デュシャーブルのディスコグラフィを調べていたら、ショパンの練習曲集の評判が良い。
Youtubeの音源で少し聴いてみると、ショパン苦手の私でも最後まで聴けそうな感触。

CDは、HMVでセール中で590円。英国のamazonでは、新譜が4ポンド前後で販売中という廉価盤。
今よりかなり円高の時に仕入れたから、こんなに安いのかも..。
コンビニ受取にすると送料もかからないし、結構速く受け取れるので便利。

すこぶる速いと評判のリストの超絶技巧練習曲の演奏とは違って、ショパンの練習曲はテンポ自体はそれほど速くはない。
ピアノは、珍しくもベーゼンドルファー。(ギラギラしたところがなくて、やや篭った柔らかい響きは響きはベーゼンだから?)

François-René Duchable - Chopin - 12 Etudes, Op 10


ショパンのエチュードの演奏をいろいろ聴いていると、難曲なのに速く弾こうとするせいか、肩に力が目一杯入ったような感じが伝わってくるような演奏が多い。
デュシャーブルは、そこそこ速いわりに、タッチは軽やかでスイスイと進んでいくし、音の輪郭がはっきりしているわりにまろやかで、ギラギラしていないので、聴き疲れすることがない。
ベートーヴェンとかサンサーンスの演奏と同じく、ひとつの音やフレーズの形がくっきりと浮かびあがるようにクリアで、今まであまり気が付かなかった旋律や音が聴こえてきたりする。
ショパンの演奏は、ロマンティックで情緒過剰なところのないクールなタッチが好きなので、私にはデュシャーブルの演奏がかなりぴったりはまる。
デュシャーブル以外でエチュードを聴くなら、(方向性は違うけれど)ダイナミックなソコロフくらいだろうか。

Etudes de Chopin, par Duchable - 1 sur 2


Les études de Chopin, par Duchable - 2 sur 2


タグ:ショパン デュシャーブル

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
アファナシエフのアルバム『Homages & Ecstasies』を試聴していて、初めて聴いたスクリャービンの《前奏曲集No.11》第10番
まるでヤナーチェクのピアノ曲を聴いているかのような旋律と和声。
ハフの新譜がスクリャービン&ヤナーチェクという珍しいカップリングなのは、この2人の作曲家に相通じるものがあるからなのかも...と思えてきた。

《前奏曲集No.11》の第2番と第4番は、スクリャービンのピアノ小品集の楽譜に収録されていたので、随分昔に練習したことがある曲。
アファナシエフのCDに収録されていたので、試聴していたらすぐに思いだした。
スクリャービンのピアノ独奏曲には好きな曲が結構多い。
前奏曲集や練習曲集などの初期(Op.29まで)は、後期ロマン派的な作風で、”激情と密やかさが交錯した濃密な情感漂う”ショパンみたいに聴こえる。
旋律も和声も色彩感豊かで甘美だけれど、ショパンの”甘さ”とは違って、(私には)まとわりつくような甘さではなく。
特に好きなのは、《12の練習曲Op.8》の第12番。

Sviatoslav Richter plays Scriabin Préludes Op. 11 (selection)
No.10(6:39~)



スクリャービンの演奏で名高いヴラディーミル・ソフロニツキーの音源。
柔らかな弱音と妖艶で濃密な情感漂うリヒテルよりも、(リマスタリング音質のせいか?)鋭く研ぎ澄まされた硬質なタッチ。
濃密だけれどガラスのように冷んやりとした叙情感がある。

Vladimir Sofronitsky plays Scriabin 20 Preludes from 24 Preludes Op. 11



《12の練習曲 Op.8》第12番
若い頃のキーシンが渾身の力を込めた演奏は、ダイナミックで激情ほとばしる熱演。

Scriabin Etude op 8 no 12 by Evgeny kissin




《5つの前奏曲 Op.16》第4番
イーゴリ・ジューコフの音源。ギレリス、ゲンリフ・ネイガウスに師事した人で、2回録音したスクリャービンのピアノ・ソナタ全集は有名らしい。

Scriabin - 5 Preludes Op 16 - IGOR ZHUKOV
(at 6:55 ) Prelude No 4 in E flat Minor



《3つの小品 Op.2》第1番「練習曲」
ギレリスというと、ロシア物ではチャイコフスキーとプロコフィエフのイメージが強かったのだけど、調べてみたらスクリャービンも録音していた。

Gilels plays Scriabin: Etude op.2 no. 1


タグ:スクリャービン リヒテル ソフロニツキー キーシン ギレリス

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
津村節子が吉村昭の闘病生活を書いた『紅梅』を読んでいて思いだしたのが、津島美知子の『回想の太宰治』。
作家のなかでも太宰には、私には理解できない類のエピソードが尽きない。
太宰に対して肯定的・否定的な両方の立場から書かれた評伝や分析を読むと、彼の生き方に共感できない部分は多い。
といっても、私は太宰信奉者では全くないけれど、太宰の作品を読むと、彼の天才を感じさせられるものは多い。
それに、昔ほどには嫌悪感みたいなものを覚えることは無くなっている。(それでも『人間失格』(などいくつかの作品)を再読したいとは全く思わない。)

太宰の伝記・評伝は多数あるけれど、太宰に対して、極めて”客観的”というか、距離を置いて冷静に回想したかのように思えるのが、津島美知子夫人。
太宰の人間的な弱さを手厳しく指摘したのは、太宰と同世代の作家で親交もあった坂口安吾。
この2人の文章から垣間見える太宰の人間像が、私には一番納得できる。

