2022.05.03 14:00| ♪ ジュリアス・カッチェン|
久しぶりにリリースされたジュリアス・カッチェンの新譜はライブ&放送用スタジオ録音集『Piano Recitals 1946-1965』。カッチェンの新しい録音が聴けるとは全然予想していなかったのでちょっとしたサプライズ。
レーベルはMeloclassic。昨年12月末にリリース済みで、日本では5月下旬発売予定。Meloclassicは欧州の歴史的録音専門のマイナーレーベルかと思っていたら、 2013年12月に設立されたタイの独立系レーベルだった。数年前から、カッチェンのライブ録音集をソロ1枚、デュオ2枚の合計3種類を順次リリースしている。私が持っているのは《展覧会の絵》が収録されたソロのみ。
新譜は2枚組で収録時間が約150分。Meloclassicの音源は古いモノラル録音が多く、これも随分古いので音質はさほど期待できない(特に1946年と1951年録音の小品)。それでも音源は”Original Masters”なので、1960年代の録音なら年代のわりにかなり良いかもしれない。
カッチェンの既発CD(Decca、Audite、ICA盤など)で収録されていない曲は、ベートーヴェンとシューベルトのピアノ・ソナタ3曲、アンコールピース(小品)はガーシュウィンのみ。私が聴きたいのはベートーヴェンのソナタ2曲。ガーシュウィンは面白そう。シューベルトの最後のソナタは、曲としては好きではなくても、カッチェンがどう弾いているのか興味はある。
試聴ファイルで一応音質を確認したいと思っていろいろ探しても、ファイルが見つからなかった。CD買って聴くしかないので、タワーレコードですぐに予約。
<収録曲>
(CD1)
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第12番 変イ長調 Op.26 (1964年5月27日 西ドイツ シュトゥットガルト・Villa K · SDR, 放送スタジオ録音)
シューベルト:ピアノ・ソナタ第21番 変ロ長調 D960(1960年8月6日 フランス プラド・Église Saint Pierre ∙ RTF, ライヴ録音)
ガーシュイン:3つの前奏曲(1951年10月28日 西ドイツ ハンブルク・Studio · NDR, 放送スタジオ録音)
※この3曲は既出録音がない。
バッハ(ヘス編):主よ、人の望みの喜びよ ト長調(1946年11月20日 フランス・Studio d’Essai · RDF, スタジオ録音、以下同)
モーツァルト:ピアノ・ソナタ第15番 ハ長調 K.545~アレグロ
ショパン:ポロネーズ 変イ長調 Op.53 「英雄ポロネーズ」
※この3曲は古いDeccaスタジオ録音よりもさらに古い。
(CD2)
バッハ:パルティータ第2番 ハ短調 BWV826(1965年9月25日 西ドイツ Ludwigsburg · Schloss · SDR,ライヴ録音、以下同)(Doremi盤と同一音源)
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第30番 ホ長調 Op.109 (既出録音なし)
シューマン:交響的練習曲集 Op.13 (Deccaスタジオ録音は1953年)
ショパン:バラード 変イ長調 Op.47 (Audite盤スタジオ録音は1962年)
メンデルスゾーン:ロンド・カプリチョーソ ホ長調 Op.14、前奏曲とフーガ第1番 ホ短調 Op.35-1(1951年10月28日 西ドイツ ハンブルク Studio · NDR,放送スタジオ録音)※古いDeccaスタジオ録音よりもさらに古い。
《パルティータ 第2番》の録音データをよく見るとDoremi盤ライブ録音集と録音日&場所が同じだった。
Doremi盤には収録されていないベートーヴェン、シューマン、ショパンも同じ演奏会で弾いているので、音質も同じはず。
パルティータの最初の3曲(Sinfonia、Allemande、Courante)は、輪郭のしっかりした音で声部がくっきりと浮かび上がり、水気のある音色でクールな叙情感が綺麗(テンポがちょっと速い気はする)。Capriccio、Rondeauはテンポが速い上に加速していくので、慌ただしくてせわしない。
Keyboard Partita No. 2 in C Minor, Op. 1 No. 2, BWV 826: I. Sinfonia (Live)
Keyboard Partita No. 2 in C Minor, Op. 1 No. 2, BWV 826: II. Allemande (Live)
