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芥川也寸志の管弦楽作品 (1)オーケストラのためのラプソディ、弦楽のための三楽章「トリプティーク」
作曲家の芥川也寸志といえば、すぐに黒柳徹子と司会をしていたETV(昔は教育テレビとだけ言っていた)の『音楽の広場』を思い出す。
かなり古い番組なので、それなりの年齢でないと見たことがないはず。温厚そうな外見と穏やかな語り口だったが、どことなく神経質なところを感じさせる雰囲気もあって、やっぱり芸術家なんだな~と思ったものだった。

確か彼の書いた本を持っていたはず...と思って、本棚を探すと『音楽を愛する人に~私の名曲案内』を見つけた。学生時代に読んで、どの曲を聴くか参考にした記憶がある。
楽曲解説のような詳しい内容ではないけれど、1曲あたり2頁で合計100曲について、作曲経緯やエピソード、曲の特徴などを紹介している。
近頃の音楽評論家の思い込みの激しい(でも中身は怪しい)文章とは違って、曲にまつわるいろいろな話を丁寧な語り口で書いていて、ややエッセイ風で読みやすい。

音楽を愛する人に―私の名曲案内 (ちくま文庫)音楽を愛する人に―私の名曲案内 (ちくま文庫)
(1990/08)
芥川 也寸志

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芥川作品は聴いたことがなかった(有名な「赤穂浪士」のテーマ曲くらいなら知っていたけど)けれど、シュニトケでご縁のある『烏鵲の娯楽室』のうじゃくさんに教えていただいたもの。
NAXOSの日本人作曲家シリーズとしてCDがリリースされていて、「オーケストラのためのラプソディ」、「エローラ交響曲」、「交響三章」が収録されている。これは、湯浅卓雄指揮ニュージーランド交響楽団の演奏。
Naxos盤の『日本管弦楽名曲集』には、「交響管弦楽のための音楽」が収録されている。

芥川也寸志:オーケストラのためのラプソディ芥川也寸志:オーケストラのためのラプソディ
(2004/08/01)
ニュージーランド交響楽団

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この盤に関しては、「トロンボーン吹きのクラシックの嗜好」というブログのCDレビューがかなり詳しい。


オーケストラのためのラプソディ(1971年)
ラプソディの名の通り、速いテンポでリズム感よく、管楽器が特によく目立って、とてもダイナミック。
冒頭の主題は、まるで風雲を急を告げるが如き疾走感と急迫感。続いて、東洋的な雰囲気のあるゆったりとした叙情的旋律へ転換するが、この主題の旋律にはどことなくエキゾチックな妖艶さを感じるところがある。
冒頭の主題がいろいろ変形して何度も登場してくるが、オスティナートは師の伊福部昭の作風の特徴で、その影響を感じさせる。
この曲想にしては、かなり洗練された雰囲気がする。1971年頃の作品なのでまだ前衛色が残っているようなところはあるが、そこは後期の芥川らしい作風のなかに取り込まれて、前衛色の濃い「エローラ交響曲」とは違った安定性があるように思える。

冒頭は、『赤穂浪士』のテーマ曲みたいな雰囲気。
急迫感のある部分ではシャープな切れ味とダイナミックさがあって、緩徐部分ではいかにもロシア的な情念ともいうべきような、ねっとりとした情感が漂っている。

師の伊福部昭なら、もっと原初的な生命力のある躍動感のある曲になっているのだろうけれど、弟子の芥川は、どの曲もそういうオドロオドロしさは希薄。
逆にカッコいいといってもいいくらい。つい彼の外見のスマートなイメージが浮かんできてしまう。

この曲は、レニングラード国際音楽祭でゲルギエフ指揮レニングラードフィルが演奏していて、ロシアにゆかりの深い芥川作品らしいところ。

ゲルギエフ指揮:芥川也寸志:オーケストラのためのラプソディ




弦楽のための三楽章「トリプティーク」(1953)
軽快で切れ味良いモダンなタッチと、日本的な典雅な響きとが融合した、明るく颯爽とした曲。
前衛的な現代音楽のような難解さは全くなくて、とても聴きやすい。

芥川也寸志 弦楽のための三楽章 Yasushi Akutagawa - "Triptyque" for string orchestra
(芥川也寸志指揮新交響楽団、1986年録音)




『芥川也寸志 管弦楽作品集 Yasushi Akutagawa: Orchestral Works』[Youtube]
交響三章、交響管弦楽のための音楽、弦楽のための三楽章「トリプティーク」、エローラ交響曲、チェロとオーケストラのためのコンチェルト・オスティナート、オーケストラのためのラプソディー、オルガンとオーケストラのための「響」。

[2013.3.11 加筆修正]

tag : 芥川也寸志

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(非公開コメント受付中)

今晩は
どうも、うじゃくです。
「音楽の広場」は私も覚えています。うちの親父がクラシック狂なんで、その曜日になると強制的にチャンネルを合わせてましたね。ソフトな語り口の印象が強いです。

