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レオン・フライシャーの弾くブラームス/ピアノ協奏曲第1番
レオン・フライシャーが右手の故障で事実上ピアニストとしてのキャリアを断念する前に、ジョージ・セルが指揮するクリーブランド管弦楽団とともに、ベートーヴェンやロマン派のピアノ協奏曲を録音している。
ブラームスのピアノ協奏曲は第1番・第2番とも録音しているが、第1番は1958年にオハイオのクリーブランドでスタジオ録音したもの。

録音当日は、フライシャー自身のピアノを搬入して録音するはずだったが、雪でピアノの到着が遅れて、ホール付属のピアノで第1楽章を録音。その後でフライシャーのピアノが到着したので、残りの楽章はそのピアノで弾いたという。
ピアノにこだわるミケランジェリやツィメルマンなら、録音し直すんじゃないかと思う。それほど音色と響きで聴かせるタイプの曲ではないとはいえ、大らかと言うかなんと言うか...。

ブックレットは、当時の録音の様子や録音テープをチェックするセルやフライシャーの写真が多数載っている。セピア色の写真でレトロな雰囲気があって、セルとフライシャーは親子(孫と子?)のように仲良く写っている。フライシャーといるセルはとても優しそうな感じがする。(そういう雰囲気の写真を載せているんだろうけど)。
セルがフライシャーをソリストにして、数多くのコンチェルトを録音しているのは、フライシャーが優れたピアニストでセルのつくる音楽とうまく合っていたのだと思うけれど、それ以上に、明るく朗らかな表情のフライシャーと、気難しくて厳しいセルとは、なぜか相性が良かったのかなという気がする。

Leon Fleisher Plays BrahmsLeon Fleisher Plays Brahms
(1997/10/16)
George Szell, Cleveland Orchestra, Leon Fleisher

試聴する(米国amazon.comのサイト)

このCDジャケットの写真とデザインはとてもセンスが良い。窓から外を眺めているのは晩年のブラームス。物憂げなブラームスをとりまく光と影のコントラストが鮮やか。

伸びやかで素直なピアノを弾くフライシャーの持ち味が良く出ていて、重厚さや渋さはなく陰影も薄くて、かなり明るめのブラームス。
第1楽章から、速いテンポと軽快なタッチで切れの良いテクニックは鮮やか。表現はとてもストレートで、水気を含んだような潤いのあるピアノからは、若々しさやポジティブな感情が感じられる。
セルの指揮するオケも、カーゾンの時のような唸るような圧倒的な響きはないが、シャープで軽快で颯爽としている。カーゾンのピアノとオケは互いに拮抗して緊迫感があったが、フライシャーとセルの間にはそういうところはなく、生気とエネルギーに溢れて、勢いの良さで互いを引っ張っていくようなドライブ感がある。
第2楽章は、リリカルなピアノではあるけれども、内省的というよりは、素直な感情が外へ流れ出ていくようなところがある。
第3楽章はあまりにテンポが速くて、細部がちょっと粗い気がするし、表現がかなり直線的。起伏が少なくて表現にやや物足りないところはあるけれど、カデンツァはなかなかロマンティック。聴いた後はとても爽やかさが残る。

演奏時間は45分くらいとかなり速い。カッチェンもコンヴィチュニーとのライブ録音では同じくらいの演奏時間だった。2人の録音を続けて聴くと、やっぱり2人とも同じくらいに、すこぶる速い。
カッチェンの場合はピアノがどんどん走っていってオケがついていっているので、まだしも余裕があるせいか、強弱のメリハリや”ため”がよくきいている。音色もほの暗く陰影もあって、力強くてロマンティック。
フライシャーは音色が明るく溌剌として、スピードにのって一気に駆け抜けている。どちらかというと、オケの速いテンポにピアノがついて行こうとしている感じがところどころして、特に第3楽章はちょっと余裕がなさそう。それにしても、2人とも30歳前半の録音なので、スピード感と勢いがある。
暗めの色調のカーゾンや、スローペースでゆったりと歌うアラウの演奏を聴いた後だったので、なおさらそういう印象が強くなる。逆に、カーゾンやアラウの演奏には独特の味わいがあるのもよくわかる。

カップリングされているのは、ブラームスのヘンデルヴァリエーション。これは1956年のモノラル録音だが、音はそれほど悪くはない。
このブラームスも優雅で愛らしさのある明るいブラームス。悲愴感や翳りが薄めなのであまり彫りの深くはないところはある。
全体的にテンポが速くて、タッチはとても軽やか。切れ味のよいテクニックでさっそうと弾いている。変奏間のテンポの差があまりないので、叙情的な変奏ではもっとテンポを落としても良いような気もしないではないが、速いテンポでもあっても、とても素直な情感が流れている。生気に溢れて伸びやかなピアノがフライシャーらしい。

tag : フライシャー ブラームス セル

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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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