Keyboard Partita No. 2 in C Minor, Op. 1 No. 2, BWV 826: III. Courante (Live)
この《ピアノ・ソナタ第30番》は1967年のラジオ放送をリスナーが録音した音源。この演奏好きなので、これより2年前のライブ録音がCDで聴けるのが嬉しい。
Beethoven - Piano Sonata E major, Op 109 / Julius Katchen(Rec.1967)
《交響的練習曲》のDeccaスタジオ録音は1953年。新譜は12年後のライブ録音なので、演奏がどう変わっているか聴き比べ出来る。
Julius Katchen plays Schumann Etudes Symphoniques Op. 13
<ブックレットのプロフィール情報>
カッチェンに、Rita Katchen Hillmanというsister(姉か妹)がいたというのは初情報。ピアノもヴァイオリンも弾くリタはニュージャージー学生オーケストラとオバーリン音楽院オーケストラ(オハイオ州)のコンサートマスターだった。ブックレット掲載のカッチェンの写真はリタ提供。また、このCDセット製作にはClaire Bouchendhomme とブルーノ・モンサンジョンが協力したとのこと。
<Find a Grave>の情報によると、Rita Katchen Hillmanは1928年4月2日にニュージャージー州ロング・ブランチで生まれたなので、カッチェンの「妹」になる。
検索していた時に偶然見つけたのは、カッチェンの父方の祖母Nettie Katchenの追悼記事。記事にはカッチェン一族の系譜が記されている。Nettieはロシアの詩人Isaac Rabinowitzの娘で欧州のギムナジウムを卒業し、プロではないが優れたピアニストだった。Nettieはアメリカに移民し、その数年前にアメリカに来ていた(カッチェンの祖父である)Julius Katchenと結婚。薬学スクールを卒業したJuliusは自宅で薬局を開店し、3人の子供が生まれた。そのうちの一人がカッチェンの父Ira。祖父の名前を受け継いだジュリアス・カッチェンは世界的に有名なピアニストだったが42歳でパリで亡くなった、と書かれている。
New Jersey Jewish News - October 21, 1976
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『Julius Katchen: Piano Recitals 1946-1965』
ジュリアス・カッチェンにまつわるお話
レーベルはMeloclassic。昨年12月末にリリース済みで、日本では5月下旬発売予定。Meloclassicは欧州の歴史的録音専門のマイナーレーベルかと思っていたら、 2013年12月に設立されたタイの独立系レーベルだった。数年前から、カッチェンのライブ録音集をソロ1枚、デュオ2枚の合計3種類を順次リリースしている。私が持っているのは《展覧会の絵》が収録されたソロのみ。
新譜は2枚組で収録時間が約150分。Meloclassicの音源は古いモノラル録音が多く、これも随分古いので音質はさほど期待できない(特に1946年と1951年録音の小品)。それでも音源は”Original Masters”なので、1960年代の録音なら年代のわりにかなり良いかもしれない。
カッチェンの既発CD(Decca、Audite、ICA盤など)で収録されていない曲は、ベートーヴェンとシューベルトのピアノ・ソナタ3曲、アンコールピース(小品)はガーシュウィンのみ。私が聴きたいのはベートーヴェンのソナタ2曲。ガーシュウィンは面白そう。シューベルトの最後のソナタは、曲としては好きではなくても、カッチェンがどう弾いているのか興味はある。
試聴ファイルで一応音質を確認したいと思っていろいろ探しても、ファイルが見つからなかった。CD買って聴くしかないので、タワーレコードですぐに予約。
![]() | ジュリアス・カッチェン - ピアノ・リサイタル 1946-1965年 (2022年05月下旬) ジュリアス・カッチェン 試聴ファイルなし |
(CD1)
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第12番 変イ長調 Op.26 (1964年5月27日 西ドイツ シュトゥットガルト・Villa K · SDR, 放送スタジオ録音)
シューベルト:ピアノ・ソナタ第21番 変ロ長調 D960(1960年8月6日 フランス プラド・Église Saint Pierre ∙ RTF, ライヴ録音)
ガーシュイン:3つの前奏曲(1951年10月28日 西ドイツ ハンブルク・Studio · NDR, 放送スタジオ録音)
