*All archives*

奥泉 光 『シューマンの指』
シューマンの伝記をamazonで探していて見つけたのは、『シューマンの指』という小説。
この本の題名だけは知っていたけれど、今までシューマンの音楽(とミステリー)に興味がなかったのであらすじも全く知らず。
著者はクラシックやジャズ音楽を聴いてきた人で、特にシューマンの愛好家。著者の知人であるピアニスト椎野伸一氏が助言している。

シューマンの楽曲解説や演奏に関する記述がやたらに多いというレビューに興味を惹かれて、早速読んでみた。
小説は、主人公である里橋優が過去を振り返って書かれた手記という形式。高校から大学入学にかけて、シューマンの音楽を巡って、彼と同年代の天才ピアニスト「長嶺修人」との交友が語られている。小説には女子高生の殺人事件と謎解きも入っているので、一応ミステリー小説の類なのだとは思う。
シューマンのピアノ作品に関する解説(解釈)にかなりに頁を割いているので、私はミステリー小説というよりもシューマンの音楽論として読めた。昔からシューマンを敬遠していた私にとっては、シューマンへのガイド本としてぴったり。

もともとミステリーの部分は興味がなかったので、その部分は深読みしていなかった。
冒頭の手紙で、「修人」の切断された指が復元されたのは驚異的移植手術か何かであって、これは医学ミステリー?とか最初は思ったけど、全然違っていた。
フィクションの中のフィクションみたいな入れ子構造で、最初の「結末」をさらにどんでん返ししているので、私には全く予想できなかった結末。
シューマンの人生と音楽に相通じる点は、主人公(里橋優と「修人」)の人物像と小説の構造そのもの。どちらも小説のコアになる部分なので、そういう意味では、主題となりえるのはブラームスでもベートーヴェンでもなくて、シューマンとその音楽でしかありえない。

シューマンの指 (講談社文庫)シューマンの指 (講談社文庫)
(2012/10/16)
奥泉 光



小説で紹介(演奏していない曲も含めて)されている曲を収録した6枚組。少しだけ解説付きで紹介されていても、CDに収録されていない曲もある。
<収録曲・演奏者リスト>を見ると、SONYの保有音源を使ったコンピレーションアルバムなので、私の持っている音源と違う曲がほとんど。好きな演奏家の録音もほとんどないく、こういうコンピレーションは一度聴くだけに終わる曲も多いので購入せず。

シューマンの指 音楽集シューマンの指 音楽集
(2011/5/18)

試聴する



<関連情報>
“シューマン愛”がほとばしる長篇ミステリー。奥泉光『シューマンの指』[YAMAHA/Web音遊人]

著者インタビュー/『シューマンの指』奥泉 光[PRESIDENT Online]

『シューマンの指』を読んで(H. Sekiguchi)[J]/関口裕昭(明治大学)[日本独文学会ホームページ]
関口教授も「シューマンはどうしても克服できない「苦手科目」だった。その世界がどこかしら異質で、感情移入することができなかった。」。これは私も同じだった。
シューマン・アレルギーの原因の一つが友人のシューマンマニアで、「長嶺修人」にそっくり...というのには笑ってしまった。

たしかにシューマンは(ショパンに比べると)入るのが難しいところがあると思うけど、一度上手く入れたら結構はまりそう。(私もはまりかけているような気がする...)
少なくとも、フィオレンティーノの《幻想曲》と《謝肉祭》を聴いてから、シューマンへの苦手意識がすっかり無くなったし、どうも合わないと思っていたショパン、シューベルト、シューマンのなかでは、一番共鳴するものを感じるのはシューマンの音楽。
まだ聴いていない作品がたくさんあるシューマンは”未開拓”の作曲家に近いので、当分はシューマンの音楽めぐりになりそう。

【以下の文章には小説の結末などを書いています。未読の方は読まない方がいいです。】

続きを読む

tag : シューマン 伝記・評論

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
アンデルシェフスキ『シューマン/ピアノ作品集』 
数年前にネットラジオのライブ中継で聴いたアンデルシェフスキのリサイタルで、あまりに美しくて記憶に残っていたのはシューマンの《ペダル・ピアノのための練習曲集》。
柔らかく重なっていくハープのようなピアノの響きが天上の調べみたいに夢幻的で、旋律も叙情美しく一度聴くと忘れられない。

ようやくシューマンのピアノ独奏曲で好きな演奏をCDで集める気になったので、アンデルシェフスキのCDを思い出して早速購入。
カップリングされている《フモレスケ》、《暁の歌》は、CDを1枚も持っていないし、小説『シューマンの指』の作品解説を読んで興味を惹かれた曲だった。(後でラックの中を探したら、ルプーの《フモレスケ》のCDが出てきた。)
選曲が良い上に、演奏が素晴らしく、私が聴くシューマン録音のなかで(今後聴くであろうものも含めて言っても)、ベストアルバムの一つになることは間違いない。

Schumann : Piano WorksSchumann : Piano Works
(2000/4/26)
Piotr Anderszewski

試聴ファイル


アンデルシェフスキのシューマンは、ピアノの響きが独特。輪郭が少し滲んだような曖昧さと柔らかさがあり、どこか懐かしいレトロな心地良さと、夢のなかで聴いている非現実的な浮遊感も感じる。
細部まで精緻なタッチと表現で、繊細で儚い感情が交錯する深い叙情感が美しく、しみじみとした味わいがある。

収録されている3曲は、感情の浮き沈みの激しい若い頃のシューマンの音楽とは雰囲気が違う。
作曲年代では、初期、中期、後期の3曲が年代順に並べられているので、作風の違いがよくわかる。

