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ユーリ・エゴロフ ~ ドビュッシー/版画、前奏曲集
ブラームスのピアノ協奏曲を弾いたときの力強く線のしっかりしたタッチとは打って変わって、エゴロフのドビュッシーは、絹のように滑らかなつややかさと、真綿のようにふんわりした柔らかさとで、独特の質感。
特に、弱音の繊細さとふわふわと漂う浮遊感が本当に心地良くて、このまま眠ってしまいそう。
エゴロフの明るく品の良い音色と美しい和声の響きは、ドビュッシーにとても良く映える。
今まで聴いたドビュッシー録音のなかでは、内省的・瞑想的なジャン=ロドルフ・カールスと並んで、とても好きなドビュッシー。

ドビュッシー作品のなかでも、一番好きな『版画/Estampes』が素晴らしく素敵。
まるでおとぎ話の龍宮城のようにファンタスティックな”塔(Pagodes)”。
もともとあまり好きではない”グラナダの夕べ(Soirée dans Grenade)”では、情熱的なフォルテより、密やかな弱音がとても印象的。異国情緒があまり強くなくて、こういう雰囲気の方が私好み。
最も好きな曲の”雨の庭(Jardines sous la pluie)”は、丸みのある響きが多彩で美しく、印象派の淡い色彩のパステル画を見ているみたい。今まで聴いた”雨の庭”のなかでも、とりわけ綺麗なソノリティ。

Debussy Egorov Estampes




『前奏曲集第1巻』でも、明るく柔らかな音色と淡い色彩感がとても綺麗。
特に緩徐系の曲は、穏やかでスタティックな雰囲気が漂ってまったり。

Debussy Preludi Egorov
6.雪の上の足跡(Des pas sur la neige)、10.沈める寺(La cathédrale engloutie)、8.亜麻色の髪の乙女(La fille aux cheveux de lin)



ドビュッシーが収録されているのは、EMIのBOXセット『The Master Pianist / Yuri Egorov』。
The Master Pianist / Yuri EgorovThe Master Pianist / Yuri Egorov
(2008/03/04)
Youri Egorov

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CDレビュー:ドビュッシー/DEBUSSY[湧々堂]
私の好きなジャン=ロドルフ・カールスとエゴロフのドビュッシーの両方を取り上げているとても珍しいレビュー。

tag : ドビュッシー エゴロフ

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白神こだま酵母でホームベーカリー食パン
ここ数年、ホームベーカリーでパンを作るときは、もっぱら「少しのイースト」パン。
ドライイーストパンなのに「天然酵母コース」で焼くので、時間はかかるけれど、種おこしが必要なホシノ天然酵母よりも手間がかからず、イースト臭も全然しない。
思い立ったらすぐに作れるところが何より便利。

それでも、独特の風味と味わいのある天然酵母パンの美味しさにはかなわない。
ものぐさな私は、天然酵母を自家製する気は全然ないので、もっぱらホシノ天然酵母を使っている。
昔使っていたパネトーネマザー粉末は、砂糖の多い甘いパン(お菓子パンとかパネトーネ)に向いている。
砂糖・油脂少量のリーンなパンが好きな私には不向きだった。

ホシノ天然酵母パン種を使いきってしまったので、近くにあるカルディコーヒーファームで「白神こだま酵母ドライ」を買ってみた。
「白神こだま酵母ドライ」は、ドライイーストのように乾燥させた粉末。保存は冷蔵庫必須。冷凍庫はNG。
強力粉250gを焼くときのイースト費用は、標準的な使用量で比べると、ホシノは40円くらい、白神こだまは70円超。

<白神こだま酵母ドライ>
白神こだま 酵母ドライ 10g*5包白神こだま 酵母ドライ 10g*5包
(2006/06/12)
秋田十條化成

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<白神こだま酵母ドライG>
ホームベーカリー対応のため、溶けやすい顆粒タイプ。
予備発酵不要で、直接粉に混ぜて使える。普通のタイプより少し割高。
カルディには置いていないので、オンラインショップで買わないといけない。

パイオニア企画 白神こだま酵母ドライG 200gパイオニア企画 白神こだま酵母ドライG 200g
()
パイオニア企画

商品詳細を見る

5g包が8個入った小分けパック(パイオニア企画)もある。


<参考情報>
白神こだま酵母について(特性)[㈱サラ秋田白神]
白神山地が育む奇跡の菌[一般財団法人セブン-イレブン記念財団]


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白神こだま酵母の使い方
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ホームベーカリーで「白神こだま酵母」を使って失敗したという話を、レビューやブログでかなり見かける。
発酵力が強い分、過発酵になりやすいらしい。
35℃のぬるま湯で予備発酵させるのも、ドライイーストに比べると一手間かかる。

(予備発酵)
予備発酵は、35℃のお湯に酵母を入れて、5分以上放置。(10分くらいが良いらしい)
放置している間に酵母液の温度が下がってしまうので、湯せん状態にしておく方法もある。(35℃前後に温度を保つのがちょっと難しい)

白神こだま酵母の付属のレシピには、予備発酵させなくても、パンが焼けると書いているし、それで上手く焼けた人もいる。
でも、予備発酵をさせた方が味が良く、ボリュームのあるふっくらとしたパンが焼けるという。(←パンレシピ作り方簡単手作りパン!の情報)

(酵母の使用量)
もともと酵母の匂いがかなり独特で、匂い自体も強いという。
規定量の2%よりも減らして少量使えば、匂いはさほどしなくなる。

(コース)
ドライイーストの「早焼き」または「食パン」コースのどちらでも焼ける。

(酵母の投入タイミング)
メーカーの標準レシピでは、「食パン」コースで、最初から予備発酵した酵母を他の材料と一緒に投入する。
でも、この方法で失敗することもある。
手捏ねの場合は、あまり捏ねすぎてはいけないようなので、最初からHBで酵母と一緒に入れると、生地の捏ねすぎにつながる。
最初のコネ終了後に、予備発酵した酵母を入れる方法もあり、これならコネ過ぎは避けられる。
最初に投入するなら、酵母量を規定の半分に減らすと過発酵は避けられる。


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白神こだま酵母を使った食パンレシピ
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白神こだま酵母使用ホームベーカリーで作るパン
基本レシピは、サラ秋田白神社のレシピ。
白神こだま酵母の使用量が、粉量の1.8%。(粉280gに対して、酵母5g)
ドライイーストの食パンコース使用。
この基本レシピでは、ホシノと同じように、油脂なしでOKなのが良いところ。

国産小麦(強力粉)… 280g
国産きび砂糖(喜美良)… 14g
自然塩 … 4g
白神こだま酵母ドライ… 5g
水またはぬるま湯(35℃) … 180g (そのうち、大さじ2杯のお湯は予備発酵に使う)

<早焼きコース使用>
超簡単 天然酵母米粉パンレシピ[cookpad]
私が常備している波里製米粉を使ったレシピ。なぜかイースト使用量が小麦パンで早焼するレシピ(↓)の半分。
このレシピを参考に、配合をかなり変えて作ったところ、ドライイーストで焼くのと同じように、ちゃんと焼けた。
「少しのドライイースト」パンに比べて、味や香りが特に良いというほどでもなくて、天然酵母を使った独特の美味しさは感じられず、普通に美味しい。
配合は、米粉165g、生おから15g、塩3g、砂糖8g、オリーブオイル小さじ1、白神こだま酵母ドライ小さじ1/2(粉の1%程度)、水150ccくらい。
予備発酵のお湯は35℃。お湯が多すぎたせいか(20ccくらい)、ぶくぶく発酵しなかったので、風味が弱かったのかも、

小麦の強力粉を使った早焼きレシピもある。
超簡単 天然酵母早焼きパン


<食パンコース使用>
ずぼら私の☆白神こだま酵母☆攻略HB [cookpad]
食パンコースで焼くレシピ。これは簡単。
酵母はドライイーストの場合と同量。
大匙2杯の35℃のお湯に入れて、かき混ぜてから10分放置。
夏場は冷水使用。
イーストが通常の使用量の半分なので、最初から材料と一緒に混ぜてコネても、過発酵しないのかも。
試しに2回焼いて、いずれもちゃんと焼けた。


