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ピアノ編曲版 バッハ/G線上のアリア
バッハの管弦楽組曲第3番の「G線上のアリア」は、チェロ&ピアノやピアノ独奏でも良く演奏されている。ピアノ独奏用の簡単な編曲なら、日本の楽譜出版社からいくらでも出ているが、この類の編曲は、一応はメロディラインは追えていても、あまりに音が少なく響きがスカスカになるものが多い。
趣味的に弾くための楽譜なので、そんなに難しい編曲をしたら弾けないだろうから無理はないとはいえ、もう少し凝った編曲版がないかを探すと、やっぱりありました。

IMSLPのサイトのJ.S.BACHの作品一覧の”Suites (Overtures) for Orchestra, BWV 1066-1069 (Bach, Johann Sebastian)”を見ると、原曲のスコアに加えて、<Transcriptions, Arrangements>の楽譜が列記されている。
”Suite (Overture) No. 3 in D, BWV 1068 - transcription for piano”には、ジュゼッペ・マルトゥッチ(Giuseppe Martucci) とアレクサンドル・シロティ(Alexander Siloti)による2種類の編曲版があるが、シロティの方は何らかの事情で楽譜が削除されている。(たぶんUSとEUではパブリック・ドメインになっていないからだと思う。)

マルトゥッチ編曲版
編曲者ジュゼッペ・マルトゥッチは、1856年生(1909年没)のイタリアの作曲家、指揮者、ピアニストで、作曲した作品も残っている。
管弦楽作品には交響曲第1番・第2番、ピアノ協奏曲第1番など。ピアノ協奏曲第1番はブラームスやショパンを想起させるところがある。

マルトゥッチ編曲版の楽譜のダウンロードはこちら。第2曲「Air」が「G線上のアリア」になる。

この編曲版は2頁しかないけれど、左手は常にオクターヴ奏法で移動し、そのうえ1オクターヴ以上の連続した装飾音[C~(1オクターヴ飛んで)~C~(さらに1オクターヴ以上飛んで~E、とか]があちこちにくっつき、右手の旋律も2声~3声に分かれていて、弾くのに苦労しそうな曲である。

マルトゥッチ編曲版による録音はituneでは見つからず。
ピアノで弾くときはアンコールピースとかポピュラーピアノ的に弾かれてしまう曲なので、こういう凝った編曲版はあまり演奏されないのでしょう。


ジロティ編曲版
もう一人の編曲者シロティは、ロシアのピアニスト・指揮者・作曲家・編曲家。フランツ・リストの最後の高弟の一人で、セルゲイ・ラフマニノフの従兄としても知られているそうだ。彼はピアニストや編曲者としては結構評価されていたらしい。

シロティ編曲版による演奏の録音を探すと、Hyperion盤のヘイミッシュ・ミルン(Hamish Milne)の「Bach Piano Transcriptions, Vol. 5: Russian Transcriptions」というアルバムに収録されている。
ミルンは1970年代から録音しているメトネル作品で有名なロシアのピアニスト。
”ピアノ王国”のHyperionからリリースしているということは、腕は確かに違いないので安心して聴ける。

ミルンが弾く「G線上のアリア」は、マルトゥッチ版と似たような編曲だけど、装飾音がかなり少ないので、ずっと弾きやすそう。シロティは、ブゾーニが編曲したバッハの「シャコンヌ」をさらに編曲して、”軽量化”したくらいなので、技巧や響きの厚みに凝る編曲はしなかったみたい。
それでも、巷のポピュラーピアノ版のシンプルな編曲に比べて、聴こえてくる響きも多くて膨らみがある。ミルンのタッチは柔らかく、ピアノの音色と響きが豊かで深みがあって、本当にとても綺麗な音がする。管弦楽版よりも音の厚みと色彩感が薄いので、透明感があるし、どこかしら暖かみを感じさせるアリアになっている。
ピアノ・ソロで「G線上のアリア」を聴くなら、これはとても良い編曲と演奏だと思う。

シロティ版の楽譜がIMSLPには登録されていないのが難点だけれど、ミルンの演奏の録音を参考にして、マルトゥッチ版の装飾音をところどころはしょって弾けば、シロティの編曲に近いものになるかもしれない。

この録音はHMVとituneのサイトで試聴可能。ituneならダウンロードできるので、私は早速ダウンロードしました。
あまりに良い曲だし、それにピアノの音がとても綺麗なので、もう数え切れないくらい聴いている気がする。何度聴いても飽きることがないのは、演奏の良さもあるけれど、やはりこの曲自体が素晴らしいからなんでしょう。

Bach Piano Transcriptions, Vol. 5: Russian TranscriptionsBach Piano Transcriptions, Vol. 5: Russian Transcriptions
(2005/06/14)
Hamish Milne

試聴する(hyperionサイト)

tag : バッハ ジロティ

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(非公開コメント受付中)