《フモレスケ》(Op.20,1838年)(ピティナの作品解説)
同じ年に書かれた《クライスレリアーナ》に似た旋律が時々でてくるけれど、アンデルシェフスキの演奏で聴くと、《クライスレリアーナ》のような噴出する感情の激しさや明暗が対立する緊張感は薄い。
ルプーの《フモレスケ》よりも、響きも表現も柔らかで美しくて、ふわっと包み込まれるようで夢想的。
曲想の異なる曲が全体的に調和した世界のなかで統合されたような安定感を感じる。
特に第3曲の冒頭の旋律は、《ペダル・ピアノのための練習曲集》の第2曲と同じくらいに切なく哀しい。どうしてこんなに親密で繊細な美しい旋律が書けるのだろうと思うくらい。終曲は輝きと躍動感に満ちて堂々たるフィナーレ。

Piotr Anderszewski: Robert Schumann - Humoreske, Op. 20


シューマンの音楽にひそむ「なにものか」を言葉にする3作(広瀬大介)[音楽之友社ウェブサイト]
《フモレスケ》の作品解説の紹介。
『シューマン 全ピアノ作品の研究(上・下)』(西原稔著,音楽之友社,2013)は、ピアノ作品限定した詳しい解説書のようなので、これは読んでみたくなってきた。

《ペダル・ピアノのための練習曲集》(Op.56,1845年)
ペダル・ピアノはオルガンのような足鍵盤がついた楽器なので、この録音はアンデルシェフスキによるピアノ独奏用編曲版。
原曲は3段楽譜で、最下段がペダル用。2人で演奏しても良いという脚注がある。
アンデルシェフスキは、足鍵盤で弾く部分を左手のバスで弾いているはず。
このバスの旋律がバッハの通奏低音みたいに聴こえる。
アンデルシェフスキの演奏が素晴らしく、特に古典的な端正さと柔らかいレガートな響きの美しさが際立っている。第1曲と第2曲は何度聴いても飽きないくらいに好きな曲。
第1曲の和らかくカスケードしていく響きはまるでハープを聴いているような美しさ。
第2曲は哀感がこぼれ落ちてくるように切ない。対照的に第3曲は明るく軽やかに舞うよう。
ドビュッシー編曲による2台のピアノ版もあるけれど、ピアノソロの方がシンプルな旋律が美しく、音色の統一感もあり、これはピアノソロで聴きたい。

Schumann - Studien für den Pedalflügel Op.56 - I. Nicht zu schnell (Piano: Piotr Anderszewski)

※バタバタと雑音が時々聴こえてくるのは、残響が多くても響きが濁らないように、ペダルを細かく踏みかえている音だと思う。(ピアノに”足元鍵盤”を取り付けていることはないはず)

Schumann - Studien für den Pedalflügel Op.56 - II. Mit innigem Ausdruck (Piano: Piotr Anderszewski)



《暁の歌》 (Op.133,1853年)
ライン川へ身投げする5カ月前に書いたシューマン最晩年の曲。
ピティナの作品解説によると、この小品で表現されているのは、”夜明けに感じることの情景描写というよりも感情表現”なのだそう。
若い頃のような相反する感情が対立・拮抗する緊張感はなく、調和した穏やかさと不思議な透明感がある。第1番と第5番はコラールのような響きが美しい。
第1番は、夜明けを告げるように静けさと平明さに満ちて清々しく、第2番も軽やかで自由に飛翔するような開放感があり、第3番は完全に夜が明けて朝日が輝くように明るく力強い。
でも、カスケードのように流れるアルペジオが美しい第4曲には(アンデルシェフスキの演奏では)悲愴感や切迫感を感じるせいか、命が尽きようとしている蝶々が乱舞するようなイメージがする。
第5曲は穏やかな安らぎに満ちて、柔らかい響きは夢想のよう。
その後のシューマンの運命を思えば、この曲は”白鳥の歌”のように思えて、聴けば聴くほど強く惹かれるものがある。

Schumann - Gesäng der Frühe - I. In ruhigen tempo



これは、モンサンジョン監督によるドキュメンタリー映画の抜粋版。
アンデルシェフスキが弾いているのは、《暁の歌》と《ペダル・ピアノのための練習曲集》。

Piotr Anderszewski talks about Schumann


アンデルシェフスキーが話す部分に英語字幕がついているので、この2曲に対するアンデルシェフスキの捉え方がわかり、これがとても参考になる。
アンデルシェフスキ曰く、《暁の歌》は、シューマンの本性(nature)に根差した音楽、独特の雰囲気があり何か御す(tame)ようなところがなく完璧、それ自身から湧き出る”Poetry”(詩)心を感じる、黄昏のメランコリーはなく新しい地平が開かれるよう、純粋なハーモニー・装飾音・フラグメントの全てが魔法のように結び付いている、人間という存在の脆さも傷つくやすさも完全に肯定した心動かされる曲、など。
一方、《ペダル・ピアノのための練習曲集》については、カノン形式の練習曲を書く一方でバッハや対位法に興味を持っていた、シューマンの本性に反する堅牢で厳格な形式は、全てが崩壊する狂気が迫っているのを食い止める試み。

アンデルシェフスキは、Robert Walser(ロベルト・ヴァルザー,1878-1956)の著作を読んだことで、シューマンを、《暁の歌》に漂う”absurd”(理屈ではわりきれない)な何かを、理解するようになったと言う。
ヴァルザーは、ドイツ語の著作があるスイス人作家で、”Catatonic schizophrenia”(緊張型統合失調症)と診断されたため、亡くなるまでの30年近くを精神病院で過ごした。
「ローベルト・ヴァルザーは散文によるパウル・クレーだ。クレー同様に繊細で神経質だ、彼はまた心やさしいベケットだ、さらにはカフカとクライストの間のミッシング・リンクだ。」(スーザン・ソンタグ)[『ヴァルザーの詩と小品』(みすず書房)の紹介文より]


