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ユーリー・ボリソフ 『リヒテルは語る 人とピアノ、芸術と夢』
リヒテルの伝記や、ピアノを通じてリヒテルと関わったひとたちが書いた本は、日本語でもいくつか出ている。
私が読んだことがあるのは、
『リヒテル』(ブリューノ・モンサンジョン著、2000年)
『リヒテルが愛した執念のピアノ』(プロジェクトX第4期)(NHK、2002年)
『いい音ってなんだろう』(村上輝久、2000年)
『リヒテルと私』(河島みどり、2003年)
『ピアニストが見たピアニスト』(青柳いづみこ,2005年)

先日読んだのは、『リヒテルは語る―人とピアノ、芸術と夢』。
リヒテルがユーディナについて語った言葉が載っていて、興味があったので。
インタビューとか、普通の会話をそのまま載せたような文体。
ときどき脈絡や誰(著者の)言葉なのか、文章がわかりにくいときはある。
でも、リヒテルのちょっとシニカルで棘のある口調と話に臨場感があって、内容も面白い。

リヒテルは語る―人とピアノ、芸術と夢リヒテルは語る―人とピアノ、芸術と夢
(2003/5/1)
ユーリー・ボリソフ (著), 宮澤 淳一(訳)

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ちくま学芸文庫版
リヒテルは語る (ちくま学芸文庫) リヒテルは語る (ちくま学芸文庫)
(2014/3/10)
ユーリー・ボリソフ (著), 宮澤 淳一(訳)

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<書評>
リヒテルは語る 人とピアノ、芸術と夢 [著]ユーリー・ボリソフ [評者]青柳いづみこ[ブック・アサヒ・コム]


以下は、ユージナに関する記述のメモ。


 ユージナが舞台に現われるや、ピアノが縮こまる。まるで馬がおびえて後ろ足で立っているようかのように見えた。だがすぐピアノに向かいはしない。パステルナークを朗読し始めるんだ。「少年時代にように清らかなドイツ的動機」についての詩をね。それからブラームスの間奏曲を何曲も続けて弾くんだが、ロ短調までいくと、荒海のような、近づきが難い岸壁のような感覚に襲われる。....ユージナは、いわゆる最も危険な「第九の波」でないとしても、第六の波にはなっていた。....大変な才能の持ち主だったが、最後には心を病んでしまったに違いない。

 ホロヴィッツのレパートリーを見てみたまえ。バッハはなし、ただし編曲物は例外だ。ベートーヴェンは手垢にまみれたソナタばかり。32番?弾くはずないだろう?なぜかプロコフィエフの7番が紛れ込んでいるが、ひどい演奏だ。そのかわり、ピアノは極上の楽器で、見事に整備されている。-ソフロニツキーのピアノといったら。ネイガウスのピアノなどは、低い「シ」の音が出ない。私はその下で寝ていた。ユージナのピアノなど、上で猫が寝ている。長年の埃をかぶっていてね。

(トーマス・マンの『ファウスト博士』に登場する音楽家の講演では)アリエッタ(第二楽章)の主題には、「最後の別れ」がこめられるのだそうだ。面と向きあい、最後に相手の目を深々とのぞき込むようなものなのだ、とね。
 もしもマンがユージナの演奏を聴いていたら、「別れ」なんて考え方は吹っ飛んだはずだ。....円柱の間での演奏会を聴きに行ったら、彼女、いきなり最初からソナタ第32番を弾き始めた。ほとんどジャズのような弾き方でこれがまた力のこもった人生肯定型なんだ。ネイガウスが楽屋でユージナに言ったよ。あの演奏からは何も理解できなかった、と。非常に如才ない言い方をした。するとユージナも非常に如才なく、まったく取り乱すことなくこう返した。「いっこうに気にしませんわ。あのソナタ、大ホールでも弾きますから、またお越しください。」 それでも、晩年のアリエッタの演奏は違っていたらしい。さすがに多少抑えた弾き方になっていたとか。
 このソナタは真に前衛的な音楽だ。ベルクの室内協奏曲やウェーベルンの変奏曲よりも凄い。創世記のヤコブが天使と格闘したように、ベートーヴェンは神と闘っているんだ。まあユージナもそのように弾いていたわけだが.....。


Maria Yudina plays Beethoven Sonata No. 32, Op. 111 (1/3)(第1楽章)


第2楽章の音源:(2/3)(3/3)[Youtube]



 (”ショパンの練習曲ハ長調やショパンの協奏曲ホ短調、ソナタ ロ短調、シューマンの《クライスレリアーナ》はすでにネイガウスに弾かれているので、もう弾かない方がいい”と言った後に続けて)
 モーツァルトの協奏曲イ長調(第23番)とシューベルトの即興曲変ロ長調は、ユージナが弾いている。彼女のあとに弾く気にはなれない。ブラームスの間奏曲イ長調(作品118第2)もそうだ。弾いたらみっともないことになる。


Maria Yudina plays Schubert Impromptu in B flat Op. 142 No. 3


6 Klavierstücke in A Major, Op. 118: II. Intermezzo. Andante teneramente



 マリヤ・グリンベルクからこんな話を聞いた。ユージナの授業のやり方についてだ。ユージナは無私無欲で善良そのものという人物だったが、その個性は圧倒的だった。授業に出ると、みんな彼女の魅力にとりこになってしまうのだそうだ。
 ゲンリヒ・ネイガウスの場合は、ちょっと違う。彼は、生徒の個性を聞いてくれ、魂の中に忍び込む。ただし、演奏家としてはかえって損をした。すべてに力を注ぎ込むことはできなかったのだ。

(バッハの平均律曲集第22番変ロ短調)
 この前奏曲は、マリヤ・ユージナが前代未聞の速さで弾いたのを覚えている。それもマルカートであらゆる規則に逆らってね。あれに比べたら、グールドなんてかわいいものだよ。そのときの演奏会をネイガウスと一緒に聴いた。まだ戦争をやっていた。
 「マリヤ・ヴェニアミーノヴナ、なぜあのような弾き方をするのですか?」演奏会終了後、いくぶん当惑したような様子でネイガウスが尋ねた。
 「今は戦争中ですからね!」彼の顔も見ずにユージナは答えた。
それで終わりさ。腹立ちまぎれにそう言ったのか、この音楽から本当にそうした感慨を得たのか、わからない。
 いちばん印象的だったのは、リストが書いたバッハの主題による変奏曲だ。カンタータ第12番の《泣き、嘆き、悲しみ、おののき》から主題が取られている巨大な作品で、天才的な演奏だった。とどろきわたるのではなく、心に染みいるような演奏で、ピアノ曲というよりは、ミサ曲を聴いているようだった。ユージナはまるで儀式を執り行っているようにピアノを弾いた。祝福するように作品を弾くのだ。
 ムソルグスキーが素敵だった。《展覧会の絵》もよかったが、《瞑想曲》というもっとも小さな曲を覚えている。ドビュッシーの先駆のような曲だ。
 髑髏をかたわらに置いて、ハムレットのようなポーズを取っているユージナの姿が目に浮かぶ。そういう写真が残っている。


Liszt - Variations on Weinen, Klagen, Sorgen, Zagen - Yudina


Maria Yudina plays Mussorgsky Pictures at an Exhibition 1/4


Mussorgsky - Méditation - Yudina



 こんなことを考えた。私の人生において、太陽のように崇めるピアニストは3人いた。ソフロニツキー、ネイガウス、そしてユージナだ!

(ブラームスの間奏曲ホ短調作品119第2)
 マリヤ・ユージナはブラームスについて素晴らしい文章を残している。この間奏曲について何と書いているか知っているかな?-<戦慄を覚えるほどの不安>だ。そしてホ長調の中間部(アンダンティーノ・グラツィオーソ)をプーシキンの「時が来た、友よ!」と結びつける。「ブラームスはそのような評釈を思いもよらなかったであろう。だが、それは重要なことではない!」ユージナはそう結んでいる。
 「戦慄を覚えるほどの不安」か、本当だ。しかし素晴らしいではないか。


Brahms - Intermezzo Op 119 No 2




<ユージナ以外の文章で印象に残ったもの>

 最も宗教的な作曲家は誰だと思う?とんでもない、バッハではないよ。彼は全てが組織されすぎている。ひとつの方向に平らに伸びていてね。
 最も宗教的なのは、セゼール・フランクさ!自分の内面に宿る神だ。すべてが主観的であり、かつ他者から隠されている。自分自身がイコン(偶像)なのだ。
 フランクだと、彼のピアノ五重奏曲は、室内楽における「マタイ受難曲」だ。ピアノを使った音楽で、ああいう曲は他に存在しない。

