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バルトーク/ミクロコスモス第6巻
カッチェンがモノラル録音したバルトークの《ミクロコスモス》を聴き直していたら、ガーシュウィンの《ピアノ協奏曲》やリゲティの《エチュード》を連想するようなジャジーな曲がいくつかあって、とっても面白い。
カッチェンは第6巻のうち8曲だけしか録音していなかったので、第6巻全曲録音した音源を探すと、Youtubeでユーディナの音源を見つけた。
古い録音なのに音質がとてもよく、Yudinaらしい張りのある力強く鋭いタッチが冴えている。

Maria Yudina plays Bela Bartok Mikrokosmos Book VI, 6 (140-153)


<Mikrokozmosz/ミクロコスモス 第6巻(140~153)>(1926-39年作曲)(ピティナの楽曲解説)
140. 自由な変奏曲 / 140. Free Variations
141. 主題と鏡像形 / 141. Subject and Reflection (1:28~)
142. 蝿の物語より / 142. From the Diary of a Fly (2:38~)
143. アルペッジョの分奏 / 143. Divided Arpeggios (4:02~)
144. 2度と長7度 / 144. Minor 2th and Major 7th (6:03~)
145. 半音階的インベンション / 145. Chromatic invention (9:46~)
146. オスティナート / 146. Ostinato (11:48~)
147. 行進曲 / 147. March (13:59~)
148~153. ブルガリアのリズムによる6つの舞曲 / 148~153. Six Dances in Bulgarian Rhythm (15:39~)
※( )内の時間は、音源↑の開始時間。

昔書いた記事を調べてみたら、第5巻と第6巻は7年前にヤンドーの録音をNMLで全曲聴いていた。(すっかり忘れていた)
《ミクロコスモス》は、リズム感が面白く、変拍子にオスティナート、シンコペーション、スタッカート、etc.と、奏法のバリエーションがいろいろあり、特に第5巻と第6巻は書法・リズム・旋律とも格段に込み入っている。
第6巻No.140~147はいくつかの短いリズムの反復と、数パターンの音型を断片的につなぎ合わせたような旋律がオスティナート的に展開していく。作り自体は幾何学模様みたいに無機的なところを感じさせるのに、シンプルな旋律がとてもメロディアスに聴こえてくる。
《蝿の物語より》は、蠅がちょこまか空中を飛び回っているようなイメージ?想像していたら、蠅のグロテスクな姿が目の前に浮かんできて、気持ち悪くなってきた...。
《2度と長7度》の和声は、ピアノ独奏曲の《夜の音楽》みたいにソノリティがネットリ妖艶でファンタスティック。

《ブルガリアのリズムによる6つの舞曲》の第5曲(21:16~)は、ガーシュウィンの《ピアノ協奏曲》(1925年)の旋律にそっくりなメロディがいくつか出てくる。
リゲティの《エチュード》第4番”Fanfares”(1985年)では、第6曲(22:14~)によく似たメロディとリズムが使われている。(もしかして、バルトークへのオマージュ?)
それ以外の曲もジャジーな雰囲気がかなり漂っていて、下手なジャズのオリジナルを聴くよりずっといい。
昔はリゲティもガーシュウィンも聴いていなかったので、今になって意外な繋がりを発見できて面白い。

ユーディナの《ミクロコスモス》のCDを探しても、"Legacy of Maria Yudina Vol. 2"は第6巻のうち5曲収録、そのうち1曲が《ブルガリアのリズムによる6つの舞曲》第2番。
CLASSOUND盤も第5巻と第6巻を収録しているけれど、録音時間が10分未満なので、抜粋録音。
どうやら、↑の音源はMelodiya盤らしく手に入れるのは難しそう。


<過去記事>
バルトーク/ミクロコスモス

tag : バルトーク ユーディナ

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ジュリアス・カッチェン『DECCA録音全集』
一応リマスタリング音質を確認するために、amazon.ukで購入したカッチェンの『DECCA録音全集』が、注文後9日くらいで到着。英国・ドイツから発送すると、米国よりも数日早く届くことが多い。
ダンボール箱に入っていたので、BOXセットは破損もなし。最近のポンド安のおかげで、6400円(送料込)ほどとかなりお買い得だった。

ジュリアス・カッチェン・デッカ録音全集(35CD) ジュリアス・カッチェン・デッカ録音全集(35CD)
(2016年08月31日)

試聴ファイル(deccaclassics.com)


再リマスタリングされている全集盤は、既発盤と音質に違いがあり、マスターテープの音質が異なるためか、曲によってかなりばらつきがある。
ただし、私の持っている再生装置(ARCAMのプリメインアンプ&CDプレーヤー、DALIのMENUET、AKGのヘッドフォン)と私の耳の感度&音の好みに基づいた印象。同じCDであっても同じ音で聴いてはいないだろうから、印象も人によって違うはず。


<録音年代による違い>
モノラル録音のうち、ラフマニノフ《ピアノ協奏曲第2番》、1954年録音のモーツァルト《ピアノ協奏曲第20番》は、既発盤の響きの痩せたキーキーする音から音質がかなり改善されて、残響が増えて音の輪郭も滑らかで全集盤の方が聴きやすい。
モノラル録音のグリーグ、ムソルグスキー、チャイコフスキー、ガーシュウィン(コンチェルト)、ブリテンは、全集盤は総じて音の鮮明さが増しているけれど、残響が増した部分は既発盤よりもさらに電気的に聴こえるときがある。
既発盤の方が音の輪郭がしっかりしているので、打鍵のアタック感や低音の量感・力感が強く、メリハリも強めに聴こえる。
ムソルグスキーの《展覧会の絵》は、両盤ともかなり電気的な響きで、全集盤の方がそれが強くなっている。
※後年ラジオ放送のために録音したmelo盤の《展覧会の絵》では、モノラル風のデッドな音質でアコースティックな感じがする一方、音の分離が良くないので低音の和音が重なると混濁して聴こえる。


ブリテンの《Diversions》は、音質が少し鮮明になっているけれど、それほど大きな違いは感じない。
amazonのユーザーレビューを読むと、PRAGA盤(『Masterpieces for piano left hand』)のリマスタリングの方が音質が良いとコメントしている人がいた。

