シベリウス/ヴァイオリン協奏曲二短調 (オリジナル版)
2009-07-15(Wed)
ロマン派の数あるヴァイオリン協奏曲の中でも、人気のあるシベリウスのヴァイオリン協奏曲。
私もヴァイオリン協奏曲の中では、ブラームスと同じくらい好きな曲。なぜかシベリウスはピアノ協奏曲の方は書いていなかったので、シベリウスといえばこの曲ばかり聴いている気がする。
もともとこの楽譜には、初稿と改訂版があり、現在演奏されているのは改訂版の方。
Wikipediaによると、「1904年に初稿版の初演後、1905年にブラームスのヴァイオリン協奏曲を初めて聴いたシベリウスは、自らの協奏曲よりもさらに徹底して交響曲的なこの作品に衝撃を受け、本作を現在我々が耳にする形に改訂したのだった。それは独奏楽器の名技性を抑えて構成を緊密化、凝縮し、より交響的な響きを追求したオーケストレーションへと変更した」という。
シベリウスは初稿の演奏を禁止したが、1991年に遺族の許可の下に、このオリジナル版の演奏が録音された。ヴァイオリンはカヴァコス、伴奏はヴァンスカ指揮ラハティ交響楽団。
カヴァコスはギリシャ生まれのヴァイオリニスト。1985年にシベリウス・コンクールで、1998年にはパガニーニ国際コンクールで優勝。超絶技巧の持ち主らしい。
シベリウスのコンチェルトを聴くと、ヴィルトオーソ的というよりは、高度な技術に加えて情感豊かな表現ができるタイプのように聴こえる。
このCDの良いところは、オリジナル版と改訂版の両方の演奏を収録しているところ。
同じ指揮者・オーケストラ・ソリストの演奏なので、楽譜曲自体を改訂したことによる変化がよくわかるようになっている。
オリジナル版は39分で演奏していたのが、改訂版だと34分29秒。かなり削りこんですっきりとした構造に整形され、わかりやすいつくりに変わっている。特に第1楽章がかなり違って聴こえる。
初稿(オリジナル版)を聴いてみると、躍動感のある改訂版の演奏に慣れている耳には、確かに聞き覚えのある旋律ではあるけれど、それ以上に違ったところの方が多い気がして、別の曲に聴こえてくる。
オリジナル版は内省的というか、ヴァイオリンが一人で黙々と歌うモノローグのような雰囲気が強くて、たしかに冗長といえば冗長。
しかし、ゆったりとしたテンポで歌うように流れるヴァイオリンの旋律が美しいし、特に第1楽章のカデンツァは素晴らしい。
カヴァコスのヴァリオリンは、水をたっぷり含んだようなしっとりした音色で表情がとても豊か。
スターンやヌヴーのソロで聴いていたが、こんなに流麗で叙情的な演奏ではなかったので、同じ曲にも思えないくらい。
改訂版はヴァイオリンが控えめになり、よりオーケストラ伴奏が前面にでて、たしかに交響曲的な重層的な響きに壮大さが加わった迫力がある。
オリジナル版では、第1楽章のカデンツァがなぜか2つもある。
結局、改訂版で削除されてしまった後半部に出てくるカデンツァは、演奏も終盤に差しかかる頃の第三主題の再現部の前に挿入されている。
このカデンツァは、まるでバッハを聴いているかのような格調の高さを感じさせ、やや哀感を帯びた旋律。これが入っている第1楽章を聴くだけでも満足できるくらいに、オリジナル版には独特の深い叙情が漂っている。
何度聴いても、とても美しいカデンツァ。このカデンツァだけでも、改訂版に残しておいてくれればよかったのにと思ってしまう。
※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
私もヴァイオリン協奏曲の中では、ブラームスと同じくらい好きな曲。なぜかシベリウスはピアノ協奏曲の方は書いていなかったので、シベリウスといえばこの曲ばかり聴いている気がする。
もともとこの楽譜には、初稿と改訂版があり、現在演奏されているのは改訂版の方。
Wikipediaによると、「1904年に初稿版の初演後、1905年にブラームスのヴァイオリン協奏曲を初めて聴いたシベリウスは、自らの協奏曲よりもさらに徹底して交響曲的なこの作品に衝撃を受け、本作を現在我々が耳にする形に改訂したのだった。それは独奏楽器の名技性を抑えて構成を緊密化、凝縮し、より交響的な響きを追求したオーケストレーションへと変更した」という。
シベリウスは初稿の演奏を禁止したが、1991年に遺族の許可の下に、このオリジナル版の演奏が録音された。ヴァイオリンはカヴァコス、伴奏はヴァンスカ指揮ラハティ交響楽団。
カヴァコスはギリシャ生まれのヴァイオリニスト。1985年にシベリウス・コンクールで、1998年にはパガニーニ国際コンクールで優勝。超絶技巧の持ち主らしい。
シベリウスのコンチェルトを聴くと、ヴィルトオーソ的というよりは、高度な技術に加えて情感豊かな表現ができるタイプのように聴こえる。
![]() | シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 [Import] (1991/01/01) カヴァコス、ヴァンスカ指揮ラハティ交響楽団 試聴する(NAXOSサイト) |
このCDの良いところは、オリジナル版と改訂版の両方の演奏を収録しているところ。
同じ指揮者・オーケストラ・ソリストの演奏なので、楽譜曲自体を改訂したことによる変化がよくわかるようになっている。
オリジナル版は39分で演奏していたのが、改訂版だと34分29秒。かなり削りこんですっきりとした構造に整形され、わかりやすいつくりに変わっている。特に第1楽章がかなり違って聴こえる。
初稿(オリジナル版)を聴いてみると、躍動感のある改訂版の演奏に慣れている耳には、確かに聞き覚えのある旋律ではあるけれど、それ以上に違ったところの方が多い気がして、別の曲に聴こえてくる。
オリジナル版は内省的というか、ヴァイオリンが一人で黙々と歌うモノローグのような雰囲気が強くて、たしかに冗長といえば冗長。
しかし、ゆったりとしたテンポで歌うように流れるヴァイオリンの旋律が美しいし、特に第1楽章のカデンツァは素晴らしい。
カヴァコスのヴァリオリンは、水をたっぷり含んだようなしっとりした音色で表情がとても豊か。
スターンやヌヴーのソロで聴いていたが、こんなに流麗で叙情的な演奏ではなかったので、同じ曲にも思えないくらい。
改訂版はヴァイオリンが控えめになり、よりオーケストラ伴奏が前面にでて、たしかに交響曲的な重層的な響きに壮大さが加わった迫力がある。
オリジナル版では、第1楽章のカデンツァがなぜか2つもある。
結局、改訂版で削除されてしまった後半部に出てくるカデンツァは、演奏も終盤に差しかかる頃の第三主題の再現部の前に挿入されている。
このカデンツァは、まるでバッハを聴いているかのような格調の高さを感じさせ、やや哀感を帯びた旋律。これが入っている第1楽章を聴くだけでも満足できるくらいに、オリジナル版には独特の深い叙情が漂っている。
何度聴いても、とても美しいカデンツァ。このカデンツァだけでも、改訂版に残しておいてくれればよかったのにと思ってしまう。
※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。