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ブラームス/後期ピアノ曲集~インテルメッツォとロマンス、ハンガリー舞曲集(ピアノ独奏版)
秋だというのに全然寒くならないので、ブラームスを聴きそびれていたら、突然真冬なみの寒さになってしまった。
と思ったら、また暖かくなって、今年は秋という季節がほとんどなかったような...。

(あったかなかったかわからない)秋に聴いたブラームスは、例年のごとく、後期ピアノ小品集。
そのなかでも、最も有名な”Intermezzo”は子守歌のようなOp.118第2番。
Op.117第1番も子守歌風の優しい雰囲気で始まる。

それと対照的な”Intermezzo”は、暗い翳りと哀感に満ちたOp.117第2番。
それに、陰鬱だけれど感情の高ぶりがドラマティックなOp.119の第1番。

細かなルバートとほの暗い音色のカッチェンは、明暗のコントラストが強く、内面を吐露するような語り口と陰翳のある彫りの深い表情で、憂愁と夢想が交錯する。
それでも、速めのテンポとルバートを多用しつつも滑らかな歌い回しで、旋律は滑らかに流れていくので、足を引き摺るように鬱々した重苦しさはない。


Julius Katchen - Brahms, Intermezzo op.117 n.2 - Intermezzo op.118 n.2
(Op.118No.2は4:41~)



Op.119の第2番の中間部は、長調から短調に転調してから、煌くように流れる旋律の淡い哀感が美しい。
この曲に限らず、ブラームスの曲は、冒頭の主題提示部だけでなく、長調から短調またはその逆に転調した中間部でも、ハッっと心ときめくような短いフレーズがあちこちに散りばめられている。
カッチェンは、速いテンポでルバートを多用するので、さらりとした口の中に濃密な情感が篭り、感情の高ぶるようなドラマティックな展開。

Brahms - 4 Klavierstücke, Op. 119



カッチェンに比べると、音色の明るく起伏の緩やかなレーゼルは陰翳が薄くて、まるで夢想しているようなメルヘンの世界。
それがとても映えているのは、Op.117第1番とOp.118第2番の”インテルメッツォ”。それに、Op.118第5番”ロマンス”。


Johannes Brahms 3 Intermezzi, Op 117 SD

※演奏時間と内容から判断して、レーゼルの音源だと思う。


Peter Rosel plays Brahms 6 Klavierstücke Op.118



おまけは、《ハンガリー舞曲集》のブラームス自身編曲によるピアノソロ版。
低音・中音・高音部それぞれの色彩感が違っていて、低音部のくぐもった響きに載せて、中音部が歌う主旋律とその間を煌くように流れる高音部の旋律のハーモニーが絶妙。
今まで聴いたピアノソロ版でまともに聴けたのは、カッチェンとキーシンの演奏。
キーシンは技巧的に精密で華やか。カッチェンはほの暗いムードが漂っている。

JULIUS KATCHEN on piano '' BRAHMS HUNGARIAN DANCES no 1''.wmv


Brahms Hungarian Dance No.1 - Evgeny Kissin


JULIUS KATCHEN on piano''BRAHMS HUNGARIAN DANCES no 5.wmv


Hungarian Dances Nos. 4 & 5

tag : ブラームス カッチェン レーゼル キーシン

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ギレリス ~ ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第31番
来年2016年は、エミール・ギレリスの生誕100年にあたるメモリアルイヤー。
いつも作曲家ばかりチェックしているので、ピアニストの方はすっかり忘れていた。

ギレリスの録音で聴くのは、ほとんどベートーヴェンのピアノ・ソナタ。
定評のあるブラームスのピアノ協奏曲は、2曲とも私の好みとは違っていたので、ほとんど聴かない。
ベートーヴェンのソナタは、標題付きの6大ソナタと後期ピアノ曲の分売盤を先に数枚買ってしまったので、BOXセットは買いそびれてしまった。
でも、第31番ソナタを聴けば、それ以外の曲を聴かないても良いと思えるくらいに、このソナタの演奏は神がかり的なくらいに凄い。
静謐な美しさに満たされて、明鏡止水の境地というのか、「祈り」を捧げるような演奏は、この時のギレリスにしかできなかったのだと思う。