1950年代末から1960年代半ばくらいのステレオ録音(ベートーヴェン、ブラームスなど)は、響きが膨らみ・長めで音も鮮明になり、音の輪郭の角がとれて流麗な響きなので、フレージングも滑らかに聴こえる。
一方で、(モノラル録音と同様に)全集盤の方が、ダイナミックレンジが狭まったような感じで、音の輪郭や打鍵が滑らかに聴こえ、起伏がゆるかやでメリハリが弱くなっている。オケの場合はピアノの音がやや小さく・弱く聴こえる。

1967~68年の録音は、もともと既発盤の音質がかなり良いので、リマスタリングの差による違いはそれほど大きくは感じない。逆に再リマスタリングしたために残響が増えすぎて、過剰気味に感じる曲もある。

総じてステレオ録音は音が鮮明で響きも増えているせいか、電気的な響きで均質に感じたり、音が小さく遠くなっていると感じる曲がある一方、既発盤の方がアコースティック感があり、音が近くて間近で聴いているようで臨場感や親密感を感じる曲も多い。

全集盤の方が音質が悪いと思ったのは、1961年録音の『ENCORE集』(CD34)。
DECCAの輸入盤・国内盤は持っていないので、キングレコードのオムニバス『ピアノ名曲集』(3曲収録)と、音質がデッドでモコモコしたMP3ダウンロード版"encores"(Maestoso)との比較。
全集盤は、ピアノの音は鮮明で残響がかなり多く、電気的なエコーがかった音でキンキンする。シンセかエレクトリックピアノ風の酷い音でどうにも最後まで聴けなかった。
キングレコード盤は多少音は籠っているけれど、ずっとアコースティックな音に聴こえる。収録曲が少ないのが残念。
MP3ダウンロード版の”encores”は、LP原盤を板起こししたのかも。デッドな音で和音は混濁気味だけど、そこそこアコースティック感のある音なので、全集盤よりはるかにマシ。
結局、今まで通り、キングレコードの『ピアノ名曲集』とMP3版”encores”で聴くのがベストな選択になる。
ただし、MP3ダウンロード版の《英雄ポロネーズ》と《幻想ポロネーズ》は、”Decca Recordings 1949-1968”・全集盤(CD10)と同じ音源で、音質はダウンロード版よりもずっと良い。

ボーナスCDみたいなCD35は、SPレコード(78 rpm shellac盤)録音の初CD化(フランクは未公開音源)。1948-54年にかけて録音されている。

バラキレフ《イスラメイ》は、1954年と1958年(こっちは未聴だった)に録音。
両曲聴き比べると、1958年録音は音質がはるかに良くて音が滑らかだし、テンポも速くタッチも軽快で細部の弾き方も丁寧になった感じがして、4年前の録音よりもずっと良い。
《イスラメイ》はあまり好きな曲ではなかったけど、この演奏なら最後まで面白く聴ける。
放送用録音のmelo盤は、1958年盤より音は良くないけれど、テンポが速くなって30秒ほど演奏時間が短く、勢いが増している。


<ブラームスとベートーヴェン>
ブラームス録音では、ピアノ協奏曲第1番と第2番は、既発盤より音が鮮明で聴きやすい反面、残響がやや過剰気味。
タワーレコード限定盤の方が音質がかなり良い(特に第1番)。残響が適度に長く、芯がしっかして明瞭な音で、ナチュラル感もあるので、聴きやすい。(好みの問題として、全集盤がこういう音質のリマスタリングだったら良かったけど)

ピアノソロも、全集盤は全体的に響きが鮮明(特に高音)でシャープになり、響きも増えて、流麗感がある。
一方で、曖昧模糊とした陰翳が若干薄くなり、時々響きが幾分電気的な感じる(特に高音)。
音が柔らかく輪郭も滑らかになったせいか、メリハリが弱くなり起伏がゆるやかで、低音部の量感・力感が少し軽くなった感じがする。
残響が増えため、もともと響きがかなり多かった部分では、少々響きが過剰気味に聴こえる。(2つのラプソディ第2番など)
曲によっては、響きが増えた影響で情感深さがさらに濃厚になり、ベタっと肌に張りつくような感覚がする。(特に、ヘッドフォンで聴いたときのOp118-2)。また、音が既発盤より若干遠めで、響きが均質化しているような感覚があり、間近で聴いているような臨場感や親密感が薄まった感じがする曲もある。

ブラームスのヴァイオリンソナタは、全集盤ではピアノの音が鮮明になり、モコモコ感も少し残っているのでシャープ過ぎず、かなり聴きやすい。
反面、既発盤で感じた砂糖菓子のようなシュワ~としたピアノの音色の甘さが、全集盤では薄くなっているし、ヴァイオリンの音色も音がすっきりとした分、奥行きや深みが少し薄くなったような気もする。
微妙な違いなのだけど、やはり既発盤の方が音質的は好みにあっている。

CD22のブラームス《クラリネット・ソナタ第1番&第2番》は未公開音源。
ヴァイオリニストのThea KingがNina Milkinaと同曲を録音してから5年が経過していなかったため、契約上リリースできず、そのままお蔵入りとなっていたもの。
クラリネットソナタよりも、ヴィオラソナタの方が好きなので、この2曲はそもそもまともに聴いたことがない。
1968年録音なのでもともと音質は良いはず。全集盤では残響が増えて、ピアノの音も少し金属的な響きがしないでもない。特にピアノの低音が強く、響きもかなり厚く固まって聴こえる。
1967年~1968年にスークやシュタルケルと録音した演奏(既発盤)に比べて、ピアノの音がかなり鮮明で音の輪郭がシャープでフォルテも力強い。地味で暗い響きのクラリネットに対して、ピアノの存在感が強いかも。
タッチのコロコロ感はいくらか残っているけれど、モコモコとした曖昧さを含んだような雰囲気が消えて、スークとシュタルケルの演奏で感じた独特な味わいは薄い。これは音質のせいか、共演者との違いが演奏に関係しているのか?
お蔵入りになっていたクラリネットソナタが聴けたのは良いのだけど、(おそらく録音する予定だった)スークの弾くヴィオラソナタが聴けないのが本当に残念。

