<生息数と生息地>
    (1)歴史
    Bald Eagle (Haliaeetus leucocephalus)/Species Profile[Alaska Department of Fish and Game]
    ・アラスカのハクトウワシが、米国本土のようにDDT使用の影響によって絶滅の危機にさらされることはなかった。しかし、アラスカにはハクトウワシを迫害した歴史がある。1917年、アラスカ準州議会はハクトウワシによる補食によって生計が脅かされている鮭業者と沿岸のキツネ農家の主張に応え、ハクトウワシに懸賞金を課した。この懸賞金制度は36年間続き、120,195羽のハクトウワシが殺された。懸賞金は1953年に撤廃され、1959年のアラスカ州制施行とともに、アラスカのハクトウワシは1940年に制定された連邦ハクトウワシ保護法の下に置かれた。
    ・1972年、アラスカ州議会は、冬に集まる大量のハクトウワシを確実に保護するため、チルカット川流域をハクトウワシの重要生息地として定めた。1982年、周辺地域の一部がアラスカ・チルカット白頭鷲保護区に指定された。

    (2)生息地
    Bald Eagle in Alaska[Environment Alaska]
    ・アラスカ州のハクトウワシの個体数は約50,000羽。一部の地域でハクトウワシが飽和状態のため、成鳥が巣の場所を見つけられない。アラスカ南東部はハクトウワシの密度が最も高い地域。アラスカ南東部のいくつかの島々では、海岸線に沿って約1マイル(1.6 km)ごとに巣が見つかる。
    ・湖や川が凍る前に夏が短すぎて子供を育てられない最北端の地域を除いて、アラスカの大部分で見られる。ほとんどが開放水面の近くで、海岸線の生息地を好む。
    ・晩秋から冬にかけての産卵サケの集中は、遠方からハクトウワシを惹きつける。冬季に最大4,000羽のハクトウワシがチルカット川渓谷でシロザケの遡上を餌にする。
    ・春にワシが集中するのは、コッパー川デルタ地帯、バーナーズ湾、シトカ湾、キーナイ半島、エネルギーが豊富なエサ魚(forage fish,ニシンやユーラション)が産卵するスティキーン川など。
    ・餌が手に入る場合、成鳥は一年中営巣地の近くに留まる傾向があり、他のワシからテリトリーを保護する。冬の間、内陸の湖や川が凍り、ほとんどの内陸のハクトウワシは魚を食べる海岸に移動する。一部のハクトウワシは、冬の間ワシントン州やオレゴン州まで南下するが、これは通常は若鳥。ハクトウワシの幼鳥は成鳥よりも大きな翼を持ち、骨格は大きくないが羽毛は20%も大きく、幼鳥の長距離移動を助ける。
    ・アメリカ本土48州でのハクトウワシ再導入の取り組みが成功した主要因は、アラスカのハクトウワシが寄贈されたこと。1982年~1990年にかけて、カリフォルニア州、インディアナ州、ミズーリ州、ニューヨーク州、ノースカロライナ州、テネシー州で279羽のアラスカ生まれのイーグレットが放鳥された。

    Bald Eagle Sanctuary Chilkat Preserve


    The Alaskan Town FULL of Bald Eagles



    (3)生息数
    Bald Eagle (Haliaeetus leucocephalus)/Species Profile[Alaska Department of Fish and Game]
    ・アラスカのハクトウワシ推定個体数は30,000羽。米国内最大の生息地。
    ・生物学者によれば、アラスカのハクトウワシ推定個体数は100,000〜150,000羽(繁殖鳥、浮遊鳥(非繁殖成鳥)、亜成鳥を含む。