 プロコフィエフはソナタ第6番の第一楽章を新人類の創造と考えた。私はそこに工業化を見いだしたが-それを電化と言ってもいい。彼は自動機械「マン=マシーン」を作るべきだと主張していた。「アメリカではすでにほとんどその段階に到っている」とプロコフィエフはまるで何か明るい素晴らしいことが迫っているかのごとく、嬉しそうに言った。「ソナタの終楽章で、モールス信号が始まるところがあるが、あれはマン=マシーンが言葉を交わしている場面なのだ」と。
 未来を支配するこの「新人類」がどのような姿をしているか、彼はネイガウスにさえ細かく説明した。(略) .彼特有のふざけた事務的な口調でそんな話をするんだ。
 プロコフィエフには、何らかの、そういう、ちょっとした奇妙なものを好む傾向があるのに私は気づいた。-協奏曲第一番の最後のオクターヴは、椅子がいくつも踊っているように彼には思えた。そのようにオーケストラがとどろき、あらゆるものが、チャイコフスキー・ホールの座席までもがとどろく。

 キーシンの弾くショパンを聴いた。遺作のワルツ・ホ短調だ。これを凌ぐ演奏はありえないと思う。ただ私は2つの点を心配している。彼はこの曲を、ほとんど赤ん坊の頃から弾いてきたのだろうけれど。
 第一に、一気に弾き込んではいけない。一生弾き続けることを考えてほしい。第二は、点描主義画法だ。キーシンにはこれがほとんど存在しない。もしかしたら暗い部屋で練習することがまったくないのかもしれない。
 キーシンがドビュッシーを弾くときには、必ず聴きに行きたまえ。素晴らしいぞ!すぐにわかるはずだ。指のあいだに冷気が漂うのが。

 ラヴェルのピアノ曲は「ほとんど天才的」だ。ただし、左手のための協奏曲と、<洋上の小舟>を除く。その2曲は「超天才的」だ。
 (略) 
 左手のための協奏曲では、膨大な数の花火が使われる。最初は小さい花火、それから虹のような花火と打ち上げ花火だ。このときは色はマティス風で、まばゆいばかりの輝きがある。
 花火は全て箱馬車の窓から放出する。箱馬車に乗っているのは-この私だ。それをみんなが投げ出すわけだ。祭りは私のためではない。


モンサンジョン監督の著書『リヒテル』にもユーディナに関するリヒテルの言葉が載っているらしい。
以前読んだことがあるのに、その時はユーディナについてほとんど知らなかったので、あまり気に留めずに読んでいた。
この本は、日本語で読める数少ないリヒテルの伝記で、リヒテル自身が語った録音評も多数載っているという貴重な資料。
単行本が絶版状態なので、『リヒテルは語る』と同じように、ちくま学芸文庫として再販して欲しい。
丸々1冊にまとめて文庫化してくれてもいいし、600頁余りと大部なので、「序文」と伝記部分の「ありのままのリヒテル」(合計約200頁)と、リヒテルが書いた「音楽をめぐる手帳」(録音・演奏会批評等の日記)と付録(約350頁)との2分冊になってもかまわない。


<関連記事>
【新譜情報】 マリア・ユージナ名演集 (The Russian Archives)
『マリア・ユージナ名演集』 ~ ブラームス・シューベルトのピアノ作品
マリア・ユーディナのリスト録音 ~ 《前奏曲とフーガ BWV543》、《バッハのカンタータ「泣き、嘆き、悲しみ、おののき」による変奏曲》

tag : リヒテル ユーディナ ベートーヴェン バッハ ブラームス シューベルト ムソルグスキー 伝記・評論

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”世界一のトースター” 「バルミューダ ザ・トースター」
オンラインニュースを見ていて、「世界一のトースター」という見出しが目に留まった。

「世界一のトースター」構想は、土砂降りのバーベキューから生まれた[バルミューダ・寺尾玄「“脱常識”家電メーカーのつくり方」,日経ビジネス]

「バルミューダ」という会社は知らなかったけれど、扇風機のことは聞いたことがある。
同社初の調理家電第1号は、スチームオーブンならぬスチーム式オーブントースター。
コンベクション・オーブントースターは数種類発売されているけれど、スチーム式のオーブントースターは(少なくとも日本では)販売されていないはずなので、発想は斬新。

製品説明によれば、
- モードは5つ。「トースト」(食パン、ベーグル、イングリッシュマフィン等)、「チーズトースト」、「フランスパン」、「クロワッサン」(糖分の多いお菓子パンも)、「クラシック」(300・600・1300W/スチームと温度制御はなし)。
- トーストは、表面がサックリとしたきつね色、中は水分と香りが十分に残ったまま熱々の仕上がり。鮮烈で、香ばしい小麦の匂い。
- 給水口に投入した5ccの水がスチームとなって、庫内に充満。パン表面が薄い水分の膜で覆われて、表面だけが軽く焼けた状態になり、パンの水分・油脂・香りを閉じ込めたまま、ヒーター制御で焼き上げ。
- 庫内の温度を測りながらヒーターを1秒単位で制御。トースターとしてはありえないほどのデジタル演算と、複雑なアルゴリズムを処理。
- 冷凍パンを焼く場合は、タイマー設定時間を1分間増やす。

トーストの焼き具合はタイマー設定で調節する。
「クラシック」モード(300/600/1300W)では、スチーム・温度制御機能はなし。普及品クラスのオーブントースターと同じように、グラタン、クッキー、お餅を焼いたり、冷凍食品の調理もできる。

価格が2万2900円(税抜)。高機能オーブントースター(1万円強)の2倍くらいと高額。
高機能オーブントースターなら標準搭載の温度設定機能がない。
それに、庫内の高さが178mm。有効寸法はその半分くらい?(写真で見る限り、トレイ-ヒーター間の距離がかなり短い)
これでは、手づくりしたパン生地を焼くのには使えない。
パンを数分焼いてトーストするくらいなら焦げないだろうけど、手づくりパンを焼く時間は10分~20分。
高さの低いロールパンやベーグル生地を焼いても、焦げやすそうな気がする。
多少価格が下がったとしても、”美味しい”トーストを食べるためだけに買うかどうかは微妙。
今使っているpanasonicのオーブントースターが1万円強の機種なので、そのくらいの価格であれば買い換えるときの選択肢の一つにはなるけど。

ネット上の試用レポートをいくつか読むと、食パン、フランスパン、クロワッサンとも、焦げることなく、非常に美味しいらしい。
製品発売前なので、家電情報サイトなどの業界レポートのみ。
実際に購入したユーザーのレポートで、どのくらい美味しいトーストが焼けるのか、確認してみたい。


<関連情報>
「バルミューダ ザ・トースター」(バルミューダ公式HP)

チーム+温度制御で「外はカリッ、中はふわふわ」 バルミューダが“究極のトースター”を開発[ITmedia]

パン好きはこの22,900円のトースターを買ったほうがいいと強く思った『バルミューダ ザ・トースター』[ガジェット通信]


「にがり」で自家製硬水
高加水パンを作るときに硬水を使うと、加水率90%くらいでもホームベーカリーで上手く焼ける。
プロのパン職人さんのレシピでは、硬度を300~350mg/lくらいにするために、少量の硬水(コントレックス)と冷水(水道水などの軟水)を混ぜている。
私は、試作した高加水パンでは、硬度300mg/l弱(中硬水)のエヴィアンで水分を100%代用。
毎回エヴィアンのボトルを買うのも、バター以上にコストがかかるので、硬水を必要量だけ自分で作れないか調べてみた。

軟水よりミネラルが多い水が硬水なのであれば、ミネラルのサプリメントを軟水に入れたら硬水にならないのかな?と安直な思いつき。
でも、サプリで作る方法が見つからず、代わりににがりを使って硬水を作れるのがわかった。
これを「にがり水」という。珍しい方法でもないらしく、にがりに関する情報サイトではたいてい載っている。

『にがり水』でミネラル補給[にがり研究所]

「にがり」という製品名でも、ミネラル含有量はかなり違うし、原液タイプと水で薄めたものがある。

(参考)にがり100mlあたりのマグネシウム含有量
 「天塩の天日にがり」 950mg
 「球美のにがり」 2500mg (久米島海洋深層水のにがり)
 「浜御塩の海水にがり」 4757.6mg (カルシウム10.01mg、カリウム1377.2mg)
 「塩田産にがり」 950mg
 「赤いにがり」 6400mg
 「天草のにがり」 6300mg (カルシウム14.1mg、カリウム2200mg)
 「あらなみの本にがり」 4600mg (カルシウム2200mg、カリウム3600mg)

マグネシウム含有量が950mg/100ccだと、硬度は約39000mg/l。
硬度1550くらいのコントレックスよりもはるかに硬度が高い。
硬度350のにがり水を作る場合、必要なにがりは200ccの冷水に1.5ccくらいと微量。
にがりが100~200ml入った小ボトルなら1本数百円なので、パンを焼くときのコストは1回あたりせいぜい数円。(少なくとも市販の硬水を使うよりは低コスト)