GILELS, Beethoven Piano Sonata No.31 in A flat Op.110


ギレリスは、最後のソナタ第32番を録音せずに69歳の誕生日を迎える直前に急逝。
公式には心臓発作が原因とされている。しかし、リヒテルの伝記を読むと、本当の原因は医療過誤だった。
当時のモスクワの医療制度は社会主義体制下にあったため、縁故で医者になったりすることもあり、その能力や技術はあてになるものではなかったという。
ギレリスは、演奏旅行に出かける前に病院へ健康チェックを受けに行った。
そこで予防か何かのために注射をされたところ、誤って間違った薬を注射されてしまったため、2分と経たないうちにギレリスは命を失ってしまった。
そしてベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集は未完の全集となった。
この31番の演奏を聴いていると、まるでギレリスの「白鳥の歌」のようにも聴こえてくる。
もしかして、ギレリス自身、漠然とした予感のような何かを感じていたのだろうか?

<過去記事>
ギレリス ~ ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第31番

tag : ベートーヴェン ギレリス

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エングルンド/ピアノ協奏曲とピアノ独奏曲
2016年が生誕100年にあたるフィンランドの作曲家エイナル・エングルンド。
名前くらいしか知らなかったので、少し調べてみると、ピアニストとしても有名な人だった。
作品数は多くはないけれど、ピアノ協奏曲やピアノ・ソナタ、ピアノ独奏曲などの曲を残している。
最も有名な《ピアノ協奏曲第1番》を聴いてみると、第1楽章は現代的な勇壮さと清々しく美しい叙情感を併せ持ったような曲で、バルトークの《ピアノ協奏曲第3番》がすぐに浮かんできた。
第3楽章はフーガが入ったりして、ところどころ少しヒンデミット(それともプロコフィエフ?)に似た感じがしないでもない。
あまり印象的な旋律が出てこないし、凄く面白いと思うほどではないけれど、現代曲にしては調性感がしっかりあるので、普通に聴きやすい。
3つの楽章のなかでは、バルトーク風の第1楽章はかなり好き。

Einar Englund: Piano Concerto No.1 (1955)


エングルンド:ピアノ協奏曲第1番, 第2番/凱旋の讃歌2010エングルンド:ピアノ協奏曲第1番, 第2番/凱旋の讃歌2010
(2010/8/9)
ラエカッリオ (piano)

試聴ファイル



ピアノ独奏曲の方は、調性感が曖昧なところはあるし、印象的な歌謡性のある旋律というのはあまりなくて、あるときはプロコフィエフ風、あるときはヒンデミット風。
私には馴染みのある旋律、リズム、和声なので、面白く聴ける。
ピアノ協奏曲とは違って、ピアノ独奏曲の方ではバルトークを連想することはあまりないし、プロコフィエフよりは、ヒンデミットにかなり近い感じがする。

エングルンド:ピアノ作品集エングルンド:ピアノ作品集
(1985/1/1)
ラエカッリオ (piano)

試聴ファイル(BIS)

 <収録曲>
Introduction and Toccata for Piano
Sonata for Piano no 1
Prelude no 1 "Notturno"
Sonatina for Piano no 1 in D minor
What the hens tell
Gnome
Scherzino
Humoresque for Piano
Pavane and Toccata for Piano

BISのホームページでは、全曲最後まで試聴できる。(なんと太っ腹な)
冒頭の”Introduction and Toccata for Piano”は、時々調性感が曖昧になったり、ちょっとジャジーな雰囲気になったり、現代的な曲。こういうタイプの曲は結構好き。

Einar Englund: Introduction and Toccata, played by Matej Stašík


《ピアノ・ソナタ第1番》や《ソナチネ》の第3楽章は、どこかで聴いたことがある旋律が度々出てくる。
それがヒンデミットの《ピアノ・ソナタ第3番》なのに気が付いたけれど、別のところでは、プロコフィエフ風のシニカルな諧謔風になったりする。

”What the Hens Tell”は、本当に鶏がおしゃべりしているみたい。
”Gnome”というのは、「(地中の宝を守ると信じられた)地の精,小鬼」のこと。
”Humoreski”は、題名どおり、可愛らしくてユーモアのある曲。
”Pavane and Toccata”も、ちょっと不可思議な雰囲気と乾いた抒情感で現代的。

強く印象に残るということはなくても、曲自体はどれも面白い。
現代曲らしいクールな叙情感が、感情的に一定の距離感を保ちつつ押し付けがましいところはないので、私にはストレスなく聴ける。
曲を聴き終わると、やっぱりヒンデミットやプロコフィエフのピアノソロを聴いたときと同じ感覚がずっと残っている。

