レオン・フライシャーの弾くブラームス/ピアノ協奏曲第2番 

2009, 04. 05 (Sun) 12:00

レオン・フライシャーとジョージ・セル指揮クリーブランド管弦楽団が1960年に録音したブラームスのピアノ協奏曲第2番。[第1番の録音の記事はこちら]

この録音のエピソードがブックレットに書かれている。初めてのリハーサルが始まる前に、フライシャーをびっくりさせてやろうとしたセルは、第1楽章冒頭で幕開けのソロを吹くマイク・ブルームに半音だけ高く吹くように指示。
何も知らずにピアノの出番を待っていたフライシャー。冒頭のホルンを聴いてピアノ・ソロを弾き始めたは良いが、結局6小節弾いたところで、みんなギブアップしてしまったという。
厳しいことで怖がられていたセルがこういう遊び心を発揮したのは、相手がフライシャーだからなんだろう。

Leon Fleisher Plays BrahmsLeon Fleisher Plays Brahms
(1997/10/16)
George Szell, Cleveland Orchestra, Leon Fleisher

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このブラームスの第2番のコンチェルトの演奏は、とても爽やかで品の良い演奏。
オケはわりとシャープな演奏で、ことさら重厚さを強調することはせず、フライシャーのピアノに合わせて、軽快でさらっとした伴奏。
フライシャーの方は、軽快なテンポで、早いパッセージは軽ろやかなタッチと、線の細い伸びやかな響きで、とても若々しく爽やかなリリカルなピアノ。
力感があまりなく、音色は明るめで、クリスピーにさらさら弾いているところもあって、ブラームスらしい重厚さとか、明るさのなかに見せる翳りのような明暗のコントラストはあまりない。

ゼルキンがオーマンディと弾いたこの第2番も明るかったが、特にオケが色彩感があって、明るい陽射しを感じさせる。
同じように明るい色調のフライシャーとセルの演奏だと、太陽の光のようなキラキラした煌きはないけれど、清楚ですっきりとした透明感があって、折り目正しさと奥ゆかしさのある品の良さ。

フライシャーの演奏は、第1番よりも、この第2番の方がかなり良い。
第1番はやや速めのテンポで細部の表現がやや淡白で、セルのテンポの速さにピアノがついていっているところがあったし、ピアノとオケが拮抗するような曲にしてはそういう緊張感はあまりない。

この第2番は、ピアノがオケの一部のような位置づけになるので、オケの伴奏にフライシャーのピアノが溶け込んで、とても上手く調和している。
フライシャーも無理なところを感じさせない生き生きとした演奏で、音も綺麗に澄んた響き。引き締まったオケの響きに良くあっている。

第1楽章は、突発的にフォルテになったり、感情の浮き沈みが激しいところがあるけれど、フライシャーのピアノの音を聴いていると、なぜか明るくて可愛らしく思えてくる。

第2楽章は、ピアノ協奏曲にしては珍しいスケルツォが入っているので有名。ここはピアノがとても情熱的に切々と歌うところだけれど、フライシャーのピアノはわりとさらっとしている。さほど力強さを感じさせないのと、明るい素直な響きには翳りがない。それに伴奏も絞り出すような弦の悲壮感はないので、それらが相まって、やや控えめな情熱というところ。

第3楽章はいつ聴いてもソロのチェロが美しい。チェロの旋律は、後にブラームスが歌曲「わが眼差しはますます浅く」(Op.105-2)に転用したという。瞑想的なアンダンテの楽章だけれど、中間部で感情の高揚を見せるところは、やっぱり感情と理性の葛藤の多いブラームスの曲らしい。
フライシャーのピアノは、弱音で弾いていてもどころかしら明るく伸びやかなので、静寂で瞑想的な雰囲気にはやや欠けるところがあるとはいえ、とてもリリカル。

第4楽章はフライシャーの持ち味にもっとも合っている楽章。軽やかで弾むようなタッチと、明るい音色と伸びやかな響きが、このイタリアの陽光が差し込んでいるような曲の雰囲気に良く似合っている。第1楽章や第2楽章では気になったタッチの軽さは、ここでは逆に浮き立つような喜びを感じさせるところがあって、弾いているフライシャーもとても楽しそうな感じがしてくる。
聴き終わると、とても爽やかで開放的な気分がしてくるような第4楽章だった。

カップリングされているのは、フライシャーのピアノ独奏によるワルツ集。
軽快なワルツのリズムで、和音でも歯切れ良く、弾いている。カッチェンの演奏に慣れているせいか、フライシャーのワルツはややブラームス的な憂いを帯びた陰影や感情の揺れ動くところは薄い。その代わりに若い溌剌としたところや愛らしさが良く出ているワルツ。元気がありすぎて、ところどころ、それは飛び跳ねすぎ、と思うところはあるけれど。

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