津島 美知子『回想の太宰治』
回想の太宰治 (講談社文芸文庫 つH 1)回想の太宰治 (講談社文芸文庫 つH 1)
(2008/03/10)
津島 美知子

商品詳細を見る

文筆家でもない夫人が書いた物故作家の回想録の中では出色。
美知子夫人は、太宰と結婚するまでは、東京女子高等師範学校(現・お茶の水女子大学)文科を卒業後、山梨県立都留高等女学校の教諭として、地理と歴史を教えていた。
理路整然とした観察的な文章のなかに、太宰の人間性を端的に集約したような形容が随所に現れている。
太宰と日常生活を共にした女性しか知らないエピソードも多く、戦時中に太宰の津軽の実家へ疎開した頃の生活や親族との関係など、あまり資料が多くはない時期の様子が詳しく書かれているのも貴重。
ただし、太宰の女性関係と情死に関しては、直接の言及はない。
他の評伝を読むと、太田静子が太宰の子供を出産し、太宰が山崎富枝の部屋で執筆を続けていた頃、太宰の自宅を訪れた堤茂久は、綺麗好きの美知子夫人にしては、障子・襖・畳は傷んだままで、荒れ具合が尋常ではなかったので、何か起きているのだと思ったという。
この回想にはそういう生活の様子や夫人の心情については一切書かれていない。
太宰が外泊続きで自宅にいないことも多く、子供2人を抱えて経済的・精神的にもかなり苦しい日々だったのでは..と想像できる。
こういう文章が書けるほどの知的な才女で常識的な妻に対して、太宰は息が詰まるような堅苦しさを感じていたいのかもしれない...と思ってしまった。

太宰晩年の短編「おさん」の結末では、(まるで太宰が自らの最期を予期(それとも予告?)したかのように)夫が女性記者と諏訪湖心中する。
妻に宛てた遺書の手紙を読んだおさんは、三人の子供を連れて遺体の引取りに向かう列車のなかで、「悲しみとか怒りとかいう思いよりも、呆れかえった馬鹿々々しさに身悶えしました。」
私には、太宰が妻の心の内を見透かして書いた短編のように思える。

<書評>
講談社文芸文庫『回想の太宰治』津島美知子[講談社100周年企画/この1冊]
『回想の太宰治』津島美知子(講談社)[評者:阿部公彦]


松本 侑子『恋の蛍: 山崎富栄と太宰治』
恋の蛍: 山崎富栄と太宰治 (光文社文庫)恋の蛍: 山崎富栄と太宰治 (光文社文庫)
(2012/05/10)
松本 侑子

商品詳細を見る

太宰と情死した山崎富栄の伝記。太宰の評伝で必ず登場する人で、あだ名が「スタコラさっちゃん」。
その名の由来は、てきぱきと手際がよく、太宰がわがままを言っても、すぐに応じて駆け出していくので。
彼女のプロフィールを調べたことがなく、昔は彼女に対するイメージが良いとはお世辞にも言えなかったけれど、この本を読んでそれがすっかり変わった。
父親の山崎晴弘は日本最初の美容学校である「東京婦人美髪美容学校」(お茶の水美容学校)の設立者で、富栄も優秀な美容師。
当時、三鷹の美容院に勤めていた戦争未亡人の富栄は、たまたま屋台のうどん屋で太宰と知り合った。
太宰にすっかり入れ込んだ富栄は、働いてこつこつ貯めた貯金(約20万円。当時では結構な金額)を、太宰の好きな食べ物や薬代などに使ったり、体調の悪い太宰を看病したりと献身的な人で、太宰もそれに甘えてかなり頼っていた様子。
日記には、太宰との生活が克明に書かれていて、当時の状況が良くわかる。
現在進行中の日記ということもあって、美知子夫人の回想録とは正反対の極めて情緒的な筆致。
山崎富栄の立場や視点のバイアスがかなりかかっているかもしれない。


坂口安吾『不良少年とキリスト』
堕落論 (角川文庫)堕落論 (角川文庫)
(2007/06)
坂口 安吾

商品詳細を見る

太宰と親交があった安吾らしい太宰論。
安吾は太宰本人を知っていただけあって、太宰の人間的な弱さをよく突いている。
太宰の作品や伝記を読んだ印象でも、安吾の指摘は全くその通りと思える。

「芥川にしても、太宰にしても、彼らの小説は、心理通、人間通の作品で、思想性は殆どない。」

「思想とは、個人が、ともかく、自分の一生を大切に、より良く生きようとして、工夫をこらし、必死にあみだした策であるが、それだから、又、人間、死んでしまえば、それまでさ、アクセクするな、と言ってしまえば、それまでだ。
 太宰は悟りすまして、そう云いきることも出来なかった。そのくせ、よりよく生きる工夫をほどこし、青くさい思想を怖れず、バカになることは、尚、できなかった。然し、そう悟りすまして、冷然、人生を白眼視しても、ちッとも救われもせず、偉くもない。それを太宰は、イヤというほど、知っていた筈だ。
 太宰のこういう「救われざる悲しさ」は、太宰ファンなどゝいうものには分らない。太宰ファンは、太宰が冷然、白眼視、青くさい思想や人間どもの悪アガキを冷笑して、フツカヨイ的な自虐作用を見せるたびに、カッサイしていたのである。
 太宰はフツカヨイ的では、ありたくないと思い、もっともそれを咒っていた筈だ。どんなに青くさくても構わない、幼稚でもいゝ、よりよく生きるために、世間的な善行でもなんでも、必死に工夫して、よい人間になりたかった筈だ。
 それをさせなかったものは、もろもろの彼の虚弱だ。そして彼は現世のファンに迎合し、歴史の中のM・Cにならずに、ファンだけのためのM・Cになった。」

「だいたいに、フツカヨイ的自虐作用は、わかり易いものだから、深刻ずきな青年のカッサイを博すのは当然であるが、太宰ほどの高い孤独な魂が、フツカヨイのM・Cにひきずられがちであったのは、虚弱の致すところ、又、ひとつ、酒の致すところであったと私は思う。」

「然し、太宰の内々の赤面逆上、自卑、その苦痛は、ひどかった筈だ。その点、彼は信頼に足る誠実漢であり、健全な、人間であったのだ。
そういう自卑に人一倍苦しむ太宰に、酒の魔法は必需品であったのが当然だ。然し、酒の魔術には、フツカヨイという香しからぬ附属品があるから、こまる。火に油だ。」

不良少年とキリスト[青空文庫]


長部 日出雄『桜桃とキリスト―もう一つの太宰治伝』
桜桃とキリスト―もう一つの太宰治伝 (文春文庫)桜桃とキリスト―もう一つの太宰治伝 (文春文庫)
(2005/03)
長部 日出雄

