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シュニトケ/ヴァイオリンとピアノのための曲集
シュニトケは<合奏協奏曲>などの弦楽作品が有名だが、ピアノが入った曲は意外と聴きやすい曲が多い。
ピアノの音が入っていると、現代音楽に対する許容度が上がるという個人的な好みも多少は影響しているが、ピアノ協奏曲(1960)は、12音技法やセリー様式へ向かう前の頃の作品なので、ショスタコーヴィチ風なところがあって、かなり面白い。
シュニトケの作品のうちでも短くてわりととっつきやすい曲が集まっているCDなら、このヴァイオリンとピアノの室内楽曲集はかなり良い。
室内楽はあまり聴かない私でも、ピアノが入っているせいか、シュニトケにしてはかなり聴きやすいと思ったアルバム。
演奏は、ヴァイオリンがウルフ・ヴァリン、ピアノがローランド・ペンティネン。レーベルはシュニトケ作品では定評のあるBIS。

シュニトケ:ヴァイオリン・ソナタ 第1番 他 [Import]シュニトケ:ヴァイオリン・ソナタ 第1番 他 [Import]
(1991/01/01)

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収録曲は、ヴァイオリンソナタ第1番、ヴァイオリンソナタ第2番 「ソナタ風」、「古い様式による組曲」、「聖しこの夜(Stille Nacht)」、「祝賀のロンド(Gratulations Rondo)」。
ナクソスのサイトでは、第4曲目のタイトルが「静寂の音楽」となっているが、これは別のチェロとヴァイオリンのための曲のタイトル。この第4曲目は、正しくは「きよしこの夜」(Still Night)である。

ヴァイオリンソナタ第1番(1963年)、第2番(1968年)
ヴァイオリンソナタは2曲とも現代音楽的ソナタ。速いテンポで音も詰まっているし、不協和音といってもそれほど不快な音でもなく、面白い旋律とリズムなので、シェーンベルクやウェーベルンよりははるかに聴きやすい。
第1番の方が、旋律の面白さや軽快なリズム感があって、こちらの方が個人的には好み。
第2番は、より現代音楽的な前衛性が強くなって、摩訶不思議な旋律と、ピアノとヴァイオリン間の緊張状態が感じられて、なんとなく居心地の悪さを感じる。ピアノの使い方が打楽器的で、かなり変わった響きで弾いているところがあって、そういうところは面白くはある。
よほどの目的意識を持った時にしか、聴く気にならないような気がする。

「古い様式の組曲」(1972年)
タイトルの如く、とてもシュニトケの音楽とは思えない美しい曲。
どうしてこんな美しいバロックや古典かと聴きまちがうような曲を作ったのか不思議。
こういう時代錯誤な曲を書いたこと自体がアイロニーなのかもしれないが、意図はともかく、とにかく綺麗な曲です。

「きよしこの夜」(1978年)
「古い様式の組曲」はまともすぎたが、それで終わるはずはない。古くからの名曲をストレートに不条理な曲に仕立てたのが、ヴァイオリンとピアノ用に編曲した「きよしこの夜」。
初めは、清く正しい「きよしこの夜」の旋律が聴こえてくるが、すぐにところどころ変な音が混じり初めて、不協和音の世界へ。
主旋律は美しい調性音楽の世界を奏でるのだが、通奏低音のようにピアノが低音で調子ハズレの音を鳴らし、時々主旋律を弾くヴァイオリンも不協和音を鳴らし.....。
これは真面目な人には受けない類の音楽かもしれないけれど、こういうパロディのような不条理だらけの曲は全く抵抗ないので、面白い。
ただし、精神状態がかなり良いときでないと、こういう曲は聴く気がしない。落ち込んでいるときに聴くと、余計に暗くなるので、やめた方が良いでしょう。

「祝賀ロンド」(1974年)
最後に収録されているのが、これまた古典主義的なとても美しい曲。
冒頭から、モーツァルト風かそれらしきヴァリオリン・ソナタで、透明感のある優しく愛らしい雰囲気がいっぱい。いつか線路を外れるのではないかと期待したが、結局そのまま終わってしまった。
それならなにもシュニトケで聴かなくても、モーツァルトを聴けば良いと思うが、あのシュニトケが...という意外性はある。(どこまで真面目に作曲したのかよくはわからないが。)


「夏の夜の夢、でなく」(1985年)
このアルバムには収録されていないが、「祝賀ロンド」を原曲として、管弦楽用に大幅に味付けして編曲したのが「夏の夜の夢、でなく」。
原題が「(K)ein Sommernachtstraum」。英文なら「 (Not) A Midsummer Night's Dream」。
先頭に否定詞をつけるという、なかなか気の利いた(アイロニックな)タイトルである。
名は体を現すというとおり、冒頭こそ古典的な優雅な調べで始まるが、徐々に「きよしこの夜」の如く、調子っぱずれの不協和音が浸食していき、最後はやや歪んだ古典主義へと回帰して、(こちらの期待通りに)終わる。
オーケストラに加え、ピアノやハープシコード(と思う)も入っていて、響きも古典と前衛が混在しているような、なかなか面白い曲。ただし、好みはきれいに分かれるはず。

「夏の夜の夢、でなく」が収録されているCD。ポリャンスキー指揮ロシア国立響で、メインはチェロ協奏曲。
Schnittke: Cello Concerto No. 2/(K)ein SommernachtstraumSchnittke: Cello Concerto No. 2/(K)ein Sommernachtstraum
(1999/05/18)
Alexander Ivashkin、Russian State Symphony Orchestra、Valery Polyansky

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この「ヴァイオリンとピアノのための曲集」では、不気味で不条理な世界と、過去の調和に満ちた世界が交互にやってくる。
不条理の世界で疲れたら、調和の世界で精神を癒し、また不条理の世界に浸って、最後には(表層的には)まともな世界へと回帰していくような選曲と曲順。
多少現代音楽を聴いたことがあれば、頭から終わりまで、さほどの忍耐力がなくても聴き通せるくらいのマイルドさである。
                              

シュニトケの音楽については、作品リストとCD評が充実している「鳥瞰の娯楽室」がとても参考になります。
シュニトケを聴くなら、BISかCHANDOSレーベルのCDなら間違いないようです。あまり売れそうにもない現代音楽のラインナップに力を入れているところは、さすがにBISとCHANDOS。

tag : シュニトケ ペンティネン

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Author:yoshimi
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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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