あれから何十年も経つのに、徹子さんはまだ元気、かたや芥川さんは故人…まぁ、いいや。

何時の日か、再び日が当たることを願って止まない作曲家の一人です。
「音楽の広場」は懐かしい番組です
うじゃくさん、こんばんは。
コメントありがとうございます。

お父様がクラシック狂とはうらやましいですね~。レコードが山ほどあったんじゃないでしょうか。
私の家族はクラシック好きは誰もいなかったのですが、なぜか嫌いなわけでもないらしく、一緒にこの番組を見てました。もしかしたら、母は芥川氏のファンだったのかも。

芥川氏に関する伝記のような本があって、読みはじめたところですが、彼は外見のソフトさとは裏腹に、意志と行動の人だったような気がします。彼の書いた音楽も、そういうきりっとしたところがありますね。
ラジオでは
yoshimiさん、こんにちわ

芥川氏ですか、大昔、中波の「TBSラジオ」だったと思いますが、『100万人の音楽』と言う毎日曜日の1時間番組に野際陽子氏と共に司会を勤めていました。公開演奏会も行われ、氏の指揮での演奏も聴いたことがあります。

氏の年譜を調べてみたら、映画「八甲田山」の音楽を担当していたのですね。この映画、音楽も中々良かったと思います。
マスメディアに最も多く登場した作曲家でしょう
matsumo様、こんにちは。
コメントありがとうございます。

「100万人の英語」ならぬ、「100万人の音楽」というタイトルが面白いですね。私はラジオはFMくらいしか聴いたことがないので、この番組は知りませんでした。
他にもラジオでは「音楽クラブ」等の番組に出演していたということなので、彼の話し方も内容もわかりやすいですし、こういう番組の司会には向いていたのでしょう。

調べてみると、主要作品だけでも100本以上の映画音楽を作っていますね。
「八甲田山」の音楽は、「芥川也寸志forever」という追悼アルバムに収録されています。このアルバムは近々入手する予定です。
「芥川也寸志 その芸術と行動」という本があって、読み始めたところですが、彼の映画音楽に関する小論を秋山邦晴氏が書いています。ちらっと読みましたが、面白そうな小論です。
祖国の山河
ムジカさん、私は音楽音痴で何も知らないけど芥川也寸志のこと、ちょっとだけ、思い出の中で今でも生き生きと歌ってる曲があります。
也寸志さんは、うたごえ運動にも熱心に参加されており、当時大学生だった私は学生運動の大きな渦に無関係ではいられなかった・・・
そんな中で芥川也寸志作曲の「祖国の山河」・・晴れ晴れとした青空に平和の鳩が・・・という歌詞はっきりおぼえています。
掲示板でも書いたことあるけどお父さんの龍之介は私の卒業論文でまじめに向かい合った人です。
この投稿はだいぶん前の記事のコメント欄だからムジカさん気が付いてくれないかもね?それでもいいですよ。。。
彼は”行動の人”でした
ゆりさん、こんにちは。

今日は随分調子が悪いようですね。このところお天気が安定していなかったからでしょうか。今日は晴れているので、外に出てみられたら、少しは気分転換になりませんか。

ホームベーカリーにおまかせ~の食パンだけでなく、少し成型が必要なベーグルとか、少し手間をかけるパンを作ってみるのも、あれこれ作業が増えて耳鳴りから気がそれやすくなるのでおすすめです。
私はタイカレーとナンのセットが好きなので、両方とも自家製です。ナンはとても簡単で美味しいですよ。

コメントは、どの記事に書かれていても、すぐにメールで私に通知されますし、管理画面のコメント欄でも、一番上に表示されるので見落とすことはありません。古い記事でも気にせずコメントしてくださいね。

芥川也寸志氏といえば、黒柳さんと一緒に出ていたNHKの「音楽の広場」をすぐに思い出します。
彼の伝記を読むと、ロシアへ単独渡航したり、クラシックを普及させるため音楽活動も活発でした。その「うたごえ運動」にも熱心だったのはすぐにわかります。
彼は外見はとても紳士で穏やかな人という印象なのですが、本当は強い意志と情熱を持った”行動の人”なのだと思います。

「祖国の山河に」はニコ動にありました。(聴くにはユーザー登録が必要です) 
いかにも、労働歌という雰囲気ですね。戦後復興後の明るさを感じます。
「ぼくらの町を世界の国を~」以下のサビの部分は、私も聴いたことがありますよ。
http://www.nicovideo.jp/watch/nm4215788