『ホームベーカリーだから美味しい! 卵・乳製品・砂糖ゼロのしあわせ焼きたてパン』(濱田美里)
ホームベーカリーだから美味しい! 卵・乳製品・砂糖ゼロのしあわせ焼きたてパンホームベーカリーだから美味しい! 卵・乳製品・砂糖ゼロのしあわせ焼きたてパン
(2009/08/18)
濱田 美里

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関連情報:「卵も砂糖も乳製品も使わず、ホームベーカリーでパンを!」[濱田美里の天才食堂]
白神こだま酵母を使ってみる気になったのは、この記事を読んだので。
濱田さんのレシピブックはほとんど読んだけれど、パンやお菓子のレシピブックはデザインや写真が好きだし、レシピは私には使いやすいものが多い。
amazonの「なか見検索」で、基本の食パンレシピと酵母の使い方のコツを見ることができる。
予備発酵の方法と酵母投入のタイミングが、他のレシピとは少し違うのがポイント。(ただし、panasonicとMKのホームベーカリーに限定した方法)
濱田さんのブログにある掲示板の説明を読むと、”白神こだま酵母は何度も発酵・ガス抜き・捏ねをするというホームベーカリーの強い力には耐えきれないので、最初に生地の材料と一緒に酵母を入れるのではなく、最初の捏ねが終わった後の「ねかし」に入ったときに、酵母を「後入れ」すれば、失敗しない”ということらしい。

フランスパン風レシピを食パンコースで焼いてみた。
失敗するかもしれないので、粉量、酵母など、配合量は全て60%に減らして実験。
4時間後、無事にちゃんと焼き上がり。でも、粉が少なかったので、クラストがガチガチに硬く、ケースから取り出すのに凄く苦労した。
クラムは、リスドオルを使ってオイル無しなのに、ドライイーストパンと違って、しっとりキメが細かくて、ふわふわ。
フルーティな風味もしなかったし、凄く美味しいというほどではなかったけれど、よく噛んで食べると味わいがあってそこそこ美味しい気はする。
ホシノ天然酵母の方が、独特の風味がはっきり出てくる。
国産小麦を使ったり、他のレシピで作ってみたら、また違うのかも。


『ホームベーカリーで白神こだま酵母パン』(土屋利奈)
ホームベーカリーで白神こだま酵母パン (講談社のお料理BOOK)ホームベーカリーで白神こだま酵母パン (講談社のお料理BOOK)
(2011/02/25)
土屋 利奈

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このレシピブックも、白神こだま酵母を投入するタイミングが、濱田美里さんと同じ。なぜか酵母量が4gと少ない。


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ホームベーカリーレシピのまとめ
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ホームベーカリーで白神こだま酵母を使って焼く方法は数通り。
標準レシピは、サラ秋田白神のホームページにあるレシピ。
なぜかこれで上手く出来ない場合は、コース、酵母の量や投入するタイミングを変えれば上手く焼ける。
標準量で予備発酵させた酵母を使う場合は、発酵時間の短い「早焼き」コースで最初から投入するか、「食パン」コースの最初のコネ終了後に酵母を投入する。
酵母量を減らす(ドライイーストと同量くらい)場合は、予備発酵させた酵母を「食パン」コースに最初から投入する。

1)ドライイースト-食パンコース
   標準レシピ。酵母量は粉の1.8%くらい。
   35℃のお湯で予備発酵後、最初から他の材料と一緒に酵母投入。

2)ドライイースト-食パンコース ⇒ 実験済み
   標準レシピ。酵母量は粉の1.8%くらい。
   35℃のお湯で予備発酵後、最初のコネ終了後に酵母投入。

3)ドライイースト-食パンコース ⇒ 実験済み
   酵母量はドライイーストの場合と同じく、粉量の1%程度。(標準レシピの半分くらい)
   35℃のお湯で予備発酵後、最初から他の材料と一緒に酵母投入。

4)ドライイースト-早焼きコース ⇒米粉100%パンで実験済み
   標準レシピ通り、酵母量は粉量の2%弱。(米粉100%の場合は、なぜか半量でもちゃんと焼けた)
   35℃のお湯で予備発酵後、最初から他の材料と一緒に酵母投入。

5)ドライイースト-早焼きコース ⇒強力粉では実験せず。そのうち実験する予定。
   標準レシピ通り、酵母量は粉量の2%弱。(米粉100%の場合は、なぜか半量でもちゃんと焼けた)
   35℃のお湯で予備発酵後、最初から他の材料と一緒に酵母投入。

2,3,4の方法で、粉量は全て160g、油脂なしで実験してみた。(使用HB:パナソニックSD-BM101)
全粒粉・小麦ふすま・オーツ麦を入れたり、リスドオル、米粉を使ったので、出来上がりは、フランスパンやハード食パンみたいにクラストはガリガリに硬い。
クラムは(ホシノ天然酵母パンほどではないけれど)きめ細かくしっとり。
油脂・砂糖少量のどっしりしたパンが好きなので、高さはでなくても、ペチャンコにならずに、一応山型に焼けていさえすればOK。
どれも、フルーティな風味のふわふわパンではないけれど、味噌っぽいとか、酸味が強いということはない。
強力粉は、たまたまストックしていたカメリア。もともと小麦の味があまりしない粉なので、美味しいと思えなかったのかも。
キタノカオリやはるゆたかブレンドとかの国産小麦を使えば、小麦の味がしっかり味わえて美味しくなりそう。

ついでに、発酵力が強いので、試しに小さじ1/4の酵母を食パンコースで最初から投入して焼いてみたけれど、これは膨らまずペチャンコ。
米粉を少し混ぜたので、水分が多めで生地がダレ気味だったのが影響していたとしても、やっぱり酵母が少なすぎた。
今度は、粉160gに対して小さじ1/2の酵母に増やして焼きなおしてみると、こんもりと山形に膨らんで焼き色も綺麗な茶色。
食パンコースで焼く場合は、少なくとも普通のドライイーストパンと同量の酵母が最低限必要。
ただし、酵母量が少ないと、そんなにフルーティな香りはしなくて、風味が特に良いというわけではない。
それでも、35℃のお湯で予備発酵させるのが面倒とはいえ、ノンオイルの天然酵母パンが4時間で焼けて、油脂ゼロなのにクラムがしっとりしているのが良いところ。


【2015.3.18 追記】
酵母量を規定の半分に減らして、春よ恋とイーグルでも作ってみた。使ったHBは、最近買ったタイガーのKBH-V100。

<春よ恋:食パンコース>
念のためバターも少し入れたのに、ほとんど膨らまず。
発酵不足で、焼き色が白く、食べたら粉っぽくてマズイ。
トーストしたら、クッキーみたいで美味しい。でも、パンとしてはNG。
カメリアを使ったパナ機では上手く焼けたのに。
国産小麦だと、酵母は標準レシピどおりの量を使わないと膨らみにくいのかも。

<春よ恋:食パンコース2>
前回は、白神こだま酵母の量を測り間違っていたらしく、酵母が少なすぎたのに気が付いた。
今度は、粉175gに対して、酵母を2.1gくらい入れて焼いてみた。バター、スキムミルクなし。水は126ccと多め。
やっぱり膨らみは悪いけれど、焼色はわりと濃くなり、クラムは目が詰まっていても、ふかふか柔らかくて食べやすい。
ドライイーストを使うときと同じ酵母量(1.2%くらい)でも、一応ちゃんと焼けるし、”春よ恋”はほんのり甘みがあってクラムは美味しい。

<イーグル:フランスパンコース>
こちらも成功!こんもりと膨らんで、焼色もこんがりと濃くて、クラストパリパリ。
オリーブオイルと砂糖を少量入れておいたことと、イーグルなので膨らみやすかったのかも。
クラムは、オリーブオイルを入れたのにしっとり感はやや少なく、ふんわりとしてふかふかした感じ。
春よ恋なら、上手くやけるかどうか、そのうち実験してみよう。