    Population Trend of Adult Bald Eagles in Southeast Alaska, 1967-97
    (Michael J. Jacobson,John I. Hodges,U.S. Fish and Wildlife Servic, Raptor Res. 33(4):295-298, 1999)
    ・1967年~97年:アラスカ南東部の成鳥数を推定するため、合計6回の航空調査実施。
    ・層化ランダム抽出法:アラスカ南東部の海岸線全体を488プロット(各166㎢)に分割し、30プロットを抽出・調査。調査結果を外挿し、南東部全体の生息数を推計。
    ・調査期間:産卵と孵化初期の4月下旬と5月上旬に実施。
    ・個体数は調査期間中に92%増加。1967年6.941羽→1997年13,327羽(回帰適合直線上の数値)。1982年→97年は個体数に有意な差がなく、個体数が安定し始めたと考えられる。
    ・個体数推移:1967年7,230羽、1977年7,329羽、1982年10,934羽、1987年12,075羽、1992年13,340羽、1997年12,026羽。


    Distribution and Population Status of Bald Eagles (Haliaeetus leucocephalus)in Interior Alaska
    (Robert J. Ritchie and Robert E. Ambrose ,Alaska Biological Research Inc., U.S. Fish and Wildlife Service, ARCTIC, VOL. 49, NO. 2 (JUNE 1996) P.120–128)
    ・アラスカ内陸部におけるハクトウワシの営巣テリトリーの占有率、繁殖生態、移動に関する入手可能なすべての情報を統合。
    ・個体数推定の主データ源:未発表の猛禽類調査、筆者自身の調査、猛禽類の巣マップ(1981年USFWS)、各地域に詳しい生物学者の情報。
    ・既存調査データや猛禽類の巣アトラス、研究者からの情報と今回の調査結果をもとに、個体数を推定。ほとんどの調査は1970年代半ば~1990年代前半に実施され、固定翼機、ヘリコプター、ボート等により観察。
    ・調査対象エリア:アラスカ内陸部の6つの主な流域 1)ユーコン上流(Upper Yukon)、2)ユーコン下流(Lower Yukon)、3)タナナ(Tanana)、4)カスコクウィム(Kuskokwim)、5)スシトナ(Susitna)、6)コッパー上流(Upper Copper)
    ・個体数の推定方法:調査実施地域のおおよその割合に対する、ある地域の既知のペアの総数から推定。
    ・特定された営巣テリトリーは345か所。その85%近くがコッパー、スシトナ、タナナの3流域にある。
    ・アラスカ内陸部の推定繁殖ペア数:525~725ペア。個体数は今世紀半ばから大幅に増加、一部の地域では現在も増加中。
    ・増加の原因1)個体群の健康状態の改善、2)アラスカおよび州外の越冬地における迫害の減少、3)他地域個体群の回復または拡大によるアラスカ内陸部への移住、4)環境条件の変化(気温の上昇など)。
    ・アラスカ山脈以北の内陸部の地域個体群は、アラスカ山脈以南の繁殖の影響を受けた地域の個体群とは季節移動(migration)の経路と越冬地が異なるため、多少孤立している可能性もある。
    ・卵の測定結果では、亜致死影響や致死影響をもたらすと知られている濃度を示す環境汚染物質はなく、ほとんどの有機塩素系農薬と水銀の濃度は米国内他地域のハクトウワシの卵の濃度よりも桁違いに低かった。

    (表)アラスカ内陸部の地域別営倉ペア数
    internal alaska

    (アラスカ内陸部、アラスカ南東部)
    MAP1.jpg
    (出典:”Reproductive Success of Bald Eagles in Interior Alaska”の掲載マップ(Figure 1. Drainage study areas, Interior Alaska )に、アラスカ南東部を追記)


    Bald Eagles in Western Alaska
    (John M. Wright , Alaska Department of Fish and Game, Fairbanks, AK)
    ・対象地域:アラスカ半島北側からブリストル湾を経由し、アラスカ西部沿岸を北上し、ノアタック川流域に至る地域。(Kessel and Gibson (1978)の生物地理学的地域分類では、南西地域の北部と西部地域の大部分となる)
    ・営巣中ハクトウワシの分布と生息数(最低限の繁殖ペア数)を推定。
    ・既存の各種調査データを収集。調査方法は固定翼・ヘリコプターによる空中調査、ボートや川いかだ、徒歩など多様。最新のデータ不足のため、15~20年前のデータと最近の情報を組み合わせた。
    ・対象地域全体の営巣ペア数:160~175ペア。