ブラームスよりもベートーヴェンの方が、音質の違いが演奏の印象に影響している。
特に《ピアノ協奏曲第3番》。もともと情感濃いめの演奏だったせいか、ヘッドフォンで聴いていたら、残響が長いせいかネットリと粘着的な響きで演奏のメロウさを増幅して、肌にまとわりつくような感覚がする。
既発盤の方が、音質はさほど良くないけれど、若々しい情感のさわやかさがある。
《ピアノ協奏曲第4番》も、全集盤の方が流麗な響きで弱音の細部の繊細さが良く出ている一方で、ピアノの音が小さく起伏も緩く、メリハリが弱くなって、ぼや~とした感じ。既発盤の方がピアノの音の輪郭が明瞭で存在感がしっかりしている。
1960年録音の《ディアベリ変奏曲》は、全集盤の方が少し音がクリアで残響が増えて、聴きやすくなった感じ。
1968年録音の《ピアノ・ソナタ第32番》と《バガテルOp.126》は、もともと音質が良いので、全集盤は多少残響が増えて、音の輪郭が幾分滑らかになっているけれど、ピアノ協奏曲のような既発盤との大きな違いは感じない。
結局、全集盤のベートーヴェン録音は、ピアノ協奏曲で残響の多さと繊細な響きの粘着性、強弱のコントラストと起伏の緩さを感じるので、好みの問題として、多少音質が落ちるとしても既発盤の方を聴きたい。独奏曲の方は大差ないのでどちらでもかまわない。


<ステレオとヘッドフォンの違い>
ステレオのスピーカーまたはヘッドフォンで聴くと、聴こえ方にかなり違いがある。
スピーカーの方は、全体的に全集盤の響きの豊かさが良くわかり、かなり聴きやすくなっているけれど、演奏自体の印象が大きく変わるというほどではない。

ヘッドフォンで聴くと、音の解像度が高いので、既発盤でもかなり明瞭な音で、残響はステレオよりも少し多めに聴こえる。
全集盤になると、響きの細部の微妙な変化が聴こえると同時に、残響もかなり多く聴こえて、音が重たく感じる。
特に緩徐部の弱音は、(アファナシエフみたいな)ネットリとして陰鬱で暗く、沈みこむような音色に聴こえるときがある。
ベートーヴェンの《ピアノ協奏曲第3番》第1楽章やOp.118-2では、音が沈んで陰鬱さとメロウさがさらに濃くなって、ネットリとして肌にはりつくような感じがする。
音響や印象が大きく変わったというよりも、残響の微妙の差によって情感の濃厚さが増して、(それまで限界ギリギリだった)私の許容範囲を少し超えてしまったという感じ。聴き慣れれば、それほど気にならなくなるかもしれない。

既発盤は、スピーカーだと音がモコモコして鮮明さに欠けるところはあるけれど、コロコロとした硬めの音でメリハリや起伏の変化が聴き取りやすい。
それに、ヘッドフォンで聴くと音がクリアになり、ストレスなく聴けるし、全集盤のような暗さや陰鬱さはなくて、私の抱いているカッチェンのイメージ通りの音と演奏が聴ける。
やはりヘッドフォンで聴くなら既発盤、ステレオで聴くならどちらでも良いけど、鮮明な音で聴くなら全集盤、アーティキュレーションとか奏法をしっかり聴くなら既発盤という選択になるのかもしれない。
でも、この音質だと全集盤の方を聴くことはほとんどないような...。僅かながらも初出音源が入っているし、メモリアルイヤー記念として、このまま持っておいても良いかなという気はする。
結局、全集盤も既発盤も音質には一長一短があり、さらに再生装置次第でCDの音の聴こえ方も演奏の印象も変わってしまう。
どちらがカッチェンの実際の演奏に近いのかわからないけど、リマスタリングの設定次第で音質がコロコロ変わるCDよりも、LPの方がリアルな音に近いのかも。

                     

ブックレットに記載されているカッチェンのプロフィールは、既発盤"The Art of Julius Katchen"シリーズのブックレットの内容と重なっている部分が多い。
でも、いくつか新しい情報も載っていて、どれもカッチェンの人となりや才能がよくわかるエピソードだった。

(1)”Encore”集の録音風景
カッチェンは、公開演奏を愛する天性の”showman”だったが、スタジオ録音もたいていは手慣れた(at home)もので、強い集中力のおかげで長時間の録音も平気だった。
しかし、”Encore”集の録音では、カッチェンが思っていたほどにスムーズには進まなかった。
「スタジオ録音の冷静さのなかでは、大成功したコンサートの最後にアンコール曲を次から次へと弾くような雰囲気や気持ちに達することは、不可能だった。とうとう諦めて、友人30人を招待して、多少なりともライブのようにしてみたところ、1時間が過ぎて聴衆が盛り上がった時には、いつものようにアンコール曲を弾く用意ができていた。」

(2)レコーディング風景
録音プロデューサーのRay Minshullの回想:カッチェンがリラックスしていた唯一のポジションは、椅子に座ってピアノの鍵盤へ腕を伸ばしている姿勢の時。

《ハンガリー舞曲集》で連弾していたピアニストのジャン=ピエール・マルティは、実はカッチェンの弟子(pupil)だった。

立て続けにベートーヴェンの代表作3曲とディアベリ変奏曲のような複雑な曲を録音するのにかかった時間は、3時間の録音セッションが2回足らずだった。

(3)譜読み
カッチェンが初めて弾く曲を習得するときは、最初は完全にピアノから離れて、楽譜を読み込んでいくのが習慣だった。「私がピアノに向かう時は、単に頭の中にある設計図(blueprint)を実現するだけなのです。」
(カッチェンは演奏旅行には楽譜を持っていかなかった、楽譜は頭の中ではなく写真のように全て指に写し取られていた、とローレムは回想していた)。

(4)ハチャトリアン指揮によるピアノ協奏曲録音計画
カッチェンの率直さ(outspokeness)が不利益をもたらすことも避けられなかった。
カッチェンが東ドイツツアー中に”ベルリンの壁”を非難したことから、ハチャトリアンはカッチェンと録音することを禁じられ、作曲家自身の指揮によるピアノ協奏曲の録音予定をキャンセルした。
(この話は当時DECCAのプロデューサーだったカルショーの著書『レコードはまっすぐに』にも載っていた。)

