ユッセン兄弟 ~ シューベルト/幻想曲
たまたま聴いたユッセン兄弟のデュカス《魔法使いの弟子》の連弾がとても良かったので、他の演奏も聴いてみた。
録音がいくつか出ていて、ソロ録音はあまり印象に残らず。やはり連弾や2台のピアノの演奏を聴きたくなる。
普段は2台のピアノの方が連弾よりも好きなので、連弾曲はほとんど聴かないけど、ユッセン兄弟の連弾は、柔らかく繊細なピアノの音色がとても綺麗で、2つのパートが溶け合うような調和感があって、まるで1人のピアニストが4本の手で弾いているような素敵な連弾。

シューベルトの《幻想曲ヘ短調 D. 940》。この曲は試聴くらいしたことがあったとしても、最後まで聴いたのは初めて。
独奏曲でも出てくるような旋律がいろいろ出てくるので既視感のある曲。シューベルトの独奏曲は冗長な感じがすることが少なくないのに、この連弾曲は20分近く聴いていても、なぜか全然退屈しない。
その理由は、ユッセン兄弟のピアノの音色が綺麗な上に旋律はシンプルだけど、独奏曲よりも音がはるかに多いので、色彩感もソノリティも量感豊かで多彩だからだと思う。


Schubert Fantasie in F minor - Lucas & Arthur Jussen



ユッセン兄弟が弾くと、上品なワルツみたいに聴こえるポロネーズ。
Arthur & Lucas Jussen - Polonaise



ベートーヴェンが書いた連弾用の曲はたぶん聴いたことがない。
ベートーヴェンの《ワルトシュタイン伯爵の主題による4手のための8つの変奏曲  WoO.67 ハ長調》と《四手のためのピアノ・ソナタ ニ長調 op.6》はユッセン兄弟のCDにも収録されている。
フレージングばとても柔らかく滑らか。ベートーヴェンというよりは、シューベルトを聴いているような気がしてくる。

Beethoven - Eight variations for piano four hands on a theme Waldstein WoO 67 - Jussen Brothers


Beethoven Sonata in D-major opus. 6 for piano four hands - Lucas & Arthur Jussen



フォーレ《ドリー組曲》の「子守歌」。砂糖菓子のように甘く夢見るような素敵なフォーレ。

Arthur & lucas Jussen - Dolly Suite opus 56 van Gabriel Fauré.dv


ブラッド・メルドー『After Bach』
レコ芸の7月号を読んでいて、発売されているのを知ったブラッド・メルドーの新譜『After Bach』。
アルバムの最初と最後はメルドーのオリジナル。それに挟まれて、最初がバッハの《平均律曲集》(第1巻または第2巻)、続いて同じモチーフを使ったオリジナルを交互に配置。
ジャズピアニストの弾くクラシックは何度か聴いたけど、やはり本業のクラシックピアニストの演奏と比べると、がっかりする事が多い。
NMLでアルバム全曲聴いてみたところ、予想どおりバッハは.......。オリジナルの方がメルドーらしさが出ていて、私には良かった。

AFTER BACH AFTER BACH
(2018/3/9)
ブラッド・メルドー

試聴ファイル


浅いタッチで音が軽やかなオリジナルに比べると、バッハはタッチが深いせいかフレージングが硬く、声部が錯綜すると指がもつれたり、滑ったりするし、突然リタルダンドしたりアクセントやフォルテがついたりして、起伏のつけ方も滑らかではないように感じる(少なくとも私の好みとは違う)。
特にフーガでもたっとした印象がするのは、音の切れがあまり良くなく、縦の線もぴしっと揃わず引き締まった感じがしないからだと思う。声部が錯綜すると分離が悪くなり、ごちゃごちゃして聴こえる。
そもそもジャズピアニストが弾くバッハを、本業のクラシックピアニストの演奏と比べるのが間違いだとは思うけど、気になってしまうのは仕方がない。