商品詳細を見る

太宰が書き残した言葉「井伏さんは悪人です」に関する読解がわかりやすい。その部分はかなりページを割いて論証している。
猪瀬直樹の推理よりも、緻密で説得力はあると思える。井伏像についても、文人として、太宰の師として、肯定的。
太宰が下書きしていた、井伏への批判文を読むと、太宰の身勝手さがよくわかる。
自分は人を愛することができない...と言っていた通り、極めて自己愛の強いナルシストなので、批判されることには耐えられない人なのだろう。
それにしても、井伏の面倒見の良さには驚いてしまう。太宰の死後、「私は太宰には情熱をかけました」と語ったという。


猪瀬直樹『ピカレスク』
ピカレスク 太宰治伝 (文春文庫)ピカレスク 太宰治伝 (文春文庫)
(2007/03)
猪瀬 直樹

商品詳細を見る

猪瀬の見解では、「太宰は生きようとしていた。死は、まだ道具だと思っている。」
情死の顛末については、定説だった山崎富栄主導論に近い。
長部の伝記とは異なり、井伏鱒二は世評ほどに優れた文人ではなく、太宰に関してもかなり冷淡なところもあったような描き方。

<参考サイト>
太宰ミュージアム公式サイト

タグ:太宰治 伝記・評論

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
2015.09.20 12:00| ♪ スティーヴン・ハフ
最新記事:スティーヴン・ハフ 『スクリャービン&ヤナーチェク/ソナタと詩曲』
-----------------------------------------------------------------------


ハフのボーウェンアルバムを試聴しようとして、偶然hyperionサイトで発見したハフの新譜は、スクリャービン・イヤーに合わせたのか、スクリャービンのピアノ・ソナタと詩曲、それになぜかヤナーチェク。

English AlbumScriabin & Janáček: Sonatas & Poems
(30 October 2015)
Stephen Hough (piano)

試聴ファイル
 CDジャケットの写真のイメージだと、”漆黒の夜の音楽”みたいな...。

<収録曲>
スクリャービン:ピアノ・ソナタ第5番 Op.53
ヤナーチェク:『草かげの小径にて』第1集 JW.VIII/17
スクリャービン:詩曲 嬰ヘ長調 Op.32-1
スクリャービン:詩曲『焔に向かって』 Op.72
ヤナーチェク:ピアノ・ソナタ『1905年10月1日、街頭にて』
スクリャービン:ピアノ・ソナタ第4番嬰ヘ長調 Op.30

ピアノ・ソナタと詩曲は、全てスタインウェイで、4年前の2011年に録音。
《草かげの小径にて》のみ、ヤマハCFXで2013年録音。


Scriabin & Janáček—Sonatas & Poems—Presented by Stephen Hough (piano)



試聴した限りでは、妖しげな雰囲気と濃密な情念は薄めのスクリャービン、透明感のある叙情が美しいヤナーチェク。
スクリャービンは凄く好きと言うわけではないけれど、年代によって作風を変わっていくのを聴いていくのが面白い。
特に初期のピアノ・ソナタ(第3番まで)は、響きの濃厚なショパン風でロマンティックだし、第4番は独特の浮遊感があって、どれも好き。
ショパンの影響を受けた初期の練習曲集や前奏曲集の名曲も録音して欲しかったけど。

ヤナーチェクのピアノ曲はスクリャービンよりもはるかに好きなのだけど、今まで聴いてきた録音(フィルクスニーとアンスネスなど)と比べて、ハフらしく叙情感はさっぱり爽やか。
《草かげの小径にて》は、残響がやや短めで、音に木質感があって少し篭った感じがする。(狭い部屋で聴いているような室内楽的な?音というのか...)

どの曲も、ハフの硬質でも柔らかで包み込むような響きがとても綺麗。
ヤマハで弾いた《草かげの小径にて》は、硬質でも柔らかで包み込むような響きに親密感が漂っている。
逆に、スタインウェイで弾いた《ピアノ・ソナタ》は、音に煌きがあり残響も多くて、情感の揺れの激しさがよく伝わる。
この新譜も、好みのタイプの曲がほとんどという選曲に加えて、演奏も期待にたがわぬ良い感触だったので、購入予定。


[追記 2015.9.24]
アファナシエフのアルバム『Homages & Ecstasies』を試聴していたら、スクリャービンの《Prelude No. 10 In C-Sharp Minor, Op. 11》は、まるでヤナーチェクみたいな音楽。


タグ:スティーヴン・ハフ スクリャービン ヤナーチェク

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
2015.09.18 18:00| ♪ スティーヴン・ハフ
Hyperionが出しているスティーブン・ハフのコンセプトアルバムのなかで一番好きなのは、『French Album』と『EnglishAlbum』。
両方とも選曲がユニークで、聴いたことがなかった作曲家や曲が多く、ハフの切れ味良い技巧と透明感のある美しい叙情感がたっぷり味わえる。
『English Album』には、(日本では)あまり有名でないロマン派~現代の英国人作曲家の作品やハフの自作自演曲も収録されている。
収録曲は、現代曲も含めてどの曲も聴きやすくて、気に入った曲も多い。
特に好きなのは、ロースソーン『4つのバガテル』とレイノルズ『フォーレの思い出に捧げる2つの詩』の”Chanson d'Automne”。

English AlbumEnglish Album
(2002/4/9)
Stephen Hough

試聴ファイル

<収録曲>
1) ロースソーン(Alan Rawsthorne1905-1971) 4つのバガテル/Bagatelles 
2) レイノルズ(Stephen Reynolds 1947-) ディーリアスの思い出に捧げる2つの詩/Two poems in homage to Delius
3) ハフ エニグマのワルツ 第1番 第2番/ Valse Enigmatique
4) エルガー(Edward Elgar 1857-1934) スミルナにて/ In Smyrna
5) レイノルズ フォーレの思い出に捧げる2つの詩/Two poems in homage to Faure
6) バントック(Granville Bantock 1868-1946)/ハフ編 封印された歌/Song to the seals
7) ボーウェン(York Bowen 1884-1961) 愛の夢 op.20-2/Reverie d'Amour
8) ボーウェン シリアスな踊り op.51-2/ Serious Dance
9) ボーウェン ポルデンへの道 o.76/The way to Polden (an ambling tune)
10) ブリッジ(Frank Bridge 1879-1941) しずくの妖精/The dew fairy
11) ブリッジ 気楽な心/Heart's ease
12) レイトン(Kenneth Leighton 1929-1988) 6つの練習曲(練習用変奏曲)op.56/Six Studies (Study-Variations)

最初のロースソーンと最後のレイトンは、現代的でも調性感があり難解さはない。
ロースソーンの”Bagatelles”は、同一の主題を展開させた4曲構成。
最初の”Allegro”は現代曲らしい騒然としてマニッシュな曲想。
第2曲”Allegretto”は、”Allegro”の主題をモチーフに、密やかで少し妖艶な雰囲気。
第3曲”Presto Non Assai”は、ちょこまかと小ネズミが動きまわっているような旋律と焦燥感が漂い、最後の”Lento”は落ち着いた静けさで瞑想的。

Rawsthorne Bagatelles
(Sarah Beth Briggs. 2007 recording for Semaphore.)