カレーラス ~ トスティ/Malia(魅惑)
来年が没後100年にあたるフランチェスコ・パオロ・トスティ。
私が初めてトスティの歌曲を聴いたのは、カレーラスのカムバックコンサートのライブ録音。
昔、声楽のCDばかり聴いていた時期に、たまたま梅田のタワーレコードで見つけて、初めてカレーラスのCDを購入したのが、このライブ録音だった。
これがあまりにも良かったので、ライブ映像とドキュメンタリーが収録された『ホセ・カレーラス/オペラ界の不死鳥』というLDまで買ってしまったのだった。

このアルバムでは、トスティの”Malia”が2番目に収録されている。
”Malia”というタイトルで、明るく甘い曲なので、マリアという女性に対する恋歌だとずっと思っていたけれど、”Malia”は女性の名前ではなくて、「魅惑」という意味だと知ったのが数年前。
歌詞を読んでも、ある女性に魅惑された男性の切ない気持ちを歌ったので、恋歌なのは間違いなし。
メロディを聴いているだけで、優しく幸せな気持ちになれるとても素敵な曲。
1970年代にフィリップスに録音したときよりも、声の伸びや張り、きらめきは少し薄れているかもしれないけれど、もどかしく切ない気持ちはずっと強く伝わってくる。
もしかしたら、今まで聴いた男声・女声の歌曲のなかで、(他の歌手ではなく)カレーラスの歌うこの”Malia”が一番好きな曲かもしれない。

José Carreras. Malia. F. P. Tosti.
José Carreras, tenor. Lorenzo Bavaj, piano.、Barcelona. 21/7/1988


Live- Comback Concertos ImportLive- Comback Concertos Import
(2012/5/23)
Jose Carreras (Tenor)

試聴ファイル

発売当初(20年以上前)に購入したCDのジャケットは、ステージで祈るようなカレーラスの写真。






このアルバムは、白血病との闘病生活からカムバック後、1988年7~9月に行われたリサイタル(3公演)から抜粋して収録されたもの。
半数以上は、7月21日バルセロナのリサイタルのもの。
「魅惑」のほかに、気に入って何度も聴いた曲が、トーランドットの”Nessun dorma!/誰も寝てはならぬ”、情熱的なパブロ・ソロサーバルの”La tabernera del puerto/そんなことはありえない(サルスエラ「酒場の女」より)”、カタルーニャ地方の民謡”El cant del ocells./鳥の歌”。

José Carreras. Turandot. G. Puccini.



José Carreras. La tabernera del puerto. P. Sorozabal.



José Carreras. El cant del ocells.




1988年8月13日のカムバックコンサートのライブ映像。
ピアノ伴奏は、ヴィンチェンツォ・スカレーラ。

Jose Carreras, Recital from Peralada Castle 13-8-1988
Josep Carreras in Recital --- Peralada Castle, August 13, 1988




カレーラスのトスティ録音は数種類でている。
私は若い頃のPhilips盤と、ウィーンリサイタルのライブ録音(1996年)(↓)のCDも持っている。
リサイタルでは、ピアノ伴奏によるカレーラスの独唱だけではなく、ソプラノのフリットーリとのデュエット、ピアノ&弦楽四重奏の伴奏と趣向を凝らした楽しいもの。
とても残念なのは、一番好きな「魅惑」が弦楽四重奏曲の器楽演奏になっていて、カレーラスの歌では聴けないこと。

ホセ・カレーラス、トスティに捧ぐホセ・カレーラス、トスティに捧ぐ
(2004/1/21)
Jose Carreras (Tenor)

試聴ファイル

tag : トスティ カレーラス

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ジェイコブス ~ ブラームス=ブゾーニ/コラール前奏曲集(ピアノ編曲版)
ブゾーニは、バッハだけでなく、ブラームスのコラール前奏曲も編曲している。
録音は多くはなく、原曲11曲中4,5,8,9,10,11番の6曲だけ録音していることが多いので、ブゾーニが6曲しか編曲していないのだと思う。

第4番”Herzlich Thut Mich Verlangen/心より喜びに満ちて”は、ブラームスらしい子守歌風の夢見るような主題旋律が美しい。
ただし、ジェイコブスはフォルテがとても力強くて情熱的で、子守歌風の雰囲気は薄め。(ちょっと元気すぎる気が...)

