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伊福部昭 『協奏三題』 より ~ ピアノと管弦楽のためのリトミカ・オスティナータ
伊福部昭といえば「ゴジラ」などの映画音楽が有名。(そればかりがやたらに有名な気もするけど)
彼は純然たるクラシック作品も多数残していて、特に管弦楽曲に素晴らしいものがある。
協奏曲もピアノ、ヴァイオリン、筝をソロに入れた曲をいくつか書いていて、『協奏三題』には、「ピアノと管弦楽のためのリトミカ・オスティナータ」、「ヴァイオリンと管弦楽のための協奏風狂詩曲(ヴァイオリン協奏曲第1番)」、「二十絃箏とオーケストラのための交響的エグログ」が収録されている。
いずれも井上道義指揮東京交響楽団の演奏による1983年2月10日のライブ録音。この3曲を一度にコンサートで演奏したということはかなりヘビーなプログラム。

伊福部昭:協奏三題伊福部昭:協奏三題
(1996/05/25)
東京交響楽団

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これはすでに廃盤。オークションでたまに出ているのを見かける。

伊福部作品で最も好きな曲は「ピアノと管弦楽のためのリトミカ・オスティナータ」。個人的には彼の最高傑作(の一つ)ではないかと思うほどに凄い曲です。
この盤以外で入手可能な録音は次の3種類がある。

『現代日本の音楽名盤選(5)』(Victor):若杉弘指揮読売日本交響楽団、小林仁(ピアノ)[1971年1月録音]
この曲のベストといわれる評価の高い演奏。聴いてみれば、この評価が正当なものであることがすぐにわかるほどに素晴らしい。
これは2日間かけてセッション録音している。テンポはこのライブ盤よりも2分ほど遅く(21分台前半)がこれは緩徐部分のテンポの違いが大きい。それ以外はテンポは両盤ともほとんど変わらないと思う。
この速いテンポでも、アンサンブルがピシっと綺麗に揃い、ピアノも正確な力強い打鍵でミスのないシャープな演奏である。これを聴いてしまうと、なかなか他の演奏は聴きづらいものがある。

『日本作曲家選輯 Vol.11』(NAXOS):ドミトリ・ヤブロンスキー指揮ロシア・フィルハーモニー管弦楽団、エカテリーナ・サランツェヴァ(ピアノ)[2004年5月録音」
演奏時間は21分台前半とそれほど長いというわけではないが、これは緩徐部分のテンポが速いため。全体的にテンポはかなり遅い。リズム感も鈍く、変拍子が多いのでアンサンブルも時々かなり乱れていて、緊迫感と勢いに欠ける。日本人の精度の高い演奏に慣れ親しんでいると、これはちょっと聴けないものがある。
といっても、初めて聴いたリトミカがこのCDの演奏だったので、それでも充分感動ものだった。廉価盤だし入手しやすいので、曲を知ってもらうためにはとても良い盤。でも、リトミカは日本人の演奏家による凄い演奏がいくつかあるので、そちらも聴いて欲しいと強く思います。

『伊福部昭ピアノ作品集 第1集/山田令子』(ゼール音楽事務所):早川正昭指揮栃木県交響楽団、山田令子(ピアノ)[2006年6月録音]
これは新譜なので未聴。アマチュアのオケが伴奏しているが、この曲はプロオケでもかなり難かしい曲なので、大丈夫なんだろうかと気になるところ。


『協奏三題』に収録されている演奏は全てライブ録音。
このリトミカが演奏会のプログラムに載るのはそう度々あることではないし、それをライブ録音として残すのはかなり厳しい。
ピアノを打楽器的に使う奏法がかなり多い上に、テンポが非常に速く、かなりの腕力と体力が必要。その上、変拍子があちこちに入っているので、オケと拍子・リズムをピタッとあわせるのも厄介。
ピアノは藤井一興。メシアンや武満徹などを得意とするピアニストというイメージがあったので、こういうパワフルさが要求される曲を弾くには、イメージがちょっと合わないので大丈夫なんだろうかという気はしていたけれど...。
彼はペダルを上手く使っているので、ピアノの響きはとても綺麗だけれど、タッチに柔らかさがあるので力強い鋭さがやや足らない気がする。終盤ではミスタッチや疲れも見えてかなり苦しいところがあるが、それでも最後までなんとか弾き切ってはいる。

ライブなので、リハーサルよりもテンポが上がっているかもしれないし、この速いテンポで大きなミスなく弾くのは、もうほとんど体力勝負に近い。それを考えると、よく最後まで弾き終えたと言えるかもしれない。
完成度の高い実演を録音として残すなら、もう少しテンポを落とせばまだ良かったかもしれないが、そうなると勢いがそがれるだろうから指揮者もテンポは緩められないし、それでなくてもこの曲自体が勢いを持っているので、どちらにしても止めるに止められなかったんじゃないかと思う.。

「ピアノと管弦楽のためのリトミカ・オスティナータ」
伊福部昭自身の解説がブックレットに掲載されている。
「リトミカ・オスティナータ」とは、執拗に反復される律動という意です。作者が嘗て中国に遊んだ時、小さな仏像が四方の壁全面に嵌め込まれている堂を見て、その異様な迫力に深い感動を覚えたことがあります。そのことが、この作品の構成のヒントとなっています。一方、吾が国の伝統音楽の律動は2と4等の偶数で出来ていますが、不思議なことに韻文では5と7が基礎となっています。この作品では、この韻文のもつ奇数律動を主体としました。又、施法としては伝統音階に近い六音音階(ヘクサトニック)を用いましたが、これ等三つの要素の統合によって、アジア的な生命力の喚起を試みたものです。」

リトミカの冒頭は、ゆったりとしたホルンの音で始まり、ピアノが入ってくるとすぐに加速し、オケが徐々に加わって、戦闘態勢に入ったかのような荒々しく激しいリズムと旋律が怒涛のように押し寄せる。
やや陰鬱さのある旋律に、独特のリズムや拍子が加わり、時折バックで鳴るハープが場違いなほどに華麗で、ちょっとだけゴジラのモチーフも出てきたりする。
ピアノパートは、バルトークのピアノ協奏曲のように打楽器的に使われているので、フォルテで弾き続けるにはかなりの体力がいる。さらに、頻繁に拍子が変わり、ピアノとオケの拍子とリズムをぴったりと合わせるのも難しい。
中間部に入ると、ゆったりとしたテンポで、エキゾチックでしっとりとしたアジア的抒情を感じさせる旋律。とてもストイックな美しさが貫徹し、まるで仏教寺院の中に佇んでいる時に感じられるような宗教的な荘厳さと厳粛さ。
最後は再び力強いオスティナートの連続。高揚感と盛り上がりが素晴らしい。

「リトミカ・オスティナータ」には、中国で見た仏像から着想したせいか、日本という狭い枠を超えてアジア的な風土が感じられるし、曼荼羅的なものを想起させる気がする。
作曲家自身が「吾々の内にある集合無意識の顕現を意図」したと言っていたそうで、人間の中に潜んでいる原始的な力を呼び覚まし、湧き上がらせようとするかのような凄さのある曲だと思う。

tag : 伊福部昭

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“伊福部昭 ピアノ作品集”の リトミカ 是非 お聴き下さい!
伊福部昭ピアノ作品集
コメントくださった方、どうもありがとうございます。

“伊福部昭 ピアノ作品集”はまだ聴いていないのですが、ピアノ・ソロと室内楽曲もたくさん収録されていますし、女性ピアニストが弾くリトミカは聴いたことがないので、聴いてみたいと思っています。

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Author:yoshimi
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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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