の位置を占める曲を組み込むプログラムが好き。それはまるで展覧会のようだ。」
「ニューヨークの Frick Collectionのような、異なる時代の様々な絵画を展示している美術館を愛している。美術館との比較は、そんなに悪いことではない。」
「私たちは偉大な美術館を求めている。ブラームスのピアノ協奏曲のような作品は繰り返し演奏されるが、それは決して充分に満足されることがないからだ。しかし、演奏したり考える方がルーティンに陥ってはいけない。あらゆる時に、新しいものを発見し、驚き、刺激されることに飢え、立ち戻って行く必要がある。それが演奏者を作り上げている部分の一つ。」
「もし絶えず音楽に精神や感情をかきたてられることがないのであれば、それは職を間違えているのだ」
‘If you’re not constantly excited by music then you’re in the wrong profession’

(以上、要約)


こちらは、ハフがレパートリーについて語っているインタビュー記事。
"Vraiety is the Key"[An interview with Stephen in the Sunday Times, January 2013]

tag : イッサーリス スティーヴン・ハフ

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肥満と糖尿病と食生活(日本の場合)
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肥満・糖尿病と食生活
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【日本の糖尿病死亡率】
糖尿病の死亡率「もっとも低いのはこの県」 厚労省の全国死亡率調査[糖尿病ネットワーク、2012年03月02日]
都道府県別 「死亡率」―“糖尿病”編[大人の健康生活ガイド]

年齢調整死亡率は、各都道府県の高齢者割合の違いを調整して計算した人口10万人当たりの死亡数。
徳島、香川、青森、茨城県などが上位。
人口動態統計とは順位が違うのは、年齢調整の有無による?

<女性>
低い:熊本(2.2人)、佐賀(2.2人)、大分(2.3人)、奈良(2.5人)、京都(2.6人)
高い:徳島(5.2人)、香川(4.6人)、静岡(4.4人)、山口(4.2人)、茨城(4.2人).....青森(10位;4.0人)
<男性>
低い:滋賀(3.5人)、奈良(4.1人)、広島(4.7人)、神奈川(4.8人)、岐阜(4.9人)
高い:青森(9.0人)、茨城(9.0人)、山梨(8.7人)、鳥取(8.6人)、香川(8.5人).....徳島(20位:7.2人)

元データ;平成22年都道府県別にみた主な死因別男女別粗死亡率(人口10万対)・順位 [厚生労働省]

糖尿病死亡率が高いのは、徳島県と香川県。なぜか高知県は逆に糖尿病死亡率が低い。
患者数は都市部よりも農業中心に多い傾向。

糖尿病患者数[都道府県別統計とランキングで見る県民性 [とどラン]]
徳島・香川は、死亡率だけでなく、人口1万人当たりの患者数も多い。
四国のなかで、高知県は23位、愛媛19位。徳島・香川とはかなりの格差がある。

         総数 | 人口1万あたり
1.島根県  23,000人 | 313.73人
2.青森県  43,000人 | 300.59人
3.徳島県  23,000人 | 285.38人
4.香川県  28,000人 | 274.69人
5.秋田県  29,000人 | 256.45人


【徳島県】
6月6日付 糖尿病死亡率1位 県民はもっと危機意識を(徳島県医療健康総局健康増進課、2010年9月13日)
徳島県の糖尿病の現状と対策(徳島県医療健康総局健康増進課、2010年9月13日)
- 厚生労働省の人口動態統計、2010年の徳島県の糖尿病死亡率が3年連続で全国ワースト1位。
- 死亡率は10万人当たり18・0人(全国平均の6・6人)
- 徳島県は、1993年から14年連続でワースト1位。07年にワースト7位、08年~2010年はワースト1位に逆戻り。
- 徳島県民は、「食べ過ぎ」「運動不足」による「肥満」の人の割合が高い。県民の「約3割に肥満」の傾向
- 食生活の特徴:糖尿病の疑いがある人は、芋類、果物、炭水化物の摂取量が多く、運動量が非常に少ない。(近年、改善傾向)
食生活データ:徳島県の現状と食生活指針(平成22年徳島県「県民健康栄養調査」結果)


【香川県】
非常事態! 香川の糖尿病死亡率 うどん、車に落とし穴
厚生労働省の「都道府県別年齢調整死亡率」によると、2010年の「糖尿病」による死亡率
- うどんをかまずに食べる、うどんと一緒に寿司やおにぎりを食べる。糖に変わる炭水化物に偏重している。(徳島でも、名物徳島ラーメンをご飯を一緒に食べるらしい)
- 高松市の世帯当たりの年間支出金額が全国上位の食品:生うどん、牛乳、マーガリン、食パンなど。野菜・果物は上位にはない。
- 移動手段:徒歩の割合は徳島14%、高知17%、香川21%。京阪神の24%に比べて低く、その分自動車の割合が高い。


【青森県】
短命につながる糖尿病/肥満予防と適切な通院を(Dr.中路が語る県民の健康)(2012年5月28日(月) 東奥日報)
- 糖尿病といえば徳島県と香川県。死亡率、受療率ともにほぼワーストに近い。その理由として(1)公共交通機関が発達していないのでマイカー利用が多い(運動不足)、(2)徳島ではサツマイモと砂糖(和三盆)、香川ではうどんの消費が多い、つまり炭水化物摂取が多い-と言われている。(本当の理由は不明)
- 両県は男女とも肥満者が多い。
- 青森県は全国有数の肥満県で、糖尿病が多い。

男子小中学生肥満率
文部科学省が実施している「全国体力・運動能力、運動習慣調査」から男子小中学生肥満率ランキング。
- 全国で最も肥満傾向児が多いのは青森県で13.75%。
- 2位以下は徳島県、福島県、山形県、宮城県。
- 徳島を除くと東北6県が上位。九州や四国にも肥満傾向児が多く、日本の両端に肥満傾向児が多い。

肥満児青森になぜ多い?雪国で運動不足・塩分多い食生活
専門家は「雪が多くて運動不足」「塩分の多い偏った食生活」などを原因に挙げる。


【高知県】
糖尿病の少ない県の秘密…あらゆる料理に〇〇をかけていた![[たけしの家庭の医学] 糖尿病]

- 糖尿病が少ない都道府県ランキングで1位(厚生労働省 平成20年度「患者調査」)
- 高知県民の食卓風景の考察:
(1)酢の物やポン酢など、お酢をよく使う:お酢が炭水化物の周りをコーティングすることで、小腸での糖分の吸収が遅くなり、血糖値が上がりにくくなる。
(2)時間をかけて食べる
(3)食事の順番:最後に炭水化物(ご飯)を食べる。ご飯を食べる前に里芋や野菜の酢の物などで食物繊維を摂る。その後食べた炭水化物に食物繊維が絡みつき、ゆっくり吸収されるため、血糖値の上昇が穏やかになる。
(4)魚をよく食べる:魚の脂に含まれるEPAは、血糖値の上昇を抑えるインスリンの分泌を活性化すると言われる。


