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ドライイーストと天然酵母
<ドライイーストの培養方法>

パン職人松崎太さんの著書『ベッカライ・ビオブロートのパン』に、”自家製酵母種はよくてイーストは悪い”というのは誤った認識だ、と書かれていた。
最初読んだときはあまり深く考えなかったけれど、天然酵母をいろいろ使っていると、ドライイーストとの違いはどこにあるのか、確認しておきたくなってきた。

酵母に対する松崎さんの考えは、著書によると以下の通り。

イーストであっても自家製酵母種であっても、そこに優劣はないと考えている。それよりも、酵母種を培養する原材料がオーガニックであることを大切にしたい。
自家製酵母種に比べてイーストに悪いイメージがあるのは、一般的に酵母種を培養するための栄養源に糖蜜を使い、窒素やリン酸などが添加されるため、人工的に作られているように感じるのだろう。
また、ドライイーストの材料表示には乳化剤なども書かれているので、マイナスのイメージを助長しているのかもしれない。

そもそも、イーストとは、自然界に存在する数多くの酵母菌の中から「サッカロマイセス・セレビシエ」という、発酵力の強い菌だけを選んで培養したもの、というだけだ。それに対して、自家製酵母種は一つの菌だけを選び出すのは無理なので、必然的に複数の酵母菌が含まれている。それゆえイーストに比べて発酵力は弱いが、味わいはより複雑になり、それが長所にもなる。
 どちらも同じ”酵母”であることに変わりはない。

最近のパン業界では「イースト」ではなく「パン酵母」という表記が使われるようになっている。
それでも僕があえて「イースト」と呼ぶのは、業界の流れからは反しているが、ビオブロートのようなオーガニックの材料を使った店で「酵母」と表記すれば、たいていの人は「自家製酵母種(天然酵母)」と解釈するだろうと思うからだ。また”自家製酵母種はよくてイーストは悪い”という風潮への抗議の意味もある。



「いつも焼きたて/天然酵母 ①」)のブログ記事によると、ドイツのオーガニックパンでは、オーガニックの環境で純粋培養したBIOイーストを使うという。
その理由は、イーストを工場生産する過程で窒素やリン、硫黄などが添加されるが、それらを酵母が全部使い切らずに市販のイーストに残留している場合があると考えるから。
<参考>記事リスト:天然酵母①~天然酵母⑧


ドライイーストの安全性に関する説明(パン食普及協議会)
- パン酵母(イースト)は糖蜜を栄養源にして純粋培養される。この時に窒素やリンが培地に添加される。
- 窒素は空気中にも含まれるし、リンも細胞にとって不可欠な構成要素。
- 培地中の窒素やリン等の栄養源は培養工程中に酵母に吸収されて、酵母の細胞を形成する有機質に変化する。
- 酵母に吸収されなかった窒素やリン等は増殖が終わった段階で除去される。


イーストの作り方[オリエンタル酵母工業]
製造工程図あり。糖蜜(=廃糖蜜)が培養液に使われていることは記載されているが、この図には窒素やリンを添加することは省略されている。

自然酵母について イースト(パン酵母)[自然酵母の味輝パン]
- 人工培養された酵母=工業用イーストは、酵母培養時にpH調整剤を添加し、リン酸や窒素、カリウムなどの化学肥料を使う場合もある。甘味料のような廃糖蜜またはぶどう糖加糖液糖等の安価な材料で大量に純粋培養される。

自家製酵母とイーストの違い[アルーチパン教室]


私はドライイーストも市販されている天然酵母種も両方使っている。
ドライイーストを使う理由は、低コスト・冷凍保存可能・使い勝手の良さの3点。
発酵力が強く、焼きあがりも安定しているし、使用量の幅が大きいので、ホームベーカリーのあらゆるコースで使える。
天然酵母種は、コストは高いけれど、出来上がったパンの美味しさはドライイーストに勝る。

ただし、ドライイーストには乳化剤が添加されているので、あまり良いイメージはないし、製法を知るとさらにそう思う。
対して、「天然酵母」に対するイメージは、天然の材料だけを使っているので、健康的で風味が良いというもの。

実際、作るのに手間暇がかかる「天然酵母パン」は、付加価値が高いので、ベーカリーショップではかなり高額で販売されている。
ちょっと変な商品だと思うのは、天然酵母種の使用量はわずかなのに、「天然酵母パン」という商品名で、1日1万本も売れているというプライベートブランドの食パン。
天然酵母種としてパネトーネ種を使い、使用量は酵母100%中4.7%。原材料には、乳化剤などの添加物もいろいろ入っているし、2斤分が200円くらいと、低価格のドライイースト食パン並み。
微量とはいえ、天然酵母種を使っているのは事実としても、天然酵母種で発酵させているとは言えないし、風味付けと付加価値づけに使っているのでは?
ただし、「天然酵母パン」に関する表示方法は、法的にも、パン業界の自主基準としても、明確な規定はないらしい。

天然酵母表示問題に関する見解(社団法人日本パン技術研究所所長井上好文平成19年1月9日)[パン食普及協議会ホームページ]
製パン業界団体関係の研究機関のレポート。立場上、ドライイーストには肯定的なので、その分は割り引いて読むとしても、酵母を巡る問題点がいろいろわかる。


<天然酵母種の製造工程>
天然酵母種といっても、自家製天然酵母種と市販の天然酵母種の2種類があり、ホームベーカリーで使っているのは市販の天然酵母種のみ。
ものぐさな私は、手間暇のかかりメンテも面倒な自家製の天然酵母を作るつもりは全くないので。

市販の天然酵母種は、生種おこしが必要な「ホシノ天然酵母」と「あこ酵母」、予備発酵が必要なドライタイプの「白神こだま酵母」(予備発酵不要タイプもあり)、「とかち野酵母」、予備発酵不要でドライイースト同様に使える「パネトーネマザー粉末」。
輸入品なら、オーガニックでドライタイプのイースト「ビオリアル(Bioreal)」(商品名は「有機穀物で作った天然酵母」など)が入手しやすい。

天然酵母の培養方法は、製品によってかなり違う。

ホシノ天然酵母
酵母菌だけでなく麹菌も薬品を使用せず、自然食材だけで純粋培養。(企業秘密なので詳細不明)
乳酸菌も必要。0.2%乳酸が入ると他のいらない菌が繁殖できない。また酵母菌と相性がよく、適性なphも保つ。この乳酸菌は工場に住みついているものなので、あえて加えることなく入ってくる。
原材料は、国産小麦、国産米(減農薬)、麹、水。酵母菌・麹菌・乳酸菌が入る。
ホシノ天然酵母の秦野工場見学[パナデリア]

白神こだま酵母
酵母は、Saccharomyces cerevisiae(サッカロマイセス・セレビシエ)属
培養には、酵母を発見した秋田県総合食品研究所の指導により、炭水化物(国産の糖蜜)、タンパク質、ビタミン類等、天然から抽出したもののみを使用。
サラ秋田白神ホームページの「お知らせ」

国産の廃蜜糖(加工助剤の使用あり)を培養液として使用。
ただし、培養後の集菌工程において「遠心分離」「再度、生理食塩水程度の塩水で洗浄」「濾過」を行うため、最終製品へのこの糖蜜の残留はほとんど心配ない。
白神こだま酵母(カタログ“2008年5月5週号” 国産小麦で簡単にパンが焼ける)[安全な食べものネットワーク Alter[オルター])


あこ天然培養酵母
100%穀物と水だけで培養し、添加物等は不使用。(詳細不明)
あこ天然培養酵母について

パネトーネマザー粉末
種菌は、酵母菌(サッカロミセス エクスキューズ)や乳酸菌(ラクトバチルス サンフランシスコ、ラクトバチルス ブレビス、ラクトバチルス プランタラム)等。
製造元PANEXが北イタリア周辺で採取された菌を日本に持ち帰り、国産小麦農林61号で培養したパネトーネ種を粉末に加工して、ドライーストを添加したもの。(詳細不明)
20%添加されているドライイーストは、乳化剤使用のフェルミパン。
かりに培養工程に化学薬品等を使っていないとしても、最終的な製品にドライイーストを混ぜているので、天然酵母とドライイーストを折衷したような酵母。
酵母の説明 (ぱねぱんクラブ)

とかち野酵母
酵母菌は、エゾヤマザクラのサクランボを分離源とする菌株。
最終製品には、乳化剤とビタミンCが添加されている。
とかち野酵母インスタントドライイースト[日本甜菜製糖]

有機穀物で作った天然酵母
原材料は、有機とうもろこし、有機小麦、有機馬鈴薯でん粉、酵母。全て遺伝子組換フリー(ドイツLACON有機認定団体認証)。廃糖蜜や化学薬品等は不使用。
製造方法:有機酵母の培養栄養源を作るため、発酵タンクの中に・天然水・有機穀物・糖化酵素(有機麦芽酵素、非遺伝子組換)を加える ⇒有機イースト種菌を入れ培養する(小型タンクから大型タンクへ徐々に移す) ⇒遠心分離 ⇒イーストクリーム ⇒ろ過 ⇒低温乾燥 ⇒ドライイースト(有機天然酵母)
有機穀物で作った天然酵母 9g。(エコサート有機認証団体認証/JAS有機認証品)



<廃糖蜜について>
廃糖蜜というのは、初めて聞いた言葉なので、調べていると、砂糖を精製する工程で出てくる副産物。
「廃糖蜜」という言葉に対して一般的に抵抗感があるらしく、「糖蜜」、「モラセス」と表記される場合も多い。
糖蜜の主要用途は、酒類原料、飼料、アミノ酸関係(うま味調味料、家畜飼料の添加剤であるリジン等の原料)。
発酵業界では、製パン用イーストを製造しているイースト業界のみ使用。
ラム酒や焼酎、醸造アルコール(お酒・お酢の原料などに使用)、加工黒糖の原料などに使われているので、廃糖蜜の安全性が問題になるとは思えない。
糖蜜(2010年3月6日最新版、農畜産業振興機構)


収集した情報をもとに考えるに、(自家製天然酵母は別として)パン酵母に使う菌は似たようなものだとしても、培養環境がそれぞれ違う。
安全性・安心感にとことん拘るのであれば、市販製品のなかでは、オーガニック製品として認証されている「有機天然酵母」(ドイツの「Bioreal」)がベストだと思う。
でも、酵母だけオーガニックや添加物・農薬があまり使われていないものにしたところで、他の材料(小麦粉、油脂、砂糖。拘るなら、塩と水まで)も、オーガニックかそれと同等の品質のものでなければ、あまり意味はない。
配合量が微量な酵母の添加物を問題にするなら、一番使用量の多い粉の残留農薬も無視できない。
特に輸入小麦にはかなり高い確率で(規制基準値内の)残留農薬が検出されているので、有機天然酵母を使う意味はほとんどない。
国産小麦の方は残留農薬は検出されることは(ほぼ)ないので、残留値のないものを使うのであれば、国産小麦がベター。
オーガニックの小麦粉を使うのがベストかもしれないけれど、国産・輸入ものとも、普通の小麦粉の数倍するので、常用している人が多いとは思えない。(厳密に言えば、有機JAS規格では、有機栽培であっても、指定条件下で指定農薬は使っても良いことになっている)
さらに、油脂、砂糖までオーガニック製品で揃えている人はほとんどいないのでは。