<インタビュー>
ピョートル・アンデルシェフスキ[伊熊よし子のブログ]
子供時代のピアノの先生に、1本の指でレガートを出す方法を教えてもらい、このレガート奏法を自分で工夫して弾いているという。↑の映像を見ると、緩徐部のレガートでは、指を平らにして少し滑らすように弾いているように見える。


<過去記事>
シューマン/ドビュッシー編曲 ~ カノン形式による6つの練習曲(独奏版&2台のピアノ用編曲版)

tag : シューマン アンデルシェフスキ

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
スティーヴン・ハフ 『In the Night』
スティーヴン・ハフのコンセプト・アルバム『In the Night』に《謝肉祭》が収録されているのを思い出した。
以前試聴した時の印象では、シューマンの「夜に」とハフ自作自演の《ピアノ・ソナタ第2番「夜の光」》はかなり好きだったけど、ちょっとクールなベートーヴェンに、苦手のショパンの《夜想曲》とシューマンの《謝肉祭》はやっぱり馴染めなかった。

In the NightIn the Night
(2014/05)
Stephen Hough

試聴ファイル(Hyperion)
※ジャケット写真は、パウル・クレーの”Keramisch Mystisch"(1925)。こういうシュールでカラフルな色彩の絵は大好き。

<収録曲>
シューマン:幻想小曲集より『夜に』 Op.12-5
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調 Op.27-2『月光』
ショパン:夜想曲第7番嬰ハ短調 Op.27-1
ショパン:夜想曲第8番変ニ長調 Op.27-2
ハフ:ピアノ・ソナタ第2番『夜の光』
シューマン:謝肉祭 Op.9
(2013年5月9,10日、セッション録音)

In the Night—Stephen Hough (piano)



試聴し直してみると、以前と同じく「夜に」がこの上になくピタっと波長に合っているし、今は《謝肉祭》も聴きたいので、ようやくCDを購入

シューマン《幻想小曲集》第5曲「夜に」は、曲自体が好きな上に、ハフの色彩感豊かで流麗なフレージングが華麗。
夜の闇のなかで色とりどりの明かりが瞬き、その中を軽やかに颯爽と疾走しているような情景が浮かぶ。

ベートーヴェン《月光ソナタ》の第1楽章は速めのテンポで、ぼ~っと霞がかかった月の明かりのようなイメージ。
第3楽章は、ペダルは少なく短めなので、速めのテンポながら音の輪郭も明瞭で、骨格がくっきり。両手それぞれの音の動きが浮かび上がってくるように聴こえる。(このベートーヴェンが好きかどうかと言うとちょっと微妙)

ショパンの《夜想曲集》を聴いていると退屈で眠くなるので、昔から好きではないのに、この《ノクターン》(Op.27)の2曲は意外なくらい気に入ってしまった。
シューマンの演奏とはソノリティが違って、厚い靄がかかったような響きは、夜のとばりが垂れ込めたように生温かい。
Op.27/1は、中間部が激情的に盛り上がるので、バラードみたいにドラマティック。
Op.27/2は、繊細で美しいハフのピアノの音色と響きにうっとり。
ハフの弾くノクターンは、夢想のなかにも激しい感情のドラマが溢れ出してくるようでとても素敵。
選曲が良かったせいかもしれないけれど、ハフの演奏なら他の曲も聴いてみたくなる。全集録音してくれたらCD買いたいくらい。

ハフ作曲《ピアノ・ソナタ第2番「夜の光(In the Night)」》は、私にはちょっとフリージャズ風に聴こえるし、ブリテンのピアノ曲の持つ雰囲気に似たものも感じる。
今まで聴いたことのある現代音楽のピアノ曲のなかでも、特に印象に残る曲の一つ。
右手の高音が、夜にまたたく様々な光のように冷たく煌いて、滴り落ちる水滴や打ち寄せる波のような動きで交錯する。
ハフ自身の作品解説によると、ABA形式でモチーフ(音楽的アイデア)は3つ。散文的というか、音と旋律がコラージュのように交錯していく。モチーフの旋律があちこちに織り込まれて変奏曲みたいなところもある。

Stephen Hough performs Sonata no. 2 (notturna luminoso)



シューマン《謝肉祭》は、ハフにしては緩急のテンポと強弱の変化の落差が大きく、細部まで緻密なアーティキュレーションで、明暗・静動が頻繁に入れ替わり曲中・曲間で気分が突然変わったようにコロコロ変化していく曲想に応じて、表情も細やかに変わる。
急速系の曲でも攻め込むような速いテンポと強いタッチで弾くことはなく、程よい力感と尖りのない響きがまろやか。
よくコントロールされた精緻なタッチは多彩で、特にやや線の細い色彩感豊かな弱音としなやかなフレージングで弾くところは繊細な叙情感がとても綺麗。
ちょっと変わった弾き方は”Pierrot”。速いテンポで、流れを断ち切るようにE♭-C-B♭のフレーズを強く弾いている。(このフレーズが頭のなかでエコーしてしまう)
”Papillons”は、(ミケランジェリみたいに)速いテンポと強く鋭いタッチで一気に弾く人も多いけれど、ハフは柔らかいタッチが優美で蝶が舞うように軽やか。
最後の”Marche des "Davidsbündler" contre les Philistin”も、主題提示が終わって、vivaceに入る直前の小節で四分音符をテンポを落として途切れたように弾くところもハフ独特。時々テンポを緩めたり音量を落としたりするところが、少し淀んだり流れが止まったりしたように感じることもある。(テンポ変化はあっても、この曲はもっとストレートなフレージングで弾く方が好きなので)
ハフの《謝肉祭》は試聴した時の印象よりもはるかに良くて、ロマンティシズムの濃いフィオレンティーノとは一味違った、端正で繊細な詩情が美しい。