硬度がさらに高いにがりなら、必要量はさらに少なく1cc以下。
これだけ微量なにがりは正確に計量できないので、冷水の使用量を増やせば、にがりの使用量が増えて計量できる。
パン作りに使って余ったにがり水は、硬度350mg/lくらいなので、飲んでもOK。
にがり自体も、パン作りだけでは使い切れないので、お米を炊くときに入れたり、無調整豆乳に入れて自家製豆腐作りにも使うこともできる。

問題なのは、開封後、保存できる期間。長期保存できないなら、エヴィアンを時々買った方が良いかも。
原液タイプのにがりは、殺菌作用があるので保存可能期間は塩と同じとか、3年間とか諸説あるけれど、ミネラルウォーターとは比べ物にならないくらい保存性が良い。
製品がにがりの原液でない場合は、もともと賞味期限が短いし、開封したら普通の水と同じで、冷蔵庫保存でも数日しかもたない。
なかには、マグネシウム含有量950mg/lで、開封後は冷蔵保存で1ヶ月...という製品もあり、これは原液タイプのような、そうでないような...。
パッケージの表示を確認して、原液タイプで長期保存が可能と思われるにがりを買わないといけない。


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にがりの硬度と使用量の計算
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【にがり硬度の計算方法】

「水の硬度計算」サイトで自動計算できます。

硬度(mg/L)=Ca(mg/L)×2.497 + Mg(mg/L)×4.118

※カルシウム塩・マグネシウム塩の量を炭酸カルシウム (CaCO3) の量に換算するアメリカ硬度を使用

【硬水を作るためのにがり使用量の計算方法】
「水の硬度(にがりでコントレックスの硬度の水が作れる)」[アルーチパン教室]
パン作りのためという目的が同じなので、必要硬度の硬水を作る計算式がとても便利。

記事を元にExcelで設定値を自由に変えられる関数式を作成。
この関数式があれば、水量やにがり硬度の違っても、すぐに必要にがり量が算出できる。

「目的硬度の水を作るための必要にがり量の算出式」

硬度(W)の水道水(A)ml に、硬度(N)のにがり(X)mlを加えて、硬度(C)の硬水を作る。

目的硬度(C) (にがりを加えた水の硬度) C=(N*X+W*A)/(A+X)
水道水硬度(W) (地域によって違う)
水道水量(A)
にがり硬度(N) (製品によって違う。パッケージに硬度が記載されていない場合は、計算要)

必要なにがり量:X=((W-C)*A)/(C-N)

※変数C・W・A・Nを固定セルに入力して、excelの関数式で各セルを参照させれば、変数の数値を変えるたびに、excelが自動的に計算してくれる。

(計算例)
マグネシウム950mg:硬度39,121mg/l ⇒ 冷水200ccを硬度350mg/l にするための使用量 1.55ml
マグネシウム6300mg:硬度259,434mg/l ⇒ 冷水200ccを硬度350mg/l にするための使用量 0.22ml
※カルシウムの含有量は考慮せず


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「ミネラル・サプリメントとしてのにがり」(橋本壽夫、日本海水学会誌、2005, Vol.59, 189-194)
この論文によれば、「にがり」として販売されている商品でも、その成分と比重から考えれば、「にがり」と言えない商品も多いという。
チェックポイントは、「比重が1.3程度で、組成を見てMgが6500 mg/100 mlまたは5000 mg/100 g程度の商品を選ぶ」こと。
購入を勧められないのは、「MgよりもNaの方が多い商品、Caがある商品(イオン交換膜製塩にがりは除く)、なめて塩味がするにがり」。

健康増進のためのミネラル摂取ではなく、パン作りに硬水を使う目的なので、にがりの品質自体にそれほど拘りはなく、それよりも、にがりの摂り過ぎの影響の方が問題。
実際、誤って硬度の高いにがりを大量(100cc以上)飲んだために、死者や健康被害が出た事例もあり。
誤飲の原因で多いのは、水で薄めていないにがりを別容器(ペットボトルなど)に入れていたこと。
健康に良いといっても、過剰摂取すれば、身体に悪いのは塩と同じ。

誤解されている健康情報の事例1:「にがり」と「痩身効果」について[「健康食品」の安全性・有効性情報,厚生労働省]


<参考情報>
志賀勝栄『パンの世界 基本から最前線まで』

<第5章 水と塩の役割> 硬水はどう役立つか

- 水の質もパン作りに大きな影響を与える。硬水か軟水か、という問題。
- パリの水道水の硬度は300以上、東京の水道水は硬度60程度。パリの水は硬水、東京の水は軟水。両都市の水道水に含まれているミネラル分は5倍も違う計算になる。
- ミネラルがなぜパン作りに役立つのは、グルテニンの結合を進めて、強いグルテンを作ってくれるから。グルテンが少ないフランス産小麦粉を使っても、気泡を抱きこめる強い生地に仕立ててくれる。さらにミネラルは補酵素として発酵を助けるので、より多くのガスを作り、より複雑な風味を出してくれる。
- 硬水が生地を強くし、旨味も作り出す。パリで食べるパンがどれも美味しい理由はそこにあるとしか思えない。
- いっさいの不純物を逆浸透膜で取り除いたRO水でパンを作ってみると、どんなに発酵の工夫をしても、その努力がまったく意味をもたないほど味気ない、まるで薄力粉で作ったようなパンになる。
- パン作りには硬水が絶対不可欠というわけではない。日本の食パンに使われている北米産のタンパク量(グルテン)が多い小麦粉であれば、軟水でも問題ない。水でミネラルを補給しなくても、十分に強いグルテンが出来上がる。
- 問題になるのは、タンパク量の少ないフランス産小麦を輸入して、パゲットを作るようなケース。日本の水道水では難しいので、フランスの硬水を使っているパン屋さんが多い。硬度が高くて値段も安いという点では、コントレックスがポピュラー。

<第5章 水と塩の役割> 海洋深層水は硬度調整して
- 室戸沖でとれる海洋深層水を使っている。マグネシウムやカルシウムはもちろん、50種類以上の微量元素が入っていて、組成としてはミネラルウォーターというより、人間の体液に近い硬水。
- 使っている海洋深層水の硬度は1000で、これを水道水で割る。硬度1000のままだと、発酵が進みすぎて、生地が軽くなりすぎた。クラムがスカスカで、味の濃いお麩のようなパン。硬度500でもカスカスになるし、苦味も出てダメ。
- パゲット・プラタヌで硬度200ぐらい、チャバタで硬度100ぐらいに調整。パリに合わせて硬度300でも作ってみたが、さほどおいしくならない。海洋深層水を使って日本人好みの味を出そうとすると、なぜか硬度300より低い硬度になる。コントレックスを使う場合は硬度300でいい。
- 硬水はパゲットや食パンには向くが、パン・オ・ルヴァンとかパン・ド・カンパーニュとか、ルヴァン種を使って大きく焼くパンで使うと、生地が軽くなりすぎる。ボリュームが出すぎて、しっとりした感じがなくなってしまう。中身を充実させた重たいパンを作りたい場合は、軟水の方がいい。
- 生地にハチミツを入れたパンに硬水を使うと、にがりの臭いを強く感じすぎてしまう。ハチミツを入れる目的は茶色い粉のエグ味をとるためなので、茶色い粉を使うようなパンにも向かない。
- パンによって、海洋深層水を使う場合と、使わない場合がある。素材がシンプルなパンを中心に、3~15%入れている感じ。

tag : ホームベーカリー 志賀勝栄

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【新譜情報】ペーター・レーゼル『楽興の時~ピアノ小品集』 
最新記事:ペーター・レーゼル『楽興の時~ピアノ小品集』(2015.06.09)

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発売前になって、ようやく収録曲リストが公開されたレーゼルの新譜『楽興の時~ピアノ小品集』。

楽興の時~ピアノ小品集楽興の時~ピアノ小品集
(2015年06月03日)
ペーター・レーゼル


<収録曲>
● フランス組曲第5番~ガボット ト長調(J.S.バッハ)
● ピアノ・ソナタ K.331~トルコ行進曲(モーツァルト)
● ロンド op.51-1(ベートーヴェン)
● エリーゼのために(ベートーヴェン)
● ワルツ イ短調 op.34-2(ショパン)
● 無言歌集 op.62-6『春の歌』(メンデルスゾーン)
● 抒情小品集 第5集~小人の行進(グリーグ)
● 抒情小品集 第5集~夜想曲(グリーグ)
● 子供の情景 op.15~トロイメライ(シューマン)
● 子供の情景 op.15~見知らぬ国と人びとから(シューマン)
● 四季 op.37a~舟歌(チャイコフスキー)
● ユーモレスクop.10-2(チャイコフスキー)
● 即興曲 変イ長調 D.935-2(シューベルト)
● 楽興の時 ヘ短調 D.780-3(シューベルト)
● 舞踏への勧誘 op.65(ウェーバー)
● 楽興の時 op.16-5(ラフマニノフ)
● スペイン組曲『アンダルシア』~コルドバ(レクオーナ)
● スペイン組曲『アンダルシア』~マラゲーニャ(レクオーナ)

アルバムタイトルどおり、ポピュターなピアノ小品がほとんど。
聴いたことがないのは、レクオーナの『スペイン組曲』だけ。(後で確認すると、「コルドバ」はどこかで聴いたようなことがあるメロディだった)
よくある「ピアノ名曲アルバム」みたいなラインナップなので、CDを買いたいという気があまり起こらない。
選曲はレーゼル自身によるもの。(アルバムの企画・コンセプトはレーベル側で?)