    (アラスカ西部)
    Figure 2 Subregions of Western Alaska
    western.jpg
    (North side of the Alaska Peninsula, Naknek River drainage, Kvichak River drainage, Nushagak River drainage, Togiak, Yukon/Kuskokwim Delta and North of the Yukon drainage)


    <繁殖>
    (1)繁殖期
    Bald Eagle Nesting & Sensitivity to Human Activity
    ・ハクトウワシの繁殖期は緯度によって異なる。アラスカでは、2月に求愛と巣作りが始まり、8月下旬~9月上旬にかけて幼鳥が巣立ちする頃に終了。非繁殖期はおおむね9月中旬~1月頃(秋・幼鳥が巣立ち後~春・成鳥の繁殖活動再開時)。ワシへの妨害を避けることが最も重要である営巣期間は、アラスカでは3/1~8/31と定義されている。
    ・求愛と巣作り:2/1~4/30
    ・産卵と孵化:3/1~5/15
    ・育雛初期(孵化後6週間まで):4/15~6/30
    ・育雛後期(孵化後6週間以上):6/15~8/15
    ・巣立ち:7/15~9/15
    ※文献によって時期が異なる。4月巣作り開始、4月下旬産卵(※このスケジュールだと孵化は5月下旬~6月上旬になる)(State of Alaska · Department of Fish and Game


    (2)繁殖成功率
    ・論文で報告されているアラスカの繁殖成功率は、2000年以前の古いデータがほとんどで調査年もまちまち。生息地域と調査年によるばらつきがかなりある。
    ・繁殖成功率(生息地域別)は1963年~2002年までの間で、概ね50%~70%の範囲。

    Reproductive Success of Bald Eagles in Interior Alaska
    (Robert J. Steidl, Karin D. Kozie and Robert G. Anthony、The Journal of Wildlife Management,Vol. 61, No. 4 (Oct., 1997), pp. 1313-1321 (9 pages))
    ・1989年~94年にかけてアラスカ内陸部のハクトウワシ生息域北限付近(Gulkana川とCopper川流域)で、隣接する2つの個体群の生産性と営巣成功率を比較。
    ・調査対象地域の繁殖期は 低緯度地域に比べて短く、営巣完了にかなりの時間的制約がる。
    ・一般的に、4月上旬に親ワシが巣に到着し、4月下旬~5月上旬にかけて営巣開始、8月中旬までに雛が羽化、9月上旬に成鳥と幼鳥両方が営巣地を離れ始める。
    ・当地域の生物学的に重要な環境特性のひとつは、5月~8月の日照時間が24時間に近づくこと。
    ・5月上旬~中旬にテリトリーの占拠状況を飛行調査。抱卵中の成鳥、成鳥のペアの存在、卵のクラッチ(Postupalsky 1974)により、”occupied”と判定。
    ・7月下旬~8月中旬に生産性調査。航空調査と地上調査で確認された雛数をダブルチェック。

