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カッチェン《ブラームス:ピアノ作品全集》より (12) 8つの小品 Op.76
ブラームスのピアノ小品といえば、晩年に作曲された作品番号116~119をまとめて後期ピアノ曲集として録音されることが多い。

中期のピアノ曲の傑作は「2つのラプソディ」だが、同じ頃に作曲された作品番号76の「8つの小品」は、それらに比べてさほど人気があるというわけではない。
ブラームスのピアノ作品全集を録音しているピアニストなら必ず弾いてはいる曲だが、後期作品集だけを弾くピアニストも多いし、アンコールピースなら叙情的で美しい旋律の曲が多い後期のピアノ小曲を選ぶでしょう。

この「8つの小品」は、ブラームスが45歳頃に作曲したもので、後期のピアノ曲とは違った趣きがある。(ピティナの楽曲解説)

"Capriccio"はいろんな曲想の曲があって、ドラマティックで激情的かと思うと軽妙だったり、間奏曲のような夜想曲風だったり。"Intermezzo"も屈託のない明るさと透明感があってとてもロマンティック。
後期のインテルメッツォのような強い哀感や寂寥感のこもった雰囲気は希薄で、後期のバラードのような堂々とした力強さと構築物のような堅固さのある曲も見当たらない。
そういう点で後期作品に比べて息の詰まるような圧迫感や重さはないが、その分強く感情に迫ってくるような濃密さもやや薄い。
といっても、曲想やリズムもバリエーションがあって、この後に続く後期の最初のピアノ曲集である「幻想曲集」よりも、この小品集の方が聴いていて面白い。
なんといっても、あのブラームスの晩年の作品独特の重苦しく陰鬱な翳りがなく、表現がわりとストレートなところはとても爽やか。こういうブラームスも良いもの。重くて暗いばかりがブラームスらしさでもないだろうし。

第1番  "Capriccio" 嬰へ短調
序奏は低音から高音を駆け上がるクレシェンドしていくアルペジオで、一体何が始まるのだろうという荘重な雰囲気。カッチェンはここはゆったりと力強く弾いているので、盛り上がり方はとても良い。
主題に入ると、逆に高音から低音で駆け下りるアルペジオで、哀感漂うロマンティックな旋律。全体的に起伏が激しく、フォルテとピアノの間で激しく行き交っていて、ストレートに感情を歌っているような曲。

第2番 "Capriccio" ロ短調
リズム感と、旋律のニュアンスが面白い。左手がポンポンと拍子を刻み、右手が軽妙な旋律を弾く。
この曲は短調なのに、なぜか明るさが感じられて楽しげなところがある。特に中間部を経て再現部に入ると、両手とも16分音符でスタッカート気味の細かなパッセージを弾いているが、なぜかコミカルに響いて面白い。
カッチェンはスタッカートの直後のスラーをポロ~ンと弾いていて、とても甘えたような響き。スタッカートは軽やかでどことなく不可思議さとコミカルが交錯し、中間部は柔らかく優しげ。いろんな表情が聴き取れて、曲も面白いし、演奏もとても良いと思う。

第3番  "Intermezzo" 変イ長調
夢見るような雰囲気の綺麗な響きの旋律。左手の伴奏はほとんどスタッカートの分散和音なので、とても軽やか。主旋律は右手の高音部にあって透明感があり響きは軽めで柔らか。子供が遊び疲れてまどろんでいるかのような雰囲気のする曲。

第4番 "Intermezzo" 変ロ長調
夜想曲風の流麗で穏やかな曲。楽譜を見ると、内声部が両手に分けて弾かれるアルペジオなので、その上を右手の主旋律が流れている。

第5番 "Capriccio" 嬰ハ短調
ブラームスの曲に頻繁に出てくるヘミオラが両手の旋律に現れてくる。主題部分はドラマティックで荘重な旋律。中間部以外はフォルテが多く、カッチェンの弾き方はやや粘りのあるタッチで力強い。
※ヘミオラとは、3拍子の曲で、2小節分を1つとみなして3つの拍に分け、2小節全体を大きな3拍子のようにみなした手法。

第6番 "Intermezzo" イ長調
明るく穏やかな主題でやや夜想曲風。片手が8分音符でもう一方が3連符という、ブラームスがよく使う奏法が多用されている。これが左右両手に交代して現れてくる。

第7番 "Intermezzo" イ短調
密やかに始まる旋律は短調だが、全体的に哀感はあれど、それほど物悲しさはない。カッチェンのタッチは軽やかで響きにも透明感があり、叙情的ではあるが、わりとさっぱりとしている。

第8番 "Capriccio" ハ長調

左手の広域のアルペジオにのって、右手が叙情的な旋律を弾くという、ショパンの夜想曲を連想するようなところがある。曲想は夜想曲風で美しく穏やかだが、中間部は徐々に高揚していき、テンポが上がっていくのでかなりドラマティック。

カッチェンは、後期の小品集を弾くときもそうだが、響きは短めで厚みはわりと薄く、演奏自体がすっきりとして力強いが軽やか。
旋律も強調するところは前面に出てくるように弾き分けていて、主旋律が歌っていて伴奏部分はボケ気味に柔らかい響きなので、曲の流れは良くわかる。
1962-65年はステレオ録音とはいえ、響きが繊細で美しく録れる時代ではなかったので録音音質の影響もあるのかもしれない。
ブラームスだからといってどの曲でも重厚さを強調すればよいというわけでもないから、小品の場合は-まだ後期に入っていない頃はなおさら、これくらいの音の響きと厚みが、聴いていてとても心地よい。

Brahms: Works for Solo PianoBrahms: Works for Solo Piano
(1997/11/11)
Julius Katchen

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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
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