私の特に好きな作曲家といえば、ベートーヴェンとバッハが入っているくらい。
苦手な作曲家(モーツァルト、ショパン、シューベルト、チャイコフスキー、ラフマニノフとか)と曲の方が多い....。
個人的な好みとしては、(ハフのコンセプトアルバムのような)技巧的でピアニスティックな曲や隠れた名曲・佳曲とかもいろいろ入っていたら良かったのだけど。

tag : レーゼル

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ブラームス/交響曲第3番(ピアノ編曲版)、2台ピアノのためのソナタ
レコ芸で紹介されていたブラームス作品の新譜は、『ブラームス・イン・エフ~交響曲第3番(4手連弾版)、2台ピアノのためのソナタ』。演奏は、ピアノデュオ ドゥオール(藤井隆史&白水芳枝)。

数年前に書いた記事「ブラームスの自作編曲版 ~ 4手連弾と2台のピアノのための作品集」に書いていたとおり、「作曲家のなかで、自作の大規模な管弦楽曲や室内楽のピアノ編曲をこれほど多く残した人は、他にいないのではないかと思うくらい、豪華なラインナップ」。

Brahms in F/ブラームス・イン・エフ~交響曲第3番(4手連弾版)、2台ピアノのためのソナタBrahms in F/ブラームス・イン・エフ~交響曲第3番(4手連弾版)、2台ピアノのためのソナタ
(2015年05月18日)
ピアノデュオ ドゥオール(藤井隆史&白水芳枝)

試聴ファイルなし



《交響曲第3番(4手連弾、2台のピアノ版)》

Youtubeの音源を探すと、いろんなピアノバージョンがあって面白い。

 ピアノ連弾版(Keller編曲)
Brahms: Symphony No. 3 - III. Poco Allegretto (arr. by Brahms & Keller)


交響曲第3番は、ピアノソロやピアノ連弾よりもオケで聴いた方が重厚感と迫力あり。
弦の響きの流麗感はオケでしか味わえないので、やっぱり原曲の方で聴きたい。

 2台のピアノによる8手連弾版(Keller編曲)
これはとっても珍しいけど、演奏は結構難しいかも。
4手が8手に増えているので、音の厚みがある一方、8本の手が縦の線でピシっと揃わないと、ごちゃごちゃした響きに聴こえてしまう。

Brahms - Symphony No. 3 3rd Mov, 8 hands piano(Arranged by Robert Keller for 2 pianos 8 hands)


ピアノソロ版(ビレット編曲)
Brahms-Biret: Symphony No. 3 - Allegro con brio - piano transcription by Idil Biret(Youtubeへリンク)


<楽譜>
<IMSLP (International Music Score Library Project)>では、クラシック作品の楽譜が無料でダウンロードできる。
高価で手に入れるまで時間がかかる輸入楽譜を買わずとも、スコアからパート譜、編曲版、カデンツァまで、原曲の作曲者と編曲者が書いた膨大な数の楽譜(Public Domain)が載っているので、とても重宝なサイト。

”Symphony No.3, Op.90 (Brahms, Johannes)”のページにある”Arrangements and Transcriptions”のタブに、ブラームス(と他の作曲家)が書いた「4手連弾版」と「2台ピアノ版」の2種類の楽譜が載っている。

For 2 Pianos 4 hands (Brahms)
For Piano 4 hands (Brahms)

ブラームスと同時代の音楽編集者Robert Kellerが、2台のピアノによる8手連弾と4手連弾版を編曲している。
Kellerはドヴォルザーク作品も編曲したという。



《2台ピアノのためのソナタ》

ピアノ五重奏曲の原曲にである《2台ピアノのためのソナタ》の方は、冒頭からほとんどピアノ五重奏曲を聴いている気分。
ピアノだけの演奏でも、私には全然違和感がなくて、それにとってもパワフル。
五重奏に近い音の重層感があるし、弦楽器が弾いている(はずの)旋律がずっと明瞭に聴こえてくる。こんな旋律があったっけ?と思うことも多くて、新しい発見があって面白い。
ずっと聴いていると、五重奏に比べて音色のバリエーションが少ないせいか、時々少し単調な感じがしないでも...。
やはり、弦楽とピアノの組み合わせの方が、音の質感と色彩感が多彩。
逆に、フォルテの和音が続くところ(第3楽章とか)では、打楽器的な力強さのあるピアノの方が力感が強くて、迫力がある。
この《2台ピアノのためのソナタ》がとっても気に入ったので、CDで聴きたくなってきた。

Brahms. Sonata in F minor for two Pianos - I. Martha Argerich & Lilya Zilberstein



この音源は、ルガーノ・フェスティヴァルのライブ録音。
カップリングされているメンデルスゾーンの《ピアノ三重奏曲大1番》もとても好きな曲。でも、アルゲリッチの演奏は私の好みとは違っているので、CDを買うかどうかちょっと悩ましい。

ブラームス:2台のピアノのためのソナタ、メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲第1ブラームス:2台のピアノのためのソナタ、メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲第1
(2015/2/11)
アルゲリッチ、ジルベルシュテイン、ルノー・カピュソン、ゴーティエ・カピュソン

試聴ファイル



<楽譜>
”Sonata for 2 Pianos, Op.34b (Brahms, Johannes)”のページに数種類。
ダウンロードする楽譜を選ぶときは、なるべく解像度が高くて、容量の小さいファイルを選ぶようにしている。

Complete Score(Leipzig: Edition Peters, n.d. Plate 10175.)


<参考資料>「ブラームス作曲「ピアノ五重奏曲ヘ短調作品34」についての一考察 ―「2台のピアノのためのソナタ作品34bis」との比較を視点として―」(村澤由利子、鳴門教育大学研究紀要第21巻2006)

tag : ブラームス

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ハジダキス/ピアノ作品集 ~ 6つの絵画,イオニア組曲,リズモロジー
ハジダキスのピアノ作品集から、《白い小さな貝殻のために》に続いて、《6つの絵画》、《イオニア旋法による組曲》、《リズモロジー》。

ハジダキス:ピアノ作品集 - 白い小さな貝殻のために/リズモロジー/6つの絵画/イオニア旋法による組曲(ダナエ・カーラ)ハジダキス:ピアノ作品集 - 白い小さな貝殻のために/リズモロジー/6つの絵画/イオニア旋法による組曲(ダナエ・カーラ)
(2011/01/31)
Manos Hadjidakis

試聴ファイル


6つの絵画/6 Popular Pictures, Op. 5 (1950)

解説によると、ギリシャのブルースであるレンベーティカ(Rebetika Music)のピアノ編曲。
レンベーティカのルーツは、ビザンティン音楽と伝統的なチャント。当時はあまり知られておらず、その後とても人気がでたという。
6つの舞曲的リズムをベースにして、永遠に失われてしまったものへの悲しみ、ノスタルジーが共通して流れている。

この組曲も、《白い小さな貝殻のために》と同じく、映像を見ながら聴くとぴったり合いそうな、映画音楽みたいな曲。
”Cloudy Sunday”は、全然曇っていないけど。
”LADY”'はとても華やかで快活。6曲のなかで一番気に入った曲。

I. Cloudy Sunday
II. Lady
III. Drizzle followed the clouds
IV. The Coachman
V. Going for a stroll
VI. Moonless Night

DANAE KARA ''LADY''Manos Hadjidakis 6 popular paintings




イオニア旋法による組曲/Ionian Suite, Op. 7(1953)

解説によると、飾り気のない軽やかなテクスチャで、親密感と遊び心があるところは、ハジダキスが好んだモンポウをエコーしたような5楽章の組曲。
第1&第3楽章は、7度のユーモラスな不協和音とときに多調(bitonality.)に。
第2&第4楽章は、典型的なハジダキス風メロディ。
第5楽章は、ギリシャのTatavlaにあるコミュニティで人気の娯楽音楽みたいなスケルツォ。

I. —       明るいプロコフィエフ風
II. Andantino 仄かな哀感漂うメロディアスな旋律
III. —      同音連打とリズムの練習曲風。
IV. —      2曲目と同様、メロディアスで映画音楽風。こちらの方がずっと綺麗。
V. Scherzo  アルベニスみたいなスペイン風にも聴こえる。