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統計データから見る食生活の傾向
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「総務庁家計調査」(2008年)
厚労省「国民健康・栄養調査」(2010年)(野菜摂取量のみ)

徳島県は、米・うどん・そば・炭酸飲料・牛肉・魚介類の消費量・摂取量が多く、野菜の摂取量が少ない。
青森県は、インスタントラーメン・炭酸飲料・魚介類・豚肉の消費量が多い。野菜摂取量が少ない。
この消費データを見る限りでは、徳島県民の食生活は、高炭水化物・高脂肪・高たんぱくで、食物繊維が非常に少ない。車移動が多いため、かなり運動不足。
青森県も、米・うどん・そばはそれほど多くはないが(少なくもない)、高糖質の即席めんと炭酸飲料の消費量が多く、食物繊維の摂取量が非常に少ない。雪のためかなり運動不足。
共通点は、炭水化物(糖質)の多量摂取と食物繊維の摂取不足に加えて、運動不足。


米消費量
13 徳島県 93.76kg
45 香川県 70.06kg
40 高知県 74.18kg
21 青森県 87.31kg

パン消費量
20 徳島県 46,443グラム
22 香川県 46,337グラム
36 高知県 39,118グラム
45 青森県 35,159グラム

うどん・そば消費量
1 香川県 33,214グラム
14 徳島県 18,029グラム
33 高知県 14,474グラム

インスタントラーメン消費量
インスタントラーメンはカップめんと即席めんの合算
1 青森県 7,426グラム(全国平均の1.37倍)
2 富山県 7,326グラム
3 鳥取県 6,749グラム
4 高知県 6,660グラム
46 香川県 4,395グラム

炭酸飲料消費量
1 青森県 4,348円
2 山形県 3,772円
3 徳島県 3,628円
29 高知県 2,702円
31 香川県 2,670円
- 男子小中学生肥満率や女子小中学生肥満率と正の相関関係がある。
- 炭酸飲料をたくさん飲む地域では肥満率が高い。(逆に、緑茶消費量が多い地域ほど肥満率が低い)

野菜摂取量(男性)
22 高知県 303グラム
31 青森県 292グラム
33 愛媛県 288グラム
45 香川県 266グラム
47 徳島県 245グラム

野菜摂取量(女性)
13 愛媛県 301グラム
16 高知県 299グラム
29 青森県 275グラム
46 徳島県 241グラム
47 香川県 229グラム

魚介類消費量
1 青森県 75,261グラム
21 高知県 44,777グラム
43 愛媛県 38,856グラム
35 徳島県 40,343グラム
39 香川県 39,337グラム


豚肉消費量
2 青森県 22,049グラム
3 愛媛県 14,235グラム
44 香川県 14,124グラム
45 高知県 13,971グラム
47 徳島県 13,956グラム


牛肉消費量
9 徳島県 9,768グラム
10 愛媛県 9,740グラム
16 香川県 8,816グラム
23 高知県 7,648グラム
35 静岡県 5,292グラム




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参考情報
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日本人の糖尿病の遺伝素因・分子病態の解明とオーダーメイド治療
(東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科 門脇孝、第3回日本医学会特別シンポジウム)

「やせ形で糖尿病」リスク遺伝子発見…東大(読売新聞,2010年1月8日)
<糖尿病>「2型」非肥満、リスク2.5倍に 遺伝子変異で (毎日新聞,2010年1月8日)[以上、<Dr ミカのメモ帳: 脳・栄養・心 (発達障害・特別支援教育)>より]

高齢化社会の食生活 糖尿病/隠れ肥満に注意[ニッスイ]
- 肥満の指標=BMI:体重(kg)を身長(m)で2度割った数字。日本人の場合、25以上が肥満、30以上は著しい肥満と判定。
- 欧米の糖尿病患者:顕著な肥満。糖尿病患者の平均BMIは一般人の平均BMIより高い
- 日本人糖尿病患者:一般人の平均BMIと同等。
- BMIでは体重が問題。メタボリックシンドロームではお腹の臓器のまわりにつく内臓脂肪が問題。BMIが25以下と低くても内臓脂肪がたまっていれば肥満と同じ「隠れ肥満」。中年以降は、同じ体重でも内臓脂肪は増える傾向。

30代男性を襲う糖尿病(1)~「血糖値さえ下げれば治る」は危険な誤解~[SAFETY JAPAN/NIKKEI BP NET]
30代男性を襲う糖尿病(2)~合併症や老化の原因となる危険なAGE~[同上]
糖尿病の判定には、血糖値、ヘモグロビンA1c(1~2ヶ月間の血糖値の平均推移を反映)を測定する。糖尿病腎症の判定には「尿アルブミン検査」が必要。


食べる順番と血糖値との関係

『糖尿病がよくなる!食べる順番療法』
糖尿病がよくなる!食べる順番療法糖尿病がよくなる!食べる順番療法
(2011/07)
梶山 静夫、今井 佐恵子 他

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『なぜ、「食べる順番」が人をここまで健康にするのか: この食べ方で高血圧、糖尿病、高脂血症……にならない!』
なぜ、「食べる順番」が人をここまで健康にするのか: この食べ方で高血圧、糖尿病、高脂血症……にならない!なぜ、「食べる順番」が人をここまで健康にするのか: この食べ方で高血圧、糖尿病、高脂血症……にならない!
(2012/08/01)
梶山 静夫、今井 佐恵子 他

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血糖値を上げにくくするためには、食事の食べる順番を工夫すれば良い。
糖尿病患者が以下の順番で食事したところ、最初にご飯を食べた時に比べて、血糖値が上がりにくかったという試験データもある。
1、最初に、野菜のおかずを食べる。(5分~10分くらい時間をかけて食べること)
2、次に、たんぱく質である肉・魚介類、大豆製品(豆腐、厚揚げ、納豆など)を食べる。
3、最後に、ご飯・糖質の多い芋類を食べる。

早食いはNG。時間をかけて食べるには、一口あたりの食べる量を少なくする、よく噛む(20-30回くらい咀嚼)、一口づつ食べる(口の中に食べ物が入っている間は、他の食べ物を口の中に入れない)。

肥満と糖尿病と食生活(メキシコの場合)
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世界で最も肥満と糖尿病患者が多い国はメキシコ
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世界一肥満している人が多いのは、アメリカだと思うけれど、これは当たっていた。
でも、2位はどこかと言われると、ロシアかな?と思ったら、アメリカの隣国、メキシコだった。3位は英国。

メキシコ人の肥満率は世界で2位らしい[メキシコの旅行記とか留学の体験記とか色々]
肥満率の面白いイラストのグラフがある。日本と韓国は30位くらい。
メキシコ人の食生活を読んでいると、コーラだけで結構なカロリーと糖質を摂っている上に、炭水化物や脂肪たっぷりのコッテリした食事、さらに小麦粉・コーン・砂糖が大量に使われたデザートやスナック菓子を食べているらしい。これでは太らない方が無理。