参考にしたレシピは、”教えて!goo”の回答「国産小麦+白神こだま酵母・・・」
回答者の方は、パナの古い機種を使っているので、フランスパンコースが6時間。
新しいパナ機だと5時間に短縮されているし、付属レシピも変わっている。
タイガーはフランスパンコースでも4時間と短い。

フランスパンコースでは何度も焼いているけれど、膨らみはパナ機の方が良い。クラムが美味しいのはタイガー。
10回近く使った限りでは、白神こだま酵母パンには、ホシノ天然酵母のように風味が良さは感じないけれど、油脂・スキムミルクなしでも、ふかふかと柔らかく焼けるし、味は美味しい。
難点は、酵母を予備発酵させるのに手間がかかる(35℃くらいの湯温をキープするのが面倒)、標準レシピ量で使った場合はホシノよりも割高、酵母量と投入方法によって出来上がりが安定しないこと。
ただし、標準量の半分くらい(ドライイーストと同量)でいつも上手く焼ければ、コスト的にはホシノより若干高い程度で、思い立ったときにすぐ作れるところが良い。
粉量の1%の酵母量で安定して焼き上がって、ホシノと同じくらいに美味しいと思えれば、リピートするかも...。ちょっと悩ましい。

【2015.7.6 追記】
イーグル175g、酵母2g、水、塩、砂糖、黒ごま(すりごま)、松の実を入れて、油脂・乳製品ゼロで、タイガー・食パンコース使用。
気温が上がってきたので、冬場とは違って、予備発酵のときに温度が下がらないように湯せんしなくても良くて、手間がかからない。
膨らみはあまり良くなくて、目が詰まって重たいけれど、クラムは油脂ゼロでもふかふか。
黒ごまの甘みと松の実独特のさわやかな風味、こだま酵母のフルーティな薫りもほんのり。味も風味も良い。
かなり薄めにスライスして(ライ麦パンくらいの薄さ)、しっかり焦げ目がつくくらいトーストすると、カリカリととっても美味しい。

ちなみに、ホームベーカリーで作ったパンはどれも、冷凍状態のまま食べても、小麦の味が感じられて美味しい。
(普通に食べて比較的美味しい)乳化剤・イーストフード不使用のパスコの「超熟」とか、1斤300円程度の袋入り食パンでも、冷凍状態だとクラムが全然美味くない。
本当に美味しいパンを見分けるには、冷凍状態で食べてみると良いのかも?

【2015.11.12 追記】
白神こだま酵母を粉量に対して1%くらいしか入れずに、タイガーHBの「熟成食パン」コースではるゆたかブレンド100%の食パンを焼くと、普通に膨らんで、ふかふかで少ししっとり感のある食パンになる。
でも、常温保存だと、時間が経つにつれ、ふかふかしているけれど、水分が少なくなってパサっとした感じになる。(油脂類を入れていないので、なおさら乾燥しやすい)
酵母量が少なくなると、保水力が落ちて、常温保存だとパサつくのではないかという気がしてきた。
冬以外は冷凍保存していたので、今度、規定量の酵母で焼いた食パンを常温保存して食べてみれば、酵母量による違いかどうかわかるはず。

【2016.3.9 追記】
白神こだま酵母でHB食パン
天然酵母コースで焼いたレシピ。粉230gに対して、白神こだま酵母3g(1.3%)。
この酵母量なら、食パンコースでも普通に焼ける。長時間発酵させた方が美味しいのだろうか?比較実験要。

tag : ホームベーカリー

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アンデルシェフスキ ~ バッハ/イギリス組曲集(第1・3・5番)
アンデルシェフスキの新譜『バッハ:イギリス組曲集』が、amazonの当初の発売予定日よりも1週間遅れてやっと到着。
アンデルシェフスキが納得のいくまで何度も録り直したというだけあって、今まで聴いた彼のアルバムの中でも最も完成度が高く(と思う)、シマノフスキのピアノ作品集と並んで私のベスト盤。
それに、今まで聴いてきたイギリス組曲の録音のなかでも、(第1・3・5番に関しては)ケンプ、シフ、ペライアよりもはるかに好きで、やはりマイベスト。

English Suites ImportEnglish Suites Import
(2014/11/11)
Anderszewski

試聴ファイル(warnerclassics.com)


ステレオで聴くと、録音音質が良いせいか、アンデルシェフスキの音が本当に美しい。
残響は短かすぎず長すぎず。粒立ち良く芯がしっかりしたやや硬質の音なのに、響きに丸みがあってとても耳ざわりが良い。
温度感の低いしっとりとした潤いと、ややパステル調の淡さのある上品な色彩感がとても美しくて、密やかで品の良い雰囲気を醸し出している。
何より、アンデルシェフスキの精緻で洗練された多彩なタッチと、声部が鮮やかに聴き分けられる音色の色彩感が素晴らしくて。
さらに旋律の横の流れも滑らかで、絡み合う声部には立体感があり、細かな抑揚で表情豊か。さり気なく散りばめられた装飾音が格好良くてスタイリッシュ。
以前よりも、ノンレガートが柔らかくまろやかになり、レガートのように滑らかに流れる旋律がとても綺麗。
速めのテンポと歯切れの良いタッチで、軽快で生き生きとした躍動感が気持ちよく響く。
特に、縦線の和声の美しさと、横線の旋律の滑らかな流れとのバランスが絶妙。
どの声部も鮮やかに分離され、滑らかな流れに乗って互いに絡み合っていき、縦の線を全然強調していないのに、和声の響きも綺麗。
テンポは速すぎることなく、よくコントロールされているので、軽やかなタッチのわりに軽くなりすぎることなく、心落ち着くような明るさと躍動感が気持ちよい。
羽毛にくるまれているような質感の弱音には密やかで陰りがあって、微妙なニュアンスが漂う。
『フランス組曲』と比べて構築的な堅牢さのある『イギリス組曲』にしては、このソノリティと荘重・厳粛さを押し出さない演奏とが相まって、語りかけてくるようなパーソナルな音楽に聴こえる。
「本質的にコスモポリタン」とアンデルシェフスキの言葉どおり、現代的というよりも、「コスモポリタン」という言葉が良く似合うバッハ。

第1番は、アンデルシェフスキの明るく柔らかなソノリティがとても引き立っている。
この曲はあまり好きではなかったのに、かなり好きになってしまった。
特に、”Allemande”はペダルを使った響きの明るさと美しさにはうっとり。優しく包みこまれるような感覚がとても心地良い。
速いテンポのスタッカートで弾く”Courante II”の軽快さも鮮やか。

曲として一番好きなのは第5番だけれど、CDで聴いてみると、第3番の方が曲のつくり(声部の組み立て)が立体的に思えるせいか、アンデルシェフスキのピアニズムが際立って聴こえる。
"prelude”は速いテンポながら、タッチが精緻で音色の色彩感や響きのバリエーションが目まぐるしく移り変わる。
リズミカルなノンレガートであっても、カスケードのように流れる旋律が流麗。タッチの多彩な変化と細かな起伏がとても表情豊か。
哀感を帯びた”Allemande”も、情感過多になることなく、軽やかな音色で淡く透き通るような叙情がさらさらと流れていく。
抑制のきいた軽やかさとリズミカルなタッチの”Courante”は、強弱と音色を微妙に変えながら、柔らかさと力強さが交錯する。
”Sarabande”では、一転してタッチが力強く深くなり、陰翳が強く悲愴感漂う。
”Sarabande”の重苦しさから解放されたように、”Gavotte”ではスタッカートが軽やかで密やか。
終曲”Gigue”では力強いタッチと速いテンポながら、音色の色彩感の違いと(レガートような)滑らかなノンレガート。
勢い良い”Gigue”は曲としてはあまり面白いと思うことはなかったけれど、アンデルシェフスキで聴くと流麗なのに立体感があって、意外に面白く聴ける。
第5番の演奏も好きなのだけど、聴けば聴くほど第3番が好きになってしまったくらい。
でも、第5番を聴くと、やっぱりこの曲もとても好きなので、結局アンデルシェフスキの演奏を聴くと、どの曲も素晴らしく思えてしまう。
特に好きな第2番は今回は録音していないので、第4番・第6番と一緒に早く録音して欲しいなあ。