(5)南アフリカ共和国での演奏会
当時、悪名高いアパルトヘイト(人種隔離政策)を取っていた南アフリカ共和国でのコンサートは、カッチェンの率直さ(directness)を物語るエピソード。
”champion of the underdog”(弱者を擁護する人)カッチェンは、ケープタウンのSoweto township(ソウェト/非白人居住地域)で無料のコンサートを行うと主張したことが、南アフリカ政府の連中の癇に障った。
南ア政府は、カッチェンがコンサートのために搭乗する予定だった国有南アフリカ航空のケープタウン-ヨハネスブルク行フライトをキャンセルしたが、カッチェンは後続の飛行機に搭乗して彼らの企みを妨害した。
カッチェンがコンサート会場に現れると、いつも”白人限定”のイベントに参加することを禁止されていた聴衆から鳴り響く拍手で歓迎された。
別の演奏会では、ケープタウンのシティホールの舞台上でピアノに歩み寄って、この街はこの”heap of trash”(ぽんこつ)よりももっと良いピアノがふさわしいと宣言し、50ポンド紙幣をピアノの上にぴしゃりと置いて、「あなた方の街にふさわしいピアノを購入する基金を始めるために」と説明したのだった。

(6)現代の音楽に対して
後年では主要なドイツロマン派音楽がレパートリーの多くを占めるようになって行ったが、キャリア初期では(ある程度は)現代の音楽の擁護者(champion)だった。しかし、”musique concrète”(現代音楽の一様式)のようなものに対しては、理解することができなかった。「どうして醜い音を作り出したり、不快なもの(nastiness)に集中し続けなければいけないんだ?」と言っていた。

ブリテンをとても称賛していたように、現代の作曲家のなかで本当に親近感を持っていた作曲家もいた。
ブリテンが自身の指揮で《ディバージョンズ》を録音するために、特にカッチェンにソリストを依頼したとき、カッチェンはブリテンにさらにピアノ協奏曲を作曲するように説き伏せたのだった。
カッチェンの母国の作曲家であるコープランド、フォス、ローレムの作品も演奏した。ローレムの《ピアノ・ソナタ第2番》を録音して以来、カッチェンとローレムは友人だった。


<参考記事>
ジュリアス・カッチェンにまつわるお話

tag : ブラームス ベートーヴェン カッチェン

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デュシャーブル ~ ブラームス作品集
今度手に入れたデュシャーブルの録音は、1989年に録音したブラームス作品集(Erato盤)。
収録曲は、《パガニーニ変奏曲》、《3つのインテルメツォ Op.117》、《2つのラプソディ》、《主題と変奏》の4曲。

Brahms: Paganini Variations
(17 Aug. 2005)
François-René Duchâble



試聴ファイルが見つからなかったので、Youtubeの音源で《主題と変奏》以外を聴いてみた。
《パガニーニ変奏曲》はそれほど速いテンポではなく、技巧の鮮やさを強調するスリリングなところは薄い。
《3つのインテルメツォ》と《2つのラプソディ》は、ルバートを抑制してインテンポに近く、わりと淡々とした表現でさっぱりとした情感。
私の好きなカッチェンとレーゼルの弾くブラームスとは方向性が違っていたので、もう一つピンとこなかったけど、ベタベタ情緒過剰なブラームスというわけではないので、CDで聴いてみることに。

CDで聴くと、厚い響きに覆われて緩い起伏の旋律のなかから抑制された情感が立ち上ってくる渋~いブラームス。
ゆったりとしたテンポで一音一音踏みしめるような明瞭なタッチで、和音も単音も全ての音が良く鳴り、そのなかからメロディアスな主旋律や副旋律がそれぞれ明瞭に聴こえてくる。
意外にも聴き込むほどに味わい深さが感じられて、噛みしめるような語り口から情感がじわ~っとにじみ出る渋さがなんとも言えない。

特に、試聴できなかった《主題と変奏》は、他の曲と違って最初聴いた時から素晴らしく、この演奏だけ聴けただけでCDを手に入れた甲斐があったくらい。
弦楽六重奏曲の編曲版なので、ブラームスの他のピアノ独奏曲よりも和音の響きがかなり厚い。
重厚な和声の響きに覆われているのに混濁感はなく、弦楽六重奏のように、ピアノでも各パートの旋律が明瞭に弾き分けられているので、ポリフォニックな立体感と重層感がある。
アルペジオやスケールがカスケードのように響くなかを和音が力強く主旋律を弾き、これがとてもドラマティック。対照的に緩徐部は柔らかい弱音でゆったりと優しい。
デュシャーブルらしい構築性にドラマ性と(センチメンタルではない)情感が一体となったようなとても素敵なブラームス。

DUCHABLE plays BRAHMS Paganini Variations, Rhapsodies Op.79, Klavierstücke Op.119 (1981)



<余談>
せっかく買ったCDなのに、パソコンのCD/DVDドライブがカチャカチャなったり、ひび割れた雑音みたいな音が途切れ途切れに聴こえるだけで、まともに再生できない。
DVDに続いて、またも不良品?と思ってステレオで聴くと、ちゃんと再生できる。
原因は、CDにインプットされている信号が弱い?か、CD/DVDドライブの性能に問題があるかのどちらからしい。
テストのために使った別の音楽CDのうち、以前使っていたパソコンでは再生できたWarner盤でも同じ現象が起こったので、やはりこのパソコンのドライブに問題があるに違いない。
結局、全然使っていないソニーのDVDプレーヤーがあったので、これを新たに買ってきたケーブルでパソコンのLINE入力端子に接続したら、ちゃんと再生できる。
それに、フリーソフトの「Sound Engine Free」を使えば、録音してWAVファイルでも保存できた。
これでXアプリで聴けるし、バックアップファイルもできたし、眠っていたDVDプレーヤーも活用できたし、そのうえパソコンのCDドライブで再生するよりも音が良いし、無駄になったものが何もなくて良かった。

tag : ブラームス デュシャーブル

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ベートーヴェン/ポロネーズ
久しぶりにカッチェンの国内盤でベートーヴェンを聴いていたら、最後に《ポロネーズ Op.89》という曲が入っていた。
この前聴いた《幻想曲》と同じく、この曲も全然記憶に残っていない。
肺がんで急逝する1年前の1968年に録音しているので、たぶんDECCAでの最後のピアノソロ録音になる。
カップリングされている《6つのバガテル》も同じ録音年なので、一緒に録音したらしい。
今まで聴いたソロのスタジオ録音のなかでは、この2曲の音質が一番良く、実際のカッチェンのピアノの音色やソノリティに最も近いのではないかと思えるくらいに、適度な残響があり自然な趣きの音がする。