水よりもコーラが安いので、飲むのはもっぱらコーラ、それも数百cc単位で飲む。
子供の頃からの習慣で、コーラの甘さにも慣れてしまい、さらには経済的事情も重なり、なかなか止められないに違いない。

コカ・コーラの原材料は「糖類(果糖ぶどう糖液糖、砂糖)、カラメル色素、酸味料、香料、カフェイン」。
100mlあたり45kcal、炭水化物11.3g。炭水化物には糖質が含まれているので、原材料の果糖ぶどう糖液糖、砂糖の使用量がほぼこれに相当するはず。
これを1回数百cc、1日1リットルも水代わりに飲んでいるとすると、摂取カロリ-が450kcal、炭水化物が110g。ご飯茶碗1.5~2杯分くらいに相当する。

スナック菓子の「ドリトス」はメキシカンタコス味のトルティアチップス。
アメリカのフリトレーが1966年に発売して、人気のあるスナック菓子らしい。(私はスナック菓子は食べないので、知らなかった)
栄養成分表示を確認してみると、1袋63g当たり308kcal、炭水化物42.1gと高カロリー・高糖質。
炭水化物は、ご飯茶碗に軽く1杯分よりちょっとだけ少ない程度。


「1時間に5人死亡」糖尿病との戦い メキシコ編[ima,2010/10719,十勝毎日新聞社]
メキシコの食事といえば、トウモロコシのトルティーヤを主食に、肉、肉、肉、野菜すこし、果物。そして、お菓子、甘いパン、ジュース。
メキシコにはどんな小さな村にも、赤い車がコーラを売りに来る。コーラは「お茶を一杯」感覚。
ダイエット飲料は(不味くて)飲めないという。緑茶にレモン果汁と砂糖を入れて売っている。


「肥満が大きな問題… メキシコ出張で思う」
「日野原重明の100歳からの人生」というYomiDr.のコラムでも、とメキシコ人の肥満について書かれていた。
コメント欄には、肥満が多い理由がいろいろ書かれている。食習慣と嗜好の問題もあるが、その背景には社会環境自体の問題が大きく影響している。
水道水の水質が悪くて飲めないのでお水代わりにコーラを飲む、貧困層は安くて満腹になれるジャンクフードや炭水化物食品を大量に食べる。
運動したくても、治安が悪いので子供が自由に屋外で遊べない。徒歩で移動するのも危険なので自動車移動が多い。個人レベルで生活習慣を改善するのは難しい事情もある。


[2013/9/18 追記]
「肥満率が高い国」ランキング発表 / アメリカが1位の座を明け渡す[2013年7月13日,ロケットニュース24]
元情報:Mexico takes over from the U.S. as the fattest nation on earth, according to UN report[9 July 2013,Mail Online]

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世界で増える糖尿病
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世界の糖尿病有病者数と有病率
米国、メキシコは糖尿病の有病者も多い。
成人の糖尿病有病者が多い国の世界上位は、1位 中国(9,230万人)、2位 インド(6,300万人)、3位 米国(2,410万人)、4位 ブラジル(1,340万人)、5位 ロシア連邦(1,270万人)、6位メキシコ(1,060万人)。
日本は9位で、糖尿病有病者は710万人。

世界の糖尿病有病率は、1980年では男性8.3%、女性7.5%。2008年には男性9.8%、女性9.2%まで上昇。日本の有病率は5.12%。
有病率では、ワーストがメキシコ10.6%、次いで米国10.3%。

有病者数データ:「世界糖尿病デー 世界の糖尿病人口は3.7億人に増加」(2012年11月15日,糖尿病ネットワーク])
有病率データ:”Prevalence of diabetes in 2010, adults 20-79 years”(Source: IDF (2009), OECD Health at a Glance 2011)
アジア人はそれほど肥満している人が多くないのに、中国・インドは糖尿病の患者数が急増しているし、日本も罹患率は高くはないけれど、患者数は多い。

中国が世界一の「糖尿病大国」に 10人に1人が糖尿病
子供の肥満も増えている。その原因は、「間食、洋食、テレビ、パソコン、運動不足」。学校の体育授業が少ないうえに「宿題が多すぎ」て自由時間に体を動かせない。
主要都市の大気汚染により屋外運動を避ける室内で椅子に座り続け勉強することを強いられているWHOによると、

果糖コーンシロップのとりすぎで糖尿病リスクが上昇
- 果糖(高果糖コーンシロップ)は、ジュースやコーラなど清涼飲料や菓子類などによく使われている食品添加物。日本での原材料表示名は「果糖ブドウ糖液糖」など。
- 高果糖コーンシロップの摂取量の最多国は国は米国。1人当たり平均で年間25kg。
- 日本、韓国、カナダ、ブルガリア、ベルギー、アルゼンチン、メキシコなども、高果糖コーンシロップの摂取量が比較的多い。

いろいろ情報を読んでいると、太る原因となる食べ物で、世界的に共通しているのは
 - 糖質たっぷりの清涼飲料水(コーラなど)
 - 炭水化物(小麦粉)を油で揚げたスナック菓子
 - ファストフード(ハンバーガー、ドーナツなど)
 - 砂糖がたっぷり入ったケーキ(それにバター、生クリーム、チョコレート、シロップもたっぷり)
こういうものを頻繁に多量に摂った上に、小麦粉やトウモロコシ粉でできたパン、お米のご飯を食べ、さらに、運動不足が加わっている。
この「運動不足」というのが、とても重要な要因になっているらしい。
糖質の多い食べ物を食べても、食後に運動(散歩など体を動かす)すれば、体に入った糖分が燃焼されるので、血糖値を下げる効果があるという。


<参考情報>
世界で増える糖尿病[高齢化社会の食生活/糖尿病,ニッスイ]

ラウタヴァーラ/ピアノ協奏曲第2番
現代フィンランドを代表する作曲家の一人であるラウタヴァーラが書いたピアノ協奏曲3曲のなかでは、アシュケナージが録音した第3番が(たぶん)一番有名。
最もとっつきの悪いように思える第2番は、第1番を作曲してから20年後に書かれた曲で、ピアニストのラルフ・ゴトーニによる委嘱曲。

ラウタヴァーラの解説では、第2番は旋律が全音階・半音階で構成され調和的な語法。
セリーの技法が使われているが、12音技法の音列によって再規則化(reorder)されているので、この曲の実質的な作曲技法が何かは断定できない。
アタッカで3つの楽章が連続して演奏される。(聴いていても楽章の切れ目は一応わかる)

前衛的な第1番の方が構成も旋律もはるかに明確で、旋律の叙情感やリズム感があって、緩急・静動のメリハリもよく利いていた。
それに比べるとこの第2番は、方向性のない音の塊が錯綜しているようなところがあり、構成はかなりつかみにくく、さらに曲想もかなり重苦しく鬱々しているので、3曲のなかでは一番聴き辛いかも。
といっても、調性音楽ばかり聴いていると、こういう不協和的でゴツゴツと荒々しい曲を聴くと、感性的にリフレッシュされる感覚があるので、それが逆に新鮮だったりする。

