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アラウ/ルガーノライブ 1963 ~ ブラームス、リスト、ショパン、ドビュッシー
最近はアラウのCDがかなり廃盤になっているので、聴きたい演奏が収録されたCDを探すのも一苦労。
このCDは日本のサイトでは販売していないので、ituneからダウンロード。
米国amazonのサイトでCDレビューを見ると、1963年のルガーノのリサイタルのライブ録音だと書いていた。レビューがやたらに良かったし、試聴してみるとブラームスのヘンデルバリエーションのアリアとドビュッシーがとても良い。
残りのリスト、ショパンともあまり聴いていない曲。リストはアラウの得意曲なので安心して聴ける。

Brahms, Ravel, Liszt, Chopin: Piano Works / Claudio ArrauBrahms, Ravel, Liszt, Chopin: Piano Works / Claudio Arrau
(1999/08/31)
Johannes Brahms、

試聴する(米国amazon/Aura盤)

※このCDはituneで試聴できます。"Claudio Arrau Piano Vol.1"
※このルガーノライブのCDは、Aura とFabula Classica(またはErmitage)から出ている。収録曲が違って、ドビュッシーの代わりにラヴェルの「夜のガスパール」が入っている。

(追記)
いろいろ調べてみると、「夜のガスパール」が入っているCDは1959年のアスコナのリサイタルのライブ録音。
itunestoreには、アラウのライブ録音としてErmitageから2種類のCDとして分割されているが、これは、どうもルガーノとアスコナのライブ録音をミックスしたものらしい。
Ermitage/Auraから出ているCD盤のカップリングが、本来のリサイタルのプログラム。
Ermitage/Auraが出しているアラウのライブ録音のCD盤は以下の3種類。

1959年のアスコア・リサイタル:Beethoven,Schumann,Debussy,Chopin
1963年のルガーノ・リサイタル:Brahms,Ravel,Liszt,Chopin
1971年のアスコア・リサイタル:Beethoven,Liszt,Chopin(ドビュッシーの《映像》は未収録)

1963年のライブにしては音は良い。ルガーノといえば、ゼルキンの1957年のライブ録音も音は良かった。
10人のピアニストのルガーノライブを収録した廉価盤のBOXセットも出ているので、放送局か何かの音源がストックされているのかもしれない。

さすがにライブなので、スタジオ録音で聴くアラウよりも気合が入っているようで、テンポがやや速くなりがちなところがある。
それに、60歳頃の演奏で技術的には安定しているはずなのに、ブラームスでは隣の鍵盤をひっかけるミスタッチ(特に和音)と音の濁りが多い。ライブにキズはつきものとはいえ、それにしても多いと感じるのは、和音の多い曲なので音がすぐに濁るからなのかな?

収録されているのは
 ブラームス:「ヘンデルの主題による変奏とフーガ」
 リスト:「小人の踊り」(2つの演奏会用エチュードS.145より)、「メフィストワルツ」
 ショパン:「わが喜び」(「17のポーランドの歌」第5番によるノクターン)
 ドビュッシー:「ピアノのために~プレリュード、サラバンド、トッカータ」
リスト・ショパン・ドビュッシーはメフィストワルツ以外はよく知らない曲。こういうライブ録音でもなければまず聴くことはない。

ブラームス:「ヘンデルの主題による変奏とフーガ」
ヘンデルバリエーションは、アラウらしくルバートをたっぷりきかせながら、情感を込めてドラマティックに弾いていく。
ゼルキンのヘンデルバリエーションは堂々とした輝かしさがあるが、やや骨っぽいというか、一直線的なゴツゴツしたところがある。
ゼルキンと同じくベートーヴェンやブラームスを得意としたアラウの演奏は、ゼルキンとは全く違うタイプの演奏で、軽やかに、柔らかく、優しく、丸みのある曲線的な自由さとおおらかさがあって、私はアラウの弾き方の方が好み。

アラウの弾くアリアは、今まで聴いたことがないほどに優しげなアリア。これを試聴したがために、全曲聴きたくなってしまったくらいに優しい。
このアリアも他の変奏も細かいテンポの揺らぎが多いが、不思議としつこさがない。構造的な安定感があることと、ウェットな情緒性がないので、わりと自然に聴こえる。

第1変奏はアラウ独特のやや鈍いリズム感。慣れているので気にはならないけれど、特に左手はスタッカートではなく、ややノンレガート気味の柔らかさなので、よけいにそう感じさせるところがある。
第2変奏はレガートで流麗。こういう叙情的な変奏のアラウは、とても美しい。第3変奏もとてもふんわり柔らかいタッチが優しげ。
第4変奏はフォルテで和音を高速移動するのはかなり滑らか。でも、その代わりミスタッチと音の濁りが多いのが気にはなる。
第5変奏は叙情的なアルペジオ。軽やかで透明感があって美しい。第7変奏からかなりリズム感が良くなっている。(大分エンジンがかかってきたような...)
第8変奏はさらに加速して、かなり速い。左手でなめらかに素早く刻むリズムの上を流れる主旋律がとてもエレガント。
第10変奏もレガートな装飾音の流れがとても美しい。これほど流れるような滑らかさで装飾音と旋律をつないでいくのはさすが。続く第11変奏も、ルバートをきかせて夢見るようなロマンティックな旋律と透明感のある響きがとても愛らしい。