Brahms / Busoni / Paul Jacobs: Herzlich Thut Mich Verlangen, Op. 122, No. 4 - 1979




とりわけ好きなのが、第10番”Herzlich thut mich verlangen/心からの願い”
悲痛な祈りが込められているような曲なので、バッハ=ブゾーニのコラール前奏曲「いざ来たれ、異教徒の救い主よ」に似ている感じがする。
バッハの同名のコラール"Herzlich tut mich verlangen"は、死を観想するコラールだという。
曲自体が良い上に、ジェイコブスのピアノの織り重なる色彩感のある響きと濃淡のある情感の込められた演奏で、この曲集の中でも一番忘れがたい曲。

Brahms / Busoni / Paul Jacobs, 1979: Herzlich thut mich verlangen (2nd version)




バッハ&ブラームス編曲の録音が収録されたCDセット。
現代ものの演奏で定評があったジェイコブスは、AIDSが原因で1983年に53才で早世した。

Busoni;the Legendary RecordingBusoni;the Legendary Recording
(2000/07/24)
Paul Jacobs

試聴する(allmuisc.com)



<過去記事>
ポール・ジェイコブス 『Busoni ;the Legendary Recording』 (1) ブラームス=ブゾーニ/11のコラール前奏曲(ピアノ独奏編曲版)

tag : ブラームス ブゾーニ ジェイコブス

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ブゾーニのバッハ・ピアノ編曲
来年に生誕150年のメモリアルイヤーを迎えるブゾーニは、オリジナル作品もいろいろ書いているけれど、やはり有名なのはバッハのピアノ編曲作品。

シャコンヌ
ブゾーニ(に限らず)のバッハのピアノ編曲もののなかでも、最も有名で録音も多いのは《シャコンヌ》。

初めてこの曲を聴いたのは、ミケランジェリのEMI盤スタジオ録音。
ミケランジェリの《シャコンヌ》録音は、この他に1955年のワルシャワライブなどのライブ録音がいくつか出ている。
EMI盤は録音が1948年とかなり古く、CDの録音音質は全然良くないけれど、余計なものを全てそぎ落としたように、研ぎ澄まされた集中力・凝集力が漲り、全編にストイシズムが漂い、エンディングも荘重・厳粛。
録音音質の悪さが逆に、モノクロ写真のような”迫力”や”迫真性”に似たものを感じさせる。

BACH/BUSONI - CIACCONA - Piano: Arturo Benedetti MICHELANGELI



キーシンの《シャコンヌ》のスタジオ録音(1997年、ソニー盤)を初めて聴いた時、冒頭から視界が急に開けたように新鮮だった。
冒頭や緩徐部分は、テンポが遅くタッチや表現がやや粘着的な感じはするけれど、内省的な静謐さが漂っている。
緩急・静動の対比が鮮やかで、急速部では速いテンポで一気に弾きこみ、音の粒が揃った切れの良い精密なメカニックが際立つ。
芯のしっかりした充実した深みと重みのある和声の響きも美しく、骨格の堅牢さと情感の豊かさが融合し、エンディングは荘重・華麗な響きに包まれて、高揚感と開放感が感動的。

Bach-Busoni: Chaconne in D Minor (Kissin)



トッカータとフーガ ニ短調 BWV565
バッハのオルガン曲で最も有名な(と思う)《トッカータとフーガ ニ短調 BWV565》。
冒頭のドラマティックでかなりオドロオドロしい旋律は、まるで悲劇の幕開けを告げるような趣き。
あまり好きな曲ではなかったけれど、たまたまYoutubeで見ていたガヴリリュクのブゾーニ編曲版を聴いて、印象がすっかり変わった。
オルガンと違ってピアノの音だとオドロオドロしさが薄くなって、さらに生気と迫力のあるガヴリリュクの演奏が素晴らしく、全然イメージが違う曲に聴こえる。
冒頭のトッカータの力強いピアノの響きがドラマティック。その後に続くフーガが美しい。
力強く深い響きのフォルテは大聖堂のように聳え立つように荘重堅牢で重厚。
ガヴリリュクらしいピアニッシモの響きの瑞々しい美しさが静寂で厳粛な雰囲気によく映えている。


ALEXANDER GAVRYLYUK BACH-BUSONI TOCCATA / FUGUE D MINOR



前奏曲とフーガニ長調BWV 532
この曲を初めて聴いたのが、レーゼルが旧東ドイツ時代に録音した作品を集めたBOXセットのバッハ=ブゾーニ編曲集。
レーゼルの明るくクリアな音質と、力強くも軽やかで躍動感のある切れの良いタッチがとてもよく映えて、いつ聴いても惚れ惚れするような鮮やかさ。
清々しく心弾むような気分になるので、クリスマスが近づくといつも聴きたくなってくる。