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番、合唱幻想曲、6つのバガテル、ポロネーズベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番、合唱幻想曲、6つのバガテル、ポロネーズ
(2004/10/27)
カッチェン、ガンバ指揮ロンドン交響楽団・合唱団

試聴ファイル
※輸入盤に比べると、ピアノ協奏曲では、ピアノの音がやや小さく、ダイナミックレンジも少し狭い感じがする。


ベートーヴェンの《ポロネーズ》は、ショパンみたいな躍動的リズムと厚みのある和音で華やかなポロネーズとはちょっと違って、ワルツを踊っているみたいに軽やかで可愛らしい。
この曲に限らず、ピアノ・ソナタの狭間に書かれたバガテルとかのピアノ小品は、愛情とかユーモアとかいろいろな感情がポロポロこぼれ落ちてくるみたいな親密感を感じる。

W. Manz - Ludwig van Beethoven Polonaise C-Dur op. 89

tag : ベートーヴェン カッチェン

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レーゼル ~ バッハ/パルティータ第4番,メンデルスゾーン/ピアノ協奏曲第1番
とっても珍しいレーゼルのバッハ《パルティータ第4番》のライブ映像。
2016年7月にドイツのReichstaedt城で行われたリサイタルで弾いていたもの。
2016年5月の紀尾井ホールリサイタルでもこの第4番を弾いていた。(遠方なので聴きに行けなかったけど)
普段は聴かないこの第4番。レーゼルのピアノで聴いていると、CDの良い音でじっくり聴いてみたくなってきた。

レーゼルは旧東ドイツ時代にブゾーニのバッハ編曲集を録音している。これはレーゼルのソロ録音のなかでも特に好きなアルバム。
バッハのオリジナル作品の録音は、最近発売されたピアノ小品集2枚に数曲入っているくらいしかない。
リサイタルで弾いていたパルティータ集やイタリア協奏曲などのバッハ作品集をぜひ録音して欲しい。

Peter Rösel, Klavierrecital auf Schloss Reichstädt





ついでに見つけたのは、以前に削除されてしまっていたメンデルスゾーンの《ピアノ協奏曲第1番》のライブ映像。
ピアニスティックで躍動的でパッショネイトな第3楽章は、速いテンポと細かいパッセージでもばたつくことなく、粒立ちの良い軽やかなタッチと滑らかなフレージングで品良く爽やか。

ピアノ協奏曲は、第2楽章(20:37~)と第3楽章(26:34~)のみ。
MENDELSSOHN-MATINEE des Gewandhausorchesters Leipzig, 1997 (0:57 HD)


いつも見とれてしまうのが、レーゼルの姿勢と手指の動き。
急送楽章でも(跳躍の多いパッセージでも)動きの少ない安定した姿勢で、上半身の動きが少なく、スタッカートでもレガートでも、手の甲が低い位置で安定していて、指先の動きも全く無駄なく滑らか。
フォルテでも跳躍でも、肘の位置はほとんど変わらず、手の甲がちょっと上がるくらいで、それでも、芯のある粒立ち良い音で、音量も力感もしっかりあるので、指のコントロール力が凄い。
省エネ奏法というか、手指の動きに全く無駄がないので、ミスタッチがほとんどないし、低い位置から打鍵するので上部雑音も少ない。
レーゼルの精密なメカニックと澄んだ音色は、この姿勢と奏法から生まれるのだと映像を見て納得。

tag : バッハ レーゼル

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デュシャーブル ~ ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第2番&第4番(DVD)
Beethoven - Piano Concertos Nos. 2 & 4 (Nelson, Duchable) [DVD]Beethoven - Piano Concertos Nos. 2 & 4 (Nelson, Duchable) [DVD]
2 Feb. 2004
Duchable, Ensemble Orc Paris, Nelson

試聴ファイルなし


Disc 1:
Historical, biographical and musical context of the concerti
Full performance of both concerti with optional audio commentary
Concerti explained and illustrated
Encore – Appassionata Sonata

Disc 2:
Listening with the score – Concerto No. 4
Concerto No. 4 in multi-angle vision – viewer’s choice of player cams
Interview with John Nelson
Portrait Gallery
Craftsmen in Sound - Making of the DVD Part 2

ピアノ協奏曲第2番はモーツァルト風ベートーヴェンなので、誰の演奏を聴いても、あまり好きにはなれない。
でも、第3楽章だけは、軽快・快活で楽しい。
第2番のカデンツァも、曲を聴いた印象では、ルシャーブルのオリジナルらしい。

ピアノ協奏曲第3番と並んで好きな第4番の第1楽章は、速いテンポに、硬質で弾力のあるノンレガート気味のクリスピーなタッチで、キビキビと快活。
コロコロと粒立ち良い音が歯切れよく、アクセントがよく効いていて、リズムも鋭くリズミカル。弱音部や緩徐部に入っても静寂な雰囲気は薄い。
今まで聴いていた演奏では、アラウはかなりスローテンポで全体的に静けさが漂い、カッチェンはテンポが速いのは同じでも少し丸みのある響きと静けさ漂う弱音で静動のコントラストが濃く、レーゼルはゆったりしたテンポと柔らかいタッチで優美。
デュシャーブルの演奏は、印象がかなり違うので、最初に聴いたときは、ちょっと賑やかすぎる気が....。
でも、演奏解釈を聴いていたら、こういう弾き方になるのは納得。(それでも、快活で賑やかすぎて、私が好きな弾き方ではないのは変わらないけど)
第2楽章は、もともと明るい音色の人なので、静寂でありつつも陰翳が濃くはなく深淵にもなり過ぎず、淡い叙情感。
第3楽章は、第1楽章よりも少し軽やかなタッチで軽快。第1楽章よりも優美な感じがする。


演奏解釈を語る映像は、一般的な作品解説を読むよりも、ピアノで具体的に例示されるのでわかりやすい。
それに、知らなかったこと、気づかなかったことが、いろいろ聴けて面白いし、演奏を聴くうえでも役に立つ。
特に、(あまり好きではない)第2楽章はピアノとオケの旋律が演劇的な役割としてデュシャーブルが解釈しているので、こういう聴き方をしたことがなかった。

