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シュニトケとアニメーション音楽 (2) Butterfly,Ballerina on a Boat,Armoire,Pencil and Erase,他
シュニトケが作曲したアニメーション音楽のうち、”The Grass Harmonica(グラス・ハーモニカ)”についてはこの前書いたので、今回は残りのアニメーション音楽についてまとめたもの。

アニメといっても、画風、ストーリーにバラエティがあり、中には芸術性の高い作品もある上に、シュニトケも古典的な調性のあるものから前衛的な無調の音楽まで、作品・シーンに合わせてタイプの異なる音楽をつけている。
これを全部見聴きするのは結構ハードなものがある。何本もアニメを見ていると、日本のアニメとは違ったロシア・アニメのレベルの高さを実感。
特に印象に残ったのは、”グラス・ハーモニカ”と”Butterfly(蝶々)”。

”グラス・ハーモニカ”は、物語性が強くて作者のメッセージもわかりやすく、絵も美しい。
シュニトケの音楽も、構成的がしっかりしていて、この音楽だけを聴いていても、一つの作品になっているようなまとまりがある。

”蝶々”の絵は、幻想性とリアリティで群を抜いているが、ストーリーはやや抽象的なメッセージ。サイケデリックな感じのするアニメである。
音楽も摩訶不思議な音を使っていて、”グラス・ハーモニカ”のような構成的なものではない。

音楽自体のインパクトが強かったのは、コンチェルト・グロッソ(合奏協奏曲)第1番が使われている”Pencil and Erase(鉛筆と消しゴム)”。3分足らずしか音楽はついていなかったけれど、不協和音と協和音の旋律がそれぞれ鋭い切れ味があったので、早速第1番を全楽章を聴いて見ると、やっぱり凄い曲だった。


各アニメのタイトルをクリックすると、Youtubeの動画ページへリンクします。

 Bllerina on a Boat(1969)(Lev Atamanov監督)
これは軽いタッチの画風のコミカルなアニメーション。
船に乗船したバレリーナが踊りだすのは良いが、物理法則無視で空中を踊りながら飛び回っているので、そのバレリーナを追いかけて船員と船が右往左往。
笑えるといえば笑えるが、シュニトケの書いたBGMは調性のない摩訶不思議な音楽なので、そのアンバランスさには、何とも言えないものがある。
日本のアニメとかディズニーなら、多分明るく楽しげなコミカルタッチの曲をつけていたに違いない。

 Armoire(1970)(Andrei Khrzhanovsky監督)
『奇妙なタンス』とかいう邦題がついていることもある寸劇風のアニメ。

アパートメントにある自分の家具・インテリア製品・衣服など一切を、どこからか調達してきたタンスの中に詰め込んで、その中で快適に暮らしていく男を描いたもの。
これは当時のソ連人の生活を風刺した作品だそうで、不愉快な社会から逃避して、快適なものだけに囲まれた世界で暮らそうという人々を皮肉っている。

凝っていたグラス・ハーモニカに比べて、ちょっと絵は粗い気がするが発想が面白い。
物理的に言えば、このタンスの中に家具類全てが収納できるはずもないので、まるでブラックホールのようなタンスである。
冒頭とラストは、チェンバロやフルートや、弦楽が奏でるバロック調の典雅な曲だが、タンスが登場してくると、不気味な効果音的な音が(曲ではない)、いろんな楽器で鳴らされている。

この映画はソ連国内では好評だったらしいが、海外で放映されることはなかったという。


 Butterfly(1972)(Andrei Khrzhanovsky監督)
第一印象は、リアルで立体的な絵柄と幻想的な色彩。蝶々や草花、川魚の絵は、実写映像を使っているか、CGで製作したような色彩の鮮やかさと色の豊富さがあって、リアリティは抜群。
動きはスムーズさにかけるが動き方自体は本当の動きに近いリアルさがある。ややスローモーション的な感じが残るのは、セル画をかなり多く使って細かな動きにしているためだろうか?

ストーリーは.....
蝶が多く生息する緑地のそばにたつ巨大団地。ラジコン模型好きの少年が部屋に入ってきた美しい黄色い蝶々に魅せられて、捕まえようとしてとうとう野原のなかへ。次々と美しい蝶々を捕まえるが、しばらくうたたねしていたところ、夢のなかで蝶々に逆襲されて、昆虫網の中に逆に囚われて空から川のなかへ落とされてしまう。
そこで夢はさめて夜中になるが、暗闇のなかで捉えた蝶を全部話してやる少年。(暗闇のなかに浮き出る少年と蝶々が結構不気味)
色とりどりの蝶々たちが少年の全身に張り付いてきて、色彩ゆたかといえばそうだが、これもかなり気味の悪いものがある。
朝日がさして来ると、少年の身体から次々に蝶々が飛び立っていく。これは色が流動的に変わっていくというかなり幻想的な色彩の蝶々。

蝶々が自由に飛ぶ回るシーンでは、弦楽・木管・ハープ(パーカッション?)などが弾く、グラス・ハーモニカでも使われていた(ゴシックロマン的というのか)典雅な旋律が流れている。多分、”自由”や”美”といった価値のあるものを表現していると思う。
少年が蝶々を捕まえるたびに、なんともいえない不安げな摩訶不思議な不協和的な音が鳴る。
音楽自体は、グラス・ハーモニカの方が美しく、ストーリー性もあるが、この「蝶々」でも、シュニトケらしさを思わせる不協和的な和声や旋律の動きが散りばめられている。


