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シュニトケ/ピアノ三重奏曲、弦楽オーケストラのためのトリオ・ソナタ(バシュメット編曲)
シュニトケは、合奏協奏曲以外に、室外楽曲を多数作曲しているが、ピアノが入った曲はピアノ三重奏曲とピアノ五重奏曲、それにピアノ協奏曲が有名で、さすがにそれぞれ個性の強い曲である。

シュニトケのピアノ独奏曲は、典型的な前衛的無調のドライなタッチでかなり聴きづらいものがあるが(私は途中で挫折しそうになりました)、弦楽やオーケストラと組み合わせると、ピアノの透明感のある響きと打楽器的な奏法を取り混ぜて、とても表情豊かな叙情性の強い美しい曲に変わってくる。

作曲時期によって作風も違うのだろうけれど、このピアノ三重奏曲は特に叙情性が強くて旋律もメロディアスでとても美しい曲。といっても、現代音楽としてメロディアスなので、ロマン派的なストレートな叙情感とは違う。
シュニトケの室内楽曲を初めて聴くなら、この曲は和声がとても綺麗だし、緊張と弛緩が交互にやってくるので、構造がつかみにくいところはあるけれど、かなり聴きやすい曲だとは思う。

ピアノ三重奏曲は、元々は弦楽三重奏曲が原曲。
ナクソスの解説によると、弦楽三重奏曲は1985年の作品で、ウィーンのアルバン・ベルク・ソサエティの委嘱により、ベルク生誕100年と死後50年を記念する意味で、作曲したもの。
また、シュニトケは、父の仕事の関係で12歳から2年間という短期間だがウィーンで暮らし、最初の音楽教育(ピアノを学んだらしい)を受けている。第2楽章はそのウィーンへのオマージュでもあるそうだ。
この曲は、2楽章形式で、緊張感をもちつつ曲折しながら展開していくが、そのなかにベルクに加えて、シューベルトとマーラーがエコーしているという。ベルクとマーラーはわかるけれど、どうしてシューベルトなんでしょう。たとえ織り込まれていても、シューベルトはほとんど聴いていないので、聴き取れないに違いない。


ピアノ三重奏曲(1992)
第1楽章 Moderate
冒頭は、美しい協和音の弦楽の主題旋律で始まる。どこか昔懐かしい響きのする...と思って聴いていたら、やっぱり不協和な響きがジャジャーンと鳴る。この主題は、ちょっと下降調で気鬱な雰囲気があるシンプルなもの。
続いてメロディアスだけれど鋭いタッチのピアノ・ソロが主題を弾き、不協和音が続くが、ここを弾くピアノの旋律と響きがとても美しい。
そのうち徐々にフォルテになっていき、何かに追い立てられ疾走しているようなテンポに上がって、ピタッととまって元のスローなテンポに。と思ったら、また突発的に爆発したように、弦楽が激しい旋律になって、ピアノも歩調を合わす。
これを繰り返しつつ、ようやく叙情的な主題が再現されて、最後は悲嘆にくれるような静かな雰囲気で、第1楽章が終わる。

この楽章は、ピアノパートの透明感のある高音の響きが美しくて、とても叙情的な旋律。一方で、激情的に激しい旋律が突発的に登場し、ここは弦楽が主導して、きりきり。この弦楽の旋律もかなり叙情性を感じさせるところがあって、『2つのヴァイオリンのための「モーツ - アルト」』のような不条理的な不協和の世界とは、だいぶ違う。


第2楽章 Adagio
第1楽章の主題が変形したような哀しげな旋律をゆったりとしたテンポで弦楽が弾いている。
やがて、透明感のある響きのピアノが、変形した主題を弾いていくが、高音の響きがとても美しく、密やかな雰囲気。
第1楽章の主題旋律が繰り返し現れるので、雰囲気的に良く似たところがある。シュニトケはこの主題をいろんな形でリフレインさせることで、形式的な一貫性を追求しているらしい。
やがて、突然暴発したようなフォルテでキリキリと悲愴感のある旋律を弦楽が弾き、一方で、シンプルな単音で透明感のある旋律(ド-ミ-ソ、ド-ミ-ソと聴こえる)をピアノが弾いていたりする。

このピアノが弾く短い旋律は驚くほどに美しい。本当に不思議なくらいに、透明感のある清楚な美しさに満ちている。私がシュニトケが好きな理由の一つが、彼が書くピアノパートの旋律と響きの美しさ。
この旋律は、亡母に捧げられたピアノ五重奏曲第5楽章でピアノが弾く天上的な美しい旋律の雰囲気に少し似ている。こういう雰囲気の旋律は、何かを追憶したり思慕する気持ちを表現する時に使っているんじゃないかと思う。

この一連のシークエンスが繰り返され、最後に主題が再現されるが、最後は沈黙の中へと消えて終える。
第2楽章も、突発的にフォルテの激情的な旋律が何度も登場したり、また、冒頭のピアノの旋律が再現されたりと、いろいろ錯綜の多い曲。
たしかに悲愴感はあるけれど、ピアノ五重奏曲のような意気消沈した沈鬱な感じではなく、甘美な情感も混じりこんでいるような抒情性を感じてしまう。

このピアノ三重奏曲は、今まで聴いたシュニトケの室内楽曲のうちでは、かなりメロディアスな旋律と和声の美しい不協和音の世界。
第1楽章と第2楽章のトーンが良く似ていて、第1楽章の冒頭の主題が、曲全体にわたって何度もリフレインされる。第2楽章のラストは、第1楽章冒頭の主題が再現されたりして、まるで循環して元に戻ったような曲。
楽譜があれば、曲の構造が良くわかるんだけど、この曲の楽譜はIMSLPでは手に入らない。