(この音源の演奏は、ハフよりもテンポが遅くてタッチも切れが悪くて重たいけれど、曲の雰囲気はわかる)


ロースソーンとレイトン以外は、ソノリティの美しい叙情感のある曲がほとんど。(好みとしては、もう少し曲想にバラエティがある選曲だったらよかったけど...)

レイノルズの作品(全部で4曲)は、フォーレとディーリアスへのオマージュ。
流麗で煌くような旋律と響きに繊細な情感が篭っていて、とてもロマンティックな曲。
ディーリアスへのオマージュ”Rustic Idyll”は初期のドビュッシー風に聴こえる。少し東洋風なところも。
とりわけ素敵なのは、哀感を帯びた美しいフォーレへのオマージュ”Chanson d'Automne”

Stephen Reynolds - Two Poems in Homage to Delius - Stephen Hough



ハフの自作自演は、《エニグマのワルツ》第1番&第2番
第1番は古き良き時代のワルツ風。第2番はワルツのリズムがわかりにくくなり、少しミステリアス。

ボーウェンの3l曲は、どれも厚めのレトロな響きに包み込まれるような感覚がする。
《愛の夢》は厚い和声の響きと優しい雰囲気の旋律で温かみのある曲。
《シリアスな踊り》(第2番)は優雅で品の良いワルツでレトロな雰囲気いっぱい。
《ポルデンへの道》も似たような曲想だけど、これも素敵な曲。
ハフはボーウェン作品集のアルバムを録音していたはずなので、聴いてみたい気がしてきた。

3 Serious Dances Op.51-York Bowen(piano:Joop Celis)


ブリッジの”The Dew Fairy”は煌くように流れるアルペジオが美しく、本当に妖精みたい。
”Heart's ease”は高音のピアノの響きが綺麗で、静かに染み込んでくるような旋律。

Franck Bridge - The Dew Fairy



最後に収録されていたレイトンの《6つの練習曲(練習用変奏曲)》は、ロースソーンよりも音の動きがメカニカルなせいか、ずっとアグレッシプでマニッシュ。
内面の不安感が湧き立ってくるような曲で、焦燥感に駆り立てられるような雰囲気とか、さざめくように音が動くところとか、結構面白い。
第2変奏や第6変奏は、SF映画か何かの戦闘シーンとかの劇伴に使えそう。

Leighton - Six Studies (演奏者不明)


タグ:スティーヴン・ハフ

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
2015.09.18 18:00| ・ お料理全般・食材
はくばくから発売中の「もち麦ごはん」。
ご飯を食べるときは、白米・発芽玄米に国産の押麦を加えているので、「もち麦ごはん」にはちょっと興味あり。
たまたまスーパーで試食販売していた「もち麦ごはん」を食べてみたけれど、そんなにもちもちしているようには思えなかった。
量が少ないからかも?と思って、試しに1袋(720g、400円弱)を買ってみた。

はくばくはくばく もち麦ごはん 60g×12袋入





もち麦の特徴がわかりやすいように、発芽玄米は入れずに白米1合あたり、小袋1つ(60g)のもち麦を投入(これで3割炊き)。
炊き上がると、もちもちと言うよりは、プチプチ。(発芽玄米の方がずっとプチプチ感がある。)
押麦に比べて、もち麦は粒がかなり小さい(半分くらい)ので、もちもちしているとしても、(私の鈍感な舌では)あまりよくわからない。(ご飯全体が多少ねばり気があるような感じもしないではないけど)

それに、押麦ほどには粒が全然膨らまないので、嵩増し効果がもうひとつ。
押麦はそれほどプチプチしていないけれど、炊くと粒がかなり大きく膨らむので、噛み応えがあり、量もかなり増える。
押麦の1.5倍くらいの価格のわりに、もち麦は食感・量とも私の期待ほどではなかったので(残念)、リピートはなし。

「もち麦」のホームページ[はくばく]

「押し麦」と「もち麦」の違いは?[キーワードノート]

麦ごはん食べ比べ一週間[デイリーポータルZ:@nifty]

デュシャーブルのディスコグラフィを調べていたら、プーランクのピアノ協奏曲を録音していた。
そのCDのジャケットに見覚えがあるので、CDラックを探したら、すぐに発見。
ジャン=フィリップ・コラールと共演した《2台のピアノのための協奏曲》もカップリングされていたので、なぜかコラールの名前の方だけ覚えていたのに、デュシャーブルが弾いていたとは今まで全然気が付かなかった。

2曲とも調性音楽で旋律も馴染みやくて聴きやすいわりに、過去のロマン派音楽とは全く違う現代的な感性が煌くように流れる。
両方とも結構好きだったので、随分昔によく聴いていた。

Poulenc : Concerto for 2 Pianos in D Minor Poulenc : Concerto for 2 Pianos in D Minor
(2008/3/11)
François-René Duchable, Jean-Philippe Collard, James Conlon & Rotterdam Philharmonic Orchestra

試聴ファイル(廉価盤にリンク)



今入手できるのは廉価盤。
Poulenc : Piano Concertos & Aubade - ApexPoulenc : Piano Concertos & Aubade - Apex
(2006/8/15)
François-René Duchable, Jean-Philippe Collard, James Conlon & Rotterdam Philharmonic Orchestra

