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スーク&カッチェン ~ ブラームス/ヴァイオリン・ソナタ第1番 《雨の歌》
今朝見た夢は、ちょっと変わっていたけど楽しい夢。
なぜか私が、とある野外コンサートで演奏することになっている。夜の9時からの予定(どうしてこんなに遅い時間なんだろう?)が10時に変更になったとか、夢にしてはなかなか細かい設定。
で、何を誰と演奏するかというと、ブラームスのヴァイオリン・ソナタ(何番かは忘れた)をなぜかカッチェンと私で演奏することになっている。
夢の中でも、カッチェンは当然ピアノを弾くに違いないが、私はピアノは弾けるけれどヴァイオリンは弾けない。一体誰がヴァイオリンを弾くの???

私の見る夢はだいだい辻褄が合わないし、いつも都合よく展開してくれる。
このストーリーだと、たぶん、突如、私がヴァイオリンを弾けるようになっているはず。それとも2台のピアノ版で弾くかも。(そんなバージョンの楽譜はもちろんありません。)
たまに見るピアノがらみの夢の中では、弾いたこともないコンチェルトをコンサートで弾いていたりする。でも、たいてい途中で暗譜を忘れて、頭が真っ白になったりしたところで、眼が醒めるけど。
今回は結局、演奏する前に眼が醒めてしまった。夢の中とはいえ、せっかくカッチェンと一緒に演奏するチャンスだったのに、とても残念。でも、映像で見たとおりの姿で、カッチェンがちゃんと夢の中に出てきました。

どうしてこの夢を見たかというと、お昼間と眠る直前に、スーク&カッチェンのブラームスのヴァイオリン・ソナタ全集を聴いていたのが、しっかり記憶に残っていたせいに違いない。
睡眠中に記憶がデフラグされるのだという話を聴いたことがある。脳がデフラグしていた時に、記憶の断片が夢になって出てきたらしい。
Violin Sonatas: Decca LegendsViolin Sonatas: Decca Legends
(2001/02/06)
Josef Suk, Julius Katchen

試聴ファイル



ブラームス/ヴァイオリン・ソナタ第1番 《雨の歌》(1849年) [楽譜ダウンロード(IMSLP)]

「雨の歌」という副題はブラームス自身がつけたのではなく、第3楽章の冒頭の旋律が歌曲「雨の歌」から引用されていることからつけられた通称のようなもの。なので、特に「雨」について歌った曲ではないと言われている。
この曲に関するエピソードが、ブログ『ブラームスの辞書』の”天国に持って行きたい””緩徐楽章の回想”という記事に書かれている。第2楽章にブラームスが託した意味や、第3楽章のメロディに引用された歌曲「雨の歌」とクララ・シューマンとの関わりなど、CDの解説には載っていなかった話が紹介されている。とても勉強になりました。
確かに「雨」について歌った歌ではないけれど、やはり「雨の歌」の歌詞は、この曲に込められた意味や感情にちゃんとつながっている。

ブラームスのヴァイオリン・ソナタは、シェリング&ルービンシュタイン盤を初めて聴いて以来それが定番。でも、このスーク&カッチェンの弾くブラームスは、それとは趣きが違っていて、私はこちらの方がとても気に入ってしまった。

ブラームスのヴァイオリンソナタは、ヴァイオリンは旋律・分散和音主体で旋律を朗々と歌うのに対して、ピアノはかなり響きに厚みがあって凝った書き方になっているそうで、気をつけないとピアノがどうしても目立ちがちになる。
シェリング&ルービンシュタイン盤を聴いている時は、あの激情的な迫力のある第3番は良いんだけど(ピアノがあちこちで前面に出てきているような気がするが)、第1番の「雨の歌」になると響きが重くて、ピアノの音量も大きくて、結構うるさいと感じるところがある。
雨に喩えて言えば、ああ梅雨だな~、空もどんよりして鬱陶しいな~、という感じ。私がこの第1番のソナタがあまり好きではなかったのは、この重たさのせいじゃないかと思う。

スーク&カッチェンの全集は、カッチェンが亡くなる2年前の1967年録音。カッチェンのピアノは、1960年代後半はかなり演奏の内容が深化して、弱音のタッチや響きが繊細になっていった時期。このヴァイオリン・ソナタ全集もその時期の録音なので、その頃のカッチェンのピアノの弾き方の特徴が良く出ている。