パン酵母に関していえば、コスト、添加物・農薬使用状況、作業性、出来上がりの良さの兼ね合いで、ドライイーストや数種類ある天然酵母種を選択したい。
ドライイーストに対しては、今までネガティブなイメージを持っていたけれど、いろいろ調べてみると、ドライイーストが天然酵母よりも”極めて”悪いというわけではないと思い直した。
それでも、添加物・農薬の使用度という点に限っていえば、使用が少ない順に、オーガニックなドライイースト<ホシノ天然酵母や白神こだま酵母<ドライイースト(Safなど) ということになる。
天然酵母&オーガニックの信奉者ではないけれど、ドライイースト特有の匂いが好きではなく、長時間発酵させた方がパンは美味しいと思うので、今までどおり、ドライイースト(赤サフ)は少量(0.5%以下)で使うことにしたい。
私としては、使用量が僅少な酵母に含まれている添加物よりも、(特に輸入された)小麦粉の残留農薬の方を気にしたい。

tag : ホームベーカリー

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【新譜情報】ペーター・レーゼル『ピアノ名曲小品集2』
ペーター・レーゼルの『 ピアノ名曲小品集2』が6月にリリース予定。
Vol.1と同じく、収録曲目だけ見ると、購買意欲があまり刺激されない。
好きな曲はバッハの「イギリス組曲」、その他に聴きたいと思うのがドビュッシーの「沈める寺」、スクリャービン「プレリュードとノクターン」くらい。
でも、試聴ファイルを聴けば、やっぱりCD買ってしまうような気がする。

前回に引き続き今回の小品集でも、あえてブラームスを外したとしか思えない。
ロマン派では、シューマン、ショパン、メンデルスゾーンにチャイコフスキーやドヴォルザークまで入っているから、普通ならブラームスを1曲くらいは録音するはず。
やはりブラームスのピアノ作品集を再録音する計画があるのでは?(と勝手に期待している)

 ピアノ名曲小品集2(仮) SACD
2016年6月1日
ペーター・レーゼル

試聴ファイルなし


<収録曲目>
メヌエットK.1(モーツァルト)
イギリス組曲第3番~ガヴォット (J.S.バッハ)
ロンドop.51-2 (ベートーヴェン)
ワルツ第6番変ニ長調op.64-1「子犬のワルツ」 (ショパン)
無言歌op.19-1 (メンデルスゾーン)
ロマンスop.28-2 (シューマン)
四季op.37b~11月 トロイカで (チャイコフスキー)
即興曲ロ長調D.935-3 (シューベルト)
楽興の時ハ長調D.780-1 (シューベルト)
ユーモレスクop.101-7 (ドヴォルザーク)
舟歌ト短調op.65 (アルカン)
沈める寺 (ドビュッシー)
民謡の旋律による3つのロンドBB.92~第1番 (バルトーク)
華麗なロンド変ホ長調op.62 (ウェーバー)
左手のための2つの小品op.9 プレリュードとノクターン (スクリャービン)
(SACDハイブリッド、2016年3月録音)

tag : レーゼル

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シベリウス/ピアノ小品集
ツィンマーマンのCDでシベリウスのヴァイオリン協奏曲ばかり聴いていたら、たまにはピアノ曲も聴きたくなってきた。
シベリウスはピアノ協奏曲は書いていないけれど、演奏時間が数分足らずのピアノ小品集を数多く残している。
有名なのは、管弦楽曲版もある「悲しきワルツ」。”悲しい”というよりも、重苦しく陰鬱なワルツ。ピアノソロよりも管弦楽曲版の方がさらに重苦しい。

Sibelius 'Valse Triste' PIANO SOLO - P. Barton


© Jean Sibelius - Valse triste, op. 44 nr. 1 (1903-04) - DRSO - Rafael Frühbeck de Burgos



シベリウスのピアノ曲をいろいろ聴いていると、同じ北欧でノルウェーの作曲家グリーグの《叙情小曲集》とは、印象がかなり違う。
シベリウスは、叙情美しくとも、北国にある湖のような透明感と冷んやりとした温度感があり、情緒や感傷過多になることがない。
感情や情緒に働きかけるというよりも、思索的・内省的。叙情的な曲であっても、感傷を寄せ付けないようなストイックな厳しさ、孤独感、寂寥感などが流れているようにも感じる。
ベタ~っとした感情移入ができる曲ではないので、感情的にもたれたり食傷することがなく、聴けば聴くほど味わいが深くなる。

ピアノを弾く人なら知っているかもしれない《樹の組曲》の終曲「樅の木」は、孤独感漂うモノローグのような音楽。この渋さが何とも言えない。

Jean Sibelius - Kuusi Op.75/5 (by Eero Heinonen)



《樹の組曲》の冒頭は、「ピヒラヤの花咲くとき」。
「ピヒラヤ」とは「ナナカマド」のこと...と言われても、「ナナカマド」も知らない。写真を見ると赤い実がなっているので、南天と間違えそう。
白夜(Aika Felt Works)を見ると、お花の方は、白くて可愛い。
この記事では6月頃に開花しているので、フィンランドなら雪解けの後に咲くのだろうか。
この曲も温度感が低くて、やっぱり寒い国に咲く花のイメージ。

Sibelius Pieces 5, for piano The Trees, Op 75 No 1, 'When the Mountain ash Rowan is in Flower' (田部京子)



こちらはシベリウスのピアノ作品集(抜粋)がまとめて聴ける音源。
ピアニストは、フィンランドのEero HeinonenとOlli Mustonen(CDあり)

Sibelius - Piano Works (piano: )



シベリウスのピアノ作品の録音は数種類あり、BIS(2種類)、FINLANDIA、NAXOS、Alto(Continuum)から出ている。
抜粋盤の録音は意外と多く、幅広い年代の作品をカバーしているのは、舘野泉とフィンランドのピアニスト・ビータサロ。どちらかというと親しみやすい曲を中心に選曲しているせいか、晩年の作品が少ない。
同じくフィンランド人のムストネンは独特のタッチで面白い。(でも、聴きたい曲集がほとんど入っていなかった)
なぜかアシュケナージグールド(ほとんどがソナチネ)も録音している。

Op.75(1914年)以降に書かれた作品を収録したのが田部京子(CHANDOS盤)。
「樹の組曲」と「花の組曲」に加えて、晩年の作品のなかから3つの曲集をカップリング。
選曲が一番私の好みにあっているし、ピアノの音がとりわけ美しい。
試聴ファイルを何度も聴けば聴くほど、シベリウスの音楽の渋さに妙に惹かれてしまう。
結局、CDで全曲聴きたくなってきたので、注文してしまった。

Piano WorksPiano Works
(2000/8/22)
kyoko Tabe

試聴ファイル

tag : シベリウス 田部京子

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【新譜情報】カヴァコス&パーチェ『ヴィルトゥオーソ~ヴァイオリン小品集』
カヴァコスが4月にリリースする新譜は『ヴィルトゥオーソ~ヴァイオリン小品集』。
アルバムタイトルと作曲者から想像するに、技巧的な曲を中心とした選曲。(聴いたことがない曲がほとんどなので、よくわからない)

確実にメロディーが思い浮かぶのは、《アルハンブラの思い出》と《ユモレスク》。
《「ゴッド・セイヴ・ザ・キング」を主題にした変奏曲》は、ベートーヴェンがピアノ曲を書いている。パガニーニの方は、ツィンマーマンがアンコールで弾いていたのを聴いた覚えがあるような、ないような...。
《ばらの騎士》と《感傷的なワルツ》は、有名そうな曲なのでメロディくらいは知っているかも。

 Virtuoso Virtuoso
(2016/4/8)
Leonidas Kavakos 、 Enrico Pace

 
 


<収録曲>
1. 「ペトルーシュカ」~ロシアの踊り(ストラヴィンスキー)
2.  ロシアの歌(ストラヴィンスキー)
3. バスク奇想曲(サラサーテ)
4. アンダルシアのロマンス(サラサーテ)
5. アルハンブラの思い出(タレガ)
6. 「三角帽子」~粉屋の踊り(ファリャ)
7. 「うつろな心」による序奏と変奏曲(パガニーニ)
8. カプリッチョ・ワルツ(ヴィエニャフスキ)
9. 「ばらの騎士」~ワルツ(R.シュトラウス)
10. 「ハンガリー牧歌」~ジプシー・アンダンテ(ドホナーニ)
11. Reveille(ブリテン)
12. 気紛れな女(エルガー)
13. 「6つの小品」~感傷的なワルツ(チャイコフスキー)
14. 「ゴッド・セイヴ・ザ・キング」による変奏曲(パガニーニ)
15. ユモレスク(ドヴォルザーク)

録音は2015年5月。
ピアノ伴奏は、2年前にブラームスのヴァイオリンソナタを一緒に録音したユジャ・ワンではなく、(小品集のためか)再びベートーヴェンのヴァイオリンソナタで伴奏していたパーチェに。
諏訪内晶子の新譜に次いで、カヴァコスの新譜でも、パーチェのピアノが聴けるので、私には◎。


【2016.4.22 追記】
独amazonサイトにあった試聴ファイル(今は削除されている)を聴いてみると、静動・緩急取り混ぜて、ワルツ、オペラ、舞曲、ロマンス、etc.と、バラエティ豊かな選曲。ブリテンの《Reveille》だけ、他の曲とはかなり異なる作風。
無伴奏は3曲:《アルハンブラの思い出》、《「うつろな心」による序奏と変奏曲》、《「ゴッド・セイヴ・ザ・キング」による変奏曲》。
最初は技巧華やかで賑やかな《ロシアの踊り》、最後は《ユモレスク》でほのぼの~。
一般的なヴァイオリン名曲集とはかなり違った選曲で、試聴ファイルを聴いただけでも、このCDはとても楽しめそうな印象。
ピアノパートにしても、冒頭の《ペトルーシュカ~ロシアの踊り》はピアニスティックだし、《粉屋の踊り》や《カプリッチョ・ワルツ》、《感傷的なワルツ》などはピアノの響きがとても綺麗。

                        

Youtubeを探してみたら、やっぱりツィンマーマンがパガニーニの《”God save the King”による変奏曲,Op.9.》を弾いていた。
苦手の無伴奏曲でも、奏法を見ながら聴くと、とっても面白い。でも、左手が腱鞘炎になりそう...。
ベートーヴェンと違って、結構ユーモラスな感じ。ついでにツィンマーマンも、曲の最後のところでちょっとしたジョークの仕草を入れて、聴衆から笑いを誘っていた。

Paganini-Variations "God save the King"



こちらはベートーヴェンの《”God save the King”による7つの変奏曲, WoO.78》
ベートーヴェンらしい優美さと格調高さのある変奏曲。

Beethoven - Variations en ut majeur sur God save the King - Cziffra



tag : カヴァコス パーチェ

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グールド ~ ベートーヴェン/ピアノ協奏曲全集
Youtubeで偶然聴いたグールドのベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番が、思いがけなく”まっとう”な演奏だったので、私としては珍しくも、グールドのベートーヴェンBOXを購入。
ピアノ協奏曲全集だけのセットも出ているけれど、このBOXセットにはピアノ協奏曲だけでなく、ピアノ・ソナタも12曲抜粋収録されている。
随分昔にグールドの録音を集めていたので、バッハ以外の録音なら、ブラームスにシュトラウス、ベルク、シェーンベルク、ギボンズなど10枚くらいは持っている。
最近シューマンのピアノ四重奏曲のCDも買ったけれど、ベートーヴェンは最後のソナタ3曲以外は聴いたことがなかった。