試聴ファイル


ピアノ協奏曲 FP 146 (ピティナの作品解説)
第1楽章の冒頭主題は、映画音楽みたいにロマンティックで、この旋律を聴けばすぐにこの曲だとわかる。
流麗なフレージングと明るく洗練されたところが似ているせいか、この曲を聴いていると、いつもサン=サーンスを思い出してしまう。
第3楽章は茶目っ気があってコメディ風なところがプーランクらしいかも。

Poulenc - Concerto pour piano
Duchable - Rotterdam Philharmonisch Orkest - James Conlon




協奏曲 ニ短調(2台のピアノと管弦楽のための) (ピティナの作品解説)
初演は1932年のヴェネツィア国際音楽祭で、プーランク自身とジャック・フェヴリエのピアノで。
↓のライブ映像は、初演時(1932年)よりもずっとお年を召しているけれど、初演時と同じくプーランクとフェヴリエによる演奏。
どこかで聴いたような気がする曲だと思ったら、思い出したのはプロコフィエフ。
第1楽章は慌ただしく急転直下するような目まぐるしさ。
曲想と屈折した旋律や和声とかが良く似ているせいか、”フランス風”に洗練されて洒落たプロコフィエフ...みたい。
第2楽章はどこか昔懐かしいレトロな雰囲気。第3楽章は時々”シニカルなサン=サーンス”を聴いている気がする。

Poulenc Two Piano Concerto First Movement


Poulenc Two Piano Concerto Second Movement


Poulenc Two Piano Concerto Third Movement

タグ:プーランク デュシャーブル

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
ホームベーカリーについている「フランスパンコース」は、成形しないので正確には”フランスパン風食パン”。

市販のフランスパン(バゲット)の原材料表示を店頭で見てみると、大手パンメーカーの袋入りフランスパン(200円前後のもの)には、乳化剤やイーストフードが入っているものが多い。
”焼き立てパン”を売っているインストア・ベーカリーショップなら、価格も高めなので、そういう類の添加物は使っていないかというと、そういうわけでもなく、乳化剤入りのフランスパン(それに食パンも)をときどき見かける。
(厳密に言えば、ドライイーストにも乳化剤が含まれているものがある。原材料表示に記載しているのは、それとは別に添加している乳化剤のことだと思う。)
百貨店・スーパー・駅ビルなどで入っているチェーンのベーカリーショップでは、(添加物がいろいろ入っている)冷凍生地を使っているところが多いらしい。
超有名店(メゾンカイザー、シニフィアン・シニフィエ、ビゴとか)や、無添加パン専門のお店ならそういう作り方はしていないだろうから、見た目は焼き立てパンを作っているお店であっても、中身はいろいろ。

フランスパンを買うときの欠点は、焼き立てをすぐに食べられるとは限らないこと。(特に袋詰めのもの)
店頭に並ぶまでかなりの時間が経てばたつほど、食感も味も落ちてしまう。(ただし、カンパーニュの場合は、時間が立って熟成した方が美味しいという)

では、焼きたてが本当に美味しいか?と言うと、実はそうではないのだそう。
『ビゴさんのフランスパン物語』を読んでいたら、「焼きあがってすぐのパンにはアルコールや酵母の香り、炭酸ガスが残り、体によくはない。本当の美味しさが出てくるのは、後のこと」と書いてある。

何時間後のパンが美味しいかというと、それはパン職人の間でもまちまち。
「ただし、寿命は誰もがそろって六時間までと言う。これをすぎると皮が周囲の湿気をすって「戻り」はじめ、引きが強くなる」。(他の本では、6時間ではなく、”8時間”と言っているパン職人さんがいた)
ということは、お家でパンを焼くことの利点といえば、焼き立てでも、数時間後のパンでも、どちらでも食べられるし、6時間以内に食べ切れなかったら、冷凍できること。
特にクラストは、焼き立てが一番パリパリして、食感が良くて美味しい。

ビゴさんのフランスパン物語ビゴさんのフランスパン物語
(2000/01/01)
塚本 有紀

商品詳細を見る



ものぐさな私は、ベーグル・ナン・ピザは別として、手捏ねで成形して作る気は全くないし、発酵の温度管理とか家庭用オーブンの性能とかを考えると、下手に自分で手捏ねするよりも、ホームベーカリーに全ておまかせした方が絶対に良い。
それに、タイガーのIH式だと密閉空間で700Wの高火力なので、普及品の家庭用オーブンレンジよりは性能がいいかも。
フランスパンは機械で捏ねないで作るか、捏ねても低速なので、捏ねる速度が調節できない普通のホームベーカリーでは、配合はフランスパンであっても、フランスパンとは別物...ということらしい。
フランスパンとは別物の「フランスパン風食パン」であっても、出来上がったものが美味しく食べられれば、手捏ね&オーブンで焼いたものでなくても、全然かまわない。

タイガーとパナソニックのホームベーカリーの「フランスパンコース」で「フランスパン風食パン」を焼くと、ほとんど同じ配合なのに出来上がりがかなり違う。
メーカーの違うホームベーカリーを使って初めてわかることなので、やっぱりタイガーのIH式を買って正解。
レシピの配合どおり、小麦粉(リスドォル使用)、水、塩、ドライイーストのみ。
タイガーで焼いたフランスパン風食パンは、薄皮パリパリ、むっちりクラムで、とっても美味しい。パゲットよりも、クッペみたいパンになる。
百貨店に入っているベーカリーショップのお高いフランスパンよりも美味しかったりする。(単にそのベーカリーのフランスパンが価格ほどには美味しくないのもあるけど)
パナソニックで焼くと、クラストが厚くてバリバリ硬いのは好きだけど、クラムが弾力なくふわふわで、時間がたつとパサパサするのがよろしくない。小麦の味も薄い。

美味しく焼けるフランスパン風食パンのレシピを探してみると、小麦粉の種類・配合が違ったり、モルト(エキス、シロップ、パウダー)を使っているものが多い。
モルトは使ったことが無かったのでいろいろ調べてみると、ハード系のパンを焼くには必須の食材。