第1番から順番に聴き始めたけれど、「雨の歌」は冒頭から柔らかで美しい響きと優しげな雰囲気。
スークとカッチェンが弾く「雨の歌」は、軽やかで繊細さがあるので、ふと外を見るとパラパラと小雨が降っていて、時々強く降ったりしたりもするけれど、それでも空は明るくて爽やか。
ちょっと雨の音を聴きながら、物想いにふけっているような穏やかさがあって、うっとりと聴いてしまう。


第1楽章でヴァイオリンが弾く旋律がとてもメロディアス。冒頭の旋律は1度聴いたら忘れられない。とても明るくて軽やかだけれ、時々切々と感情を訴えるように高ぶるところもあり、この第1楽章は何度聴いても美しい。
ピアノは分散和音主体で線が細くてどことなく儚げな響き。それでも、結構起伏がいろいろある楽章なので、カッチェンのピアノの音の美しさや表現の繊細さは、この第1楽章で一番良く味わえる。
スークのヴァイオリンを聴いたのはこれが初めて。美音で有名なスークのヴァイオリンは、朗々と歌うけれど情緒的にはならない品のよさ。音は引き締まってはいるけれど深みも暖かみもあって、とても美しい音がする。他の曲の演奏まで聴きたくなってきてしまう。

Josef Suk,J. Katchen,Brahms Violin Sonata G-major 1


第2楽章は冒頭こそ穏やかな旋律で始まるけれど、やがてピアノがやや行進曲風な伴奏になって、やや得たいの知れない何かが迫ってくるような雰囲気。ピアノの低音のぼやけた響きが、沈鬱な心や不安な気持ちを表しているかのように聴こえてくる。

第3楽章は、ブラームス自作の歌曲「雨の歌」の旋律をモチーフにしている。速いテンポで軽快な曲だけれど、哀しい気持ちで満たされているような曲。ヴァイオリンが朗々と流れるように主旋律を弾いていて、これがとても哀しげ。
ピアノの方は、かき乱されている感情をあらわすかのように、高音域と低音域の間で右手が細かいパッセージの上昇下降を繰り返している。隣接する音の開き自体は少ないので、心のなかで細波が絶えず打ち寄せているような感じ。同音連打が多いけれど、囁くような弱音でとても軽やかに弾いている。
冒頭は短調で始まっているけれど、最後に近づくととても穏やかな長調に転調していて、心が癒されたかのように終わっている。

まだ若かったこの頃(といっても38歳くらい)のスークのヴァイオリンは、豊潤な響きではなくてちょっと線が細いが気がするけれど、澄んだ響きと細かいニュアンスに落ち着いた品の良さを感じさせる美しさ。
カッチェンのピアノは、ブラームスのピアノ曲全集を録音した時とは違って、ほの暗い翳りが少ない音色。とても柔らかで優しく、透明感のある美しい響きに、真珠の粒がコロコロと転がるようなタッチ。第1楽章は、本当にうっとりするくらい夢見るような響きのピアノ。ピアノ独奏の時よりも美しいかもしれないくらい。
スークのヴァイオリンの表情に変化にぴったりと合わせていて、寄り添うようなピアノがとても奥ゆかしい。ピアノが前面に出るべき時はしっかりと出ているけれど、力強くフォルテで弾く時でも、ヴァイオリンと調和させていくような気遣いが感じられたりする。ソロを弾いている時とは大分雰囲気が違っていて、伴奏者としてのカッチェンのピアノもとても良いものです。
スーク&とカッチェンの演奏を聴いていると、ブラームスがこの曲に込めたクララへの思いやりやさりげなく優しい感情が伝わってくる。第1番のソナタがこんなに良い曲だったなんて!とすっかり見直してしまいました。


 ヴァイオリンソナタ第2番の記事

 ヴァイオリンソナタ第3番の記事

 『ジュリアス・カッチェンにまつわるお話』

 ジュリアス・カッチェンのディスコグラフィ

tag : スーク カッチェン ブラームス

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コメントをしたのですが、禁止語に引っかかってしまい、もしやと思ってあれこれやってみ屋のですが、送信ができませんでした。
それでほぼ同じものを、小生のブログの先日コメント頂いた欄に記載します。
申し訳ありませんが、お越しいただきご覧ください。
このブラームスの演奏は素晴らしいですね!
sawyer様、こんにちは。

せっかくお越しいただいたのにすみませんでした。
sawyer様のブログへお伺いして、コメントを読ませていただきました。

この曲が大変お好きなsawyer様からみても、このスーク&カッチェンの演奏は素晴らしいものなのですね!それを伺うと嬉しくなってしまいます。
私はそれほどいろんな演奏は聴いてはおりませんが、この演奏には本当に一目(一聴)惚れしてしまいました。
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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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