 RARE (1973)
これはロシア語のセリフが多くて、意味不明。何かの風刺アニメだとは思うけど。


 My Memories Take Me To You(1977)(Andrei Khrzhanovsky監督)
これもロシア語のナレーションが多くて、意味はよくわからない。
プーシキンのメモ書きやスケッチをベースに、実写とアニメが加わっていて、かなり芸術色が強い。
全部で30分の長編。さすがにストーリーがわからないので、途中で挫折しました。
シュニトケの音楽は、本当にBGMという感じで、あまり強い個性のある曲をつけているわけではない。
ナレーションがこのアニメの進行役になっているので、それをジャマしない程度に音楽自体は控えめなトーン。


 Pencil and Erase(1982)(Elena Gavrilko監督)
3分あまりの短い寸劇風アニメ。
短くなった鉛筆が紙の上を一生懸命動きまわって字(線)を書いているのに、その後を追って消してゆく消しゴム。シンプルだけどとても可愛らしいタッチの絵。
でも、使われている曲は合奏協奏曲第1番の第4楽章<カデンツァ>(だと思います)と第5楽章<ロンド>。
子供向けのような可愛らしいアニメに、シュニトケの代表作の一つである不協和音に満ちたコンチェルト・グロッソが流れているのは、アンバランスといえばアンバランス。
最後の鉛筆と消しゴムの追っかけっこのシーンに、バロック調の疾走感溢れる旋律が流れていて、不思議とこの音楽が良く似合っているのが面白い。



 Miniatures-86(1985)(Vladimir Samsanov監督)---"Balance""Duel""Hope"の3部構成
音楽は、アレクセイ・リブニコフとシュニトケが担当。
リブニコフは合奏協奏曲「青い鳥」(ヴァイオリン、チェロ、ピアノと室内管弦楽の為の)、合奏協奏曲「北のスフィンクス」(ヴァイオリン、チェロ、ギター、ピアノと室内管弦楽の為の)などを作曲。
「東部戦線1944」(邦題/2002年製作)というロシアには珍しい娯楽戦争映画で、ゴールデン・イーグル賞最優秀映画音楽賞を受賞している。

タイトルの「Miniatures」というと、すぐにドヴォルザークのヴァイオリンとヴィオラのための「ミニアチュア」を連想してしまった。
このアニメも3つのパートから構成される9分あまりの小品なので、「Miniatures」とつけたのでしょう。

アニメの冒頭はベートーヴェンの「運命」の動機。
第1パートの"Balance"は、バロック風の曲が続く。これは明らかにシュニトケが作曲している。
やがてオーケストラが疾走感のあるフレーズを演奏し始めるが、ちょっとシュニトケぽくなさそうな気もしないではないが、途中でシュニトケが良く使う和声の響きが聴こえる。
1つの曲を合作するのはかなり難しいものがあるだろうから、アニメが3パートに分かれているので、作風から考えて、最初のパートをシュニトケ、残り2パートをリブニコフが担当したのだと思う。

3分後には第2パートの"Duel"。明らかにシュニトケではない感じのする音楽。
調性音楽のポップ調でユーモラスな曲だったり、運命動機がパロディ的にエレキギター(か何か)で弾かれていたりする。これはリブニコフの音楽だと思う。

6分近くになると、最後の"Hope”に変わる。
ある家族の幸福なシーンを描いたもの。画風がパステルカラーの暖かい色調とタッチに変わる。
音楽はメロドラマティックな美しい調和的な和声の曲で、よくある映画音楽のような雰囲気。ここもリブニコフ作でしょう。


これはおまけ。"Glass Harmonica"の映像を使ったミュージックビデオクリップ。流れている音楽はシュニトケ作品とは全く関係ありません。
 ”Mor ve Otesi - Uyan”

tag : シュニトケ

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(非公開コメント受付中)

よくお調べになりましたねぇ
今晩は。うじゃくです。

アニメの音源はCDではなかなか出回らないので、直接録音機能のあるMP3プレイヤーに落として聴いてます。それはいいとして。

言語の壁があるとは言え、よくこれだけお調べになりましたねぇ。凄いことだと思います。特にリブニコフの曲については自分ではわからなかったです。もっと修行を積まねばと思います。

鉛筆と消しゴムは面白いですよね。シュニトケの合奏協奏曲は2番ではエレキギターが出てきますし、5番では舞台裏に隠したピアノが鳴るんですよ。
なかなか面白い書き物でした
うじゃく様、こんにちは。
さっそくご来訪、コメントありがとうございます。

うじゃくさんから、アニメのタイトルを教えていただいていたので、探しやすかったです。ネットを検索していると結構情報が見つかるので、いろいろ記事が補強できて助かります。一応、専門分野がリサーチなので、情報収集はわりと得意な方なのです。

シュニトケがポップ、メロドラマ風の音楽を書くとはとても思えないので(必要に迫られたら書くかもしれませんが)、消去法でリブニコフと推測しました。はずれているかもしれませんが、クイズみたいで面白かったです。

合奏協奏曲は面白いですね。2番はナクソスでも聴けたと思いますが、HMVで5番を検索してみると、クレーメルの録音しかないようです。
シュニトケはピアノを使った曲が多いですね。結構ピアノに愛着を持っていたのではないかと思います。たしか、子供のころ2年ほどウィーンに住んでいて、そこで初めてピアノを習ったのだと、どこかのプロフィールに書いてました。
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Author:yoshimi
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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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