モルトシロップ・モルトパウダーについて考える~ハード系のパンに必須~

リスドォルにはもともと麦芽粉末が含まれているので、ホームベーカリーで焼くときはモルトは入らないかも?(入れてみると、いつもよりも膨らみは良い。)
パナの付属レシピにある「カンパーニュ」は、強力粉(イーグル)と全粒粉で砂糖ゼロだったので、レシピには入っていないモルトパウダーを少し(粉量の0.2%くらい)入れて焼いてみた。
このモルトパウダーが効果てきめん。粉量が7割と少なかったのに、ふっくらとよく膨らみ、焼き色はこんがりと濃い。クラストはパナにしては少し薄めでパリパリとして、ウロコみたいにポロポロ剥がれる。
食べてみると、リスドォルを使ったフランスパンみたいな味がする。
これなら、リスドォルがないときでも、強力粉と薄力粉だけでも美味しいフランスパン風食パンが食べれそう。

モルトパウダーは、メーカーによって成分や配合率が違う。
クオカのモルトパウダーは、ビタミンC以外の添加物もいろいろ入っていて、使用量も粉量の0.6%と多め。
近くのカルディのお店で買えるのは、パイオニア企画のモルトパウダー。
160円くらいと安く、「小麦粉1kgに対し1~2g」(粉量の0.1~0.2%)を添加するので、20gもあれば、数十回は使える。
粉量の0.2%のモルトを加えただけでも、効果抜群だった。(ビタミンCも添加したらもっと美味しいのかも?)

※パナソニック(SD-BH101)のHBでは、モルト添加は効果大。でも、同じレシピとコースでタイガー(KBH-V100)のHBで焼くと、膨らみも悪く焼き色も濃くなくて、モルトを入れた効果があまり感じられない。
どちらかというと、パナソニックの方が、どんなレシピで焼いても、よく膨らんでこんがり焼ける。
タイガーはかなりクセがあるようなので、標準レシピ以外で焼くと、焼きあがりに不満が残ることが多い。(でも、食べて美味しいのは、タイガーの方。特にクラムがふんわりもちもちしっとりと美味しい)


パイオニア企画 モルトパウダー 20gパイオニア企画 モルトパウダー 20g
()
パイオニア企画

商品詳細を見る



強力粉のすすめ②。~注:電車注意報発令~[るぅのおいしいうちごはん]
OPERA・ER・はるゆたかブレンド・はるゆたかストレート・リスドォル・ゆめちからで焼いたバゲットの味比べ。(HBレシピではないけど)
フランスパンは準強力粉(または強力粉&薄力粉)で作るものと思っていたけれど、はるゆたかブレンドやゆめちからでも作れて、クラムがむっちりしているなら、とても私好み。
今は使っているリスドォルとオーベルジュを使い切ったら、はるゆたかブレンドとゆめちから(ブレンド)でフランスパン風食パンを作ってみたい。


感動のフランスパン風食パン[TomsPhoto]
『エスプリ・ド・ビゴのフランスパン』のレシピでつくったフランスパン風食パンがとっても美味しそう。
これははるゆたかブレンドとリスドォルを配合しているけれど、本のレシピをamazonの”なか身検索”で確認すると、強力粉(スーパーカメリア)と準強力粉(テロワール)を使っている。
フランスパンコースにしては、ドライイーストがかなり多い。

名門パン屋さんの味が、おうちでできる ― 「エスプリ・ド・ビゴ」のホームベーカリーレシピ (別冊家庭画報)名門パン屋さんの味が、おうちでできる ― 「エスプリ・ド・ビゴ」のホームベーカリーレシピ (別冊家庭画報)
(2010/06/23)
藤森二郎

商品詳細を見る
「基本の食パン」は、バターと砂糖が多すぎて、このレシピで作ることはない。
目次をみると、リッチなパンや成形パン、アレンジメニューが多くて、砂糖・油脂の少ないパンが好きな私には、食べたいパンが少ない。


<Cookpadのフランスパン風食パンレシピ>(砂糖、油脂入り)
☆HB:バゲット風 by ラ・ランド
HBで作るフランスパン

タグ:ホームベーカリー

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
デュシャーブルの録音は、ショパン、リスト、ベートーヴェン、ブラームスなど、有名な技巧的な難曲を中心にかなり多い。
特に、珍しい録音が、サン=サーンス2つの《6つの練習曲》&独奏曲、デュカスのピアノ・ソナタ&独奏曲、リストがピアノ独奏用に編曲したベルリオーズの《幻想交響曲》、ベートーヴェンの《ピアノ協奏曲ニ長調》(ヴァイオリン協奏曲の編曲版)。

今でも販売中のサン=サーンスのピアノ作品集は、amazonとHMVのカスタマーレビューがかなり良い。
サン=サーンスのピアノ作品で有名なのは、《動物の謝肉祭》とピアノ協奏曲集。それ以外のピアノ曲は聴いたことがない。
とても興味を魅かれたので、早速試聴してみると、評判どおりこれはとっても面白い。
特に、リストとショパンを足して2で割ったような(?)超絶技巧の2つの練習曲集が凄い。


サン=サーンス:6つの練習曲作品52&作品111サン=サーンス:6つの練習曲作品52&作品111
(1998/9/23)
デュシャーブル(フランソワ=ルネ)

試聴ファイル


ショパンのエチュードと比べると、リスト的な華やかさとべたつきのない叙情感があり、私にはサン=サーンスのエチュードの方がずっと馴染みやすい。

速いテンポの同音連打や重音のトレモロとか重音のアルペジオとか、弾きにくい音型が多い。
いかにも超絶技巧の練習曲風なのだけど、メカニカル一辺倒というような風ではなく、旋律自体が美しく華やかで、曲の展開もダイナミック。



《6つのエチュード Op.52》(ピティナの作品解説)
1.前奏曲 Pérlude

2.指の独立のために Pour l'indépendance des doigts
タイトルに似合わず、映画音楽みたいに叙情美しい。
内声部のように、和音中の一音を繋いでいくと主旋律が浮き上がり、その主旋律も右手と左手の和音の間を移動していくので、両手とも指が独立していないと主旋律が綺麗に弾けないという曲。

3.前奏曲とフーガ Prélude et fugue
プレリュードはスピーディな重音の同音連打も、バタつくことなく、一音一音きっちり打鍵している。(技巧的にかなり難しそうな気がする)