GreekMusicTv - Hadjidakis-Suite Ionnien - Ιoνική Σουίτα.wmv




リズモロジー/Rhythmology, Op. 26(1971)

解説によると、ハジダキスが最後に書いたピアノ曲。ハジダキス音楽のギリシャ人としてのアイデンティティが強調されている。
献呈者はハジダキスが非常に賞賛していた詩人George Seferis(ノーベル賞受賞者)。Seferisの死に際して書かれている。
Rhythmologyの展開を通して表されているのは、Seferisの詩のメタファ(隠喩)。
それぞれペアになった6組の曲は、ペアの最初の曲が変則的リズム。5/8拍子で始まり、7/8, 9/8, 11/8, 13/8,15/8.拍子が続く。
各ペアの2番目の曲は、ビザンティン風の民謡舞曲Hasapikoで、かなり古い時代の旋律パターンのモザイク。リズムが変則だった最初の曲に対する詩的な解決。

以前の作品と違って、映画音楽みたいなわかりやすいメロディアスさが少し薄まり、不協和な響きが多くなっている。(それでもどこか映画音楽風に聴こえる)

I. In 5/8
II. Hasapiko to Aries
III. In 7/8
IV. Hasapiko to Taurus
V. In 9/8 (in the style of Eric Satie)
VI. Hasapiko to Gemini
VII. In 11/8
VIII. Hasapiko To Aquarius
IX. In 13/8
X. Hasapiko to the Moon
XI. In 15/8
XII. Hasapiko to Virgo

Rythmology 9-8 - M.Hadjidakis [3 of 6]



<関連記事>
ハジダキス/ピアノ作品集 ~ 白い小さな貝殻のために

tag : ハジダキス

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ホームベーカリーで高加水パン
ホームベーカリーに全ておまかせで焼ける高加水パンのレシピはいくつかある。
いつも焼いているのは、高橋雅子さんの少ないイーストで天然酵母コースを使った「ロデブ」。(成形していないので「ロデブ風」食パンだけど)
レシピが載っているのは、この本。私が持っているホームベーカリーレシピブックのなかで、最も重宝したなかの一冊。

少しのイーストで ホームベーカリー 天然酵母コースでゆっくり発酵 (少しのイーストでゆっくり発酵パン)少しのイーストで ホームベーカリー 天然酵母コースでゆっくり発酵 (少しのイーストでゆっくり発酵パン)
(2010/07/07)
高橋雅子

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関連記事:ホームベーカリーで焼く”ロデブ”



高加水パンレシピなら、シニフィアンシニフィエの志賀勝栄シェフのレシピが有名。
志賀シェフのレシピ本はいくつか出ているけれど、読んだことがあるのは『ホームベーカリーでつくるシニフィアン シニフィエの高加水パン&ドイツパン』
硬水のコントレックスを使ったり、一般家庭ではあまり使わない粉を数種類ブレンドしたり、材料の配合も1g単位と細かく、配合比率もパンによってそれぞれ違う。
料理研究家などパン職人ではない人が書いたホームベーカリーレシピとは違って、これがパン作りのプロのレシピだとわかる。
実際にパンを作らなくても、レシピや作り方を読んでいるだけでも面白い。

ホームベーカリーでつくるシニフィアン シニフィエの高加水パン&ドイツパンホームベーカリーでつくるシニフィアン シニフィエの高加水パン&ドイツパン
(2010/11/23)
志賀 勝栄

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関連記事:志賀 勝栄『ホームベーカリーでつくるシニフィアン シニフィエの高加水パン&ドイツパン』


『有名パン職人のホームベーカリーレシピ』にも志賀さんのレシピが載っている。
5人の有名なベーカリー(ブランジェリ)のパン職人が全自動パン3種、成形パン3種のレシピを紹介。

有名パン職人のホームベーカリーレシピ有名パン職人のホームベーカリーレシピ
(2009/4/17)
ベーカリー倶楽部

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ホームベーカリークッキング![みんなのプロジェクト]---本書に載っているパンを実際に作った感想集。

志賀シェフののレシピは、チャバタ、パンドミ、パン・ペイザン。
こちらのレシピも家庭用ではあまりメジャーではない粉と硬水(コントレックス)、モルト(エキス)を使用。砂糖・乳製品・油脂はゼロ。
チャバタは、「シニフィアン シニフィエの高加水パン&ドイツパン」で使っていたキタノカオリではなく、フランスパン用準強力粉(F)を使用。
「材料が0.1g違っても僕のパンはうまくできません。もちろん、粉の種類が違うのもだめです。必要な水分量が変わりますから」と書いてある。
確かにその通りだとは思うけれど、パン用の小麦粉のストックがたくさん残っているし、これから気温が上がるので新しく粉を買うタイミングではなく、指定の粉を買うのは、たぶん10月以降。
それに、コントレックスは少量しか使わないので、近くのお店で売っている1.5リットルボトルを買っても使いきれない。
とりあえず、準強力粉は手持ちの「オーベルジュ」、水分は中硬水のエヴィアンを全量使用。モルトエキスの代わりに、モルトパウダー(使用量はエキスの1/10)で試してみた。

水分量が粉量の90%近くと、今までホームベーカリーで作ったパンのなかでは一番多い。
冷水(水道水を沸騰させたもの)を使ったロデブでは、加水率80%でもパンケースの底にある生地はドロドロになる。
90%近い水分を入れて、ちゃんと生地になるんだろうか?と思いながら、パンケースの中をじ~っと観察。
15分くらい捏ねていると、生地がちゃんとまとまった。さすがに硬水を使っただけのことはある。
4時間後に焼き上がると、水分が異常に多いうえにドライイースト少量で砂糖・油脂ゼロの配合なのに、発酵不足でも過発酵でもなく、形良くふっくら焼けている。硬水とモルトパウダーの威力は凄い。

使ったホームベーカリーは、高加水パンが苦手のタイガー(IH式/KBH-V100)ではなく、パナソニック(SD-BH106)を使用。こういうとき、違うメーカーのHBを持っていると便利。
パナソニック製のHBなら、硬水を使わずとも加水率80%では問題なく焼けているし、レシピブック掲載前に上手く焼けるかどうか試作・確認するときは、たいていシェアトップのパナソニック機が使われている。
パナソニック製HBで焼くと、普通はクラストが分厚くバリバリ硬いのに、このチャバタは水分が非常に多いせいか、クラストが薄くてパリパリ。
焼き色もちょっと白っぽくて薄め。でも、焼き足りないことはなく、クラムまでしっかり焼けている。
成形していないのに、クラムには大小の気泡がたくさん入っていて、チャバタ風。(手捏ね&オーブンで焼いたチャバタに比べると、目が詰まっているけど)
クラムは焼き上がってから6時間後に食べた方が、水分が落ち着いて、しっとり&もちもち。焼きたてよりも、粉の味がしっかりして、もちもち度も増して、美味しい。
パンは水分が多い方がと美味しいというけれど、ほんとに、ロデブもチャバタも高加水パンは美味しい。

ロデブは、高橋雅子さんのレシピを使って、ドライイースト少量&天然酵母コースなので、7時間かかる。
このチャバタは、ロデブよりもドライイーストが多いので、4時間の食パンコースで焼ける。
不思議なのは、ドライイーストは普通の食パンを作るときの半分くらいの量で、さらに砂糖・油脂ゼロなのに、4時間コースでも、発酵不足にもならず、膨らみの良いパンが焼けること。これは硬水とモルトのおかげ。
ホームベーカリーに全ておまかせで、これだけ美味しいチャバタが食べられるのなら、充分すぎるくらい。

チャバタが美味しく焼けたので、パン・ペイザンも手持ちの粉を使って、エヴィアンとモルトパウダーで焼いてみた。
加水率がほぼ80%と、チャバタより水分が少ないので(それでも高加水だけど)、すぐに生地がまとまった。(これも硬水の効果)
全粒粉配合率30%で砂糖・油脂ゼロなのに、わりとふっくらこんがり焼けて、クラストは薄めでパリパリ、クラムはしっとりとして、粉の味が美味しい。


<参考情報:硬水と軟水>
硬度1~100mg/Lが軟水、100~300mg/Lが中硬水、300mg/L~が硬水。
硬度とは、水1000ml中に溶け ているカルシウムとマグネシウムなどのミネラル含有量(mg/L)を表わした数値。

パン焼きで使う冷水(普通の水道水の場合)は、東京都の水道水の硬度は60mg/L前後。
ミネラルウォータを使うとしても、日本国内で採取・販売されているミネラルウォーターは軟水が多い。
ただし、海洋深層水のミネラルウォーターは、硬度300mg/L前後が多く、なかには軟水や1000mg/Lレベルの硬水も販売されている。