※この3曲は既出録音がない。
バッハ(ヘス編):主よ、人の望みの喜びよ ト長調(1946年11月20日 フランス・Studio d’Essai · RDF, スタジオ録音、以下同)
モーツァルト:ピアノ・ソナタ第15番 ハ長調 K.545~アレグロ
ショパン:ポロネーズ 変イ長調 Op.53 「英雄ポロネーズ」
※この3曲は古いDeccaスタジオ録音よりもさらに古い。
(CD2)
バッハ:パルティータ第2番 ハ短調 BWV826(1965年9月25日 西ドイツ Ludwigsburg · Schloss · SDR,ライヴ録音、以下同)(Doremi盤と同一音源)
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第30番 ホ長調 Op.109 (既出録音なし)
シューマン:交響的練習曲集 Op.13 (Deccaスタジオ録音は1953年)
ショパン:バラード 変イ長調 Op.47 (Audite盤スタジオ録音は1962年)
メンデルスゾーン:ロンド・カプリチョーソ ホ長調 Op.14、前奏曲とフーガ第1番 ホ短調 Op.35-1(1951年10月28日 西ドイツ ハンブルク Studio · NDR,放送スタジオ録音)※古いDeccaスタジオ録音よりもさらに古い。
《パルティータ 第2番》の録音データをよく見るとDoremi盤ライブ録音集と録音日&場所が同じだった。
Doremi盤には収録されていないベートーヴェン、シューマン、ショパンも同じ演奏会で弾いているので、音質も同じはず。
パルティータの最初の3曲(Sinfonia、Allemande、Courante)は、輪郭のしっかりした音で声部がくっきりと浮かび上がり、水気のある音色でクールな叙情感が綺麗(テンポがちょっと速い気はする)。Capriccio、Rondeauはテンポが速い上に加速していくので、慌ただしくてせわしない。
Keyboard Partita No. 2 in C Minor, Op. 1 No. 2, BWV 826: I. Sinfonia (Live)
Keyboard Partita No. 2 in C Minor, Op. 1 No. 2, BWV 826: II. Allemande (Live)
Keyboard Partita No. 2 in C Minor, Op. 1 No. 2, BWV 826: III. Courante (Live)
この《ピアノ・ソナタ第30番》は1967年のラジオ放送をリスナーが録音した音源。この演奏好きなので、これより2年前のライブ録音がCDで聴けるのが嬉しい。
Beethoven - Piano Sonata E major, Op 109 / Julius Katchen(Rec.1967)
《交響的練習曲》のDeccaスタジオ録音は1953年。新譜は12年後のライブ録音なので、演奏がどう変わっているか聴き比べ出来る。
Julius Katchen plays Schumann Etudes Symphoniques Op. 13
<ブックレットのプロフィール情報>
カッチェンに、Rita Katchen Hillmanというsister(姉か妹)がいたというのは初情報。ピアノもヴァイオリンも弾くリタはニュージャージー学生オーケストラとオバーリン音楽院オーケストラ(オハイオ州)のコンサートマスターだった。ブックレット掲載のカッチェンの写真はリタ提供。また、このCDセット製作にはClaire Bouchendhomme とブルーノ・モンサンジョンが協力したとのこと。
<Find a Grave>の情報によると、Rita Katchen Hillmanは1928年4月2日にニュージャージー州ロング・ブランチで生まれたなので、カッチェンの「妹」になる。
検索していた時に偶然見つけたのは、カッチェンの父方の祖母Nettie Katchenの追悼記事。記事にはカッチェン一族の系譜が記されている。Nettieはロシアの詩人Isaac Rabinowitzの娘で欧州のギムナジウムを卒業し、プロではないが優れたピアニストだった。Nettieはアメリカに移民し、その数年前にアメリカに来ていた(カッチェンの祖父である)Julius Katchenと結婚。薬学スクールを卒業したJuliusは自宅で薬局を開店し、3人の子供が生まれた。そのうちの一人がカッチェンの父Ira。祖父の名前を受け継いだジュリアス・カッチェンは世界的に有名なピアニストだったが42歳でパリで亡くなった、と書かれている。

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