ベートーヴェン/「God Save The King」の主題による7つの変奏曲 

2009, 04. 03 (Fri) 20:20

ベートーヴェンの小品のなかで珍しいのが、英国国歌の主題をもとにした変奏曲<”God Save The King"の主題による7つの変奏 WoO.78>。1804年の作曲。今なら”King”じゃなくて”Queen”です。
ブリテンが編曲した英国国歌の録音をたまたま聴いて、ベートーヴェンも変奏曲を作っていたのを思い出した。

この曲は、子供の頃にこの曲のことを知って(なぜかは忘れてしまった)、練習した懐かしい曲。それほど難しい曲でもなかったのと、英国国歌の旋律が好きだったことで、結構楽しく弾けた。数十年ぶり(くらい?)に弾いてみたら、やっぱりこの曲は弾いていてとても楽しい。どの変奏も好きだけれど、やはり最終変奏とコーダに入ってからの華やかで堂々としたラストは高揚感がある。

ピアノ独奏で聴くと、いつも聴く英国国歌とはかなり雰囲気が違っていて結構面白い。
変奏によって、愛らしく優美だったし、堂々とした格調高さがあったりして、シンプルな主題だけに、変奏ごとに趣きの違いが良くわかる。

楽譜(PDF)はここからダウンロードできます。この曲は難しくないけれど、そのわりに結構弾き栄えします。

主題はとても可憐なイメージ。あの英国国歌はこういう曲にもなるかと思うほどに清楚な気品がある。

第1変奏は、3声に展開してその中に主題を織り込んでいて、少し動きのある変奏。でもとても穏やかに雰囲気のシンプルな響き。
第2変奏と第3変奏は、16音符主体の旋律に主題を展開させた、とても軽快で楽しさのある変奏。第3変奏は第2変奏よりもリズムが面白くなっている。

第4変奏は和音主題の力強く堂々とした曲。
第5変奏は一転して、短調の哀感のある叙情的な変奏。この変奏だけ雰囲気が他とは全く違う。左手3連符の伴奏に乗せて、ゆっくりと歌う旋律がとても美しい。
第6変奏は符点のリズムが入って、どことなく行進曲風の小気味良いリズム感がある。

第7変奏は、第2変奏と第3変奏を組み合わせて変形させたような変奏。やや速いテンポで、両手とも16音符の細かなパッセージが続き、フィナーレへ繋がるような軽快な変奏。
コーダからアダージョに入ると和音で厳粛な雰囲気に変わってから、アレグロのフィナーレへ突入する。和音はほとんど使わず、スケール、アルペジオ、オクターブでの音の移動とかのシンプルな旋律の構成なのに、とても華やかで堂々として、気分が高揚していくような終曲。

この曲を録音しているピアニストはとても少ない。名の知られたピアニストなら、Voxレーベルの頃のブレンデル盤、NAXOSのシチェルバコフ盤。
シチェルバコフは剛速球的なストレートな演奏。叙情的なところは透明感のある響きが美しいが、全体的にフォルテの打鍵が強すぎる。速いテンポでもシャープなタッチで音の切れ味はとても良いが、表現がやや単調で、やはりブレンデルに比べると表現の繊細さや格調高さが不足気味。
ショスタコーヴィチの「24の前奏曲とフーガ」は繊細さが感じられたのに、録音年も近いこのベートーヴェンで、どうしてこんなに弾き方が違うんだろうと不思議な気がする。

ブレンデルの演奏はさすがに素晴らしい。
弱音は柔らかく優美。フォルテも力強いが、耳障りさはない。タッチもいろいろ変えていて、細部まで丁寧に表現しているので、曲想の違う変奏の面白さが良く味わえる。
とても気品のある演奏で、ベートーヴェンの変奏曲集なら、このブレンデル盤だけあれば十分だと思う。

Beethoven: Piano Variations; Bagatelles [Box Set]Beethoven: Piano Variations; Bagatelles [Box Set]
(2007/03/13)
Alfred Brendel

試聴する(旧盤のVox盤にリンク)
※私の持っている古いVox盤の変奏曲集は1トラックしかなくて不親切。2007年発売のこのBlliant盤の方は、音源は同じだと思うが、トラックの切り方はわからない。

ベートーヴェン:ディアベリ変奏曲集/他ベートーヴェン:ディアベリ変奏曲集/他
(1998/11/01)
シチェルバコフ

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この盤は、トラックが変奏ごとに分かれているので試聴するには便利。変奏ごとの雰囲気が良くわかる。

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