- 第4番は、特に第1楽章の難しさのために、”軽視(neglect)”されている。第3番や第5番よりも、”evasive”(曖昧な、迂遠な、婉曲的)で、つかみどころがなく、より深く、異質(disparate)で、モザイクのような曲。
- スケール、アルペジオ、トリルなど技巧的なパッセージが多くて、ヴィルトオーソ的。
- デュシャーブル(と指揮者のネルソン)の解釈では、19世紀より18世紀に近い曲。第1楽章は”allegro moderato con brio” と指定されているが、”allegro”で演奏するべき。
- 同時期に作曲した「熱情ソナタ」といくつか共通点がある。(デュシャーブルが両曲で類似しているリズム・旋律・音型の旋律をピアノで弾いて例示)
- 第2楽章は、”theatrical”(劇のような)。2つの対立:宇宙・神・神の怒りvs.(ためらいつつも落ち着かせようとする)人間。ピアノパートは人間の声、コラール。オーケストラは怒り、ぎくしゃくとしたリズム。ピアノパートの旋律は、怒りに満ちたオケの旋律をなだめて”和解”を試みている。ラストは、かなりおそめのテンポをとって、オケの尖ったリズムが緩やかに静かになり、最後はピアノが舞台から消えるようにフェードアウト。
- 第3楽章へはアタッカでつながる。その利点は、1つの楽章の演奏が終わった時に、他の聴衆の邪魔になる”咳こみ”(あのゴホゴホというノイズ)を抑えること。第3楽章は静かにゆっくりと始まり、次にフォルテのトゥッティ。ここで安心して咳ができるので、みんなhappy。(もしかしてジョーク?)
- この曲は、葛藤と闘い、そして、和解への試みの曲。第3楽章の最後で全体が和解する。

beethoven concerto no4 2eme mvt duchable françois rené


第1楽章と第3楽章とも、ルシャーブルの自作カデンツァを弾いている。
第1楽章のカデンツァは、オケパートの主要なモチーフをいくつか織り込んで展開していく。
旋律の作りが似ているので、ベートーヴェンの自作カデンツァの方が、旋律のバリエーションが多く、明暗・静動が鮮やかに交錯してドラマティックに聴こえる。
それに、トゥッティへつなぐ最後の部分は、第1番・第3番のデュシャーブルの自作カデンツァの方がスムースな気がする。
でも、ケンプやブレンデルの自作カデンツァに比べると、本体の旋律をうまく織り込んでいし展開もわかりやすく、技巧的にもずっと華やか。

第3楽章は、曲想に合わせて快活でユーモアのあるカデンツァ。ベートーヴェンの自作カデンツァよりも長い。いくつかのモチーフを織り込んで途切れなく展開し、トゥッティへの移行部は16小節のアルペジオが華やか。このカデンツァは面白い。

「皇帝」や第3番に比べると、「女王様」のように優美な印象が強かった第4番が、デュシャーブルの演奏解釈を聴くと、「熱情ソナタ」のようなパッションを秘めている曲というイメージに変わる。
そういう性格の曲だとすれば、デュシャーブルの弾き方(タッチやテンポ)も当然のような気がしてきた。
アンコールは、演奏解説でも共通点を上げられていた「熱情ソナタ」の第1楽章。


<余談>
購入したディスクに不具合が2点あり。
まず、冒頭のピアノソロが弱音を通り越して、ミュートに近いくらい音が小さい。徐々に音が普通の弱音くらいに大きくなる。
もし弱音ペダルを踏んでいたとしても、ほとんど聴こえないほどの弱音で弾く意味があるとは思えないし、クレッシェンドが不自然なので、再生上の不具合の可能性が高い。(wavファイルで確認すると、冒頭のピアノソロも、普通の弱音の音量で弾いていた。)

さらに、第1楽章開始後、6:14のところで読み取りエラー発生。
映像と音声がフリーズして、しばらくしたら再生再開したけど、映像がかなり乱れている。(音楽の方は正常に再生されている)
そのうち、音楽に合わせて映像もまともに再生されるようになって、最後までどうにか聴けた。

明らかに不良品なので、購入したamazon.ukサイトのショップに交換リクエストしようと思ったけれど、在庫がないようなので交換できないに違いない。もし交換できたとしても、同じロットのDVDなら、同じ不具合が起こる可能性がある。
他のショップで買おうとして、試しに何件か購入手続きしてみると、日本には発送できないと表示されて購入不可能。
購入できるショップはあっても、価格が3倍くらいに高くなるので、結局、DVDを返品しないことにした。

せっかく購入した廃盤DVD(新品)なので、エラーを無視してスムーズに再生できる方法がないか調べてみた。
いろいろ試行錯誤した結果、ようやくエラー部分をカットして、フリーズすることなく(ほぼ)正常な映像と音声で再生できるようになったので、これでストレスなく聴ける。
デュシャーブルのErato盤CDよりも音がかなり良し、演奏中の手指の動きも見ることができるし、第1番&第3番に続いて満足度の高いDVDだった。

tag : ベートーヴェン ルシャーブル デュシャーブル

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ほんのり甘いベビービーツ
「ビーツのピクルス」という真っ赤な色の瓶詰めをカルディで見かけて、どんな味なんだろう?と以前から興味があったビーツ。
歯のエナメル質には良くなさそうな酢漬け(ピクルス)は食べないので、買わなかったけれど、ベビービーツの水煮パックをイオンで見つけて、試しに1パック(6個入)買ってみた。

ほんのり甘くて、味自体はそこそこ美味しい。ニンジンやスイートコーンよりも糖分が多いのがよくわかる。
難点は、(土の中から掘り出したままのタケノコみたいな)土っぽい匂いがすること。
茹でると匂いは消えるかマシになるらしいけど、私の買った茹でビーツはそのままサラダに混ぜても、トマトシチューに入れて煮込んでも、どうも土っぽさが残っている。
でも、味はそこそこ気に入ったので、賞味期限は来年7月とストックしておけるし、3パック追加購入した。
ビーツを使うと、他の野菜やスープまで真っ赤に染まるので、サラダに混ぜるときは、一番最後にビーツを入れて混ぜない方が良い。