第1楽章 Viaggio
冒頭は、断片的なフレーズのオーケストラとは対照的に、細波のようなピアノのアルペジオ。オケはいつもながら自然のうねりを感じさせるように雄大。
左手ピアノは細波のように延々と続き、右手はパッショネイトな旋律。
オケはときどきカントゥスアルティクスを連想させるような鳥の鳴き声や風の咆哮のような変わった音が入っている。
第1番に比べて、より変幻自在というか、音のタペストリーが浮遊するように流れていく。

Einojuhani Rautavaara Piano Concerto N°2 1st mvt



第2楽章 Sognando e libero
ピアノパートは一転してかなりシンプルな音で構成され、ピアノが少し休止している部分では、弦楽や木管が穏やかな響きでエコーし、やや不安感を感じさせる雰囲気。
旋律の動きからいえば静寂なはずだけれど、響きがカラフルなのであまり静けさは感じない。
中間部は不意にテンポが上がり、躍動的なトッカータ。
ピアノとオケが追いかけっこするようなの掛け合いが軽妙。
クライマックスへ向けて、音がかなり飛び跳ねてワイルドになっていき、不協和音が鳴り響いた後で、静かに。
再現部は、ラウタヴァーラが"Innocence"(純粋、無垢)が失われて取り戻すことができないことを示しているという通り、前半よりもずっと暗く鬱々した雰囲気が支配している。


第3楽章 Uccelli sulle passioni
冒頭はとても静寂で曖昧模糊とした雰囲気。
ピアノは、静かな湖面に水滴が落ちているような水気のある響きと、細かく散乱する音の塊を引き続け、冷えびえとした感触。
次に、弦楽とブラスがドラマティックにその雰囲気を一掃して、重たくうねるような厚みのある響きで、ピアノは激しく和音を連打する。
ゆったりと鬱々した重苦しい雰囲気のオケを背景に、脈絡がないようなピアノの音が散乱し、時折、鐘の音も鳴っている。
徐々にクレッシェンドし、最後は全てが融合するように響きが溶け合って、まるで第1楽章の冒頭に帰ったように、フェードアウト。


この曲はミッコラとゴトーニが録音している。Youtubeの音源はたぶんミッコラの演奏。
ミッコラはNAXOS盤(Eri Klas、Netherlands Radio Symphony Orchestra)
委嘱者のゴトーニはOndine盤(ユッカ=ペッカ・サラステ指揮バイエルン放送響)。


Piano Concertos 2 & 3Piano Concertos 2 & 3
(1999/02/16)
Royal Scottish National Orchestra, Laura Mikkola, Einojuhani Rautavaara, Hannu Lintu

試聴する



Rautavaara: Piano Concertos Nos. 1 & 2Rautavaara: Piano Concertos Nos. 1 & 2
(1991/7/5)
Ralf Gothoni(piano),Jukka-Pekka Saraste(condutor),Bavarian Radio Symphony Orchestra,Max Pommer(conduct),Leipzig Radio Symphony Orchestra

試聴する(米国amazon)



<関連記事>
アシュケナージ~ラウタヴァーラ/ピアノ協奏曲第3番 《夢の贈り物》
ミッコラ~ラウタヴァーラ/ピアノ協奏曲第1番

tag : ラウタヴァーラ ゴトーニ

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ベートーヴェン=リスト編曲/《アテネの廃墟》のモティーフによる「トルコ風カプリッチョ」と「幻想曲」
フランツ・リストのベートーヴェン編曲で一番有名なのは、交響曲全集のピアノ独奏編曲版。
調べてみると、リストがベートーヴェンの劇音楽《アテネの廃墟》がとても気に入っていたのかどうかはわからないけれど、この劇音楽に出てくる「トルコ行進曲」などの主題を使って、ピアノ協奏曲にピアノ独奏曲、さらに2台のピアノ版も書いている。

《アテネの廃墟のモティーフによるトルコ風カプリッチョ S.388》(ピアノ独奏版,1846年)[楽譜ダウンロード(IMSLP)]
(主題の《トルコ行進曲》の編曲部分のみ抜粋したのが、S389a)

《アテネの廃墟による幻想曲 S.122》(ピアノ協奏曲版,1852年)

《アテネの廃墟による幻想曲 S.389》(ピアノ独奏版,1852年)[楽譜ダウンロード(IMSLP)]

《アテネの廃墟による幻想曲 S.649》(2台のピアノ版,1852年)

1839年に”Fantasie über Themen aus Beethovens Ruinen von Athen S.388b”というピアノ独奏版を書き、これが、ピアノ協奏曲版(S.122/1852年)に改訂され、主題はピアノ独奏曲のカプリッチョ(S.388/1846年)にも使われている(ということらしい)。
S.122は、ピアノ独奏曲(S.389)と2台のピアノ版(S.649)にも編曲(1952年)。


《アテネの廃墟のモティーフによるトルコ風カプリッチョ》(S 388)
冒頭の「トルコ行進曲」は、オドロオドロしい序奏で始まるけれど、主題部はとても可愛らしい行進曲。
後半部へ移行するところで、メンデルスゾーンの《結婚行進曲》の冒頭の和音のような旋律が聴こえてくる。
鍵盤の低音部から高音部までたっぷり使っているので、音色の色彩感がカラフルで、特に高音部の和音は宝石のようにキラキラ煌き、低音の和音もリズムがいろいろ変化して、軽やかで華やか。
行進曲というよりも、ダンスでもしているみたい。

可愛らしく終わった途端、ファリャの《火祭りの踊り》のようなトリルが始まって、幻想曲風に。
「トルコ行進曲」の主題とはかなり違った旋律が出てきて、リストらしい華やかなスケールや和音が鍵盤上を行き来する。こういうところは、リストの《ピアノ協奏曲》や《死の舞踏》を連想する。

終盤になると、再び「トルコ行進曲」の主題が現れて、この編曲がとても楽しい。
ピアノは高音部主体で音色がオルゴールのように可愛らしい。厳めしい異国の軍隊風とは全く違い、繊細で華麗な装飾が施されてキラキラと煌くような旋律がとっても綺麗。
このトルコ行進曲の主題が、フィナーレへ向けて、途中で冒頭主題も織り込みながら、華やかなパレード風に変形されていく。
ベートーヴェンの《トルコ行進曲》とリストのオリジナルな幻想曲とが融合して、華やかでファンタスティックで、とっても素敵。

Beethoven-Liszt:Capriccio alla turca sur des motifs de Ruines d'Athènes




《アテネの廃墟による幻想曲》ピアノ協奏曲版(S 122)
《アテネの廃墟による幻想曲》は、全部で3バージョン(ピアノ協奏曲、ピアノソロ、2台のピアノ)。
どのバージョンでも演奏機会はとても少ないらしく、録音もピアノ協奏曲が数件。
ピアノ協奏曲を録音しているのは、ベロフ、ヤンドー、ハワードなど。