このアルバムは、古典・ロマン・現代という異なる時代と形式の曲を組み込んでバラエティ豊かな上に、曲も演奏も中身が濃くて、CDを2枚くらい聴いた気分になる。

tag : シューマン ショパン ベートーヴェン スティーヴン・ハフ

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
スーパーフード ”カカオ” とカドミウム
<スーパーフード”カカオ”>
カルディで「話題のスーパーフード、カカオパウダー」とかポップに書かれた輸入もののカカオパウダーを見つけた。100%ピュアココアパウダーとも書かれているし、200g500円足らずなので、普通のココアパウダーに違いない。
その隣には、輸入もののカカオニブも置いている。
もしかして、”健康にいい食べ物”として今ブームなのは、カカオなんだろうか?

そういえば、高カカオチョコレートをイオンの店頭で数種類見かけたし、糖尿病で健康食品マニアのお向いの奥さんはTVCMで見た「チョコレート効果」を食べているという。
普通のチョコレートは、重量の半分が糖質なので、5g食べたら糖質は約2.5g。
太りすぎで糖尿病なのに砂糖いっぱいのチョコレートなんか食べていいのだろうか?と思っていたら、「チョコレート効果」はかなりの低糖質。
5gあたりの糖質量は、「cacao72%」1.7g、「cacao86%」1.1g。「cacao95%」0.7g。
「cacao95%」は、同量の純ココア(糖質0.7g)よりも糖質が少ない。(食べ方/飲み方が違うので比較する意味はあまりないけれど)
チョコ1切れ(5g)を食べる程度なら、血糖値にはほとんど影響がないレベル。
純ココアの方は、牛乳130ccくらいを入れて飲む場合は、糖質がさらに5g増えるし、砂糖も入れたらその分上乗せされる。(糖質だけでなくカロリーも増える)

チョコレートは罪な快楽?それとも健康食品?(連載:医学博士 大西睦子のそれって本当? 食・医療・健康のナゾ)
チョコレートのなかでは「ヘルシーなダークチョコレート」の方を推奨。
市販のダークチョコレートでも、糖質量やカロリーはミルクチョコレートと変わらない製品もあるので、成分表示を確認して食べた方が良いと思う。


カカオパウダーとココアパウダーは正確には別物。
カカオ豆を低温処理したロー(生)のカカオパウダーなら、カカオの栄養と風味が濃厚。
普通のココアパウダーは、カカオ豆を高温で焙煎しているので、ロータイプの方がカカオの栄養が残りやすい。
ローカカオパウダーはオーガニック製品が多く、価格が100gあたり1000円くらいはするものが多いので、普通のココア(100g当たり300~400円)と間違いにくい。
ココアパウダーとカカオパウダーの違い


カカオパウダーはココアパウダーの代わりに使えるようなのでちょっと興味がある。
以前飲んでいたココアで気に入っていたのは、『明治 コクがおいしいミルクココア』という調整ココア。
商品名通り、ココアのコクにミルキー感もあって、森永のミルクココアよりもずっと美味しい。
このココアの良いところは、美味しいのはもちろん、植物油脂不使用で、添加物も香料以外は使われていないこと。
※原材料は、砂糖、ココアパウダー(ココアバター11~13%)、ココアパウダー(ココアバター22~24%)、全粉乳、ミルククラム、食塩、ココアバター、香料。
この調整ココアはなぜか製造中止になってしまったのが残念。
今はオランダ産の純ココアにクリープ(牛乳は飲まないので)か砂糖(1cc分)のどちらかを入れて、熱湯で溶かして飲んでいる。砂糖に塩を少し加えるとよりこってりした甘さになる。
コーヒーと違って、クリープも砂糖も入れないココアはさすがに苦くて飲めない。

ココアパウダーの高級品といえば、VALRHONA(ヴァローナ)。100g600円くらいとバンホーテンの1.5倍。
商品名は「カカオパウダー」でも、商品説明は「ココアパウダー」と紛らわしい。(確かに、ココアパウダーは、(広義の)カカオパウダーの一種とは言えるだろうけど)
風味の良い品種のカカオ豆を配合しているので、カカオ風味濃厚でマホガニー系の赤色が特徴で、焼成後も色落ちしない。
私は買ったことはないけれど、そのうちココアにして飲んでみたい気はする。

ヴァローナ カカオ(ココア)パウダー / 100g ヴァローナ カカオ(ココア)パウダー / 100g

TOMIZ(富澤商店)

教えて!「私のマスト・バイ」アイテム vol.45 『ヴァローナ カカオパウダー』


ココアパウダーよりもさらにカカオ風味が濃厚らしき、カカオパウダー。
カカオ豆の脂肪分を減らして焙煎したココアパウダーとは違って、カカオ豆を低温加工して(天日干しまたは機械干し)粉末にする。これがロー(生)タイプのカカオパウダー。
amazonで”ローカカオパウダー”と検索すると数種類ヒットする。フードネイチャー プレミアム ロー カカオパウダー
レビューが多いのが、「ナビタスナチュラルズ(Navitas Naturals) オーガニック カカオパウダー」。
並行輸入品なので450gで2700円くらいと、普通のココアパウダーの倍くらい。ローカカオとしては安い。

