スティーヴン・ハフ ~ ブラームス/ピアノ協奏曲第1番、第2番 

2009, 03. 17 (Tue) 16:11

スティーヴン・ハフが20年前にVirginレーベルに録音したブラームスのピアノ協奏曲第1番と第2番。
HyperionからリリースされているCDは軒並みミッドプライスだが、昔契約していたVirgin盤は全て廉価盤になっているので、内容を考えるととてもコストパフォーマンスが良い。
第1番のコンチェルトは、ブラームスが21歳~25歳にかけて作曲ので、がっちりとした堅牢さよりも、激しい感情がほとばしるエネルギッシュで濃厚なロマンティシズムがとても魅力的(と私は思っている)。
数あるピアノ協奏曲の中でも名曲中の名曲の1つ。第2番と違って第1番は若者らしいストレートな感情やロマンティシズムが溢れているのに、これをドシっと渋く重厚に弾かれるとどうも調子が狂ってしまう。

このCDの演奏はハフがまだ28歳の時の録音で、ハフらしい安定したテクニックと切れのよいタッチが冴え、力強いけれどとてもロマンティックなピアノを弾いている。最近聴いたこの第1番のコンチェルトの演奏のなかでも、とりわけ素晴らしい演奏。

Brahms: Piano Concertos 1 & 2Brahms: Piano Concertos 1 & 2
(1998/01/01)
Stephen Hough.Sir Andrew Davis, BBC Symphony Orchestra

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第1楽章のテンポはほどよい速さ。強弱のコントラストをとても強くつけて、感情の起伏を大きく出している。弱音は明瞭で綺麗に響き、フォルテになるとかなり力強いタッチで濁りのあるギラギラとした音色と響きに変わる。
かなりディテールの表現に凝ったところがあって、細かくテンポが伸縮し、ところどころテヌート気味のタッチで”ため”のような間合いがある。直線的な弾き方ではないけれど、打鍵がとてもシャープで音が引き締まっているせいか、情緒的なウェットさはない。

第2楽章はとてもゆったりとしたテンポで、深い瞑想のなかに浸っているように弱音で弾いているのがとても美しい。何かが起こりそうな予感や期待を感じさせるような雰囲気が漂っているかのようにも聴こえる。ハフはこれだけの技巧派にしてはめずらしく、とても繊細で詩情豊かなピアノを弾く。

第3楽章はかなり速いテンポ。スピード感と力感があって、疾風怒濤のように駆け抜けている。力強いタッチでも、高音の響きはクリアで澄んでいて美しく、ダイナミックさと詩情とがせめぎ合っているような表現。
ハフの弾き方は、カッチェンやフライシャーの演奏と違って、テンポが加速していってもコントロールがきいているので、前のめりになることはなく、打鍵が安定しているので、安心して聴いていられる。
この楽章も第1楽章のように細部の表現に独特のものがあって、ひたすら一直線にバリバリという弾き方ではない。こういうところが人によって好みが分かれるところでしょう。
ここでこういう弾き方をしているのかという面白さがあって、かなり個性的。48分くらいの演奏時間だけれど、全く集中力が途切れずに聴けてしまう。

いわゆる大家のピアニストが弾く渋さや重厚さが強く出た演奏よりも、ハフの弾くブラームスは若者らしいストレートな感情が横溢して、荒々しい情熱を感じさせる。”シュトゥルム・ウント・ドラング”という言葉がとても良く似合う。

ハフがこの曲を Ivan Fischer指揮Budapest Festival Orchestra の伴奏で弾いているライブ映像[Youtube]はこちら。
ハフのピアノを弾く姿は見ていてかなり面白いタイプ。無駄な指の動きが少なく打鍵がとてもシャープ。CDで聴くハフのフォルテは力感があるけれど切れ味が良く、ライブ映像でみると、渾身の力を込めて打鍵しているのがよくわかる。なるほど、こういうふうに弾いているのか~と納得。とにかく気合の入った演奏です。
数日後に聴いたスティーヴン・ハフとアンドリュー・デイヴィス指揮BBC交響楽団によるブラームスのピアノ協奏曲第2番。
第1番がかなり力感とスピード感に溢れていたので、この第2番もそういうタイプの演奏を予想していたけれど、全く正反対の演奏。
テンポはかなり遅く、あのスローテンポで有名なアラウの演奏といい勝負。もしかしたら、もっと遅いかもしれない。
特に第1楽章冒頭のピアノソロはあまりの遅くて、タッチもテヌート気味のような、もさっとした印象が強い。第2楽章もやはりテンポが遅めで、ここは第1楽章よりも激情的なところがあるが、まるで第1楽章の延長のような雰囲気がする。

ピアノのタッチは柔らかくてフレージングはとても滑らか。細部まで叙情的な表現を丁寧にしていること自体は良いが、力強さがあまりないので、風にそよぐ柳のようにしなしなした柔らかさのある演奏。
力強さもあまり強調していないし、オケの方もピアノに合わせて、やたら流麗で優美。
これはブラームスを聴いているんだろうかと錯覚しないでもないくらいに、かなり個性的というか、一風変わっている。2度聴くのはパスしたくらいに、この第2番のコンチェルトは座り心地がとても悪かった。

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