Bach / Busoni - Prelude & Fugue in D major BWV 532 - Rösel



ブゾーニが編曲したバッハの《コラール前奏曲集》にも好きな曲が多い。
コラール前奏曲「Wachet auf, ruft uns die Stimme/目覚めよ、と呼ぶ声あり BWV 645」

この曲もクリスマスに近づくと聴きたくなる。
現代曲を主なレパーリーにする(オルガニストではない方の)ポール・ジェイコブスは、ブゾーニのバッハ編曲《10のコラール前奏曲 KiV B27》も録音している。
軽やかなタッチとさらりとした叙情感がクリスマスの朝の清々しさに良く似合う。

Bach / Busoni / Paul Jacobs, 1979: Wachet auf, ruft uns die Stimme



コラール前奏曲「Nun freut euch, liebe Christen gmein/今ぞ喜べ、愛するキリストのともがらよ BWV 734」

随分速いテンポで、ちょっとコミカルな感じの曲。
ソコロフらしく声部のそれぞれが色彩感も表情も豊かで、立体的にクリアに聴こえてくる。
特にスタッカート気味の細かいパッセージの音が軽やかで、粒も綺麗に揃っているところが気持ちよい。

Sokolov plays Bach Nun freut euch



コラール前奏曲「Ich ruf zu dir, Herr Jesu Christ/主イエス・キリストよ、われ汝に呼ばわる, BWV 639 」

珍しいブレンデルのバッハ録音。軽やかで線の細い響きが儚げで美しい。

BRENDEL, J.S.Bach "Ich ruf zu dir, Herr Jesu Christ", BWV 639


ブレンデルはもともとバッハ録音が少ない。
”バッハをピアノで弾くべきか”という昔からある命題について、ブレンデルもアラウと同じく、やはり長年バッハはピアノ演奏には向かないと考えていたという。
しかし、「古楽器でのバッハの演奏をたくさん聴きましてから、私はこれだけがバッハの音楽をよみがえらせる唯一の方法じゃない」という結論に達して、ピアノによるバッハ演奏・録音を始めた。
「スカルラッティはハープシコードの音に結びついているのに対して、バッハについては、音色は二次的なものだと考えてきたというわけです」。(デュバル著『ピアニストとのひととき(上)』より)

<過去記事>
ミケランジェリ ~ バッハ=ブゾーニ編/シャコンヌ
キーシン ~ バッハ=ブゾーニ編/シャコンヌ
ガヴリリュク ~ バッハ=ブゾーニ/トッカータとフーガ ニ短調
レーゼル ~ バッハ=ブゾーニ編曲/前奏曲とフーガ BWV532
ポール・ジェイコブス 『Busoni ;the Legendary Recording』 (2) バッハ=ブゾーニ編曲/10のコラール前奏曲
2016年にメモリアルイヤーを迎える作曲家
この時期になると、いつもチェックするのが、翌年メモリアルイヤーを迎える作曲家。
今年調べた情報源は次の2つのサイト。

クラシック作曲家生没記念年一覧

メモリアルの作曲家[クラシックの演奏会情報サイト「i-amabile(アマービレ)」]
暦年と、検索する暦年の間隔(10、50、100年単位)を設定して検索する。

私が知っている作曲家だけピックアップすると、
◆ヴァシリー・カリンニコフ 生誕150年 (1866年 ~ 1901年)
◆エリック・サティ 生誕150年  (1866年 ~ 1925年)
◆フェルッチョ・ブゾーニ 生誕150年 (1866年 ~ 1924年)
◆アルベルト・ヒナステラ 生誕100年  (1916年 ~ 1983年)
◆エイナル・エングルンド 生誕100年  (1916年 ~ 1999年)
◆柴田南雄 生誕100年  (1916年 ~ 1996年)
◆フランチェスコ・パオロ・トスティ 没後100年  (1846年 ~ 1916年)
◆エンリケ・グラナドス 没後100年  (1867年 ~ 1916年)
◆マックス・レーガー 没後100年  (1873年 ~ 1916年)

ピアノ作品の多い作曲家なら、サティ、ブゾーニ、ヒナステラ、グラナドス、レーガー。
フィンランドの作曲家エングルンドもピアニストで、2つのピアノ協奏曲やピアノ・ソナタ・小品などを書いている。
交響曲が有名なカリンニコフも、少数ながらピアノ小品(《悲しい歌》など)をいくつか残している。
ブゾーニは、(オリジナル作品よりも)バッハ編曲を数え切れない聴いていても、また聴きたくなる。好きな曲が多すぎるので、後日まとめて書くことに。