キース・ジャレットも《平均律曲集》の第1巻をピアノ、第2巻をチェンバロで録音している。
キースはクラシックピアニストとして演奏活動をしていた時期があって、演奏会でバルトークやバーバーとかを弾いたりしていた。
第1巻の演奏では、メルドーより打鍵もしっかりして音の切れも良く、音の粒も揃って、フレージングも滑らかで、技巧的な安定感がある。
全体的にテンポは速めで(第10番のプレリュードでもかなり速い)、急速系の曲はキビキビと歯切れよく、リズミカルで躍動感豊か。あえて深い情感に浸るのを避けているかのようなシンプルなアーティキュレーションと飾り気のないさらりとした叙情が爽やか。久しぶりに聴いたキースの平均律は結構好き。

バッハのモチーフを使ったメルドーのオリジナルは全部で7曲。曲にもよるけれど、バッハよりは印象が良い。
ベネディクション/Benediction
ロンド/Rondo
パストラーレ/Pastorale
フラックス/Flux
ドリーム/Dream
オスティナート/Ostinato
癒やしのための祈り/Prayer for Healing

テンポが遅い曲はリズムが平板なので、長いと飽きてくる。「ベネディクション」は、ショスタコーヴィチ風の調性感のあいまいな旋律がとりとめなく流れていくようで、つかみどころがない。最後だけジャズ風に。
「癒しのための祈り」は、ゆったりしたテンポと静かな旋律が続き、終盤でオリエンタルな音階の旋律が少し出てきたりする。
不協和的な響きは現代的で好きとはいえ、主旋律があまり印象的ではなく、構成感や展開の面白さが感じられなかったら、10分以上もある「オスティナート」と「癒しのための祈り」になると、緩徐系苦手な私はちょっと飽きてしまう。

「パストラーレ」は後半のトレモロやオスティナートの響きが綺麗。「オスティナート」も響きは綺麗だけど、次々と展開していく旋律はほとんど印象に残らなかった。
「フラックス」もリズミカルだけど、展開が単調な気はする。

オリジナル曲のなかでは、「ロンド」が一番面白い。次々と違う曲想に展開し、ジャズ風の旋律も一番多く出てくるし、公式動画にも選ばれているので、これがオリジナル中ベストではなかろうかと。
結局、好みから言って、「ロンド」以外で好きになれる曲がなかったので、今回はCD買わず。

Brad Mehldau - After Bach: Rondo (Official Audio)


デュカス/魔法使いの弟子(ピアノ編曲版)
デュカスの《魔法使いの弟子》は、ディズニー映画「ファンタジア」で使われたので有名になったらしい。映画は見たことがないし、この曲もまともに聴いたことがない。
2台のピアノで弾く現代曲をいろいろ聴いていたら、《魔法使いの弟子》はディズニー映画に登場したのも納得できる楽しい曲だった。
人気のある曲だけあって、オリジナルの管弦楽曲版以外に、オルガン、ピアノ、吹奏楽、サクソフォンなどの編曲版もいろいろ。


原曲のオーケストラ版。(当然のことながら)ピアノ編曲版よりも音色が多彩で、洒落っ気とスピード感もあって、とっても面白い。ハリポタのサントラを聴いている気分。

Paul Dukas - L'Apprenti Sorcier



ディスニー映画『ファンタジア』。使われているクラシック曲は、「トッカータとフーガニ短調」、組曲「くるみ割り人形」、「魔法使いの弟子」、「春の祭典」、「田園交響曲」、「時の踊り」、「禿山の一夜」、シューベルトの「アヴェ・マリア」。(ポンキエッリの「時の踊りだけ聴いたことがない)
小学校の音楽鑑賞の授業で初めて聴いたクラシックは、ベートーヴェンの《運命》だった。『ファンタジア』のようなアニメとクラシックが一緒になった映画なら、子供でも楽しく聴けたと思う。

The Sorcerer`s Apprentice ( ファンタジア 'Fantasia' Theme song)



デュカス編曲による2台のピアノ版。ユッセン兄弟は、ゆったりしたテンポで柔らかいタッチ。音色もタッチも統一感があって、2台のピアノが溶け合っているような一体感がある。

L'apprenti Sorcier - Paul Dukas - Lucas & Arthur Jussen (serie Meesterpianisten) 2010



Kobrin&Nicolaの演奏は、ユッセン兄弟よりも、速いテンポで力感・メリハリが強く、推進力とスピード感があって、聴き映えする。フォルテのタッチがきつすぎて、ちょっと粗くて賑やかな気はする。ユッセン兄弟の調和感に比べて、2台のピアノが拮抗している感じ。