ミネラルウォーターの硬度比較
海洋深層水の商品一覧
赤穂化成の海の深層水『天海(あまみ)の水』は、硬度10、250、1000の3種類。

どうしてハード系のパンに硬水を使うのか調べてみると、VIRONの牛尾さんの記事を読んで納得。

「VIRON(ヴィロン)」の牛尾シェフに学ぶハードブレッド (1)[今日の酵母くん]
- フランスの水が硬水であるのに対し、日本の水は軟水。
- フランスと同じ材料や作り方をしているのに、どうしても生地がベタつき、なぜか同じように焼けない⇒フランスの一般的に使われている水と同じような硬度の水を使うことで解決。
- 硬度は350前後。ここでは硬度350になるように、硬水にコントレックス、それに水道水(軟水)を混ぜて硬度を調整。
- 軟水を使うとグルテンが軟化し生地がベタつく。硬水を使うとグルテンが硬くしまった生地になる。

VIRONの牛尾則明さんに教わるパン/バゲット・トラディショナル[allabout]
- お店では超硬水のコントレックスと水道水を混ぜて使用していますが、家庭では原価を考えなくていいので100%エヴィアンやヴィッテルなどを使用することもできます。つまり硬度300~350mg/lくらいの水が必要なのです。

コントレックス(硬水)と冷水(軟水)を混ぜるのは、硬度300~350mg/Lくらいに調整するため。
ということは、硬度300mg/Lくらいのエヴィアン100%で代用してもOK。
コントレックスは1.5リットル(約200円)ボトルならすぐ買えるけど、軟水と混ぜるのでごく少量しか使わない。ミネラルウィーターは開栓してしまうと保存がきかない。(冷蔵庫保存で長くても数日)
750ml(約100円)サイズのエヴィアンの方がまだしも使いやすい。



<パナソニックHBの高加水パンレシピ>
パナソニック製HBの最上位機種SD-BMT1000で焼ける「もちもちパン・ド・ミ」は高加水パン。
レシピをみると、湯だねペースト(強力粉10g+水70g)と水で合計210g、強力粉240g。
ということは、強力粉250gに水分200gなので、加水率80%。
ドライイーストは食パンコースの半分の1.4g。それにバター・砂糖・スキムミルク・塩が必要。所要時間5時間。
少量ドライイースト&天然酵母コースでロデブを焼くときに、湯たねペーストを使ってみると、さらにもちもちするかも。

もちもちパン・ド・ミのお味は? [なでしこおばさんのまったりブログ]

tag : 志賀勝栄 高橋雅子 ホームベーカリー

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イモリとヤモリとトカゲの見分け方
どーでもいいことだけど、一昨日の夜、自宅の玄関横の外壁に白い生き物がじ~っとへばりついていた。
ヤモリ、イモリ、はたまた白いトカゲ?
たしかヤモリとイモリの見分け方は、小学生の頃の理科の授業で習ったはずだけど、すっかり忘れている。

【もう迷わない!】イモリとヤモリの違いって? 61.3%がわからない2匹の完璧見分け方[しらべえ]

<ヤモリ>
爬虫類、カメやトカゲの仲間。陸上生物。体色は灰色や褐色。
家屋にいる害虫を食べて、家を守ってくれることから「家守(やもり)」と言われる。

<イモリ>
両生類、カエルの仲間。陸上・水辺に生息。背中側は黒-茶褐色で、腹は赤地に黒の斑点模様。
水田や井戸にいる害虫を食べる。
「井=水田」または「井戸」を「守」るので、「井守(いもり)」という。
水のある場所に生息しているのがイモリ。

ということなので、イモリではなく、ヤモリか白トカゲのどちらか。

やもりととかげのちがいって何?[教えて!goo]
- ヤモリ:夜行性。大きな目と吸盤状の足。
- トカゲ:基本的に昼行性。頭部はスマートで、足には吸盤の代わりに爪がある。


私が見たのは、手足の先が丸くなっていたので、タコみたいな吸盤付きのヤモリに違いない。目も大きかったし。
それに、白いトカゲというのは、突然変異なので珍しいらしい。
随分長い間、ヤモリは見たことがない。実家は併設していた事務所側の入り口の扉が全面摺りガラスだったので、夜中になると、ヤモリがお腹を見せてペタっと張り付いていた。
ヤモリなら、家を守ってくれると言われているから、良い印。
志賀勝栄『パンの世界 基本から最前線まで』
新しいホームベーカリーを買ってから、いろいろ試し焼きしているので、このところよく読んでいるのは、パンに関する本。
パンを作るための知識や理屈がよくわかるのは、『パンづくりに困ったら読む本』『パン「こつ」の科学―パン作りの疑問に答える』
手捏ねで作ることはほとんどないけれど、材料や製法の知識や原理を知ること自体は面白い。

テキスト風ではなく、読みもの的で読みやすいのが、超有名なブーランジェリ<シニフィアン シニフィエ>のオーナーシェフ志賀勝栄さんの著書『パンの世界 基本から最前線まで』。
こちらには彼のブーランジェリが出店していないので、そのお店のパンを食べたことがない。
通販もしているけれど、元々のパンの価格が高い上に送料も必要なので、そこまでして食べたいと思うほどにパン大好き人間ではない。

お店で作っているパンはハードパンや高加水パンがメインらしく、この本で取り上げられているのも、バゲット、カンパーニュ、チャバタなどが中心。
文章は簡潔で、実際にレクチャーしているようにわかりやすくて、読みやすい。
自分でパンをきちんと作れる人なら当然のことでも、手捏ねパンは作らない私には、なるほどと思うことがたくさん。
要点を書こうと思ったけれど、書くべきことが多すぎて挫折。
その代わり、目次の小見出しを全部メモしておいた。小見出しがかなり細かく付いているので、それを見れば、何がテーマになっているのか大まかにはわかるので。

「第1章 パンの歴史」では、発酵パンと無発酵パンの特徴と文化との関連、ドライイーストとニーダーの発明と大量生産時代、フランスで定められているパンの法律など、大きな流れがコンパクトにまとまっている。(詳しく知るには、専門的な研究書を読んだ方が良い)

「第2章 日本のパンの可能性」には、志賀シェフのパン職人としてのキャリア、長時間発酵・高加水パンづくりの道のり、「シニフィアン シニフィエ」のコンセプトとビジネスモデル。
- 最初は、添加物なしでパンが作れるとは思わず、福田元吉さんとの出会いで無添加パンができることに驚いた。
- 長時間発酵のパンを作るようになったきっかけ。
- 北里大学北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟医師の依頼で糖質制限パン(Kコンプレ、1個あたりの糖質量8.5g)を開発。
- 日本のリテールベーカリーでは珍しいビジネスモデルかもしれない。全国50軒くらいのレストランへパンを納入。() オーダーに合わせてそれぞれ違うパン(自店で売っていないパン)を提供。
- レストランへの納入が店の売上の15%くらい。インターネット販売とあわせて、全売上げの3割。いつか6割ぐらいにしたい。従来の常識にとらわれて、焼き立てのパンを近所に売るだけがビジネスではない。

第3章~第6章は、小麦粉、発酵種、水と塩、製法上の基本的知識からプロのノウハウ的なものまで書かれている。
パン作りはほとんど素人の私には知らないことが多く、パン作りの難しさとか奥深さがわかって面白かった。
特に、小麦粉については、ホームベーカリー専門といえども、常時10種類くらいをとっかえひっかえ使っているので、興味のあるところ。
- 同じハード系のパンでもバゲットとカンパーニュの違い(形や食べ頃が違う理由)。
- フランスパンとドイツパンの特徴と違い。
- 国産小麦は収穫直前で追肥する。見た目は膨んだ小麦になっても、味が落ちる。
- 発酵種は、ドライイーストや天然酵母を使って予め発酵させた種のことをさす。発酵種=天然酵母ではない。
- 日本のパンの総売り上げの8割近くは大手パンメーカー(山崎製パンや敷島パンなど)のパン。
- 発酵種は不安定なので工場の大量生産には不向き。天然酵母を使っていても、風味付けが目的で発酵のために入れるわけではない。
- 個人店の「天然酵母パン」でも、ほとんどはイーストとの併用。天然酵母も自家製ではなくて、ホシノ天然酵母を培養して使っている場合が多い。
- フランスでも同様で、伝統的な製法のパンを作っていても、イーストとの併用がほとんど。
- 水の硬度や塩のミネラルが発酵に及ぼす影響。(硬水と軟水の使い分け、海洋深層水とコントレックスの効果の違い、塩のミネラル量の違いの影響)
- モルトのエキス/パウダーの使い方の違い。