ヒナステラといえば、《ピアノ・ソナタ第1番》
”南米のバルトーク”ともよばれるヒナステラらしいソナタ。
現代音楽のピアノソナタのなかでも、とりわけ印象が強烈で、その旋律とリズムは一度聴いたら忘れられない。
特にテレンス・ジャッドの演奏は飛びぬけて素晴らしい。

Terence Judd plays Ginastera Sonata No. 1 Op. 22


ヒナステラの《ピアノ・ソナタ第1番》が収録されているジャッドのCD。
Terence Judd 1957-1979Terence Judd 1957-1979
(2001/06/26)
Terence Judd

試聴ファイル(amazon.de)



レーガーのピアノ作品は、ピアノ協奏曲に変奏曲やピアノ小品の独奏曲まで、多作家らしく膨大。
重厚長大なピアノ協奏曲や変奏曲を聴くのはかなりの気力が必要なので、それよりもブラームス風のピアノ小品が聴きやすい。
ブラームスに比べると、レーガーの曲は翳りが少なくて、旋律・曲想とも明快。ぼやかず繰り言も言わないブラームスみたい。
26歳頃に書いた”Sieben Charakterstücke”(Op.32)は、力強くパッショネイトで、ブラームス初期~中期の小品に近い趣き。
心筋梗塞のため43歳で早世したレーガーが、亡くなる1年前くらいに作曲した”Träume am Kamin”(Op.143)になると、ブラームス晩年の後期ピアノ小品のような瞑想的な静けさが漂う。(でも、ブラームスみたいな鬱々した暗さはない)

レーガーのピアノ作品全集なら、マルクス・ベッカーのThorofon盤(全12巻)

REGER 7 Charakterstücke Op.32 (1899)| M.Becker | 1997


REGER Träume am Kamin, 12 Pieces Op.143 (1915) | M.Becker | 2000




サティはあまり好きではないし、”スペインのショパン”と言われるグラナドスも苦手なので、メモリアルイヤーでもたぶん聴かない。
でも、グラナドスの《星々の歌》はとても素敵な曲。
正式な曲名は、”Cant de les estrelles : Poeme per a piano, orgue i cors”(星々の歌:ピアノ、オルガン、合唱のための詩)。
”スペインのショパン”の名にふさわしく、詩的な作風で旋律と和声がとても美しい。
特に全体の1/3くらいを占めるピアノ独奏は、少しエキゾチックで憂いを帯びたショパンを聴いているような気がする。
ピアノ曲が得意だったグラナドスらしく、ピアノ・ソロはそれだけ聴いても満足できるくらいに美しい。
漆黒の宇宙のなかに星々が瞬いているようなロマンティックさがあるけれど、どことなくクリスタルのような冷ややかな肌触りがする響き。

1911年のグラナドス自身の指揮による初演では絶賛された曲だったが、なぜかグラナドスは楽譜を出版せず、今まで再演されることもなかった。
グラナドスの死後、相続人の間で出版契約に関してもめていたり、出版社に預けていた手稿譜が火事で酷いダメージを受けたりして、紆余曲折があった後、ようやく楽譜が出版され、初演から100年近くが経って、この曲が日の目を見ることに。
出版された楽譜は、グラナドスのスペシャリストと言われるダグラス・リーヴァが復元したもの。
《星々の歌》の初録音は2007年録音のNAXOS盤。ピアノ演奏はリーヴァ。

Enrique Granados: «Cant de les estrelles» (1911)
Douglas Riva, piano、Mark Kruczek, órgano、Voices of Ascension、Dennis Keene, director

(作品解説:8・9月号(No.277) - アカデミア・ミュージック


星々の歌~近代カタルーニャの作品集星々の歌~近代カタルーニャの作品集
(2009/06/30)
ヴォイシズ・オブ・アセンション, デニス・キーン (指揮), ダグラス・リーヴァ, マルク・クルチェク, エリカ・キーセウェッター

試聴する(amazon.uk)



<過去記事>
テレンス・ジャッド ~ ヒナステラ/ピアノ・ソナタ第1番
ベッカー ~ レーガー/ピアノ小品集
グラナドス/星々の歌

tag : ヒナステラ グラナドス レーガー ベッカー ジャッド

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プロフィール

yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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