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カッチェン《ブラームス:ピアノ作品全集》より (9)4つの小品 Op.119
ブラームスの後期ピアノ小品集を締めくくる最後の曲集が「4つの小品 Op.119」。(ピティナの楽曲解説)



第1番 間奏曲ロ短調
悲哀感に満ちた曲。右手と左手に分散して弾く下降アルペジオが、過去を追憶するかのように今にも消えてしまいそうに儚げ。
カッチェンはいつものように重苦しさを避けるように速いテンポをとり、ほろほろと感情が涙の粒のようにこぼれ落ちてくるような哀しげな弾き方。軽やかで線の細い丸みを帯びた弱音が美しい。
いつもは中間部は明るく長調へと転調していくのに、この曲はやがて穏やかな旋律へ変わったかと思うと、突発的に激しい感情が噴出してくるようなフォルテ。
それを繰り返しつつ、中間部の長調の旋律は弱々しく長続きすることはなく、元の主題へと回帰して消え入るようにフェードアウト。
全編に流れる哀感が美しいけれど、最後は全てが忘却の彼方へと消え去るような無常観が漂っているようにも思える。

第2番 間奏曲ホ短調
第1曲よりも動的な曲ではあっても、旋律自体は相変わらず暗澹として不安な雰囲気。
カッチェンはテンポも速く、両手とも軽やかなタッチ。はじめは心の中で細波が揺れるかのようで、やがた感情が噴出するかのように力強いフォルテで大きな波に変わる。
長調に転調する中間部は、とても柔らかな弱音で弾いているので、まるで夢の中にいるような心地よい美しさ。
前半部が終ると、短調に転調してとても甘くて切ない旋律に。数小節だけしか続かない旋律だけれど、この旋律は本当に綺麗。
ブラームスの曲は、こういうはっとするような煌きのある旋律が何気なく現れてくる。
最後は、再び主題へと回帰して、冒頭と同じ展開を繰り返し、最後はコーダのように中間部の主題が再び現れて静かに消えていく。
最後に長調の旋律を持ってきているのが、他の曲とは違うところ。第3曲の明るさへの橋渡しのためか、不安の中にも光明を見出したからだろうか。

第3番 間奏曲ハ長調
長調に変わって。とても短いインテルメッツォ。
まるで明るい輝きのある第4番の序奏のように、軽やかで、心が浮き立つような感じの旋律。
カッチェンのピアノも柔らかい響きと、切れの良いタッチが軽やか。歌うように旋律を弾いていく。
一瞬短調の旋律が出てきても、すぐに長調へと戻るので、この曲は暗い影に覆われることもなく、明るめの雰囲気のなかで終わる。といっても、快活で陽気な開放感はないけれど。

第4番 狂詩曲変ホ長調
長調のラプソディは、締めくくりの曲らしく、和音の連打で堂々とした構えで始まる。
カッチェンはかなり速いテンポ。フォルテの和音は、インテンポのまま軽歯切れ良く弾いて、とても軽やか。
中間部は短調に転じて翳りがでてくるけれど、長調の主題を変形した旋律が交じりあったりと、かなり光と影が交錯する。
主題へ回帰するして、そのまま輝かしく終わるかと思ったら、短調に転じて終わるという、目まぐるしい展開。
希望を象徴するような明るい雰囲気の主題で終わってはないけれど、そこには諦観は感じられない。
逆に、強い意志が現れているかのように、激しく動的な短調のコーダに入り、最後は力強い短調の和音で終わっているところが、交響曲第4番の第4楽章の結末と同じようにも思える。
カッチェンのピアノも、速いテンポのまま力強く一気に終盤へ向かい、ドラマティックなエンディング。

この《4つの小品》も、《4つのバラード》や《6つの小品》などの曲集と同じように、起承転結のある1つのストーリーのように構成されている気がする。
ブラームスの小品集は、単に複数の曲を集めた曲集ではなく、まるで内面のドラマのようにも聴こえてくる。

Brahms: Works for Solo PianoBrahms: Works for Solo Piano
(1997/11/11)
Julius Katchen

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好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

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