Glenn Gould Plays Beethoven Sonatas & CoGlenn Gould Plays Beethoven Sonatas & Co
(2010/08/03)
Glenn Gould

試聴ファイル(別盤にリンク)

<収録曲>
ピアノ協奏曲第1番(1958年,ゴルシュマン指揮コロンビア響)
ピアノ協奏曲第2番(1957年,バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィルハーモニック)
ピアノ協奏曲第3番(1959年,同上)
ピアノ協奏曲第4番(1961年,同上)
ピアノ協奏曲第5番『皇帝』(1966年,ストコフスキー指揮アメリカ響)

もともと好きな第3番は、グールドらしくないかなり”まっとうな”ベートーヴェン。
ノンレガートは多用せず、歯切れよいクリアな打鍵と済んだ音色に滑らかなレガートが、とても耳に心地よく響く。
面白いのは、第3番第1楽章のカデンツァ。
終わり近くで楽譜にないフレーズを付け加えている。Tempo1に入る直前の小節で、左手が短いアルぺジョに続いて主題を弾いている。
普段は聴き慣れないフレーズが聴こえてきたので、他のピアニストの録音を聴いても、楽譜で確認しても、この旋律が出てこない。
突然回想される主題がくっきり浮かび上がって、とても印象的。(1955年のウンガー&CBC響との演奏でも同じ弾き方をしていた。)


Glenn Gould - Beethoven Piano Concerto No. 3 Mvt. 1 ( part 1 )


Glenn Gould - Beethoven Piano Concerto No. 3 Mvt. 1 ( part 2 )




グールドが弾いているとは思えない第3番に比べて、第4番は作品よりもピアニストがずっと前面に出て、ピアニストの個性が煌いている。
第3番よりもノンレガート的なタッチが増えて、バッハの対位法みたいに、右手の主旋律以外に左手の旋律もくっきりと明瞭に響かせているところが多い。
第1楽章冒のピアノソロは、かなりネットリしたタッチで始まり、時々歌い回しもメロウになり、ロマン派風の雰囲気が漂う。
冒頭とか途中出てくる和音で、少しアルペジオ風に崩して弾いているときがある。(冒頭はかなり崩したアルペジオだった)
私の好みとしては、和音をアルペジオで弾くとロマン派の曲みたいなセンチメントを感じるので、楽譜どおりに崩さずにしっかり同時に全ての音を和音として弾いて欲しい。
左手側の伴奏の強拍部を強調して、内声部の旋律みたいに聴かせるところが面白い。

スラーのフレーズをノンレガートで弾くのも、響きが違って面白い。(でも、好きなのは、バッハ風ベートヴェンではなくて、普通にレガートで弾いた演奏の方)
カデンツァはペダルを多用して、フレージングも細かい起伏が多いので、ロマン派みたいな響きの厚さとセンチメント。
第2楽章ロマン派みたいに情感過多気味。
いつもは第1楽章より印象が薄かった第3楽章が、マルカート気味の輪郭の明瞭なタッチと、対位法的みたいに両手の旋律の絡み合ったような弾き方が面白い。


Glenn Gould - Beethoven piano concerto No.4 in G major 1st movment (1/2)


Glenn Gould - Beethoven piano concerto No.4 in G major 1st movment (2/2)



第1番は軽やかなタッチと滑らかなレガートで、グールドにしてはとても柔らかくしなやか。
でも、第1楽章のテンポが速すぎて、(小ネズミが走り回っているかのように)ちょこまかとせわしない。第3楽章もかなり速いテンポ。
軽快だけど音楽を味わう前に頭の中を通り過ぎていくような感覚がしたので、私の好みとはちょっと違っていた。
面白いのは、第1楽章のカデンツァ。たぶんグールドのオリジナル。

tag : ベートーヴェン グールド

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輸入小麦のポストハーベスト農薬に関する情報
輸入小麦のポストハーベスト農薬に関して、情報をまとめておきたく思ったので、ネットで情報収集。
一番知りたかったのは、残留農薬の客観的な検査結果データ。
農水省の残留農薬検査データは毎年公開されているが、これは輸出国で船積時の小麦(玄麦)の検査結果。
輸入後に製粉された小麦粉とパンなどの加工食品を対象にした検査データは、2000年以降の検査結果が大学・試験研究機関・民間消費者団体などから数件発表されている。


<農林水産省>
米麦の残留農薬等の調査結果[農林水産省]
輸入小麦は、産地国での船積時に「食品等輸入届出」を提出するロット毎に試料を採取して検査実施。
国産・輸入小麦とも、規制基準値以上の残留農薬は検出されていなかったとはいえ、国産小麦と輸入小麦ではあきらかに残留農薬の量が違う。
国産小麦は、規制基準値はもちろん、定量限界以上の残留農薬を検出した検体はない。

一方、輸入小麦は、定量限界以上の農薬が検出されている検体がかなり多い。
外国産小麦は、平成26年度後期~平成25年度前期の結果では、収穫・買入時期が異なるためか、年度前期と後期では、前期の方が定量限界以上の残留農薬を検出する検体が多い傾向がある。
春小麦と冬小麦では農薬の使用量がかなり違うためか、単に小麦の輸出時期によってポストハーベスト農薬の使用量が違うためか、理由はわからない。
輸入小麦だからといって、必ずしもポストハーベスト農薬が検出されるというわけではないとしても、基準値内に収まっているとはいえ、残留農薬が検出される場合が少なくない。
※ポストハーベスト処理は、主に輸送するのに長期間かかる船便の農作物が対象。船便でもオーガニック農作物専用コンテナ、空輸便などには、ポストハーベスト処理が行われていないらしい。

<大学・試験研究機関>
小麦の製粉及び調理加工後における有機リン系農薬の残留
(食品衛生学雑誌Vol. 33 (1992) No. 2 P 144-149、堀 義宏他、北海道立衛生研究所)
- 試料:外国産小麦(米国・カナダ)と北海道産小麦を配合した混合小麦7検体(産地特定不可)、同一ロッ トの混合小 麦を製粉した小麦粉11検体。
- 小麦に残留した農薬はふすまに約80%, 小麦粉に2~20%の残存。
- クロルピリホスメチル: ゆでた場合50%以下まで減少、焼く, 揚げるなどの調理法では50%以上の残存率。
- マラチオン:焼いた場合の製品には50%以上の残存率。揚げた場合には27%程度, ゆでた場合にはほとんど残存せず。
- 灰分はふすまに多く含まれている。.2等粉は1等粉よりふすまの混入する割合が高い.。
- 小麦に残留する農薬は製粉,調理加工することにより減少。1等粉を用いて製造された製品は小麦中の残留濃度の6%以下になるが、クッキーなど2等粉を用いて製造された製品は残存率が高くなる傾向。


GC-FPDによる食品中の残留農薬の分析 一小麦粉中の残留有機 リン系農薬の分析一(長坂尚子,近藤陽太郎、京都女子大学家政学部食物栄養学科食品学第二研究室,京都女子大学食物学会第57号(2002-12-10))
- 外国産小麦を用いた小麦粉からポストハーベスト農薬使用のためと思われる残留農薬が,16検体のうち11検体から検出。
- 国産小麦でも、5検体中2検体から残留農薬を検出。
- 小麦に散布された農薬は,小麦の表皮部分である「ふすま」に残留しやすい傾向。
- 小麦粉を使用した小麦粉加工製品中にも農薬が残留。
- 加熱温度が高いほど農薬は分解・揮散されるが,カステラやビスケット等では,製造上での水の添加により中心部まで十分に温度が上昇しにくいため、加工後にも残留しやすい。
- 麺類に含まれる極性の高い農薬は,ゆでる過程で減少するが,脂溶性の高い農薬はゆでた後にも残留。
- 小麦粉は,野菜や果実のような剥皮や洗浄による農薬の除去操作がなく,脂肪成分が多いことから極性の低い脂溶性の農薬が残留されやすい。


市販小麦粉・小麦製品(1997~2000年)の購入時並びに保存中の有機リン系農薬の残留(神戸大学発達科学部研究紀要 (水野裕士、村田芳博、水野圭、吉野正人、丸谷宣子、白杉(片岡)直子) 9/, 159-166 2001 (大学・研究所等紀要) [出所/食品安全情報:名古屋生活クラブ「給食会の調査で輸入小麦の残留農薬が検出できなかった理由」
輸入小麦粉中の残留農薬値の検査結果が引用されている。(原典未確認)
外皮を取り除いた精製後の白い小麦粉でも、全粒粉よりは残留農薬がかなり減っているとはいえ、検出されている製品がほとんど。


加工および調理による小麦試料中残留農薬の濃度変化
(食品衛生学雑誌、Vol. 49 (2008) No. 3 P 150-159、坂 真智子他、(財)残留農薬研究所化学部残留第2研究室)
- 小麦の加工・調理による13種の農薬の残留濃度変化に伴う調理加工品への移行率・加工係数の調査
- 分析試料9種類:玄麦、一次加工4種類(60%粉(=小麦粉)、大ふすめ、小ふすま、末粉)、二次加工4種類(食パン2種類、うどん玉、中華麺玉)
- 製粉工程におけるプレハーベスト処理試料(Pre, 9薬剤)とポストハーベスト処理試料(Post, 6薬剤)を調製
- 移行率:玄麦に残留する農薬の絶対重量に対する生成試料中の残留農薬重量の比率(%)
- 加工係数:玄麦中に残留する農薬の濃度に対する生成試料中の残留農薬濃度の比
- 製粉工程での移行率:玄麦に残留していた農薬のうち、Preでは70%以上,Postでは80%以上がふすまとともに除去され,60%粉に残っていたのはPre 1.7~23%, Post 4.0~11%の範囲。
- Pre農薬の二次加工品への移行率:全粒粉100%食パン75%以上、60%粉(小麦粉)食パン1.4~22%、うどん玉1.8~25%、中華麺玉1.7~22%。
- Post農薬の二次加工品への移行率:農薬によって移行率がかなり違う。60%粉(小麦粉)食パンは多くても農薬の1割程度が残留。全粒粉100%食パンには、農薬の半分~ほぼ全量が残留しており、60%粉(小麦粉)食パンの数倍~20倍程度の高濃度の農薬が残留。
- 移行率は、PreよりもPost農薬の方が低い。



<消費者団体等>
市販パン20品目の残留農薬検査結果(北海道消費者協会の調査結果(“北の暮らし”2001年1月31日)
「1999年、市販のパン20品目の残留農薬の検査を行い北海道産小麦100%のもの6品からは農薬が不検出、北海道産小麦を使用しているもの(他の小麦も混じっている)1品、残りの13品のパンからは全て検出」[惠泉マナベーカリー
※原データは未確認。


