3か月前にコメント欄で発売予定だと教えてもらったフランソワ=ルネ・デュシャーブルのショパン録音集『CHOPIN;PIANO WORKS』。
過去にEratoからリリースされたショパン録音を集めて、9月初めに再発売。
すでにポロネーズ集と練習曲集の分売盤を持っていたし、その時は他の曲まで聴きたいほどではなかったので買っていなかった。

ようやく涼しくなってきたので、音楽を聴く気がすっかり回復して(暑いと全然聴く気にならない)、手持ちのデュシャーブルのベートーヴェンとショパンCDを聴き直しているところ。
ベートーヴェンの《ピアノ・ソナタ》は、以前聴いたときよりもずっと素晴らしく思えるし(全集録音があれば絶対に買うくらい)、ショパンの《ポロネーズ集》も「軍隊ポロネーズ」がとても面白い。
ついでにYoutubeにある音源で、ショパンの《バラード》や《ピアノ・ソナタ》を聴いていたら、デュシャーブルのように技巧の切れ味鋭く、情感過剰になることない明晰で構造が明確な演奏が思いのほか好みとぴったり。(感傷性や繊細さに凝りすぎたショパンを聴くと疲れるので)
結局全部CDで聴きたくなって買ってしまった『CHOPIN:PIANO WORKS』は、この素晴らしい演奏のCD6枚組が1500円足らずで聴けて、この上なくお得だった。
デュシャーブルのピアニズムは、スティーヴン・ハフにちょっと似たところがある(と私には思える)ので、ハフ大好きな私の好みに合うのは当然かも。

CHOPIN:PIANO WORKSCHOPIN:PIANO WORKS
(2016/9/2)
FRANCOIS-RENE DUCHABLE

試聴ファイル(warnerclassics.com)

※ページ数は少ないとはいえ作品解説のブックレットが付いているうえに、CDを収納している紙ケースは、それぞれLP・CD発売時のジャケットがカラーで印刷されている。廉価版BOXにしてはかなり気の利いた仕様。

<収録曲リスト(HMV)>
収録曲の録音年代は、1974年~1997年。(以下のリストは、録音年代順に並び替えたもの)
● 幻想曲 Op.49(1974年)
● 4つのスケルツォ(1974年)
● 練習曲集 Op.10、Op.25(1980年)
● 4つのバラード(1983年)
● ピアノ・ソナタ第2番、第3番(1984年)
● 24の前奏曲 Op.28(1988年)
● 前奏曲 Op.45(1988年)
● 前奏曲変イ長調(遺作)(1988年)
● 3つの即興曲(1988年)
● マズルカ第1,5,13,19,42,43番(1994年・1996年)
● 夜想曲第5,7,13,21番(1996年)
● ワルツ第7,9,14番(1996年)
● ポロネーズ第1-10番(1996年)
● アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ(1996年)
● ピアノ協奏曲第1番、第2番(1997年)

どの録音でも、一音一音細部まで精密・明瞭で、曖昧さが全くなく、極めて明晰。
全ての旋律が分離して明瞭に聴こえてくるので、レントゲン写真を見ているみたいに、構造がくっきりと浮かび上がってくるような演奏。
どうしてここまで上手く弾けるのしからん?と不思議になるくらいに技巧的な切れと安定度が高く、全盛期(若い頃の)ポリーニを超えているのではなかろうかと。
さらに、デュシャーブルの場合は、メカニックがどれだけ凄くても、無機的なメカニカルさは全くなく、濁りのない透徹した響きと品の良い色彩感と温かみを帯びた音色が美しい。
ショパンの練習曲は、珍しくもベーゼンドルファーで弾いているので、音色がギラギラしていないのかも。
タッチは軽やかでも、音は引き締まって輪郭が明瞭で、強奏時には力感も量感もしっかりあるので、線の細さは感じない。
弱音や細部の繊細さにこだわったり情感過多になることなく、ほどよい繊細さと力強さで透明感のある爽やかな叙情感がショパンにしては清々しい。
それに、主旋律以外の内声部とか左手側の動きもくっきりと浮かびあがってくるので、いままでわからなかった旋律や和声の変化が聞聴こえてきたりして、新しい発見があるのも面白い。
録音年が後年になるほど、テンポも速くなり、(ムストネンほどではないけれど)ややシャープなノンレガートやスタッカート、強いアクセントで弾くことが多く、リズムが先鋭で躍動感が強い。(1974年のスケルツォと1996年の《ポロネーズ集》・《ピアノ協奏曲第1番》を聴くと違いがよくわかる)

もともと好きではない《前奏曲集》は後回しにして、好きな曲から聴いていると、ドラマティックな《バラード》、堂々とした《ピアノ・ソナタ》、シャープで躍動的なリズムの《ポロネーズ》、かなり個性的な《ピアノ協奏曲第1番》の演奏はとても好き。
力みもなく難なく弾いているかのような《エチュード》の精密で安定した技巧には惚れぼれするし、ほとんど聴かない《マズルカ》と《ワルツ》(ハフとアンダのワルツは好き)、《即興曲》も素敵。
《前奏曲》と《ノクターン》だけはどうにも苦手なのが変わらないけど。

特に個性的だと思ったのが《ピアノ協奏曲第1番》。
両端楽章は速いテンポと硬質でシャープなタッチで、キラキラ煌くような響きで、メロウな甘さは全くなく、機動的というか、弾むようにリズミカル。
特に第3楽章のスタッカートのような切れ味鋭いタッチとは先鋭なリズムが独特で、最初はちょっとやりすぎのような気がしないのでもなかったけれど、シャープで飛び跳ねるように機敏なリズムが気持ちいい。
両端楽章のシャープさとは対照的に、第2章は柔らかく澄んだ響きの美しさも相まって、安らかな雰囲気が引き立っている。
私の印象では、巷で弾かれるこのコンチェルトの演奏とはテンポもタッチもかなり違った趣きがあって、誰が弾いているかすぐわかるくらいにとても個性的。
私が好きなこの曲の録音というと、ソコロフの若い頃のスタジオ録音とか、ブレハッチのショパンコンクールのライブ演奏とかなので、デュシャーブルの録音を最初に聴いたときはかなり違和感が...。
何度か聴いていたら、耳が慣れてきたせいか結構面白くて、こういうショパンも好きだなあと思えてきた。

Chopin - François-René Duchâble (1983) 4 Ballades


François-René Duchable - Chopin - 12 Etudes, Op 10


<過去記事>
デュシャーブル ~ ショパン/練習曲集 Op.10 & Op.25

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yoshimi

Author:yoshimi
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クラシック音楽に本と絵に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、ミンナール、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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