Dukas : Sorcerer's Apprentice for two pianos - Alexander Kobrin, Frédéric D'Oria Nicolas



シュタウプ編曲によるピアノ独奏版。
Yuja Wang -- L'apprenti Sorcier



アンセルの自作自演によるピアノ独奏版。ピアノ編曲版のなかでは、ユッセン兄弟とアンセルの演奏が好みに合っていた。
Dukas - L'apprenti Sorcier - Arthur Ancelle



連弾版(たぶんLéon Roques編曲)は、パスカル・ロジェ&アミ・ロジェによるOnyx盤がある。


珍しい8台のピアノバージョン。コンクールの歴代優勝者による合奏という音楽祭のイベント。2台のピアノ版を左右各4台に振り分けている?
音量が大きくなって迫力あるだろうけど、8台で弾いていれば、さすがに拍子が揃いにくく、響きも雑然とした感じはする。
PAUL DUKAS (1865-1935) "L'Apprenti sorcier"



そういえば、デュカスのピアノ作品集を以前聴いたのを思い出した。(曲自体はすっかり忘れているけど)
アスポース ~ デュカス/ピアノ作品集より ピアノ・ソナタ,ラモーの主題による変奏曲,牧神の遥かな嘆き

キャシー・クリエの現代音楽
ディティユーの《ピアノ・ソナタ》の録音を探していて、初めて聴いたピアニストのキャシー・クリエのディスコグラフィが面白い。現代音楽、それも演奏機会がそれほど多くはない曲が多いという選曲がとても個性的。

スカルラッティ、ハイドン、ショパン、ミュレンバッハ、ディティユー
Piano Music Piano Music
(2009/1/13)
Cathy Krier

試聴ファイル


ベルク、シェーンベルク、ツィンマーマン
Berg/Schonberg/ZimmermannBerg/Schonberg/Zimmermann
(2017/3/17)
Cathy Krier

試聴ファイル


この2枚以外にも、ドビュッシー&シマノフスキラモー&リゲティヤナーチェクと現代曲がかなり多い。
アルバン・ベルクとシェーンベルク(それにかなり聴きやすいヤナーチェク、リゲティ)を録音するピアニストは結構いるけれど、ディティユー、ミュレンバッハ、ベルント・アロイス・ツィンマーマンは珍しい。
特にミュレンバッハの《夜の音楽》(1987年)とツィンマーマンの《エンキリディオン》(1949年・1951年)は、クリエのアルバムで初めて聴いて、どちらも好きになれる曲だった。

クリエのピアノは、硬質でクリアな響き、明確なフレージングで、一音一音のタッチはそれほど研ぎ澄まされて精密だとは感じなかったけれど、シャープで切れが良く、あまり情感たっぷりには弾かない。現代的な乾いた感性の透明感としつこくない叙情感があって、現代曲には良く似合っていると思う。

ハイドンは明晰で後に引かない叙情感、ショパンは歯切れ良いタッチでさっぱりした情感。あえてクリエで聴きたいという気にはならなかった。
ドビュッシーはタッチがあまり精緻ではなく、縦の線とかリズムが揺れる(綺麗に揃わない)感じたするので、これも好きな演奏ではなかった。
ヤナーチェクも、アンスネスやフィルクスニーに比べると、打鍵や細部の情感の籠め方とかさほど繊細ではなく、速いテンポでサクサクと進んでいくので、淡泊な感じがする。(音質がデッドなのも影響していると思うけど)

対照的にクリエのピアニズムが似合っていると思ったのは、現代物。(曲自体が面白いと思ったせいもある)
ディティユーの《ピアノ・ソナタ》は、拍節感が少し曖昧で浮遊感や少しネットリとした情感を感じるのが面白い。

Cathy Krier Henri Dutilleux: Sonate pour piano



ミューレンバッハの《夜の音楽》は他に録音が見当たらず。
クリエの演奏で聴くと、夜のとばりにつつまれた幻想的な雰囲気が漂うような冒頭から(ベルクの《ピアノ・ソナタ》に少し似たところがある)、メシアン風の疾走感のある先鋭で厳めしい旋律に変わり(少しジャズ風な旋律もでてくる)、暗闇に潜む怖さみたいなものが噴出してきて、とても面白い曲。