これはベロフのピアノによる協奏曲バージョン。
ベートーヴェンの原曲は《序曲》と《トルコ行進曲》くらいしか聴いていないので、原曲のどの部分の主題が使われているのかよくわからないけれど、それを知らなくても充分楽しめる。
《アテネの廃墟のモティーフによるトルコ風カプリッチョ》と似たような旋律も出てくるけれど、こちらの方がより凝った編曲と華麗な装飾でピアニスティック。

トゥッティでのどかに序奏が演奏された後に、突如リストらしいデモーニッシュで華やかな和音がピアノでかき鳴らされて、主題が展開されていく。
ここでも、ピアノ独奏により《火祭りの踊り》のようなトリルとスケールが多用されて、最後はオケとピアノが協奏していく。まるで《死の舞踏》のように、追いつ追われつ...という疾走感。

終盤には、編曲された《トルコ行進曲》が出てくる。
直前のパートとはガラリと雰囲気が変わって、ピアノが弾く高音部の旋律は、キラキラと煌く音色が綺麗で可愛らしい。
ピアノ独奏版の方の《トルコ風カプリッチョ》の終盤で出てくる「トルコ行進曲」よりも、さらに音色が美しく華やか。
やがて、フィナーレに向けて《トルコ行進曲》が壮大に展開されて行き、いかにもリストらしい豪華絢爛たるピアニスティックな協奏曲。


Liszt - Fantasy on Themes from the Ruins of Athens, S. 122
Piano: Michel Béroff,Kurt Masur、Gewandhausorchester Leipzig



tag : フランツ・リスト ベートーヴェン

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コロリオフ ~ バッハ/ゴルトベルク変奏曲
大久保賢さんのブログ<Le plaisir de la musique 音楽の歓び>で、コロリオフに関する記事”リゲティお気に入りのピアニスト””コロリオフに悩殺される” を読んで、そういえば、コロリオフの《ゴルトベルク》のCDを持っていたのを思い出した。

コロリオフのバッハ録音はとても評価が高いので、《インヴェンションとシンフォニア》、《平均律曲集(第1巻)》、それに《ゴルトベルク変奏曲》のCDは買ったけれど、最近はベートーヴェンモードに入っていたので、バッハはほとんど聴いていない。
コロリオフのディスコグラフィをHMVで確認すると、3月にはベートーヴェンのピアノ・ソナタ第28番&ハンマークラヴィーアのCDがリリース予定だし、バッハの編曲集をTACETから出していたので、両方とも聴きたくなってきた。

今まで聴いたゴルトベルクで好きなのは、(たぶんほとんど知られていないはずの)マルクス・ベッカーのスタジオ録音、ソコロフとカニーノのライブ録音。
コロリオフのゴルトベルクは、彼らの録音とはまた違った方向。
久しぶりにコロリオフのゴルトベルクをYoutubeで聴いてみると、このゴルトベルクはとっても素敵。
なんだかとても気持ちが落ち着いてくる。以前CDで聴いた時はそう思わなかったのに、どうしてだろう?

Aria and Variations 1 - 2 Evgeni Koroliov 2009


冒頭の主題から、深く思索に耽っているような静けさと穏やかさがとても心地良くて、第9変奏や第18変奏などはそっと寄り添って語りかけるように優しい。
コロリオフは、線が太くて弾力のある芯のある音で、全ての声部の縦と横の線がくっきりと明瞭に浮き出ている。
建築物のように曲の骨格ががっちりと堅牢で、すっきりと見通しの良い構成感があり、時々挿入する装飾音も過剰に凝ることなく嫌味なところがなくて、ピリリとスパイスの利いたような歯切れ良さが、とても小気味良い。
煌びやかさはあまりないけれど、落ち着いた音色と色彩感で明晰な音は、飾り気のないアコースティックな趣き。
ノンレガートでも、ゴツゴツとした丸みと柔らかい音なので、クリスピーで尖ったところはなく、フレージングも滑らか。
急速楽章でもそれほど速いテンポをとらないので、外面的な技巧の切れ味よりも、それぞれの声部の動きと絡み合いをしっかりと聴かせてくれるポリフォニックな演奏がとっても面白い。

CDも聴き直したけれど、DVDとCDの演奏ではちょっと違う。
CDの方がほんの少し残響が長く音にも輝きがあり、全体的にテンポが速いので(第5変奏はかなり速い)、音の切れも良く、左手低音部は弾力のあるリズミカルなタッチ。演奏にも勢いと躍動感があり、第1変奏を聴くだけでもその違いがよくわかる。
DVDのライブ映像は、急速系の変奏でもそれほどテンポが速くないことが多く(第9変奏などかなり速いこともある)、タッチもCDのような切れの良さは控え目で、丁寧だけれどほど良い軽やかさがある。
残響が少ないので音がクリア。同じ部屋で聴いているような間近い距離感があり、親密感も濃い気がする。こちらの演奏の方が私の好みには合っているみたい。

でも、CDもDVDもポリフォニックな構造がよく演奏というのは同じ。
CDの緩徐系の変奏もまったりした内省的な雰囲気が漂い、よく聞けば聴くほど、CDの演奏も風通しの良い爽やかさが気持ち良くて、そんなに好みと合わないこともないように思えてきた。


Bach: Goldberg Variations, BWV 988Bach: Goldberg Variations, BWV 988
(1999/01/01)
Evgeni Koroliov

試聴する(米amazon)




ライブ映像を見ると、コロリオフはピアニストというよりも、学者さんのような容貌と雰囲気。
演奏を聴くと、良く研究しているんだろうなあという感じはひしひしとするので、学級肌タイプなのかも。

Goldberg Variations (Ws Ac3 Dol Dts) [DVD] [Import]Goldberg Variations (Ws Ac3 Dol Dts) [DVD] [Import]
(2008/11/18)
Evgeni Koroliov

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tag : バッハ コロリオフ

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シマノフスキ ~ 12のエチュード Op.33
ミハイル・ルディの『シマノフスキ作品集』に収録されている《12のエチュード Op.33》は、シマノフスキらしい幻想性が漂う曲が多くて、練習曲とはいっても、とても面白い曲集。

有名な初期の作品《4つのエチュードOp.4》は、第2番と第4番がメカニカル、第1番と第3番はショパンやスクリャービン風のロマン派的叙情漂う曲。特に、叙情美しい旋律の第3番は有名。
ルディは《4つのエチュード》は録音していない。