Schnittke: Chamber MusicSchnittke: Chamber Music
(1995/04/18)
オレフ・クルイサ(ヴァイオリン),トルレイフ・テデーン(チェロ),Tatiana Tchekina (ピアノ)

試聴する(NAXOSサイト)



弦楽オーケストラのためのトリオ・ソナタ[バシュメット編曲][1987]
弦楽三重奏曲は、バシュメットによって『弦楽オーケストラのためのトリオ・ソナタ』に編曲されている。
ピアノ三重奏曲に比べて、『トリオ・ソナタ』はさすがに弦楽オーケストラで演奏しているだけあって、迫力がありとてもドラマティック。悲愴感も一層強まっているが、内省的な雰囲気は希薄。しかし、弦の厚みと色彩感があるので、和声の美しさが良くわかる。

この編曲版で聴くと、濃密さがやや希薄だけれど、たしかにベルクとマーラーを想起させるような、後期ロマン主義的な響きが聴きとれる。こういう響きは、ピアノ三重奏曲では、ヴァイオリンとチェロの2本しか弦がなく、ピアノも結構目立っていたこともあって、わかりずらいところ。
ずっと聴いていると、少し調性をくるわせたマーラーを聴いている気がしてくる。

第2楽章の抑制された悲愴感のある雰囲気と、中間あたりで遠くからエコーするように聴こえてくる単音のメロディ(ドミソ~、ドミソ~、みたいなとても綺麗な響き。ピアノ三重奏曲ではピアノが弾いてます)が、アルヴォ・ペルトの音楽と少し似ている気がする。

先にこの弦楽オーケストラの演奏を聴いてから、ピアノ三重奏曲を聴いた方が、全体的な流れがつかみやすい気がするし、入っていきやすいと思う。
構造的にわかりにくい曲であるのはどちらにしても変わらないけれど、和声の響きが美しく叙情性も強くてとても聴きやすい。シュニトケを初めて聴く人でも、マーラーやベルクを聴きなれていたら、さほど違和感なく聴ける(はず)。なので、とってもお薦め。
個人的には、この弦楽オケ版にピアノが入っていれば良いのにと思うけれど、そういうバージョンは誰も作ってません。

Schnittke: Trio sonata; Sonata for violinSchnittke: Trio sonata; Sonata for violin
(1994/04/04)
Lev Markiz (指揮), Christian Bergqvist (Violin) ,Stockholm Chamber Orchestra

試聴する(NAXOSサイト)

tag : シュニトケ

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今晩は
どうも、うじゃくでございます。
弦楽三重奏曲はいじろうと思えばいくらでも変化するような気もします。確かにyoshimiさんのおっしゃるような弦楽オケにピアノが入った編曲版があっても面白いですね。
バシュメット繋がりでは、"ヴィオラと弦楽のためのモノローグ"という曲があります。以前バシュメットが来日した時はよく演奏した曲です。シュニトケ晩年の音色が希薄なのでは?と思わせるような(シュニトケに失礼なことを書いてるかもしれませんが)ところが無くて、深い思考を巡らせるような音楽になってます。あまり録音が無いので、入手はかなり困難ですが…。
ヴィオラと弦楽のためのモノローグ
うじゃく様、こんばんは。
早速コメントいただきまして、ありがとうございます。

"ヴィオラと弦楽のためのモノローグ"というのは、以下のサイトにある「Monologue」という曲でしょうか。ヴィオラとオケが演奏してます。
http://ml.naxos.jp/album/S2030

私は、NMLの会員になっているので、全曲聴けるのです。廃盤なども結構聴けるのでとても便利です。
バシュメットのCD(RCA)を探してみましたが、すでに廃盤になっているようですね。大手レーベルはNAXOSに入っていないので、聴くことはできませんが。

このネットリとしたヴィオラの旋律がなんとも言えず良いですね。
他の演奏は聴いていないのでこの演奏が良いのかどうかわかりませんが、このヴィオラニストは、結構たっぷりと響かせているような気がします。
これを調性音楽でやってしまうと、とんでもなくウェットになるのでしょうが、シュニトケは完全無調ではないとしても安定した調性からは外れているので、無機性と有機性とのバランスが丁度良いように感じます。
このごろは弦楽器のコンチェルトとかソナタを良く聴くようになっているので、この曲もとても聴きやすいですし、曲自体も好みに合ってます。

バシュメットといえば、彼のCDは1枚だけ持っていて(ラックを探したら他にもあるかも)、ブラームスの「ヴィオラ・ソナタ集」。これは有名なディスクらしく、10年以上前にFMでバシュメットの弾くヴィオラ・ソナタを聴いて、買ったものです。
クレーメルの弾く現代音楽のシャープな演奏をよく聴いていたので、シュニトケ作品で有名なバシュメットにもそういうイメージを持っていたのですが、今聴き直してみると、滑らかな音色の優美なブラームスですね。ちょっと意外でした。

最近シュニトケがベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲のカデンツァを書いているのを知って、クレーメルが弾いている録音を聴きました。
このカデンツァはとても面白いですね。カデンツァだけ何回も聴いてます。シュニトケにしてはわりとまともと言いますか、不協和音が入っていても原曲との断絶を感じませんし、格調のあるカデンツァだと思います。
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Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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