B.A.ツィンマーマンはもともとピアノ作品が少ない上に録音も少ない。
《エンキリディオン》は、ヒンデミット、ショスタコーヴィチ、バルトークを連想するせいか、予想と違ってとても聴きやすい。
”エンキリディオン”とは「教本」という意味なので、邦題を《手引書》と訳している場合もある。
《エンキリディオン》はⅠ(8曲)、Ⅱ(5曲)、Ⅰの補遺(Anhang、1曲)、Ⅱの補遺(Anhang、2曲)の全16曲。
どちらかというと、Ⅰの方が、初期シェーンベルクやアルバン・ベルク(Ⅰ、Ⅱ)、ショスタコーヴィチ(Ⅲ、Ⅳ、Ⅵ)やバルトーク(Ⅶ、Ⅷ)に近い感じがするので聴きやすい。Ⅱはメシアンに少し似ているところがあるかも。

Cathy Krier Piano - 20th Century -Teaser (english)


スティーブン・ハフ ~ リスト/ 巡礼の年 第1年「スイス」、オペラ・パラフレーズ集
ハフのリスト録音はVirgin盤とhyperion盤があり、Virgin盤(2枚組)はずっと昔に買ったけど、hyperionに録音した2種類のCDは未購入。
ハフのドビュッシーを聴いた刺激で、まだ未購入のハフのCDをどれか買いたくなったので、ディスコグラフィと試聴ファイルをチェックして、リストの《巡礼の年》を購入。
ドヴォルザークの《ピアノ協奏曲》にも惹かれるものはあったけど、それほど好きな曲ではなかったことと、カップリングされたシューマンのコンチェルトが(試聴した限りでは)もう一つ私の好みと違う気がしたので、今回はパス。

《巡礼の年》は第1年だけ録音。
ハフは1980年代にVirginレーベルに《巡礼の年》の第2年・第3年・補遺のうち数曲を抜粋録音しているので、第1年はhyperionが初録音。
ハフの澄んだ音色と品のよい煌きのある優美な音色がとても綺麗。残響が多いわりにどの音もクリアに聴こえるので、軽やかで涼し気。

「ウィリアム・テルの聖堂/Chapelle de Guillaume Tell」
「ヴァレンシュタットの湖で/Au lac de Wallenstadt」

「パストラール/Pastorale」の冒頭の右手の旋律ををスタッカートみたいに短く切って弾くピアニストが多いけれど、ハフはレガートで弾くのでとても優美。

「泉のほとりで/Au bord d'une source」は、ハフの線の細い軽やかで品のよい煌きのある高音がよく映える曲。ハープというより、オルゴールみたいな音色がとても綺麗。

とても好きな「嵐/Orage」は、勢いよく一気に弾き込んでいく4分前後の演奏が多いけれど、ハフは5分近い。力強く明瞭なタッチで音型が明瞭に聴こえる。

いつ聴いても心理小説を聴いているような気になる「オーベルマンの谷/Vallée d'Obermann」。スローテンポでかなり長い曲なので、最後まで聴くのに苦労するけど、長調に転調する終盤は心のモヤモヤが晴れたようにすっきりして清々しい。

「郷愁/Le mal du pays」
「牧歌/Eglogue」
”Eglogue”とは、田園や羊飼いをテーマにした古典的形式の詩、田園詩、牧歌のこと。
暗い雰囲気の静かな曲なので、のどかな”牧歌”というよりは、”挽歌”のように聴こえる。

「ジュネーヴの鐘 Les cloches de Genève」
夢見るように甘い右手の旋律が綺麗。

カップリングは、グノーのオペラ・パラフレーズの3曲。
《別れ, 夢想 ~ 「ロメオとジュリエット」)/Les Adieux 'rêverie Sur Un Motif De Roméo Et Juliette', S409》
《歌劇「ファウスト」のワルツ/Valse De L'Opéra Faust, S407》
《シバの女王たち ~ 子守歌(「シバの女王」より) /Les Sabéennes 'Berceuse De L'Opéra La Reine De Saba', S408》