こんにちは。

G線上のアリアは大好きな曲です。
管弦楽組曲のスコアを持っていますが、マルトゥッチ編曲の楽譜と見比べたところ、この編曲の装飾音の多さに驚いています。

この編曲で聞いたことはありませんが、ロマンチックなバッハになるのかなと思ったりします。
とてもロマンティックなバッハです
よんちゃん様、こんにちは。

「G線上のアリア」は何度聴いても、良い曲ですね。管弦楽版ではケーゲルが東京ライブでアンコールに演奏したCDを持っていますが、このアリアだけ聴いても(というか、アリアが目的で買ったのですが)、値打ちがあるくらいに良い演奏でした。

マルトゥッチ編曲版はたしかに装飾音が多いので、響きに層が増えて厚みが増しますね。多すぎるような気もしないではないですが...。
2回ほど弾いてみましたが、音がかなり離れていて、楽譜見ながらではちゃんと弾けないので、暗譜した方が良さそうです。

ジロティ版の方が装飾音が少ないのですっきりとした感じがして、これはこれで良い編曲だと思います。ミルンのピアノで聴いても、かなりロマンティックでした。
No title
貴重なひとときの教科書でした。ありがとうございます。
私はただ「G線上のアリア」を耳にし、その音色に浸っています。
気が付いたら空が暮色になっているなんていうことも少なくありません。
楽器を奏でられたらどんなにEでしょう!

緑の息吹に惹かれてついおしゃべりをしてしまいました!
どの楽器で聴いても素敵な曲です
長嶺志壽代様、はじめまして。
ご訪問、コメントどうもありがとうございます。

G線上のアリアは、もともと曲が素晴らしいせいで、、どのバージョンで聴いても素敵です。
>気が付いたら空が暮色になっているなんていうことも少なくありません。
本当にそうですね~。この曲を聴いていると、時間が経つのも忘れてしまいます。

チェロ&ピアノ版や古楽器演奏について書いたことがあります。
どちらのバージョンも良いですよ。お時間のあるときにでも聴いてみてください。
http://kimamalove.blog94.fc2.com/blog-entry-1810.html

楽器が弾ければ、それはそれで楽しいですね。
大人になってから練習しても、とりあえず弾けるようにはなるようです。
《G線上のアリア》なら、シンプルなものから複雑なものまで、編曲がいろいろありますから、目標にするには良い曲ではないかという気がします。

でも、自分の演奏で感動することはないので(曲がいいな~と思うことはありますが)、やっぱりじっくりと曲を味わえるのは、プロのピアニストやオーケストラの演奏です。
No title
お返事ありがとうございます。チェロは大好きです。
カザルスはCDで、ヨーヨーマのは何度かサントリーホールにて聴き陶酔。
でもこのチェロとても素晴らしい!何か胸が締め付けられます。
また遠い日を思い起こさせます。なんだかここから動けなくなりそう…。
チェロの音、綺麗ですね
長嶺志壽代さま、こんにちは。

チェロに限らないとは思いますが、ヨーヨーマの演奏をホールで聴くと、CDと実演ではチェロの音はかなり違うのでしょうね。

Youtubeの演奏は長谷川陽子さんです。
チェロの音も良いですが、やはり曲自体の良さが、チェロの深い音色と歌いまわしの美しさを一層強めているように感じます。

チェロの音なら、どちらかというと軽やかな方が好きなので、よく聴くのはイッサーリスとウィスペルウェイです。
特にウェスペルウェイのチェロの音色は透明感があって、すっと中空に消えていくような軽さが気に入っています。

Fugueの編曲他の感想
Bach Piano Transcriptions, Vol. 5: Russian Transcriptionsを試聴していて、良く聞いたことがある曲が幾つかあることに気づきました。
その内のいくつかをピックアップしました。

2. : II. Fugue (arr. Alexander Goedicke)
6. : II. Fugue (arr. Alexander Goedicke)
僕としては、最近ほんと良く聞く曲の1つ「フーガ」ですが、曲名が同じなのに、少し感じが違うし演奏時間も違う。自分としては、6番目の方が聞きやすいし、好きです。
7. : Suite orchestrale n° 3, BWV 1068 (arr. Alexander Siloti)
  これは、特にCDでなくとも有名な曲なのでその他の場所でも良く聞きます。落ち着いていて、安心感のある曲だと思います。
8. : Sonate pour violon en fa mineur, BWV 1018 (arr. Alexander Siloti)
ほとんど聞いたことが無いと思うけど、柔らかい感じで聞きやすい。
9. : Fugue en ut mineur, BWV 575 ((arr. Alexander Goedicke)
この「フーガ」もゆったりとしたリズムで、柔らかい感じがしますね。
10. : Sonate pour violon solo, BWV 1003 (arr. Alexander Siloti)
この曲も良く聞いているのだと思うのだけれど、編曲やBWVの番号が違うので感じが少し違う。
7番目から10番目ぐらいまでと12番目は、全体的に柔らかくゆったりとした感じで、少し気力が落ちている時に聞くのが合うような気がします。

