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カッチェン《ブラームス:ピアノ作品全集》より (15)ピアノ・ソナタ第2番
ブラームスが初めて作曲したソナタはこの第2番。出版の関係で、この曲の後に完成した成した第1番ソナタと作品番号が入れ替わってしまった。
(ピティナの楽曲解説)
第2番のソナタは、疾風怒涛の如く、ほの暗く激しい情熱をぶつけるような力強さとストレートな表現が強く出ていて、曲想としてはやや単調さを感じるところがある。それでも、30分近い演奏時間でも、最後まで一気に聴かせる力がある。

Youtubeに、カッチェンがピアノ・ソナタ第2番を演奏している映像が登録されている。全部で4映像あるが、第2楽章だけ途中でカットされている。
(おそらく、1966年10月4日、パリでのライブ録音で、海外盤のDVD(Janisの演奏がメイン)に収録されているものではないかとは思う。)
カッチェンが大粒の汗を流しながら、ひたすらピアノを弾いている。とにかく良く回る指と力強いタッチがアップで見れて、この曲をこんなに速いテンポで弾くと、かなりのエネルギーと集中力がいるのが良くわかる。

この映像のコメントを読むと結構面白い。
第1楽章のカッチェンのテンポはかなり速い(多分最速に近いはず)。これは速すぎてNG!という人と、速いけれど若いブラームスらしくて素晴らしい!という人に分かれている。(それに第1楽章に限らず、緩徐部分を除けば、全体的にかなりテンポが速い。)
たしかに、Allggro non tropoにしては随分速く、細部のタッチがやや荒っぽいところはあるが、この緊張感に満ちた疾風怒濤のような表現は、若者が始めて作曲したピアノ・ソナタにかける意気込みや情熱が込められているようで、納得感はある。
そのわりには音楽自体の流れはとても滑らかで、若々しくセンシティブな情感が感じられるし、これほど疾走感と急迫感のある演奏は、そうそう聴けるものでもない。この緊張感が感染したのか、ず~っと映像を凝視しながら聴いていた。

アラウやリヒテルの演奏と比較していたコメントしている人が何人かいた。
(私は聴いたことがない)アラウの演奏は、カッチェンよりは大分テンポが遅いはずなので、重厚さとルバートを効かせた濃い目の表現のような気がする。アラウとカッチェンは音楽の作り方が全然違うので、アラウに慣れているとカッチェンの演奏は聴きづらいはず。
リヒテルがマントヴァのライブ録音で弾いたブラームスの第2番ソナタを聴くと、カッチェンよりはやや遅いテンポで、詩的な雰囲気が漂っていて、こういう解釈の演奏も良いと思わせるものがある。ただしこの演奏はテクニック的に苦しいところがかなりあって、聴いていてヒヤヒヤする。リヒテル自身が一連のマントヴァのライブ録音は散々の出来と言っていたほど。

Brahms: Works for Solo PianoBrahms: Works for Solo Piano
(1997/11/11)
Julius Katchen

試聴ファイル



第1楽章は短調の激しく情熱的な主題。和音のフォルテなので重苦しく、若い頃の感情をぶつけるように、ひたすら第1楽章は嵐のごとく最後まで疾風怒濤。主題がそれほど変形されず、後で書いた第1番になると、調性の違うモチーフををいくつか挟み込んで曲想と緩急の変化をつけている。

この作品はブラームスが19歳の時に書いたもので、重厚さや渋みは全くなく(そういう風に弾くこともできないことはないだろうけど)、若者特有のストレートで激しい感情が溢れている。カッチェンの速いテンポでも、疾風怒濤のような曲にはかえって似合っている。速すぎるせいか、細部のタッチが少し荒っぽいところもないことはないけれど、ほの暗い音色と響きで、緊張感で張り詰めたような演奏は素晴らしい。

第2楽章はとても暗く寂しい雰囲気。ピティナの解説では、「中世のミンネゼンガーのクラフト・フォン・トッゲンブルクの歌、冬に森も林も荒涼となるのは淋しい、という内容の「冬の旅」に霊感を得たものであるといわれている」と書いている。全くその歌の雰囲気がそのまま転写されているかのよう。

第3楽章はスケルツォ。といっても曲想が明るく変わることもなく、第2楽章の変奏で構成されているので、相変わらずほの暗い情熱的な曲想の章。中間部のトリオはやや明るめの旋律で始まるが、これも段々翳りを帯びてくる。

第4楽章の冒頭は序奏で、フィナーレにしてはゆっくりしたテンポでとても地味。徐々に華やかになって、続く主題は小品集のなかでも出てきそうなブラームスらしい旋律。
歌のように流れのある旋律だけれど、速いテンポで弾いているので疾走感があって、息を抜くところがほとんどない。ちょっと民謡風な感じの旋律でロマンティックな感じがする。
なぜか、エンディングは嵐が過ぎ去って雲が晴れたように落ち着いて、ファンタジーを感じさえるアルペジオで締めくくっている。このラストはとても印象的。

最初のソナタとはいえ、後年のブラームスのピアノ曲をいたるところで連想させるような、ブラームスらしい旋律と和声がいろいろ詰め込まれている。頻繁に転調していくような書法だけでなく、たえず感情が浮き沈みし、明暗の交錯するところなど、かもし出す雰囲気さえもやはりブラームス的。19歳の若書きの曲というのに、冒頭を聴くだけでも、あのブラームスらしい独特の個性が色濃く感じられるというのは、凄いことかもしれない。


 『ジュリアス・カッチェンにまつわるお話』

 ジュリアス・カッチェンのディスコグラフィ

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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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