リストのオペラパラフレーズはいろいろ聴いたけれど、そもそもオペラ自体を聴かない(観ない)ので、あまり好きなタイプの曲ではない。
例外は、フィオレンティーノのCDで初めて聴いた《ファウストワルツ》
ハフの《ファウストワルツ》は、フォルテ部分でも力感が少し軽めで、全体的にフレージングが滑らか優美で品が良い。特に高音の弱音で弾く部分がとても軽やかで可愛らしい。

《別れ, 夢想》は、甘い思い出を回想するような曲想が6分くらい続いてから、ドラマティックに盛り上がって、また静かにエンディング。
「シバの女王」といえば、すぐに思い出すのは、ポール・モーリアやレーモン・ルフェーブルによるイージー・リスニング。
オペラの方は全然聴いたことがないけど、この《子守歌》はふわふわ柔らかくて夢見心地の優しい雰囲気。
初めて聴いたこの2曲は、劇半音楽ぽくなくて、とても綺麗なピアノ曲。

Debussy: Piano MusicAnnees De Pelerinage
(2005/9/13)
スティーヴン・ハフ

試聴ファイル(hyperion)



↓は2枚組のVirgin盤。
Mephisto Waltz
(1998/01/01)
Stephen Hough

試聴する

<DISC1>
1.メフィスト・ワルツ第1番(「村の居酒屋での踊り」S.514)
2.タランテラ(「巡礼の年 第2年補遺"ヴェネツィアとナポリ"」S.162より第3曲)
3.スペイン狂詩曲 S.254
4.死者の追憶(「詩的で宗教的な調べ」S.173より第4曲)
5.小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ(「伝説」S.175より第1曲)
6.孤独のなかの神の祝福(「詩的で宗教的な調べ」S.173より第3曲)

<DISC2>
1.アヴェ・マリア(「詩的で宗教的な調べ」S.173より第2曲)
2.エステ荘の糸杉に寄せて-葬送歌(第1)(「巡礼の年第3年」S.163)
3.エステ荘の糸杉に寄せて-葬送歌(第2)(「巡礼の年第3年」S.163)
4.エステ荘の噴水(「巡礼の年第3年」S.163)
5.瞑想 S.204
6.悲しみのゴンドラ 第1稿 S.200/1
7.悲しみのゴンドラ 第2稿 S.200/2
8.ダンテを読んで-ソナタ風幻想曲(「巡礼の年第2年"イタリア"」S.161)
9.アヴェ・マリア(ローマの鐘)S.182


Liszt Annees de Pelerinage Venezia e Napoli Tarantella Hough.


Liszt Apres une Lecture de Dante Hough Rec 1992.


スティーヴン・ハフ ~ フンメル/ピアノ・ソナタ集
スティーヴン・ハフのディスコグラフィで未購入CDを試聴していたら、古典派~ロマン派の初期の音楽が好きなせいか、フンメルのピアノ・ソナタが妙に気に入って、またCD買ってしまった...。

フンメルのピアノ・ソナタは全部で9曲。作品番号付きは第1番~第6番。
いつもとは違った顔のベートーヴェンみたいなところがあって、疾風怒濤の激しさはあまり顔を出さず、優美でロマンティックで可愛らしいベートーヴェンで、時々モーツァルトやハイドン、シューベルトにショパンにメンデルスゾーンが顔を出したりする。
1790年代と1800年代の曲は、モーツァルトとハイドンと初期ベートーヴェンが融合したような印象。第3番がとりわけロマンティック。第4番はモーツァルトを聴いている気分。

 ピアノ・ソナタ第1番 ハ長調 Op. 2, No. 3(1792)
 ピアノ・ソナタ第2番 変ホ長調 Op. 13(1805)
 ピアノ・ソナタ第3番 ヘ短調 Op. 20(1807)
 ピアノ・ソナタ第4番 ハ長調 Op. 38(1808)
 ピアノ・ソナタ第5番 嬰ヘ短調 Op. 81(1819)
 ピアノ・ソナタ第6番 ニ長調 Op. 106(1824)
 ピアノ・ソナタ第7番 ト長調(1795)
 ピアノ・ソナタ第8番 変イ長調(1821)
 ピアノ・ソナタ第9番 ハ長調(1792)