ナビタスナチュラルズ(Navitas Naturals) オーガニック カカオパウダー 454g [海外直送][並行輸入品]<br />ナビタスナチュラルズ(Navitas Naturals) オーガニック カカオパウダー 454g [海外直送][並行輸入品]

ナビタス・ナチュラルズ(Navitas Naturals)




<”カカオ”に含まれるカドミウム>
Navitas Naturals社製オーガニック カカオパウダーには、パッケージ裏面下部に「WARNING:THIS PRODUCT CONTAINS A CHEMICAL KNOWN TO THE STATE OF CALIFORNIA TO CAUSE BIRTH DEFECTS OR OTHER REPRODUCTIVE HARM」という注記が記載されている。
ローカカオパウダーに共通する化学物質なのか、それとも、この製品特有のものなのかよくわからない。
少し調べてみると、この化学物質というのは、カドミウムのことらしい。
Is There Cadmium In Your Cocoa?
Navitas Naturals ナビタスナチュラルズ オーガニックカカオペースト ローチョコレートペースト!ローストしていないカカオを低温加工!濃厚で美味しい♪ローチョコやロースイーツ作りにおすすめ!ローチョコチップを作ってローフードバーに入れると美味しい!【ローフード】 - iHerb(アイハーブ)やVitacost(ビタコスト)で個人輸入

10年くらい前にチョコレートに含まれるカドミウムとニッケルについて報告書が出ていた。
高カカオをうたったチョコレート[国民生活センター、2008年2月6日公表]
高カカオをうたったチョコレート(結果報告)(PDF)
PDFの報告書には、製品別のカドミウムおよびニッケルの含有量が記載されている。

「カドミウムの量について」
土壌からの由来と思われる重金属のカドミウムについて測定した。チョコレート中のカドミウム含量は、銘柄によって差があった。すぐに健康被害を及ぼす量ではないが、チョコレートのカドミウムは含量が低いことが望ましく、引き続き品質管理等が適切に行われることが必要であると思われる。
※メーカー側の説明によると、カドミウム含量は主にカカオ豆栽培の土壌に由来する場合が多いとのこと。

「ニッケルの量について」
ニッケルが普通のチョコレートの1.9~3.8倍含まれていた。ニッケルは、接触性の金属アレルギー物質として非常に多くの症例報告があり、経口摂取によっても発症する可能性が報告されているため、ニッケルアレルギーを有する人は注意したほうがよい。


カカオにカドミウムが含まれていることは今に始まったことではないし、毎日ココアやチョコレートを多量に摂取しているわけではないので、この報告書を読んだ限りでは、私には実害はない。

それに土壌中のカドミウムが原因なら、ココア以外にもカドミウムは含まれている農作物があるに違いない。
水産物(貝類・イカ・タコ・エビなど)にもカドミウムは蓄積されやすいというのは昔から知っていたけれど、調べてみると、米などの穀物、ナッツ、野菜、果物から肉類まで、多かれ少なかれカドミウムは含まれている。

<農作物中のカドミウム含有量データ>
「食品に含まれるカドミウム」に関するQ&A[以下、厚生労働省]
食品中のカドミウムの実態調査の結果
各農産物からのカドミウムの平均摂取量

第240回食品安全委員会講演資料:食品から摂取されるカドミウムの健康影響評価[PDF]
国別にみると、米に含まれているカドミウムは鉱物資源が豊富なベネズエラが飛び抜けて多く、米国は少ない。日本は米作地帯のアジア諸国のなかでも、中国に次いで高い。

農作物から肉・魚までカドミウムが含まれているので、これを毎日気にせず食べているのなら、国際的な規制基準値を大幅に上回ったカカオ豆製品を毎日大量に摂取しない限り、カカオパウダーやココアパウダーのカドミウムも気にする必要があるとは思えない

問題があるとすれば、産地によってカドミウム含有量が違い、パッケージに含有量表示がないこと。
それを気にするのであれば、カカオ以外の農作物や加工製品についても全て同じことなので、やっぱりカカオのカドミウムだけに拘っても仕方がない。

レーゼル ~ ブラームス/ピアノ独奏曲全集Ⅰ&Ⅲ(UHQCD)
レーゼルのUHQCD盤『ブラームス:ピアノ独奏曲全集』は、第Ⅴ巻&第Ⅳ巻に続いて第Ⅲ巻を購入。
第Ⅲ巻は変奏曲集。《自作の主題による変奏曲》と有名な《ヘンデル変奏曲》と《パガニーニ変奏曲》を収録。

ブラームス:ピアノ独奏曲全集IIIブラームス:ピアノ独奏曲全集III
(2016/11/2)
ペーター・レーゼル

試聴する


試聴した印象どおり、この第Ⅲ巻の音質も、BerlinClassics盤よりはるかに良くなっている。
打鍵のアタック感が強すぎて耳が痛かったヘンデルとパガニーニの変奏曲では、かなり響きがまろかになっている。

特にルカ教会の柔らかい残響が特に良く映えていたのが、《自作の主題による変奏曲 作品21-1》。
ヘンデルやパガニーニの変奏曲に比べると、(難所が少ないせいか)強奏時の打鍵もそれほどきつくなくて、響きも柔らかで聴きやすい。
ブラームス独特の子守歌風の旋律と和声を聴いていると、楽しい夢を見ているような心地良さ。憧憬とか幸福感とかポジティブで包み込むような優しさが溢れている。

Brahms - Variations on an original theme op.21/1 - Rösel (これは普通のCD盤)



