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ヤナーチェクの作品 (1) グラゴル・ミサ、弦楽合奏曲
ここのところ、ヤナーチェクの『シンフォニエッタ』について書いたものがやたらに目につくけれど、さすがに村上春樹の『1Q84』の影響力は大したもの。
セル盤が本文中に登場している(らしい。私は読んでません)ので、有名なマッケラス盤と合わせてあちこちで紹介されている。

ヤナーチェクは『シンフォニエッタ』以外にも、いろいろな作風の曲を残している。確かに有名な曲ではあるけれど、必ずしも『シンフォニエッタ』から聴き始めることもないんじゃないかと思う。
ヤナーチェクは室内楽曲とピアノ曲から入ったせいか、世間一般と違って『シンフォニエッタ』はあまり聴かないし、それほど好きという曲ではないので。

作家のミラン・クンデラによれば、ヤナーチェクが自分自身の様式に到達して最も創造力を高めたのは70歳になってから。「彼は70代の時ほど自由だったことはなく、この時期には溢れるようなユーモアと創意が見られる」のだという。
この時期(1920年代)の代表作として、クンデラは『グラゴル・ミサ』、『ヴァイオリンとピアノのためのソナタ』、『チェロとピアノのためのおとぎばなし』、『カプリッチョ』、『コンチェルティーノ』などをあげている。『シンフォニエッタ』は1926年の作品。


 グラゴル・ミサ(1926)
『グラゴル・ミサ』の冒頭の管楽器・打楽器の響きが強烈に印象に残ることは間違いない。スケールの大きさと内容からいっても、この曲がヤナーチェクの代表作。
『グラゴル・ミサ』は、モーツァルトやフォーレのようなよく聴くミサ曲とは違って、チェコの民俗的な薫りがあって、世俗的な雰囲気が濃い感じもする。もともとキリスト教を背景にしたミサ曲には良くわからないものがあるので、かえってこういう地上的なミサ曲の方がずっと入りやすい。

冒頭のIntradaとUvod(Introduction)は、まるで祝祭であるかのように力強く、高揚感のあるオーケストラの演奏。金管、打楽器が多用されているので、力強くドラマティック。ここに限らず、全編にわたって強い緊迫感が漂っている。
第3楽章から合唱が続くが、伴奏が多少は穏やかになったけれど、それでも伴奏・合唱とも力強く生き生きとして躍動感がある。それなのにとても清々しく、ポジティブな雰囲気に満ちてます。
合唱の楽章が終わると、オルガンのソロが力強く締めくくり、最後は冒頭の力強いテーマがオーケストラによって再現されて、賛歌のように高揚して終わります。
ミサ曲というイメージで聴くと聴きやすくはないかもしれないけれど、一度この世界に馴染めればとても聴き応えのある曲です。

この『グラゴル・ミサ』も当然マッケラスが録音している。これはCHANDOS盤。

Janacek: Glagolitic Mass, etc.Janacek: Glagolitic Mass, etc.
(1994/10/25)
デンマーク国立放送合唱団 , デンマーク国立放送交響楽団, ペア・サロ(Organ), チャールズ・マッケラス ,Ulrik Cold , Tina Kiberg , Randi Stene, Peter Svensson

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この曲の代表的録音や作品解説については、An die Musik CD試聴記の<ヤナーチェクの「グラゴルミサ」>がとても詳しいです。

クンデラの評論では、「・・・話言葉研究では、ヤナーチェクの関心は、言語特有のリズムや韻律法ではなく、話すものの瞬間的な心理状態が話されるイントネーションに及ぼす影響にあった。イントネーションと感情と関係の研究により、心理的な明晰さを獲得し、心理的激情が彼の作品全体を特徴づけることになった。それが最も良く現れているのが彼のオペラである。」と書かれている。(オペラは全く肌に合わないジャンルの音楽なので、どうも聴く気にならない...)


 弦楽のための牧歌、弦楽組曲 
『弦楽のための牧歌』『弦楽組曲』は初期の作品。
『シンフォニエッタ』や『グラゴルミサ』を書いた作曲家とは思えないほどロマンティックな作風で、透明な叙情感と瑞々しさがとても美しい。でも、ヤナーチェクらしい様式や独創性が強く感じられるというわけでもない気もする。
『弦楽のための牧歌』の第5曲のAdagioは、映画『存在の耐えられない軽さ』でも流れていたので、とても印象に残っている。静けさに満ちたとても穏やかな曲です。

Divertimento, Idyll Suite for String OrchestraDivertimento, Idyll Suite for String Orchestra
(2000/04/25)
Iona Brown, Norwegian Chamber Orchestra

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初期作品の定盤があるのかよくわからないので、良く聴く演奏家の録音がないときは、NMLでCHANDOSかBIS盤を選ぶことにしている。この演奏は室内管弦楽団が演奏しているせいか、響きが薄めでわりと透明感があって軽やか。

<関連記事>
「ヤナーチェクの作品 (2) ピアノ独奏曲、室内楽曲」
「ヤナーチェクの作品 (3) 映画 『存在の耐えられない軽さ』、クンデラ 『裏切られた遺言』

tag : ヤナーチェク

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好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

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