アンデルシェフスキに関する記事[水戸芸術館,「VIVO」2009年5月&6月号]
アンデルシェフスキが住んでいるのは、ポルトガルのリスボン。
欧州大陸の辺境(?)の国みたいなポルトガルは「コスモポリタン」なのだそうで、「本質的なコスモポリタン」のアンデルシェフスキとは肌が合うらしい。


tag : バッハ アンデルシェフスキ

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佐藤優 『紳士協定-私のイギリス物語』
本屋さんで平積みになっていたのでたまたま見かけたのが、佐藤優の新潮文庫新刊『紳士協定―私のイギリス物語』
少し読んでみると、これがとっても面白くて早速購入。

紳士協定: 私のイギリス物語 (新潮文庫)紳士協定: 私のイギリス物語 (新潮文庫)
(2014/10/28)
佐藤 優

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紳士協定―私のイギリス物語紳士協定―私のイギリス物語
(2012/03)
佐藤 優

商品詳細を見る
単行本の表紙の写真にある犬は、グレン少年の愛犬で友達でもある”ジェシー”をイメージしたもの。
文庫本の表紙は、ロンドンの建物の写真。私には単行本の表紙の方がグレン少年を連想させるし、雰囲気的にも好き。

【佐藤 優『紳士協定―私のイギリス物語―』刊行記念対談】日本からは見えないイギリス(林 望×佐藤 優)[新潮社ウェブサイト]


佐藤優の政治論や組織論とかはあまり興味がないので、持っている本は主に自伝的ノンフィクションと読書論・書評集で、『獄中記』、『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて』、『自壊する帝国』、『甦るロシア帝国』、『私のマルクス』、『インテリジェンス人間論』、『読書の技法』。

『紳士協定―私のイギリス物語』は、外務省時代のイギリス研修生活をつづったもの。
この本のメインは、研修そのものよりも、ホームステイしたごく普通のイギリス労働者階級の家族との交流と、イギリス社会を巡る同僚外交官との対話。
特に、その家族の次男グレン少年との対話を通じて、イギリスのグラマースクールでの教育や階級社会の現実が伝わってくる。
『紳士協定』というのは、佐藤氏とグレン少年との”取引”-佐藤氏がグレン少年のラテン語の勉強を見てあげるのと交換に、グレン少年は佐藤氏に正しい英語の使い方を教えてあげる-をしたので、それを”紳士協定”と表現したもの。

淡々とした筆致ながら、英国での英語研修所とロシア語研修をうけた陸軍学校の様子や、ホームステイ先の家庭(中流階級の下クラス)の様子を通して、英国の階級社会や食生活、英国人の日本人観など、興味を引かれる内容がたくさん。
同じく研修生のキャリア外交官・武藤氏との会話からも、英国の階級社会論や外務省内のルールとかが垣間見える。

英国の家庭料理やレストラン・パブで出される料理のなかでは、ヨークシャープディングとライスプディングはとっても美味しそう。これは自分でも作れるはず。でも、キドニーパイは私もパスしたい。
本書の大半を占めるグレン少年との会話やロンドンめぐりの様子は、ドラマティックなところは全然ないのに印象の残る場面が多い。
たぶん、グラマースクールの学生のグレン少年が、日本の大学生並みに知性的で利発なので、会話にも単なる雑談を超えた奥行きがあるのと、友達のいないグレン少年が佐藤氏がとても好きで一緒にいるのがとても楽しそうで微笑ましいから。
なぜグレン少年が母親の作ったヨークシャープディングが嫌いなのか、佐藤氏が語った”耳なし芳一”がとても恐くて英語版の本を買ったこと、中華料理よりも韓国料理が気に入ったとか、etc.。
ロンドンの本屋さんめぐりも面白い。海外に行ったときは、私も地元のスーパーマーケットと本屋さんを探検してみるので、佐藤氏が本屋さんで原書を探すシーンは私も共感。

『戦場のメリークリスマス』をグレン少年と一緒に見た部分は、かなりページを割いている。
この映画は見ていないのであまり興味を引かれることがなく、それよりも印象に残ったのは、グレン少年が付き合っている彼女との交際の悩みごとを打ちあけたときに、佐藤氏が語ったゴールズワージーの『林檎の木(The Apple Tree)』の解釈。
この小説は高校時代に読んだし、『サマーストーリー』という映画にもなっている。
林檎の樹 ジョン・ゴールズワージー著 [基礎科学研究所]

エウリピデスの悲劇が引用されているこの小説は、佐藤氏によると、「ギリシア人の運命観を現代のイギリス人にわかりやすく伝えている」ものだという。
昔読んだときは、単に田舎の少女と都会の若者のひと夏の恋物語とその残酷な結末...としか思っていなかったので、ギリシア悲劇的な「運命のめぐり合わせ」を語ったものだとは全然わからなかった。
佐藤優のノンフィクションでは、彼が読んだ本のことがたびたび出てきて、なるほどこういう読み方があるのか~と思うことが度々。読書論や読書案内のなかでは、立花隆と同じくらいに私にはいろいろ知ることが多い。

tag : 佐藤優

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2015年にメモリアルイヤーの作曲家
この時期になると、いつもチェックするのが、翌年メモリアルイヤーを迎える作曲家。
例年どおり、情報源は以下の2つのサイト。

クラシック作曲家生没記念年一覧

作曲家記念年検索/Composer Anniversary Year Search
メモリイヤーが検索できるという、とっても便利なサイト。
暦年だけでなく、検索する暦年の間隔(10、50、100年単位)も設定できる。
今のところ、登録データは100人分。生年・没年は検索結果に表示されないので、自分で調べる(計算する)必要あり。

<2015年>
生誕500年 NERI (1515-1595)
生誕400年 CORBETTA (1615-1681)
生誕400年 GIBBONS (1615-1676)
生誕350年 JACQUET (1665-1729)
生誕200年 FRANZ (1815-1892)
生誕150年 DUKAS (1865-1935)
生誕150年 GLAZUNOV (1865-1936)
生誕150年 NIELSEN (1865-1931)
生誕150年 SIBELIUS (1865-1957)
生誕100年 DIAMOND (1915- )
生誕100年 LILBURN (1915-2001)
没後100年 TANEYEV (1856-1915)
没後100年 SCRIABIN (1872-1915)
没後100年 GOLDMARK (1830-1915)
没後50年 COWELL (1897-1965)

ジャンルを限らなければ、一番ポピュラーなのがシベリウス、次は(ちょっとマイナーな気がしないでもない)ニールセンだろうか。
ピアノ音楽なら、大物はスクリャービン。
シベリウスとニールセンは、ピアノ作品は少し書いているけれど、好きな曲といえば、シベリウスの「ヴァイオリン協奏曲」くらい。
スクリャービンは、チャイコフスキーやラフマニノフのようなロシア的な濃厚なロマンティシズムとは違った作風なので、わりと好きな作曲家。
ピアノ・ソナタ全集や独奏曲は、来年にリイシュー盤や新譜が出てくるに違いない。


スクリャービンは、作曲年代によって作風が極端に違う。
ピアノ・ソナタなら、初期に書いた第1番~第3番は、和声を濃密にしたショパンみたいにとてもロマンティック。
4番は作風が変わっていく過渡期の作品で、独特の浮遊感と明朗な作風で、このソナタまでは普通に聴ける。

第5番以降は幻想的・神秘的な作風が徐々に濃くなっていく。
第3番と第9番「黒ミサ」を初めて聴いたのは、ソコロフのライブ録音(1988年、ペテルブルク)。
初期の作品の第3番と、晩年の第9番「黒ミサ」を続けて聴くと、その作風の変わりようにびっくり。
第3番は、むせかえるような濃密なロマンティシズムが叙情美しく、それに対して不気味な副題のついた第9番は、数あるピアノ作品のなかでも、オカルティックな神秘性が極めて特異な曲。
最初聴いたときは全く受け付けなかった「黒ミサ」なのに、最近聴きなおしてみると全く抵抗無く聴けるようになっていた。
この特異な作風がなぜか妙に魅惑的。

