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伊福部昭/オーケストラとマリムバのための「ラウダ・コンチェルタータ」
伊福部昭はどうもゴジラシリーズのCDに人気があるようだけれど、彼の純然たるクラシック曲の管弦楽曲を聴けば、その音楽の凄さが実感できる。
独学ながら20歳代で「日本狂詩曲」や「交響譚詩」を書き、「日本狂詩曲」はチェレブニンやオネゲル、イベールなど審査員に絶賛されチェレブニン賞の第1席を受賞。
若いうちから日本よりも海外で評価されたというが、土俗的で荒々しく原初的なエネルギーが横溢する作風は日本のアカデミックな世界とは異質だったんだろう。
ベルリンのコンサートで演奏された「ラウダ・コンチェルタータ」の批評に、伊福部を評して”富士の裾野のストラヴィンスキー”と書いていた新聞があった。ドイツ人にストラヴィンスキーを想起させるような作風は、やはり当時の日本の音楽界ではなかなか受け入れ難いものがあったに違いない。

CDのブックレットには、伊福部は”種(しゅ)”に立脚した作家だと評している。
人間と世界の関係を「個人」「種」「類」の次元に分けたとき、「種」とは民族・風土・歴史・言語・環境・伝統・生活様式などの総体。「類」になるとそういう歴史的・文化的条件には縛られない普遍性がある。(たとえば「人類」)
伊福部の音楽は、西洋音楽の書法を使ってはいるが、12音技法の音楽は「類」的な音楽でも、自らのバックボーンとは異なる「種」の音楽でもなく、「自身の特殊な「種」的経験に立脚した音楽」。
「日本狂詩曲」、「交響譚詩」、「管弦楽のための日本組曲」には、いかにも日本的と思わせる旋律と響きが感じられるが、「シンフォニア・タプカーラ」はアイヌ文化に題材をとっているし、「リトミカ・オスティナータ」は中国旅行のおりに見たという壁面仏像がはめ込まれたお堂に触発された作品で、日本という狭い枠ではない(東北の)アジア的風土を感じさせる。

このCDは、彼の代表的な管弦楽曲のライブ録音を集めている。
「リトミカ・オスティナータ」が入っていないのはとても残念だけれど、それでもこれだけまとまってライブが収録されているディスクは他にない(はず)。
ただし、このディスクはすでに廃盤。伊福部作品の録音は廃盤になっているものが多く、ネットでもBOOKOFFでも、見つけたらすぐに買っておくに限る。

このアルバムで唯一海外公演のライブ録音なのが、「マリンバとオーケストラのためのラウダ・コンチェルタータ」。現地メディアのコンサート評がリーフレットにたくさん載っているが、ドイツ人などの欧州の人間にもこの曲の演奏は好評だったようだ。特に、マリンバの安倍圭子の超絶的技巧が絶賛されている。

伊福部昭 傘寿記念シリーズの全て伊福部昭 傘寿記念シリーズの全て
(1995/03/29)
新交響楽団

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(すでに廃盤)

マリンバとオーケストラのためのラウダ・コンチェルタータ(1979)
石井真木指揮新交響楽団、マリンバは安倍圭子で、1993年9月7日、ベルリンフィルハーモニーホールでのライブ録音。
(初演は、1979年東京文化会館にて、安倍圭子&山田一雄指揮新星日本交響楽団が演奏)
新交響楽団はプロのオーケストラではないが、伊福部の弟子である芥川也寸志が指導・指揮して、師の作品を頻繁に演奏してきただけあって、とてもアマチュアとは思えない評されるオケ。

ラウダ・コンチェルタータとは「協奏的頌歌」のこと。
1楽章形式だが、内容的にはコンチェルトのように概ね3つの部分に分かれる。
この曲はリトミカ・オスティナータに似ているところがあるが、その独特の旋律がかもし出す雰囲気は土俗的でエネルギーが大地から湧き上がるようで、ミニマルミュージック的な旋律の反復がリズミカルで躍動感がある。
この反復のリズムは、土着的な宗教的祭祀の時に叩かれる太鼓の響きを連想させるところがある。

冒頭部は厳かで悲愴感のある短調の弦楽と管楽の合奏で始まる。次に、マリンバが律動してリズムを刻んでいくが、このマリンバが弾く主題が何度もこの後で形を変えて現れてゆく。マリンバの音色には木質感と独特の色彩感があって、通常の管弦楽曲とは違った響きと雰囲気がある。
作品解説だと、オーケストラや(神や自然といった)人間を超えた存在に対する頌歌を歌い、マリンバはその存在と一体化してゆく人間の歓喜の踊りを表しているらしい。

中間部は緩徐楽章になり、マリンバの動きが止まり、内面的に沈思黙考しているような静けさ。人間の敬虔な気持ちや畏怖の感情を表しているようでもある。オケはずっと厳かで重々しい。
最後のパートに入ると、一転してオケとマリンバが躍動的になり、マリンバの力強い律動する旋律とリズム感が鮮やか。弦楽の低音が通奏低音のように規則的なリズムを刻み、打楽器と管楽器が威圧するかのように入ってくる。
今まではオケとマリンバが交互に前面に出てきていたが、この楽章では白熱した協奏状態になっている。律動するリズム感とその上を流れる旋律の勇壮さとが相まって、クライマックスへと盛り上がっていくが、こういうところを聴いていると、この曲はCDではなくてライブで体感するべき曲だと思う。