4.リズムの練習曲 Étude de rythme
耳で聴いていると、そんなにリズムが難しそうには感じられない。そんなことはないだろうからクロスリズムの練習曲?と思って楽譜を見ると、やっぱりそうだった。

5.前奏曲とフーガ Prélude et Fugue
前奏曲のトレモロを聴いていると、リストの《小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ》のように穏やかで可愛いらしい。
3番と同様に5番のフーガも、旋律が晴れやかで情感も細やか。

6.ワルツ形式の練習曲 Étude en forme de valse
リズムが普通のワルツ的でもなく、曲想も(ショパンのワルツとかをイメージしていると)一風変わっているように聴こえる。
解説を読むと、ワルツのテーマに4連符含まれてという書いていた。そのせいでワルツっぽくなくて、逆にワルツ苦手な私にはとっても面白い。

Camille Saint Saëns - 6 Études, Op. 52 (1877)



《6つのエチュード Op.111》(ピティナの作品解説)
 1.長3度と短3度 Tierces majeures et mineures
いかにも難しそうなトレモロをすらすら柔らかいタッチで弾いている。
(このトレモロを聴いていると、ショパンのエチュードを思いだした)

 2.半音階奏法 Traits chromatiques
 3.前奏曲とフーガ Prélude et Fugue
 4.ラ・パルマの鐘 Les cloches de Las Palmas
 5.半音階的長3度 Tierces majeures chromatiques
 6.第5協奏曲のフィナーレによるトッカータ Toccata d'àpres le final du cinquième concerto

練習曲集の最後は、サン=サーンス自身の編曲による《ピアノ協奏曲第5番》第3楽章のピアノ独奏曲版。
この楽章はかなり好きなので、これがピアノソロで聴けるのは嬉しい。
ピアノソロとはいえ、協奏曲の演奏がオーバーラップしてくるくらいに、華やかでダイナミック。

Camille Saint Saëns - 6 Études, Op. 111



練習曲集以外に収録されているのは4曲。
《かわいいワルツ Op.104》
《愉快なワルツ Op.139》
サン=サーンスの5曲のワルツのなかでは、最後に書かれた一番の傑作と言われる曲。
曲目どおり、楽しげでユーモラス。ワルツにしては、音型も曲想もコロコロと変化していくので、ワルツ苦手の私でも、全然飽きない。

《アレグロ アパッショナート Op.70》
《マズルカ第3番ロ短調 Op.66》

このサン=サーンスのピアノ曲集は思いがけないヒット。
なかでも、3つの《前奏曲とフーガ》(特にフーガ)、《愉快なワルツ》、《第5協奏曲のフィナーレによるトッカータ》がとっても気に入って、元々結構好きだったサン=サーンスの音楽がもっと好きになってしまった。

タグ:サン=サーンス デュシャーブル

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
昨日、「ダッラピッコラの音楽に震撼」(Le plaisir de la musique 音楽の歓び)というブログ記事で紹介されていたダッラピッコラの”Canti di Prigionia”(「囚われの歌」または「囚われ人の歌」)。

ダッラピッコラの作品は、Naxos盤の室内楽・器楽曲アルバムを聴いたことがある。
曲の中身はすっかり忘れたけれど、現代音楽にしては聴きやすい曲が多かったのは覚えている。

ダラピッコラの代表作のひとつ、《囚われ人の歌》(1938年~41年)は合唱と二台のピアノと打楽器のための作品。
同じく有名な《囚われ人》(1944年~1948年)の方は、スペイン国王フェリペによるプロテスタントなどの異端弾圧を描いたオペラ。(似たような作品名なので取り違えそう)

《囚われ人の歌》の冒頭主題は、グレゴリオ聖歌の「怒りの日」の旋律が使われているので、リストの《死の舞踏》(サン=サーンスの編曲版ではなく、リストのオリジナル作品の方)をすぐに思い出した。
全体的に陰鬱で”囚人”というより、”死刑囚”の歌かと思ってしまうくらい。
いろんな楽器の音色が、仏教の法要で使う鳴り物みたいに聴こえるし、不協和的な響きの合唱は美しく幻想的で不気味な雰囲気が漂う。
アルカンの《海辺の狂女の歌》を連想したり、『エクソシスト』とかのオカルト映画の劇伴にだって使えそう。
歌詞の意味が全然わからなくても、この和声と旋律を聴いているだけで、十分不気味。
スローなテンポのままクレッシェンドして、鐘の音みたいに金管やら打楽器ががカンカン鳴ると、神の怒り(?)のようでかなりコワイ。
合唱曲はあまり聴かないけど、こういうオドロオドロしい曲は結構好きだし、途中でピアノの音も聴こえてきたりして、なぜか私の波長と合ってしまった。

Luigi Dallapiccola: Canti di Prigionia (1938/1941)



<関連記事>
ダッラピッコラ/パガニーニの奇想曲によるソナティナ・カノニカ、アンナリベラの音楽帳
ダッラピッコラ/タルティニアーナ第2番、ヴァイオリンとオーケストラのためのタルティニアーナ

タグ:ダッラピッコラ

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
デュシャーブルの国内盤新譜で聴いたベートーヴェンのピアノ・ソナタがあまりに良かったので、以前聴いたときには、もうひとつピタッと来なかった「月光」と「悲愴」も聴き直し。
あっさりした叙情感と明晰な演奏という印象は同じでも、以前よりはずっと面白く聴けた。(聴いている時の気分とか体調で、印象も変わったりするので)

「悲愴」も「月光」も、ノンレガート気味のタッチと細かく切っていくようなフレージングが明瞭で、骨格がくっきり。
速いテンポで勢いも良いのだけど、過剰な白熱感や情感はなく、クールで明晰。
喩えて言えば、レントゲン写真か解剖図を見ているような...。

そのCDを聴き直していたら、意外なことに《エリーゼのために》が個性的で、とても面白い。
元々好きな曲ではないので、あまり聴いていなかったし、先日レーゼルの新譜で聴いても、やっぱり感じるものがあまりなく...。
でも、デュシャーブルの《エリーゼのために》は、冒頭の憂いに満ちた主題も淡々としたタッチなので、情感はあっさり軽やか。
続いて出てくるハ長調の部分は、うきうきと弾むような躍動感で明るく快活で、それに対して、低音の同音連打の短調部分は力強く、コントラストが鮮やか。
曲想と情感がコロコロと移り変わり、揺れ動く感情がこの短い曲のなかに凝縮されて、とてもドラマティック。
今まで聴いた録音とは全然違っていて、こういうエリーゼもあるんだ~と思わせられるくらいに新鮮。
こんなに素敵なエリーゼなら、何回聴いても大丈夫。