そういえば、「てんさい糖」の原料は、ビート(甜菜)。
ビート(甜菜)は、お店で売っているビーツ(テーブルビーツ、ベビービーツなど)の砂糖用品種(SUGAR BEET)なので、私の買ったビーツよりもさらに糖分の含有量が多い。

<ビーツについて>
ボルシチに不可欠な野菜、ビーツってな~に![辻調グループ/世界の料理]
「食べる輸血」って変なネーミングだけど、それほど血みたいに栄養豊富ということ。
ビーツの色は、真っ赤ではなく、赤紫色なので、鮮血よりも品の良い色合い。
ボルシチの定番野菜がビーツだとは全然知らなかった。そもそもボルシチ自体を食べたことがない。

テーブルビート/ビーツ:特徴や旬の時期[旬の食材百科]

コストコ人気のビートはどう扱う?レシピや効果まとめ[iemo]
デュシャーブル ~ ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第1番&第3番(DVD)
デュシャーブルが2002年に録音したベートーヴェンのピアノ協奏曲全集(Lorcom盤)は、プレス数があまり多くはないようで、今はレーベルの在庫切れで廃盤状態。国内外のamazonサイトでは、高額なプレミアムがついているらしく、買う気にならない。
デュシャーブルのベートーヴェンは、ピアノ・ソナタ(Erato国内盤)が素晴らしく良かったので、この協奏曲集を聴けないのがとても残念。

Beethoven: Concertos Pour PianoBeethoven: Concertos Pour Piano
(2011/2/28)
Duchable, Ensemble Orc Paris, Nelson

試聴ファイルなし
※CD3枚とDVD1枚のセット。定価を調べたら6900円くらいだった。円高時代なら、もっと安かったのかも。

同じ演奏を収録したDVDがamazonの英国サイトで販売されているのを発見。日本のamazonではDVD情報が載っていなかったので、発売されているのがわからなかった。
RegionALLのPAL方式なので、パソコンのDVDドライブなら問題なく見れる。
DVDは3巻に分売されていて、全て2枚組。CD&DVDセットより、DVDシリーズの方が先にリリースされていた。
DVDの1枚目はコンチェルト演奏とピアノソロのアンコール演奏。さらに、プロデューサーとの対話方式でデュシャーブルがスタインウェイピアノとフォルテピアノを使って演奏解釈を語る映像が収録されている。
2枚目のDVDは特典映像集。楽譜付きの演奏映像とマルチカメラアングル映像(各々一部の楽章のみ)、リハーサル、インタビュー、メイキング映像などを収録。
DVDには、実際のコンチェルトとアンコール演奏に加えて、4時間前後の盛りだくさんな特定映像が収録されているので、廃盤で高額のプレミアムが載っている全集版CD(3枚)&DVD(1枚)セットを買うより良さそう。
「皇帝」はほとんど聴かないので、ピアノ協奏曲第1番~第4番が収録されているDVD2本を早速購入。(1週間くらいで到着。amazon.ukで買うと届くのがいつも早い。)

このCDとDVDのレーベルはeratoではなく、Lorcom(DVDにはhamoniamundiが参加している)で、2002年の録音。
かなり力を入れて制作された印象のDVDシリーズで、音のあまり良いとは思えないErato盤CDに比べて、このDVDは音がはるかに良い。(録音エンジニアは日本人Koichiro Hattori氏。メイキング映像にも映っている)
第1番~第4番の演奏もそれ以外の特典映像も両方ともとても楽しめたので、結局、「皇帝」のDVDも買ってしまった。

Beethoven - Piano Concertos Nos. 1 & 3 (Nelson, Duchable) [DVD]Beethoven - Piano Concertos Nos. 1 & 3 (Nelson, Duchable) [DVD]
2 Feb. 2004
Duchable, Ensemble Orc Paris, Nelson

試聴ファイルなし/a>

<収録内容>
Disc 1:
Historical, biographical and musical context of the concerti
Full performance of both concerti with optional audio commentary
Concerti explained and illustrated
Encore – last movement of the Tempest Sonata

Disc 2:
Listening with the score
Concerti in multi-angle vision – viewer’s choice of player cams
Pianist and conductor in rehearsal
Craftsmen in Sound - artists’ rehearsal/piano tuner at work/technical making of the DVD
Musical tour of the Royal Opera House Historical, biographical and musical context of the concerti
Full performance of both concerti with optional audio commentary
Concerti explained and illustrated
Encore – last movement of the Tempest Sonata

デュシャーブルは”レコーディングが嫌い”だと『音楽の友』のインタビューで言っていたけど、オケと協奏することは好きなんだそう。
ピアノ協奏曲を演奏する姿を見ていると、エネジー溢れるように機敏な動きで躍動感があり、オケの方をたびたび見たり、オケの演奏の流れに身体をシンクロさせたり、オケとの対話を楽しんでいるように見える。
この頃にはすでに”クラシック業界”でのコンサートピアニストの表舞台から去ることを決めていたようなので、オケとのレコーディングの機会もほとんどなくなるだろうと思っていたからだろか。

このデュシャーブルの演奏を見ていると、オケとピアノがどういう掛け合いをしているのか、視覚的によくわかる。
デュシャーブルの演奏は、いままでいくつかのCDで聴いた通り、急速楽章では速めのテンポ、硬質で粒立の良い音で、歯切れよく弾力のある精密な打鍵、濁りない品良く美しいソノリティ。
強めのアクセントやリズムを使った音型が明瞭なフレージングで、起伏に富んで引き締まった演奏は、見ても聴いても爽快。
演奏する姿には、深く感情移入するような表情とか大仰なところはなく、自然に身体が弾むようにリズミカルできびきびとしている。
演奏中の手指の形が整っていて、無駄な動きが少なくポジションも安定している運指がスムーズ。速く細かいパッセージでも、粒が揃って、乱れることがないし、速く細かいトリルでも一音一音が明瞭に聴こえる。
こういう細部まで明晰なピアノを聴くのはとても気持ち良い。