13:I. Toccata (arr. Dimitri Kabalevsky)
力強い響きで、エネルギーが湧いて来そう。これも、他に同じような旋律の曲を聞いたことがあります。
14. : II. Fugue (arr. Dimitri Kabalevsky)
「フーガ」も、ほんと色々な編曲があるのだなあーっとつくづく思いました。僕はどちらかというと、力強い響きのある「フーガ」が好みです。

今朝はなんとなく気が緩み、頭もぼーっとしているせいか、気分も今一つです。きっともう少し緊張感が出てきた頃に聞き直すと、もっといいかもしれません。自分、好みのアレンジのアルバムだと思いました。
ロシア人によるバッハ編曲
アメーバの友さん、こんにちは。

このアルバムの紹介・曲名は、HMVのサイトに載ってます。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1076886

ロシア人の編曲したバッハ作品はあまり有名ではありません。
ただし、ゴドフスキーの編曲ものは超絶技巧的で有名ですし、ラフマニノフも編曲していますが、これには入っていませんね。
このアルバムでかなり有名な編曲者は、ジロティでしょう。どれも和声の響きが美しくてロマンティックな編曲ですが、あまり印象が強くはありません。
原曲はそのジャンルでは有名なのかもしれませんが、ピアノ編曲版としてはあまり知られていない曲が多いです。

このアルバムは、原曲・編曲ともあまり馴染みのない作品が多くて、私が確実に全曲聴いたことがあるのは、半分くらい。
それ以外の曲でも、主題旋律を断片的に知っているものが意外にありました。

「前奏曲とフーガ」はもともと何曲もあり、どれも曲想・雰囲気が似通ったところがあります。

>7. : Suite orchestrale n° 3, BWV 1068 (arr. Alexander Siloti)
管弦楽組曲第3番ニ長調より《アリア》=「G線上のアリア」。言うまでもなく、超有名な曲です。

>8. : Sonate pour violon en fa mineur, BWV 1018 (arr. Alexander Siloti)
これは、ヴァイオリン・ソナタ第5番ヘ短調 BWV1018の《アダージョ》。
編曲版は珍しいです。そう悪くはないとは思いますが、色彩感とメリハリが薄くてぼや~としてます。
ヴァイオリンソナタは好きな曲ですし、聴くなら原曲の方がずっと良いですよ。

>10. : Sonate pour violon solo, BWV 1003 (arr. Alexander Siloti)
無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番イ短調 BWV1003より《アンダンテ》。
ヴァイオリニストのF.P.ツィンマーマンが、アンコールでよく弾いている曲です。
ピアノ編曲版も良いですね。でも、やはり原曲にはかないません。

>13:I. Toccata (arr. Dimitri Kabalevsky)
>力強い響きで、エネルギーが湧いて来そう。これも、他に同じような旋律の曲を聞いたことがあります。
オルガン曲の「トッカータとフーガ」なら、<ニ短調BWV565>が有名です。
トッカータは、この曲に限らず、どれも緊張感のある曲です。

他に有名なのは、12. : Siciano (arr. Alexander Siloti)
フルート・ソナタ変ホ長調BWV1031の《シシリアーノ》が原曲。
原曲・編曲とも有名ですが、ピアノ編曲はケンプ版が知られています。
ロシア人の編曲ものというと
Yoshimiさん、こんにちは。

解説ありがとうございました。
ロシア人の編曲だったのですね。
コメント頂いてから、原曲の方をもっと良く聞き込んで見たいと思った次第です。なんせ僕は当初から、編曲の方ばかりを聞いているように思いました。ところで、原曲って・・・
お恥ずかしい限りです。
原曲と編曲
アメーバの友さん、こんにちは。

編曲者によって編曲がかなり違うので、編曲者は必ずチェックする習慣がついています。

原曲については、私も全てを聴いているわけではありません。
特にカンタータは聴きません。バッハの合唱作品はあまり好きではないので。
「前奏曲とフーガ」「前奏曲」「トッカータとフーガ」は、原曲はオルガン曲でしょう。元々オルガン演奏が好きではないので原曲もあまり知りませんが、時々原曲を確認するために聴くことはあります。

原曲のなかでは、「G線上のアリア」、「無伴奏ヴァイオリンソナタ第2番」が特に有名ですね。
「フルートソナタ」は、《シシリアーノ》のおかげで知られているような気がします。
「ヴァイオリンソナタ」は、無伴奏の方があまりに有名なので、ピアノ伴奏付きのこの曲集の方はあまり聴かれていないでしょう。私はピアノが入っているので、無伴奏よりも好きですが。

「原曲」を知っているに越したことはないでしょうが、そんなに堅苦しく考える必要もないと思います。
原曲よりも編曲版の方が有名になって、編曲が原曲と思い込まれたり、定着してしまうこともありますし、ピアノ演奏は聴いてもオルガンや合唱は全然聴かない人も少なくありません。
専門家でもないので、何でも知る必要はありませんから、編曲が気に入ったら、気が向いたときに原曲も聴いてみられれば良いと思います。
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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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