Sokolov - Scriabin Sonata n.3 op.23.wmv


Sokolov - Scriabin Sonata n.9 op.68.wmv



今年発行された『スクリャービン: 晩年に明かされた創作秘話』
本屋さんでパラパラと読んでみたけれど、伝記のように筋道立てたストーリーではなくて、エピソード集のようなスタイル。(私にはとても読みにくかったので、未購入)

スクリャービン: 晩年に明かされた創作秘話スクリャービン: 晩年に明かされた創作秘話
(2014/09/16)
レオニード・レオニードヴィチ サバネーエフ

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tag : スクリャービン ソコロフ

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オリヴァー・サックス『音楽嗜好症 - 脳神経科医と音楽に憑かれた人々』 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
『妻を帽子とまちがえた男』などの医学ノンフィクションで有名な脳神経科医オリヴァー・サックスの著作『音楽嗜好症 - 脳神経科医と音楽に憑かれた人々』(2010年)の文庫版が、8月にハヤカワ・ノンフィクション文庫から発売されていた。

先日本屋さんで本棚を眺めていて、文庫版を発見。
私は数年間、単行本発売時にすぐに購入した。
文庫化されても1000円以上と結構高いけれど、価格に見合っただけの充実した内容。
音楽が関わっている脳神経障害の症例が詳しく説明されていて、当時耳鳴りに関する情報をいろいろ調べていたところだったので、本当に役に立った本だった。
医学もの自体に興味がなくとも、音楽好きの人なら、音楽と脳神経の予想もつかない奇妙な関係に驚くのではなかろうかと。

サックスの著作のなかで、私が一番興味を引かれた症例がたくさん載っていたのが、本書と『火星の人類学者』(これもハヤカワ文庫)。
昔からハヤカワ文庫は、SF・NV・NF文庫をよく読んでいたけれど、特に最近はノンフィクションのなかでも科学ものが充実しているような気がする。

音楽嗜好症: 脳神経科医と音楽に憑かれた人々 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)音楽嗜好症: 脳神経科医と音楽に憑かれた人々 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
(2014/08/22)
オリヴァー・サックス

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「第1部 音楽に憑かれて」
音楽がもたらす病的な症例:突発性音楽嗜好症、音楽発作、音楽誘発性癲癇、脳の中の音楽、脳の中の虫、音楽幻聴

音楽が耳鳴りのように耳や頭のなかで鳴り続ける”音楽幻聴”。


「第2部 さまざまな音楽の才能」
音楽を知覚する機能や他の感覚との関係:失音楽症、絶対音感、蝸牛失音楽症、片耳による立体知覚、音楽サヴァン症候群、音楽と視覚障害、共感覚と音楽

”音楽サヴァン症候群”の驚異的な症例は、2000曲のオペラを記憶している「生き字引き」のマーティン。

「第3部 記憶、行動、そして音楽」
音楽の持つ治癒力と音楽療法:音楽と記憶喪失、失語症と音楽療法、運動障害と朗唱、音楽とトゥレット症候群、リズムと動き、パーキンソン病と音楽療法、幻の指(片腕のピアニスト)、音楽家のジストニー(筋失調症)

”音楽と記憶喪失”の症例は、脳損傷の後遺症のために7秒しか記憶がもたなくなった音楽学者で合唱指揮者のクライヴ。

「第4部 感情、アイデンティティ、そして音楽」
音楽と精神・神経性疾患との関係:音楽の夢、音楽に対する無関心、音楽と狂気と憂鬱、音楽と感情、音楽と側頭葉、ウィリアムズ症候群、認知症と音楽療法

”第22章 小筋肉のアスリート-音楽家のジストニー”は、ピアニストのレオン・フライシャーのお話。
1960年代前半に、右手の指がジストニー(ジストニア)で動かなくなってしまったので、ピアニスト活動を断念。
その後左手だけで演奏するようになったけれど、1980年代に新しい治療法であるボトックス治療(ボツリヌウ毒素をごく少量投与する)によって、再び両手でピアノが弾けるようになるまでに回復した。


<サックスの著作に関する過去記事>
”脳の虫”と”音楽幻聴” ~ オリヴァー・サックス著『音楽嗜好症(ミュージコフィリア)- 脳神経科医と音楽に憑かれた人々』より
”音楽家のジストニー”&”認知症と音楽療法” ~ オリヴァー・サックス著『音楽嗜好症(ミュージコフィリア)- 脳神経科医と音楽に憑かれた人々』より
オリヴァー・サックス著『音楽嗜好症』 ~ 「音楽と記憶喪失」
音楽サヴァン症候群 ~ 2000曲のオペラを記憶している「生き字引き」

オリヴァー・サックス著 『火星の人類学者-脳神経科医と7人の奇妙な患者』

オリヴァー・サックス著『妻を帽子とまちがえた男』 ~ 「ただよう船乗り」

tag : オリヴァー・サックス

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海老沢泰久『美味礼讃』
『美味礼讃』といえば、 ブリア=サヴァランの著作が有名。
原題は、『Physiologie du gout ou Meditations de gastronomie transcendante』(味覚の生理学、或いは超越的美食学の瞑想)。
ブリア=サヴァラン(ジャン=アンテルム)[菓子職人・美食家列伝]

どこで見つけたのか覚えていないけれど、同名のタイトルで出ているのは、辻静雄の半生を描いた海老沢泰久の伝記的小説『美味礼讃』。
フランス料理とか美食に特段興味はなくても、次から次へと出てくる登場人物もエピソードもとっても面白くて、一気に読めてしまう。.再読しても、やっぱり面白い。
著者が辻静雄本人にインタビューした回数は50回に及び、多数のエピソードも小説を読んでいるような臨場感があり、”伝記的小説”と言った方が良い。

美味礼讃 (文春文庫)美味礼讃 (文春文庫)
(1994/05)
海老沢 泰久

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冒頭は、辻静雄がプライベートに開催している豪華な晩餐会。
辻静雄の料理学校の教官たちが料理、サービスするもので、食材は言うまでもなく、セッティングや什器、家具にいたるまで、超一流のものを選りすぐってもてなす様子が細かに書かれている。
面白いのが、招待客の面々。スノッブな外交官夫妻もいれば、(新校舎建設時に融資してくれた)懇意の銀行支店長とその友人の大学教授もいて、彼らのやりとりが結構笑える。

その後の章からは、辻静雄がフランス料理と出会ってから、調理師学校を設立して、”本物の”フランス料理を知るために数ヶ月間にわたる米国・欧州でフランス料理研究家を訪問したり、一流レストランでの食べ歩き修行。
帰国してからは、調理師学校で自らフランス料理法を教え、フランスから現役の一流シェフを講師として招聘したり、ポール・ボキューズたちによる料理講習会のイベントを開催する。
その傍ら、フランス料理に関する膨大な書籍を蒐集し、本場のフランス料理と一流レストランを紹介する著書を次々に出版。
調理師たちを養成していきながら、日本に”本物の”フランス料理を紹介していく道のりが描かれている。
フランス料理だけでなく、中国料理と日本料理の調理師を養成する話もいろいろ盛り込まれていて、これもフランス料理の話と同じくらいに面白い。


<調理師学校設立と米国・欧州でのフランス料理修行>
卒業後に就職した新聞社を辞めて、花嫁修業が目的の料理学校の跡取りとなり、新しく設立した調理師学校では”本物の”フランス料理を作れる料理人(講師)が日本にはいないことがわかって、フランス料理を知るために米国や欧州へ妻と共に数ヶ月間の旅にでる。
料理学校の経営者で校長を務めるのは、日本料理の料理人である舅。
この人が太っ腹で、今でも結構な大金の500万円を娘婿と娘の海外修行のために、ポンと出してくれる。