パン類の残留農薬分析結果[農民連食品分析センター]
- 2001年に農民連食品分析センターでおこなったパン類(40検体)の残留農薬分析結果。
- ハンバーガー、ケーキ、学校給食パンといったほとんどの製品から有機リン系農薬(基準値内)を検出。
- 検出されなかったのは地元産小麦を使用した埼玉県学校給食用パンと食パン一検体のみ。


「比較・消費者運動論」 安全基金の活動と考え方(12)
- 1993年から2000年にかけて200品目以上の学校給食パンを検査し、同時に、外国のパン、日本の白いパン、全粒粉・胚芽・ふすま・ライ麦などを入れた高級パン、有機小麦パン、国産小麦パンなどを検査した。(詳細な数値データ不明)
- ポストハーベスト農薬の残留量が最も多かったのは外国のパン。最悪はオーストラリア、続いてドイツ、アメリカの順。文献を調べると、最悪なのはイギリスのパン。
- 日本では、学校給食パンが最悪で、次が全粒粉などのパン、3番目が有機小麦パン(外国産の有機小麦が原因)、4番目が(外皮を除いている)安くて白い食パン。
- 残留農薬が最も少ないのは、国産小麦パン。食品倉庫の害虫対策で使われるフェニトロチオンという殺虫剤が検出されることもある。


↑の検査結果で、学校給食パンの残留農薬が最多だった理由は、3等~2等級の小麦粉を使っているため。
等級が低いほど小麦の外皮に近い部分が多くなり、農薬の残留量も増える。
全粒粉パンが残留農薬値が多いというのは、外皮ごと製粉するから。検査した全粒粉パンは、全粒粉100%ではなかったので、学校給食パンよりも残留農薬が少なかったのではないかと思う。
全粒粉パンよりも、栄養が少ないと言われる精白小麦粉パンの方が、残留農薬が少ないというのは、ヘルシーなイメージとは全く逆。
オーガニック輸入小麦粉を使ったパンからも残留農薬が検出された理由はわからない。
たまたま原料の有機輸入小麦に農薬が残留していたレアケースなのか、オーガニックといえども輸入小麦にはポストハーベスト処理が行われるものなのかが、不明。


(参考:オーガニック小麦粉)
むそう商事のオーガニック小麦粉
むそう商事のオーガニック小麦粉は、ポストハーベスト処理は一切行わず、虫やカビの発生を防ぐため、できるだけ寒い時期(1〜3月)に小麦を輸入している。
フランス産小麦は輸入時に船が赤道を2回通過するので、温度管理のため、冷蔵コンテナを使用。(「SoooooS.」の情報
「ポストハーベスト処理をしないので、寒い時期に輸入している」ということは、たとえオーガニックでなくても、寒気に輸入すれば、ポストハーベスト農薬が使われていないか、使用量が少ないとも考えられる。
このことは、農水省の残留農薬検査データでも、年度後期輸入分の小麦の方が残留農薬の検出数も検出量も少ない、ということと一致している。
芦屋にあるオーガニック・ドイツパンベーカリー「ベッカライ・ビオブロート」が使っている小麦粉は、むそう商事が輸入しているカナダ産小麦。



<業界団体の見解>
Q. ポストハーベスト農薬の方が残留しやすいのですか。[農薬工業会]
-日本で、農薬のポストハーベスト使用は、保管のためのくん蒸剤以外認められてiいない。
-アメリカなど諸外国では、大量・長期貯蔵、長距離・長時間輸送の必要からポストハーベスト農薬の使用が、穀物、果実などに認められている。常に農薬が使われるのではなく、穀物の場合は夏を越すものに殺虫剤が使われ、野菜や果物も消費者に届くまで時間がかかるものに殺菌剤が使われている。
-日本向けに輸出される穀物は輸送ルートによっては夏を越すのと似た条件になるので、ポストハーベスト農薬が必要になるといわれる。

(参考)Q. 有機栽培でも農薬を使うことができるのですか。[農薬工業会]
有機JAS規格の有機農産物の生産方法:「堆肥などにより土づくりを行い、多年生作物の場合は収穫前3年以上、その他の作物の場合は、播種又は植え付け前2年以上の間、原則として化学的に合成された肥料や農薬は使用しないこと。遺伝子組換え種苗を使用していないこと。」
ただし、有機栽培でも一定の条件下で定められた農薬を用いることができる。


Q2 パンの残留農薬は?[パン食普及協議会]
- パンに使用されている小麦の産地であるカナダ、米国北部は、冬場はマイナス30度以下になることから、寒気によるエアレーションが行われていて、貯蔵時に農薬散布や燻蒸処理が行われることはほとんどない。
- 船での輸送時に赤道を通過することが無いことから、輸送中に昆虫等が発生することもほとんどない。

業界団体の説明を読むと、貯蔵時と輸送中に”ポストハーベスト”処理が使われることは極めて少ないかのような印象を受ける。
それにしては、農水省の検査結果では、アメリカ・カナダ産の小麦でも、残留農薬が検出される検体が多い。
ポストハーベスト農薬がほとんど使われていないのが事実だとすれば、農薬を使って栽培している国産小麦に農薬が残留していないということは、国産小麦よりも大量の農薬を使って輸入小麦が栽培されているということなのだろうか?
農薬が散布されるのがポストハーベストかプレハーベスト(収穫前)かどちらであっても、輸入小麦の多くに(規制基準値内の)農薬は残留している。


【検査データから考えてみると...】
輸入小麦は輸出国の船積時に農薬が残留していることが多く、その輸入小麦を製粉した小麦粉や小麦粉加工製品にまで、規制基準値とはいえ、農薬は残留する。
それに対して、国産小麦で残留農薬が検出されることはほとんどない。

残留農薬は小麦の外皮部分(ふすま)に多いので、外皮ごと製粉する全粒粉・小麦ふすまの残留量が非常に多い。
そのため、全粒粉・小麦ふすまを使った加工調理食品は、外皮を除去した精白小麦粉とその加工調理品に比べて、残留農薬がかなり多い。大まかにいえば、数倍~20倍くらい。
精製した精白小麦粉は外皮が除去されているので、残留農薬は大幅に減少する。概ね、ポストハーベスト農薬の残留量は製粉前の約1割以下、プレハーベスト農薬では約2割以下くらいまで減る。

国産小麦粉と輸入オーガニック小麦粉のどちらが良いのかは、オーガニック小麦の残留農薬値の検査結果(があれば)で確認しないと実際のところはよくわからない。
日本のJAS認定されたオーガニック農産物については、特定の条件下で、指定された農薬を使うことは認められているので、必ずしも「無農薬」ということではない。
しかし、普通の国産小麦でも農薬はほぼ残留しないので、オーガニックの国産小麦でもそれは同じだと思う。
海外のオーガニック製品でも、ポストハーベスト農薬が使われていないはずなのに、残留農薬が検出されたというデータがあるので、これが事実だとすると、レアケースなのかどうかがよくわからない。

検査データでは残留農薬は規制基準値内に収まっているので、たとえ残留農薬が検出されたとしても、それが(すぐに)健康被害につながるとは思わないけれど、残留農薬はゼロか出来る限り少ないに越したことはない。
輸入小麦を常用するなら、栄養値が高い全粒粉よりは、精製して栄養価が低くなった精白小麦粉の方が、小麦に振りかけられたポストハーベスト農薬(とプレハーベスト農薬)の摂取量が激減するので、かなりマシ。(栄養は他の食材から摂れば良いことなので)
少なくとも、自家製パンで全粒粉を使う場合は製品を選択できるので、輸入小麦粉ではなく、国産小麦粉か、オーガニック小麦粉を使った方が良い。
(オーガニック小麦粉については、輸入小麦よりも国産小麦の方が、ポストハーベスト農薬を使用する可能性がゼロという点ではベターかも?)
今まで米国産輸入小麦を使った国内メーカーの全粒粉を使っていたけれど、価格が2倍くらいの北海道小麦の石臼挽き全粒粉に切り替えることにした。

常用しているドイツ産のライ麦粉も全粒粉。ライ麦100%と思っていたら、今使っている製品にはなぜか小麦粉も入っていた。
フランス産小麦は赤道を2回通過して輸送されるそうなので、ドイツ産小麦・ライ麦も同じルートだと思われる。
赤道を通過すると船倉がかなり高温になるだろうから、冷蔵便でない限り、ポストハーベスト処理されているに違いない。(小麦は常温保存されるのが普通なので、冷蔵便で輸送されるとは思えない)
価格が数割高い北海道産の100%ライ麦粉(全粒粉のみ)が販売されているので、これも国産品に切り替え。
国産小麦であれば、オーガニックではなくても残留農薬はほとんどないし、価格も銘柄によっては輸入小麦より少し高い程度(ただし、銘柄によってかなり違う)。
オーガニックならさらに良いけど、常用するには500g500円くらい。慣行栽培の小麦粉の数倍と結構高い。
個人的な好みとして、もともと国産小麦の方が風味もよくてパンも美味しいと思うので、残留農薬の多寡に関わらず、できるだけ国産小麦を使いたい。


<参考情報>
小麦と小麦粉のはなし[木下製粉]
小麦の構造
小麦の構造は、胚乳(約83%)、表皮(約15%)、胚芽(約2%)。
表皮はふすまとして家畜飼料、胚芽は小麦粉に利用。
表皮部分の灰分値は中心部分の10倍以上。小麦全体での灰分値は1.1~1.8%程度。
灰分(ミネラル分)の少ない小麦粉は上級粉、多い小麦粉は下級粉。中心部分からは上級粉がとれ、表皮部分に近づくほど、下級粉になり、灰白色のくすんだ色になる。
たんぱく質の多い硬質小麦よりも、たんぱく質の少ない軟質小麦の方が、灰分は少ない。

全粒粉は、小麦をそのまま丸ごと製粉するため、溝状のクリーズ部分に溜まっている不純物が混入するため「雑味」となる。
「ブラウワー」は、小麦の胚乳部分と表皮部分(小麦ふすま)とを別々に処理して雑味を取り除いた商品。

tag : ホームベーカリー

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
風と光/有機穀物で作った天然酵母
カルディで販売中のドイツ産有機天然酵母(ドライタイプ)がず~っと気になっていたので、ホシノ天然酵母のストックが少なくなったのを機に、試作するため、先日1袋だけ購入。
上手くパンが作れたら、夏場は過発酵するため使っていないホシノ天然酵母の代わりに使いたい。
市販されている国産の天然酵母のうち、生種おこしが不要なドライタイプは白神こだま酵母、とかち野酵母。オーガニックの国産天然酵母は見かけことがない。

この有機天然酵母は、スイス・バーゼルのアグラーノ社が開発し、子会社ドイツ・リーゲルにあるビオリアル社で製造している「Bioreal」のこと。
遺伝子組み換え原料、化学薬品不使用。厳格な品質管理の専用工場で製造。
原材料は、有機とうもろこし・小麦・馬鈴薯でん粉(ドイツ産)、酵母のみ。
サフのインスタントドライイーストに含まれているような乳化剤は不使用。
芦屋のオーガニックドイツパン・ベーカリー「ベッカライ・ビオブロート」でも使われている。