(高加水パンについて)
- 私が作るパンは、世界的にみても加水率が圧倒的に多い。パン・ペイザン103%、チャバタ95%以下になることはなく、100」%を超えるときもある。パン・ド・ブランのような食パンでも90%はある。大半のパンは加水率75%を超えている。
- 普通は標準から10%も水を増やすことはない。たった0.5%増やすだけでも生地の状態がてきめんに変わってくるから。コントロールできなくなるので、そんな冒険をする人はほとんどいない。
- 同じ名前で売られているパンと比べ、私のパンは5-10%加水が多い。これだけ加水が多いと、まったく違うパンといっていい。本来なら別の名前をつけるべきもの。
- 水分が多いと酵素や酵母が生地全体に万遍なくゆき渡るぶん、発酵が進みやすい。長時間発酵させたりすれば、もうドロドロと手から流れ落ちるほど軟化する。
- だから、パンの形はシンプルなものばかり。丸い形か、ナマコ形が、棒形しかない。加水を増やすことを選んで、美しいフォルムを捨てた。
- どのパンの断面を見てもツヤツヤしているようなパン屋は、シニフィアン・シニフィエ以外にあまりないと思う。加水が少ないと、気泡を包む膜に光沢はできない。加水が多いと糊化がスムーズに進むので、断面がピカピカしてくる。
- 食感も変わる。非常にモッチリ。パンであって、パンでない。むしろ餅や求肥に近い食感・
- 加水が多いと発酵も進みやすいので、旨味は強くなる。

パンの世界 基本から最前線まで (講談社選書メチエ)パンの世界 基本から最前線まで (講談社選書メチエ)
(2014/10/11)
志賀 勝栄

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<目次>
まえがき
第1章 パンの歴史
パンとは何か?/米と麦の最大の違い/小麦が主役に/発酵パンの登場/石臼の発明/水車税・風車税/リッチなパンの登場/イーストの登場/焼きたてを食べる文化/「パン屋とは喧嘩するな」/パンの暗黒時代/伝統的なパンの復権/パンに関する法律

第2章 日本のパンの可能性
パリにもこんなエリアはない/日本のアドバンテージ/フランスからイギリスへ/ドイツ人捕虜の活躍/フランスパンの復権/「もう寝てもいいですか?」/福田元吉との出会い/部下が一人もいなくなった/42歳で肚を据える/長時間発酵バゲットの誕生/食事のなかのパン/グランメゾンを作る/具だくさんのフォカッチャ/掃除をしないパン職人/衣食同源がテーマに/発酵食品としてのパン/若者が希望を持てる仕事に/レストランに卸す

第3章 小麦粉を考える
人類が初めて経験するパン/グルテンの役割/なぜ雑穀を入れるか/ミネラル分で分類する/ロング挽きでないと平板になる/タンパクの多寡は何で決まるか/フランス産だからバゲットが生まれた/ライ麦パンは難しい/ドイツパンの種類は多い/なぜスペルト小麦を使うか/スペルト・ルヴァン/性質で使い分ける/なぜか梅干しの酸味に/たんぱくの少ない国産小麦を!/追肥の問題/穂発芽が問題/発芽小麦でパンを作る/酵母で酵素を圧倒する/前人未踏だから面白い/石臼で挽く意味

第4章 発酵種とは何か
イースト以前の世界/天然酵母とは何か?/イーストだけで作るパン/ヘゲモニー争いを利用する/イーストでは出せない香り/焼きたてがすべてじゃない/8つの発酵種を組み合わせる/事前に種を作る目的/レーズン種/なぜ液状のまま使うのか/ホップ種/米麹とモルトエキスの違い/パータ・フェルメンテ/ミキシングの前に7時間かかる/サワー種とは何か/ルヴァン・デュールとルヴァン・リキッド/噛みごたえのあるパン/酸味のあるクロワッサン/ルヴァン・リキッド/ザワータイク/種継ぎは5日が限界/Sブラン/パネトーネ種/副材料の多い生地に/少ししか使わない理由

第5章 水と塩の役割
カンパーニュであってカンパーニュでない/加水をとってフォルムを捨てる/限界を超える怖さ/硬水はどう役立つか/海洋深層水は硬度調整して/塩は発酵を遅らせる/なぜモルトエキスを入れるか/バターを入れる理由/食材屋でいたい/オーガニックの悩み

第6章 パンを作る
ミキサーのおかげ/休み休み生地を引っ張る/2回に分けて水を入れる/パンチの目的/パンチをしないのが基本/こね時間が少ないパンもある/なぜバゲットをこねないか/ナッツが骨格になる/寝かせる厚さがポイント/残されたフロンティア/遊離アミノ酸は3~4倍/なぜ17度になったか/フランスでは成形後の発酵/奈良漬のようなパン/長時間発酵に向くパン/長時間発酵に向かないパン/個人の感覚頼り/分割丸めはやらない/ナマコ形は平等に切れる/なぜ大きく焼くのか/最終発酵の目的/最終発酵をとらないパン/クープはなぜ必要か/フランスパンには炉床が不可欠/日本に2台しかないオーブン/オーブンの中で何が起きているか/なぜ蒸気をかけるのか/焼きあがりをどう判断するか/焼き色をつけない理由/焼いてすぐはスライスできない/ケーピングを防ぐ/1年365日働いている/次なるステージへ

<Signifiant Signifié/シニフィアン シニフィエ>(ホームページ)

<参考情報>
天然酵母表示[おいしいパンの百科事典]
天然酵母パンは、大量生産には不向きなパン。
そのわりには、量産されたらしき「天然酵母パン」を時々見かける。
業務スーパーの「天然酵母食パン」は、1日1万本も売れてるという。
この「天然酵母食パン」は、普通の食パン2斤分の大きさで200円くらい。この異常な安さでは、個人のお店や百貨店のベーカリーショップなどで売っているような「天然酵母パン」ではありえない。
店頭で表示を確認してみると、パン酵母中の天然酵母使用量は4.7%とわずか。
乳化剤とか添加物もいろいろ入っているので、天然酵母パン=添加物不使用(みたいな)というイメージとは程遠く、工場生産されたドライイーストパンのような...。買ったことがないので、味は?

ホシノ天然酵母の秦野工場を見学[パナデリア]
ホームベーカリーでパンを焼くときは、Safインスタントドライイースト、ホシノ天然酵母、白神こだま酵母の3種類を使っているので、食べ比べれば、焼きあがったパンが違うのはすぐわかる。
天然酵母のパンは、目が詰まって、バターなしでもしっとり、ふんわり。常温保存でも、パサパサにならずに、しっとり感が持続する。
私の味覚でいえば、一番美味しいのは、ホシノで作ったパン。白神こだま酵母よりも、しっとり感が強く、ホシノ独特の(味噌っぽい)風味がほんのり。小麦の味が美味しく感じる。
特に、ごはんパンは、ドライイーストで作ったものとは、比べものにならないくらい。
これを食べてしまうと、ドライイーストでごはんパンを作ろうとは全然思わなくなる。
ホシノ天然酵母は、米麹を使っているので、ごはんとは相性が良いのかも。

tag : 志賀勝栄

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ミンナール ~ サン=サーンス/ピアノ協奏曲第5番(エリザベート王妃国際コンクール)
サン=サーンスのピアノ協奏曲はかなり好きなのに、聴き終わった後はいつも、どんな曲だったっけ?と思い出せない...。(聴いているときはとっても楽しいので、それはそれでかまわないけど)

ハンネス・ミンナールの音源を探していると、2010年のエリザベート国際コンクールのファイナルとクロージングコンサートのライブ映像が見つけた。
”L'Egyptien(エジプト風)”という副題で有名な第5番。
第2楽章で、弦をつまはじいたエジプト風の旋律とかが出てくる。

その第2楽章のライブ映像がなくて、第1楽章(クロージングコンサート)冒頭と第3楽章(ファイナル)のみ。
指揮者はファイナルがマリン・オルソップ、クロージングコンサートがエド・デ・ワールト。
デ・ワールトといえば、1980年にゼルキンがメンデルスゾーンのピアノ協奏曲第1番を弾いていた演奏会で、伴奏指揮していたのが若い頃のデ・ワールトだったのを思い出した。(若々しくてエネルギッシュなゼルキンの演奏は、とても77歳とは思えない)

メンデルスゾーンのピアノ協奏曲もとてもピアニスティックなのだけど、サン=サーンスのコンチェルトは、それに輪をかけて技巧華やかで、ちょっと洒落たムードがフランス風?