ここあたりまでくるとミスタッチがほとんどなくなっているのに気がついた。
さっきはライブの開始直後だったので、ちょっと硬さがあったのか、気合の入りすぎで肩に力が入っていたのか...。

第13変奏は、ルバートをしっかりかけてよく歌う右手の旋律がとてもロマンティック。
第14変奏と第15変奏はリズム感やフォルテの打鍵がちょっと重いけれど、第16変奏は一転してとても軽やか。
第19変奏もとても軽やかなタッチと響きで、旋律が自由に動いて歌っている。
第21変奏はちょっと変わった弾き方。レガートではなく、軽やかなノンレガートで旋律を弾いている。たしかにスラーは楽譜には一切書かれていない。でも、カッチェンもゼルキンもここはレガートで流れるように旋律を弾いていた。こういう弾き方もあるのかと納得。(後で確かめたら、楽譜によってスタッカートがついていたり、いなかったりしていた)
第22変奏はとても愛らしく柔らかで軽やかな響きが鈴の音のように綺麗。第24変奏も滑らかで大きくうねるスケールがかなりダイナミックで、ここはかなり聴かせる。
最終変奏はテンポも速くなり、開放感と明るい輝きがありかなりの勢い。
フーガはマルカート気味のタッチで丸みをおびた響きで、旋律は歌うような滑らかさ。堂々とはしているけれど、どことなく包み込むような柔らかさも感じさせる。

アラウのピアノは、どちらかというとリズム感がちょっと重ため。
ヘンデルバリエーションでも、リズム感やフォルテでの力強さはさほど強調せず、自由なテンポの揺らぎと軽やかなタッチで、旋律をレガートで歌うように弾いていく。
全体的に力強さと堅固さと抑え、丸みのあるフォルムで安定感はあるし、柔らかな響きと細部まで丁寧な表現で叙情豊かな演奏。それに包容力を感じさせるようなおおらかさがあるのもアラウらしいところ。
面白いと思ったのは、徐々にエンジンがかかってくるとテンポも加速気味で勢いが増し、リズム感がかなり良くなってくるところ。この曲は晩年にスタジオ録音もしているので、それも一度聴きたくなってきた。

リスト:「小人の踊り」(2つの演奏会用エチュードS.145より)、「メフィストワルツ」
リストはあまり好きではないのでそれほど聴かないが、メフィストワルツはアラウのスタジオ録音で聴いたことはある。
アラウはリストが得意なので、初めて聴く曲でも手馴れた感じで弾いているのがわかる。
アラウのリストは、超絶技巧でバリバリ弾いている風な派手さはなく(実際は指は良く回っているが)、オドロオドロしいデモーニッシュなところは希薄でも、品の良い華やかさと優美さがある。こういうリストなら聴いていても圧迫感もなく、心地よい。
さすがにメフィスト・ワルツは鮮やかな演奏だったせいか、会場からもおおーっという声つきの拍手。

ショパン:「わが喜び「(「17のポーランドの歌」第5番によるノクターン)
これも初めて聴く曲。アラウのショパンのノクターン集は、どちらかというとバラードのような大きな起伏のあるドラマティックな演奏なので、この曲もノクターンにしては快活で盛り上がりの大きい曲に聴こえる。

ドビュッシー:「ピアノのために」~プレリュード、サラバンド、トッカータ
ドビュッシーもあまり聴かないので、これも初めて聴く曲。
パスカル・ロジェもこの曲を録音しているので、それを聴いた後でアラウのライブ録音を聴くと、アラウの響きはとてもふくよかで包み込むような柔らかさがある。
音が艶やかで温もりがあり、起伏をいろいろつけて表情豊かに弾いているので、ドビュッシーを聴くといつも感じるある種の無機質的な冷たさが全くない。
ロジェのドビュッシーは定評があるのでオーソドックスな弾き方なのだろうけれど、私はアラウのような表情豊かな歌のあるドビッシューの方が好み。

アラウは、本来はステージで本領を発揮する演奏家であって、”スタジオ録音も上手い”ピアニストだと評する人もいる。
ライブのアラウは、スタジオ録音のような手堅く卒のない完璧さはないけれど、ライブ特有の気合が入っていて、徐々にエンジンがかかってくるような勢いと、テンポをかなり自由に揺らした即興性が感じられるところがあって、ライブのアラウを聴くのは楽しい。

tag : アラウ ブラームス ドビュッシー フランツ・リスト

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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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