有機天然酵母の扱いやすいところは、ドライタイプで予備発酵が不要なこと。
ただし、水に触れてはいけないので、パンケースに水と一緒に投入してはいけない。
開封後、1ヶ月以内に使用(パッケージには、できるだけ早くとだけ書いている)。冷凍保存不可。
生地のこね上げ温度は28℃~30℃が最適。
レビューをチェックすると、クセのない風味で小麦の味が良く出るらしい。

<風と光/有機穀物で作った天然酵母(ドライイースト)>
一般に市販されているのは、分包タイプ30g(3g×10袋)、1袋9g入り。
9g入りは、近隣のカルディで168円(税込)で購入。
分包タイプは、amazonで購入可能。送料無料で600円ほど。

説明書きの使用量は1~1.5%。私は粉180gでいつも焼くので、1%使用なら5回分、1回当たり約34円。
HBの天然酵母コースで長時間発酵させる場合は、酵母は半分として、約17円。(⇒試作したら、酵母が少なすぎて、ほとんど膨らまなかった。酵母は少なくとも1%は入れないといけない。)

風と光 有機穀物で作った天然酵母 30g(3gx10袋)風と光 有機穀物で作った天然酵母 30g(3gx10袋)
(2015/12/75)

風と光

この商品以外に、日本の代理店数社から、異なるパッケージで販売されている。

【使用法】
説明書によれば、酵母使用量は粉量比1~1.5%。全粒粉・菓子パンは2倍。
タイガーのホームベーカリーサイトのQ&Aの回答は、「有機乾燥酵母は天然酵母に近いので、発酵時間を長めにとってください。熟成食パンコースを選び、イーストを3gもしくは購入された酵母の指定の量でお試しください。 発酵力が弱いため、上記の方法でも高さは低くなります。 」
ということは、粉250gの標準レシピに対して、3g(1.2%)。(⇒砂糖・油脂不使用で試作したら、ほとんど膨らまなかった)


【酵母投入のタイミング】
有機天然酵母を入れるタイミングの検証実験[アトリエリブラ]

手後ねで、次の2方法で比較すると、「生地入れ(後入れ)の方がよかった」とのこと。
①酵母を粉と一緒に入れて、水も一緒に混ぜて最初からこねる
②生地を先に作っておいてそこに酵母を入れ込む
パナソニックHBなら、普通のイースト投入口に入れておけば、自動的に後入れになる。
タイガーの場合も、イースト投入ケースに入れておくと、粉を捏ね始めてしばらくすると投入されるので、実質的に後入れになる。
私は投入ケースはいつも使っていないので、粉と水がよく混ざってから、手動でイーストを投入。

【レシピ】
天然酵母コース以外の発酵時間が短いコースでは、酵母1~1.2%程度なら普通に膨らんでいる。
ただし、砂糖・バターが5~10%くらい入ったレシピが多い。
砂糖もバターも入れない手捏ねレシピだと、長時間発酵させている。

有機穀物で作った天然酵母 ホームベーカリーのレシピ[風と光]
酵母2%。砂糖・バター6%程度。

有機穀物で作った天然酵母 ホームベーカリーのレシピ[HB(ホームベーカリー)レシピ]
酵母1%ちょっと。砂糖・バター入り。

ライスミルクブレッド[富澤商店]
酵母1.2%。砂糖20g。

有機JAS オーガニックパンミックス粉 全粒粉 風と光 250g 食パンミックス レシピ
有機全粒粉パンミックス(有機砂糖、有機小麦でんぷん、食塩)、有機ショートニング(または無塩バター)、有機穀物で作った天然酵母、水。酵母量は1.2%(全粒粉粉入りにしては、少ない)

有機穀物で作った天然酵母・レシピ[アトリエリブラ]
手捏ね成形パン用レシピが多数あり。菓子パン系は発酵時間が短いため、酵母量は2%が多い。ベーグルは1.5%。

有機天然酵母のパンレシピ[調理係日報 インズヤンズ梟城・調理係。]
「この酵母の場合、全粒粉が多いほど早く発酵しますし、バゲットなどは、なんと0.5%の酵母で出来る」と書かれている。
著書『にっぽんのパンと畑のスープ~なつかしくてあたらしい、白崎茶会のオーガニックレシピ』では、「Bioreal社の有機天然酵母」を使っている。
著書の丸パンレシピでは、粉250g(うち全粒粉50g)に対して有機天然酵母2g(0.8%)を使い、冷蔵庫でオーバーナイト発酵させている。
酵母0.8%で長時間発酵させているので、「0.5%使用でできる」というバゲットでもオーバーナイト発酵させるはず。

にっぽんのパンと畑のスープ~なつかしくてあたらしい、白崎茶会のオーガニックレシピンにっぽんのパンと畑のスープ~なつかしくてあたらしい、白崎茶会のオーガニックレシピ
(2010/2/25)
白崎裕子



(cookpadのホームベーカリーレシピ)
全て砂糖、油脂を入れているので、膨らみは良い感じ。
天然酵母コースで長時間発酵させるとしても、砂糖は入れた方が膨らむ。

北海道産小麦食パン [cookpad]
はるゆたかブレンド400g、有機天然酵母5g。牛乳、オリーブオイル、甜菜糖、天然塩。天然酵母コースまたは全粒粉コース。
酵母1.25%。それでも、長時間発酵させるために天然酵母コース使用。
発酵時間が長い方が粉の旨味も多くなるので、この方法が一番美味しくなりそう。

有機天然酵母使用☆P機HBでフランスパン [cookpad]
リスドォル280g、有機天然酵母2.8g(専用スプーン小1)。塩、上白糖。フランスパンコース。
酵母1%。トータル所要時間は、最近のパナ機ならたぶん5時間。
※フランスパンにしては、酵母が多い。HB添付レシピでは、普通のドライイーストの場合は2.1g(0.75%)しか入れていない。砂糖も使っていないはず。

HB カフェオレ&くるみ パン[cookpad]
北海道産パン用小麦粉250g、有機天然酵母小さじ1。スキムミルク、砂糖、バター。食パンコース。
酵母1%くらい。

                                 

<試作>
タイガーHB/KBH-V100使用。
最初の捏ね開始後、ある程度生地がまとまってから、酵母を手動で投入。

1)熟成食パンコース(4時間20分+追加発酵160分)
イーグル145g、中力粉25g、水128g、塩2cc、モルトパウダー0.5cc、有機天然酵母1g(付属スプーン小1gの目盛り)。
コース所定時間4時間20分プラス工程別コースで発酵時間を追加(発酵(1)(30℃)を80分、発酵(2)(32℃)を80分)。


2)熟成食パンコース(4時間20分)
イーグル170g、水128g、塩2cc、モルトパウダー0.5cc、有機天然酵母2g。

3)天然酵母コース(7時間)
オーベルジュ175g、水122g、塩2cc、モルトパウダー0.5cc、有機天然酵母約1g。

4)天然酵母コース(7時間)
キタノカオリ175g、水122g、塩2cc、砂糖8g、バター6g、有機天然酵母約2g。

(比較)天然酵母コース(7時間)
キタノカオリ175g、水122g、塩2cc、砂糖8g、バター6g、ドライイースト小さじ1/4(約0.8gくらい)

一番出来映えが良かったのは、4)の天然酵母コースで酵母2%に砂糖・バター入り。
天然酵母パンらしい、目の詰まったフカフカ~としたクラム。
ホシノ天然酵母ほどではないとしても、クラムはしっとり感があり、イースト臭はせず、ほんのりした甘みがあって、これは美味しい。(でも、これはキタノカオリ自体の甘みかも?)
比較するために、赤サフでも作ってみたら、高さは赤サフの方が少し高め。クラストは若干柔らかく、クラムはちょっとしっとり。甘みは少なめ。やはり、有機天然酵母の方が、とうもろこしのようなほんのりした甘みがあって、美味しく感じる。

膨らみの良いのは、4>1>2、3。
どらかというと、酵母の量よりも、発酵時間の方が影響するらしい。
発酵時間の長い4と1は、高さが低いとはいえ、まがいなりにも山形にはなっている。
2は、酵母を1%以上入れたのに、酵母0.5%で長時間発酵させた3とあまり変わらないフラットな台形。
amazonのカスタマーレビューを見ると、気温が低くなると膨らみにくくなるという感想が多数あり。倍量の6g使うとよく膨らむらしい。

クラストは砂糖・バター入りの4が多少柔らかめ。
クラムの内相と食感は、明らかな違いがある。モチモチ感は、2>1>3>4。
砂糖・バターゼロだと、モチモチ感が強くなり、強力粉を使った2は気泡が多く、チャバタみたいにクラムが糊化してツヤツヤ。
準強力粉レベルの1は、2よりも気泡が少なく、糊化度が低い(発酵時間よりも粉の違い)。
3はもちもちしたフランスパン風(大きな気泡はなく目が詰まっている)。
4は目が詰まってフカフカでちょっともちもち。いかにも天然酵母らしさのあるクラム。

クラムの甘みは、どれもほんのりとした味わいで、濃くはない。
フルーティな甘みではなく、穀物・野菜系統の噛み締めてよくわかるな素朴でクセのない甘さ。
酵母の原料が、とうもろこし・小麦・じゃがいもなので、その味とイーグルの小麦の味とが出ているのだろうか?
甘みが比較的よく出ているのは、粉の風味が一番薄そうな1と、キタノカオリを使った4。


5)天然酵母コース(7時間)(パナソニックSD-BH106)
イーグル140g、全粒粉30g、ライ麦粉15g、オートミール5g、ぬるま湯140gくらい(?)、にがり0.2cc、塩2.5cc、バター3g、モルトパウダー1cc、有機天然酵母約2.8g(1.5%)
残っていた酵母全部を使いたかったので、粉を適当にブレンドして、酵母量1.5%、モルト多め、バター少々。
うっかりパナソニックSD-BH106を使ってしまった。
でも、↑の4回の試作よりも、これが一番よく膨らんだ。
その理由は、酵母量が多い、全粒粉・ぬるま湯使用、モルトも多めなど、膨らみやすい配合にしたこと。
それに、もともとタイガーよりも膨らみやすいパナソニックを使ったので、機種の違いの影響もかなりあるような気がする。
出来上がった食パンは、香りも味も取り立てて良いというわけでもない。
トーストすると美味しいのは、全粒粉独特のカリカリ感のため。
同じ配合でドライイーストと比較すればわかるだろうけど、この有機天然酵母を常用するつもりはないので、当分比較することはできない。
※昨日、タイガーHBでドライイーストを使って作ってみたら、水分が多かったせいか、台形になって発酵不足気味。でも、食べてみると、パナよりもクラムがしっとりとして、粉の味わいが強くて、美味しい。やはり、膨らみやすいのはパナ、粉の味がしっかり出て美味しいのはタイガー。これはどのパンでも同じ。


<結果のまとめ>
(酵母使用量)
同量のドライイーストに比べて発酵力がかなり弱い。
ホームベーカリーの規定コースで作るなら、熟成食パン・天然酵母コースとも、酵母は粉量比1%は必要。1.5%で長時間発酵させると、全粒粉入りでもかなり膨らむ。
熟成食パンコースでも発酵時間が短すぎるので、天然酵母コースがベスト。
酵母量を1%以下に減らすなら、独立工程コースを使って発酵時間を長くセットするか、冷蔵庫でオーバーナイト発酵させた方が良い。(面倒なのでそういうことはしない)

