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スティーヴン・ハフ 『THE PIANO ALBUM』
英国のピアニスト、スティーブン・ハフのVirginレーベル時代の最初(だと思う)のピアノ小品集『THE PIANO ALBUM』。
メジャー&マイナーな作曲家の有名・無名のピアノ独奏曲40曲が2枚のCD収録されている。
とてもコストパフォーマンスが良い廉価盤(1200円弱)。中身がこれだけ良いなら、とってもお買い得。
ハイペリオン盤の『NEW PIANO ALBUM』とは全然違うものなので(価格も全然違うし)、ハフのピアノをいろんな曲で聴きたければ、このVirgin盤の『THE PIANO ALBUM』が一番良い。

Stephen Hough : The Piano AlbumStephen Hough : The Piano Album
(1998/08/27)
Stephen Hough

試聴する(英国amazon)
※廉価盤なので同封リーフレットに曲目解説はなし。

この『My Favorite Things』というCDはすでに廃盤。この中身は全て『THE PIANO ALBUM』のCD1に収録されている。
USED品やオークションで結構な値段がついているが、『THE PIANO ALBUM』なら、このアルバムに収録されている20曲に加えて、さらに別に20曲も聴ける。

My Favorite ThingsMy Favorite Things
(1994/04/05)
Stephen Hough

試聴ファイル


                                   

ハフはどんなに速いパッセージでも、音の粒立ちが良く一音一音が明瞭に聴こえ、響きが混濁することなく、明晰な演奏をする。弱音の響きもしっかりしているので、音がびっしりと織り込まれたタペストリーのような密度の濃さがある。
ヴィルトゥオーソ系のピアニストにありがちな表情の乏しい技巧優先タイプではないので、曲想に応じて、タッチや響きを変え、細やかな表情をつけて、とても叙情的な表現力豊かなところがハフらしいところ。
テンポは全般的に速めなので、べったりした情緒的な表現ではなく、さらっとした透明感がある。スタイリッシュといっても良いシャープさと知的なセンスを感じさせるピアノを弾く。

全体的に指回りが抜群に良くないと弾きこなせないであろう技巧的な曲が多くあるけれど、難曲であってもハフには技術的に余裕を持って弾いている(ように聴こえる)ので、表情豊かな演奏に仕上がっている。

ドホナーニといえば、「きらきら星変奏曲」(この曲はカッチェンも録音している)で有名。「The Fuchsia Tree」は、まるでイージーリスニングを聴いているような叙情的な旋律が美しい。

パデレフスキの「Minuet(メヌエット)」はわりと有名かもしれないが、こんなに美しい曲だっただろうかという気がするほどに、とても華麗なメヌエットに聴こえる。よく見るとこの曲はハフが編曲していた。(ハフは自分で作曲・編曲もするので。)

超有名なロジャースの「My Favorite Things」。ジャズピアニストがソロやピアノ・トリオでよく弾くヒットナンバーだが、クラシックのピアニストが弾くのは珍しい。
これもハフが編曲していて、メロディラインは単音で綺麗に聴こえはするけれど、伴奏やら副旋律がかなり錯綜していて凝った独奏曲にすっかり変身している。これは結構面白い。

フリードマンの「Music Box No. 3」は、ピアノの響きがまるでタイトルどおりオルゴール(Music Box)のようにキラキラしている。どうやってこういう響きを出しているんだろうかとちょっと不思議。

有名なサン=サーンスの「白鳥」(ゴドフスキーの編曲版)。主旋律を他の旋律にもぐりこませるように、わざと浮き上がらせずに弾いているところが面白い。普通の聴く「白鳥」とは違った、ほわわ~んとした雰囲気がする。

北欧の現代作曲家パルムグレンの「En route(Etude de concert) Op. 9」。コミカルな映画音楽っぽい楽しい曲。

ツェルニーは練習曲以外で聴いた曲はなかったので、この「Variations Brillantes」はツェルニーらしくない(?)可愛らしい旋律が変奏で展開されていて、シンプルだけれど意外と良い曲。なにげにベートーヴェンっぽい雰囲気が漂っているけど。
ツェルニーの練習曲はさほど面白みがない曲が多くて、同じ練習するなら、こういう曲を課題にして欲しかったと今更ながら思ってしまう。

アントン・ルービンシュタインの「Melody No. 1 in F op. 3」は、曲名は知らなかったけれど、聴くととっても有名な旋律の曲だった。エルガーの「愛の挨拶」のような優しく柔らかい雰囲気の曲。