デュシャーブルのコンチェルトを聴く面白さの一つは、自作カデンツァを弾いているところ。
この曲(に限らないけど)で自作カデンツァを弾く人は少ない。私が聴いたことがあるのは、バックハウスとケンプ、他にも数人いたと思う。
デュシャーブルのカデンツァは、曲中で使われている旋律が次々に織り込まれているので、本編との連続性がよくわかる。
特にカデンツァからトゥッティへの移行部では、オケが弾き始めるフレーズと違和感なくつながるように、カデンツァの終盤部が工夫されている。

La cadence de François-René Duchâche dans le 1er mouvement du 3ème concerto de Beethoven




<ピアノ協奏曲第1番>
第1楽章はかなり速い。硬質でシャープなタッチでも、音質は重くないので、演奏も軽快。オケがピアノのテンポについていくのが精いっぱいでという感じなので、せかせかした弾き方に聴こえる。
第3楽章も速いけれど、これくらいのテンポで弾く人は多いし、慌ただしさはなく、曲想に合っている、
DVD2のリハーサル(というか、指揮者のネルソン、プロデュサー?たちとの打ち合わせ)映像では、自分がどういう風に弾きたいかピアノで実演しながら、ネルソンたちに説明している。
ネルソンが、「正直なところ、そのリズムは鋭すぎる」とか、いろいろ意見を言うのだけど、デュシャーブルはなぜこういう風に弾くのか理由を言っているので、結局彼の弾きたいように弾いたみたい。


<ピアノ協奏曲第3番>
テンポは速すぎることなく、ちょうどよい感じ。第1楽章を聴いていると、ペダルは比較的少なめで、ときどきノンレガートに近いタッチで弾いているので、全体的に響きの重なるが薄く短く、音響的にすっきり聴こえる。
タッチが軽快でキビキビとしてリズミカルなわりに、さらりとした情感が爽やかで、意外にリリカル。
第218小節でピアノがアルペジオで段階的に駆け上がっていくところでは(ここはとても好きな部分)、ペダルを何回か踏み直して、残響の重なり少なくしている。
楽譜の指定では、ペダル踏みっぱなしなので、ペダルで残響を重ねて華やかに弾く人が結構多い。
第2楽章の演奏解釈映像を見ていると、フォルテピアノよりも残響が長いモダンピアノでは、和声が変化するたびにペダルを踏み直さないといけないと言っているので、この第1楽章でもペダルの踏み直して響きの長さと重なる具合を調節しているように思う。
デュシャーブルの弾く5曲のコンチェルトのうち、一番好きなのがこの第3番。その次は、たぶん「皇帝」。デュシャーブルのタッチなら、力強さのあるこの2曲がよく似合っていると思う。


<特典映像>
第1番と第3番の演奏解釈をデュシャーブルが説明している映像(DVD1:第1番約8分、第3番約17分)では、スタインウェイとベートーベンの時代に使われていたフォルテピアノを使って例示し、該当部分の実演映像も挿入されているので、理解しやすい。
フォルテピアノとモダンピアノでは、奏法や響きの違いがある。フォルテピアノでは、ペダルを持続させても、もともと残響が短いために響きの重なりが薄くなる。それに対して、モダンピアノだと響きが重なりすぎるので、ペダルを踏み直さないといけないという。
オケとピアノがどういう風に対話しているのか、オケパートの重要なモチーフがピアノパートにどう使われているのか、デュシャーブルの自作カデンツァで曲中のモチーフをどう取り入れているのかとか、こういうことを知っておくと演奏をさらに楽しめる。
第3番第1楽章の自作カデンツァの終盤では、後に続くトゥッティの冒頭でドラムの弾く旋律をカデンツァ(左手の低音部)に織り込んでいるので、トゥッティへの移行がスムースで自然に聴こえる。(デュシャーブルは、ベートーヴェンやリストなどが書いたカデンツァの終結部に満足できなかったと言っていた。)

デュシャーブルによると、第1番の第3楽章には、ハイドンへのオマージュとなる旋律が入っているし、第3番はブラームスのピアノ協奏曲第1番と共通する部分が多い。実際にハイドン、ブラームスの曲中の旋律を弾いて、例示している。
それを聴くと確かに似たところがあるし、ブラームスのピアノ協奏曲第1番はまるでベートーヴェンの6番目の協奏曲のようだと言っている。

第3番の第2楽章の説明に入った時に、デュシャーブルが1998年に美しいコラールのようなトゥッティを聴いたとき、ピアニストという職業を辞めようと決心した。まだ弾き続けているのは、音楽的な遺言になるだろう、と突然話が脱線。

DVD2で気に入った特典映像は、リハーサル風景と、ピアニストに絞ったカメラアングルで見る演奏映像。
リハーサル風景では、デュシャーブルがどう弾きたいのか、オケにどう弾いて欲しいのかという考え方がわかる。(協奏曲を弾くときは、こういう打ち合わせをするのが普通なんだろうか。)
ピアニストに絞ったカメラアングルだと、ピアニストの手指の動きを全て見れるし、ピアノが休んでいるときのデュシャーブルの動きがわかって、面白い。
コンチェルトとアンコールの演奏映像だけでなく、特典映像も充実していて、予想以上に内容の濃いDVDだった。高価なCD&DVDセットを買うよりも、このDVDシリーズ3巻を購入して大正解。


<アンコール>
アンコールとして、私の好きな「テンペスト」の第3楽章を収録。
デュシャーブルのErato国内盤CD(1995年のスタジオ録音)にも収録されている曲なので、聴き比べるとCDの方が残響が多く、響きが流麗で綺麗。
DVDは、ややデッドで少し木質感のある音色で、音に生々しい力強さに凝縮感と臨場感もある。スタジオ録音よりも、タッチが軽やかで鋭い。
演奏解釈自体はほとんど変わらないけれど、実際に弾く姿を見るのはやっぱり面白い。
もともとクリアで綺麗な響きを持っている人なので、アルペジオが重なった時の響きが特に綺麗。
それに、左手の旋律が明瞭で力強く浮き上がってくるし、右手と左手の旋律の掛け合いがよくわかる。
クリアで色彩感のある音の美しさとしっかりした構成感のある明晰な演奏なので、今まで聴いたなかでは、レーゼルの再録音(国内盤)と同じくらい(かそれ以上に)に好きな弾き方。

Beethoven : Sonate n°17 "la Tempête" (The Tempest) - Allegretto, François-René Duchâble



<ディスコグラフィ>
Discography of François-René Duchâble

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プロフィール

yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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