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カッチェン《ブラームス:ピアノ作品全集》より (11)7つの幻想曲 Op.116
ブラームスが晩年に作曲した一連のピアノ小品集の最初をかざるのが、「7つの幻想曲 Op.116」。(ピティナの楽曲解説)

ブラームス晩年特有の重苦しさと翳りが最も強い「3つの間奏曲 Op.117」よりも作品番号が1つ若く、息の詰まるような重苦しさはあまり強くはないが、翳りがあちこちで見え始めている曲集である。
特に、なぜか長調の曲は内省的で沈潜するところが強くて明るさに乏しく、特に、第4番~第6番は良く物憂げで不安さのあるような雰囲気のIntermezzoが続く。これは何度も聴くと、結構気が滅入ってきそう。短調のCapriccioは激情的・ドラマティックで、後年のような鬱々とした暗さはまだそれほど強くはない。
この幻想曲集は、Op.117以降の小曲集と比べて、印象的な旋律を持つ曲が少ない。そのためか、後期のピアノ小品のうち、幻想曲集の演奏機会が少ないような気がする。

第1番 奇想曲 ニ短調 "Capriccio"
ブラームスらしく、全編和音での移動で激情的な曲想。Presto energicoだが、カッチェンにしてはやや遅めのPresto。バックハウスはかなり速い。

第2番 間奏曲 イ短調 "Intermezzo"
音の間から涙の雫がこぼれ落ちるような哀しげな曲。旋律自体は同じではないけれど、雰囲気が「シューマンの主題による変奏曲」に似ているような気がする。カッチェンの弱音がこもりがちの響きなので、よけいに物悲しい寂寥感が漂ってくる。おそらく他の誰よりも物悲しそうな弾き方かもしれない。
冒頭からゆったりとしたAndanteで物悲しい旋律で始まり、長調に転調せずに、Prestoで新たな主題が現れ、やっと中間部で長調に変わったと終わったら、すぐに主題に戻ってしまった。

第3番 奇想曲  ト短調 "Capriccio"
アルペジオで弾く主題はドラマティックで華麗。中間部は和音で弾く主題が明るい色調。
この曲集のなかで最も技巧性を強く感じる曲。内面の激しい感情がストレートに噴出してくるような曲なので、短調のわりに翳りが少なく、聴いた後は意外と爽やか。カッチェンの弾くフォルテは力強くて量感・力感があり、クレッシェンドの盛り上がりも急なので、かなりドラマティックに聴こえる。

第4番 間奏曲 ホ長調 "Intermezzo"
アダージョでゆっくりと弾いているが、音が少なくポツンポツンと途切れがちな曲。長調のわりにはかなり短調の旋律が入り込んできて、穏やかではあるが内省的な雰囲気がある。
左手はぼんやりとした響きの物憂げな旋律だが、右手は夢見るような透明感があって美しい旋律。
たしかに夜想曲風ではある。
この曲はヴィルヘルム・ケンプが愛奏していたという。(Youtubeで登録されているケンプの録音)

第5番 間奏曲 ホ短調 "Intermezzo"
アンダンテだが、第4曲の雰囲気をひきづって、さらに内面へと沈潜したような曲。冒頭の主題の旋律は、2拍分弾くと間に休止が入ってくるので、ちょっと変わったリズムで不安定さを感じさせる。
この曲の冒頭の旋律は、2拍弾いた後の休符を明確に入れる弾き方をするのが普通で、少し曲に動きがでる
カッチェンはテンポはやや遅めで、なぜか2拍セットの後の音をすぐに切らないので、その直後に8分休符が入っていないかのような弾き方をしている。他のピアニストの演奏とはやや雰囲気が違っていて、かなり内面の不安感に沈んでいるような重たい感じがする。

第6番 間奏曲 ホ長調 "Intermezzo"
これも第4番~第5番と続く物憂げな雰囲気を引きづったような曲。長調の主題部分は茫漠とした雰囲気があるが、中間部に短調に変わるところは、哀感をおびた旋律がかなり明瞭に聴こえる。
最後には、覚醒したように一時的にフォルテになって盛り上がるがそれも一瞬のことで、また元の茫漠とした主題に戻って終える。

第7番 奇想曲 ニ短調 "Capriccio"
右手の旋律は下降し、左手は上昇するという、相反する感情が交錯するような曲。このCapriccioもなかなか激情的な曲だけれど、第1曲と同様鬱々としたところはない。

幻想曲集中の"Intermezzo"と"Capriccio"は、それぞれ似たような雰囲気の曲が集まっているような気がして、全曲通して聴いているとやや単調さを感じるところがある。第3番のCapriccioと第4番のIntermezzoは個人的には好み。
この後に作曲される小品集は、この幻想曲集よりも和声やフレージングも凝っているし、曲風もずっと多様になっているように思える。

Brahms: Works for Solo PianoBrahms: Works for Solo Piano
(1997/11/11)
Julius Katchen

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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

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