演奏が終わったとたん、ベルリンの演奏会場からはブラボーの声が相次ぎ拍手も盛大。
東洋的なエキゾチックな旋律と感性のなかに、バルトークのような強烈なリズム感、ストラヴィンスキーのような原初的なエネルギー、ラフマニノフ的なエレジーが混在するような面白さが伝わったんだろう。
この曲はマリンバの技量がものを言うが、安倍圭子は現地の批評家たちが絶賛していたほどに、超絶技巧が冴え渡り、オケに負けないくらいのスピード感と力強さで迫力十分。聴いていても惚れ惚れとしてしまうくらいに素晴らしいマリンバの演奏だった。


<収録曲>
1. マリンバとオーケストラのためのラウダ・コンチェルタータ(1979)
2. 日本狂詩曲(1935)
3. 交響譚詩(1943)
4. 管弦楽のための日本組曲(1933/1991編曲)
5. シンフォニア・タプカーラ(1955/1979年改訂版)
6. SF交響ファンタジー第1番(1983)

管弦楽:新交響楽団
指揮:小泉和裕、原田幸一郎、石井眞木、小林研一郎
マリンバ独奏:安倍圭子

tag : 伊福部昭

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(非公開コメント受付中)

Yahoo!検索からお邪魔しました。

先程、名古屋音楽大学と安倍 圭子氏の<span style="background-color:#FFFF00;">ラウダ・コンチェルタータ</span>を聴いてきたばかりです。
おっしゃる通り、ライブで聴くべき曲でした!仕事が忙しく、聴きに行かれるか危うかった
のですが、仕事を頑張ってこなしたかいがありました!!
ライブで聴かれたとはうらやましいです
京青様、はじめまして。
コメントありがとうございます。

伊福部作品は、ライブで体感すると、凄さが良くわかる音楽だと思います。
私はもっぱらCDリスナーでなので、録音しか聴いていないのですが、演奏者がかなり優秀でないと、ライブだとどこかで破綻するかもしれません。
難曲の「リトミカ・オスティナータ」のライブ録音では、テンポが速すぎて、ピアノが崩れる手前でしたから。
その点、安倍さんのマリンバの実演を聴かれたのはとっても良かったですね。

伊福部作品がお好きなら、「リトミカ・オスティナータ」も名曲ですから、機会があればライブで聴いてみてくださいね。(かなり腕の立つピアニストでないと厳しいですけど)
スタジオ録音なら、ピアノが小林仁、 若杉弘指揮読売日本交響楽団の1971年録音がお薦めです。(これは凄い名演です)
同様に yahoo!検索よりおじゃましました。
くしくも 上記 登録の「京青」さんと同様に本日 後藤龍伸指揮 名古屋音楽大学オケ定期演奏会で 安倍圭子客員教授マリンバで「ラウダ・コンチェルタータ」を聴いてきました。
73年初演者として、「わたしの人生です。」とのコメントは、最前列でコンサートホールに響き渡る「管」の集積に包み込まれました。
曲は日本的旋律の原始的でストラビンスキーを彷彿とさせました。 キラールやヒナステラのような旋律反復の力強さに圧倒されました。
また、アンコールでご本人作曲のマリンバソロでの「祭の旋律」(曲名不明確)も 彼女の人生そのものでした。
HMVオンラインで常日頃CDを購入しており、「タータ」を検索したのですが、CD化されておりませんでした。
伊福部氏の作品初体験であり、音大学生もここまで鍛え上げた後藤先生の
真摯な誠実な姿勢にも感銘を受けたいコンサートでした。
月食がみえなくて残念ではありましたが・・・。
http://www.meion.ac.jp/concerts/2010/1221-2046.html
廃盤になってますが、ライブ録音がCD化されてます
月探偵様、はじめまして。
コメントありがとうございます。

同じコンサートに関するコメントが連続するとは、奇遇ですね!
伊福部作品に特徴的なオスティナートを聴くと、土俗的・原初的な生のエネルギーが律動しているようで、ぞくぞくっとします。
欧米のミニマルミュージックとは違ったスケールの大きさと生命力を感じるところがあって、このオスティナートの旋律やリズムは好きです。

プロのオケでもかなり難しそうな曲ですが、大学生のオケが熱演されていたようですね。
もしかしたら、ベテラン揃いのオケよりも、若いエネルギーが充満する若者のオケに、この曲は向いているのかもしれません。

HMVは、廃盤や在庫が入手しにくいCDは、載っていないことが多いので、amazon(国内・国外サイト)の方が見つかる確率は高いです。
稀少品は高額のプレミアムが載っていることが多いので、そういう時はオークションの方が安かったりします。

「ラウダ・コンチェルタータ」の録音については、 山田一雄指揮新星日本交響楽団&安倍圭子の演奏で、

『伊福部昭交響作品集』 (Fontec/1979年東京での初演ライブ録音)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00005EZT1/fc2blog06-22/ref=nosim/

『山田一雄の芸術』 (日本オプティカルディスク/1990年ベルリン・シャウシュピールハウスのライブ録音)

の2種類がCDが出ています。
私は両方とも持っていないCDなので、音源など詳細は改めてご確認ください。

両方とも廃盤らしいですが、『伊福部昭交響作品集』はちょうどオークションに出てました。
http://auctions.search.yahoo.co.jp/search?p=%E4%BC%8A%E7%A6%8F%E9%83%A8%E3%80%80%E4%BA%A4%E9%9F%BF&auccat=22232&aq=-1&oq=&ei=UTF-8&slider=0&tab_ex=commerce
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Author:yoshimi
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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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