サン=サーンスのピアノ協奏曲第5番は、第1楽章の出だしがお天気の良いピクニック日和のように明るく爽やか。
ピアノが歌うように弾く旋律は、流麗でメロディアス。叙情美しくてとてもロマンティック。

聴いていてとても楽しい第3楽章は、冒頭の下行する旋律が、陽気でユーモラスで、コメディ映画の劇伴みたい。
サン=サーンスらしいピアニスティックな曲で、跳躍する和音のパッセージが多く、華やかで弾き栄えする。
ピアノを弾く姿を見ながら聴くと、さらに楽しい。
ミンナールのテンポはそれほど速くはないけれど、一音一音明瞭な打鍵で力感と躍動感があって、バタバタと騒々しくなることなく、旋律の歌いまわしが滑らかで、瑞々しい叙情感が品良く爽やか。


エリザベート国際コンクール/クロージングコンサート(第1楽章冒頭)
Edo de Waart and Hannes Minnaar during the final of the Queen Elisabeth Competition



エリザベート国際コンクール/ファイナル(第3楽章)
この曲は船のプロペラの動きを模しているらしい。
(映像は上半身ばかりではなく、もっと手の動きを映して欲しかったけど)

Hannes Minnaar - Saint Saëns pianoconcert no.5 opus 103, deel 3


tag : サン=サーンス ミンナール

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ファジル・サイ/Black Earth,Space Jump
ピアニストで作曲家のファジル・サイの作品で有名なのは、ピアノソロの《Black Earth》。
サイのCDは何枚か買ったけれど、私にはそれほど好きなピアニストではなかったので、《Black Earth》にはあまり興味がなかった。
でも、試しに聴いてみると、思いのほか素敵な曲。
最初と最後に内部奏法で弾いているので、普通のピアノの音とは違う、太い三味線みたいに弦をつまびく民俗楽器のような響き。
中間部になると、打って変わって(ミラバッシの)ジャズピアノのように流麗で叙情的で美しい。

自作品アルバム『Black Earth』には、他に室内楽曲や管弦楽曲などが収録されていて、バラエティ豊か。
トルコの民俗音楽(らしきもの)と現代音楽的なものが融合すると摩訶不思議な世界。
時々ジャズや映画音楽風になったりして、現代音楽というより、コンテンポラリーというか、クロスオーバーというか、難解さはないので、ごく普通に聴ける。
私には、サイのクラシック音楽のピアノ演奏を聴くよりも、自作曲の演奏を聴いた方がはるかに面白い。

Fazıl Say: Black Earth ∙ Fazıl Say




水の動きのようなピアノの音がとても綺麗な≪アナトリアの静寂≫。
最初と最後の静寂さに挟まれているのは、映画のターミネーターみたいな(?)勇ましそうな音楽。

FAZIL SAY - Silence Anatolia, Obstinacy-2001 (Piano and chamber orchestra) (BLACK EARTH)




ブラック・アース~スーパー・コンポーザーピアニスト!(CCCD)ブラック・アース~スーパー・コンポーザーピアニスト!(CCCD)
(2004/3/24)
サイ(ファジル)

試聴ファイル
<収録曲>
ブラック・アース~ ピアノ独奏のための ≪黒い大地≫ (1997)
ヴァイオリンとピアノのためのソナタ (1997)
イントロダクション : メランコリー/ グロテスク/ペルペトゥウム・モビレ/ (無題) /エピローグ : メランコリー
シルクロード (1994)
ピアノと管弦楽のための2つの作品 (2001) ≪アナトリアの静寂≫ ≪頑固≫
パガニーニ変奏曲 (1995)
マンハッタンのダルウィーシュ (2000)


youtubeで見つけた音源は、《Space Jump op. 46》
ミンナールの音源を探していて偶然見つけたファジル・サイの室内楽曲で、CDはどうやら出ていないみたい。
《Space Jump》というタイトルから想像したとおり、旋律も音色も(宇宙に漂っているように)摩訶不思議。
《Black Earth》よりも意外性が強く、現代音楽色が濃くて、とっても私好みの曲。
途中で《Black Earth》みたいに、(少しバルトーク風?の)いかつい響きで黒光りする音楽が現われる。
さすがにピアニストが書いた曲だけあって、ピアノの響きが多彩に変化する。
さざめくように波打つピアノの高音が神秘的だったり、ピアノのソノリティがとても印象的。

Fazil Say (Space Jump op. 46)-Van Baerle Trio


tag : ファジル・サイ

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マリア・ユーディナのリスト録音 ~ 《前奏曲とフーガ BWV543》、《バッハのカンタータ「泣き、嘆き、悲しみ、おののき」による変奏曲》
マリア・ユーディナの録音はかなり個性的な演奏で、まるで怒りをぶつけるかのようにタッチが強く鋭すぎて、聴き疲れることがある。
逆に、その力強さと無骨さが素晴らしさにつながっている曲もあり、数少ないリスト録音もその一つ。

一番好きなのは、バッハのオルガン曲を編曲した《前奏曲とフーガ イ短調 BWV 543》。
1952年のスタジオ録音に比べて、1954年のライブ録音は、タッチに少々荒っぽく無骨なところはあれど、強い求心力と力強さで骨太な演奏。
わき目もふらず、目的に向かってひたすら前進していくかのように、一直線に突き進んでいき、緊迫感と白熱感に満ちている。
この曲をこれほど揺るぎ無く確信に満ちて弾ける人はそうそういない。
何度聴いても、このユーディナの演奏には、じわ~っと浸みこんでくるような深い感動がある。

Maria Yudina plays Bach-Liszt Organ Prelude & Fugue, BWV 543



同じくらいに深く感じるものがあるのは、リストのバッハ編曲(というよりも、バッハ作品をモチーフに使ったオリジナル作品のような)《バッハのカンタータ「泣き、嘆き、悲しみ、おののき」とロ短調ミサ曲の「十字架につけられ」の通奏低音による変奏曲 S180/R24》(1862年)。

作品解説:「音楽作品と宗教~フランツ・リストのピアノ作品に見られる宗教性」(片野 郁子,宮崎学園短期大学紀要/Bulletin of Miyazaki Gakuen Junior College,(4),29-41 (2011) )[PDF]
楽譜[IMSLP]

この曲は、ワイマールからローマに移住したリスト晩年(1860年~)が始まったころの作品で、オルガン版(S673)もあり。
1862年に長女ブランディーヌが亡くなったことがきっかけで、この曲が書かれたと言われている。

バッハのカンタータ「泣き、嘆き、悲しみ、おののき BWV12」の第2曲に出てくる通奏低音をモチーフにして作られた冒頭主題は、低音の和音が厳粛で威圧的な力強さがあり、畏れを抱かせるような絶対的な何かも感じられる。
ピアニスティックで華やかなリストのイメージとは随分違った雰囲気が漂う。
緩急・静動の落差が激しい変奏により、緊張と弛緩が何度も交代してメリハリ強く、内面のドラマが壮大に展開していくように劇的。
第1変奏は高音の単音の旋律で始まり、静寂で悲しみが漂い、内省的。徐々に和音が増えて音の厚みが増し、加速しつつ第2変奏に。
Quasi Alegroの第2変奏は、何かに追い立てられるように急迫感が増し、感情が奔流するような激しさと切迫感で張り詰め、鍵盤上で(モチーフのような)下行を繰り返し、第3変奏では急展開するようにアルペジオが鍵盤を上下する一方、和音は下行を繰り返し、徐々に減速して、やがて気力が尽きたように、Lento Recitativoに。
冒頭のようなゆったりとしたテンポと静寂さのなかで、つぶやくように単音の旋律が流れる。
再びQuasi Allegro Moderatoが現われてクライマックスへ向かい、最後のCoralでは、嵐が過ぎ去ったように明るく穏やかに。魂が浄化したような晴れやかさが神々しい。

ブレンデルは著書『音楽のなかの言葉』でこう言っていた。
「つねに何かを表現しながら音楽的展開をみせる作品の一例として、変奏曲《泣き、嘆き、悲しみ、おののき》をあげたいと思います。ここでリストは、バッハのカンタータの低音部の動機と冒頭の言葉を用いています。この言葉がもつ精神的な意味合いが、半音階がコラールの形で解決する前に音楽的な表現に印象深く転換されています。コラールは確信的に弾かなくてはなりません。」

ミッチさんのブログ《フランツ・リストに花束を》の記事「リヒテルは語る ~ユージナのバッハ変奏曲~」で、ユージナの演奏を評したリヒテルの言葉が紹介されていた。
ユーディナの演奏は、暗い音色と力強く骨太のタッチが岩のようにゴツゴツとして荒々しく、厳しく、緊迫感に満ち、弱音部は内面に沈潜していくような静けさで瞑想的な雰囲気。
”まるで儀式を執り行っているようにピアノを弾いた”という言葉通り、深い信仰心を持っていたユーディナの演奏は、畏敬の念や祈りのような宗教的なものを感じさせる。

Liszt - Variations on Weinen, Klagen, Sorgen, Zagen - Yudina


<関連記事>
【新譜情報】 マリア・ユージナ名演集 (The Russian Archives)
ブレンデルとフランツ・リスト ~ 『音楽のなかの言葉』と『対話録「さすらい人」ブレンデル』より

tag : バッハ フランツ・リスト ユーディナ

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好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
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