(味)
天然酵母特有のクセのある風味ではなく、イースト臭はなし。
ほんのりとした甘み。フルーティではなく、(とうもろこしかじゃがいもみたいな)穀物系のマイルドな甘み。
しっかりかみ締めるとじんわり美味しい..みたいな地味な味わい。(ホシノ天然酵母のような独特の濃厚な味わいはなし)
風味の薄いイーグル100%でも、ドライイーストよりも美味しくなる。
砂糖・バターを入れないパンの食感は、チャバタ風でもちもち。ふわふわしたパンが嫌いな私には、好みの食感で○。
風味の弱い粉の方が酵母の味わいが強くでるようなので、イーグルには向いている。

(使い勝手)
予備発酵不要なので、いつでも気軽に使えるのは◎。
ただし、開封後1ヶ月以内に使用しなければならない。(乳化剤を加えていないので、酸化に弱いのだろうか?)
1袋で酵母1%使用の場合は、約5回分(粉180g)なので、1ヶ月で使いきれないことはない。

(コスト)
1回あたり粉量180gで焼くと、酵母のコストは約34円。
ホシノは小袋タイプ(50g×5袋入)で、約25円。(実際には購入時に送料がかかるけれど、粉と一緒に買っているので考慮せず)
ドライイーストの場合は、粉量比0.5%くらいしか使わないので、コストは1回あたり数円。


<結論>
発酵力は、ドライイースト、ホシノ天然酵母に比べてかなり弱いので、▲。砂糖・バター少量のリーンなパンを酵母量1%で焼く場合は、発酵時間の長い天然酵母コース必須。
風味は、ドライイーストよりも良いけれど、天然酵母独特の風味は薄くて、やや○。
コストは、ホシノ天然酵母の1.5倍くらい。▲
使い勝手は、予備発酵不要で、ドライイーストとほぼ同じ。◎
保存性は冷凍不可で、開封後1ヶ月以内に使い切る必要がある。やや▲
天然酵母としては、ほんのりとした甘みは美味しいとはいえ、凄く美味しいわけでもない。○
酵母量1%ではホシノ天然酵母よりはるかに発酵力が弱い。▲
ドライイーストの代わりにするには、発酵力が弱すぎるし、コストと保存性でかなり劣る。▲
砂糖・バターゼロのリーンなパンの膨らみがかなり悪い。▲
特に低温には弱い。冬場はぬるま湯を使えば多少マシになりそうだし、夏は発酵しやすいのかも。
砂糖・バターを少量入れると、若干膨らみがよくなる。(でも、砂糖・バター入りのパンはほとんど焼くことがないので、やはり使う必要性は低い)

結局、乳化剤を使ったドライイースト(赤サフ)を使いたくないのでなければ、この有機天然酵母を積極的に使う理由はほとんどない。
それに、オーガニック(添加物・農薬等不使用)という点に拘るなら、他の材料(特に最も使用量の多い粉は)もオーガニックでなければ、パン酵母にオーガニック製品を使う意味がほとんどない。
少なくとも粉については、オーガニックではなくても、残留農薬が(ほとんど)検出されない国産小麦くらいは使いたい。
有機天然酵母を使うことがあるとすれば、過発酵のためホシノ天然酵母を使わない夏場や、ホシノのストックが切れた時に天然酵母を使いたい時、(滅多に焼かない)砂糖・バター入りのドライイーストパンの代用、くらいだろうか。




<参考情報>
『ベッカライ・ビオブロートのパン』(松崎太著)に記載されているBiporealの情報
- ドイツで使っていた生イーストタイプは、香りも味も良い。
- 日本で使っているドライイーストタイプは、発酵力がかなり弱く、冷蔵庫などの低温環境では発酵しなかったり、捏ね上げ温度が低いと発酵が極端に遅くなる。
- 温度変化に弱い。30℃の室温保存で発酵しなくなったため、冷蔵庫保存している。(※市販品のパッケージには、20℃以下の保存と指示書きあり)
- 暑い夏に氷水で生地を仕込む時は、ある程度捏ねている生地の温度が上がってから、ビオレアルを投入。最初から混ぜて捏ねたら、全く発酵が進まなかった。反対に、冬場はミキシングしながらぬるま湯を混ぜていく。
- 焼きあがったパンは、イースト臭がしない。


ベッカライ・ビオブロートのパンベッカライ・ビオブロートのパン
(2014年9月1日)
松崎 太

目次(PDF)


天然酵母7種類の比較表[クオカ]
表中の有機天然酵母は、風と光社と同じ製品。販売元が違うだけ。

HBで焼き比べ実験第2弾 ~有機穀物の天然イースト~[シェフズフード]
白神こだま酵母との比較。有機天然酵母の使用量がかなり多い(2%近い)ので、全粒粉食パンのボリュームはほぼ同じ。

tag : ホームベーカリー

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
ツィンマーマン ~ シベリウス/ヴァイオリン協奏曲
フランク・ペーター・ツィンマーマンのシベリウス《ヴァイオリン協奏曲》の珍しいライブ映像は2008年の演奏。
同年、ONDINEにこのコンチェルトを録音している。
力強くてきりりとしたツィンマーマンの演奏する姿を見るのは好きだけど、若い頃よりも(恰幅も良くなったことだし)貫禄と余裕が感じられる。
17年前に録音した旧盤よりも起伏がより大きく、シャープさと力感も増しているし、同じ頃に録音したスタジオ録音よりも、このライブ演奏の方がより力強さと気合を感じる。

Frank Peter Zimmermann - ein Porträt (Teil 4)


ツィンマーマンは、シベリウスのヴァイオリン協奏曲を10歳くらいの頃に弾いていたという。
両親から”まだその曲を弾くのは早いから、弾いてはいけません!”と怒られてしまったというエピソードが面白い。
普通の親なら”この子は凄い!”と大喜びするだろうに、逆に叱ったというのだから、演奏家の両親(チェロ奏者の父親とヴァイオリン奏者の母親)はやっぱり違う。

インタビュー映像では、初めてこのコンチェルトを録音して以来長い間弾いていなかったが、最近再び弾き始めるようになって(※たぶん2008年頃のこと)、もう一度初めから終わりまで勉強し直した、とか、難しいパッセージが多くてタイトロープ(綱渡り)のようだ、とか話していた。

ツィンマーマンのシベリウス録音は、2種類。
伴奏がヤンソンス&フィルハーモニア管のEMI盤(1991年録音)、ストルゴー&ヘルシンキ響のONDINE盤(2008年録音)。

シベリウス:ヴァイオリン協奏曲、プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第2番シベリウス:ヴァイオリン協奏曲、プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第2番
(2016年6月22日予定)
ツィンマーマン(フランク・ペーター)

試聴する(既発国内盤にリンク)
※ジャケット写真は既発国内盤のもの。


再録音したONDINE盤は交響詩 「吟遊詩人」と劇音楽「森の精」をカップリング。(シベリウス苦手な私は、両曲とも途中で眠たくなってしまった...)
指揮者のストルゴーとは、ブゾーニのヴァイオリン協奏曲をSONYに録音している。

シベリウス:ヴァイオリン協奏曲/交響詩 「吟遊詩人」/交響詩「森の精」シベリウス:ヴァイオリン協奏曲/交響詩 「吟遊詩人」/交響詩「森の精」
(2010/8/18)
F.P. ツィンマーマン

試聴する



数あるヴァイオリン協奏曲のなかでも、一番好きなのがこのシベリウス。きりりと引き締まった叙情感とスリリングさにとても惹かれる。
特に好きな第3楽章を聴いても、旧盤と新盤の演奏が違うのは、ヴァイオリン曲には疎い私でもわかる。
演奏時間は、全楽章とも新盤の方が短く、体感テンポも速い。
旧盤の方がアーティキュレーションが克明に聴こえてくる分、やや重たさがあり、疾走感は少なめ。
新盤は、速めのテンポで音の切れが良く、力強くも軽快な躍動感があり、メリハリを利かせた旋律の歌い回しが滑らかなので、旧盤盤よりも颯爽として洗練された感じがする。
ヴァイオリンは、旧盤が1700年製ストラディヴァリ”エクス・ドラゴネッティ”、新盤が1711年製ストラディヴァリ “レディ・インチクイン”。

ヴァイオリン演奏の技巧のことはさっぱりわからないけれど、ヴァイオリン関係のブログを読むと、”目も眩むようなテクニック”とか”完璧”とか書いているので、ツィンマーマンの技巧の高さと安定感は間違いない。
シベリウスのライブ映像を見ていても、余裕綽々というか、自信に満ちた姿で弾いているので、安心して聴ける。

<参考情報>
【推薦動画】 フランク・ペーター・ツィンマーマン[Violinear]

<インタビュー記事>
フランク・ペーター・ツィンマーマン[伊熊よし子のブログ]

そういえば、ツィンマーマンは名だたる国際コンクールでの入賞歴がない。
唯一プロフィールに記載されているのは、11歳の時の「ドイツ連邦共和国青少年音楽家コンクール優勝」。
デュメイは、「好き嫌いに関わらず、今はコンクール以外の選択肢がありません。アンネ=ゾフィ・ムターやフランク・ペーター・ツィンマーマン等は幸運でした」と言っている。


【ベスト・オブ・クラシック放送予定】
ちょうど1年前の来日公演のライブ録音がNHK-FMで放送予定。
曲目は、嬉しいことにシベリウスの《ヴァイオリン協奏曲》と、アンコール曲のバッハの無伴奏。
↓のコンサートレビューを読むと、本当にツィンマーマンはそういう演奏したんだろうか?と思えてくるので、興味津々。
うっかり聴き忘れないように、すぐに録音予約した。
最近になって、NHK-FMもネットラジオでも聴ける。ラジカセでエアチェックしていた昔の頃を思い出すと、便利な世の中になったものだと思う。

(詳細)
日時:3月24日(木) NHKFM 午後7時30分~午後9時10分
タイトル:「セレクション -ベルリン放送交響楽団 来日公演-」 (東京・サントリーホール、2015年3月16日)

◇「バイオリン協奏曲 ニ短調 作品47」 シベリウス作曲(29分39秒)
フランク・ペーター・ツィンマーマン,マレク・ヤノフスキ指揮ベルリン放送交響楽団

◇アンコール曲:「無伴奏バイオリン・ソナタ 第2番 イ短調
BWV1003から 第4楽章“アレグロ”」バッハ作曲(5分23秒)

(コンサートレビュー)3・16(月)マレク・ヤノフスキ指揮ベルリン放送交響楽団[東条碩夫のコンサート日記]


【2016.3.24 追記】
実際にNHK-FMで聴いてみると、私がいつもCDで聴いているツィンマーマンの演奏(ONDINE盤)と比べて、多少粘り気が強く起伏も大きいようには感じるけれど、そんなに大きくは違わない。
もともと音色の美しいツィンマーマンだけど、このライブ録音はスタジオ録音と同じくらいかそれ以上に、ヴァイオリンの音がとても綺麗で伸びやか。
第3楽章はスタジオ録音に比べてテンポが速いので(演奏時間にして30秒短い)、音が細かく詰まったパッセージになると、ちょっと慌しい感じがしないでも...。そういう点では、スタジオ録音の方が疾走感は少し落ちるけれど、落ち着いた安定感がある。
演奏が素晴らしいことは間違いないけれど、このツィンマーマンの録音が私のベスト盤で、これが私には普通(スタンダード)なので、↑のレビューの評者が感じたほどの凄い驚きは感じない。
でも、人によってはそれほどインパクトがある演奏なのだと初めてわかったのだった。