次の《ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ 作品24》は、全体的にテンポは速め。第1変奏、第4変奏、第21変奏とかは少し速すぎて、せわしない感じがする。
主題と緩徐系の変奏は、柔らかいタッチと響きが綺麗。
急速系でフォルテが続く変奏の方は、かなり速いテンポと強く正確な打鍵で、重厚な和音が続くパッセージをバリバリと直線的に一気に弾いて行くので、メカニックの切れ味の鋭さが前面に出て、ちょっと窮屈で息苦しい時がある。(特に第3変奏)
表現もほとんどルバートをかけていないので直線的で潤いがない感じがする。好みの問題としては、力業のいる変奏でもう少し起伏がついた歌い回しで聴きたい。
緩徐系の変奏は柔らかなタッチと響きが良く映えて、急速系の剛腕な演奏の後で聴くと、ほっとする。


最近は叙情豊かに弾く人も多いような気がする《パガニーニの主題による変奏曲》。
レーゼルは、速すぎない程度の軽快なテンポに、力強いタッチと精密なメカニックで、カチッとした練習曲風。
BerlinClassics盤よりも打鍵のアタック感が柔らかく、音の尖りが少ないし、音の輪郭に丸みがあり響きも少し軽やか。


「ドイツ・シャルプラッテン」のUHQCDシリーズ(キングレコード)をどれでも3枚買えば、期間限定特典で1枚プレゼントしてくれる。
そこで、好きな《ピアノ・ソナタ第1番》と《スケルツォ》が入っている第Ⅰ巻の方を申し込んだら、2週間くらいで到着。
音の良さはもちろん、もともと好きな第1番とスケルツォに苦手の第2番の演奏も期待通り良かった。
第1番は、切れの良い打鍵と快適なテンポで力強く溌剌として、若々しい躍動感が爽快。
感情が奔流して圧迫感を感じることの多い第2番も、ストレートに力強くて、聴きやすい。
やや遅めのテンポの《スケルツォ》も、冒頭から力強い打鍵で正確にリズムを刻み、柔らかい歌い回しの緩徐部と対照的。
この3曲は、BerlinClassics盤では打鍵のアタック感が強すぎてほとんど聴いていない。UHQCD盤では音質が随分向上したので、聴きやすさも演奏の印象も良くなっている。


ブラームス:ピアノ独奏曲全集Iブラームス:ピアノ独奏曲全集I
(2016/11/2)
ペーター・レーゼル

試聴する


Johannes Brahms - Piano Sonata No. 1 (これは普通のCD盤)


tag : ブラームス レーゼル

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
【新製品情報】電子楽譜専用端末 「GVIDO」
テラダ・ミュージック・スコア株式会社、世界初となる「2画面電子ペーパー楽譜専用端末」の販売を開始~電子楽譜の管理を行うクラウドサービスおよび純正アクセサリーも同時リリース(2017年4月5日)
発売・サービス開始予定は2017年9月20日。端末価格1600ドル(約18万円)。

ページ捲り:赤外線スイッチ搭載。画面にタッチすると譜めくりできる。
電子楽譜:PDFのみ対応。複数の手書きやブックマーク等と一緒に楽譜を保存できる。
データ保存方法:内蔵メモリー、マイクロ SD カード。
GVIDO クラウドサービス:楽譜(複数の書き込みやブックマークも)の保存、楽譜の購入、楽譜情報の共有など。
フットスイッチ:楽譜のページ捲り用。有線/無線接続。別売り。

Play with GVIDO


GVIDO TOKYO - Digital Music Score


実際に使ってみた製品レビュー。↑の公式動画よりも、使い方が良くわかる。

GVIDO 13.3 inch dual screen sheet music review - Review


国産小麦「はるきらり」
今まで使った国産小麦は、はるゆたかブレンド、春よ恋、春よ恋ブレンド、キタノカオリ、ゆめちからブレンド、南部小麦。
価格も高いけれど評判の良いはるゆたかブレンドも、春よ恋&ブレンドも、ゆめちからブレンドも、ホームベーカリーで焼いたせいか、私の味覚が鈍いせいか、評判ほどの美味しさは感じず、普通に美味しい。
南部小麦はどっしり焼きあがって、味も濃い感じがしたので、これはもう一度使ってもいい気はする。

結局、定番で使っている国産小麦はキタノカオリ。
もちもちした弾力のある焼き上がりで、黄色がかった甘みのあるクラムが好みと合っている。
油脂類、糖類(砂糖、はちみつ、メープルシロップ)は使わないパンしか焼いていないので、そういう点でもハード系に向いている(と言われる)キタノカオリが一番合う。
加水率85%でチャバタ風に焼くと、水分をたっぷり含んだ糊のようなクラムがもちもち。小麦の味もしっかりしていて、美味しい。

「北海道のめぐみ」というネットショップのDMメールに、「はるきらり」という新しい小麦粉が紹介されていた。
「北海道のめぐみ」では何度か買ったことがあり、北海道産小麦粉の種類がネットショップのなかでは一番多いお店。送料が高いので、まとめ買いするときだけ買っていた。

はるきらりは、富澤商店もCUOCAも取り扱っていないので、発売されていたのを知らなかった。

春まき小麦「はるきらり」[北海道の食品加工研究データベース「あじ研北海道」]

小麦粉 強力粉 はるきらりストレート 2kg 北海道産[北海道のめぐみ]
「春よ恋よりも香り味ともによく、きめが細かくしっとりやわらかなパンに仕上がります。きめが細かくしっとりやわらかなパンが焼ける」のだそう。
しっとりやわらか系のパンよりは、もちもち弾力のあるパンの方がすきなので、これはたぶん使わないと思う。