《12のエチュードOp.33》は、《4つのエチュード》とは全く違った作風。
こちらの方が現代的なシマノフスキらしい曲集。
印象主義の影響をうけた頃の作品なので、同時期に作曲された《メトープ Op.29》や《仮面劇 Op.34》と相通ずるような幻想的な作風。リゲティのエチュードに似たところもある。
第2番Andantino Soaveは、スクリャービンの《Prelude Op.16》第4番の主題旋律が織り込まれている(ように聴こえる)。
第11番Andante soaveは《メトープ》の「L'Ile des Sirènes」のようにファンタスティック。
第8番Lento assai mestoの重く苦しい雰囲気は、近い時期に書かれた《ピアノ・ソナタ第3番Op.36》の第1楽章を連想する。
第1番Prestoも似たような旋律の曲をどこかで聴いたような気がする。

PrestoやVivaceの練習曲は、細かい音が連なるパッセージや和音が激しく行き来して声部が錯綜するなかに、主旋律が織り込まれているパタ-ンの曲が多い。
主旋律をはっきり繋げて浮かび上がらせないと、全体的に音がごちゃごちゃ雑然と並んだような曲に聴こえてしまう。(ルディやロスコーの演奏なら大丈夫)

Szymanowski - Etude No.11 Op.33 - Andante soave (Martin Roscoe, piano)


さすがに録音の多い曲集ではないので、Youtubeの音源もわずか。
そのなかで面白い音源は、Digital Performer”MOTU”とバーチャル・グランド・ピアノ音源”Synthogy Ivory”を使って人工的に作り上げたデジタル演奏。
最初はそれを知らずに聴いていたので、てっきりピアニストがアコースティックのグランドピアノで演奏していると思っていた。
”Ivory”には、グランドピアノ3台(Bösendorfer 290 Imperial Grand、German Steinway D 9' Concert Grand、Yamaha C7 Grand)の音が収録されているようなので、音はとても綺麗。
全曲聴いていると、どの曲の演奏も、テンポや強弱の幅・推移のパターンが一定で、流麗にスラスラとひっかかりなく流れていき、表現が似通って平板に思えてくる。そう感じるのはバーチャルピアノの演奏だという先入観があるからかも。
でも、ロスコーやルディの演奏と聴き比べると、やはり彼らの演奏の方が色彩感が鮮やかで起伏も多彩。微妙なテンポの揺れもあり、何よりピアニストの感情が篭められたような”生気”を感じる。

Szymanowski etudes op 33
(created, edited and mastered in Digital Performer (MOTU) using Ivory (Synthogy) sound banks.)




ロスコーのシマノフスキ作品集(Naxos盤)
シマノフスキ: ピアノ曲集 - 第3集シマノフスキ: ピアノ曲集 - 第3集
(2000/09/01)
マーティン・ロスコー

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ルディのシマノフスキ作品集(EMI盤)
Piano Works / Works for Violin & PianoPiano Works / Works for Violin & Piano
(2005/08/30)
Mikhail Rudy

試聴する(米amazon)



シマノフスキに関する過去記事

tag : シマノフスキ ルディ ロスコー

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『西太后のアンチエイジングレシピ』
ちょっと変わった趣向のレシピブック『西太后のアンチエイジングレシピ』。
西太后というと、世界史の教科書に出てきたので名前だけは覚えているけれど、細かいことは全然記憶に残っていない。
この本には、西太后とはどんな歴史上の人物なのかという簡単な紹介と、食にまつわるエピソードがいろいろ載っている。

レシピは、西太后が食べた食事や薬膳メニューの再現レシピと、西太后が常に食べていた食材を使った「手軽にできる西太后レシピ」。
宮廷料理の歴史と中国の薬膳料理が融合し、普通の美容レシピとは違って、なかなか格調高い(?)雰囲気。
それほど手の込んだ料理法ではなく、日本でも常食されている食材を使った簡単なレシピが多い。中には、当時使われていた薬膳的な珍しい食材を使った料理もある。
使われている食材については、薬膳の観点からみた効用が簡単に書かれている。これは普段の食生活にもとても役立ちそう。詳しい薬膳の本を読んでみたくなってきた。

西太后のアンチエイジングレシピ―門外不出の宮廷美容食を、いまあなたに西太后のアンチエイジングレシピ―門外不出の宮廷美容食を、いまあなたに
(2012/11/16)
阪口 珠未

商品詳細を見る

著者の薬膳料理家である阪口珠未さんのブログ<─良薬は口に美味し─>にも、この本の紹介記事が載っている。

西太后の食卓には100種類以上の料理が並び、そのうちバランスを考えていくつか選んで食べていたという。(手を付けずに残された料理はどうなったんだろう?)

西太后の愛したアンチエイジングレシピ
「八珍ケーキ」:材料が薬膳で使うような珍しいものが多い。自分では作れそうにないけれど、写真を見ると、とっても滋養に良さそうなケーキ。(江南の銘菓で、もち米に八種類の漢方薬と糯米粉、砂糖と混ぜたもの。胃や脾臓に良いという)
「菊花火鍋」:女性は体は冷やしては行けない...というのは中国では当然のことらしく、西太后は常に暖かい料理を食べていたという。これは菊の花の鍋料理。
「肉皮凍」(豚足の煮こごり)、「桜桃肉」(さくらんぼと皮付き豚肉の煮込み):西太后の大好物は北京ダック。肉類を好んで食べ、特に鴨や豚の足のゼラチン部分が大好きだったというから、かなりコラーゲンを摂っていたに違いない。

五大食材+αでさらに効果を上げる!毎日のおかず、ごはん、めん
「五大食材」は、山いも、くるみ、黒ごま、鳥手羽、大根
どのレシピもとっても簡単。くるみは「くるみみそ」、黒ごまは「黒ごまジャム」「黒ごまだれ」にすると、使いやすいし、ゴマもたくさん食べられる。大根は、ダイエット&デトックスの食材。生の大根を食べると消化促進効果がある。

若さと美しさの秘密 西太后の食習慣
昔から”冷えは万病のもと”と言われるとおり、「けっして冷たいものは口にしない」。
加工されていない生の食材を食べるローフード(raw food)の食生活とは正反対。
「花のお茶を飲む」。中国茶専門店へ行くと、ジャスミン茶、ライチ茶、菊花茶、桂花茶(キンモクセイ茶)、攻瑰花茶(マイマイカ /ハマナス、ローズ) など、花や果物を使ったお茶がたくさん。
「お肉大好き。特に北京ダックがお気に入り」
「消化のよいもの、消化を助けるものを食べる」。「炒り米と梅のお粥」を早速作ってみると、フライパンで炒ったお米のお粥は、普通の生米のお粥と違って、香ばしくて美味しい。特に炒って茶色になった米粒はコリコリした食感が”あられ”みたい。