    (調査結果)
    ・7年間2地域合計:占有巣231テリトリー、営巣活動745回、繁殖成功率52%(繁殖成功巣/占有巣)。占有巣の97%で営巣活動。
    ・グルカナ川流域(89-93年83巣・営巣活動274回):生産性0.86±0.05、成功率59%(年別42%~69%)
    ・コッパー川流域(89-94年148巣・営巣活動471回):生産性0.71±0.04、成功率48%(年別40%~56%)
    ・生産性は各流域内で毎年、また空間的に変動。成功巣の同腹雛数は両流域で同じなので、生産性のばらつきは主に営巣成功の差に起因。
    ・繁殖成功の変動パターンも両集団で同様:ある年に成功したペアは、前年に失敗したペアに比べて、より多くの子どもを巣立たせ、成功する確率が高く、同じテリトリーに再入居する確率が高く、翌年に巣の場所を変える確率が低い。
    ・グルカナ流域では営巣失敗の92%(25回)が天候不順が最も深刻になりがちな抱卵中に発生。しかし、繁殖成功率は春の天候の厳しさ(気温や降水量)と負の相関関係はなく、また子育て中の餌生物量とも強い相関関係なし。
    ・生産性・成功率とも5月の降水量と相関なく、5月の平均気温と負の相関あり→春の天候がワシの繁殖成功に影響を及ぼさなかった(影響があれば、生産性や巣の成功率は気温と正の相関、降水量とは負の相関があると予想される)
    ・2つの流域とも、ベニザケの逃避量と巣の成功率、またはマスノスケの逃避量と生産性・成功率との間に相関なし。
    ・仮説:孵化前および孵化中の餌の利用可能性は、おそらく春の天候の厳しさや他の要因によって制御されており、餌の利用可能性が北方地域に生息するハクトウワシ個体群の繁殖成功率の変動を引き起こしている可能性がある。


    ”Table 4. Reproductive parameters of bald eagle populations. We excluded data from populations where authors indicated
    environmental contaminants were a potentially significant problem. ”
    eagle_convert_20240316074116.png
    (注)"Young fledged/successful territories" calculated as "young fledged/occupied territories ÷ nest success"
    (出典:Reproductive Success of Bald Eagles in Interior Alaska、Steidl et al,The Journal of Wildlife Management,Vol. 61, No. 4 (Oct., 1997))

    ※上記の研究データは調査対象期間が研究によってかなり異なり、特にDDT汚染の影響でハクトウワシの繁殖成功率が著しく低下し個体数が激減した時期とその後の個体数回復途上期間(1960~1980年代)のデータが多いため、全体的に繁殖成功率が低くなっていると思われる。他の研究データでは2000年以降では成功率80%前後の地域が複数ある。

    Bald Eagle Productivity in Southcentral Alaska in 1989 and 1990 after the Exxon Valdez Oil Spill
    (Jeffrey A. Bernatowicz, Philip F. Schempf and Timothy D. Bowman, U.S. Fish and Wildlife Service, Juneau, AK)
    ・調査対象地域(アラスカ南中央部):プリンス・ウィリアム湾(Prince William Sound/PWS), キーナイ半島南東部沿岸(Kenai Peninsula/Kenai), コディアック群島(Kodiak Archipelago/Kodiak)、カトマイ国立公園および保護区内のアラスカ半島南岸(Katmai National Park and Preserve/Katmai)、アラスカ半島ベチャロフ国立野生生物保護区(Alaska Peninsula-Becharof National Wildlife Refuge/APBNWR)
    ・USFWSと国立公園局の職員が航空調査。1989年は流出事故のため調査時期・地域・方法が標準化されていなかった。
    ・1990年の調査方法:孵卵期間中(5月~6月上旬)に巣の稼働率調査、卵孵化後~巣立ち前(7月~8月上旬)に生産性調査実施。
    ・繁殖成功率の算出:Postupalsky(1974)およびFraserら(1983)から引用した定義を使用し算定。
    - Occupied nest:抱卵姿勢の成鳥1羽、または、巣か巣周辺で防衛活動をする成鳥2羽。巣作りをする(活動的な)非繁殖成鳥ペアを含む。
    - Active nest:抱卵姿勢の成鳥1羽、または同腹雛(aerie)か幼鳥(chicks)がいる巣。
    - Nonbreeding pair:調査年中に産卵しないが、縄張り行動をとるワシのペア。
    - Pecent successful:少なくとも1羽の幼鳥がかなり成長した段階(advanced stage of development)に達した巣の数を、活動巣(Active nest)または占有巣(Occupied nest)の数で除した数値。