十勝小麦でパンを作るということ1 くるみのランプ[パンラボ]
-リスドオルで作るバゲットを国産小麦で作りなさい、というのは、正直むずかしい。バゲットはもちもち感を出さないように、国産小麦の中では、唯一もち感が少ない小麦はるきらりを使っています。
-クロワッサンははるきらりで作っています。はるきらりは味が淡白な粉ですが、(はるきらりの)全粒粉を2割入れると、風味が豊かになります。

tag : ホームベーカリー

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
ホルスト/惑星(2台のピアノ版、5台のピアノ版)
昔はSF好きだったので、曲名に惹かれて買ったCDがホルストの《惑星》。
ガーディナーの合唱曲のCDを集めていた頃で、ガーディナー&フィルハーモニア管(1994)のDG盤を購入。他の演奏もいくつか聴いたけれど、ガーディナー盤は透明感のある合唱がとても綺麗。

《惑星》に2台のピアノ版があるということを知ったのは、このパーチェ&ローマのライブ映像を見たとき。
作曲年の順からいえば、ピアノ版が原曲で、オーケストラ版の方が編曲になる。
2人はイタリア人でオランダのリストコンクールの優勝者。同じくらいにメカニックが良くて、呼吸もぴったり。
(長髪でポニーテールにしていたローマがショートカットになっていたのにびっくり。別人かと思った)

Enrico Pace & Igor Roma – from: G.Holst/ The Planets – Mercury (live @TivoliVredenburg)


Enrico Pace & Igor Roma – from: G.Holst/ The Planets – Venus (live @TivoliVredenburg)




「惑星」の副産物その2 ピアノ版「惑星」
この記事で推奨されているのは、Richard Markham & David Nettle(SAGA)。
他の3種類のCDと聴き比べると、↓のRichard Markham & David Nettleの演奏は、切れの良いタッチで躍動感とスピード感があり、色彩感も響きも豊かで綺麗。
オケの方が色彩感も音量も豊かなのに、ピアノ2台でも遜色なく思えるくらいに素晴らしい。CDで全曲聴きたいのに、廃盤で残念。

Holst - The Planets, "Jupiter" for Two Pianos
(Performed by Richard Markham and David Nettle.)



Holst - The Planets, "Mars" for Two Pianos




こちらは珍しい5台のピアノ版。演奏は5人兄弟によるピアノ・アンサンブル”THE 5 BROWNS”。(CDは『The 5 Browns: The Rite of Spring』》
さすがにスタインウェイ5台で弾くと、旋律の厚みと音量が増しているし、別の旋律も加わっている。
ピアノが多いと音量は増すけれど、ガチャガチャして音が濁ったようにも聴こえるので、音が綺麗な2台のピアノ版の方が聴きやすい。

Jupiter from "The Planets" for 5 pianos - The 5 Browns


tag : ホルスト パーチェ ローマ

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
シューマン/謝肉祭
フィオレンティーノの《謝肉祭》を聴いてから、ようやく普通に聴けるようになったので、いろんなピアニストの演奏で聴いてみた。
CDで持っているシューマンの《謝肉祭》というと、フィオレンティーノが2種類(1996年、1963年)、ミケランジェリ(1957年DG盤)、エゴロフのスタジオ録音、カッチェンのスタジオ録音(1958年)、アラウのスタジオ録音(1939年EMI盤)とモノクロライブ録画(DVD、1961年EMI盤)。(CDラックを探せば他にもあるかも)
そういえば、ハフも《謝肉祭》を録音しているのを思い出した。このCDは未購入。

カッチェンは急速部のタッチがちょっと粗く感じるし、(”Papillons”とか)テンポが速いとタッチが滑るようにも聴こえる(一音一音明瞭で粒立ち良い方が好きなので)。頻繁に伸縮するテンポやアーティキュレーションも私の波長とあまり合わない。
アラウの1939年録音は音質は悪いけれど、1961年の演奏よりタッチの切れ味もコントロールも良い。


エゴロフのスタジオ録音(EMI盤)は色彩感とソノリティが多彩で、和声に響きのバリエーションと美しさが際立っている。
残響が多めで和声の響きが美しく、”夢想”のような柔らかさと優美さがある。急速系の曲はテンポが速くて一気に弾きこんでいくので少し性急な感じがする曲もある。
”Pierrot”は、”E♭-C-B♭”の旋律を強く明瞭に弾いている。柔らかく弾くよりは、こういう弾き方の方が面白い。コラールやハフも強いタッチだけど、強弱とテンポがそれぞれ違うので、ニュアンスも変わる。
特に素晴らしいのは、最後の2曲、重厚な響きで盛り上がっていく”Pause”と、速いテンポで和声の響きが色とりどりに移り変わっていく華麗な”Marche des "Davidsbündler" contre les Philistin”。この2曲に関しては、一番好きなのがフィオレンティーノとエゴロフ。

The Master Pianist / Yuri EgorovThe Master Pianist / Yuri Egorov
(2008/03/04)
Youri Egorov

試聴する


これはEMIのスタジオ録音ではなく、”Egorov: a Life in Music”(Etcetera盤)に収録されているライブ映像。
このライブ録音は少しデッドな音響のせいか、スタジオ録音よりも少し力感が強く、響きが硬い感じがする。

Youri Egorov TV Recital, Part 1 - Schumann Carnaval




ソコロフのスタジオ録音(Melodiya盤)は、1967年の録音で当時17歳。
力感強くて切れ味鋭いタッチで、若々しい躍動感と生気みなぎる演奏。
”Papillons”は、スタッカートで弾く”E♭-C-B♭”の旋律が独特。