毎日がスペシャル食材
「高麗ニンジン」
「なつめ」:中国では、「1日7個のなつめは医者いらず」という言葉があるという。薬膳では「気」と「血」の両方を補い、特に女性に大事な「血」を増やすといわれる。ミネラル・鉄分も豊富。
そういえば、カルディで乾燥なつめを売っていた。効用は鉄分豊富なプルーンに似ているところがあるのかも。
なつまはそのまま食べても甘くて美味しいし、なつめをワイン漬けにすると、ワインが薬膳酒に。
「はすの実」:精神安定作用があるので、不眠に効く。普通の豆と同じように、サラダ、煮物、炊き込みご飯などに使える。
ベトナム土産で有名なのは「蓮の実の砂糖漬け」。これはかなり美味しい。ハノイでは結婚式くらいにしか食べないとベトナム人のガイドさんが行っていたけど、ホーチミンでは甘納豆みたいに日常的に食べられている(らしい)。
「白きくらげ」:日本で見かけるのは黒いきくらげ。白いきくらげはシロップづけのデザートに。

もっときれいになりたい 西太后のお悩み解決レシピ
作ってみたいレシピがたくさん。作り方もとっても簡単。
「甘酒豆乳」:甘酒の原料の麹は胃腸の働きを整え、便秘解消にも効果がある。
「はとむぎと炒り黒豆のごはん」:フライパンで炒った乾燥黒豆をお米と一緒に炊く。豆を茹でなくても良いので簡単。はとむぎの効果は肌のきめを整え美しくする。
「クコのバルサミコ酢づけ」:眼精疲労に良い。
「黒ごまきな粉ココア風」(ねり黒ごま、黒豆きな粉、豆乳入り)、「ひじきパスタ」:黒い食材は「血」のめぐりを良くして、体中に栄養を運ぶといわれる。
「ゆり根のホイル焼き」:ゆり根には精神安定作用があり、不眠にも効く。
「くるみ汁粉」:西太后の一番好きなスイーツ。白玉粉、くるみ、ココナッツミルク、豆乳、はちみつ、黒砂糖入り。とっても栄養ありそう。
ベートーヴェン/《トルコ行進曲》と《創作主題による6つの変奏曲Op.76》
《トルコ行進曲》といえば、一番有名なのがモーツァルトのピアノ・ソナタ第11番イ長調K.331「トルコ行進曲付」。
子供の頃にピアノのレッスンで練習したのでよく覚えている。その頃からどうにもこの曲が好きになれず、おかげでモーツァルトのピアノ曲は、聴くのも弾くのも嫌になってしまった。
今でもこのトラウマ(?)が影響しているかも...。

同じく練習していたベートーヴェンの《トルコ行進曲》の方は、とても好きだった。
どうやら、幼少のみぎりからベートーヴェンとは相性が良かったみたい。
《トルコ行進曲》は、元々はピアノ独奏曲の《創作主題による6つの変奏曲 ニ長調 Op.76》(1809年)の主題。
ベートーヴェンは気にいったモチーフを転用して作曲することが度々あり、この変奏曲の主題は、後に作曲した劇音楽《アテネの廃墟 Op.113》(1811年)の第4曲「トルコ行進曲」に使われている。
そのため、原曲の変奏曲が、《「アテネの廃虚」からのトルコ行進曲による6つの変奏曲》とも言われるようになった。

そういえば、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番は<トルコ風>。トルコ人の太守セリムの後宮(ハレム)を舞台にしたオペラ《後宮からの逃走》というのもある。
モーツァルトもベートーヴェンもどうしてトルコがらみの曲を書いたのかというと、オスマン帝国が16世紀と17世紀に行ったウィーン包囲の名残り。
オスマントルコ軍の軍楽隊メフテルがヨーロッパ人にとって強烈な印象を焼き付けたらしく、18世紀頃にトルコ趣味の音楽が流行ったという。
ヨハン・シュトラウス2世も、ウィーン包囲にちなんだ曲「取り壊しポルカ」を書いている。
詳しくは、”「取り壊しポルカ」で何が取り壊された?~オスマントルコによるウィーン包囲~”[有名なクラシック音楽]で解説されている。


ベートーヴェンの変奏曲の楽譜を確認してみると、私が練習した曲とは随分違う。
Youtubeで音源を探すと、キーシンが《トルコ行進曲》をリサイタルのアンコールで弾く時に、”piano arrangement by Anton Rubinstein”と言っていた。
やがて弾き始めると、これが私が練習していた《トルコ行進曲》と同じ!装飾音が入っているのですぐわかる。
てっきりベートーヴェンの曲だと思っていたけれど、実はアントン・ルービンシュタインの編曲版を練習していたのだと、ようやく今になってわかったのだった。
他にも、ラフマニノフがルービンシュタイン版をさらに編曲したバージョンがあり、これはラフマニノフの自作自演のピアノロールで聴ける。

Six Variations on an Original Theme in D major, Op.76(楽譜ダウンロード/IMSLP)


キーシンが弾くルビンシュタインの編曲版《トルコ行進曲》
原曲の主題に加えて、原曲の第1変奏の後半部分に出てくる旋律を編曲して使っている。
キーシンが弾くと、軽快な和音の打鍵と明るい音色できらきら輝いて、とっても可愛らしい。
ミリタリー調というより、おもちゃの兵隊さんの行進みたい。弾いているキーシンも楽しそう。

Beethoven - The Famous Turkish March




ラフマニノフの《トルコ行進曲》
キーシンとは随分雰囲気が変わり、遅いテンポで無骨な雰囲気は異国の異様な軍隊のイメージ?
左手の伴奏和音に符点のリズムが多くて、キーシンの演奏とはちょっと違うので、これがラフマニノフの編曲版らしい。
最後は軍隊が遠ざかっていくように、リタルダンドしながらフェードアウト。
※この録音は音がかなり鮮明。ラフマニノフは空気圧による自動演奏ピアノのために録音していたが、それに使われていたミュージック・ロールのデータをコンピューターに入力して、現代ピアノで自動演奏しているものらしい。

Rachmaninoff plays Beethoven-Rubinstein: Turkish March


ラフマノノフが蓄音機に残した録音もある。(Youtubeの音源はこちら)




原曲《創作主題による6つの変奏曲 ニ長調 Op.76》(「アテネの廃虚」からのトルコ行進曲による6つの変奏曲)
1809年の作曲ということは、ピアノ・ソナタ第24番《テレーゼ》を作曲した頃の中期の作品。
演奏機会が多いとはいえないこの変奏曲をリヒテルが弾いているのが珍しい。
冒頭から軍隊の行進曲のごとく威勢良い。第1変奏はとっても可愛らしく、第2変奏は飛び跳ねるようなリズムが面白い。
第3変奏はワルツのようにしとやかで優美。第4変奏も第2変奏のようにリズムが変化して、厳めしさと可愛らしさが交代する。第5変奏はレガートで流麗。
第6変奏はフィナーレらしく、疾走するように軽快で華やか。最後は主題が再び登場して、ちょっとしたユーモアが漂う、可愛らしいエンディング。
単純でマニッシュな行進曲の主題が、リズムや旋律がコロコロと変化して、可愛らしくも、軽快にも、優雅にも、表情が多彩。これはとっても面白い。