米国やフランスで初めて出会ったフランス料理界の人たち-評論家や研究者、料理雑誌編集者に、三ツ星レストランのオーナーに超一流のシェフなど-は、はるばる極東の日本から訪れた若い夫婦に、フランス料理や手作り料理をご馳走したり、次は誰に会えばよいのか紹介してくれたりと、なんと親切なこと。
フランスの三ツ星レストラン”ピラミッド”のオーナーであるマダム・ポワンは、彼らを数ヶ月間ゲストハウスに泊めて、本当のフランス料理の味を覚えさせるために、滞在中は毎日シェフたちが作った料理を食べさせる。
その間の滞在費も食事・ワイン代も一切請求せず、まさに無料研修。
でも、いかに贅沢で美味な料理でも、日本人にとっては生クリームとバターたっぷりの料理はコッテリしすぎて、次から次へと食べていると、胃袋がはち切れそうになり、気分が悪くて、脂汗が流れてくる。
「食べるということがこんなに苦痛なものだとは想像もしていなかった」。
それでも食べ続けるのは、フランスへ来たのは遊びのためではなく、本物のフランス料理の味を覚える勉強のため。
このフランス滞在中にポール・ボキューズと知り合って、意気投合。ボキューズは、その後も辻調理師学校のために様々な助力をしてくれることになる。

フランスの有名レストランを食べ歩いたエピソードで一番印象に残ったのは、片田舎にあってくたびれた居酒屋みたいな外観の二ツ星レストトラン。
料理も地味な店構えに似ていて、パリのレストランで出すような豪華で凝ったものではなく、とてもシンプル。
40センチもあろうかという巨大なオマールエビを真っ二つに割って焼いて、上から溶かしバターをかけただけの料理とか、そば粉を水とバターで溶いて焼いただけのクレープとか。
これが信じられないくらいに美味しい! 食事代はパリの超一流レストランの数倍だが、それだけの値打ちがあると思えるくらいに素晴らしい料理だったという。


<調理師学校での調理師教育と教官育成>
辻静雄の調理師学校といえば、子供の頃にみたTVCMの「僕は料理学校の東大に行く」というキャッチフレーズのコマーシャルがすぐに思い浮かぶ。
このコピーを書いた人が誰なのか知らないけれど、本書を読むと、他校よりも高額な授業料でも、入学者がどんどん増えていくのは、”本物の”フランス料理を教えるという授業内容がしっかりしているから。
「料理学校の東大」というのも大げさな表現ではないとわかる。

授業料は高いけれど、教育内容が飛びぬけて良いので、学生がどんどん集まってくる。
辻静雄がフランス滞在中に学んだフランス料理の料理法や、食べ歩いた有名レストランの料理を紹介した本を次々に出版し、それが他校の教科書に使われることが、調理師学校の宣伝にもなっていた。
辻のように海外での豊富な経験と人脈を持っていない他校の経営者には、とても真似のできない教育だった。
東京校設立を役所に申請しても、業界団体の調理師学校協会から妨害を受けて認可がなかなか下りず。
しかし、、それがフランス校設立へ繋がり、調理師学校は順調に拡大・発展していく。

調理師学校の学生や教官にまつわるエピソードもいろいろ。
フランス料理、中国料理、日本料理の各部門をまかせられる人材に、料理の真髄を習得させるための修業法がそれぞれ違っている。
フランス料理は、辻静雄自らが教官となり、後には、フランス人の一流シェフを教官に迎える。学生は、フランスの有名レストランでの研修や、後に設立されたフランス校で学ぶこともできる。
教官たちにも、最新のフランス料理を知るために、フランスの有名レストランを食べ歩くという研修がある。

中国料理は、日本料理から転向した卒業生の新米教官が台湾修行。
辻は中国料理のことはわからないので、この教官に一切まかせてしまう。
この人が極めて有能な人材だったので、すっかり本場の中国料理をマスターして戻ってきた。

日本料理は、フランス料理専門の辻静雄には手薄な分野。
たまたま米国の料理雑誌の編集長が来日したときに案内した吉兆で、編集長が不思議に思った料理の作り方に対して彼は全然説明できなかった。
自分が日本料理について知らないことを恥じた辻は、それから大阪にいるときに時間があれば吉兆に通いつめる。1年のうち述べ7ヶ月ほど。
吉兆も、これだけ通ってくる客はいなかったので、料理人のなかから数人を辻専属として、毎回違った料理を出していく。
この時は、日本料理の教官も同伴して、辻静雄は質問攻め。なぜ吉兆のごま豆腐は真っ白なのか、お吸い物のはまぐりがやわらかいのはなぜか、とか。
その質問に答えられなかった教官は、何度も試作してはいろんな料理法を試して、ようやく答えを見つける。


<TV番組『料理天国』>
辻調理師学校が提供していたTV番組『料理天国』のエピソードも載っている。
この番組は子供の頃に良く見ていた。私の記憶では、毎週土曜日の6時から毎日放送で放映していた。
司会が西川きよしと芳村真理、食べるのが専門のゲストとして、レギュラーが元力士の龍虎。他にも、松岡きっこや、毎回変わるゲストがいたかも。
番組はフランス料理が多く、調理を担当していたシェフは辻調理師学校教官の小川先生。
本書では、その小川先生をモデルにしたらしき「小宮哲夫」という教官にまつわる話もいろいろあり、小説の終盤では、彼が独立してフランス料理店を出すエピソードが載っている。
小説では、このお店は大失敗に終わる。こういう顛末だったのかとちょっと驚いたけれど、小川先生について調べてみると、このエピソードはどうやらフィクションらしい。(<参考情報>参照)
※本書のモデルは辻静雄でも物語は架空もの..という但し書きがついているので、他にもフィクションの部分がいろいろあるだろうから、ノンフィクションの伝記ではなく、”伝記的小説”と思って読んだ方が良さそう。



<「フランス料理講習会」>

調理師学校のエピソードの中でも、ハイライトは、フランスで先進的な料理人ポール・ボキューズなど3人の超一流シェフを招聘して行った「フランス料理講習会」。
日本のフランス料理のシェフたちから応募が殺到し、ホテルオークラの料理長は講習会で行う実演調理のアシスタントに志願してくるというから、凄い。
今では、フランスへ料理修行することも珍しくはないけれど、当時は、海外渡航はもちろん、日本で有名なフランス料理のシェフから料理法を直接学べる機会はなかった。
たとえば、当時日本では使われていなかったフードプロセッサーを、ボキューズたちがフランスから持ちこんで調理実演すると、手間隙かけてすり鉢で摺っていた日本人シェフたちから、購入方法を教えて欲しいと休憩時間に問い合わせが殺到。
料理法だけでなく、フランスでは普通に使われている調理器具さえも、日本では珍しいものだった。

調理師学校は順風満帆だったけれど、辻静雄の方はあまりの美食がたたって、健康診断で尿酸値が危機的レベルになったため、医師から食餌制限を申し渡される。
贅沢な食材をふんだん使った油脂たっぷりの料理を日常的に食べていたから、無理もない。

最初から最後まで、興味がつきないエピソード満載で、日本のフランス料理と調理師教育の歴史を知ることもできる。
フランス料理だけでなく、中国料理・日本料理に関するエピソードも多数盛り込まれているので、そういうプロの料理の世界には全く縁のない私でも、何回読み直してもいつも面白くて一気に読んでしまう。



<参考情報>
辻調グループとは/創設者 辻静雄[辻調グループ 学校案内サイト]

株式会社キッチンエヌ 代表取締役 中村新インタビュー
「母校、辻調理師学校の先生に、小川忠彦という人がいました。TBSの「料理天国」というテレビ番組にも出演していた花形シェフ。彼が学校を辞めて独立することになり、シェフとして補佐役を頼まれたんです。
今まで東京にしかなかったようなメジャーレストランが、関西で初めてできるということで業界大注目の中、大阪・北新地の一等地に店は完成、スタッフも揃い、いよいよ開店、というところで小川先生が癌で亡くなってしまいました。あまりに突然のことだったので涙も出ませんでした。店のスポンサーだった会社の社長が「君がやりなさい」と全面支援していただき、お店は開店。がむしゃらに頑張って、お店は高い評価を得ることができました。」
※これを読むと、小説に登場する「小宮哲夫」の独立話とはかなり違っていて、小説の方はかなり脚色されたフィクション。