この曲集で最も風変わりなのが、現代音楽作曲家のローウェル・リーバーマンが書いた「Gargoyles op. 29」。4曲構成の組曲で合計10分と、このアルバムでは最長の曲。
ハフはリーバーマンのピアノ協奏曲をハイペリオンに2曲録音しているが、昔からリーバーマンをレパートリーにしていたというのがわかる。
リーバーマンの作風は無調音楽ではないので、現代音楽にしては聴きやすい方だけれど、このアルバムの他の曲とは毛色は全く違う。
ロマン派的な曲が多いアルバムなので、リーバーマンの曲が入っていると趣きが変わって良いし、リーバーマンのピアノ小品はあまり録音がされていないので、結構貴重。第4曲は彼のピアノ協奏曲を連想させるような旋律で、リーバーマンがどういうタッチの音楽を書くのかがよくわかる。

「The Musical Snuffbox」とは、音の玉手箱(オルゴール)という意味らしい。ハフはこういうタイプの曲が好きなのか、オルゴールという名前の曲は、フリードマン、 レビコフ、リャードフと3曲弾いている。
ハフは響きのコントロールがとても繊細なので、文字通りいろんな響きの音が次から次へ飛び出してくる。オルゴールのような煌きのある響きがとても綺麗。

サン=サーンスが編曲した「Bourree」 。バッハのヴァイオリンソナタ第2番の旋律がモチーフ。いつもは眠くなるバロックの曲が、軽快なピアノ曲に変身してとても聴きやすい。


このアルバムには、速いテンポで弾く技巧的に華やかな曲と、ゆったりとロマンティックなメロディアスな曲が半々くらい混じっていて、雰囲気がコロコロ変わる。数分の短い曲ばかりだけれど、いろいろ気がつくことも多い。このアルバムはピアノ小品集としては無名の曲が多いというところがかなりユニークで、そこがとても面白くて、ハフの冴えた演奏と相まって、出色の出来だと思います。


『THE PIANO ALBUM』
<Disc 1>
1 MacDowell: Hexentanz Op. 17 
2 Chopin - Liszt: The Maiden's Wish
3 Quilter - Hough: Now Sleeps the Crimson Petal
4 Dohnányi: The Fuchsia Tree
5 Dohnányi: Capriccio in F Minor No. 6 Op. 28
6 Paderewski: Minuet No. 1 Op. 14
7 Paderewski: Nocturne No. 4 in B flat Op. 16
8 Schlözer: Etude No. 2 in A Flat Op. 1
9 Gabrilovich: Melodie in E
10 Gabrilovich: Caprice-Burlesque
11 Rodgers: My Favorite Things
12 Woodforde-Finden - Hough: Kashmiri Song (Pale hands I Loved)
13 Friedman: Music Box No. 3 Op. 33
14 Saint-Saëns - Godowsky: Le Cygne
15 Rosenthal: Papillons
16 Godowsky: The Gardens of Buitenzorg (from Java Suite, Book 3)
17 Levitzki: Waltz in A Op. 2
18 Palmgren: En route Op. 9
19 Moszkowski: Siciliano No. 2 Op. 42
20 Moszkowski: Capriccio Espagnole op. 37

<Disc 2>
1 Czerny: Variations Brillantes Op. 14
2 Levitzki: The Enchanted Nymph
3 Schumann - Tausig: The Smuggler No. 10 Op. 74 (Der Kontrabandiste)
4 Rubinstein: Melody No. 1 in F op. 3
5-8 Liebermann: Gargoyles op. 29
9 Rebikov: The Musical Snuffbox
10 Liadov: The Musical Snuffbox
11 Ravina: Etude de Style No. 1 Op. 40 "Agilite"
12 Woodforde-Finden - Hough: Till I Wake
13 Quilter - Hough: Weep You No More (from Elizabethan Lyrics Op. 12)
14 Rodgers - Hough: March of the Siamese Children (from The King and I)
15 Moszkowski: Valse mignonne
16 Moszkowski: Serenata No. 1 Op. 15
17 Bach - Saint-Saëns: Bourree (from Solo Violin Sonata No. 2 in A minor BWV1003)
18 Godowsky: Erinnerungen (from Triakontameron)
19 Bizet - Godowsky: Adagietto (from L’Arlésienne)
20 Tausig: Ungarische Zigeunerweisen

tag : サン=サーンス リーバーマン スティーヴン・ハフ

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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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