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矢代秋雄/ピアノ協奏曲
矢代秋雄の代表作であり、唯一のピアノ協奏曲。これをブラインドで聴いて日本人作曲家が書いたものだとすぐにわかる人は、そんなに多くないに違いない。
彼は10歳から諸井三郎、14歳から橋本國彦に作曲を学ぶという早熟さで、東京音楽学校(今の東京芸大)で池内友次郎と伊福部昭に師事した。
彼が多くを学んだのは、パリ高等音楽院で学んた池内の方で、同級生の黛敏郎が伊福部昭に傾倒していたのとは対照的。
そもそも後年の矢代の作風から考えて、どう考えても伊福部昭とは水と油のような気がする。伊福部の方は、日本人とは全く異なる文化圏のフランス音楽的なものを書くことには否定的だったという趣旨のことが、伊福部のCDのブックレットに書いていた。

矢代は22歳でフランス政府給費留学生としてパリ国立高等音楽院に留学。1曲1曲の完成度を徹底的に高める作曲姿勢は、日本の師の教育と、このパリ留学で磨かれたらしい。27歳で帰国して以降、次々と作品を発表していき、評価を高めていったが、心不全で1976年に47歳で急逝。

完璧主義で自己批判の強い人だったため、あまり作品は多くはない。
この曲の録音も多くはなく、中村紘子の演奏が残っているらしいが(聴いたことはない)、タッチや音楽の作り方から考えて、どうもミスマッチのような気がする。
NAXOS盤で弾いている岡田博美の演奏は評判が良い。彼の演奏はいままで聴いたことがない。ロンドンを拠点に活動しているようで、レパートリーは古典~現代までこなす。現代の日本人作曲家のピアノ曲の録音も多い。
このコンチェルトの演奏を聴いてみると、音色・響きのバリエーションが豊かで、複雑な旋律・リズムも鮮やかに表現している。ピアニストの技巧がしっかりしているのは、その感性が曲とうまくマッチングしているような冴えた演奏です。

矢代秋雄:ピアノ協奏曲/交響曲矢代秋雄:ピアノ協奏曲/交響曲
(2002/03/01)
湯浅卓雄 (指揮), アルスター管弦楽団 (オーケストラ), 岡田博美(p)

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第1楽章(Allegro animato)
冒頭からフランス印象主義的な音のタペストリーのようなところがある。
旋律と和声は凝縮され研ぎ澄まされたような美しい響き。ドビュッシーのような音自体が戯れているつかみどころのなさはなく、かなり理知的でかっちりと作りこまれたような枠組みを感じる。
彼の作風の特徴は「統一のとれた完璧なスタイルときめの細かい仕上げ」と言われている。そのとおり、隙のない完成度の高さが感じられて、完璧主義で寡作だったのもよくわかる。

第1楽章は冒頭は不可思議な響きのピアノ・ソロが静かに入ってくるが、その後はピアノが打楽器のように同じパターンの音型を変形させながら繰り返し弾いて、その合間にオケが合いの手を打つように入ってくる。やがて静かなピアノ・ソロへと戻るが、この響きがなんとも冷たく美しく、妖しく輝いている。やがてオドロオドロしくも激しいピアノとオケの協奏が始まって、最後は静かに消えるように終わる。
全体を通して、ピアノパートの旋律のつくりや響きが素晴らしく、隅ずみまで精密に計算されたような精緻な感じがする。
第1楽章を聴いていると、シュニトケの「ピアノと弦楽のための協奏曲」(1979)を思い出した。両曲とも冷たく輝くような美しさが共通している。
中間部では、バルトーク風の打楽器的ピアノ奏法で勇ましい曲想に変わるが、打楽器的なピアノの使い方も似ている。シュニトケの不協和音を協和音に変えたら、このピアノ協奏曲のようになりそうな気がしてきた。

第2楽章 Adagio misterioso
”misterioso”の指示通り、不可思議な雰囲気が溢れている。オスティナートで連打される部分は、伴奏も含めて伊福部風のエキゾティシズムや物々しさに少し似ている気がする。
英国のオケなので、日本の民族音楽的な雰囲気はしないが、もしブラインドで聴いたら、後半は日本の作曲家の曲だと直観的に感じる部分はある。