米国を代表する美食作家M.F.K.フィッシャー[朝日新聞DIGITAL]

辻静雄のこと―食を文化にした、フランス料理の伝道者[中嶋英雄のグルマンライフ]

このブログ記事で紹介されていた「辻静雄」のムック本。

辻静雄 (KAWADE夢ムック 文藝別冊)辻静雄 (KAWADE夢ムック 文藝別冊)
(2014/04/17)
河出書房新社

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tag : 伝記・評論

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耳鳴り治療薬「ネラメキサン」の最新情報
杏林製薬 耳鳴り治療薬 追加臨床実施[2014年11月10日,化学工業日報]

「杏林製薬は、耳鳴り治療薬候補「KRP-209」(一般名・ネラメキサン)の国内開発を継続する。第2相臨床試験(P2試験)で主要評価項目を達成できなかったが、POC(創薬概念の実証)を再確認する臨床試験を特定の患者集団に絞って実施し、製品化を目指す。」
アラウ ~ ブラームス/ピアノ協奏曲第1番
久しぶりに聴いたアラウのブラームスの《ピアノ協奏曲第1番》。
このコンチェルトのアラウの録音は、かなり残っていて、2つのスタジオ録音とライブ録音が数種類。
アラウのブラームスは、しなやかで繊細なブラームスとか、若々しい爽やかなブラームスとかとは全然違っていて、アラウらしいゆったりとしたテンポと深い呼吸で、重厚で濃厚な情感のあるブラームス。
昔からアラウのブラームスは凄く好きというわけではなくて、たまに聴くとかなりもたれる感じがする。
それが、今聴いてみると、なぜかその濃厚な味わいがだんだん体のなかに浸み込んできて、とっても心地良い。

年をとるにつれてテンポが遅くなっていったアラウは、"maestoso"(威厳を持って)という指示がある第1楽章でも、この曲の数ある録音のなかでも、テンポの遅さではベストではないかと思うくらいにゆったり。(たぶん同じくらいに遅いのは、グリモー)
ハイティンク指揮のPhilips盤が最も遅くて、演奏時間は実に24分近く。(その9年前に録音したEMI盤でも演奏時間は数十秒短いだけ)
私が好きな演奏はテンポが速いものが多いのに、なぜかこのスローテンポのアラウのコンチェルトだけは、テンポの遅さも気にならない。

アラウが力説していたのは、この"maestoso"と指定された第1楽章のテンポが、どのピアニストも速すぎるということ。

「速く弾くことと情熱とを結びつけて考えることは誤りです。音楽では、情熱はゆっくりと演奏すべきものです。速いことは情熱とは対照的なものです。緊張感がまったく失われるのです。私としては、このニ短調協奏曲に解釈が二通りあるとは思いません。第1楽章は4分の6拍子で書かれています。それにアレグロですらありません。マエストーソ、威厳を持って、とあります。もし、速く弾いたら、どこに威厳があるというのでしょう。」(『アラウとの対話』(みすず書房))

「私としては、このニ短調協奏曲に解釈が二通りあるとは思いません。」というのは、とてもアラウらしい言葉。
アラウの弟子だったピアニストのギャリック・オールソンが、アラウについて語っていたことを思い出す。

「アラウ先生は何事もいったん思い込んだら頑として強く思いこむ人です。絵を壁に架けること一つでも、別の架け方というものはないのです。一度架けたら、それが絶対なのでした。」(同上)

この喩え方が面白い。アラウは20歳前後の若い頃に深刻な悩みと迷いを抱えて、精神分析医にかかっていたことがある。
そのメンタル面の問題を克服してからは、確信に満ちた人だったに違いない。


クーベリック指揮バイエルン放送響(1964年、orfeo、ライブ録音)

ライブ録音で持っているCDはクーベリックとイッセルシュテットが指揮したもの。
昔からスタジオ録音よりも好きだったのが、クーベリック指揮のorfeo盤。(イッセルシュテット盤はモノラルで音が良くないので今は聴かない)
アラウのマルカートのような一音一音克明で骨っぽいタッチは、スマートではなくて朴訥な感じがするけれど、力感・量感豊かな重みと、振幅の大きいアーティキュレーションでドラマティック。
スタジオ録音よりもテンポが速くタッチに鋭さがあり、急速部は力感と疾走感が増してテンション高く、ライブが本領のアラウらしいところ。
特に第3楽章はアラウにしてはテンポもかなり速くて、アクセルを踏んだような疾走感と急迫感があり、気力漲る演奏。
スタジオ録音とはまるで別人みたい。

Brahms Piano Concerto No.1 Claudio Arrau Rafael Kubelik 1964


ブラームス:ピアノ協奏曲第1番 他ブラームス:ピアノ協奏曲第1番 他
(1999/04/20)
ORFEO DOR *CL*

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ジュリーニ指揮フィルハーモニア管(1960年、EMI)
ジュリーニが指揮したEMI盤を聴き直してみると、今ではライブ録音と同じくらいに好きになっているのに気が付いた。(こういう好みは聴くときによってよく変わるので)
1960年のスタジオ録音は、もともと音質の良くないEMIの録音なので、音の分離が良く無く篭り気味。
音質の悪さのせいで、ピアノの線の太さと響きの厚みがさらに増し、ゆったりとしたテンポも相まって、重厚で悠然と流れる大河のよう。
アラウの骨太で克明なタッチで弾く旋律は、語りかけるような歌い方でニュアンス豊か。悲愴感を帯びた深く濃い情感が漂う。
厚い響きに包まれて、音の川のなかでゆらゆら流れているような感覚がする。
緩急の変化が大きく、急速部になると、テンポもあがってタッチもシャープで力強くなり、メリハリがあるので緩みを感じることはない。
第1楽章半ば(11分20秒~)では、突如覚醒したようにテンポが上がって、疾走していくところが爽快。緩徐部がゆったりしているせいで、よけいにコントラストが鮮やかに聴こえる。
第3楽章もテンポはそれほど速くはないので、強い疾走感や急迫感はなくても、慌てず騒がず丁寧なタッチで表情豊かで朗々とした語り口。
エンディングに向かって一歩一歩着実に前進し、じわじわと高まっていく高揚感が爽やか。


ARRAU / GIULINI, Brahms Piano Concerto no.1 in D Minor, op.15 (1)


ARRAU / GIULINI, Brahms Piano Concerto no.1 in D Minor, 0p.15 (2)


Brahms: Piano Concertos Nos. 1 & 2Brahms: Piano Concertos Nos. 1 & 2
(2002/05/18)
Arrau、Giulini 他

試聴ファイルあり


Symphonies Ouvertures Concertos Pour PianoSymphonies Ouvertures Concertos Pour Piano
(2010/10/18)
J. Brahms

試聴ファイル(amazon.de)


ハイティンク指揮コンセルトヘボウ管(1969年、Philips)
EMI盤よりも音がクリアで(それにオケも違うし)、もやもやした霧が晴れたように音の厚みが薄くなって、アラウのピアノの音の美しさがしっかり聴けるのが嬉しい。
そのせいか、ピアノの音の線が少し細くなり、重厚さと陰翳や情感の濃厚さも少し薄れた感じがする。
EMI盤とはそれほどテンポが遅いわけではなく、克明なタッチでじっくりと弾き込んで、深い呼吸で丁寧な語り口なのは変わらない。
疾風怒濤の若者風や、しなやかで繊細な叙情的なブラームスとは全然違うけれど、堂々としたスケール感と悠然とした懐の深い包容力を感じさせるところがアラウならでは。

Johannes Brahms - Piano Concerto no. 1 in D minor, op.15



ブラームス:ピアノ協奏曲第1番、他ブラームス:ピアノ協奏曲第1番、他
(2014/08/27)
アラウ(クラウディオ)