録音が多いのは「第5番Op.81」。1819年の作曲で、シューベルトの陰翳がかかったベートーヴェンみたい。フンメルのピアノ・ソナタのなかでも、最もロマン派に近付いた曲で、第6番の次に好きな曲。
第5番の第1楽章はドラマティックな幕開き。全体的にどこかで聴いたようなデジャヴなところがあって、少しベートーヴェン風。時々《ピアノ・ソナタ第22番》の第2楽章を連想する。
ロマン派風にロマンティックな第2楽章では、時々ショパンみたな旋律がでてくる。感傷的になり過ぎないのが良い。
軽快なテンポとリズムの第3楽章は、速いテンポで弾く細かいパッセージが華やか。(メンデルスゾーンにちょっと似た感じ)

Constance Keene plays Hummel Sonata No. 5 in F sharp minor Op. 81 (2/3)



私が一番好きなのは「第6番Op.106」。フンメルのピアノソナタ中、規模最大で唯一の4楽章構成で、シンフォニックで明るく伸びやか。
楽章ごとの曲想もそれぞれ違い、演奏時間は30分ほどと長いけれど、どの曲もとても楽しく聴ける。
第2曲はまるで(安定感のある)シューマン。力強くてダイナミックで躍動感溢れるところがとても好き。
さらに好きなのはとっても可愛らしい主題とフーガの絡みあいが楽しい第4楽章。何度聴いても思わず微笑んでしまう愛らしさ。フンメルのピアノ・ソナタ全曲のなかでも一番好きなくらい。

Constance Keene plays Hummel Sonata No.6 in D Major op.106


ハフが録音しているのは、第3番、第5番、第6番の3曲のみ。
全体的にテンポが速くてリズム感も良く、硬質でクリアで多彩な音色が綺麗で、輪郭も音の切れ味もシャープで精緻。
楽章ごとの性格付けと楽章間のコントラストが明瞭で、曲中のメリハリもしっかり。特に急速楽章のスピード感と躍動感が鮮やか。
思いがけなく私の波長にぴったり合ってしまったフンメルのピアノ・ソナタ。(全集録音あればさらに嬉しかったけど)

ハフはChandosにフンメルの《ピアノ協奏曲》のうち第2番と第3番も録音していて、憂いの少ないショパンとメンデルスゾーンが合わさった感じ。こちらもわりと好きだけど(特に第2番の方)、ピアノ・ソナタのようにはまることはなく、CD買うには至らず。

Johann Nepomuk Hummel : Piano SonatasJohann Nepomuk Hummel : Piano Sonatas
(2003/12/9)
Stephen Hough

試聴ファイル(hyperion)


Piano Concerti Johann Nepomuk Hummel : Piano Sonatas
(1992/10/27)
Stephen Hough

試聴ファイル(chandos.net)



ハフが録音していない《ピアノ・ソナタ第2番》は、モーツァルトとハイドンとベートーヴェンが入り混じったようなところが面白い。
ハワード・シェリーのスタジオ録音とディノ・チアーニのライブ録音がある。

Ciani Hummel Piano Sonata No.2 (first mov.)



フンメルの「ピアノソナタ全集」の録音は4種類あり、コンスタンス・キーン(Newport Classic)、A. ポンパ=バルディ(Centaurm)、Hae Won Chang/チャン・ハーウォン(Naxos)、イアン・ホブソン(Arabesque Recordings)。
NMLとamazonで試聴したところ、速いテンポで細かいパッセージになると、指回りがちょっと怪しくなる人が多い。(やはりハフのメカニックの精密さと切れ味の良さは抜群)
そのなかで、一番私の好みに合っていたのがキーン。柔らかく温もりがあり、落ち着いた煌きがある音色が綺麗。和らい音色でメリハリはやや弱く、メカニック的な精度とか音の切れ味もやや弱い感じはする。テンポ感は私の感覚と合っているし、優しい雰囲気が曲想によく似合う。全集(CD3枚)買うならキーンにするけど、3巻とも廃盤だった。