Sokolov Schumann Carnaval op 9


Various: Works for Piano SoloVarious: Works for Piano Solo
(2015/2/10)
Grigory Sokolov

試聴する




ミケランジェリのDG盤(1957年)は擬似ステレオなので、ヘッドフォンで聴くとかなり奇妙な人工的な響きがしてあまり好きではない。(スピーカーで聴くとあまり気にならない)
Youtubeにある1973年のルガーノライブは音質は良いけれど、テンポはDG盤と同じように全体的にちょっと遅め。
↓の1957年のライブ音源は、テンポが速めで勢いよく感じる。(1973年の東京ライブ(Altus盤)の演奏がかなり良いという人もいる)。
テンポの揺らし方や間合いの取り方が絶妙。急速部の鋭いタッチにはナイフのような怜悧な切れ味と凄みを感じる。
面白いのは、滅法速いテンポの”Papillons”。それに、終曲の”Marche”では、かなり遅めのテンポから徐々に加速していき、曲の途中でもテンポが変化して緩急のコントラストが強く、急速感と高揚感が増している。この”Marche”も素晴らしい。

Michelangeli Schumann Carnaval Live (1957)




シューマン国際コンクールで優勝したエリック・ルサージュの《謝肉祭》は、力感が強めで、急速部はかなりテンポが速くて打鍵のアタック感がちょっときつく、フレーズによっては”間”が少なくて窮屈な感じがする。スタッカート気味のタッチの響きがちょっと変わっていて、私の好みとは違っていた。
シューマンにしては、堂々としたタッチで、歌い回しや情感は少しすっきり。

Schumann Carnaval - Eric Le Sage


Schumann Project: Eric Le Saga Complete Piano Solo Music"Schumann Project: Eric Le Saga Complete Piano Solo Music
(2012/11/1)
Eric Le Saga

試聴する




カトリーヌ・コラールの《謝肉祭》は、緩急・静動の変化が細やかでコントラストが明瞭なので、曲間だけでなく曲中でもたびたび急変する気分の移り変わりが色鮮やか。
少し軽やかで歯切れの良いタッチで、響きや歌い回しに柔らかさと優美さがあり、細部のニュアンスも豊かで表情が生き生きとしている。他の(男性)ピアニストでは感じられないような、どこかしら品の良く洒落たところがある。
フレージングにクセがあって、時々末尾の音の響きが持続音的に長く聴こえるのも独特。
”Pierrot”のテンポと語り口が絶妙で、道化のちょっと間を外したような怪しさが漂う。”Papillons”の低音の弾き方もちょっと面白い。

Schumann - Catherine Collard (1991) Carnaval op 9


Schumann: Carnaval Op.9Schumann: Carnaval Op.9

Catherine Collard




《謝肉祭》は、曲間に限らず曲中でも、気分が変わったように曲想がコロッと転換していく。
曲想が変わるときも、安定した終止形からではなく、途中で中断したように変わることもたびたび。
テンポの取り方と揺らし方、旋律の間の取り方とか、強弱の変化のつけ方などアーティキュレーションの違いが、演奏(の印象)に影響する度合いが、他のロマン派作曲家よりもかなり大きい感じがする。(旋律自体はシンプルな”Pierrot”でも、演奏者の表現の違いが大きく感じられて、印象も随分変わる)
喩えていうなら、微妙なバランスで揺れるタイトロープみたいな危うさ。テンポや間合いが少し違っても、バランス悪く感じる。この不安定感が面白い。
いくつか聴いた《謝肉祭》のなかで特に好きなのは、ロマンティシズム豊かなフィオレンティーノ、アーティキュレーションが面白く軽やかで優美なコラール、和声の響きが美しいエゴロフ。テンポの揺れが絶妙で切れ味鋭いミケランジェリも素晴らしい。
でも、全ての曲でぴったりくる演奏というのはなくて、曲によって好きな演奏(ピアニスト)が違う。
それでも、誰か1人だけ選ぶなら、やっぱりフィオレンティーノ。



<参考情報>
シューマン 『謝肉祭』(花の絵)
コラールの演奏を聴いたのは、この記事で紹介されていて興味を惹かれたので。

休日は怒涛の鑑賞 脱線編[まさひろ瓦版]
シューマンの音源の紹介とコメント。エマール、ピリス、ハフ、キーシン、アシュケナージ、ポリーニなど現代の名だたる現役ピアニストの演奏は「つまらない」という。
お勧めされている演奏は、ホロヴィッツ、ミケランジェリ、シフラ、アンダ(Orfeo D'orのライブ録音)など。

tag : シューマン ミケランジェリ コラール ソコロフ ルサージュ エゴロフ

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
カレンダー
04 | 2017/05 | 06
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
ブログ内検索
最近の記事
最近のコメント
カテゴリー
タグリスト
マウスホイールでスクロールします

月別アーカイブ

MONTHLY

記事 Title List

全ての記事を表示する

リンク (☆:相互リンク)
FC2カウンター
プロフィール

yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

お知らせ
ブログ記事はリンクフリーです。ただし、無断コピー・転載はお断りいたします。/ブログ記事を引用される場合は、出典(ブログ名・記事URL)を記載していただきますようお願い致します。(事前・事後にご連絡いただく必要はありません)/スパム投稿や記事内容と関連性の薄い長文のコメント、挙動不審と思われるアクセス行為については、管理人の判断で削除・拒否いたします。/スパム対策のため一部ドメインからのコメント投稿ができません。あしからずご了承ください。