試聴ファイルあり


この3種類の録音は、それぞれ音質も特徴が違っているので、どれも好きとは言えるけれど、Philips盤はアラウのピアノの音色が綺麗だし、EMI盤は音が悪くても(むしろ悪いから?)重厚で陰翳のある濃い叙情感が味わえる。
スタジオ録音は、ライブ録音のような急迫感や白熱感はないけれど、落ち着いた安定感があって、(今は)スタジオ録音の方がじっくりと聴き込めて、アラウのゆったりとしてコクのある音楽の流れにシンクロできるので、とても心地良い。
冬に近づいて寒くなったので、ゆったり濃厚な味わいのブラームスを聴くとほっこり暖まる気がするからかも。
アラウのブラームスは、カッチェンやブレンデルとは方向性が違っているけれど、逆にその違いが魅力的。
聴けば聴くほどアラウ独特の重厚で濃密なロマンティシズムが味わい深くて、やっぱりアラウのブラームスはいいなあ。
マイベストのカッチェンと同じくらいに好きになれそう。


<過去記事>
アラウ ~ ブラームス/ピアノ協奏曲第1番
アラウ&クーベリック指揮バイエルン放送響 ~ ブラームス/ピアノ協奏曲第1番
昔書いた記事を読み直していると、今感じていることとは違っていることも結構多い。数年たったら、また違っているのかも。

tag : ブラームス アラウ ジュリーニ クーベリック

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グザヴィエ・ドゥ・メストレ 『ハープのための協奏曲と舞曲集』
初めて買ったハープ演奏のCDは、グザヴィエ・ドゥ・メストレの『ハープのための協奏曲と舞曲集』。
ヒナステラの《ハープ協奏曲》のCDを探していて、見つけたアルバム。
カップリングは、ロゴリーゴ《アランフェス協奏曲》(作曲者自身によるハープ編曲版)、ファリャ《スペイン舞曲第1番》、タレルガ《アルハンブラの想い出》、グラナドス《詩的なワルツ集》というラテン名曲集。

もともとギターの音色は哀愁漂い過ぎてウェットに感じるので、南米の開放的でパッショネイトな曲をハープの明るく可愛らしい響きで聴くと妙に心地良い。
(ヒナステラは別として)晴れた休日のまっとりとした朝に聴くのにぴったりなアルバム。
特に気に入ったのは、ファリャとロドリーゴ。

アランフェス~ハープのためのコンチェルト&ダンス集アランフェス~ハープのためのコンチェルト&ダンス集
(2010/02/17)
メストレ(グザヴィエ・ドゥ)

試聴ファイル
ちょうどHMVのオンラインショップで1000円ほどでセール中だったので、思わず注文してしまった。

ファリャとロドリーゴ(《アランフェス協奏曲》の有名な第2楽章)の曲は、メストレのライブ映像で聴ける。

xavier de maistre plays de Falla (グランジャニー編曲)
Concert in Tokyo 2006




Xavier de Maistre - Concierto de Aranjuez (arranged for harp)
Kristjan Järvi, conductor/Orchestre de Paris



tag : ファリャ

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ブレンデル ~ ブラームス/ピアノ協奏曲第1番
このところ、カッチェンのブラームスの《ピアノ協奏曲第1番》をよく聴いているのと、すっかり秋めいてきたのとで、今はブラームスモード。
《ピアノ協奏曲第1番》はとても好きな曲の一つなので、名盤といわれるものはほとんど聴いているけれど、手持ちのCDを改めて聴き直してみたら、テンポ、力感、叙情感が一番合うのが、(不動のマイベストのカッチェンとアラウは別として)ブレンデルだった。(と思ったけれど、ハフのhyperion盤を聴き直したら、ハフも同じくらいに私の好みにぴったり)

色彩感豊かな音と優美さ漂っているのが、いつものブレンデルらしいところ。
線が多少細くても、硬質のシャープなタッチで力感があり、特に、しなしなすることなく繊細で研ぎ澄まされた叙情感がとっても私好み。

ブレンデルの録音は、スタジオ録音が2種類とライブ録音の合計3種類。
イッセルシュテット盤は、アバド盤よりも、線がさらに細くて尖った響きがするので、どちらというと、少し歌いまわしと響きにまろやかさがあるアバド盤の方が聴きやすい。
名盤とされる1986年スタジオ録音のアバド盤は、タワーレコード限定盤が最近リリースされている。
ブレンデル自身は、アバド盤はピアノの音が遠く聴こえるとかご不満があったらしく、それを知って私はライブ録音のCDを買ったんだけど...。
ピアノの音がそんなに遠い感じはしないし、ライブ録音よりも音質が好きなので、CDで聴きたくなってタワーレコード限定盤を購入。
もしかしたら、ピアノの音ではなくて、他に満足できないところがあったんだろうか?

ブレンデル80歳のバースディ記念盤に収録されているのは、1985年のライブ録音。
ピアノの音はややまろやかで温かみがあり、ライブ独特の臨場感や生気が感じられる。
どちらかというと、スタジオ録音の方が音がクール(温度感が低い)で鋭さがあるので、張りつめたような緊張感を感じる。
音色と演奏の緊迫感から言えば、アバド盤が一番私の波長にぴったり合っている。

ブレンデルは、理知的なイメージがあるけれど、本当は感情豊かな人で、それを自覚していかにコントロールするかを常に心がけているようで、『対話録「さすらい人」』でも「私は「インテリ」と呼ばれることに対して、あまりにも画一的な見方なのでいつもある種の憤りを覚えてきました。理知的な側面だけを語られるのは心外です。人々が考えているよりも私は感覚的に反応していることが多いのです。まず何よりも自分の感覚を信じている演奏家ですが、理性によるコントロール機能を利用しているだけです。」と語っている。

そのせいか、彼の演奏と曲の間にワンクッションはさまった感覚を覚えるところがあって、自らの感情とそれをコントロールする理性との葛藤が、(私には)演奏と曲との距離感や間合いのようなものに感じることが多い。
でも、このブラームスのコンチェルトではそう感じることがなく、自然にシンクロして聴ける。
後年、第2番のコンチェルトをレパートリーから外して、第1番だけをを弾き続けていたのは、この激情的な曲がブレンデルのメンタリティに合っていたからではないかと思う。


ハンス・シュミット=イッセルシュテット指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(録音:1973年5月)

ブラームス : ピアノ協奏曲 第1番ニ短調ブラームス : ピアノ協奏曲 第1番ニ短調
(1996/06/05)
ブレンデル(アルフレッド)

試聴ファイル(amazon.ukの別盤)


Brahms / Alfred Brendel, 1973: Piano Concerto No. 1 in D minor, Op. 15 - Rondo (Vinyl LP)






クラウディオ・アバド指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(録音:1986年9月)

DECCA盤は廃盤らしく、タワーレコード限定盤で入手可能。
ブラームス:ピアノ協奏曲第1番ブラームス:ピアノ協奏曲第1番
(2005/06/22)
ブレンデル(アルフレッド)

試聴ファイル
CDレビュー:アルフレッド・ブレンデル 第6回 ブラームスの2曲の協奏曲を聴く[An die MusikクラシックCD試聴記]



これはamazonで販売している「インディペンデントレーベル」盤。
発売年と価格から判断して、タワーレコードで販売している「タワーレコード限定盤」と同じらしい。(ジャケット画像をなぜか載せていないのは、そのせい?)
ブラームス:ピアノ協奏曲第1番/ウェーバー:コンツェルトシュテュックブラームス:ピアノ協奏曲第1番/ウェーバー:コンツェルトシュテュック
(2014/08/03)
アルフレッド・ブレンデル、アバド、BPO

商品詳細を見る


BRENDEL / ABBADO, Brahms Piano Concerto No.1 in D minor, op.15 (1)





サー・コリン・デイヴィス指揮バイエルン放送交響楽団(録音:1985年2月、ライブ録音)

Alfred Brendel 80th Birthday TributeAlfred Brendel 80th Birthday Tribute
(2011/02/15)
Alfred Brendel

試聴ファイルあり

CDレビュー:ブレンデルの80歳を記念してのライヴ録音集[クラシック音楽CDの感想]



<関連記事>
『対話録「さすらい人」ブレンデル~ リストからモーツァルトへの道程』
ブレンデル ~ ブラームス/ピアノ協奏曲第1番(ライブ録音)

tag : ブラームス ブレンデル

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Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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