アンコール曲は、ツィンマーマンの演奏では初めて聴いたバッハの「無伴奏ソナタ第2番第4楽章アレグロ」。
いつも弾いている定番のアンコール曲は「第2番第3楽章アンダンテ」だったので、アレグロは初めて聴いた。
好みをいえば、しみじみとした味わいのあるアンダンテの方が好きだけど。



<過去記事>
F.P.ツィンマーマン ~ シベリウス/ヴァイオリン協奏曲

tag : シベリウス ツィンマーマン

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ホシノ天然酵母とホシノ丹沢酵母の違い
今ホームベーカリーで常用している天然酵母は「ホシノ天然酵母」。
用途別に数種類の酵母がある。ホシノ天然酵母パン種の種類を見ると、以前は販売していたはずのビール種が消えていた。

サイズは、50g×5袋入りの分包タイプと、500g入りの2種類。
分包タイプは、ノーマルの「ホシノ天然酵母」だけしか販売されていなかったが、最近、「丹沢酵母」と「ぶどう種」の小袋も新発売。
分包タイプもあるので、丹沢酵母は一度使ってみたいと思って、クオカやamazonのカスタマーレビュー、ブログで情報収集。
「丹沢酵母」で作ったパンは、普通の「ホシノ天然酵母」と比べて、酵母独特の香りが薄く、甘みがあり、ふっくらとふんわりとよく膨らむという。
酵母の香りが弱い分、小麦の味がしっかり出るようには思う。白神こだま酵母パンと少し似ているような印象。
ホシノ丹沢酵母のクチコミ(クオカ)

「ホシノ天然酵母」独特の酒粕みたいな香りやおせんべいを食べているみたいな和風の味わいが好きなことと、パンはふわふわではなく、目の詰まったどっしり重たい方がすきなので、丹沢酵母パンは私の好みとは違う可能性大。
もし50g入り小袋を1袋だけメール便で販売しているオンラインショップがあれば、一度試してみたい気はする。
5袋も入っている分包サイズを買って好みと違うパンだったら、1年間近くそういうパンを食べないといけないのがイヤなので、購入するのはパス。

<ホシノ天然酵母と丹沢酵母で作ったパンの比較情報>

ホシノ天然酵母パン種vsホシノ丹沢酵母パン種[コボコボ]

焼き比べシリーズ第3弾-ホシノ従来種vsホシノ丹沢vsAKO天然酵母[自然派パン工房「ぷれっちぇる」開校なるか?の奮闘記]
(参考)焼き比べ第6弾~ホシノ丹沢酵母 vs ホシノビール酵母 vs ホシノ酵母ぶどう種 vs Bake at Home

ホシノ天然酵母3種類実験中。。。[パン時々ごはん]

tag : ホームベーカリー

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グールド&ジュリアードSQ ~ シューマン/ピアノ四重奏曲
有名なシューマンのピアノ五重奏曲の影に隠れた名曲、ピアノ四重奏曲。
五重奏曲が青年の溌剌とした活気漲る曲だとすれば、四重奏曲はちょっとお茶目で愛らしいレディみたい。
そういう雰囲気にぴったり合うのが、グールドのピアノ。
ノンレガートなタッチでも、ちょっと柔らかくてマットな音がとっても可愛いくて、こんな風にも弾けるのかしらんと、ちょっとびっくり。

音色自体は、他の異聴盤とかなり違っていて、トイピアノか、プリペアードピアノみたいにくぐもった感じがする。
つや消しみたいに、ピアノの煌びやかさが抑えられて、弦楽パートの一部のように溶け込んでいる時もあれば、浮かび上がって音色で掛け合いしているような時もある。
緩徐部のロマンティックな歌回しは、(バッハを聴いているときでも感じるように)ロマン派的な心性を持った人なのかもと思わされる。

現代曲とベートーヴェン(の一部)の録音だけが比較的まっとうな演奏だと思っていたのに、とても個性的なシューマンが思いのほかしっくりとくる。
異聴盤ではレーゼルとパネンカは聴いたけれど、グールドの個性的なピアノを超える演奏というのが、ちょっと思い浮かばない。
私には珍しくも、このグールド&ジュリアードSQのCDを試聴してすぐに購入してしまったのだった。

Robert Schumann .Quatuor pour piano, violon, alto et violoncelle op. 47 en mi b.majeur.
Quatuor Juilliard, Glenn Gould, piano. 1964


Robert Schumann: Piano Quintet Op. 44 Robert Schumann: Piano Quintet Op. 44,Piano Quartet Op. 47;
(2007/9/3)
Glenn Goul

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tag : シューマン グールド

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【新譜情報】ブッフビンダー ~ バッハ/パルティータとイギリス組曲
レコ芸の新譜レビューで取り上げられていて興味を惹かれたのは、ブッフビンダーが録音したパルティータ第1番&第2番、イギリス組曲第3番というバッハ作品集。

試聴してみると、ペダルを多用したピアノの豊かな残響が柔らかく、音楽に流麗さ漂うところは、バロック音楽というよりはロマン派に近くも思える。でも、情感自体は全体的にあっさり。
(若い頃とは違う)今のブップビンダーのベートーヴェンのピアノ・ソナタを聴いた時と同じように、自由で開放的な雰囲気がある一方で、タッチが精緻で表現が繊細...という印象ではなかった。(ちょっと”粗い”というか何と言うか...)
バッハ奏法上の面白さ(対位法や音色の色彩感とか)や斬新さが際立っているいうわけでもなく(少なくとも私にはわからなかった)、ソノリティが綺麗かなと感じる以外には、強く魅かれる何かが私には感じられなかった。
好みの問題もあるとはいえ、もともとブップビンダーとは相性悪いのかも...。


バッハ・アルバムバッハ・アルバム
(2013/3/5)
ルドルフ・ブッフビンダー

試聴する

tag : バッハ ブッフビンダー

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パン用小麦粉とパン酵母の比較表
パン用小麦粉

強力粉一覧「[スイートキッチン]
小麦粉の特徴・用途の説明が一番詳しい。ただし、家庭用でよく使われる銘柄は少ない。

強力粉徹底比較表[cotta]
準強力粉(中力粉)徹底比較表[cotta]
cottaサイトで取り扱っている粉(一部)の比較。

強力粉、薄力粉比較~蛋白と灰分を分布図で比較[TFOODS.COM]
この分布図はわかりやすい。マッピングされた位置で粉の特徴が大体わかる。
蛋白量は膨らみの良さ、灰分は色・風味の濃さの目安。
味の淡白な白いパンができるカメリアとイーグルは、やはり灰分が少ない。
甘みがある道春(春よ恋)や、フランスパン専用粉のリスドォルは灰分が多い。

(この表に載っていない粉の蛋白と灰分)
キタノカオリ:蛋白11.5±1.0% 灰分0.50±0.05%
1CW:蛋白12.7±0.5% 灰分0.43±0.03%
ゆめちからブレンド:粗蛋白11.2±0.7% 灰分0.41±0.03%
オーベルジュ:蛋白11.5±0.5% 灰分0.42±0.03% 
タイプER:蛋白11.3±0.5% 灰分0.67±0.05% 
メゾンカイザートラディショナル(トラディショナル):蛋白11.6±1.0% 灰分0.43%
メルベイユ:蛋白10.0±1.0% 灰分0.6±0.1%
フランス:蛋白12.0% 灰分0.43%
レジャンデール:蛋白12.2±1.0% 灰分0.60%
※データ出所:富澤商店オンラインショップの商品情報。

風味が濃いと言われるタイプERは、灰分がかなり多い。
風味が良いことで有名なトラディショナルは、灰分自体はなぜかリスドォルやオーベルジュ並み。この粉は、ブレンドや石臼挽き粉風の製粉方法など、製法をかなり研究したという。(おいしい食事パンのためにデザインされた小麦粉[allabout] 参照)
トラディショナルに次いでお高い準強力粉のメルベイユも灰分が多い。こんなに蛋白が少なくて、ちゃんと膨らむんだろうか。
フランスは、フランスパン専用粉にしては蛋白が多いので、もちもちしそう。レジャンデールは、蛋白・灰分とも多いので、風味にクセはあっても、よく膨らんで、何にでも使えそう。


高橋雅子『少しのイーストで ホームベーカリー 天然酵母コースでゆっくり発酵』
「粉の検証」:8種類の小麦粉を使って同一配合で作ったパンの試食結果比較。食感と風味を軸にした分布図に粉をマッピング。
粉は、ゴールデンヨット、キタノカオリ、カメリア、南のめぐみ、1CW、はるゆたかブレンド、南部小麦、リスドォル。粉の特徴がそれぞれ違うのがよくわかる。

「仕込み水の検証」:キタノカオリを使って、6種類の仕込み水で作ったパンの断面を写真で比較。
仕込み水は、コントレックス、豆乳、ヨーグルトのいずれかを浄水に混合、牛乳、キャロットジュース、コーラ。

少しのイーストで ホームベーカリー 天然酵母コースでゆっくり発酵少しのイーストで ホームベーカリー 天然酵母コースでゆっくり発酵
2010/7/7
高橋雅子



私がメインで使っているのは、近くのお店で買えるイーグルとリスドォル。
富澤商店でまとめ買いする時は、キタノカオリ、1CW(スーパーノヴァ)、オーベルジュ。
たまに、春よ恋、春よ恋ブレンド、はるゆたかブレンド、ゆめちからブレンドとかを買うこともある。

淡泊で風味の薄いイーグルを単独で使うことはなく、ライ麦粉、全粒粉、ご飯、オートミール、大豆粉、くるみ、プルーン、など必ず何かをブレンドして使う。100%で使うときは、ナン(ヨーグルトを混ぜるけど)を作るときか、試作用のみ。
キタノカオリは、黄味がかった色合いの粉で、できたパンもほんのり黄色い。国産小麦にしては膨らみもよく、クラムに弾力がある。普通の食パンだけでなく、チャバタ風食パンを作るときも使っている。
ホシノ天然酵母とキタノカオリにご飯をまぜた「ごはんパン」は凄く美味しいし、細挽きライ麦粉30%をブレンドしたライ麦ハード食パンも濃い味わいがあって、ホシノ天然酵母とキタノカオリの相性は◎。

カナダ産小麦は品質が良いときいてから、1CW(スーパーノヴァ)をときどき購入。イーグルよりもよく膨らむ。
スーパーで手に入る昭和製粉の「クオリテ」もカナダ産小麦を使っているので、昔は時々買っていた。