Piano Sonatas 1
(2000/2/15)
Constance Keene

試聴ファイル



<参考情報>
フンメル研究ノート~Review~[Hummel Note 作曲家J.N.フンメルの研究ノート]
フンメルの伝記が載っている。ベートーヴェンの才能の巨大さと独自性、芸術性を理解していたフンメル。ウィーンでは人気のあるヴィルトオーソ&人気作曲家として華やかな音楽活動をしていたのに、死後、フンメルの音楽はロマン主義の台頭とともに忘れられていった。
フンメルの音楽を聴いていると、ベートーヴェンとは違って、音型とか曲想が似通っている曲が多く、当時は人気があっても、今ではほとんど演奏されなくなったのもわかる気はする。

デュティユー/ピアノ・ソナタ、波のまにまに(波にまかせて)
デュティユーが書いたピアノ作品は少ないので、全部録音してもCD1枚くらいに収まってしまう。
そのなかで一番好きなのが《ピアノ・ソナタ》。それに組曲の《波のまにまに(波にまかせて)》もメロディアスで聴きやすい。

規模が大きく弾き映えする《ピアノ・ソナタ》は録音がわりと多い。
プロコフィエフやメシアン風の和声とリズムに、ラヴェルやドビュッシーのような流麗さと洗練性が加わったような印象。
調性感がわりと残っているので、前衛的な現代音楽の聴きにくさは無い。
モチーフが次々と移り変わって形式的な自由さのせいか、とらえどころのなさが少しあるけれど、旋律もリズムも起伏が多くてめまぐるしく動いて、和声の響きも綺麗なので、とても面白く聴ける。

ケフェレックやクリエなどいくつか録音を聴いたところ、一番私の好みに合っていたのがアルトゥール・アンセル。(クリエは拍節感が少し曖昧で不安定感と浮遊感があり、ケフェレックは柔らかい響きと流麗なフレージングで優美)
アンセルは、粒立ちの良い硬質なタッチと区切りが明確なフレージングで、リズムも明瞭でシャープ。
特にメシアン風の厳めしさと怖さや、プロコフィエフ風の不可思議さや諧謔さが強く感じられて、ケフェレックとクリエよりも硬派な印象。
ダイナミックレンジが広く、タッチも響きの変化も多彩で、レガートの響きもとても綺麗。旋律や和声の響きの変化やコントラストが明瞭なので、起伏に富んでいてしっかりメリハリもあり、彫が深くて表情豊か。
明晰で均整のとれた造形感があって、アンセルの演奏を聴いて初めて、この曲が好きになったのだった。

Chopin/Dutilleux: Piano Chopin/Dutilleux: Piano
(2016/3/11)
Arthur Ancelle

試聴ファイル



アンセルの音源がなかったので、これはクリエのライブ映像。
Cathy Krier Henri Dutilleux: Sonate pour piano



《波のまにまに(波にまかせて)/Au gré des Ondes》は、元々はラジオ・フランスの番組間の繋ぎ用として作曲された曲をまとめた曲集。調性感と曲想が違う短い曲が6曲集まっていて、どれも聴きやすい。

I. 子守歌のプレリュード/Prelude et berceuse
”子守歌”にしては、不可思議な雰囲気が漂って、波に浮かんでふわふわ~っとしている感じ。ちょっとドビュッシー風かも。

II. クラケット/Claquettes
軽快なリズムとせかせかした旋律で、シニカルさがない洗練されたプロコフィエフ風。クラケットとは、スポーツの”クリケット”?と思ったら、タップダンスのことだった。

III. 即興/Improvisation
これもプロコフィエフの初期のピアノ・ソナタを連想する不可思議な雰囲気。

IV. 常動曲/Mouvement perpetuel
VI. エチュード/Etude

この2曲は初期のドビュッシーとプロコフィエフが融合したような感じ。

V. バッハへのオマージュ/Hommage a Bach
バッハのシチリアーノを連想するような透明感のある哀感が綺麗。

Henri Dutilleux - "Au gré des Ondes"



ディティユーのピアノ作品だけをまとめた録音は少ない。1枚だけ買うとしたら、ケフェレックのアルバムにすると思う。

Dutilleux: L'OEUVRE pour Piano Dutilleux: L'OEUVRE pour Piano
(1996/11/1)
Anne Queffelec

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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、ミンナール、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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