    (調査結果)
    ・比較対象8地域の平均は、生産性0.96雛/営巣活動巣、繁殖成功率は54%(営巣活動巣中)。生産性(1巣当たり0.461.40頭)、繁殖成功率(37~92%)ともに大きなばらつきあり。(地域によって調査期間は異なる)
    ・1989年と1990年の地域別繁殖成功率は、一地域の例外を除いてほぼ同じ。
    ・1989年のプリンス・ウィリアム海峡西部:占有巣の繁殖成功率は30%、生産性は1989年0.39羽/活動巣。石油流出の影響を明らかに受けていた。
    ・1990年:カトマイを除く全地域で、0.8羽以上/活動巣。プリンス・ウィリアム海峡では繁殖成功率と雛の生産性が平年並みに回復。
    ・1990年のカトマイ:繁殖成功率50%未満、生産性0.6羽/活動巣。生産性・成功率の低さが石油流出の影響だとは断定できなかった。

    Alaska1_convert_20240314042417.jpg
    ※地域別繫殖成功率 :占有巣数、成功率[対占有巣比]|[対活動巣比]
    Western Prince William Sound: (1989)165巣30%|32% → (1990)165巣64%|72%
    Eastern Prince William Sound : (1989)24巣38%|53% → (1990)348巣53%|64%
    Kenai Peninsula: (1989)0巣ND|ND → (1990)45巣51%|58%
    Kodiak Archipelago: (1989)333巣72%|ND → (1990)412巣64%|66%
    Katmai National Park and Preserve: (1989)0巣ND|ND → (1990)45巣47%|50%
    Alaska Peninsula-Becharof National Wildlife Refuge: (1989)62巣ND|55 → (1990)76巣56%|59%

    Alaska2_convert_20240314042437.jpg
    ※地域別繫殖成功率(活動巣数、調査期間、平均成功率[活動巣比](範囲))
    Kodiak National Wildlife Refuge:25年間、24-413巣、65%(44%~92%)
    Amchitka Island:1年間、71巣、61%
    Chatham Strait:10年間、15-47巣、60%(37%~82%)
    Kenai National Wildlife Refuge:2年間、22-23巣、75%(72%~78%)
    Tanana River:3年間、13-15巣、64%(54%~80%)
    Copper River Basin:2年間、37-151巣、42%(40%~51%)
    Copper River Delta:1年間、59巣、64%

    (アラスカ南中央部)
    Figure 2 Subregions surveyed for productivity
    MAP2.jpg


    Comparison of Bald Eagle (Haliaeetus leucocephalus) Nesting and Productivity at Kodiak National Wildlife Refuge, Alaska, 1963–2002
    (Dennis Zwiefelhofer、J. of Raptor Research, 41(1):1-9 (2007))
    ・コディアック国立野生生物保護区(KNWR)でハクトウワシの営巣状況調査。1963年~2002年の繁殖シーズン(合計7回)に固定翼機を用いた空中調査。
    ・各調査年に2回(5月上旬、7月下旬または8月下旬)調査実施。5月上旬に営巣地のうち占有巣を分類→7月下旬か8月下旬に占有巣の状況と雛数を確認(生産性調査)。
    ・1963年~1982年:生産性調査は選択された質の高い生息地のみを抽出。占有巣のうち1963年51%、1972年15%、1982年8%を調査。
    ・1982年以降:占有巣全体のうち75〜99%を5年おきに調査。
    ・営巣地は以下の基準のうち1つ以上を用いて占有地と分類: (1)抱卵中の成鳥がいる、(2)卵または雛が巣にあり、成鳥が巣に立っている、(3)新鮮な巣材がある、(4)2羽の成鳥が巣を守っている、(5)1羽または2羽の成鳥が巣に立っているが、卵または雛が見えない。(Stalmaster 1987, Bowman 1990).
    ・5月上旬までに、コディアックの営巣ペアの大半は巣作りを完了。7月下旬~8月に2回目の生産性調査実施。占有巣の状況を把握と存在する雛の数をカウントする(Bowman 1990)。
    ・巣の成功の判定:生産性調査の際に、占有巣の中あるいは隣接する巣の中にいる雛(6~11週齢)の観察に基づく。

