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フェルディナント・リース/ピアノ協奏曲第8番「Salut au Rhin(ラインへの挨拶)」
19世紀前半で優れたピアニストであり作曲家として有名なのは、モーツァルトの弟子ヨハン・ネポムク・フンメル。フンメルは最近見直されているようで、ピアノ協奏曲や独奏曲の録音が随分出ている。
ピアノ協奏曲は5曲あって、ハワード・シェリーやスティーブン・ハフの録音に定評がある。

当時、フンメルはベートーヴェンとピアノ演奏の分野で人気を二分していたという。
ベートーヴェンは難聴が進むと公けの場でピアノ演奏をすることはなくなったが、ベートーヴェンの弟子フェルディナント・リースもフンメルと比肩する優れたピアニストだった。
フンメルと違って、作曲家としてのリースは現在でもあまり評価されているとはいえないらしい。

リースとフンメルは、いずれも古典的な形式のなかにロマン派的な叙情を織り込んだ作風。
フンメルはかなり技巧的な煌びやかさがあって、どことなくショパン風の華麗さにつながるものを感じる。
リースの曲もピアノはかなり派手に動き回っていはいるが、フンメルのような煌びやかな華麗さをそれほど強く感じさせない。NAXOSの解説だと、ピアノパートはかなり難しく、ベートーヴェンというよりはショパンの先駆けのような書法らしいが、フンメルのコンチェルトと聴き比べると、違いが良くわかる。
リースのピアノ協奏曲のもつ雰囲気は、ベートーヴェン的な世界に近いものがある。
ショパンは好きではないので、フンメルよりもリースのコンチェルトの方がずっと馴染みやすい。

リースの作品はCPOレーベルから交響曲や室内楽曲がリリースされている。ピアノ曲は主にNAXOSの録音で、全部で8曲のコンチェルト中、今は4曲とピアノ付きの管弦楽曲が数曲録音されている。
このピアノ協奏曲はベートーヴェンの初期~中期にかけた作風をしのばせるところがあるが、ベートーヴェンよりもずっとロマンティックな叙情が流れる曲。
ベートーヴェンが5曲しか(といっても少なくもないが)ピアノ協奏曲を残していないので、リースのピアノ協奏曲を聴くと、ベートーヴェン的な世界への郷愁が感じられて、かなり気に入ってしまった。

リースのピアノ協奏曲と管弦楽伴奏付きのピアノ曲のほとんどは、NAXOSの音源。今のところVol. 1~Vol. 3までリリースされている。収録されているピアノ協奏曲は次の4曲。
 第3番 嬰ハ短調 Op. 55
 第6番 ハ長調 Op. 123
 第7番 イ長調 "Farewell to London" Op. 132
 第8番 変イ長調 "Salut au Rhin" Op. 151

第6番は、ベートーヴェンのもとで作曲の勉強を終えて間がない頃に書いた曲なので、かなりベートーヴェンのピアノ協奏曲風なところが強い。

この第8番はそれから20年後に作曲した曲で、ベートーヴェンの中期くらいの形式のかっちりとした古典的な感じはするが、曲想はかなりロマンティック。リースとベートーヴェンの生きていた時期はほぼ重なるのに、なぜかリースの曲はロマン派により近いような叙情性が強い。

NAXOSのリースのピアノ協奏曲集は、ピアニストがクリストファー・ヒンターフーバー。ラザール・ベルマンに師事し、フンメルのピアノ曲なども録音している。
リース:ピアノ協奏曲集 Vol.1リース:ピアノ協奏曲集 1
(2006/01/01)
クリストファー・ヒンターフーバー(ピアノ)、ニュージーランド交響楽団、ウーヴェ・グロット(指揮者)

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第1楽章 Allegro con moto
久しぶりに帰ってきた故郷への敬意と愛情の溢れた明るく堂々とした楽章。軽快なテンポで鍵盤上を駆け回るピアノは流れるように美しく、時折、切ない短調の旋律を織り込んで叙情性もたっぷり。母なるラインを抱く故郷を描写したような悠然さとダイナミックさに加え、自由な開放感で伸びやか。

第2楽章 Larghetto con moto
ゆったりとしたテンポで穏やかな曲想だけど、雰囲気的には第1楽章のように明るく優雅。ちょっと一息ついただけというところ。

第3楽章 Rondo: Allegro molto
冒頭から勇ましいオケで始まって短調なのかと思ったら、これも長調で明るく軽快で、これは心の中の喜びを表現しているような楽しげなロンド。この楽章はなかなか伴奏が元気。ピアノは、この曲のなかで一番技巧的に凝っていて、ここはベートーヴェンよりはずっとロマン派の世界に近い。

堂々とした気品のある曲で、まるでベートーヴェンのピアノ協奏曲を聴いているような気分にはなるが、やはりベートーヴェンのようなオーラは希薄。楽章ごとの性格づけがやや弱くて、3つの楽章が似たような雰囲気なので単調さを感じるところはある。特に、ベートーヴェンのように、一度聴けば強く印象に残る主題の個性的な特徴が希薄という気がする。
それでも、聴いていてもとても楽しく、自由闊達な伸びやかさがとても心地よい。やはりフンメルのコンチェルトよりは、落ち着きと堅実さがあるところが好みに合っている。
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フンメルですか
yoshimiさん、こんにちわ。拙ブログにコメントいただき、どうも有り難うございます。

貴ブログ、珍しくもほぼクラシック音楽、特にピアノ曲に特化したものなのですね。とりあえず、4月分のみ読ませていただきましたが、あまりに詳細に書かれているのに驚きました。

さて、フンメルですか、名前は勿論、聞いたことがありますが、曲の方はほとんど聴いたことがないと思います。作曲家ってものすごい数がいたのでしょうが、当時に演奏されていても、死後はほとんど演奏されない人が大部分なのですよね。勿論、それでも、バッハ、ビバルディ、マーラー等、随分、経ってから急激にポピュラーになる人もおりますが。

作曲家は星の数ほど膨大で
matsumo様、こんにちは。

コメントありがとうございます。
私は多少ピアノを弾くせいで、ピアノ曲を偏愛しているところがありますので、聴くのもピアノが入った曲が中心です。

記事は自分の記録用に書いているので、あれこれ書き散らしておりますが、時間が経てば感じることが違ってくるので、文字に残しておくといろいろ聴き直したりするのに便利なのです。

最近は埋もれた作曲家を発掘するハイペリオンのシリーズとか、ナクソスのライブラリが充実していて、有名な作曲家以外の曲を聴くことが多くなりました。
時代を超えて生き残るのは一握りの作曲家だけですが、いろんな時代で評価されていた作曲家や曲のことを知るのも楽しいと思います。
有名作曲家以外の曲では
yoshimiさん、こんにちわ。

ピアノをお弾きですか、それは羨ましいです。

さて、有名作曲家以外の曲で、ナクソスのCDでは「ラインベルガー:バイオリンとオルガンのやめの6つの小品集・バイオリンとオルガンの為の組曲」は素晴らしいと思いました。

ピアノ曲では、「メトネル」のものが素晴らしいと思っています。
メトネルは聴いたことがあります
matsumo様、こんばんは。

ラインベルガーは聴いたことがありませんが、ナクソスのミュージックライブラリの会員なので、オンラインで聴いて見ます。

メトネルは、メジューエワの演奏で聴いたことがあるはずなんですが、CDラックのどこかに紛れ込んでいるような...。
メトネルは最近、大分名前が知られてきた作曲家ですね。アムランも録音していたと思います。
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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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