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1969年4月29日
今日は4月29日。今からちょうど40年前、米国人ピアニストでパリに移住していたジュリアス・カッチェンが肺がんで42歳という若さで亡くなった日。
誕生日とかメモリアルディといった特別な日のことはほとんど覚えていない方で、自分の誕生日はまず忘れているし、1日間違って覚えていたこともある。親の命日もコロッと忘れていたりする(お盆とお彼岸のお墓参りと法事は欠かさないので、それほど不信心ではないとは思うけど...)。
それなのになぜかこの4月29日だけはしっかり覚えていた。

カッチェンの伝記類は出版されていないので、「ジュリアス・カッチェンにまつわるお話」に、公開資料をもとにしてミニ伝記をつくりました。

今日ピアノで弾く曲は、やっぱりブラームスとベートーヴェン。
といっても、この頃よく練習している曲なので、特別というわけではないけれど、やはり今日はブラームスを弾きたくなる。
ブラームスの小品集の中から、Op.118の第2曲と、Op.119の第1曲。いずれもとても叙情的な美しい曲で、Op.118の方は長調の子守歌のような穏やかな主題が心地良い。
Op.119の方は短調で哀感の強い主題には、ブラームス晩年の翳りや淋しさを感じさせる。まるで失われたものを追憶しているかのような音楽。今日弾くのに相応しい曲なのかもしれない。

ベートーヴェンの曲は、ピアノ協奏曲第4番とピアノ・ソナタ第32番、6つのバガテルOp.126から第1曲と第5曲。全てカッチェンが録音している曲で、ベートーヴェンの録音の中で最も好きな曲ばかり。
全て毎日練習しているけれど、それぞれ1回弾くだけで合わせて1時間くらいかかってしまう。

ピアノ協奏曲第4番は、ノイマン指揮チェコフィルの伴奏で第1楽章を弾くカッチェンの映像がYoutubeに登録されている。
これは1968年プラハでのライブ映像で、音は良くはないが貴重な映像。ピアノの弱音の柔らかさや速いパッセージでのカッチェンの指回りのよさがよくわかるし、なによりもカデンツァの美しさには聴き惚れてしまう。
スタジオ録音(ガンバ指揮ロンドン響)の時よりも、テンポがほんの少し遅く(それでもかなり速い)、叙情感がより強く感じられて、このライブ録音の演奏の方が良いと思う。伴奏のプラハ響の演奏も流麗で美しい。
このライブ映像は第1楽章しかないのが残念だけれど、それでも20分くらいはあるし、第1楽章が最も叙情性の強い曲なので、これだけでも聴ける(見れる)のはとても嬉しい。もう数十回は観ているはず。

ベートーヴェンの32のピアノ・ソナタの中で最も好きな曲。31番ソナタも好きだけど、やはり32番ソナタの奥の深さは別格だと思う。
カッチェンはこの32番ソナタを1955年と1968年の2度録音しているが、聴き比べると解釈が大きく変わっているのが良くわかる。
特に、68年のスタジオ録音の演奏は第2楽章が素晴らしく、冒頭のゆっくりしたテンポで弱音の柔らかい響きの主題から、速いテンポで輝くような響きと高揚感のある最終変奏へと覚醒したように展開していく。最後のトリラーの入った変奏の安らかさや、消え行くように穏やかに終えていくラストがとても美しい。アラウのピアノで聴くのもとても好きだけれど、この曲のマイベストはこのカッチェンの演奏。

「ピアノ・ソナタ第32番」のリスニング記録

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第32番、ディアベリ変奏曲ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第32番、ディアベリ変奏曲
(2004/10/27)
カッチェン(ジュリアス)

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ベートーヴェンのバガテルの最後の作品、「6つのバガテルOp.126」。今までのバガテルとは違って、穏やかに調和した小宇宙のような完成度の高い曲集。
第1曲と第5曲が好きなので暗譜して毎日弾いている。音の配列自体はシンプルだけれど、わずか1~2頁の間に起承転結のあるストーリーが詰め込まれたような密度があるので、弾きやすいのに、ドラマティックなところがあって飽きない曲。

カッチェンの弾くバガテルの第1曲は柔らかい弱音の響きが穏やかで美しく、中間部は高揚感できらきらと輝くよう。第5曲はとても速いテンポで軽やかに弾いていて、爽やかだけれど細やかな情感がさりげなく伝わってくる。両方とも長調で明るい色調で、穏やかだけれど自由で伸びやかな心情が感じられて、ほのぼのとしてくるものがある。

「6つのバガテル」のリスニング記録

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番、合唱幻想曲、6つのバガテル、ポロネーズベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番、合唱幻想曲、6つのバガテル、ポロネーズ
(2004/10/27)
ジュリアス・カッチェン、ピエロ・ガンバ、ロンドン交響楽団・合唱団

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 ジュリアス・カッチェンのディスコグラフィ

tag : カッチェン ベートーヴェン

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若くして亡くなったピアニストでは
yoshimiさん、こんにちわ

ジュリアス・カッチェンですか、多分、氏の録音は1枚も持っていないと思います。

ピアニストで若死にしたと言えば、白血病で亡くなったディヌ・リパッティと、航空事故で亡くなったウィリアム・カペルが有名ですね。前者は録音を何枚か持っていますが、音が悪いせいか、私の趣味ではありませんでした。後者は残念ながら、聴いたことがありません。

リパッティの録音は結構な数、残っていますが、これらのかなりは、当時、臨床試験段階だったステロイド「コーチゾン」により一時的に症状が回復した時に録音したものだそうですね。当時のEMIの録音が、デッカよりかなり劣っていたのが残念です。
DECCAは音が良いですね
matsumo様、こんにちは。
コメントありがとうございます。

リパッティとカペルは良く知られていますね。特にリパッティは有名ですが、いずれも30歳前後と本当に若くして亡くなったのですが、そのわりには録音は結構残っていますね。
リパッティは1950年以前の録音が多くて、復刻盤もいろいろ出ていますが、名演といわれるものが多いので、おっしゃるようにEMIの音質の悪さは本当に残念です。
闘病の合間にこれだけの演奏ができるなら、ベストの状態ならどれほど凄かったのかと想像したくなります。
コーチゾンは当時非常に高価な薬だったらしく、多くの人が募金や経済的な援助をしたそうで、リパッティはとても期待されていたし、人柄からも慕われていたのでしょう。

カペルの録音はRCA中心で、1950年前後の録音が多く、音はわりと良いと思います。
好きなタイプというわけではないのですが、彼のラフマニノフのピアノ協奏曲第2番は、とっても都会的でハンサム(というか)なタッチになっているのが面白いです。本当に良い演奏だと思ったのは、バッハのパルティータです。
ベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番もとても良いらしく(私は聴いていませんが)、師事していたシュナーベルが、自分の演奏だと勘違いしたそうです。

カッチェンはブラームス全集を残したことで一部にはよく知られていますが、亡くなって40年も経ちますし、忘れられつつあるように思います。私も1年ほど前に偶然に知ったくらいなので。
彼の録音ほぼ全て持っていますが、ステレオ録音が数多く残っていますし、モノラル録音もDECCAなので音は悪くなくて、DECCAの録音技術の良さには本当に感謝してしまいます。

当時DECCAのプロデューサーだったカルショーとはとても親しい友人同士で、「レコードはまっすぐに」でも、カッチェンに関するエピソードがいつくか書かれています。リヒテルがカッチェンの自宅でブラームスを弾いてたりしたとか(どうやって知り合ったんでしょう?)...。カッチェン以外ではブリテン関係がかなり詳くて、この本はいろいろと面白いです。
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プロフィール

yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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