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ストラヴィンスキー/イ調のセレナード ~ レオン・フライシャー 『The Journey』 より
ストラヴィンスキーのピアノ曲で有名なのはピアノ独奏版の《ペトルーシュカからの3楽章》だが、これは彼の原始主義時代の作品。
その後、作風が変遷していったが、戦前の新古典主義時代の作品で有名なのが、《イ長のセレナード》と《ピアノ・ソナタ》。
ピアノ協奏曲としては、《ピアノと管楽器のための協奏曲》、《カプリッチョ》の2曲も書いているが、ストラヴィンスキーといえば管弦楽曲のイメージが強いせいか、あまり演奏されている曲ではない。

ストラヴィンスキーは「1920年頃から新古典主義時代に入り、グリンカの率いた国民主義的なものやバロックや古典的な器楽様式、ギリシャ神話などに視点をあて、主観的ではなく、客観的で壮厳な作風となっている。」(ピティナの解説より)

《イ長のセレナード》は、レオン・フライシャーの両手で弾いた最新アルバム『The Journey』に収録されている。
フレイシャーが両手のピアニストとしてカムバックしてから2枚目のアルバムだが、このストラヴィンスキーだけが、ほかの曲とは趣きの異なる選曲だったので、特に聴きたかった曲。

The Journey [with Bonus Interview Disc]The Journey [with Bonus Interview Disc]
(2006/09/19)
Leon Fleisher

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<収録曲>
 J.S.バッハ:カプリッチョ『最愛の兄の旅立ちに寄せて』 BWV.992
 モーツァルト:ピアノ・ソナタ第4番変ホ長調 K.282
 J.S.バッハ:半音階的幻想曲とフーガ BWV.903
 ショパン:子守歌 変ニ長調 op.57
 ストラヴィンスキー:イ調のセレナード
 ベートーヴェン:『エリーゼのために』 WoO.59

 ストラヴィンスキー《イ長のセレナード》(1925年)

ⅠHymne、ⅡRomanza、ⅢRondoletto、ⅣCadenza finalaの4部構成。
ストラヴィンスキーにしては、すごくまともな形式と響きの曲に聴こえるのは、かれの”新古典主義”時代の作品だから。
現代音楽としては、かなり受け入れやすい旋律とリズム。和声も美しく、曲想もヴァリエーション豊かで、個人的にはとても好きな曲。

ⅠHymneは、冒頭から荘厳な雰囲気の和音の旋律で始まるが、次々にモチーフが変形していく変奏風の曲。フライシャーは、モチーフが変形していくのに合わせて、タッチと響きも変えていくので、1つのモチーフでもかなり雰囲気が違った曲に変わっていくのが面白い。

ⅡRomanzaは、右手が古典的な美しいロマンティックな旋律で、左手の伴奏側が前衛的な音とリズムの曲。
フライシャーは右手の甘美な主旋律を強調するよりも、左手の伴奏のやや不協和的な音とリズムをシャープに浮き出して、不可思議な雰囲気を強く出している。

ⅢRondoletto(小ロンド)。両手とも単音のみを速いテンポで弾くという目まぐるしく動き回る曲。
フライシャーは、疾走感はやや抑え気味にして、主旋律の表情を明確につけている。左手伴奏側のリズムも歯切れ良く、かなり明瞭なタッチで弾いていて、あちこち単音が跳躍してリズムを刻んでいるのが良くわかる。

ⅣCadenza finala は、フィナーレにしてはとても静かな雰囲気の美しい旋律。和声にはやや不安げな雰囲気はあるが、響きはとても美しい。

このセレナードは、イタリア人ピアニストのサンジョルジョも弾いているが、両方聴いていると、フライシャーはかなり骨格のしっかりした演奏。
サンジョルジョは、リズム感やスピード感があってこれも良い演奏だが、ちょっと崩したようなところがあり、響きの余韻を活かして、柔らかく洒落た雰囲気がある。
フライシャーは、響きを短くして低音部はかなり明瞭に弾いている。曲の輪郭を明確にして構造的な安定感をだし、旋律の表情付けをしっかりすることで、旋律自体の美しさや面白さを聴かせてくれる。(ストラヴィンスキーにしては、ちょっと真面目で硬いかも..。)
特に、左手側の旋律・伴奏の存在感が強く、Rondolettoはまるで主旋律と対等のように聴こえてきて、この楽章はフーガなのかと初めは思ったくらい。
これはフライシャーが長い間、左手だけで演奏活動をしてきたからだと思うけれど、40年近く右手でピアノを弾けなかったという重さと、これが今のフライシャーらしい弾き方なのだと感じるものがある。

                                

フライシャーはこの曲集でもバッハを2曲弾いている。
第1曲目のカプリッチョ《最愛の兄の旅立ちに寄せて》は、各曲の曲想が異なり、旋律も美しいものが多い。
何度聴いてもしみじみとした味わいがある曲で、フライシャーの伸びやかで素直な音とどことなく儚さを感じさせる繊細な音楽に良く似合っている。
この曲はルドルフ・ゼルキンもリサイタルでよく弾いていた。

ショパンの《子守歌》も、フライシャーの伸びやかで明るい音色と響きで、澄みきってはいるが温もりのあるとても優しい雰囲気の曲になっている。これは本当に美しい子守歌です。

ベートーヴェンの《エリーゼのために》は、フライシャーはわりと淡々と弾いている。
元から暗い短調の主題なので、かえって抑制された哀感が強くでて、引き締まった雰囲気の曲になっている。それにこの小曲がとても格調高く聴こえてくる。

tag : フライシャー ストラヴィンスキー

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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
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