第3楽章 Allegro - Andante - Vivace molto capriccioso
ピアノパートがかなり難しそうな楽章。打楽器的に鳴らしたり、軽やかで舞うように弾いたりしている。オケの伴奏が勇壮で、ピアノとオケとの掛け合いが面白い。
プロコフィエフを真面目で上品にしたような(それともバルトークの民族主義と荒々しさを消し去ったようなというべきか)、目まぐるしい動きと舞うような軽やかさ。

現代音楽のピアノ協奏曲で、完全な調性音楽を除いて、これだけ美しい響きと旋律を持った曲はそう多くはないようにさえ思えるほど。
シュニトケのコンチェルトもとても美しい曲だけれど、シュニトケ独特の雰囲気と和声なので、聴く人によって向き不向きがある。
矢代秋雄のこのコンチェルトは、そういう難解さやひねりのきいたクセはなくて、旋律と和声は美しく、構成が整然としているので、わかりやすさがある。
オーケストラ部分もシンフォニックで垢抜けたサウンド。外国のオケなのでなおさらそういう演奏になるのかもしれないが、もともとこのコンチェルトには日本人離れした感性を感じさせるところがある。
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(非公開コメント受付中)

一度だけ
こんにちは。

矢代秋雄のピアノ協奏曲は、かなり前に聞いたことがあります。
ピアノは中村 紘子だったことだけ覚えています。曲はどんな感じかはすっかり忘れましたが、ものすごく感動したことだけは覚えています。
この曲は名曲です
よんちゃん様、こんにちは。

このCDは10年以上前に買ってラックに埋もれてましたが、聴きなおすとこんなに美しい曲だったのかと、認識しなおしました。このところ現代音楽を良く聴いているので、こういうつくりの音楽に慣れているせいでしょう。

中村紘子のタッチはあまり好みではないので私は聴いていませんが、このCDで弾いている岡田博美という人はドビュッシーなども録音していて、音色や響きがとても美しいです。

PS.中村&若杉弘/都響盤の録音が、ニコニコ動画にアップされてましたので聴いてみました。タッチや音色・響きのつくりかたがかなり違いますが、かなり迫力はあると思います。
日本を代表するピアノ協奏曲ですね
こんにちは。この曲大好きです。
岡田博美さんの録音は、バックがアルスターということもあって、
良くも悪くも普遍的なアプローチ、あまり日本臭さは感じられません。
まあ、外国のリスナーに聴いてもらうにはこの方がよいのかも。

中村紘子の録音(4種持ってます)は、どれもけっこう日本的・土俗的なものを感じさせ、
個人的にはこれらのほうが好みです。
第2楽章では、雅楽の影響をはっきり聞き取れます。
初演の3ヶ月後(1968年3月)に録音された熱気あふれるヴァージョンと、
1982年に録音された、びっくりするほど遅いテンポで深く沈潜したようなヴァージョンをよく聴きます。

舘野泉も録音しています(フォンテック)。
ロマンティックで安定感あり、岡田博美を少し彫りを深くしたようなイメージの演奏です。

音楽之友社から出ているポケットスコアを見ながら聴くと、
発見がたくさんあって面白いです。
日本のピアノ協奏曲は名曲が多いですね
木曽のあばら屋様、こんにちは。

この曲、かなり気に入っていらっしゃいますね。
前衛性のある現代音楽の正統派といった感じで、確かに日本を代表する名曲です。

中村さんの録音は以前少し聴いた気がしますが、色彩感があって現代的なシャープなタッチが好きなので、岡田さん(と、多分舘野さんも)のような弾き方が私の好みに合っているようです。

といっても、日本人の作品の演奏は、曲の解釈や核心となるものを伝えるには、日本の指揮者・オケ・ソリストの組み合わせの方が良いことも少なくないのではないかと思います。(伊福部昭の《リトミカ・オスティナータ》がそうでした)
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Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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