龍之介の方は文庫本をいくつか持ってますけど、彼のシニカルなところは昔から好きでした。
特に古典的な話が好きだったので、小さい子供の頃には”杜子春 ”や”蜘蛛の糸”などを読みましたが、この年になってくると、毒が効いているアフォリズムが含蓄深く感じられます。
箴言集というタイプの文章が昔から好きで、これは海外の作家のものをいくつか持ってますが、ビアスの「悪魔の辞典」はなかなかの傑作です。
「祖国の山河に」と龍之介のことなど
ムジカさんニコ動の貼り付けありがとうございました。さっそく登録したのですが不手際があったのかメールが着信しません。昨日は疲れていましたので今日もう一度登録してみます。也寸志さんの「祖国の山河に」はとても懐かしく是非聴いてみたいです。確か最後の歌詞は「しっかりがっちり肩を組もう!」でした。
今の世界情勢はあの頃に比べるとかなり変遷していますが、也寸志さんのヒューマンな心意気は今でも大切にしたいと思います。

龍之介の私の卒論は当時の教授連にも人気があって、評価が高かったのです。取り戻せるものなら返してほしいです。一生に一度の全力投球の論文でしたよ。
龍之介の中期「地獄変」など芸術至上主義的傾向から最晩年(1927年)の
一連の短編作品群「或る阿呆の一生」「河童」「歯車」「玄鶴山房」「侏儒の言葉」等々、鋭いアフォリズムその中に人間の真実がちりばめられている・・その作品分析と・・・・それに加えてその頃台頭してきたプロレタリア文学の影響・・・宮本賢治「敗北の文学」の論評をしたり、劇団民芸でみた「炎の人ゴッホ」にも関連付けたり勝手気ままな論文でしたが(面白い)と人気がありました。
思えば幸せな青春時代でした。

「悪魔の辞典」おもしろそうです。また、読みますね。

「祖国の山河に」ありがとう。
ただいまニコ動の着信メールが届き、なつかしい「祖国の山河」聴くこと出来ました。感激です。
芥川龍之介論、読んでみたいです
ゆりさん、こんにちは。

ニコ動、ちゃんと聴くことができて良かったですね~。

ちなみに、「祖国の山河に」の歌詞と、曲だけのMIDI音源はこちらで確認できます。
http://www.utagoekissa.com/sokokunosangani.html
MIDI音源も面白いですが、やっぱり歌付きは当時の雰囲気までよく伝わってくるかのようです。

芥川龍之介論、渾身の論文ですね!
芸術家は作家に限らず、作曲家・画家とも作風が変遷していきますが、それを時代背景・作家自身の内面世界の変化と関連づけていくのは、推理小説の謎ときみたいで、スリリングだと思います。
卒論は、大学図書館にずっと所蔵しているはずなので、コピーできるのではないでしょうか。
論文を印刷せずにそのまま綴じていたら、原稿用紙で何百枚もコピーするのも大変そうですが...。機会があれば、読ませていただきたいです~。

私の卒論といえば、「ポピュラーフィクションに見られる社会的価値観の変遷」とかいうテーマの社会学論文でした。
当時いろいろゴタゴタがあって、論文に集中できず、内容は思い出したくない..という出来でしたね~。書き直すように言われたとしたら、違うテーマにするでしょう。


話は変わりますが、米国の耳鳴関連治験情報リストを作成しました。今日の夕方にブログに載せる予定です。
リストを見て、興味がある治験があれば、その概要が米国政府のホームページで閲覧できます。(全て英語ですが)
概要を見て新しい治療方法がわかる...というわけでもないでしょうが、参考資料・情報収集のために作ってみました。
私もまだゆっくり目を通していないので、興味のあるものがあれば少しずつ読んでみようと思います。
耳鳴関連治験情報リスト読んでみたいです!
英語は辞書引きながらでしたら、どうにか読めます。
構文は分かるのですが、単語力があきまへん!

ムジカさんが掲示板に戻って下さったら、事は簡単なのですが。
みなさん、情報を欲しがっておられると思います。
リストがあれば便利だと思います
ゆり さん、こんにちは。

米国のデータベースを使えば、誰でも治験情報が入手できます。
耳鳴り関係の情報だけ抽出してリスト化しておくと、一覧性があるので、索引がわりに使えて便利だと思います。

私もゆりさんと一緒で、構文はわかりますが、専門用語の単語はわかりません。
まず、この分野の日本語文献を大量に読みこなすことが先で、そうすれば英語文献の用語や使い方がわかるようになると思います。
他の分野も同じことで、日本語で学術用語やテクニカルタームが使いこなせないと、英文を訳してもわけのわからない不自然な文章になります。
ずっと以前、知覚関係の論文を英訳してデータベースを構築する仕事を受託したことがあって、そう思いました。このときは日本語文献も数百件と大量に読んで、日本語論文DBも作りました。

たとえ文字として訳せても、その情報を適切に解釈して、有効性を判断する方がいないと、間違った方向に思い込む可能性があります。(専門家が読めば価値のない情報なのに、素人は何か有用な情報だと思い込むとか...)
大雑把な訳文なら作れないこともないでしょうが、かなりの時間と労力がかかりますし、そういうことも考えると躊躇するものがありますね。
それでも、解説・評価つきで比較的内容が簡単な文献とか、個人的に興味のあるものは、参考情報として載せようとは思いますが。
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プロフィール

yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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