Bach - Beethoven - Scarlatti - MozartBach - Beethoven - Scarlatti - Mozart
(2008/05/23)
rançois-René Duchable

試聴ファイル

<収録曲>
1. Bach: Ich ruf zu dir, Herr Jesu Christ BWV 639
2. Beethoven: Piano Sonata No. 8 in C minor Op. 13 "Pathétique"
3. Bach: Sicilienne in G Minor BWV 1031
4. scarlatti: Sonata in D minor K 422, K 457, K 486
5. Morzart: Fantasie in D minor K397/K385g
6 Bach: Adagio from Toccata, Adagio & Fugue in C Major, BWV 564
7. Beethoven: Bagatelle No. 25 in A Minor, WoO 59 'Für Elise'
8. Beethoven: Piano Sonata No. 14 in C-Sharp Minor, Op. 27 No. 2, "Moonlight"
9. Bach : Cantata No. 147: Herz und Mund und Tat und Leben, BWV 147: X. Chorale - "Jesus bleibet meine Freude"

バッハの編曲ものは、聴きなれたケンプやコロリオフなどの演奏に比べると、テンポが速めで淡々としたタッチで叙情感はあっさり。
歌うような旋律のコラール前奏曲よりは、元々器楽曲(オルガン曲)の《トッカータ、アダージョとフーガ》のアダージョの方が、デュシャーブルのクールなタッチの演奏に合っているような気がする。

スカルラッティは、ポゴレリッチによく似ていて、非ピアノ的な響きに感じる。
タイプライター風のタッチというか、啄木鳥がくちばしで木をつついているようにクリスピーで、奇妙な響きが面白い。
(ブレンデルは、「スカルラッティはハープシコードの音に結びついている」と考えたので、ピアノで弾くのには向いていないと考えていた。)

[2016.9.25]
久しぶりに、Erato盤(ワルトシュタイン、テンペスト、告別)とVirgin盤(月光、悲愴、エリーゼのために)に録音されているベートーヴェンのピアノ・ソナタ続けて聴くと、どちらも1995年に録音しているので、演奏がかなり違うのがよくわかる。
どちらも速いテンポで軽やかなタッチながら、Erato盤は力感・量感もあり、テンポや起伏の変化に富んで、躍動感と疾走感あふれるダイナミズムがある。
感情表現もあっさりとしているけれど、情緒過多にならない品の良い叙情感がさわやか。
特にソノリティの美しさが素晴らしい。色彩感の豊かな柔らかい弱音の響きや、残響が重なっても濁ることなく綺麗に響く和声は、急速部の粒立ちよく切れ味鋭いタッチと対照的。
ヴィルトオーソ系のピアニストで、こういう美しい響きを持っている人は少ないのでは。

Virgin盤のベートーヴェンのソナタは、急速楽章のテンポがすこぶる速く、軽くてクリスピーなタッチで重みがなくて、コマネズミが走り回っているみたい。
残響をかなり刈り込んでいるので、声部がそれぞれ明確になって、骨格だけがくっきりと浮かび上がってくる。
緩徐楽章は、あっさりを通り越して、淡々とした弾きぶりで情感は薄い。

ベートーヴェンに限らず、このアルバム自体、できるかぎり感情移入や感情表現に頼らず、インテンポで旋律の動きと和声の推移を明瞭にして、曲の構造を分析してスケルトンが移ったレントゲン写真みたいな演奏になっているように感じる。
この奏法だと、(線的な曲だと思う)スカルラッティがよく似合う。
感傷的な「エリーゼのために」も、構造が分解されて感情性も排除され、それでいてドラマティックで、まるで小さなソナタのように別の曲のように聴こえてくる。
こういうエリーゼもあるのかなあと新鮮で面白い。聴き直しても、このアルバムの中で一番好きな演奏だった。

デュシャーブルによるバッハ編曲は、どれも淡々と平板に進んでいくので、叙情感は薄め。
逆に、他のピアニストの演奏が情感過多なのかも...と思えてくる。
「主よ、人の望みの喜びよ」は、その淡々とした弾きぶりがぴったり。
マイラ・ヘス編曲版よりも、響きがすっきりと整理されて、各声部の動きがよくわかるし、透明感のある響きが清々しい。

結局、第一印象どおり、Virgin盤のベートーヴェンのソナタはどうもしっくりこないままで、Erato盤のベートーヴェンを聴くと満足感が得られるというところは、やっぱり変わらなかった。
なぜかこのCDだけ、Eratoではなく、Virginで録音しているので、Erato盤とは違った少し”実験的”(?)な演奏をしたのだろうかと思ってしまった。

<過去記事>
デュシャーブル ~ ベートーヴェン作品集(テンペスト、ワルトシュタイン、告別、創作主題による32の変奏曲)

タグ:ベートーヴェン デュシャーブル

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
◆カレンダー◆

08 | 2015/09 | 10
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 - - -

◆ブログ内検索◆

◆最近の記事◆

◆最近のコメント◆

◆カテゴリー◆

◆タグリスト◆

マウスホイールでスクロールします

◆月別アーカイブ◆

MONTHLY

◆記事 Title List◆

全ての記事を表示する

◆リンク (☆:相互リンク)◆

◆FC2カウンター◆

◆プロフィール◆

yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、ミンナール、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

◆お知らせ◆

ブログ記事はリンクフリーです。ただし、無断コピー・転載はお断りいたします。/ブログ記事を引用される場合は、出典(ブログ名・記事URL)を記載していただきますようお願い致します。(事前・事後にご連絡いただく必要はありません)/スパム投稿や記事内容と関連性の薄い長文のコメント、挙動不審と思われるアクセス行為については、管理人の判断で削除・拒否いたします。/スパム対策のため一部ドメインからのコメント投稿ができません。あしからずご了承ください。