オーベルジュは、「ビゴの店」の藤森氏が”限りなくフランス産小麦に近い粉”と言っていたので買って以来、ずっと使っている。
リスドォルよりも吸水が良く、クラムもずっともちもち。リスドォルよりも好きな粉。
リスドォル同様、風味が特に強いとは思わないけれど、百貨店に入っている某有名ベーカリーのフランスパンよりも、味がしっかりしてもちもちと美味しい。
ホームベーカリーのフランスパン風食パンで、これくらいの美味しさがあれば◎。
ただし、パナソニックは焼成時間が長いせいか、風味が飛びやすい。タイガーのIH式は焼成時間が短く、パナソニックよりも小麦の味がしっかり出て、美味しい。(プロのパン職人の評価も同じく、タイガーの方が味が良い。「通販生活」のHB比較記事参照)

リスドォルかオーベルジュにライ麦粉を少し混ぜたロデブ風食パンは、↑のベーカリーの高加水パンと同じくらいに美味しい。
高加水パンはタイガーHBでは加水率が高すぎて上手くできないので、パナソニックHBで作っている。高加水で長時間発酵させているので、水分が生地に多く残り、風味も良い。

でも、ハード系のパンもいろいろ作っている個人ベーカリー(レ パン ファボリ/Les pains favoris)の「バケットトラディション」は、チーズのような風味が濃厚で、これは本当に美味しい。粉と作り方の違いでこれだけ美味しいバゲットができるのだろうか。
当然のことながら、こういうベーカリーの美味しいパンには、HBはかなわない。

今はフランスパン風やロデブ・チャバタなどのリーンな食パンをHBで焼くことがほとんどなので、強力粉ではなく、準強力粉に興味あり。
今度使ってみたいのは、風味が濃いという国産小麦のタイプER。灰分が多いので味はかなり良さそう。
お高いけれど風味が良いと評判なメルベイユやトラディショナルも試してみたいけれど、こういう高級なフランスパン専用粉はHBで使うべき粉ではないような気がしないでもない。(高級な粉に限らないけれど)手捏ねで長時間発酵させる手間暇をかけないと、粉の旨味がずっと上手く引き出されないように思うので。



パン酵母

天然酵母7種類を徹底比較 : 詳細比較表(PDF)[cuoca]
イースト7種類を徹底比較 : 詳細比較表(PDF)[cuoca]
イーストの種類と特徴(改訂)[パン教室 La neige]

今まで使ったパン酵母(イースト)は、スーパーカメリア、赤サフ(仏saf社のインスタントドライイースト赤ラベル)、パネトーネマザー、ホシノ天然酵母、白神こだま酵母、有機天然酵母。
ものぐさなので、作るのに手間暇がかかってメンテも面倒な自家製天然酵母は使わない。
今は、ドライイーストの赤サフとホシノ天然酵母を常用。
赤サフは、イースト使用量の幅がかなり広く、最短の早焼きコースから最長の天然酵母コースまで、あらゆるコースで使える。
強い発酵力と安定した焼きあがりで、レシピをいろいろ代えても、失敗することが少ない。
特に、パナソニックHBを使えば、高加水パンでもほぼ失敗なく作れるのが◎。
イースト臭が不評だけれど、イーストを少量にして天然酵母コースで長時間発酵させれば、強いイースト臭は(ほぼ)消える。(イーストは天然酵母コース以外は0.5%、天然酵母コースで粉200gに対して小さじ1/5使用)

ホシノ天然酵母は、生種おこしに24時間かかるとはいえ、HBが温度管理しながら作ってくれるので、(気温が高い夏場以外は)問題なく使える。
油脂類を入れずとも、しっとりしたクラムで、数日間常温保存してもパサパサしない。
独特の濃厚な風味と、きめの細かいどっしりしたパンが作れるので、好みにぴったり。
特に、国産小麦粉を使った時の風味の良さと濃さは、他の天然酵母よりもずっと強い(と思う)。
でも、生種の酒粕風の匂いが苦手...という人も多いらしい。私は酒粕大好きなので気にならないし、焼き上げるとおせんぺいやおかきを連想するような味わいもあって、他のどの天然酵母とも違う個性が◎。
ホシノ丹沢酵母の方は、そういうクセのある風味はなく、甘みかおりとふわっとした食感が人気。

スーパーカメリアは、HBを初めて買った数十年前に使っただけで、何も記憶に残っていない。(イースト臭が強いとは言われているけど)

ドライタイプのパネトーネマザーは、安定した発酵力でふんわりとよく膨らむし、フルーティな香りもよく、失敗することがない。
天然酵母には珍しく、冷凍保存もできるので、ドライイーストと同じ感覚で使える、
発酵を助けるためフェルミパンが20%ほど含まれているので、ドライイーストに抵抗感のある人には不向き。
普通の食パンばかり焼いていた昔は常用していた。リーンなパンには向かなそうなので、今は使っていない。

白神こだま酵母は、ホシノ天然酵母に比べて、クセのないほんのりとした甘みで、フカフカした軽めの食感。しっとりさともちもち感が薄い。
発酵力が強いので短時間でパンが作れるところが便利。
予備発酵(や後入れ投入)が面倒で、何よりも高コスト(規定量だと1回あたり50円~75円くらい)に見合うだけの美味しさが感じられなかったので、今は使わず。(「ドライG」は予備発酵不要と粉と一緒に混ぜて使える。「ドライ」よりもコストはさらに高い。)

ドイツ産の有機天然酵母は、予備発酵不要。白神こだま酵母に似て、目が詰まってフカフカした食感で、ややしっとり。
(とうもろこしやじゃがいいも系の)甘みはほんのりとして強くない。
「凄く」というほどではないとしても、白神こだま酵母のパンと同じくらいに、そこそこ美味しい。
少なくともドライイーストを1%以上使ったパンよりははるかに美味しいし、少量ドライイーストの長時間発酵パンよりも味は(少し)良い。
難点は、発酵力が弱すぎて、リーンな配合だと、天然酵母モードで長時間発酵させてもかなり膨らみにくいこと。
それに加えて、コストはホシノより少し高く(1回あたり34円。ホシノは25円)、風味の方は濃くないので、積極的に使いたいとはあまり思わない。

結局、砂糖・バターゼロのリーンなフランスパンや高加水パンを焼くなら、小麦の味がはっきりと出てくるため、酵母に凝るよりも、まず風味の良い粉に拘った方が良い。良い粉を使って、天然酵母を使えば、さらに美味しくなるかも。
サフのドライイーストでも、使用量を減らして長時間発酵させればイースト臭もせず、まず失敗することがない。
フランスパン風食パン、高加水パン(ロデブ・チャバタ風食パン)を作るときは、赤サフを使っている。
普通の食パンを作るときは、ホシノ天然酵母を使えば、砂糖は入れてもバターはいらないので、これとドライイーストで作る米粉パン(砂糖・バター入り)、ベーグルとナンだけで充分。

そのうち、ホシノ丹沢酵母を使ってみようとは思っている。ホシノ天然酵母よりも風味にクセがないようなので、好みに合うかどうかは?


<項目別比較>
今まで使った経験から、項目別に順位付けしてみた。(味覚・好みによるバイアスあり。あくまで個人的な順位づけ)

風味の強さ:ホシノ天然酵母>白神こだま酵母、パネトーネマザー>有機天然酵母>赤サフ

発酵力(発酵時間の短さ):赤サフ、白神こだま酵母>パネトーネマザー>有機天然酵母、ホシノ天然酵母
※酵母使用量でも発酵時間がかなり変わる。

食感の軽さ:パネトーネマザー、赤サフ>白神こだま酵母、有機天然酵母>ホシノ天然酵母

出来栄えの安定度:赤サフ>パネトーネマザー、ホシノ天然酵母>白神こだま酵母>有機天然酵母
※有機天然酵母は低温にかなり弱い。
※ホシノ天然酵母は、気温の高い夏は過発酵しやすい。(夏には使わないので未確認)

保存性:赤サフ、パネトーネマザーは冷凍保存OK。他の天然酵母は冷凍保存不可で、開封前であっても冷蔵保存推奨。

利便性:赤サフ、パネトーネマザー、白神こだま酵母G、有機天然酵母(以上ドライタイプ、予備発酵不要))>白神こだま酵母(ドライタイプ、予備発酵要)>ホシノ天然酵母(生種おこし要)

コスト:(低)赤サフ<パネトーネマザー<ホシノ天然酵母<有機天然酵母<白神こだま酵母(高)
※白神こだま酵母は、使用量を減らしても(粉量比1~1.2%くらい)作れないことはないので、それなら有機天然酵母とほぼ同じで、ホシノ天然酵母よりも数割高いくらいのコストになる。


【2016.4.22 追記】
amazonで「タイプER 2.5kg」(cuoca)をお試しで購入。
amazonの送料無料サービスが終了してしまったので、マルコメの大豆粉1kgと一緒に買って送料無料に。摂津倉庫から出荷されたので、注文した翌日には到着。
早速、夕食代わりに、タイガーKBH-V100のフランスパンコース(4時間)で粉量175g(水132gくらい)で試作。
長時間発酵させていないわりに、粉の味がしっかりして、香りもそこそこ良い。天然酵母コースで焼けば、もっと風味が良くなるかも。
クラストはパリっと薄くてサクサクと軽く、クラムは水分量が多くてしっとり。フランスパンというよりも、高加水パンに近い。
サクサクしたクラストなので、ハード系だけでなく、クロワッサンやデニッシュ向きというのも納得。
私はもっとバリバリ硬いクラストの方が好きだけど、パン自体はリスドォルとオーベルジュよりもずっと美味しいので、準強力粉の定番はタイプERに決定。
富沢商店オンラインショップでは、3kg900円くらいなので、お店で買えない北海道産全粒粉・ライ麦粉と一緒にまとめ買いする予定。

【2016.6.28 追記】
タイプERでロデブ風食パン(天然酵母コース)を作ったところ、膨らみは悪くはなかったけれど、水分がかなり多くて、クラムがベタベタネチャネチャした蒸しパン風。あまり美味しくない。
配合は、タイプER155g、細挽きライ麦粉25g、水150g、ドライイースト約0.6g、塩・モルトパウダー・にがり。
もともとベタつきやすいタイプERにライ麦粉を加え、さらに水分83%の高加水生地だったのが、失敗の原因。(室温が高かったことも多少影響したかも)
ライ麦粉の代わりに全粒粉を加えるか、加水率を75%(多くても80%以下)に減らすか、どちらかにした方が良い。
※オーベルジュかリスドォルで作れば、ライ麦粉&高加水でも失敗することはない。

【2017.8.26 追記】
何度か焼いてみると、タイプERをタイガーのフランスパンコースで焼く時は、加水率75%程度で、パリっとしたクラストと気泡の多いしっとりしたクラムで綺麗に焼ける。膨らみはあまり良くないけど、ぺちゃんこの台形になるということはない。(Panasonicなら80%でもちゃんと焼けるかもしれない)
ベタベタしやすい粉なので、水分を控えめにすると、上手く焼けるのがわかった。硬水化するためににがりを入れておくと、べたつきにくい気はする。
加水率80%だと失敗することが多い。お餅みたいな糊状になって、これはこれでパンではないと思って食べれば美味しい。


<参考情報>
ホシノvs白神vsパネトーネマザー [ころころまるしぇ]
ホシノ天然酵母、白神こだま酵母、パネトーネマザーで焼いた食パンの比較記事。写真あり。
それぞれの食パンの違いがわかりやすい。

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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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