Richter plays Beethoven Variations Op.76




劇音楽《アテネの廃墟》の第4曲「トルコ行進曲」
シンバルとかが入っているので、軍隊が行進しているような軍楽風。
ピアノ編曲版が完全に刷り込み状態になっているので、やっぱりピアノの音の方がしっくりくる。

Türkischer Marsch from "Die Ruinen von Athen" op.113


tag : ベートーヴェン キーシン リヒテル ラフマニノフ

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ベートーヴェン/ヴァイオリンソナタ第9番「クロイチェル」
クロイチェルソナタの異聴盤なら、世評の高い名盤の類はだいたい聴いたけれど、CDガイドで評論家が推奨している録音はそれほど好きと思えない録音が多く、クロイチェルもその例に漏れず。
そのなかで例外的に好きなのは、パールマン&アシュケナージの若い頃の録音。
聴き直してみると、今ではちょっと印象が変わったけれど、第1楽章の演奏は今でもやっぱり好きだった。
かなり間近からヴァイオリンとピアノの音と旋律が克明に聴こえてくる。
線が太くたっぷりした音量で若々しい勢いのあるパールマンのヴァイオリンと、アシュケナージの色彩感豊かで線のしっかりした響きがよく合っている。特に、ピアノの低音のフォルテは、ガンガン叩きつけずとも力強く量感豊か。

パールマンはいつものように朗々と歌っているけれど、第1楽章はテンポも速いので、それほど気になるほどの濃厚さではなく。
アシュケナージのピアノは、技巧的な切れはそれほど良い感じはしないけれど、線のしっかりした音と重みのある低音で重心が低く、力強くも優美さがあって、メルニコフやブラレイの軽快な弾き方とは随分違う。
重みのある雰囲気とパッショネイトな情感とが融合したところが、(私のイメージする)クロイチェルソナタらしいところ。

第1楽章では、ときどき急速部分なのにテンポと少し落として弾くところがあり、もたっとした感じがする。
重いタッチでフォルテを弾くための技術的な問題なのか、解釈によるものなのか、もう一つよくわからない。
好みとしては、急速部はほぼインテンポで突き進んで行く方が、推進力も迫力も感じられるので好きなのだけど。

Beethoven violin sonata No 9 Kreutzer Mvt 1 (1/4) Perlman


第2楽章は、ヴァイオリンの震えるようなヴィブラートとか表情がやや情緒的に感じられるのと、ピアノがペダルを多用して輝くように煌びやかな音がゴージャスすぎて、私にはちょっとコッテリ気味。
(そういえば、昔は豊かな色彩感のアシュケナージが音大生には特に人気のあったピアニストらしい)

Beethoven violin sonata No 9 Kreutzer Mvt 2 part 1 (2/4) Perlman


                             


ショスタコーヴィチの『24のプレリュードとフーガ』の録音が素晴らしくよかったので、メルニコフのピアノ伴奏が聴きたくて買ったのが、イザベル・ファウストとメルニコフのベートーヴェン・ヴァイオリンソナタ全集。
評判もかなり良いし、試聴した時も感触が良かったので、かなり期待していた。

ベートーヴェン: ヴァイオリン・ソナタ集(全曲) (Beethoven: Complete Sonatas for Piano & Violin) (4CD) [輸入盤]ベートーヴェン: ヴァイオリン・ソナタ集(全曲) (Beethoven: Complete Sonatas for Piano & Violin) (4CD) [輸入盤]
(2009/07/21)
Isabelle Faust、Alexander Melnikov 他

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このベートーヴェンの印象というと、鋭いタッチで軽快な疾走感とあっさりした叙情感のある現代的なスマートな演奏。
時々、他の演奏者とは違う弾き方をしているので、いつもと違った響きが、こんな旋律だったかな?と思えるのが面白いかも。
全体的に急速楽章のテンポがかなり速く、叙情が駆け足で通りすぎていく。(好みとしては、もう少し遅いテンポの方が慌しさがなくて好きなのだけど)
タッチが鋭くて音質も軽め。特に低音はシャープで力感はあっても、量感や重みがもう一つなので、全体的に軽やかな疾走感が強くなる。
初期の第1番~第3番なら、こういうタッチが似合うけれど、第4番以降はそういうところが逆にかなり気になってしまう。

そもそもヴァイオリンの音色が好みとは正反対なので、それも影響しているに違いない。線が細く、音の潤いや膨らみがあまりなくて、ちょっとギスギスした感じに聴こえる。特に高音はか細いキーキーした音なので、耳心地があまり良くない。
それとは対照的に、メルニコフのピアノの音はとても美しい。音色は多彩で、弱音の柔らかさやソノリティの美しさ。音響的にピアノの存在感をかなり強く感じるので、私にはピアノ伴奏の方が印象が強い。
もともとメルニコフのピアノ伴奏を聴きたかったので買ったCDなので、それはそれで良いのだけど...。
メルニコフは速いテンポでも指回りが良く、テクニカルな切れの良さと安定感は抜群だし、音色やソノリティの多彩な美しさを味わえる。
特に、(試聴した時から耳が惹きつけられた)第3番の第1楽章のペダルを入れたアルペジオは、ダイナミックな響きが華やか。

全曲を聴き終わってみると、ベートーヴェンにしてはちょっとタッチと音が軽い気はするし、強弱のコントラストは明瞭でも、彫の深い表情とはちょっと違うように思えてきた。
クロイチェルソナタについていえば、ピアノがフレーズ末尾を短く切ったり、フォルテの和音をスタッカートにように軽く切ったりしているので、ちょっと重みに欠ける気がする。第1楽章中盤で右手と左手が3度で反行するパッセージを弱音で軽いタッチで弾くので、子ねずみがちょこまかと動き回っているようなイメージがしてきた。
テンポがかなり速いので、第2楽章の変奏部分ではせかせかと慌しく感じる部分もある。
シャープなタッチと強弱の対比は鋭くて、そういうところは印象的に聴こえるけれど、テンポが速いせいもあって、細部の表情づけはそれほど彫が深い濃さはない。第8番第1楽章冒頭のヴァイオリンの高音、第10番第4楽章の緩急・静動の対比や舞曲的なリズムの弾き方がわりとあっさりしているので、諧謔さはあまり感じない。
試聴した時はとっても印象が良かったのに(特に初期の3曲)、聴けば聴くほど気になるところが多く、珍しくも結果的に期待とはかなり違った録音だった。
こういうのは好みの問題なので、もう仕方がない。(細かいことを気にしなければ)現代的な颯爽としたベートーヴェン風なので、異聴盤をきかずにこれだけ聴いている分には、結構スリリングで楽しめる。

メルニコフのブラームス録音では、逆にルバートたっぷりでかなりウェットな叙情感があるので、彼のベートーヴェンとブラームスは、どうも好みとは違うのがわかってきた。ショスタコーヴィチとかのロシアものの方が私の波長には合うのかも。

tag : ベートーヴェン パールマン メルニコフ

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Author:yoshimi
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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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