    (調査結果)
    ・1963年:調査対象326巣のうち158巣が占有中(48%)、繁殖成功率は66%。幼鳥生産性は占有巣当たり1.10、繁殖成功巣当たり1.66。
    ・2002年:調査対象979巣のうち538巣が占有中(55%)、繁殖成功率は52%。幼鳥生産性は占有巣当たり0.87、繁殖成功巣当たり1.66を維持。
    ・1963年以来、KNWRの巣の数は241%増加、雛の総生産数は425%増加(要因不明)。
    ・巣の成功率が低下し、占有巣あたりの生産性が低下した一方で、KNWRで営巣するハクトウワシの個体数は増加継続。

    [Kodiak National Wildlife Refuge, Alaska]
    (巣の数)占有巣/繁殖状況調査巣/繁殖成功率(対繁殖状況調査巣)[対占有巣]
    1963年 158/80/53 (66%)
    1972年 159/ 24/16 (67%)
    1982年 211/17/15 (88%)
    1987年 291/198/122 (62%)
    1992年 375/321/220 (69%)
    1997年 460/448/229 (51%)
    2002年 538/526/ 275 (52%)

    ・多くの研究により、ハクトウワシの繁殖と生産性は、春先の獲物の組成と個体数によって制御される。
    (Hansen et al. 1984, Hansen and Hodges 1985, Gende and Wilson 1997, Hansen 1987, Elliott et al. 1998, Anthony 2001)。
    ・コディアックの営巣ハクトウワシが利用できる獲物のタイミング、量、または種類の変化が、観察された生産性の変動を説明するかどうかは不明。
    ・ハクトウワシのKNWRの営巣個体数の増加は、プリンスウィリアム湾(Bowman et al. 1997)、アラスカ南東部(Jacobson and Hodges 1999)、アラスカ内陸部(Ritchie and Ambrose 1996)など、他のアラスカハクトウワシの個体群における同様の増加パターンに対応。
    ・コディアック島、プリンスウィリアム湾、アラスカ南東部でのハクトウワシの個体数増加に寄与する要因は不明 (Bowman et al. 1997)。
    ・Swenson(1983)は、北米の内陸部のハクトウワシの個体数の増加は、全体的な生存に影響を与えた可能性のある食料の入手可能性の増加をサポートする温暖な気候条件によって促進されたと推測。
    ・リッチーとアンブローズ(1996)はまた、温暖な気候条件がアラスカの内陸部のハクトウワシの営巣個体数の継続的な増加に寄与したことを示唆。
    ・1980年代初頭に平均以上の海水温によって引き起こされた重大な環境変化は、アラスカ湾北部の海洋飼料魚群集と関連する食物連鎖を広範囲に変化させた可能性(Anderson and Piatt 1999)。

    History and Status of Bald Eagle Nesting and Productivity on the Kodiak Island Archipelago, Alaska(Dennis C. Zwiefelhofer,U.S. Fish and Wildlife Service, Kodiak, AK, Bald Eagles in Alaska, 2008,189~197頁)
    ・Kodiak Islandの年別繁殖データ(1963~1990年)


    The Status of Bald Eagles in the Yukon Territory, Canada
    (D. H. Mossop,Yukon Territorial Government (retired), Whitehorse, Yukon, Canada)
    ・ユーコンでは1970年代初頭から、繁殖猛禽類の目録作成開始。土地利用を決定する目的で、大型のハヤブサやその他の猛禽類を重点的に実施。
    ・より優先順位の高い大型ハヤブサの場合、実際に調査された生息地における調査精度は平均80%、ハクトウワシは約75%と推定。
    ・調査方法:航空機(通常はヘリコプター)による調査。初期はボート使用もあったが、広大な氾濫原で繁殖状況調査には不適。
    ・各巣の正確な位置はマッピングされ、UTM座標を割り当て。巣の設置状況(木の種類、状態、高さ、水面からの距離)、成鳥の存在、推定される若鳥の年齢などの生産性パラメータを記録。
    ・ハクトウワシやハヤブサ等の繁殖個体数分析は主要流域ごとに実施、ユーコン準州は7流域に分類。
    ・ハクトウワシの個体数パラメータをこれらの流域全体に外挿する作業。営巣適地として十分に大きいと思われる河川渓谷のみを対象。同時に、その流域における猛禽類全般の生息域を測定し、潜在的な繁殖数を推定するための比率として使用。
    ・生産性を定量化:ユーコン川流域の調査から得られた最良の指標は、調査年数にわたる巣の訪問をひとまとめにしたサンプル。1年以内に同じ巣を繰り返し訪れることはない。
    ・Yukon地域全体で、占有巣のうち年間39%~63%が繁殖成功。
    ・流域間の生産性に有意な違いはない。全調査年・調査対象巣全体の生産性は、繁殖成功巣あたり平均1.6 ± 0.19羽。(北米全域のハクトウワシ繁殖統計の範囲内(Stalmaster 1987))
    ・秋季の飛行個体数:合計1,250~1,900羽、うち成鳥800~1,100羽、当年巣立ちした幼鳥約300~480羽、未知数の亜成鳥(おそらく150~250羽)と推計。8か所のstaging sites(検証した巣の場所)での総個体数は315羽と推定(明らかにユーコンの秋の全個体数が計算されているわけではない)

    (Figure 1) The major drainage basins of the Yukon Territory showing the area surveyed for Bald Eagle (1974-1989)
    yukon.jpg

    ※論文記載データのまとめ
    既知巣(推計繁殖ペア数)|占有率(数)|繁殖成功率(数)|平均生産性(羽)|調査年
    North Slope (Coastal): 2巣 (3-4ペア) |100% (2巣) | 50% (1巣) | - | (過去5年)
    Porcupine River: 24巣 (37-4ペア) | 53% (13巣) | 42% (10巣) | 2.0羽 | 1977-1984
    Peel River: 26巣 (54-123ペア) | 69% (18巣) | 50% (13巣) | 1.5羽 |1978-1982
    Yukon North: 23巣 (72-96ペア) | 81% (19巣) | 63% (14巣) | 1.4羽 | 1978-1982
    Yukon West: 21巣 (41ペア) | 68% (14) | 44% (9巣) | 1.3羽 |1978-1988
    Yukon South: 52巣 (138-158ペア) | 62% (32巣) | 44% (23巣) | 1.7羽 |1977-1988
    Alsek River: 9巣 (22-15ペア) | 69% (6巣) | 39% (4巣) | 1.6羽 |1978-1989
    Liard River: 5巣 (31-63ペア) | 57% (3巣) | 39% (2巣) | - | -
    Total: 162巣 (398-552ペア) | (-%) 107巣 | (-%) 76巣 | 1.6羽
    ※論文には占有巣数と繁殖成功巣数が記載されていない。
    ※占有巣数=既知巣×占有率、繁殖成功巣=既知巣×繁殖成功率で算定。
    ※North Slope (Coastal)[北斜面(沿岸)] :北極圏のはるか北に位置し、営巣木が少なく、開水期が非常に短い。開放水面となる季節にはハクトウワシの限界的な繁殖地。一方、イヌワシはこの地域で圧倒的に繁殖数が多い。

    <文献集>
    Bald Eagles in Alaska(Bruce A. Wright and Phil Schempf, eds.2008 Bald Eagle Research Institute)
    アラスカのハクトウワシに関する論文集。”The Southeast Alaska Environment”、”Bald Eagle Biology”、”Population History and Status”、”Current Management”、”Bald Eagles in a Changing Land”の全5章合計43論文を収録。

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    Author:Yoshimi
    <プロフィール>
    クラシック音楽に本と絵に囲まれて気ままに暮らす日々。

    好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

    好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、ミンナール、アラウ

    好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

    好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

    好きな作家;アリステア・マクリーン、エドモンド・ハミルトン、太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭
    好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
    好きな写真家:アーウィット

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